説明

内燃エンジン用耐老化性触媒物品

パラジウムを含む触媒物品、ならびに関連する調製および使用の方法が開示される。基材上に形成される第1の触媒層であって、無セリア酸素貯蔵成分上に含浸されたパラジウムおよび耐熱金属酸化物上に含浸された白金を含む、第1の触媒層と、酸素貯蔵成分上に含浸された白金およびジルコニア被覆またはイットリア被覆アルミナ上に含浸されたロジウムを含む、第1の触媒層上に形成される第2の触媒層と、を備える、触媒物品が開示される。触媒物品のパラジウム成分は、他の白金族金属成分と比較してより高い比率で存在する。触媒物品は、特に希薄濃厚老化後に、排ガス中のNOxの還元を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する相互参照]
本出願は、35 USC § 119(e)の下、2009年2月20日に出願された米国仮出願第61/154,053号に対する優先権の利益を主張し、当該出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含有する気体流の処理に有用な触媒物品、触媒物品を使用して気体流を処理する方法、および触媒物品を製造する方法に関する。より具体的には、本発明は、内燃エンジンによって生成される排気を処理するための触媒物品および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
内燃エンジンの排ガスは、空気を汚染する炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物(NOx)等の汚染物質を含有する。未燃炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物汚染物質の放出基準が各国政府によって設定されており、古車と同様に新車によっても準拠されなければならない。そのような基準を満たすために、三元触媒(TWC)を含有する触媒コンバータが、内燃エンジンの排ガスラインに設置されてもよい。排ガス触媒の使用は、空気の質の著しい向上に寄与している。TWCは、最も一般に使用される触媒であり、COの酸化、未燃炭化水素(HC)の酸化、およびNOxのN2への還元という3つの機能を提供する。通常、TWCは、1つまたは複数の白金族金属(PGM)を利用して、同時にCOおよびHCを酸化し、NOx化合物を還元する。TWCの最も一般的な触媒成分は、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、およびパラジウム(Pd)である。
【0004】
TWC触媒は、化学量論的条件(空気/燃料比、λ=1)、またはそれに近い条件でエンジンが作動するときに最大限に機能する。しかしながら、実際の使用において、エンジンは、作動サイクル中の様々な段階において、λ=1の両側で作動しなければならない。例えば、十分な作動条件下、例えば、加速中、排ガス成分は還元的であり、触媒表面上で酸化反応を行うことがより困難になる。この理由で、TWCは、作動サイクルの希薄部分中に酸素を貯蔵し、作動サイクルの濃厚部分中に酸素を放出する成分を組み込むように開発された。この成分は大部分の市販のTWCにおいてセリア系である。あいにく、セリアは、Pd等の貴金属触媒が添加される場合、例えば、800℃以上の高温に曝されると、表面積を失う傾向があり、触媒の全体性能が低下する。したがって、混合酸化物は、セリア単独よりも表面積の消失に対する安定性が高いため、セリア−ジルコニア混合酸化物を酸素貯蔵成分として使用するTWCが開発された。TWC触媒は、一般に、支持体、酸素貯蔵成分、およびPGMを含有するウォッシュコート組成物として配合される。そのような触媒は、化学量論的状態と比較して、希薄および濃厚の両方の特定範囲の作動条件に対して有効となるように設計される。
【0005】
小型内燃エンジン、通常、2ストロークおよび4ストローク火花点火エンジンを使用して、多様な機械、例えば、ガソリンエンジン駆動芝刈り機、チェーンソー、リーフブロワー、ストリングカッター、電動スクーター、オートバイ、原動機付き自転車等に動力を提供する。そのようなエンジンは、触媒放出処理のための特定の厳しい環境を提供する。これは、小型エンジンが、高温で作動し、排ガスが、高濃度の未燃燃料および未消費酸素を含有するためである。
【0006】
TWC触媒(例えば、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、およびイリジウム)中の白金族金属は、通常、高表面積酸化物支持体、例えば、高表面積アルミナ被覆、または酸素貯蔵成分上に蒸着(沈澱)される。支持体は、適切な担体または基材、例えば、耐熱セラミックまたは金属ハニカム構造を含むモノリシック、または適切な耐熱物質の球形もしくは短い突出セグメント等の耐熱粒子上で運ばれる。TWC触媒基材は、金網、通常は金属金網であってもよく、これは特に小型エンジンに有用である。
【0007】
耐熱金属酸化物、例えば、アルミナ、バルクセリア、ジルコニア、αアルミナ、および他の物質を、触媒物品の触媒成分の支持体として使用することができる。「γアルミナ」または「活性化アルミナ」とも呼ばれるアルミナ支持物質は、通常、60平方メートル/グラム(「m2/g」)を超え、多くの場合最大約200m2/g以上になるBET表面積を呈する。そのような活性アルミナは、通常、アルミナのγおよびδ相の混合物であるが、相当量のη、κ、およびθアルミナ相を含有してもよい。他の耐熱金属酸化物支持体の多くは、活性化アルミナよりもBET表面積が著しく低いという短所を有するが、この短所は、得られる触媒の優れた耐久性によって相殺される傾向がある。上述されるような酸素貯蔵成分は、TWCのPGM成分の支持体として使用されてもよい。
【0008】
作動しているエンジンにおいて、排ガスの温度は、1000℃に達し得、そのような上昇温度は、特に蒸気の存在下で、活性化アルミナまたは他の支持物質を相転移により熱老化させ、体積収縮を伴い、それによって、触媒金属は、収縮した支持媒体中で閉塞状態になり、曝露されている触媒表面積の消失および対応する触媒活性の減少を伴う。アルミナ支持体は、ジルコニア、チタニア、アルカリ土類金属酸化物、例えば、バリア、カルシア、もしくはストロンチア、または希土類金属酸化物、例えば、セリア、ランタナ、および2つ以上の希土類金属酸化物の混合等の物質の使用によって、そのような熱老化に対して安定化され得る。
【0009】
自動車触媒安定性は、異なる雰囲気中、実験室条件下で、触媒を促進老化に曝露することによって、実験室内で試験される。これらの試験プロトコルは、排気における高温および希薄/濃厚摂動を含む、エンジン内の作動条件を模倣する。そのような試験は、通常、水の存在または非存在下で、高温を含む。2種類の促進老化プロトコルは、蒸気/空気(酸化熱水老化、擬似希薄作動条件)または窒素、アルゴン、もしくは水素下の老化(不活性老化、擬似濃厚作動条件)である。これら両方の触媒老化条件下の試験は、エンジン環境において実際に使用する際に、触媒性能の良好な再生を提供するが、この分野におけるほとんどの注目は、高温の蒸気/空気老化条件に耐える触媒を開発することに向けられている。高温濃厚老化における触媒安定性に対処するための研究はほとんど行われていない。現在の触媒技術は、濃厚老化条件下、特に蒸気/空気プロトコルおよび高温濃厚老化プロトコルの両方に対して順次曝露されると、有意な触媒不活性化を呈する。
【0010】
希薄および濃厚老化条件の両方において、パラジウムに対して白金および/またはロジウムの比が低く、性能および安定性が向上したパラジウム含有触媒物品の必要性がある。本発明は、この必要性に対処する。
【発明の概要】
【0011】
本発明の実施形態は、高パラジウム触媒物品ならびに関連する調製および使用方法を対象とする。触媒物品は、任意選択で、基材上に形成されるエッチング被覆層を備えてもよく、第1の層は、耐熱金属酸化物を含み、実質的に均一な表面を有する。第1の触媒層は、エッチング被覆層上(存在する場合)または支持体基材上(エッチング被覆層が存在しない場合)に形成され、第1の触媒層は、i)耐熱金属酸化物支持体上に含浸される白金およびパラジウム、および無セリア酸素貯蔵成分上に含浸されるパラジウムを含む。無セリア酸素貯蔵成分は、ジルコニアの組成物およびセリア以外の希土類金属酸化物、例えば、プラセオジム、ネオジム、またはランタナであってもよい。第2の触媒層は、第1の触媒層上に形成され、第2の触媒層は、白金およびロジウムを含み、少なくともロジウム成分は、ジルコニア被覆またはイットリア被覆された耐熱金属酸化物支持体上に含浸される。酸素貯蔵成分は、第2の触媒層中に存在してもよい。一実施形態において、触媒物品は、特に濃厚作動条件下のその安定性において、周知のTWC触媒物品に対して向上した耐久性と性能を呈する。触媒物品の基材は、通常、ハニカム構造であり得る。
【0012】
本発明の別の態様において、高パラジウム触媒物品は、任意選択で、酸性溶液中に耐熱金属酸化物を含むエッチングコート層で基材を被覆すること、熱および気流を使用して第1の層を乾燥させて、実質的に均一な表面がエッチングコート層上に形成されるようにすること、1)パラジウムを含浸させた無セリア酸素貯蔵成分と、2)耐熱金属酸化物支持体上に含浸させた白金と、を含むスラリーを、エッチングコート層(存在する場合)または基材(エッチングコート層が存在しない場合)上に被覆させることによって、第1の触媒層をエッチングコート層上に沈澱(蒸着)させること、および第1の触媒層を乾燥させることによって形成することができる。第1の触媒層中のパラジウムの部分は、耐熱金属酸化物支持体上に含浸されてもよい。第1の触媒層の無セリア酸素貯蔵成分は、ジルコニアの組成物およびセリア以外の希土類金属酸化物、例えば、プラセオジム、ネオジム、またはランタナであってもよい。第2の触媒層は、酸素貯蔵成分、白金、およびロジウムを含むスラリーを第1の触媒層上に被覆することと、第2の触媒層を乾燥させることとによって、第1の触媒層上に蒸着(沈澱)され、ロジウム成分が、ジルコニア被覆またはイットリウム被覆された耐熱金属酸化物支持体上に含浸される。
【0013】
本発明の触媒物品は、内燃エンジンによって産生される排気を処理するために特に有用であり、作動条件における希薄/濃厚のゆらぎは、除去されなければならない排気汚染物質の高い変動をもたらす。本発明の触媒物品は、そのような作動条件下での新鮮な触媒の性能に対して、実質的に少ない劣化を呈する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例2の結果を示す棒グラフであり、異なる運転サイクルにおいて、従来の触媒と本発明に従う触媒のNOx放出を比較している。データは、2つの実験の平均を表す。
【図2】実施例3の結果を示す棒グラフであり、老化後のPd金属表面アベイラビリティに関し、本発明の触媒に対して異なる値のセリアを含む触媒を比較している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、触媒物品、触媒物品の成分、触媒物品を使用する方法、および同時に炭化水素および一酸化炭素の酸化を触媒し、窒素酸化物を還元する能力を有する、一般に3元転換触媒と呼ばれる、触媒物品を製造する方法に関する。本発明の実施形態に従う触媒物品は、少なくとも2つのウォッシュコート層を含む。濃厚作動条件下で、実質的に向上した性能は、基材上に2つの触媒含有層を提供することによって達成されることが分かり、第1の触媒層は、白金およびロジウムに対して高濃度のパラジウムを含む。第1の触媒層において、パラジウム成分は、無セリア酸素貯蔵成分上で支持される。パラジウムの部分は、耐熱金属酸化物上で支持されてもよい。第1の触媒層の白金成分は、耐熱金属酸化物上で支持されるが、白金成分の一部分は、無セリア酸素貯蔵成分上で支持されてもよい。第2の触媒層は、ジルコニア被覆またはイットリア被覆された耐熱金属酸化物上で支持されるロジウム、および酸素貯蔵成分で安定化される白金を含む。
【0016】
本明細書において使用される、触媒物品または触媒物品の層に関して、「高パラジウム」は、物品または層中のパラジウム含有量(重量)が、物品または層中の非パラジウム白金族金属(PGM)成分の含有量(重量)よりも高いことを意味する。好ましくは、パラジウム含有量は、非パラジウムPGM成分のそれぞれよりも高い。より好ましくは、パラジウム含有量は、すべての非パラジウムPGM成分の総含有量よりも高い。一態様において、パラジウム含有量は、触媒物品の非パラジウムPGM含有量の合計よりも10〜30倍高い。通常、触媒物品の総PGM含有量は、30〜100g/ft3、50〜80g/ft3、または約75g/ft3である。
【0017】
本明細書で使用される、触媒物品の層に関して「実質的に均一」とは、総表面積の少なくとも約90%に渡って、層の表面に欠陥がないことを意味する。実質的に均一な表面は、層表面の亀裂、裂溝、または剥離の層の総表面積のわずか約10%を呈するに過ぎない。本発明の特定の態様において、層の表面は、少なくとも約95%欠陥のない状態であり、本発明の詳細な態様では、100%欠陥がない。層表面の均一性の評価は、金属組織学、走査電子顕微鏡写真、透過電子顕微鏡法(TEM)、および例えば、従来の光顕微鏡を使用した層表面の直接目視検査を含む、当該技術分野において知られている手順を使用して、容易に行われる。
【0018】
本明細書で使用される、用語「支持」は、触媒層に関して、会合、分散、含浸、または他の適切な方法を通して、白金族金属、安定剤、促進剤、結合剤等を受容する物質を指す。支持体の例には、耐熱金属酸化物、高表面積耐熱金属酸化物、および酸素貯蔵成分を含有する物質が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の1つまたは複数の実施形態には、アルミナ、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−セリア−ジルコニア、ランタン−アルミナ、ランタン−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリアランタン−アルミナ、バリアランタン−ネオジムアルミナ、およびアルミナ−セリアから成る群から選択される、活性成分を含む、高表面積耐熱金属酸化物支持体が挙げられる。酸素貯蔵成分を含有する物質の例には、セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア−ランタン、ジルコニア−プラセオジム、イットリア−ジルコニア、ジルコニア−ネオジム、およびジルコニア−ランタンが挙げられる。「希土類金属酸化物−ジルコニア組成物」に対する参照は、希土類金属酸化物およびジルコニアを含む組成物を意味し、いずれかの成分の量を特定しない。適切な希土類金属酸化物−ジルコニア物質には、例えば、5%〜95%の希土類金属含有量を有する物質が挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態において、支持体は、名目上100%の希土類金属含有量(すなわち、純度99%より大)を有するバルク希土類金属酸化物を含む。
【0019】
本明細書で使用される、用語「酸素貯蔵成分(OSC)」は、多価状態を有し、酸化条件下で、酸素または窒素酸化物等の酸化剤と、または還元条件下で、一酸化炭素(CO)または水素等の還元剤と活発に反応し得る実体を指す。適切な酸素貯蔵成分の例には、セリアおよびプラセオジムが挙げられる。層へのOSCの送達は、例えば、混合酸化物の使用によって達成され得る。例えば、セリアは、セリウムおよびジルコニウムの混合酸化物、および/またはセリウム、ジルコニウム、およびネオジムの混合酸化物によって送達することができる。例えば、プラセオジムは、プラセオジムおよびジルコニウムの混合酸化物、および/またはプラセオジム、セリウム、ランタン、イットリウム、ジルコニウム、およびネオジムの混合酸化物によって送達することができる。
【0020】
用語「無セリア酸素貯蔵成分」または「無セリアOSC」は、1%未満のセリア、好ましくは、0.5%未満のセリア、および最も好ましくは、本質的に0%のセリアを含むOSCを指す。無セリアOSCの例には、ジルコニア−プラセオジム、ジルコニア−ネオジム、ジルコニア−イットリア、およびジルコニア−ランタンが挙げられる。
【0021】
本明細書で使用される、用語「含浸された」は、白金群金属含有液が、支持体の細孔に入れられることを意味する。詳細な実施形態において、白金群金属の含浸は、初期湿気によって達成され、希釈白金群金属の容積は、支持体の細孔容積にほぼ等しい。初期湿気含浸は、一般に、支持体の細孔系全体に、実質的に均一な前駆体溶液の分散をもたらす。
【0022】
本明細書において、用語「成分」は、白金群金属との関連で、その焼成または使用時に、分解または他の方法で、白金群金属の触媒的に活性な形態、通常は金属または金属酸化物に変換する、任意の化合物、複合体、またはその他を意味する。水溶性成分または金属成分の水分散性成分もしくは複合体は、金属成分を耐熱金属酸化物支持粒子上に含浸または蒸着(沈澱)させるために使用される液体媒体が、金属もしくはその化合物、もしくはその複合体、または触媒成分中に存在し得、加熱および/または真空印加時に揮発または分解によって金属成分から除去することができる他の成分と逆に反応しない限り、使用されてもよい。いくつかの例において、液体除去は、触媒が使用され、作動中に遭遇する高温に供されるまで完了しない場合がある。一般に、経済的および環境的側面の両方の観点から、白金群金属の可溶性成分または複合体の水溶液が利用される。例えば、適切な化合物には、硝酸パラジウムが含まれる。焼成段階中、または少なくとも組成物使用の初期段階中に、そのような化合物は、金属またはその化合物の触媒的に活性な形態に変換される。
【0023】
第1の態様において、本発明の触媒物品は、適切な基材上に第1の触媒層であって、高濃度のパラジウムを含む触媒層を含む、高パラジウム物品である。触媒物品中に存在するすべてのパラジウム成分は、第1の触媒層中に含有される。第1の触媒層中のパラジウム成分の一部分は、耐熱金属酸化物支持体、好ましくは、高表面積耐熱金属酸化物支持体上で支持され得る。第1の触媒層中のパラジウム成分の残りの部分は、無セリア酸素貯蔵成分、好ましくは、プラセオジム、ランタン、ネオジム、イットリア、またはそれらの混合物を添加したジルコニア上で支持される。代替的に、パラジウムのすべては、無セリア酸素貯蔵成分上で支持されてもよい。第1の触媒層は、耐熱金属酸化物上で支持される白金成分をさらに含み、アルミナ含有支持体であり得る。第1の触媒層は、ジルコニア被覆またはイットリア被覆された耐熱金属酸化物上で支持されるロジウム成分、および酸素貯蔵成分で安定化される白金成分を含む、第2の触媒層で被覆される。第2の触媒層中にパラジウム成分は存在しない。
【0024】
さらなる態様において、第1の触媒層のOSCは、プラセオジム−ジルコニア組成物、イットリア−ジルコニア組成物、ネオジム−ジルコニア組成物、またはランタン−ジルコニア組成物であり、本組成物の希土類成分は、約1〜40重量%を示す。第2の触媒層において、本組成物は、ジルコニアとの組成物中に、希土類金属酸化物のうちのいずれかを含んでもよい。本組成物は、共沈降、ゾルゲル、および希土類金属酸化物とジルコニアとの混合を含む、当該技術分野において知られている方法を使用して調製されてもよい。本組成物中の希土類金属酸化物の存在は、ジルコニア成分に向上した熱安定性を付与する。
【0025】
本発明の別の態様は、触媒物品のパラジウム成分が、白金成分およびロジウム成分のいずれか、または両方よりも高い重量で存在することを示す。白金とパラジウムとロジウムの重量比は、それぞれ0.5〜10/1〜80/0.5〜10、1〜5/30〜50/1〜5、または約1/40/2.4であり得る。つまり、特定の実施形態において、触媒物品のパラジウム含有量は、白金含有量の約40倍、およびロジウム含有量の約16〜20倍である。さらなる特定の実施形態において、Pt/Pd/Rh重量比は、3/7/1、2/14/1、1/25/2、1/40/2または1/60/2である。
【0026】
本発明の他の態様は、第2の触媒層が、その上で白金およびロジウム成分が支持される、耐熱金属酸化物、例えば、高表面積耐熱金属酸化物を含むことを示す。1つまたは複数の実施形態において、耐熱金属酸化物は、アルミナ、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−セリア−ジルコニア、ランタン−アルミナ、ランタン−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリアランタン−アルミナ、バリアランタン−ネオジムアルミナ、およびアルミナ−セリアから成る群から選択される活性成分を含む。第2の触媒層において、耐熱金属酸化物は、アルミナを含有し、ロジウム成分の支持体として使用され、ジルコニアまたはイットリアで被覆されて、アルミナとロジウム成分との反応、およびロジウム酸アルミナの形成を阻害する。少なくともロジウム成分は、被覆されたアルミナ上で、実質的に全体的に支持される。しかしながら、白金成分は、好ましくは、OSC上で支持され、OSCによって安定化され、この場合、OSCは無セリア、例えば、セリア−ジルコニアである必要はない。
【0027】
本発明において、第2の触媒層中のロジウムの支持体として使用するためのジルコニア被覆アルミナは、当該技術分野において知られている方法のうちのいずれかに従って調製されてもよい。これらは、例えば、S.Damyanova,et al.Journal of Catalysis 168、421〜430(1997)によって記載されるように、焼成アルミナ支持体へのn−プロパノール中のジルコニウムn−プロポキシドの導入、またはM.M.V.M.Souza,et al.Phys.Stat.Sol.(a)187,No.1,297〜303(2001)によって記載されるように、水酸化ジルコニウムの硝酸溶液を使用するアルミナ粉末の含浸を含む。
【0028】
本発明のさらなる態様において、第1の触媒層もしくは第2の触媒層のいずれか、または両方は、BaO、SrO、La23、Nd23、Pr611、Y23、Sm23、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される促進剤をさらに含んでもよい。
【0029】
本発明の他の態様は、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含むガスを処理するための方法を提供し、該方法は、ガソリンエンジンの排気流中のガスを基材上の触媒物質と接触させることを含み、触媒物質は、本明細書に記載される2つの触媒層を含み、第1の触媒層の下に任意選択のエッチングコート層が存在するか否かに関わらず、排気流中の炭化水素、一酸化炭素、およびNOxが還元されるようにする。特に、排気流中のNOxは、白金がセリア含有OSC上で支持される触媒物質と比較して、本発明の触媒物質によって実質的に還元される。
【0030】
本発明の一態様は、基材上の触媒物質を含む触媒物品を提供し、触媒物質は、本明細書に記載される2つの触媒層を含み、触媒物品は、基材と第1の触媒層との間にエッチングコート層をさらに含む。エッチングコート層は、高表面積耐熱金属酸化物を含み、好ましくは、表面が実質的に均一になるように調製される。エッチングコート上の実質的に均一な表面は、基材への第1の触媒層の結合を向上させ、小型エンジン等の高振動環境において触媒物品が使用される場合に特に有利である。エッチングコートの高速および全体乾燥は、実質的に均一な表面の産生を容易にし、移動する空気下、低温で層を乾燥させることによって達成されてもよい。エッチングコートの完全な乾燥は、第1の触媒層におけるパラジウム成分の均一な分散の達成にも寄与する。
【0031】
一実施形態において、ガソリンエンジンからのNOx放出の削減における著しい向上は、本発明の触媒物品を使用して得ることができる。炭化水素および一酸化炭素放出の向上も達成することができる。本発明の触媒物品は、連続する希薄濃厚老化試験プロトコルにおいて、実質的に向上した性能も呈する。
【0032】
詳細な態様において、無セリア酸素貯蔵成分は、通常、第1の触媒層中に、第1の触媒層の成分の10〜60重量%、30〜50重量%、または40〜50重量%の量で存在する。第2の触媒層中の酸素貯蔵成分は、通常、第2の触媒層の成分の20〜80重量%、30〜70重量%、または40〜60重量%の量で存在する。
【0033】
1つまたは複数の実施形態は、PGM成分が、約10〜150g/ft3、約20〜100g/ft3、または約25〜80g/ft3の量で存在することを示す。特定の実施形態において、PGM成分は、触媒物品中、約75g/ft3の量で存在する。触媒物品中の各PGMの含有量、およびしたがって、それらの相対重量比は、所望の総PGM含有量を達成するために変動し得ることが理解されるであろう。一般に、パラジウムは、コスト削減のため、白金およびロジウムに対して多い量で存在することが好ましいが、これは、触媒物品の機能に対して必要ではない。通常、白金は、1〜90g/ft3で存在し、パラジウムは、1〜90g/ft3で存在し、ロジウムは、1〜30g/ft3で存在する。特定の実施形態において、白金は、1〜2g/ft3で存在し、パラジウムは、40〜80g/ft3で存在し、ロジウムは、2〜5g/ft3で存在する。さらに特定の実施形態において、総PGMは30g/ft3であって、Pt/Pd/Rh比は3/7/1であるか、総PGMは40g/ft3であって、Pt/Pd/Rh比は2/4/1であるか、または総OGMは100g/ft3であって、Pt/Pd/Rh比は1/25/2、1/40/2もしくは1/60/2である。
【0034】
詳細な実施形態は、基材上に2つの触媒層を提供する。第1の触媒層は、基材上に被覆される高パラジウム層であり、プラセオジミア添加ジルコニアおよびアルミナ上に含浸されるパラジウム、およびアルミナ上に含浸される白金を含む。第1の触媒層は基材上に被覆され、焼成される。第2の触媒層は、第1の触媒層上に被覆され、ジルコニア被覆されたアルミナ上に含浸されるロジウムおよびセリア−ジルコニア組成物上に含浸される白金を含む。第2の触媒層も焼成される。
【0035】
第2の詳細な実施形態は、基材上に3つの層を提供する。基材上に被覆される第1の層は、γアルミナ等の耐熱金属酸化物を含むエッチングコート層である。エッチングコート層は、基材上で被覆および乾燥され、その表面が実質的に均一となるように、すなわち、亀裂、裂溝、および剥離等の欠陥が実質的にないようにする。一態様において、エッチングコート層の表面は、少なくとも90%欠陥がない状態である(または約95%もしくは約100%欠陥がない)。エッチングコート層の実質的な均一性は、エッチングコート層上に被覆される、第1の触媒層の優れた接着を提供する。第1の触媒層は、無セリアOSC支持体、例えば、プラセオジム添加ジルコニア、および高表面積耐熱金属酸化物、例えば、それぞれパラジウムおよびパラジウム/白金を含浸させたγアルミナを含む。第1の触媒層上に被覆される第2の触媒層は、白金および/またはロジウムを含むが、パラジウムを含有しない。第2の触媒層は、ジルコニア被覆されたアルミナ支持体上に含浸されたロジウムおよびセリア−ジルコニア組成酸化物支持体上に含浸された白金を含む。白金/パラジウム/ロジウムの重量比は、通常、0.5〜10/1〜80/0.5〜10、1〜5/2〜10/1〜5、1〜5/20〜60/1〜5、または約1/40/2.4である。
【0036】
別の態様において、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含むガスを処理するための方法が提供され、該方法は、ガソリンエンジンの排気流中のガスを触媒物質と接触させることを含み、触媒物質は、本明細書に記載されるように、2つの触媒層を含む。任意選択で、触媒物質は、第1の触媒層の蒸着(沈澱)に先立って、基材上に被覆される、本明細書に記載されるようなエッチングコート層をさらに含んでもよい。さらなる態様において、触媒物質の第1の触媒層は、高表面積耐熱金属酸化物を含むエッチングコート上に被覆され、エッチングコート表面は実質的に均一である。本発明に従って、この方法は、排ガスから触媒物質よりもかなり多くののNOxを除去するために有効であり、パラジウムは、セリア含有OSC上に含浸される。排気中の炭化水素および一酸化炭素還元の向上もまた、本発明の触媒物質を使用して達成することができる。
【0037】
さらなる態様は、触媒物質を製造する方法を提供し、該方法は、任意選択で、耐熱金属酸化物、好ましくは、高表面積耐熱金属酸化物を基材上に被覆することによって、基材上にエッチングコートを形成することを含む。被覆は、当該技術分野において知られている被覆方法、例えば、手動浸漬またはエアブラッシングによって達成されてもよい。その後エッチングコートは、熱および空気を使用して乾燥し、好ましくは、実質的に均一なエッチングコート表面が形成されるように、温度および気流を選択する。乾燥温度は、約60〜140℃の範囲内であり得る。特定の実施形態において、エッチングコート層の乾燥は、約70〜110℃の範囲、より具体的に、約80〜90℃の範囲で達成される。エッチングコートの乾燥中、従来のファンによって提供され得るように、基材全体に弱〜中程度の気流が維持される。気流は、任意の適切な手段によって提供され得、乾燥炉の大きさおよび/または構造によって決定される。エッチングコート層は、次に、通常490〜550℃で1〜2時間焼成される。所望の表面均一性は、視覚または顕微鏡法、例えば、光顕微鏡による直接可視化、走査電子顕微鏡写真、金属組織学等によって決定される。特定の態様において、エッチングコートは、好ましくは薄く、例えば、10μm厚未満である。さらなる実施形態において、エッチングコートは、1〜8μm厚、1〜5μm厚、1〜3μm厚、または約1μm厚である。薄いエッチングコートおよび実質的に均一なエッチングコート表面は、エッチングコートおよび基材に対する触媒層の接着を高める。第1の触媒層は、エッチングコート上に被覆される。
【0038】
第1の触媒層被覆は、エッチングコート上に、無セリア希土類添加ジルコニア支持体上に含浸されたパラジウム、および耐熱金属酸化物支持体上に含浸された白金を含む、高パラジウム触媒物質を蒸着(沈澱)させることによって達成される。第1の触媒層は、次に、通常490〜550℃で1〜2時間、乾燥および焼成される。第2の触媒層は、第1の触媒層上に被覆される。第2の触媒層は、耐熱金属酸化物支持体上に含浸された白金、およびジルコニア被覆またはイットリア被覆されたアルミナ支持体上に含浸されたロジウムを含み、パラジウムは含有しない。第1の触媒層中のOSCの希土類成分は、組成物の1〜40重量%であり得る。第2の触媒層中のOSCは、例えば、セリア−ジルコニアであり得る。触媒物品のPGM含有量の比率は、通常、重量で0.5〜10/1〜80/0.5〜10、1〜5/2〜10/1〜5.1〜5/20〜60/1〜5、または約1/40/2.4(Pt/Pd/Rh)である。
【0039】
本発明に従う触媒物品の成分に関する詳細は、以下に提供される。
【0040】
基材
1つまたは複数の実施形態に従って、基材は、通常、TWC触媒を調製するために使用される物質のうちのいずれかであってもよく、好ましくは金属またはセラミック構造を含む。任意の適切な基材、例えば、通路がそこを通る液流に対して開くように、基材の入口または出口面からそこを通って伸長する複数の微細な平行ガス流路を有する種類のモノリシック基材が用いられてもよい。それらの液体入口からそれらの液体出口まで本質的に直線路である通路は、通路を通って流れるガスが、触媒物質と接触するように、触媒物質が「ウォッシュコート」として被覆される壁によって画定される。モノリシック基材の流路は、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形等の任意の適切な断面形状であり得る、薄壁チャネルである。そのような構造は、断面1平方インチ当り約60〜約600以上のガス入口の開口(すなわち、「セル」)を含み得る。
【0041】
セラミック基材は、例えば、コージライト、コージライト−αアルミナ、硝酸シリコン、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ−シリカマグネシア、ジルコンケイ酸、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、αアルミナ、アルミノケイ酸等の任意の適切な耐熱物質で製造されてもよい。
【0042】
本発明の層状触媒組成物に有用な基材は、自然界で金属性であり、1つまたは複数の金属または合金であってもよい。金属基材は、波板、金属板、金網、またはモノリシック形態等の様々な形態で用いられてもよい。好適な金属支持体は、耐熱金属および合金、例えば、チタンおよびステンレス鋼、ならびに鉄が実質的または主要な成分である他の合金を含む。そのような合金は、ニッケル、クロミウム、および/またはアルミニウムのうちの1つまたは複数を含んでもよく、これらの金属の総量は、有利に少なくとも15重量%の合金、例えば、10〜25重量%のクロミウム、3〜8重量%のアルミニウム、および最大20重量%のニッケルを含み得る。合金は、少量または微量のマンガン、銅、バナジウム、チタン等の1つまたは複数の他の金属を含んでもよい。表面または金属基材は、高温、例えば、1000℃以上で酸化され、基材の表面上に酸化層を形成することによって、合金の耐食性を向上させ得る。そのような高温誘導酸化は、耐熱金属酸化物支持体および触媒的に促進する金属成分の基材への接着を強化し得る。
【0043】
触媒物質
本発明の触媒物質は、2層で形成される。各触媒層の組成物は、PGM成分のスラリーとして調製され、このスラリーを使用して、基材上に層を形成する。物質は、先行技術においてよく知られている過程によって容易に調製することができる。代表的な過程は、以下で説明される。本明細書で使用される、用語「ウォッシュコート」は、処理されるガス流がそこを通過することを可能にするために十分に多孔である、ハニカム型基材または金網等の基材担体物質に適用される、触媒または他の物質の薄い接着層の、当該技術分野におけるその通常の意味を有する。
【0044】
特定のウォッシュコートの第1の層の場合、γアルミナ等の高表面積耐熱金属酸化物、またはプラセオジム−ジルコニア等のOSCの微粉化した粒子は、適切な媒体、例えば、水中でスラリー化する。次に、基材を、そのようなスラリーに1回または複数回浸漬してもよいか、またはスラリーは、基材上に所望の負荷の金属酸化物またはOSC、例えば、浸漬1回当り約0.5〜約2.5g/m3が蒸着(沈澱)されるように、基材上に被覆されてもよい。白金群金属(例えば、パラジウム、ロジウム、白金、および/またはそれらの組み合わせ)、安定剤および/または促進剤等の成分を組み込むために、そのような成分は、水溶性もしく水分散性化合物または複合体の混合物として、スラリーに組み込まれてもよい。その後、被覆された基材は、例えば、500〜600℃で約1〜約3時間焼成される。通常、PGM成分は、化合物または複合体の形態で利用され、耐熱金属酸化物支持体上に成分の分散を達成する。本発明の触媒物品の任意の触媒層を調製する適切な方法は、所望の白金群金属成分の溶液と、少なくとも1つの支持体、例えば、微粉化高表面積耐熱金属酸化物支持体、例えば、γアルミナまたはジルコニア被覆アルミナの混合物を調製することであり、混合物は、十分に乾燥されて、溶液の実質的にすべてを吸収し、後に水と組み合わされて被覆可能なスラリーを形成する、湿った固体を形成する。1つまたは複数の実施形態において、スラリーは酸性であり、例えば、約2〜約7未満のpHを有する。スラリーのpHは、適切な量の無機または有機酸をスラリーに添加することによって低下され得る。酸と原材料の適合性が考慮される場合、両方の組み合わせを使用することができる。無機酸には硝酸が挙げられるが、これに限定されない。有機酸には、酢酸、プロピオン酸、オキサル酸、マロン酸、ケイ酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。その後、所望される場合、酸素貯蔵成分の水溶性または水分散性化合物、例えば、セリウム−ジルコニウム組成物、安定剤、例えば、酢酸バリウム、および促進剤、例えば、硝酸ランタンをスラリーに添加してもよい。白金族金属成分は、スラリーへの添加に先立って、同様の方法で酸素貯蔵成分、例えば、セリア−ジルコニアまたはプラセオジム添加ジルコニア中に含浸されてもよい。
【0045】
一実施形態において、その後スラリーは、粉砕されて、支持体の粒径を減少させる。粉砕は、ボールミルまたは他の類似器具において達成されてもよく、スラリーの固形含有量は、例えば、約20〜60重量%、より具体的には、約30〜40重量%である。
【0046】
追加の層、すなわち第2の触媒層は、第1の触媒層の蒸着(沈澱)に関して上述されるものと同一の方法で調製され、第1の触媒層上に蒸着(沈澱)され得る。
【0047】
本発明のいくつかの典型的な実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記載される構造または過程段階の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践される。
【0048】
以下の非限定的な例は、本発明の特定の実施形態を例証することが意図される。
【0049】
実施例1:触媒は、以下の方法で調製した。
【0050】
円筒形金属ハニカム基材を担体として使用した。担体は、直径1.57インチ、長さ3.54インチ、および総容積6.9立方インチであった。触媒の総貴金属含有量は、75g/ft3であった。貴金属成分は、それぞれ1:40:2.4の比で、白金、パラジウム、およびロジウムで構成される。金属担体を、930℃で6時間事前処理して、表面上にアルミナの薄層を形成した。
【0051】
下層(すなわち、エッチングコート)は、408gのγアルミナ、55gのアルミナ結合体、および36gの酢酸ジルコニウム溶液、および25gの酢酸を含有する、約32%の固形分水性スラリーに担体を浸漬させることによって、担体の表面に適用した。次に、被覆した担体を550℃で1時間焼成して、約0.49g/m3で乾燥アンダーコートを得た。
【0052】
次に、中間層(すなわち、第1の触媒層)を、水溶液の形態で、アンダーコートで被覆された担体の表面に適用した。中間層に使用されるスラリーは、約40%の固形分、225gのアルミナ、228gのPr添加ジルコニア、30gの水酸化バリウム、アルミナ上に浸含された12.2gのPdならびにPd硝酸溶液としてのPd添加ジルコニア、および0.06gのPt硝酸溶液として含浸されたPtを含有する水溶液で構成された。次に、被覆担任体を550℃で1時間焼成し、約1.64g/m3で乾燥ウォッシュコートを得た。
【0053】
次に、上層(すなわち、第2の触媒層)を、水溶液の形態で、第1の触媒層で既に被覆された担体の表面に適用した。トップコートに使用される水性スラリーは、282gの酸素貯蔵組成物(Ce/Zr組成酸化物)および200gのジルコニア被覆アルミナへの惑星式混合によって、白金硝酸溶液として浸含された0.3gの白金、およびロジウム硝酸溶液として浸含された0.9gのロジウムを含有する。次に、得られた担体を、550℃で1時間焼成して、約1.33g/m3で乾燥ウォッシュコートを得た。
【0054】
実施例2:実施例1の触媒は、通常、原動機付自転車、MVEG−MC試験サイクルを試験するために従う試験プロトコルに従って、電子燃料噴射を伴う150cc原動機付自転車に関して評価した。NOx放出データは、3つの段階(コールドスタート−CUDC、ホットクルーズ−HUDC、およびエクストラアーバンドライブサイクル−EUDC)ならびに日本において準拠される全体試験サイクル(JP II)に対して収集した。同様の貴金属負荷および比率を有するが、第1の触媒層においてセリア含有OSC上に含浸されるパラジウムを有しない通常の触媒は、比較のために調製および使用した。NOx放出の結果は、図1に示される。白いバーは、元の基準触媒に対応し、黒いバーは、本発明の触媒に対応する。
【0055】
NOx放出の著しい向上は、従来の触媒と比較して、すべての走行サイクルにおいて証明された。
【0056】
実施例3:本発明に従う1%Pd含有OSC触媒を製造するために、異なるCeO2含有量のOSC物質をそれぞれ10グラム使用した。水溶液としての計算されたPd量を、初期湿気法を介して粉末OSC物質に滴下添加した。次に、含浸した試料を、乾燥オーブン中110℃で乾燥させた。次に、以下のプロトコルで、触媒を促進老化に供した。乾燥試料をマッフル炉に入れ、温度を30分で110℃まで上昇させ、110℃で1時間保持し、2時間で550℃に上昇させ、550℃で3時間保持した後、炉を室温に冷却させた。これらの1%Pd−OSC触媒は、NO化学吸着に続いて、FT−IR分光学的同定に供した。
【0057】
結果は、図2に示される。1752cm-1における窒素酸化物吸着ピークは、本質的に、老化触媒含有セリア中に存在しない。対照的に、セリアをOSC中でプラセオジムと置換した場合、老化触媒の吸着強度とNOx性能との間に良好な相関が確立された。これらのデータは、触媒中のセリアの存在が、パラジウムの熱安定性を減少させるが、他の希土類金属の置換は、希薄および豊富な熱老化に対して、パラジウム表面を安定させることを証明した。
【0058】
実施例4:本発明に従う触媒物品の性能は、パラジウム成分が45%セリア含有量のOSC上で支持される、類似構成の従来の触媒物品と比較した。150,000/時間の実験室反応炉試験において、空間速度(SV)および温度は、50℃/分増加した。発明の触媒は、実質的に高いNOおよびCO変換を低温で提供した。80〜90%NO変換は、発明の触媒を使用して、250℃〜290℃の間で達成されたが、Ce−OSC含有触媒は、360℃〜390℃の間で80〜90%NO変換を達成した。同様に、発明の触媒は、COの70%を約270℃〜290℃で変換することができるが、従来の触媒は、実質的に高温で約60%の最大変換率を達成した。これらの結果は、支持体内のセリアの存在が、使用可能なパラジウム表面積の劣化をもたらすことを証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジン内で使用するための触媒物品であって、
基材上に形成される第1の触媒層であって、無セリア酸素貯蔵成分上に含浸されたパラジウムおよび耐熱金属酸化物上に含浸された白金を含む、第1の触媒層と、
前記第1の触媒層上に形成される第2の触媒層であって、酸素貯蔵成分上に含浸された白金およびジルコニア被覆またはイットリア被覆アルミナ上に含浸されたロジウムを含み、パラジウムを含有しない、第2の触媒層と、を備え、
前記触媒物品は、前記内燃エンジンからの排ガス中の窒素酸化物を還元するために有効である、触媒物品。
【請求項2】
炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含むエンジン排気を処理する方法であって、
前記排気を触媒物品と接触させることを含み、前記触媒物品は、1)基材上に被覆される第1の触媒層であって、無セリア酸素貯蔵成分上に含浸されたパラジウムおよび耐熱金属酸化物上に含浸された白金を含む、第1の触媒層と、
前記第1の触媒層上に形成される第2の触媒層であって、酸素貯蔵成分上に含浸された白金およびジルコニア被覆またはイットリア被覆アルミナ上に含浸されたロジウムを含み、パラジウムを含有しない、第2の触媒層と、を備え、
前記方法は、前記排気中の窒素酸化物を還元するために有効である、方法。
【請求項3】
前記触媒物品は、基材上にエッチング被覆層をさらに備え、前記エッチング被覆層は、前記第1の触媒層の下にある、請求項1または2に記載の物品または方法。
【請求項4】
前記触媒物品は、a)前記第1の触媒層に、プラセオジム添加ジルコニア上に含浸されたパラジウムおよびアルミナ上に含浸された白金と、b)前記第2の触媒層に、セリアジルコニア上に含浸された白金およびジルコニア被覆アルミナ上に含浸されたロジウムと、を含む、請求項1または2に記載の物品または方法。
【請求項5】
前記触媒物品中の白金/パラジウム/ロジウムの比率は、それぞれ重量で0.5〜10/1〜80/0.5〜10である、請求項4に記載の物品または方法。
【請求項6】
前記触媒物品は、合計30〜100g/ft3の白金族金属を含む、請求項5に記載の物品または方法。
【請求項7】
前記触媒物品は、白金1〜90g/ft3、パラジウム1〜90g/ft3、およびロジウム1〜30g/ft3を含む、請求項6に記載の物品または方法。
【請求項8】
前記触媒物品は、白金1〜2g/ft3、パラジウム40〜80g/ft3、およびロジウム2〜5g/ft3を含む、請求項7に記載の物品または方法。
【請求項9】
前記触媒物品の前記第1の層は、ジルコニア−プラセオジム上に含浸されたパラジウムおよびアルミナ上に含浸された白金を含む、請求項1または2に記載の物品または方法。
【請求項10】
前記触媒物品の前記第1の層は、前記アルミナ上に含浸されたパラジウムをさらに含む、請求項9に記載の物品または方法。
【請求項11】
前記第2の触媒層の前記酸素貯蔵成分は、セリア含有酸素貯蔵成分である、請求項1または2に記載の物品または方法。
【請求項12】
パラジウムは、前記触媒物品中に、重量で白金の量の約20〜60倍およびロジウムの量の10〜30倍の量で存在する、請求項1または2に記載の物品または方法。
【請求項13】
触媒物品を製造する方法であって、
基材上にスラリーであって、無セリア酸素貯蔵成分上に含浸されたパラジウムおよび耐熱金属酸化物上に含浸された白金を含むスラリーを沈澱させることによって、前記基材上に第1の層を形成することと、
前記第1の層を乾燥させることと、
前記第1の層上にスラリーであって、酸素貯蔵成分上に含浸された白金およびジルコニア被覆またはイットリア被覆アルミナ上に含浸されたロジウムを含み、パラジウムは含まないスラリーを沈澱させることによって、前記第1の層上に第2の層を形成することと、
前記第2の層を乾燥させることと、を含む、方法。
【請求項14】
白金1〜2g/ft3、パラジウム20〜80g/ft3、およびロジウム2〜5g/ft3が、前記触媒物品上に形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
白金、パラジウム、およびロジウムは、それぞれ重量で0.5〜10/1〜80/0.5〜10の比率で、前記触媒物品上に沈澱される、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−520163(P2012−520163A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551235(P2011−551235)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/024659
【国際公開番号】WO2010/096612
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】