説明

共重合体およびその使用

【課題】インクジェットインキ、カラーフィルター用カラー、その他の用途に有用な顔料分散液を与える顔料分散剤などとして有用な共重合体を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される基の少なくとも1個を末端に有するメタクリル重合体ユニット(A)と芳香族ビニルモノマーユニット(B)とを含み、ユニット(A)とユニット(B)との質量比率(A:B)が、A:B=5〜95:95〜5であることを特徴とする共重合体(D)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な共重合体およびその使用などに関し、さらに詳しくは、顔料の分散剤などとして有用な共重合体、該共重合体の顔料分散剤としての使用、顔料分散液、およびその使用などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料分散剤および樹脂分散液がそれぞれの用途に対して各種開発されており、その応用面も多岐に渡る。例えば、顔料分散剤においては、片末端カルボン酸のポリエステルとポリアミンとを反応させて得られる櫛型構造のもの(特許文献1)、イソシアネート類に、溶媒可溶な重合体および顔料吸着基である官能基を有する化合物を反応して得られるもの(特許文献2)、また、スチレンやアクリルモノマーをランダム共重合して得られるもの(特許文献3)が知られている。
【0003】
また、樹脂分散液としては、低分子量のアクリルまたはアクリルスチレン樹脂を中和して水に溶解させ、その系にモノマーを添加および重合して得られる水系の樹脂分散液(特許文献4)、または末端のメルカプトエチルカルボン酸の如き連鎖移動剤の残基のカルボン酸を有し、脂肪族炭化水素溶媒中に溶解し得る炭素数8などの長鎖炭化水素基を持ったメタクリレート系ポリマーに、メタクリル酸グリシジルを反応させて得られるマクロモノマーの存在下に、他のラジカル重合性モノマーを添加して得られる非水の樹脂分散液がある(特許文献5)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−197485号公報
【特許文献2】特開平4−210220号公報
【特許文献3】特開平1−164429号公報
【特許文献4】特開平4−53802号公報
【特許文献5】特開昭55−35321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、各種色材関係の製品、特にIT産業におけるインクジェット(IJ)インキやカラーフィルター(CF)用カラーにおいては、ナノ領域および高物性の顔料分散液の開発が盛んに行われており、各社色材メーカーにおいても、その要求に合わせた製品の開発が行われている。特に顔料のナノサイズの微粒子化やその安定性が高い分散液、すなわち、高顔料分散性や、また、例えば、IJインキにおいては高発色性や高グロス性など、CF用カラーにおいては高コントラスト性や高透明性、高耐熱性などの高物性が求められている。
【0006】
従って、本発明の目的は、IJインキ、CF用カラー、その他の用途に有用な顔料分散液を与える顔料分散剤などとして有用な共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される基の少なくとも1個を末端に有するメタクリル重合体ユニット(A)(以下単に「ユニットA」という場合がある)と芳香族ビニルモノマーユニット(B)(以下単に「ユニットB」という場合がある)とを含み、ユニットAとユニットBとの質量比率(A:B)が、A:B=5〜95:95〜5であることを特徴とする共重合体(D)(以下単に「共重合体D」という場合がある)を提供する。
【0008】

(式中のRは、水素原子またはn価のエステル残基であり、nは1〜4の数であり、Yはメタクリル重合体である。)
【0009】
上記本発明の共重合体Dは、さらにユニットAおよびユニットB以外のモノマーユニット(C)(以下単に「ユニットC」という場合がある)を含むことができ、上記ユニットAが、下記一般式(2)で表される化合物とメタクリル系モノマーとの共重合体からなることが好ましい。
【0010】

(式中のXは、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホキシド基、アリールスルホキシド基、ベンジルオキシ基、アルキルベンジルオキシ基であり、Rは、水素原子またはn価のエステル残基であり、nは1〜4の数である。)
【0011】
上記本発明の共重合体DにおけるユニットBモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルジメチルベンゼン、ビニルエチルベンゼンおよびビニルナフタレンの少なくとも1種であること;ユニットCモノマーは、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、第4級アンモニウム塩基および窒素含有複素環基の群から選ばれる官能基を有するモノマーであることが好ましい。
【0012】
上記本発明の共重合体DにおけるユニットAは、アルカリ性物質によって中和される酸基を有し、その酸価が50〜300mgKOH/gであること;上記共重合体Dが液媒体中に分散または乳化していること;上記酸基が、カルボン酸基、スルホン酸基および/またはリン酸基であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記本発明の共重合体Dからなることを特徴とする顔料分散剤;顔料が、上記顔料分散剤によって分散されていることを特徴とする顔料分散液;および着色剤として上記顔料分散液を含有することを特徴とする塗料、インキ、コーティング剤またはトナーを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明者らは前記の課題を解決し、高顔料分散性や高物性を与える新規な顔料分散剤および樹脂分散液の開発を行った。その結果、本発明において、前記したような従来の顔料分散剤や樹脂分散液に対して、新規な構造で性能が良好な重合体である顔料分散剤および樹脂分散液を開発した。これらの共重合体は、顔料分散剤として非常に良好な顔料分散性を有し、顔料の微分散液を得ることができる。
【0015】
また、各種用途に上記顔料分散液を使用した場合、その物品の性能の向上、例えば、高密着性、高発色性、高グロス性、耐熱性などを示す。また、本発明の共重合体は、樹脂分散液としても保存安定性のみならず、他の溶剤が混入しても析出することなく安定で、皮膜形成成分として使用した場合、高密着性、高グロス性などの優れた物性を有する皮膜を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明の共重合体Dは、下記一般式(1)で表される基を少なくとも1個末端に有するユニットAとユニットBとを含み、ユニットAとユニットBとの質量比率(A:B)が、A:B=5〜95:95〜5であることを特徴としている。
【0017】

(式中のRは、水素原子またはn価のエステル残基であり、nは1〜4の数であり、Yはメタクリル重合体である。)
【0018】
上記共重合体Dにおける、ユニットAは、下記一般式(2)で表される化合物とメタクリル系モノマーとの共重合体からなることが好ましい。

(式中のXは、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホキシド基、アリールスルホキシド基、ベンジルオキシ基、アルキルベンジルオキシ基であり、Rは、水素原子またはn価のエステル残基であり、nは1〜4の数である。)
【0019】
前記一般式(2)の化合物の存在下に、他のモノマーをラジカル重合することは、従来公知の方法であり、付加解裂型連鎖移動重合として知られている(参考文献:高分子論文集 Vol.54、No10、p723〜730、(1997)など)。一般式(2)の化合物は、そのα位の炭素に脱離性基を持つ化合物であり、添加したモノマーまたはそれから得られるポリマーの末端の成長ラジカルが、一般式(2)の化合物の不飽和結合を攻撃し、一般式(2)の化合物のα位の炭素がラジカルを生成し、そのラジカルが移動することによって、α位のメチル基に置換した脱離性基(X)がラジカルとなって脱離し、その脱離したラジカルが、またモノマーと反応してポリマーを与えていくという付加解裂型の連鎖移動重合を生じる。そして結果として、生成した重合体末端には一般式(2)の化合物由来の不飽和結合を生成する。すなわち、末端が不飽和結合であるマクロモノマー(本発明における「ユニットA」となるマクロモノマー)を生成する。
【0020】
さらに詳細に説明すると、上記脱離性基(X)としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン元素;またはメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、オクチルチオ基、ラウリルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ベンジルチオ基、ヒドロキシエチルチオ基、カルボキシルエチルチオ基などのアルキルチオ基、またはフェニルチオ基、ナフチルチオ基、メチルフェニルチオ基、エチルフェニルチオ基などのアリールチオ基;メチルスルホキシド基、エチルスルホキシド基、トリクロロメチルスルホキシド基、トリフルオロメチルスルホキシド基、ベンジルスルホキシド基などのアルキルスルホキシド基またはフェニルスルホキシド基、メチルフェニルスルホキシド基、ナフチルスルホキシド基などのアリールスルホキシド基;ベンジルオキシ基、メチルベンジルオキシ基などのベンジルオキシ基またはアルキルベンジルオキシ基の群から選ばれる1種以上である。本発明において特に好ましくは、比較的入手容易な臭素原子などのハロゲン化合物やt−ブチルチオ基、ラウオチオ基などのアルキルチオ基である。
【0021】
これらの一般式(2)の化合物は従来公知の製造方法で得られ、製造方法は特に限定されない。製造方法としては、例えば、アクリル酸またはそのエステル化合物に、ジアザビシクロ(2,2,2)オクタンやジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセンなどの強塩基存在下に、ホルムアルデヒドを作用させてそのアクリロイロキシ基のα位炭素をメチロール化して、またはトリエチルフォスフォノアセテートにホルムアルデヒドを反応させて、α−ヒドロキシメチルアクリル酸またはそのエステル化合物を得、それらに、例えば、三塩化リン、三臭化リンなどを使用して水酸基をハロゲン化して得ることができ、またはジエチルビス(ヒドロキシメチル)マロネートに臭素化水素を反応させて、そのままハロゲン化物を得ることができる。
【0022】
さらに、上記ハロゲン化物にトリエチルアミンなどの塩基の存在下に、アルキルチオール、アリールチオール、アルキルスルホン酸またはアリールスルホン酸などを反応させて、前記のハロゲン化物と交換反応を行い、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホキシド基またはアリールスルホキシド基を導入できる。または加えて、前記のハロゲン化物にベンジルアルコールなどをカリウムt−ブトキシドの存在下にベンジルエーテル化して、ベンジルオキシ基を導入できる。
【0023】
上記のα位炭素に脱離性基を導入する場合に使用する上記のアクリル酸またはアクリル酸エステル化合物は、従来公知のものが使用され特に限定されない。具体的には、例えば、アクリル酸;アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ベンジル、シクロヘキシル、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、シクロデシル、イソボニルエステルなどのアルキルまたはシクロアルキルエステル化物;アクリル酸(ポリ)アルキレングリコールおよびそのアルキルエーテル、またはフタル酸の如き二塩基酸とのエステル化物、またはアルキルエーテル化物;アクリル酸のジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、t−ブチルアミノエチルエステルなどのアミノ基含有アクリル酸エステルなどが挙げられる。これらのアクリル酸またはアクリル酸エステル化物を使用して、α位のメチル基に脱離性基を導入した場合、1個の脱離性基を有する前記一般式(2)の化合物が得られる。
【0024】
また、一般式(2)の化合物としては、2つ以上の脱離性基を有するα−置換メチルアクリル酸またはエステル化物を使用できる。これは、アクリロイロキシ基を2個以上持つ化合物を使用して、前記と同様にメチロール化した後ハロゲン化やアルキルチオ、アルキルスルホキシド化などすることによって得ることができる。
【0025】
このアクリロイロキシ基を2個以上有する化合物としては、従来公知のものが使用でき特に限定されないが、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビトールおよびそれらの(ポリ)アルキレングリコール化物;ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの(ポリ)アルキレングリコール化物;ポリエチルアジピン酸などのポリエステルなどの両末端水酸基含有化合物;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有ラジカル重合性モノマーを単独または他のモノマーと共重合して得られる水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートなどの重合体において、それらの水酸基をアクリル酸エステル化などして得られるアクリロイロキシ基を含有する重合体が挙げられる。これらを使用し、前記したようにメチロール化した後ハロゲン化やアルキルチオ化、アルキルスルホキシド化などすることによって得ることができる。これらを使用すると2個以上の脱離性基を有する一般式(2)の化合物となる。
【0026】
次にこれらの一般式(2)の化合物の存在下に、ラジカル重合性モノマーを重合することによって、一般式(1)で表される基を少なくとも1個末端に有するメタクリル重合体、すなわち、マクロモノマー(以下単に「マクロモノマー」という場合がある)を得ることができる。マクロモノマーとは高分子量のモノマーであり、その末端には重合性二重結合基を有するポリマータイプの単量体であり、これを他のラジカル重合性モノマーと共重合して、共重合体にユニットAを組み込むことによって、そのユニットA由来の高分子鎖を有する共重合体が得られる。
【0027】
特に本発明において、一般式(2)の化合物と重合させるラジカル重合性モノマーとしては、メタクリル酸またはそのエステル化物である。これは従来公知のように、スチレンなどのビニル系、アクリル酸ブチルなどのアクリル系、アクリルアミドなどのアミド系の如きラジカル重合性モノマーを一般式(2)の化合物との重合に使用すると、それらの不飽和結合が一般式(2)の化合物の不飽和結合とラジカル重合反応を起こし、一般式(2)の化合物がポリマーの成分として重合体に取り込まれ、前記一般式(1)の不飽和結合を末端に持つ重合体が得にくいためである。メタクリル酸またはそのエステル化物では、一般式(1)の不飽和結合との重合性が乏しく、付加解裂型重合をして、一般式(1)の不飽和結合を末端に持つマクロモノマーを得ることができる。
【0028】
使用するメタクリル酸またはそのエステル化物としては、従来公知のものが使用され、特に限定されないが、具体的には、メタクリル酸、メタクリロイロキシエチルスルホン酸、メタクリロイロオキシエタンリン酸またはそのエステル化物;メタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ベンジル、シクロヘキシル、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、シクロデシル、イソボニルエステルなどのメタクリル酸のアルキルまたはシクロアルキルエステル化物;メタクリル酸(ポリ)アルキレングリコールのエステル化物、またはそれのフタル酸などの二塩基酸のエステル化物、またはそのアルキルエーテル;メタクリル酸のジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、t−ブチルアミノエチル、トリメチルアンモニウムエチルクロライド、ジメチルベンジルアンモニウムエチルクロライドなどのアミノ基含有メタクリル酸エステル;メタクリル酸グリシジル、オキセタン基含有メタクリレート、メタクリロイロキシエチルイソシアネートなどの反応性官能基含有メタクリル酸モノマー;メタクリル酸(ポリ)フルオロアルキルエステル、ポリシロキサン基含有メタクリレートなどのフッ素系、シリコーン系メタクリレート;メタクリル酸基が結合したベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アゾ化合物の如き色素などの機能性メタクリルモノマーなどが挙げられ、1種または2種以上を使用することができる。
【0029】
また、本発明の共重合体Dを水性媒体で使用する場合においては、共重合体Dを親水性にするために、マクロモノマーに、中和されて塩を形成する酸基を持つモノマーユニットを組み込み、かつ酸価を50〜300mgKOH/gとすることが好ましい。この中和されて塩を形成する酸基としては、カルボン酸基、スルホン酸基またはリン酸基が挙げられ、具体的に使用するモノマーとしては、メタクリル酸、またはメタクリル酸(ポリ)アルキレングリコールエステル化物に二塩基酸を反応して、ハーフエステル化されて得られるカルボン酸含有モノマー;メタクリロイロキシエチルスルホン酸などのスルホン酸含有モノマー;メタクリロイロオキシエタンリン酸またはそのエステル化物などのリン酸含有モノマーが挙げられ、1種または2種以上を使用できる。
【0030】
また、この酸基を持つモノマーの使用量は、本発明の共重合体Dを使用して得られる顔料分散剤または樹脂分散液の側鎖が十分親水性を示さなければならず、導入するマクロモノマーの酸価としては、50〜300mgKOH/gがよく、好ましくは100〜250mgKOH/gである。酸価が50mgKOH/g未満であると、共重合体Dの親水性を高めるためには、マクロモノマーの導入量を多くせねばならず、この場合は重合性の点からマクロモノマーが反応せずに重合系に残るなどの不都合がある。
【0031】
また、マクロモノマーの酸価が300mgKOH/gを超えると、共重合体Dへのマクロモノマーの導入量は少なくできるが、少なくなりすぎる分、共重合体D中のマクロモノマーの割合が少なくなり、マクロモノマーの性質が出ない場合や、共重合体Dが十分な親水性を示さない場合がある。また、マクロモノマーを多く導入した場合は、共重合体Dの親水性が高すぎて、該共重合体Dを用いて作成した顔料分散液の安定性保持に不向きな場合や、該共重合体Dを物品へ添加した場合に、該物品の耐水性が悪くなる場合がある。
【0032】
一般式(2)の化合物とメタクリル系モノマーとを従来公知の溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合において、アゾ系開始剤や過酸化物系開始剤を使用して重合することによって、前記一般式(1)で表される基を有するマクロモノマーを得ることができる。マクロモノマーは、溶液重合した場合、そのまま使用することもできるし、その貧溶剤に析出したり、酸やアルカリで中和して析出させたりして固形として取り出して使用することもできる。マクロモノマーは、懸濁重合ではろ過して固形として、または溶液重合または乳化重合では、加温や塩析して、樹脂のみを取り出して固形で使用することができる。
【0033】
溶液重合は、一般式(2)の化合物とメタクリル系モノマーとを溶解する従来公知の液媒体中で、従来公知の重合によって行うことができる。液媒体としては、例えば、水、有機溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ヘキサンなどが挙げられ、1種または2種以上を混合して使用でき、特に限定されない。
【0034】
また、水溶性の共重合体Dを得る場合には、水溶性の有機溶剤、例えば、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤などを使用して、重合後にアルカリ水で共重合体Dを中和しつつ、共重合体Dを水溶液化できる。
【0035】
上記マクロモノマーの分子量について特に限定はないが、マクロモノマーの分子量が大き過ぎるとその重合性が悪くなり、重合に寄与せずにマクロモノマーが重合系に残ってしまう場合がある。また、共重合体Dの主鎖に導入されるマクロモノマーの分子数としては少なくなることになり、十分なマクロモノマーの性能を示すことができない。ついては均一にマクロモノマーが共重合体Dに導入されなければならず、マクロモノマーの分子量としては、GPC測定のポリスチレン換算において、数平均分子量において500〜100,000、好ましくは、1,000〜30,000、さらに好ましくは2,000〜10,000である。
【0036】
本発明では、以上のようにして得られるマクロモノマーとユニットBモノマーとを、必要に応じて他のユニットCモノマーとを共重合して、顔料分散剤または樹脂分散液として有用な本発明の共重合体Dを得ることができる。
【0037】
前記のマクロモノマーを使用した場合、その末端基の反応性は、従来の(メタ)アクリル酸モノマーやビニルモノマーの不飽和結合のラジカル重合性とは違い、重合性に比較的乏しいものであることが知られている。その結果、このマクロモノマーの存在下に、他のモノマーとラジカル重合すると、他のモノマーからなるポリマーの末端ラジカルが、このマクロモノマーの末端二重結合と結合して、1個の一般式(1)の基には最大2個のポリマー鎖が結合することが知られている。特に共重合するモノマーとしては、芳香族ビニルモノマー(ユニットBモノマー)が適していることが知られていて、本発明では、このユニットBモノマーをコモノマーとして使用することが特徴である。ユニットBモノマーを使用せずに、メタクリレート系モノマーなどを使用した場合、末端二重結合基に対して再び付加解裂連鎖移動重合がおき、本発明の共重合体Dが得られない。
【0038】
また、さらに、末端が(メタ)アクリル酸基であるマクロモノマーがある。これはヒドロキシエチルチオールや2−メルカプトエチルカルボン酸の如き連鎖移動剤を使用してモノマーを重合して、その末端に水酸基またはカルボキシル基が導入された重合体を得、水酸基の場合は、イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどを反応させ、またはカルボン酸の場合、グリシジルメタクリレートなどを反応させ、末端に(メタ)アクリル酸基のラジカル重合性である不飽和結合を有する重合体であるマクロモノマーであるが、このマクロモノマーを使用した場合、その末端不飽和結合は反応性がよく、他のラジカル重合性モノマーと通常のラジカル重合を起こし、グラフト重合体を与える。
【0039】
しかし、このマクロモノマーを使用して他のラジカル重合性モノマーと重合した場合、そのマクロモノマー量を多くすると、そのマクロモノマーが重合せずに残ってしまう場合があり、マクロモノマーを多く導入できない問題があった。そのマクロモノマーの導入率は40質量%程度であった。しかし、本発明に使用する前記マクロモノマーを使用した場合、該マクロモノマーを多く使用してもすべてのマクロモノマーが重合に関与することがわかり、マクロモノマーを導入するのに非常に有用であることが分かった。
【0040】
さらに、本発明では必要に応じて、ユニットBモノマーと共重合し得る他のユニットCモノマーを使用することができ、必要に応じてマクロモノマーとユニットBモノマーとユニットCモノマーとから本発明の共重合体Dを得ることができる。
【0041】
本発明におけるマクロモノマーは、前記したように、共存しているモノマーが重合して重合体ができ、この重合体の末端成長ラジカルが前記一般式(1)の不飽和結合に結合して、最大2個の重合体鎖が結合する重合であることが知られている。本発明では、必ずしも1個の一般式(1)の不飽和結合に2個の重合体鎖が結合する必要はない。本発明において、マクロモノマーとユニットBモノマーと他のユニットCモノマーの重合によって得られる共重合体Dは、それぞれのユニットがそれぞれの機能を発揮するのが特徴である。よってマクロモノマーの不飽和結合に1個の重合体が結合した場合はブロック共重合体となり、2個の重合体が結合した場合は、共重合体にマクロモノマーが1本グラフトした、すなわちマクロモノマーの鎖1本とユニットBモノマーと他のユニットCモノマーとからなるT字型の分岐した共重合体Dの形でもよい。
【0042】
さらに2個以上の一般式(1)の基を有するマクロモノマーを使用した場合、それらの2個以上の一般式(1)の基には重合体鎖が2個以上結合することができ、例えば、2個の一般式(1)の基を有するマクロモノマーを使用した場合、4本の重合体が結合し、マクロモノマーと合わせると6本の分岐した構造となる。すなわち、2個以上の一般式(1)の基を有するマクロモノマーを使用した本発明の共重合体Dは、高分岐した星型の共重合体である。
【0043】
この高分岐した重合体に対しても前記と同様に、前記一般式(1)の基には、2個の重合体が結合することが可能であるが、必ずしも必要はなく、例えば、3個の一般式(1)の基を持つマクロモノマーを使用した場合、ユニットBモノマーと他のユニットCモノマーとからなる重合体が、6本結合するが、これが4本でも分岐構造型の本発明の共重合体Dとなるので、本発明として十分使用できるものである。
【0044】
分岐型構造の本発明の共重合体D中のマクロモノマー(ユニットA)は、マクロモノマーとユニットBとの合計を100質量%としたときに、5〜95質量%、好ましくは20〜80質量%である。マクロモノマーが5質量%より少ないと、分岐型構造の共重合体Dにおいて、マクロモノマーの性質が現れにくく、また、他のユニットBモノマーや他のユニットCモノマーからなる重合体が、マクロモノマーと結合することなく存在してしまう可能性がある。また、マクロモノマーが95質量%より多いと、その分岐型構造の共重合体において、ユニットBモノマーや他のユニットCモノマーからなるポリマーの性質が現れにくく、また、マクロモノマーが結合することなく、重合系に残存してしまう可能性がある。
【0045】
次に本発明におけるユニットBモノマーとしては、従来公知のものが使用でき、例えば、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルジメチルベンゼン、ビニルトリメチルベンゼン、ビニルエチルベンゼン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、スチレンカルボン酸およびその金属塩、スチレンスルホン酸およびその金属塩などが挙げられ、特に好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルジメチルベンゼン、ビニルエチルベンゼンおよびビニルナフタレンである。
【0046】
ユニットBモノマーは前記したような重合を制御するだけでなく、共重合体Dの顔料への親和性を高くし、共重合体Dを顔料分散剤として使用した場合、顔料吸着性を大きく促し、良好な顔料微分散性を与える。また、マクロモノマーとユニットBとの合計を100質量%としたときに、ユニットBは共重合体D中に、95〜5質量%含有する。この量は前記したマクロモノマーの量と同様の理由で、好ましくは80〜20質量%である。
【0047】
また、必要に応じて、マクロモノマーと重合する際に、ユニットBモノマーに加えて、他のユニットCモノマーを使用することができる。これは、ユニットCモノマーはユニットBモノマーとラジカル重合し得るモノマーであることが必要であり、従来公知のものが使用でき、特に限定されないが、列記すると、今まで記載してきたような(メタ)アクリル酸系モノマーや、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジメチルアミド、ジメチルプロパンスルホン酸アクリルアミドなどのアミド系モノマー;フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸などの二塩基酸の不飽和結合含有モノマーおよびそれらの脂肪族、脂環族、芳香族ハーフエステルまたはジエステル;酢酸ビニル、酢酸プロピル、ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのビニルモノマーなどが挙げられる。これらはマクロモノマーとユニットBモノマーとの重合において、その共重合体Dの性質を変更させることができる。
【0048】
また、本発明の共重合体Dにおいては、官能基を持つユニットCモノマーを使用することによって、共重合体Dを顔料分散剤として使用した場合、顔料分散剤の顔料への吸着性を高め、顔料分散性を高める。その官能基としては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、第4級アンモニウム塩基、イミダゾール基、ベンゾトリアゾール基、ピリジン基などの窒素含有複素環基の群から選ばれる1種であり、従来公知のモノマーが使用でき、特に限定されない。本発明においては、以上のユニットCモノマーは使用しなくてもよいが、使用する場合には、マクロモノマーとユニットBモノマーとの合計を100質量部としたときに、約5〜200質量部の範囲である。ユニットCモノマーの使用量が上記範囲より少なくても問題はないが、ユニットCモノマーの使用量が上記範囲を超えると、このユニットCモノマーがマクロモノマーと重合反応して、本発明の構造が得られない場合があり、また、マクロモノマーとユニットBの性能発現が低下する場合がある。
【0049】
また、以上の構成からなる本発明の共重合体Dの分子量は、GPC測定のポリスチレン換算において、数平均分子量1,000〜100,000の範囲である。数平均分子量が1,000未満では、共重合体Dを顔料分散剤とした場合、顔料分散液の分散安定性が悪く、樹脂分散液を被覆剤として使用した場合には、被覆物品の堅牢性が悪い。また、数平均分子量が100,000を超えると、共重合体Dを顔料分散剤とした場合、顔料分散液における顔料の分散が不安定で顔料の微粒子分散ができない。
【0050】
また、本発明の分岐型構造の共重合体Dを、水性の顔料分散剤または樹脂分散液に使用する場合、共重合体Dに含まれるマクロモノマーは前記したように酸価が50〜300mgKOH/gであり、共重合体Dのトータルの酸価としては、前記したマクロモノマー部分の酸価と、必要に応じて共重合した酸基を持つユニットCモノマーの酸価を合わせて、50〜250mgKOH/gであり、好ましくは60〜200mgKOH/gである。共重合体Dを水性媒体で使用する場合、酸価が50mgKOH/g未満であると、共重合体Dの親水性が足りず水可溶性や水分散性を示さない可能性がある。また、酸価が250mgKOH/gを超えると、共重合体Dの親水性が高すぎ、顔料分散剤としては適さず、また、被覆剤としては、物品の耐水性が著しく悪くなる。なお、共重合体Dを親水性化させるために、前記したような水酸基、アミノ基、ポリアルキレングリコール鎖などを持つ親水性モノマーを併用してもよい。
【0051】
次に顔料分散剤および樹脂分散液として有用な本発明の共重合体Dの製造方法について説明する。本発明の共重合体Dでは、上記のように、マクロモノマーと、ユニットBとユニットCとからなる重合体の性質が分離した構造であり、すなわち、その各ユニットの性質が異なることに大きな特徴がある。本発明の共重合体Dにおいては、マクロモノマーは溶剤溶解性がよく、ユニットBとユニットCとからなる重合体は、顔料親和性が高く、または液媒体に不溶であるといった、機能が分離されていることに大きな特徴がある。
【0052】
共重合体Dは、前記したようにマクロモノマーを製造した後、溶液重合ではそのままユニットBモノマーおよびユニットCモノマーを添加して溶液重合して得ることができるし、また、マクロモノマーを固形で得た場合は、該マクロモノマーを溶解し得る液媒体中に溶解させて、他のモノマーを添加して溶液重合して得ることができる。共重合体Dを、水性の顔料分散剤として使用する場合には、酸基を持つマクロモノマーを溶解し得る液媒体に溶解して、他のモノマーを添加して重合した後、その酸基をアルカリ性物質にて中和して水への親和性を出し、水系の顔料分散剤とすることができる。この重合方法や使用する液媒体は前記したように従来公知であり、特に限定されない。
【0053】
ここで、その中和に使用するアルカリ性物質としては、アルカリ金属、遷移金属の水酸化物或いは炭酸塩、アンモニア、アミン類があり、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、ヒドラジン、モルホリン、N−メチルモルホリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アニリン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール、アミノメチルプロパノールなどが挙げられ、1種または2種以上を使用する。
【0054】
顔料分散剤として使用する本発明の共重合体Dは、そのマクロモノマーが顔料の分散媒体である液媒体に十分親和性があり、溶解し得るものであり、顔料への親和性を示す構造であることに特徴がある。液媒体が、有機溶剤である場合、ユニットBモノマー由来の芳香環と、前記した官能基が顔料への親和性を高め、顔料吸着性を促し、マクロモノマーが液媒体中に親和性を促すことによって、顔料を微分散でき、保存安定性が良好な顔料分散液を得ることができる。また、液媒体が水性である場合、前記した酸基を中和して得られるマクロモノマーは親水性が高く水に溶解して、マクロモノマーとユニットBとユニットCとからなる共重合体Dが、その疎水性作用によって、また、必要に応じて、前記した官能基を持つモノマーを共重合して、顔料に吸着させて、顔料を微分散でき、保存安定性が良好な顔料分散液を得ることができる。
【0055】
また、溶液重合で得られたマクロモノマー、または前記した固形で取り出したマクロモノマーを液媒体中に溶解させて、次いでその液媒体に不溶な共重合体Dを形成するようなユニットBモノマー、ユニットCモノマーを共重合することによる樹脂分散液について説明する。
【0056】
前記マクロモノマーを液媒体中、例えば、前記したような水や有機溶剤に溶解させて、ユニットBモノマーおよびユニットCモノマーを添加および重合して得られる共重合体Dが、その液媒体中に溶解しないような場合、溶解性を有するマクロモノマーが共重合体Dを液媒体中に数nm〜数μm、好ましくは20nm〜1μm、さらに好ましくは50nm〜500nmの粒子状に分散または乳化させ、樹脂分散液となる。
【0057】
水系の液媒体の樹脂分散液は、水に溶解し得るマクロモノマーとして、前記したような酸基含有モノマー、メタクリル酸ヒドロキシエチルの如き水酸基含有メタクリル酸エステルモノマー、ポリエチレングリコールやポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダムまたはブロックポリマーおよびそのアルキルエーテルまたはアルキルエステルのメタクリレートモノマーなどを単独または共重合したものであり、酸基含有モノマーを使用した場合は、その酸基を前記したアルカリ性物質にて中和して得られるマクロモノマーの存在下に、ユニットBモノマーおよびユニットCモノマーを従来公知の開始剤を使用して重合することによって得ることができる。
【0058】
有機溶剤系を液媒体にする樹脂分散液は、有機溶剤に溶解し得るマクロモノマーは、有機溶剤によって多種多様に存在するので一概には言えないが、その有機溶剤に溶解するように設計されたマクロモノマーの存在下に、ユニットBモノマーおよびユニットCモノマーを従来公知の開始剤を使用して重合して、その共重合体Dがその有機溶剤に溶解しないようにして得ることができる。
【0059】
具体的な一例を挙げると、脂肪族炭化水素系溶剤中で、メタクリル酸2−エチルヘキシルの如き長鎖アルキルメタクリレートモノマーを単独または共重合成分として使用してマクロモノマーを得、その存在下に、スチレンと酢酸ビニルを重合すると、スチレンと酢酸ビニルの共重合体は炭化水素系溶剤に不溶であるので、溶解しているマクロモノマーが共重合して、共重合体Dを粒子として安定化して、非常に安定な樹脂分散液を得ることができる。この場合、マクロモノマーとユニットBモノマーとユニットCモノマーとの比率は、前記の通りであるが、特に樹脂分散液の安定化のためには、マクロモノマーの含有量はモノマー全体の20質量%以上が好ましい。
【0060】
本発明の共重合体Dは、顔料分散剤または樹脂分散型の皮膜形成成分として使用できる。先ず顔料分散剤としての使用を説明する。本発明による共重合体Dを顔料分散剤として使用するには、共重合体Dと顔料と液媒体とを混合し、顔料を分散し、さらに必要であれば分級することによって顔料分散液を得ることができる。本発明による共重合体Dを使用して顔料分散液を得るための顔料としては従来公知の顔料がすべて使用できる。
【0061】
例えば、有機顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、アゾメチンアゾ系、アゾメチン系、アンスラキノン系、ぺリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリン系、イソインドリノン系顔料などやカーボンブラック顔料であり、また、無機顔料としては、体質顔料、酸化チタン系顔料、酸化鉄系顔料、スピンネル顔料などが挙げられ、必要に応じて従来公知の顔料類似構造の顔料誘導体を分散剤として使用し、分散処理して顔料分散液とすることができる。目的により顔料の種類、粒子径、処理の種類を選んで使用することが望ましく、顔料分散液が、隠蔽力を必要とする場合以外は、有機系の微粒子顔料が望ましく、特に透明性を望む場合には0.5μm以上の粒子径を有する顔料を除去し、平均粒子径を0.15μm以下とすることが望ましい。
【0062】
本発明の顔料分散剤と液媒体と顔料とを使用して顔料分散液とするには、顔料を予め顔料分散剤(共重合体D)で処理した後、必要に応じて各種添加剤を加えて、液媒体に分散する方法と、未処理の顔料と顔料分散剤と液媒体、必要に応じて各種添加剤を混合し、分散機で分散処理する方法がある。
【0063】
顔料を予め顔料分散剤で処理した後、液媒体に分散する方法は、顔料、分散剤、液媒体を混合した後に、必要であれば分散機で分散処理し、硫酸、塩酸、または酢酸などの酸を加えて酸析させたり、貧溶剤に析出させたりして、顔料分散剤にて顔料粒子を被覆し、次いで濾過・水洗・乾燥・粉砕により処理顔料を得、これを、アルカリを含む水に投入して、中和し溶解して、または有機溶剤に投入して溶解させ、必要であれば分散機で分散処理をして顔料分散液を得ることができる。
【0064】
また、未処理の顔料と顔料分散剤を樹脂液中で混合し、分散機で分散処理する場合については、本発明の顔料分散剤と顔料、必要に応じて各種添加剤を加え、必要であれば予備混合し、分散機で分散し、顔料分散液となる。本発明において使用できる分散機としては特に制限はなく、従来公知のものが使用できる。例えば、ニーダー、アトライター、ボールミル、ガラスやジルコンなどを使用したサンドミルや横型メディア分散機、コロイドミルなどが使用できる。
【0065】
顔料分散液の顔料濃度は、顔料の種類にもよるが、分散液中で0.5〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%で、分散剤は顔料100質量部当たり5〜500質量部が望ましい。分散液の粘度は1〜50ミリパスカル、好ましくは2〜30ミリパスカルである。特に重要なことは、本発明の顔料分散剤を使用すると、得られる顔料分散液の粘度の経時安定性が優れていることである。
【0066】
顔料分散液には、顔料と分散剤と液媒体以外にも各種の添加剤を加えることができる。例えば、紫外線吸収剤、抗酸化剤などの耐久性向上剤;沈降防止剤;剥離剤または剥離性向上剤;芳香剤、抗菌剤、防黴剤;可塑剤、乾燥防止剤などが使用でき、さらに必要であれば分散助剤、顔料処理剤、染料などを添加することもできる。得られた顔料分散液はそのままでもよいが、遠心分離機、超遠心分離機または濾過機で僅かに存在するかも知れない粗大粒子を除去することは、顔料分散液の信頼性を高める上で好ましい。
【0067】
以上のようにして本発明の顔料分散剤を使用して、顔料分散液を得ることができる。これらの顔料分散液は、従来公知の塗料、インキ、コーティング剤、文具、トナーの着色剤に使用することができる。具体的には水性塗料、油性塗料、グラビアインキ、水性フレキソインキ、インクジェットインキ、文具用インキ、筆記具用インキ、コーティング剤、CF用カラー、湿式トナーなどの着色剤として使用することができる。その添加量は顔料濃度により一概にいえないが、それぞれ要求される着色濃度に合わせて使用することができる。
【0068】
また、本発明の共重合体Dからなる樹脂分散液は、塗料、インキ、コーティング剤、文具、トナーに添加して使用することができ、それぞれの従来公知の塗料、インキ、コーティング剤、文具、さらに具体的には、例えば、塗料、オフセットインキのOPニス、グラビアインキのバインダー、インクジェットインキ、文具用インキ、コーティング剤、カラーフィルター用アルカリ剥離性レジスト、湿式トナーなどに使用する皮膜成分として、または艶出しや艶消しのための添加剤などとして使用することができ、皮膜に高密着性、高グロス性を与える。また、水性の樹脂分散液を、エマルションとして使用する場合、乳化剤としての活性剤を含まないので、形成される皮膜の耐水性が非常に良好である。上記樹脂分散液を各用途にそれぞれに添加する量は、一概に決定はできないが、好ましくは全量の3〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。
【0069】
また、必要に応じて、本発明の顔料分散剤を使用して得られる顔料分散液は、従来公知のそれぞれの上記用途の着色剤を使用することができ、従来公知の顔料、染料、着色ポリマービーズ、マイクロカプセル化色素などと併用できる。例えば、顔料の例としては、これらの顔料、染料などを従来公知の方法で分散し、分散助剤として、従来公知の界面活性剤や高分子分散剤を使用し、顔料を予め微分散化した高濃度カラーを得て、それぞれの用途に着色剤として使用することが望ましい。
【0070】
また、前記樹脂分散液を前記用途に対して使用する場合、さらに皮膜の各種耐性、耐水性や耐溶剤性などを向上させるため、従来公知の架橋剤を使用することができ、特に限定はされないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、酸無水物系架橋剤が使用され、本発明の顔料分散剤や樹脂分散液である重合体の固形分に対して、上記架橋剤を固形分として1〜50質量%、好ましくは3〜20質量%、さらに好ましくは5〜10質量%使用することができる。また、上記用途に対して、添加剤として、従来公知の消泡剤、防腐剤、レベリング剤、増粘剤、保湿剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを1種または2種以上使用することができる。
【実施例】
【0071】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは質量基準である。
【0072】
[合成例1]一般式(2)の化合物−1の合成
攪拌機、逆流コンデンサーおよび温度計を取り付けた2リッターのセパラブルフラスコに、ジメチルスルホキシド500部、水170部、アクリル酸エチル200部、パラホルムアルデヒド(純度80%)72.5部およびビアザビシクロ(2,2,2)オクタン15.6部を仕込み、100℃に加温して4時間反応させた。仕込み時は内容物は不均一であったが、60℃付近で均一透明となった。次いで、希塩酸を500部添加して、エーテル200部で2回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次にエバポレーターにて濃縮後、減圧にて蒸留した。得量で193部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルを得、IRとNMRにて生成物を確認し、GCにて純度98.7%を確認した。
【0073】
次いで同様の装置をつけた500mlの3口三角フラスコに、塩化メチレン200部および2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル48.8部を加え、−5℃に冷却した。次いで塩化メチレン50部に溶解させた三臭化リン50部を1時間かけて滴下し、次いでその温度で1時間攪拌し、さらに30℃で3時間反応させた。
【0074】
次いで0.5%水酸化ナトリウム水溶液200部で2回洗浄し、さらに飽和食塩水200部で洗浄して、上記と同様に乾燥、濃縮、減圧蒸留し、得量で48部の2−(ブロモメチル)アクリル酸エチルを得、IRとNMRにて生成物を確認し、GCにて純度99.1%を確認した。これを一般式(2)の化合物−1とする。
【0075】
[合成例2]一般式(2)の化合物−2の合成
上記と同様の製造装置を使用して、合成例1で得た一般式(2)の化合物−1を57.9部、塩化メチレン100部およびトリエチルアミン33.3部を仕込んで−5℃に冷却した。次いでt−ブチルチオール29.7部と塩化メチレン50部の混合物を1時間かけて滴下し、次いでその温度で1時間反応させ、さらに50℃で3時間反応させた。これに水200部を加え洗浄し、さらに希塩酸200部を加え洗浄し、飽和食塩水で洗浄した。次いで合成例1と同様に処理して、得量で39.9部の2−(t−ブチルチオメチル)アクリル酸エチルを得、IRとNMRにて生成物を確認し、GCにて純度97.6%を確認した。これを一般式(2)の化合物−2とする。
【0076】
[合成例3]一般式(2)の化合物−3、−4の合成
攪拌機、逆流コンデンサーおよび温度計を取り付けた2リッターのセパラブルフラスコに、ジメチルスルホキシド100部、水170部、ジプロピレングリコールジアクリレート24.2部、パラホルムアルデヒド(純度80%)3.75部およびビアザビシクロ(2,2,2)オクタン1.56部を仕込み、100℃に加温して6時間反応させた。
【0077】
次いで、希塩酸を500部添加して、エーテル200部で2回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次にエバポレーターにて濃縮した。粗得量で24.7部のジプロピレングリコールビス2−(ヒドロキシメチル)アクリレートを得、IRとNMRにて生成物を確認し、プロピレングリコールのメチル基と不飽和結合の比率より純度を換算したところ、ほぼ100%であった。
【0078】
次いで同様の装置をつけた500mlの3口三角フラスコに、塩化メチレン100部およびジプロピレングリコール2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル15.1部を加え、−5℃に冷却した。次いで塩化メチレン10部に溶解させた三臭化リン9.0部を1時間かけて滴下し、次いでその温度で1時間攪拌し、さらに30℃で3時間反応させた。次いで0.5%水酸化ナトリウム水溶液200部で2回洗浄し、さらに飽和食塩水200部で洗浄して、上記と同様に乾燥、濃縮し、粗得量で18.4部のジプロピレングリコールビス2−(ブロモメチル)アクリレートを得、IRとNMRにて生成物を確認し、前記同様に純度を確認したところ、ほぼ100%であった。これを2官能性の一般式(2)の化合物−3とする。
【0079】
上記のジプロピレングリコールジアクリレートに変えて、ペンタエリスリトールトリおよびテトラアクリレートの混合物を使用して同様に一般式(2)の化合物を得た。これを3〜4官能性の一般式(2)の化合物−4とする。
【0080】
[重合例1]マクロモノマー−1、−2の合成
攪拌機、逆流コンデンサー、温度計、窒素導入管および滴下装置を取り付けた反応装置に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル100部およびエタノール100部を仕込んで、78℃に加温した。別容器にメタクリル酸メチル60部、メタクリル酸60部、メタクリル酸ブチル80部、一般式(2)の化合物−1を8部および重合開始剤(V−601、和光純薬社製)を3部溶解したモノマー混合液を2時間で滴下した。滴下後1部のV−601を添加し、次いで4時間重合した。この樹脂溶液をマクロモノマー−1とする。GPCによる数平均分子量は4,800であった。また、残留モノマー臭はなく、さらにこの固形分を測定したところ50.3%であり、殆どのモノマーが重合したことが確認された。また、このマクロモノマーの酸価は195.7mgKOH/gである。
【0081】
また、このマクロモノマー溶液の一部を水に析出させ、さらにエタノールに溶解、水に析出を繰り返して精製し、NMRを測定したところ、5.9、6.3ppmに不飽和結合由来のケミカルシフトを確認した。また、IRにおいても1680cm-1に不飽和結合を確認した。また、この析出させた樹脂をマクロモノマー−2とする。
【0082】
[重合例2]マクロモノマー−3、−4、−5、−6の合成
重合例1と同様の反応装置に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル150部およびエタノール150部を仕込んで、75℃に加温した。別容器にメタクリル酸メチル30部、メタクリル酸30部、メタクリル酸ブチル40部、一般式(2)の化合物−1を所定量(表1)およびV−601を1.5部溶解したモノマー混合液を2時間で滴下した。滴下後0.5部のV−601を添加し、次いで4時間重合した。この一般式(2)の化合物−1の量を変えてマクロモノマーを得、これを表1に纏めた。これらはすべて精製してNMRにて不飽和結合を確認した。
【0083】

また、このうち、マクロモノマー−5を析出させ、固形で得たものをマクロモノマー−6とする。
【0084】
[重合例3]マクロモノマー−7、−8、−9、−10の合成
重合例1と同様の反応装置に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200部を仕込んで、80℃に加温した。別容器に表2に示す一般式(2)の化合物−2を含むモノマー組成物およびV−601を1.5部溶解したモノマー混合液を2時間で滴下した。滴下後0.5部のV−601を添加し、次いで4時間重合した。この一般式(2)の化合物−2の量を変えてマクロモノマーを得、これを表2に纏めた。これらは同様にNMRで不飽和結合を確認した。
【0085】

【0086】
[重合例4]マクロモノマー−11の合成
重合例1と同様の反応装置に、アイソパーG200部を仕込んで、80℃に加温した。別容器にメタクリル酸2−エチルヘキシル80部、メタクリル酸ラウリル120部、一般式(2)の化合物−1を5部およびアゾビスイソブチロニトリルを1.5部混合溶解して、このモノマー混合液を2時間で滴下した。滴下後アゾビスイソブチロニトリル0.5部を添加し、次いで4時間重合した。同様にしてこれをマクロモノマー−11とする。GPCによる数平均分子量5,500であった。
【0087】
[重合例5]マクロモノマー−12、−13の合成
重合例1の一般式(2)の化合物−1に代えて、2官能性の一般式(2)の化合物−3を使用して得られたマクロモノマー溶液をマクロモノマー−12とする。数平均分子量は8,300であった。また、重合例2の一般式(2)の化合物−2に代えて、3〜4官能性の一般式(2)の化合物−4を使用して得られたマクロモノマー溶液をマクロモノマー−13とする。数平均分子量は7,200であった。
【0088】
[比較例1]比較重合体−1、−2の合成
重合例1と同様の装置を使用して、ジエチレングリコールモノブチルエーテル100部およびエタノール100部を仕込んで、78℃に加温した。別容器にメタクリル酸メチル60部、メタクリル酸60部、メタクリル酸ブチル80部、ラウリルチオール8部およびV−601を3部溶解したモノマー混合液を2時間で滴下した。滴下後1部のV−601を添加し、次いで4時間重合した。この樹脂溶液を、本発明の一般式(2)の化合物を使用せず、α−置換メチルアクリル酸エステル基を持たない比較重合体−1とする。GPCによる数平均分子量は4,400であった。また、この樹脂溶液の一部を水に析出させた樹脂を比較重合体−2とする。
【0089】
[比較例2]比較重合体−3の合成
重合例1と同様の装置を使用して、ジエチレングリコールジメチルエーテル100部を仕込んで、78℃に加温した。別容器にメタクリル酸メチル60部、メタクリル酸60部、メタクリル酸ブチル80部、ヒドロキシエチルチオール8部およびV−601を3部溶解したモノマー混合液を2時間で滴下した。滴下後1部のV−601を添加し、次いで4時間重合した。次いで、メタクリル酸イソシアナトエチル9.2部を添加し末端の水酸基を反応させ、末端にメタクリル酸基を導入した。この樹脂溶液を、本発明の一般式(2)の化合物を使用せずα−置換メチルアクリル酸エステル基を持たず、末端にメタクリル酸基を持つ比較重合体−3とする。GPCによる数平均分子量は4,600であった。また、メタノール/水にて析出させ、NMRを測定したところ、5.6および6.1ppmに不飽和結合が確認できた。
【0090】
[実施例1]顔料分散剤−1
重合例1と同様の装置を使用して、マクロモノマー−1(溶液)80部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル30部およびエタノール30部を仕込んで、82℃に加温した。別容器にスチレン45部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル15部および重合開始剤(パーブチルO、日本油脂社製)1.6部を混合して、モノマー溶液を作成した。そのモノマー溶液を1時間かけて滴下し、次いでその温度で6時間重合した。これに水酸化カリウム7.9部および水92.1部の溶液を添加したところ、析出せず、青白色微濁透明の水溶液を得た。
【0091】
上記の共重合体においては、マクロモノマーと他のモノマーとの質量比が40/60であり、酸価が78.8mgKOH/gである。この分子量を測定したところ、可視部においては、マクロモノマー−1由来の分子量分布ピークが殆どなくなり、より高分子量の1つのピークが現れ、紫外部(測定波長254nm)では、マクロモノマー−1では紫外部の分子量分布ピークはα−置換メチルアクリル酸エステル残基由来のピークが極微小現れていたが、可視部と同様の分子量の分布ピークが現れており、数平均分子量12,000、重量平均分子量26,300である重合体を得た。また、残留モノマー臭はなく、固形分34.2%であり、殆どのモノマーが重合していることが確認された。これを顔料分散剤−1とする。また、これを水で10倍希釈したところ、同様に青白色微濁透明であった。
【0092】
[比較例3]比較重合体−4の合成
マクロモノマー−1の代わりに、不飽和結合を持たない比較重合体−1を使用した以外は実施例1と同様に重合を行った。重合液に水酸化カリウム水溶液を添加したところ、系は著しく白濁し、一部析出し、放置すると2層分離した。また、これをGPC測定したところ、可視部において、比較重合体−1の分子量分布ピークが確認され、その波形はスチレンとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルの共重合体の分子量分布ピークが重なり合い、2ピークであり、また、紫外部ではそのスチレン/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル部分のピークしか確認できなかった。すなわち、その水溶液化と分子量分布の違いから、この比較例は、比較重合体−1がスチレン/メタクリル酸2−ヒドロキシエチルと反応せず混合物であることを示しており、よって、実施例1のα−置換メチルアクリル酸エステル残基を持つマクロモノマーと他のモノマーとからなる本発明の重合体においては、マクロモノマーがその重合体に取り込まれていることを示している。
【0093】
[実施例2]顔料分散剤−2、−3、−4
重合例1と同様の装置を使用して、マクロモノマー−3および−4(溶液)を表3に記載の下記モノマーとの固形分比率(X/Y)で仕込んで、80℃に加温した。別容器にスチレン/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル=2/1、パーブチルOをモノマーの2%を混合したモノマー溶液を表3に記載の固形分比率(X/Y)で1時間かけて滴下し、次いでその温度で6時間重合した。これにその酸基を中和するのに必要なトリエタノールアミンまたはアンモニアを最終の固形分が30%になるような量の水に溶解して添加し水溶液化した。その結果を表3に記載した。
【0094】

【0095】
これらの顔料分散剤−2〜−4は、顔料分散剤−1と同様なGPCピークを示し、使用した他のモノマー量に応じて、分子量が大きくなっていることが確認され、これらの顔料分散剤−2〜−4がブロックまたはT字の分岐型の構造であることを示唆している。
【0096】
[比較例4]比較重合体−5の合成
重合例1と同様の装置を使用して、重合例1と同様にして、マクロモノマー−1(溶液)の代わりに比較重合体−3(溶液)を使用して実施した。これは比較重合体−3とスチレン/メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの重合体の質量比が6/4である。水酸化カリウムの水溶液を添加したところ、青白色半透明状乳化液を得た。比較例3とは違い、析出がなく水溶液化したので、比較重合体−3がスチレン/メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの重合体に取り込まれていることが示唆された。これをGPCで測定したところ、比較重合体−3であるピークと、比較重合体−3とスチレン/メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの重合体と考えられるピークの2ピークの混合物が確認された。この比較重合体−3は、一部がスチレン/メタクリル酸2−ヒドロキシエチルに取り込まれ重合したが、未反応の比較重合体−3が存在していることがわかった。
これに対して本発明の顔料分散剤においては、すべての成分が反応に寄与していることが示されているので、前記実施例の重合方法は、本発明の顔料分散剤や樹脂分散液を得るのに非常に優れていることがわかった。
【0097】
[実施例3]顔料分散剤−5、−6
重合例1と同様の装置を使用して、マクロモノマー−5(溶液)を200部仕込んで、82℃に加温した。別容器にビニルトルエン45部、メタクリル酸ジメチルアミノエチル5部およびパーブチルOの1部を混合してモノマー溶液を作成した。そのモノマー溶液を1時間かけて滴下し、次いでその温度で6時間重合した。これに水酸化カリウム9.8部および水40.2部の溶液を添加したところ、析出せず、青白色微濁透明の水溶液を得た。これは、マクロモノマーと他のモノマーの質量比が50/50であり、酸価が98.5mgKOH/gの顔料分散剤である。この分子量を測定したところ、ピークの形状などは前記と同様であり、数平均分子量5,500である重合体を得た。また、残留モノマー臭はなく、固形分32.5%を得た。殆ど重合していることが確認された。これを顔料分散剤−5とする。また、これを水で10倍希釈したところ、同様に青白色微濁透明であった。
【0098】
同様に、マクロモノマー−5(溶液)に代えて、マクロモノマー−12(溶液)を使用した以外は同様に重合を行った。このマクロモノマー−12は、多官能性であるにもかかわらず、系内でゲル化することなく重合が可能であり、マクロモノマーと他のモノマーとの質量比が50/50であり、酸価が98.5mgKOH/gの高度に分岐した顔料分散剤である。ゲル化しないことから、このマクロモノマー−12は、本発明に有用であり、分岐状の顔料分散剤を得ることができることを示唆している。この分子量を測定したところ、ピークの形状などは前記と同様であり、数平均分子量12,300である。また、残留モノマー臭はなく、固形分31.9%を得た。殆どのモノマーが重合していることが確認された。これを顔料分散剤−6とする。また、これを水で10倍希釈したところ、同様に青白色微濁透明であった。
【0099】
[実施例4]樹脂分散液−1、−2
重合例1と同様の装置を使用して、固形であるマクロモノマー−2を40部、水240.7部およびアンモニア水9.3部を仕込んで、78℃に加温して溶解させた。次いで、系に過硫酸カリウム0.5部を入れ溶解した後、スチレン30部およびアクリル酸ブチル30部の混合物を1時間かけて滴下し、その後その温度で3時間重合した。系が白濁して、黄味がかった白色半透明の分散液となった。この分子量を測定したところ、数平均分子量26,000であった。これを樹脂分散液−1とする。また、マクロモノマー−2の代わりに固形であるマクロモノマー−6を使用して同様に行ったところ、樹脂分散液−1より白っぽい乳化状の分散液を得た。この分子量を測定したところ、ピーク形状は1ピークであり、数平均分子量32,500であった。これを樹脂分散液−2とする。
【0100】
[比較例5]比較重合体−6の合成
重合例1と同様の装置を使用して、マクロモノマー−2の代わりに、比較重合体−2を使用して、実施例4と同様に重合した。実施例4と同様に白濁して、青白色半透明の分散液となった。この分子量を測定したところ、比較重合体−2のピークとスチレン/アクリル酸ブチルの重合体からなる混合のピークが確認された。数平均分子量31,000であった。これを比較重合体−6とする。
樹脂分散液−1、−2および比較重合体−6を水にて2倍に希釈して、攪拌しながらイソプロピルアルコール(IPA)を少しずつ添加したところ、比較重合体−6では、樹脂が析出してきて、溶剤希釈性が悪いものであった。樹脂分散液−1および−2では、IPAで希釈しても樹脂の析出はなく安定なものであった。これは比較重合体−6では、その保護コロイドとして作用している比較重合体−2がスチレン/アクリル酸ブチルに結合しておらず、水に溶解している状態であり、IPAが入ることによって析出してしまったためと考えられる。
【0101】
[実施例5]顔料分散剤−7、−8、−9、−10、−11
重合例1と同様の装置を使用し、マクロモノマー−7〜−10、−13を溶媒中で、固形分40%になるように追加の溶媒を加え、開始剤のパーブチルO(モノマーの2%)とモノマー混合液を滴下後、78℃または90℃で所定時間重合を行い、油性の顔料分散剤−7、−8、−9、−10、−11を得た。これを表4に纏めた。なお、表中のX/Yは、マクロモノマー/他のモノマーの質量比である。
【0102】

【0103】
[重合例6]樹脂分散液−3の合成
重合例1と同様の反応装置に、アイソパーG100部とマクロモノマー−11(溶液)を100部仕込んで、80℃に加温した。別容器にスチレン40部、酢酸ビニル35部、N−ビニルピロリドン15部およびアゾビスイソブチロニトリルを1.5部混合溶解して、このモノマー混合液を2時間で滴下した。滴下後アゾビスイソブチロニトリル0.5部を添加し、次いで4時間重合した。白濁した非水の樹脂分散液−3を得た。GPCによる数平均分子量は31,200であり、マクロモノマー−11由来のピークは確認されなかった。
【0104】
[応用例1]インクジェットインキへの応用
実施例1の顔料分散剤−1に水を加え樹脂分30%とした溶液150部、エチレングリコール40部および純水160部をよく混合し、これに黒色顔料(Raven 2500 Powder(U)、コロンビアカーボン社製)150部を攪拌しながら混合してミルベースを調製した。次にこのミルベースを、横型メディア分散機を用いて十分に分散させた後、このミルベースに純水250部を添加して顔料分20%の顔料分散液を得た。次にこの分散液100部に対して、エチレングリコール51.0部、グリセリン33.0部、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル1部、界面活性剤0.8部および濃度40%に調整した顔料分散剤−1の水分散液を15部および純水197部を加えて攪拌し、これを遠心分離処理(8,000rpm、20分)して粗大粒子を除去した後、5μmのメンブランフィルターでろ過を行い、黒色IJインキを得た。
【0105】
また、それぞれイエロー、シアンおよびマゼンタについても同様の操作を行い、それぞれイエローIJインキ、シアンIJインキおよびマゼンタIJインキを得た。イエロー顔料についてはセイカファーストイエローA3(大日精化工業社製)、ブルー顔料についてはシアニンブルーKBM(大日精化工業社製)、そしてマゼンタ顔料についてはクロモファインマゼンタ6887(大日精化工業社製)を使用した。上記で得られたIJインキをインクカートリッジに充填し、インクジェットプリンターによりインクジェット用光沢紙Photolike QP(コニカ社製)にベタ印刷を行った。1日、室内に放置後、マクベスRD−914(マクベス社製)を用いて光学濃度を、色彩色差計(CR−321、ミノルタ社製)を用いて彩度を、micro-TRI-gloss(BYK社製)を用いて20°グロスをそれぞれ測定した。また、縦、横の直線を印刷し、ヨレの度合いを目視により観察し、印字品質の評価とした。また、光沢紙耐擦過性として、この印字面を指でこすり、グロス低下があるか確認した。これを表5に纏めた。
【0106】

【0107】
顔料分散剤−1を使用して以上のようにして得られたIJインキの印画状態は非常に高グロスであり、彩度が非常に大きいことを示した。また、顔料分散剤−1の代わりに顔料分散剤−3、−5、−6、−7を使用した場合にも同様の効果が得られた。
【0108】
[応用例2]文具への応用
顔料分散剤−1を水で希釈し40%とし、該溶液50部にモルホリン30部、エチレングリコール50部、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩30部、およびフタロシアニン顔料ペースト265部(顔料分90部)を加え、サンドミルにて3時間分散し、次に水308部、エチレングリコール131部、グリセリン36部およびチオ尿素100部を加えて顔料濃度を9%にし、さらに10分間分散させ、青色の水性顔料分散液を得た。さらにこの分散液を超遠心分離機にかけ、分散させ得なかった粗粒子を除去し8.7%の顔料含有率を有し、粘度4.3ミリパスカル、平均粒子径98nmの水性顔料分散液を得た。
【0109】
この分散液を、中芯とプラスチック成形で作ったペン先を有するプラスチック製のサインペンに詰めて試験した。このサインペンを使用してポリエチレン性フィルムに筆記したところ、隠蔽力があり、着色力も大きく、はじきがなく良好に筆記できた。また、その筆記文字を水に漬けたが筆記文字の流れや剥離は起きなかった。また、筆記したものをフェードメーターにて100時間、500時間、耐光性試験を行った結果、特に変化はなく耐光性が良好であることがわかった。また、上記顔料分散液を50℃の恒温層にて1ヶ月放置し保存安定性試験を行ったところ、粘度の増減、粒子径の増大などがおこらず、保存安定性が非常に良好であることがわかった。また、顔料分散剤−1の代わりに顔料分散剤−2、−3、−4および−5を使用した場合にも同様の効果が得られた。
【0110】
[応用例3]水性塗料への応用
顔料分散剤−4を400部、水を300部およびシアニンブルーを300部を陶製のボールミルに仕込み、24時間分散し水性塗料用分散液とした。次いでウォーターゾールS−126を100部、ウォーターゾールS−695を5部、ウォーターゾールS−683IMを5部および水を100部配合して攪拌し、上記分散液を30部加えて攪拌し、塗料−1とした。この塗料−1をアルミ板に塗布し、140℃で20分焼き付けたところ、透明で奇麗な青色の塗膜が得られた。この塗板を沸騰水に30分浸漬したが塗膜の白化、脹れおよび剥離を起こさなかった。また、塗膜の発色性、塗膜のグロスは良好であった。また、顔料分散剤−4の代わりに顔料分散剤−3および−5を使用した場合にも同様の効果が得られた。
【0111】
[応用例4]水性グラビアインキへの応用
酸化チタン白色顔料40部、スチレン−マレイン酸モノブチルエステル(40:60)共重合体(平均分子量約3,500)10部、イソプロピルアルコール10部、水38.5部、顔料分散剤−3を1部およびシリコーン消泡剤0.5部の配合物をサンドミルで2回練肉分散し、白色顔料ベースカラーを作成した。この白色顔料ベースカラー50部に前記樹脂分散液−1(固形分40%)30部、微粉末無水珪酸0.5部、ポリエチレンワックス0.5部、シリコーン消泡剤0.1部、オキサゾリン架橋剤(固形分30%)3部および水8.9部を配合し、サンドミルで混合、均一とした後、アンモニア水でpHを8に調整した。厚さ20μmのナイロンフィルムをコロナ放電処理し、上記で得られた白色印刷インキをNo.4バーコーターで塗布、乾燥後、80℃にて1時間熟成した。次いで、セロハンテープを用いて印刷インキ層の接着強度試験を実施した結果、接着性良好な結果を示した。
【0112】
[応用例5]カラーフィルター用カラーへの応用
アクリル樹脂ワニス(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル=70/15/15のモル比で重合させたもの:分子量12,000、酸価100mgKOH/g、固形分40%)50部に、カラーフィルター用顔料として、PR(C.I.ピグメントレッド)254、PG(C.I.ピグメントグリーン)36、PY(C.I.ピグメントイエロー)139、PY150、PB(C.I.ピグメントブルー)15:6およびPV(C.I.ピグメントバイオレット)23を準備し、それぞれの顔料を15部、前記顔料分散剤−8を11.5部および溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)(以下PMAと略す。)を25部配合し、プレミキシングの後、横型ビーズミルで分散し、カラーレジスト用の各色のベースカラーを得た。得られた各色の顔料分散液の顔料の平均粒子径を測定したところ、平均粒子径は凡そ25〜50nmであり、微細化された顔料は充分に微分散された。また、保存において、45℃で1週間放置しても粘度変化は±5%であった。本発明の顔料分散剤は良好な顔料分散性を与えた。次いで、RGBのカラーフィルターを作製するために、下記の表6の配合処方によりR(レッド)、G(グリーン)およびB(ブルー)の感光性顔料分散液を得た。
【0113】

【0114】
シランカップリング剤処理を行ったガラス基板をスピンコーターにセットし、Rのカラーフィルター用感光性顔料分散液を最初300rpmで5秒間、次いで1,200rpmで5秒間の条件でスピンコートした。次いで80℃で10分間プリベークを行い、モザイク状のパターンを有するフォトマスクを密着させ、超高圧水銀灯を用い100mJ/cm2の光量で露光を行った。次いで専用現像液および専用リンスで現像および洗浄を行い、ガラス基板上に赤色のモザイク状パターンを形成させた。
【0115】
引き続いて緑色モザイク状パターンおよび青色モザイク状パターンをGおよびBのカラーフィルター用感光性顔料分散液を用いて上記の方法に準じて塗布および焼き付けを行って形成し、RGBのカラーフィルターを得た。得られたカラーフィルターは優れた分光カーブ特性を有し、耐光性、耐熱性などの堅牢性に優れ、また、光の透過性にも優れた性質を有し、液晶カラーディスプレー用カラーフィルターとして優れた性質を示した。また、同様に、顔料分散剤−9〜−11を使用しても同様の高顔料分散性を与えた。
【0116】
[応用例6]湿式トナーへの応用
前記顔料分散剤−8の5部を脂肪族炭化水素系溶媒であるアイソパーH40部に加えて溶解し、そこへフタロシアニンブルー顔料10部を加え、ガラスビーズを加えてペイントシェーカーにて20時間振とうして分散して、次いで前記樹脂分散液−3を53.3部添加して、攪拌混合して青色濃厚着色液を調製した。この濃厚着色液30部を、アイソパーG970部中に加えて分散させてシアン色電子写真湿式現像剤を得た。上記で得た濃厚着色液および電子写真湿式現像剤は分散安定性に優れ、希釈された状態でも顔料の沈降が少なく、また、沈降したものも容易に再分散させることができた。上記で得たシアン色電子写真湿式現像剤を用いて湿式電子写真複写機にて複写したところ、画像濃度が高く、鮮明で、滲みや地汚れの少ないシアン色複写画像を得た。この画像は、耐光性などの諸物性にも優れた堅牢性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば、本発明の共重合体を顔料分散剤として使用して顔料を分散することによって、非常に良好な分散効果および分散液の保存安定性を与える高微分散した顔料分散液を得ることができる。また、本発明の共重合体を皮膜形成に使用すると良好な皮膜が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される基の少なくとも1個を末端に有するメタクリル重合体ユニット(A)と芳香族ビニルモノマーユニット(B)とを含み、ユニット(A)とユニット(B)との質量比率(A:B)が、A:B=5〜95:95〜5であることを特徴とする共重合体(D)。

(式中のRは、水素原子またはn価のエステル残基であり、nは1〜4の数であり、Yはメタクリル重合体である。)
【請求項2】
さらにユニット(A)およびユニット(B)以外のモノマーユニット(C)を含む請求項1に記載の共重合体(D)。
【請求項3】
ユニット(A)が、下記一般式(2)で表される化合物とメタクリル系モノマーとの共重合体からなる請求項1に記載の共重合体(D)。

(式中のXは、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホキシド基、アリールスルホキシド基、ベンジルオキシ基、アルキルベンジルオキシ基であり、Rは、水素原子またはn価のエステル残基であり、nは1〜4の数である。)
【請求項4】
ユニット(B)モノマーが、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルジメチルベンゼン、ビニルエチルベンゼンおよびビニルナフタレンの少なくとも1種である請求項1に記載の共重合体(D)。
【請求項5】
ユニット(C)モノマーが、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、第4級アンモニウム塩基および窒素含有複素環基の群から選ばれる官能基を有するモノマーである請求項2に記載の共重合体(D)。
【請求項6】
ユニット(A)が、アルカリ性物質によって中和される酸基を有し、その酸価が50〜300mgKOH/gである請求項1に記載の共重合体(D)。
【請求項7】
液媒体中に分散または乳化している請求項6に記載の共重合体(D)。
【請求項8】
酸基が、カルボン酸基、スルホン酸基および/またはリン酸基である請求項6に記載の共重合体(D)。
【請求項9】
請求項1に記載の共重合体(D)からなることを特徴とする顔料分散剤。
【請求項10】
顔料が、請求項9に記載の顔料分散剤によって分散されていることを特徴とする顔料分散液。
【請求項11】
着色剤として請求項10に記載の顔料分散液を含有することを特徴とする塗料、インキ、コーティング剤またはトナー。

【公開番号】特開2008−214530(P2008−214530A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55302(P2007−55302)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】