説明

共焦点顕微鏡装置

【課題】観察像への悪影響がなく、安定した検焦光量を得ることができる共焦点顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】ピンホールおよびマイクロレンズを利用して共焦点効果を獲得するニポウディスク方式の共焦点顕微鏡装置に適用される。検焦光の反射光を前記ピンホールおよび前記マイクロレンズを通過させる検焦光学系と、前記検焦光学系を経由した前記検焦光の反射光の光量を検出する検出手段と、前記検出手段の検焦結果に応じて合焦を行う合焦装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンホールおよびマイクロレンズを利用して共焦点効果を獲得するニポウディスク方式の共焦点顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009−53578号公報には、ニポウディスク方式の共焦点顕微鏡装置において、カバーガラスに基づく反射界面からの反射光を用いて自動合焦を行うための構成が開示されている。この構成では、対物レンズの焦点が反射界面に存在する場合にのみ、上記の反射光がニポウディスクのピンホールを通過する。このピンホールを通過した反射光の強度のピークを検索することにより反射界面の位置を検出し、自動合焦を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−53578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の共焦点顕微鏡装置では、ダイクロイックミラーで検焦光を反射させる構成を採用している。しかし、ダイクロイックミラーの透過波長における反射率は製造ロット等によるばらつきがあり、検焦光量が不安定になる。また、上記の共焦点顕微鏡装置では、観察光路内に検焦光を分離するための光学素子(ダイクロイックミラー)が挿入されるため、観察像の画質の低下を招くという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、観察像への悪影響がなく、安定した検焦光量を得ることができる共焦点顕微鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の共焦点顕微鏡装置は、ピンホールおよびマイクロレンズを利用して共焦点効果を獲得するニポウディスク方式の共焦点顕微鏡装置において、検焦光の反射光を前記ピンホールおよび前記マイクロレンズを通過させる検焦光学系と、前記検焦光学系を経由した前記検焦光の光量を検出する検出手段と、前記検出手段の検焦結果に応じて合焦を行う合焦装置と、を備えることを特徴とする。
この共焦点顕微鏡装置によれば、ピンホールおよびマイクロレンズを通過した検焦光の反射光の光量を検出するので、観察像への悪影響がなく、安定した検焦光量を得ることができる。
【0007】
前記検焦光を前記ピンホールおよび前記マイクロレンズを通過させ、試料に向けて照射する光路と、前記検焦光の反射光を戻す前記検焦光学系の光路とを互いに分離する分光手段を備えてもよい。
【0008】
前記分光手段は偏光を利用して光路を分離してもよい。
【0009】
前記検出手段は、有効画素領域が観察面の特定の領域に設定されるCCD素子を用いることで、CCD素子の有効画素領域の位置に応じて、その領域に注目した合焦を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の共焦点顕微鏡装置によれば、ピンホールおよびマイクロレンズを通過した検焦光の反射光の光量を検出するので、観察像への悪影響がなく、安定した検焦光量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態の共焦点顕微鏡装置の構成を示すブロック図。
【図2】対物レンズの焦点位置と受光器での光光量の関係を示す図。
【図3】検焦信号を検出する検出手段としてCCD素子を用いた構成例を示すブロック図。
【図4】観察像とCCD素子の有効画素領域との関係を示す図であり、(a)は有効画素領域を広くとった場合を示す図、(b)および(c)は有効画素領域を絞り込んだ場合を示す図。
【図5】光路の分離に偏光を利用した構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による共焦点顕微鏡装置の一実施形態について説明する。
【0013】
図1は本実施形態の共焦点顕微鏡装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の共焦点顕微鏡は、ニポウディスク方式の共焦点顕微鏡装置であり、共焦点スキャナ1と、対物レンズ31を具備する蛍光顕微鏡3と、カメラ4とを備える。
【0015】
共焦点スキャナ1は、アレイ状にピンホールが配置されたピンホールアレイディスク11および同じパターンでマイクロレンズが配置されたマイクロレンズアレイディスク12を備え、それらは連結ドラム13で連結されるとともに、回転軸14周りに一体的に回転可能とされている。ピンホールアレイディスク11とマイクロレンズアレイディスク12の間にはダイクロイックミラー16が配置されている。ダイクロイックミラー16は励起光束51の波長を透過し、蛍光信号52を反射させる特性を有する。
【0016】
顕微鏡3は対物レンズ31の焦点を調整する合焦装置32を備える。後述するように、合焦装置32は受光器22の受光光量に基づいて対物レンズ31の焦点を調整する。
【0017】
次に、本実施形態の共焦点顕微鏡装置の動作について説明する。
【0018】
励起光束51はビームスプリッタ15を透過し、マイクロレンズアレイディスク12に照射される。ビームスプリッタ15は入射光の95%を透過し、5%を反射させる特性を有する。ビームスプリッタ15を透過した励起光は、マイクロレンズアレイディスク12に設けられた個々のマイクロレンズの作用によってダイクロイックミラー16を透過した後、ピンホールアレイディスク11の対応するピンホール上で焦点を結ぶ。
【0019】
ピンホールアレイディスク11を通過した励起光は、顕微鏡3の対物レンズ31を経て、保持器6に保持された試料の焦点面上に焦点を結ぶ。
【0020】
励起光を受けて、試料からは蛍光信号52が発せられる。励起光により励起された蛍光信号52は、顕微鏡3の対物レンズ31を経て共焦点スキャナ1に戻り、ピンホールアレイディスク11を通過し、ダイクロイックミラー16で反射される。反射された蛍光信号52はさらにリレーレンズ17、バンドパスフィルタ19、リレーレンズ20を通過してカメラ4に導光される。このとき、バンドパスフィルタ19は蛍光信号52の大部分を透過させる。
【0021】
ここで、マイクロレンズアレイディスク12とピンホールアレイディスク11を一体的に回転させると、ピンホールを通過する光が対応する焦点面上を走査し、さらに個々の蛍光は再び同じピンホールを通過した後に、カメラ4の撮像素子上を走査する。この動作によって焦点面の蛍光がカメラ4に投影されて観察が可能となる。また、この際に焦点面以外の光は、ピンホールをほとんど通過できないためにほとんどカメラ4に到達することができない。これによって、カメラ4は焦点面の光のみの共焦点画像を撮影することになる。
【0022】
一方、保持器6により反射された検焦光の反射光53は、顕微鏡3の対物レンズ31を経て共焦点スキャナ1に戻り、ピンホールアレイディスク11、ダイクロイックミラー16、マイクロレンズアレイディスク12を通過し、ビームスプリッタ15においてその5%の光量が反射される。ビームスプリッタ15で反射された検焦光の反射光53は、バンドパスフィルタ21を通過し、検出手段としての受光器22に導光される。このとき、バンドパスフィルタ21は反射光53の大部分を透過させる。
【0023】
なお、上記保持器6から受光器22に至る検焦光の反射光53の光路は検焦光学系を構成する。
【0024】
図2は、対物レンズ31の焦点位置と、受光器22での受光光量の関係を示す図である。試料7は培養液71に浸された状態で、保持器6を構成するカバーガラス61上に置かれる。
【0025】
図2に示すように、対物レンズ31の焦点がカバーガラス61の表面61aに合ったとき、反射光53の受光光量が最も強くなる。焦点がずれれば、共焦点効果により反射光がピンホールアレイディスク11のピンホールを通過できず、反射光の光量が急激に減少する。そして、対物レンズ31の焦点がカバーガラス61の裏面61bに合った場合、反射光53の受光光量が再び強くなる。このため、合焦装置32によって対物レンズ31の焦点を観察光軸方向に走査しつつ受光器22の受光光量を取得し、光量のピークを検索することにより、対物レンズ31がカバーグラス61の表面61aあるいは裏面61bに合焦した位置を検知できる。
【0026】
したがって、カバーガラス61の表面61aあるいは裏面61bへの合焦状態を基準として、所定の距離だけ焦点を深くすることにより、対物レンズ31を観察面へ合焦させることができる。例えば、図2の例では、カバーガラス61の表面61aから観察面72までの距離d1またはカバーガラス61の裏面61bから観察面72までの距離d2だけ、焦点を移動させることで、観察面72に合焦させることができる。
【0027】
このように励起光を検焦光として使用することにより、観察と同時に合焦動作を行わせることができる。
【0028】
図1に示すように、本実施形態では、励起光と検焦光とをビームスプリッタ15により分光しているが、一般に、ビームスプリッタの反射率はばらつきが少なく安定しているため、安定した検焦信号を得ることができる。また、励起光と検焦光とを分光するための光学要素(ダイクロイックミラー等)を観察光路(ダイクロイックミラー16からカメラ4までの間)に挿入する必要がなくなるため、蛍光信号の撮影画質が低下することを防止できる。
【0029】
なお、上記実施形態では、検焦光として励起光を用いる例を示したが、他の波長の光を検焦光として用いてもよい。この場合、他の波長の光を励起光とともに試料に向けて照射することで、観察と同時に合焦動作を行わせることもできる。
【0030】
図3は検焦信号を検出する検出手段としてCCD素子を用いた構成例を示すブロック図である。図3において、図1と同一構成要素には同一符合を付し、その説明は省略する。
【0031】
図3の例では、図1の受光器22に代えてCCD素子23が用いられる。また、検焦光路中にリレーレンズ24が挿入されている。
【0032】
この場合、ビームスプリッタ15で反射された検焦光の反射光53は、バンドパスフィルタ21、リレーレンズ24を通過し、CCD素子23に導光される。このとき、バンドパスフィルタ21は反射光53の大部分を透過させる。
【0033】
CCD素子23はその有効画素領域を自由に設定することが可能とされており、設定された有効画素領域における輝度値の平均値をアナログ信号あるいはデジタル信号として出力する。
【0034】
図4は観察像とCCD素子23の有効画素領域との関係を示す図である。
【0035】
図4(a)の例では、CCD素子23の有効画素領域23Aをカメラ4による視野4Aのほぼ全域にかかるように大きくとっている。この場合には、視野4Aの全体に平均化された合焦を行うことができる。これに対し、図4(b)および図4(c)の場合には、CCD素子23の有効画素領域23Aを絞り込み、視野4Aの一部の領域に設定している。これらの場合には、CCD素子23の有効画素領域23Aの位置に応じて、その領域に注目した合焦を行うことができる。
【0036】
図5は光路の分離に偏光を利用した構成を示すブロック図である。図5において、図1と同一構成要素には同一符合を付し、その説明は省略する。
【0037】
図5に示す構成では、図1におけるビームスプリッタ15に代えて偏光ビームスプリッタ15Aを使用する。また、検焦光路上に1/4波長板25を配置する。さらに、励起光51として直線偏光の光を用いる。
【0038】
直線偏光の励起光51は、偏光ビームスプリッタ15Aおよび1/4波長板25を介してマイクロレンズアレイディスク12に照射される。偏光ビームスプリッタ15Aは励起光51を透過する向きに設置され、偏光ビームスプリッタ15Aでは励起光51の大部分が透過され、1/4波長板25において励起光51は円偏光となる。円偏光となった励起光51は、マイクロレンズアレイディスク12に設けられた個々のマイクロレンズの作用によってダイクロイックミラー16を透過した後、ピンホールアレイディスク11の対応するピンホール上で焦点を結ぶ。
【0039】
ピンホールアレイディスク11を通過した励起光は、顕微鏡3の対物レンズ31を経て、保持器6に保持された試料の焦点面上に焦点を結ぶ。
【0040】
励起光を受けて、試料からは蛍光信号52が発せられる。励起光により励起された蛍光信号52は、顕微鏡3の対物レンズ31を経て共焦点スキャナ1に戻り、ピンホールアレイディスク11を通過し、ダイクロイックミラー16で反射される。反射された蛍光信号52はさらにリレーレンズ17、バンドパスフィルタ19、リレーレンズ20を通過してカメラ4に導光される。このとき、バンドパスフィルタ19は蛍光信号52の大部分を透過させる。
【0041】
ここで、マイクロレンズアレイディスク12とピンホールアレイディスク11を一体的に回転させると、ピンホールを通過する光が対応する焦点面上を走査し、さらに個々の蛍光は再び同じピンホールを通過した後に、カメラ4の撮像素子上を走査する。この動作によって焦点面の蛍光がカメラ4に投影されて観察が可能となる。また、この際に焦点面以外の光は、ピンホールをほとんど通過できないためにほとんどカメラ4に到達することができない。これによって、カメラ4は焦点面の光のみの共焦点画像を撮影することになる。
【0042】
一方、保持器6により反射された検焦光の反射光53は、顕微鏡3の対物レンズ31を経て共焦点スキャナ1に戻り、ピンホールアレイディスク11、ダイクロイックミラー16、マイクロレンズアレイディスク12を通過する。さらに、反射光53は1/4波長板25により円偏光から直線偏光に変換される。このとき、直線偏光となった反射光53の偏光方向は、共焦点スキャナ1に入射する励起光51の偏光方向と直交しているため、反射光53は偏光ビームスプリッタ15Aでそのほとんどが反射される。偏光ビームスプリッタ15Aで反射された検焦光の反射光53は、バンドパスフィルタ21を通過し、検出手段としての受光器22に導光される。このとき、バンドパスフィルタ21は反射光53の大部分を透過させる。合焦動作の原理は、図1の構成と同様である。
【0043】
図1の構成では、受光器22に導光される光量は検焦光の反射光53のうちの5%程度である。これに対し、図5の例では、反射光53の光路を偏光ビームスプリッタ51Aによって励起光51の光路から分離しているので、反射光53の光量をほぼ100%の比率で受光器22に導くことができる。このため、S/N比の高い検焦信号を得ることができる。
【0044】
以上説明したように、本発明の共焦点顕微鏡装置によれば、ピンホールおよびマイクロレンズを通過した検焦光の反射光の光量を検出するので、観察像への悪影響がなく、安定した検焦光量を得ることができる。
【0045】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、ピンホールおよびマイクロレンズを利用して共焦点効果を獲得するニポウディスク方式の共焦点顕微鏡装置に対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
11 ピンホールアレイディスク(ピンホール)
12 マイクロレンズアレイディスク(マイクロレンズ)
15 ビームスプリッタ(分光手段)
15A 偏光ビームスプリッタ(分光手段)
22 受光器(検出手段)
23 CCD素子(検出手段)
61 カバーガラス
61a 表面
61b 裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンホールおよびマイクロレンズを利用して共焦点効果を獲得するニポウディスク方式の共焦点顕微鏡装置において、
検焦光の反射光を前記ピンホールおよび前記マイクロレンズを通過させる検焦光学系と、
前記検焦光学系を経由した前記検焦光の反射光の光量を検出する検出手段と、
前記検出手段の検焦結果に応じて合焦を行う合焦装置と、
を備えることを特徴とする共焦点顕微鏡装置。
【請求項2】
前記検焦光を前記ピンホールおよび前記マイクロレンズを通過させ、試料に向けて照射する光路と、前記検焦光の反射光を戻す前記検焦光学系の光路とを互いに分離する分光手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の共焦点顕微鏡装置。
【請求項3】
前記分光手段は偏光を利用して光路を分離することを特徴とする請求項2に記載の共焦点顕微鏡装置。
【請求項4】
前記検出手段は、有効画素領域が観察面の特定の領域に設定されるCCD素子を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の共焦点顕微鏡装置。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−22327(P2011−22327A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166921(P2009−166921)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】