説明

内燃機関およびその燃料供給装置

【課題】機関停止中において燃料貯留部から燃料タンクに戻される燃料の量を少なくすることのできる内燃機関およびその燃料供給装置を提供する。
【解決手段】燃料供給装置2は、燃料を貯蔵する燃料タンク31と、燃料タンク31内の燃料を吐出する低圧燃料ポンプ32と、第1燃料噴射弁12が設けられる高圧デリバリパイプ11と、低圧燃料ポンプ32から吐出された燃料が流れる燃料配管43と、燃料配管43内の燃料の圧力が制御圧力よりも大きいときに燃料配管43内の燃料を燃料タンク31に戻す低圧プレッシャレギュレータ56とを備えている。燃料配管43のうちの低圧プレッシャレギュレータ56と高圧デリバリパイプ11との間には、燃料配管43内の通路を開放または閉鎖する電磁弁80が設けられている。電磁弁80は、機関運転中に開弁状態に維持され、機関運転停止動作に伴い開弁状態から閉弁状態に切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ポンプと燃料貯留管とを接続する燃料配管の一部としての燃料供給管と、同燃料供給管内の燃料の圧力が制御圧力よりも大きいときに燃料供給管内の燃料を燃料タンクに戻す調圧機構とを含む内燃機関およびその燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記燃料供給装置として、例えば特許文献1に記載のものがある。
図6に示すように、特許文献1の燃料供給装置は、燃料噴射弁101が設けられるデリバリパイプ100と、燃料ポンプ110とデリバリパイプ100とを接続する燃料配管の一部としての供給通路120と、供給通路120の燃料の圧力が所定圧力よりも大きいときに供給通路120の燃料をタンク130に戻すプレッシャレギュレータ140を備える。プレッシャレギュレータ140とデリバリパイプ100との間には、燃料ポンプ110側からデリバリパイプ100側への燃料の流れのみを許容する逆止め弁150が設けられている。
【0003】
上記燃料供給装置を備える内燃機関においては、運転停止に伴い燃料ポンプ110からデリバリパイプ100への燃料の供給が停止された後、逆止め弁150に対してデリバリパイプ100側の通路の燃料圧力が逆止め弁150に対して燃料ポンプ110側の通路の燃料圧力よりも高くなるため、逆止め弁150により供給通路120が閉鎖される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−100727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、逆止め弁150が閉弁することにより、機関停止中においてデリバリパイプ100内の燃料がプレッシャレギュレータ140を介して燃料タンク130に流れることは抑制される。しかし、逆止め弁150により供給通路120が閉鎖されるまでにある程度の時間がかかるため、この期間にデリバリパイプ100内の燃料が内燃機関本体からの受熱により気化することもある。この場合には、次回の機関始動時においては、燃料噴射弁101の適切な燃料噴射を速やかに行うことができないため、機関始動時に要する時間が長くなる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、機関停止中において燃料貯留部から燃料タンクに戻される燃料の量を少なくすることのできる内燃機関およびその燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段およびその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、燃料を貯蔵する燃料タンクと、同燃料タンク内の燃料を吐出する燃料ポンプと、燃料を噴射する燃料噴射弁と、同燃料噴射弁が設けられる燃料貯留管と、前記燃料ポンプから吐出された燃料が流れる燃料配管と、前記燃料ポンプと前記燃料貯留管とを接続する前記燃料配管の一部としての燃料供給管と、同燃料供給管内の燃料の圧力が制御圧力よりも大きいときに前記燃料供給管内の燃料を前記燃料タンクに戻す調圧機構とを含む内燃機関の燃料供給装置において、前記燃料配管のうちの前記調圧機構と前記燃料貯留管との間には、前記燃料供給管内の通路を開放または閉鎖する電磁弁が設けられ、前記電磁弁は、内燃機関の運転中に開弁状態に維持され、内燃機関の運転停止動作に伴い開弁状態から閉弁状態に切り替えられることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、燃料供給管内の通路を閉鎖する弁として機関停止動作に応じて閉弁する電磁弁が設けられているため、内燃機関の運転停止動作に伴い燃料供給管内の通路が速やかに閉鎖される。したがって、機関停止中において燃料貯留管から燃料タンクに戻される燃料の量を少なくすることができる。
【0009】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置において、前記燃料噴射弁として、燃焼室に燃料を噴射する第1燃料噴射弁と、吸気通路に燃料を噴射する第2燃料噴射弁とを備え、前記燃料貯留管として、前記第1燃料噴射弁が設けられる第1燃料貯留管と、前記第2燃料噴射弁が設けられる第2燃料貯留管とを備え、前記燃料供給管として、前記燃料ポンプと前記第2燃料貯留管とを接続する燃料供給管Aと、同燃料供給管Aの中間の部分と前記第1燃料貯留管とを接続する燃料供給管Bとを備え、前記燃料供給管Bには、前記燃料ポンプよりも吐出圧の大きい高圧燃料ポンプが設けられ、前記燃料供給管Aのうちの同供給管Aに対する前記燃料供給管Bの接続部分を供給管接続部として、前記燃料配管のうちの同供給管接続部よりも上流側の部分に前記調圧機構が設けられることを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、燃料ポンプから吐出された燃料は、燃料供給管Aを介して第1燃料貯留管および燃料供給管Bのそれぞれに供給される。燃料供給管Bに供給された燃料は、高圧燃料ポンプにより加圧されて第2燃料貯留管に供給される。また供給管接続部よりも上流側の部分に設けられた調圧機構により、燃料供給管A内の燃料の圧力が制御される。
【0011】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の内燃機関の燃料供給装置において、前記供給管接続部と前記調圧機構との間に前記電磁弁が設けられることを要旨とする。
この発明によれば、供給管接続部と調圧機構との間に電磁弁が設けられるため、第1燃料貯留管および第2燃料貯留管のそれぞれから燃料タンクに燃料が流れることを1つの電磁弁により抑制することができる。
【0012】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の内燃機関の燃料供給装置において、前記燃料配管は、前記燃料供給管Aのうちの前記調圧機構よりも下流側の部分と前記燃料タンクとを接続する還流配管を含み、前記調圧機構は、前記還流配管に設けられることを要旨とする。
【0013】
この発明によれば、燃料供給管A内の燃料の圧力が調圧機構の制御圧力よりも大きいとき、燃料供給管Aの燃料の一部が還流配管および調圧機構を介して燃料タンクに戻される。これにより、燃料供給管A内の燃料の圧力は、調圧機構の制御圧力またはその付近の圧力に維持される。
【0014】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の内燃機関の燃料供給装置において、前記調圧機構として、前記燃料供給管Aに対する制御圧力が相対的に小さい低圧調圧機構と、前記燃料供給管Aに対する制御圧力が相対的に大きい高圧調圧機構とを備え、前記還流配管には、前記低圧調圧機構および前記高圧調圧機構と、これら調圧機構に対する燃料の流通態様を変更する還流弁とが設けられ、前記還流弁が閉弁状態のとき、かつ前記燃料供給管Aの燃料の圧力が前記高圧調圧機構の制御圧力よりも大きいとき、前記燃料供給管A内の燃料が前記高圧調圧機構を介して前記燃料タンクに戻され、前記還流弁が開弁状態のとき、かつ前記燃料供給管Aの燃料の圧力が前記低圧調圧機構の制御圧力よりも大きいとき、前記燃料供給管A内の燃料が前記低圧調圧機構を介して前記燃料タンクに戻されることを要旨とする。
【0015】
この発明によれば、還流弁が閉弁状態のとき、かつ燃料供給管Aの燃料の圧力が高圧調圧機構の制御圧力よりも大きいとき、燃料供給管A内の燃料が高圧調圧機構を介して燃料タンクに戻されるため、燃料供給管A内の燃料の圧力は、高圧調圧機構の制御圧力またはその付近の圧力に維持される。一方、還流弁が開弁状態のとき、かつ燃料供給管Aの燃料の圧力が高圧調圧機構の制御圧力よりも大きいとき、燃料供給管A内の燃料が低圧調圧機構を介して燃料タンクに戻されるため、燃料供給管A内の燃料の圧力は、低圧調圧機構の制御圧力またはその付近の圧力に維持される。
【0016】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料供給装置を備える内燃機関において、前記燃料供給装置は、燃焼室に燃料を噴射する前記燃料噴射弁と、前記燃料ポンプから吐出された燃料を加圧して前記燃料貯留管に供給する高圧燃料ポンプとを備えるものであり、当該内燃機関は、機関始動時に成層燃焼を行うものであることを要旨とする。
【0017】
この発明によれば、機関始動時に成層燃焼が行われるため、機関始動時のHCおよびNOxの排出量を少なくすることができる。一方、機関始動時に燃料貯留管内が燃料で満たされていないときには、燃料貯留管内の燃料の圧力を成層燃焼に必要な圧力まで昇圧するための時間が長くなる。その点、上記発明では、内燃機関の運転停止動作に伴い燃料供給管内の通路が電磁弁により閉鎖されるため、機関停止中において燃料貯留管から燃料タンクに戻される燃料の量が少なくなる。これにより、機関始動時において燃料貯留管内の燃料の圧力を成層燃焼に必要な圧力まで昇圧するための時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の内燃機関の燃料供給装置の一実施形態について、その構成を示す模式図。
【図2】同実施形態の燃料供給装置の電磁弁について、(a)開弁状態を示す模式図、(b)閉弁状態を示す模式図。
【図3】同実施形態の燃料供給装置について、(a)デッドソーク時間と燃料温度との関係を示すグラフ、(b)デッドソーク時間と各燃料圧力との関係を示すグラフ、(c)デッドソーク時間と総燃料リーク量との関係を示すグラフ、(d)デッドソーク時間と総ベーパ量との関係を示すグラフ。
【図4】同実施形態の内燃機関の運転時間とフィード圧力、機関回転速度および高圧燃料圧力との関係を示すグラフ。
【図5】比較例としての仮想の内燃機関の運転時間とフィード圧力、機関回転速度および高圧燃料圧力との関係を示すグラフ。
【図6】従来の内燃機関の燃料供給装置の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜4を参照して、本発明の内燃機関の燃料供給装置をガソリンエンジンの燃料供給装置として具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、内燃機関1には、各気筒の燃焼室91および吸気ポート92のそれぞれに燃料を供給する燃料供給装置2と、この燃料供給装置2をはじめとして内燃機関1の各種装置を統括的に制御する制御装置3とが設けられている。
【0020】
燃料供給装置2には、各気筒の燃焼室91のそれぞれに燃料を供給する高圧燃料噴射機構10と、各気筒の吸気ポート92のそれぞれに燃料を噴射する低圧燃料噴射機構20と、各燃料噴射機構10,20に燃料を供給する供給装置本体30とが設けられている。
【0021】
高圧燃料噴射機構10には、各気筒の燃焼室91のそれぞれに燃料を噴射する複数の筒内噴射インジェクタ12と、これら筒内噴射インジェクタ12に供給される燃料を貯留する高圧デリバリパイプ11とが設けられている。
【0022】
低圧燃料噴射機構20には、各気筒の吸気ポート92のそれぞれに燃料を噴射する複数のポート噴射インジェクタ22と、これらポート噴射インジェクタ22に供給される燃料を貯留する低圧デリバリパイプ21とが設けられている。
【0023】
供給装置本体30には、燃料を貯留する燃料タンク31と、この燃料タンク31と高圧デリバリパイプ11および低圧デリバリパイプ21のそれぞれと接続する燃料配管40と、燃料タンク31の燃料を燃料配管40に圧送する低圧燃料ポンプ32と、同ポンプ32からの燃料を加圧して高圧デリバリパイプ11に向けて吐出する高圧燃料ポンプ33とが設けられている。
【0024】
低圧燃料ポンプ32としては、車載バッテリの電力により駆動される電動ポンプが用いられている。また高圧燃料ポンプ33としては、内燃機関1のカムシャフトにより駆動されるとともに、吸引した燃料を所定圧まで昇圧して吐出する機関駆動式のポンプが用いられている。
【0025】
燃料配管40は、低圧燃料ポンプ32と低圧デリバリパイプ21とを接続する第1供給配管41と、第1供給配管41の下流側分岐部41Xと高圧デリバリパイプ11とを接続する第2供給配管42およびバイパス管43と、第1供給配管41の上流側分岐部41Yと燃料タンク31とを接続する還流配管51とを含む。
【0026】
第1供給配管41の上流側分岐部41Yと下流側分岐部41Xとの間には、第1供給配管41内の通路を開放および閉鎖する電磁弁80が設けられている。第2供給配管42には、高圧燃料ポンプ33側から高圧デリバリパイプ11側に向かう燃料の流れのみを許容する低圧逆止弁61が設けられている。また第2供給配管42には、低圧逆止弁61を迂回する態様でバイパス管43が接続されている。バイパス管43には、高圧デリバリパイプ11側から高圧燃料ポンプ33側に向かう燃料のみを許容する高圧逆止弁62が設けられている。
【0027】
高圧燃料ポンプ33と低圧逆止弁61および高圧逆止弁62との間にある燃料の圧力が低圧逆止弁61の開弁圧力PD1よりも大きいとき、低圧逆止弁61が開弁する。高圧デリバリパイプ11と低圧逆止弁61および高圧逆止弁62との間にある燃料の圧力が高圧逆止弁62の開弁圧力PD2よりも大きいとき、高圧逆止弁62が開弁する。これにより、高圧デリバリパイプ11内の燃料の圧力(以下、「筒内噴射圧力PD」)は、開弁圧力PD2と同じ圧力またはこれよりも大きい圧力に維持される。
【0028】
還流配管51は、第1供給配管41の上流側分岐部41Yに接続される共通配管52と、共通配管52の分岐部51Xから分岐してそれぞれ燃料タンク31に燃料を戻す第1分岐配管53および第2分岐配管54とを含む。第1分岐配管53には、高圧プレッシャレギュレータ55が設けられている。第2分岐配管54には、低圧プレッシャレギュレータ56と低圧プレッシャレギュレータ56に対する燃料の流通態様を切り替える電磁弁である還流弁57とが設けられている。
【0029】
高圧プレッシャレギュレータ55は、第1供給配管41内の燃料の圧力(以下、「フィード圧力PF」)が第1制御圧力PF1よりも大きいとき、第1分岐配管53を開放する。一方、フィード圧力PFが第1制御圧力PF1と同じまたは同圧力PF1よりも小さいとき、第1分岐配管53を閉鎖する。
【0030】
第1制御圧力PF1としては、第1供給配管41内でのベーパの発生を抑制するために予め適合された圧力が設定されている。これにより、第1制御圧力PF1またはその付近の圧力に維持された燃料が高圧燃料ポンプ33によりさらに加圧されたとき、この加圧後の燃料にベーパが含まれることは十分に抑制される。
【0031】
低圧プレッシャレギュレータ56は、フィード圧力PFが第2制御圧力PF2よりも大きいとき、第2分岐配管54を開放する。一方、フィード圧力PFが第2制御圧力PF2と同じまたは同圧力PF2よりも小さいとき、第2分岐配管54を閉鎖する。
【0032】
第2制御圧力PF2としては、ポート噴射インジェクタ22の燃料噴射のために予め適合された圧力が設定されている。これにより、低圧デリバリパイプ21内の燃料の圧力が第2制御圧力PF2またはその付近の圧力に維持されているとき、ポート噴射インジェクタ22の燃料噴射が適切に行われる。なお、第2制御圧力PF2は第1制御圧力PF1よりも小さい。
【0033】
制御装置3は、機関運転状態等をモニタする各種センサ、すなわちフィード圧力PFを検出する燃圧センサ71を含む各種センサと、これらセンサの出力に基づいて燃料供給装置2をはじめとする内燃機関1の各装置の動作を制御する電子制御装置72とを含む。燃圧センサ71は、フィード圧力PFに応じた信号を電子制御装置72に出力する。
【0034】
電子制御装置72は、内燃機関1の始動態様を制御する機関始動制御、機関運転中の各インジェクタ12,22の噴射態様を制御する燃料噴射制御、高圧燃料ポンプ33の燃料の吐出量を制御するポンプ制御、還流弁57の開閉状態を制御するフィード圧制御、クランキング前のフィード圧力を制御するプレフィード圧制御、および電磁弁80の開閉状態を制御する燃料保持制御を行う。
【0035】
機関始動制御では、機関始動時に筒内噴射インジェクタ12の燃料噴射を通じて成層燃焼を行う(以下では、成層燃焼による機関始動を「成層始動」とする)。また、機関始動要求に基づく最初の燃料噴射から成層燃焼を行う。
【0036】
燃料噴射制御では、機関運転状態に基づいて燃料噴射モードを切り替える。燃料噴射モードとしては、筒内噴射インジェクタ12のみを用いて燃料噴射を行うモード、ポート噴射インジェクタ22のみを用いて燃料噴射を行うモード、および各インジェクタ12,22を用いて燃料噴射を行うモードが予め用意されている。
【0037】
フィード圧制御では、機関運転状態に基づいて還流弁57を開弁または閉弁することにより、フィード圧力PFを制御するプレッシャレギュレータを切り替える。還流弁57が開弁状態のとき、低圧プレッシャレギュレータ56によりフィード圧力PFが制御される。還流弁57が閉弁状態のとき、高圧プレッシャレギュレータ55によりフィード圧力PFが制御される。
【0038】
プレフィード圧制御では、機関始動要求が検出されたことに基づいて所定期間にわたり低圧燃料ポンプ32を駆動することにより、クランキング開始前にフィード圧力PFを昇圧する。なお、クランキングはプレフィード圧力制御の終了にともない開始される。また、機関始動要求はイグニッションスイッチの操作に基づいて検出される。
【0039】
燃料保持制御では、機関運転状態に基づいて電磁弁80を開弁または閉弁することにより、機関停止中において各デリバリパイプ11,21内から燃料タンク31への燃料の流れを止める。
【0040】
フィード圧制御の詳細について説明する。
フィード圧力PFを第2制御圧力PF2に維持する要求があるとき(例えば機関低負荷時)、還流弁57が開弁状態に維持される。すなわち、低圧プレッシャレギュレータ56によるフィード圧力PFの制御が行われる。
【0041】
還流弁57が開弁状態にあり、かつフィード圧力PFが第2制御圧力PF2を上回るとき、共通配管52の燃料の一部が第2分岐配管54および低圧プレッシャレギュレータ56の順に還流配管51を流通して燃料タンク31に戻される。これにより、フィード圧力PFが第2制御圧力PF2またはその付近の圧力に維持される。
【0042】
フィード圧力PFを第1制御圧力PF1に維持する要求があるとき(例えば機関高負荷時)、還流弁57が閉弁状態に維持される。すなわち、高圧プレッシャレギュレータ55によるフィード圧力PFの制御が行われる。
【0043】
還流弁57が閉弁状態にあり、かつフィード圧力PFが第1制御圧力PF1を上回るとき、共通配管52の燃料の一部が第1分岐配管53および高圧プレッシャレギュレータ55の順に還流配管51を流通して燃料タンク31に戻される。これにより、フィード圧力PFが第1制御圧力PF1またはその付近の圧力に維持される。
【0044】
ところで、成層始動を適切に行うためには、機関始動要求に基づいて行われる筒内噴射インジェクタ12の最初の燃料噴射時に、筒内噴射圧力PDが高圧逆止弁62の開弁圧力PD2よりも大きい所定圧力PD3に維持されていることが要求される。
【0045】
一方、内燃機関1が高温状態のときに運転が停止された後の機関停止状態(以下、「デッドソーク時」)においては、機関本体の熱により燃料供給装置2内の燃料にベーパが発生する。ベーパは、低圧デリバリパイプ21および高圧燃料ポンプ33内において特に発生しやすい。
【0046】
機関始動時に高圧燃料ポンプ33内にベーパがあるときには、高圧燃料ポンプ33が空汲みをするため、筒内噴射圧力PDが所定圧力PD3まで昇圧されるまでの期間が長くなる。このため、機関始動要求が設定されてから筒内噴射インジェクタ12の最初の燃料噴射を行うまでの期間も長くなる。
【0047】
図2を参照して、電磁弁80の構造について説明する。
電磁弁80は、第1供給配管41の燃料の流通方向Y1に対して垂直方向(移動方向Y2)に移動可能な円盤状の弁体81と、弁体81を駆動するための力を発生するコイル82と、弁体81を一方向に付勢するコイルばね83と、これらの要素を収容するケース84とを含む。
【0048】
弁体81は、ケース84に対してケース84から突出する方向およびケース84内に収容される方向に移動する。コイルばね83は、弁体81がケース84から突出する方向に弁体81を付勢している。コイル82は、電力の供給を受けているとき、弁体81がケース84内に収容される方向の力を弁体81に付与する。
【0049】
図2(a)に示すように、コイル82に電力が供給されない非通電状態のとき、コイルばね83の付勢力により、弁体81の先端が弁体収容部41Zに突き当てられる。このとき、第1供給配管41内の通路が弁体81により閉鎖される。すなわち、第1供給配管41内の通路においての燃料の流れが弁体81により遮断される。
【0050】
図2(b)に示すように、コイル82に電力が供給される通電状態のとき、コイル82に発生する磁力により、弁体81がコイルばね83の付勢力に抗してケース84内に向けて移動する。これにより、弁体81の全てがケース84に収容されるようになる。このとき、第1供給配管41内の通路が弁体81により開放される。すなわち、第1供給配管41内の通路において上流側から下流側への燃料の流れが許容される。
【0051】
電子制御装置72は、燃料保持制御により電磁弁80を次のように制御する。
機関運転中においては、コイル82への通電を継続して行う。これにより、電磁弁80が開弁状態に維持される。また、機関停止要求に基づいて機関停止動作が行われたとき、コイル82への通電を停止する。これにより、機関停止状態においては電磁弁80が閉弁状態に維持される。また、機関停止状態において機関始動要求が検出されたとき、コイル82への通電を開始する。これにより、電磁弁80が閉弁状態から開弁状態に移行する。
【0052】
図3を参照して、デッドソーク時にベーパが発生する仕組みについて説明する。なお、ここではフィード圧力PFが高圧プレッシャレギュレータ55により調整される場合を想定している。また以下では、第1供給配管41および低圧デリバリパイプ21内において燃料の温度が最も高くなるポイントの燃料の温度(以下、「燃料温度TG」)を燃料供給装置2内の燃料の温度の代表値として用いる。
【0053】
図3(a)に示すように、燃料温度TGはデッドソーク開始される時間t20以降、次のように変化する。すなわち、時刻t20から時刻t24までの期間においては、時間の経過にともないデッドソーク開始時の温度TG0からデッドソーク時の最高温度TG1に向けて上昇する。また、時刻t24以降の期間においては、時間の経過にともない最高温度TG1から次第に低下する。
【0054】
図3(b)のグラフにおいて、実線LRはデッドソーク時の実燃圧PRの推移を、一点鎖線L1は燃料の蒸気圧PXの推移を、二点鎖線L2は燃料の受熱膨張にともない燃料圧力の推移をそれぞれ示している。実燃圧PRの推移は、燃圧センサ71の出力に基づいて算出された値に基づいて示されている。燃料の蒸気圧PXの推移は、燃料温度TGから換算された値に基づいて示されている。受熱膨張にともなう燃料圧力の推移は、同燃料圧力の推移が確認できる条件のもとで行われた試験結果から得られた値に基づいて示されている。
【0055】
蒸気圧PXは、時刻t20以降において次のように変化する。すなわち、時刻t20から時刻t24までの期間においては時間の経過にともない上昇する。また、時刻t24以降においては時間の経過にともない下降する。また、時刻t25以降においては、第1制御圧力PF1よりも小さい値となる。
【0056】
推定圧力PYは、時刻t20以降において次のように変化する。すなわち、時刻t20から時刻t21までの期間においては時間の経過にともない上昇する。また、時刻t21以降においては時間の経過にともない下降する。また、時刻t20から時刻t23までの期間においては、第1制御圧力PF1よりも大きい値となる。一方、時刻t23以降においては、第1制御圧力PF1よりも小さい値となる。
【0057】
実燃圧PRは、時刻t20以降において次のように変化する。すなわち、時刻t20から時刻t25までの期間においては第1制御圧力PF1に維持される。また、時刻t25以降においては、第1制御圧力PF1よりも小さい値となり、かつ時間の経過とともに下降する。
【0058】
ここで、蒸気圧PXが第1制御圧力PF1を上回るまでの時刻t20〜t22の期間を「第1期間T1」とし、蒸気圧PXが第1制御圧力PF1よりも大きい時刻t22〜t25までの期間を「第2期間T2」とし、蒸気圧PXが第1制御圧力PF1を下回った時刻t25以降を「第3期間T3」とする。
【0059】
また、高圧プレッシャレギュレータ55を燃料タンク31に戻される燃料の量を「燃料リーク量RQ」とし、デッドソーク時の燃料リーク量RQの総量を「総燃料リーク量RQT」とする。また、燃料供給装置2内で発生したベーパの体積を「ベーパ量VP」とし、デッドソーク時のベーパ量VQの総量を「総ベーパ量VPT」とする。
【0060】
図3(c)および(d)のそれぞれに、デッドソークが開始された後(時刻t20以降)の時間経過に対する総燃料リーク量RQTおよび総ベーパ量VPTのそれぞれの変化を示す。
【0061】
第1期間T1では、第1供給配管41内の燃料が高圧プレッシャレギュレータ55を介して燃料タンク31に戻される。このため、時間の経過にともない総燃料リーク量RQTが増加する。一方、実燃圧PR(第1制御圧力PF1)が蒸気圧PXを上回るため、燃料供給装置2内においてベーパが発生することはない。なお、第1供給配管41内の燃料が燃料タンク31に戻される理由は、推定圧力PYが第1制御圧力PF1よりも大きいことにあると考えられる。
【0062】
第2期間T2において、時刻t22から時刻t25までの期間は、実燃圧PR(第1制御圧力PF1)が蒸気圧PXを下回るため、燃料供給装置2内でベーパが発生する。このとき、ベーパの発生にともない、第1供給配管41内の燃料が高圧プレッシャレギュレータ55を介して燃料タンク31に押し出される。このため、時間の経過にともない燃料リーク量RQの総量が増加する。
【0063】
第2期間T2において、時刻t22から時刻t23までの期間は、推定圧力PYが第1制御圧力PF1よりも大きいため、燃料の受熱膨張によっても第1供給配管41内の燃料が高圧プレッシャレギュレータ55を介して燃料タンク31に押し出されていると予測される。また、時刻t23から時刻t25までの期間は、推定圧力PYが第1制御圧力PF1よりも小さいため、燃料の受熱膨張による第1供給配管41から燃料タンク31への燃料の押し出しは生じていないと予測される。
【0064】
すなわち、時刻t22から時刻t23の期間においての総燃料リーク量RQTの増加分は、ベーパの発生にともなう燃料リーク量RQの増加分と、燃料の受熱膨張にともなう燃料リーク量RQの増加分とを合わせたものに相当する。また、時刻t23から時刻t25の期間においての総燃料リーク量RQTの増加分は、ベーパの発生にともなう増加分に相当する。
【0065】
第3期間T3では、実燃圧PR(第1制御圧力PF1)が蒸気圧PXよりも大きいため、実燃圧PRおよび蒸気圧PXの関係から燃料供給装置2内においてベーパが発生することはない。一方、燃料温度TGの低下にともない燃料の体積収縮が生じるため、燃料供給装置2内には燃料の体積収縮分の空間が形成される。このとき、体積収縮による生じた空間にベーパが補填されるときにベーパの体積が若干増加する。
【0066】
図4および図5を参照して、燃料保持制御の実行により奏せられる効果について説明する。ここでは、内燃機関1から電磁弁80を省略した仮想の内燃機関を「仮想機関」として、この仮想機関の始動態様と内燃機関1の始動態様とを対比して上記効果の説明をする。なお、仮想機関は電磁弁80が設けられていない点を除いては内燃機関1と同じ構成を有するものとする。
【0067】
図4に、内燃機関1の始動態様を示す。
内燃機関1においては、運転停止時に電磁弁80により第1供給配管41が閉鎖されるため、機関本体からの受熱によりベーパの発生および燃料の受熱膨張が生じたとしても電磁弁80よりも下流側の燃料が高圧プレッシャレギュレータ55を介して燃料タンク31に戻されることはない。
【0068】
時刻t40において、イグニッションスイッチの操作に基づく機関始動要求が検出されたとき、プレフィード圧制御が開始される。機関停止状態において電磁弁80による燃料の保持が行われていたことにより、低圧燃料ポンプ32の燃料の吐出にともないフィード圧力PFが速やかに上昇する。
【0069】
時刻t41において、プレフィード圧制御の終了にともない内燃機関1のクランキングが開始される。クランキングの開始にともない高圧燃料ポンプ33による燃料の加圧動作が開始される。機関停止状態において電磁弁80による燃料の保持が行われていたことにより、高圧燃料ポンプ33の最初の加圧動作時から燃料の加圧が適切に行われるため、1回目の加圧動作が終了した時刻t42のときに筒内噴射圧力PDが加圧動作に応じた分だけ上昇する。そして、2回目の加圧動作が終了した時刻t43のときに筒内噴射圧力PDが成層始動に必要となる所定圧力PD3を上回る。
【0070】
図5に、仮想機関の始動態様を示す。
仮想機関においては、運転停止時に第1供給配管41が開放されているため、機関本体からの受熱によりベーパの発生および燃料の受熱膨張が生じたとき、第1供給配管41内の燃料が高圧プレッシャレギュレータ55を介して燃料タンク31に戻される。
【0071】
時刻t50において、イグニッションスイッチの操作に基づく機関始動要求が検出されたとき、プレフィード圧制御が開始される。機関停止状態において第1供給配管41内の燃料が燃料タンク31に流出したことにより、低圧燃料ポンプ32が駆動してもフィード圧力PFの上昇度合は緩慢となる。
【0072】
時刻t51において、プレフィード圧制御の終了にともない内燃機関1のクランキングが開始される。クランキングの開始にともない高圧燃料ポンプ33による燃料の加圧動作が開始される。機関停止状態においてベーパの発生および燃料の体積収縮に起因して燃料供給装置2内に大きな空間が形成されていることにより、少なくとも高圧燃料ポンプ33の最初の加圧動作では空汲みが行われるため、加圧動作が繰り返されるものの筒内噴射圧力PDが上昇しない。そして、高圧燃料ポンプ33内の空間が除去された時刻t53以降に燃料の加圧が適切に行われ、この時点から複数回の加圧動作が行われた時刻t54に筒内噴射圧力PDが成層始動に必要となる所定圧力PD3を上回る。
【0073】
このように、内燃機関1においては高圧燃料ポンプ33の最初の加圧動作から燃料の加圧が適切に行われるため、仮想機関と比較して、クランキング開始後のより早い時期に筒内噴射圧力PDが成層始動に必要となる所定圧力PD3に到達する。
【0074】
本実施形態によれば、以下に示す効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、第1供給配管41内の通路を閉鎖する弁として機関停止動作に応じて閉弁する電磁弁80が設けられているため、内燃機関1の運転停止動作に伴い第1供給配管41内の通路が速やかに閉鎖される。したがって、機関停止中において各デリバリパイプ11,21から燃料タンク31に戻される燃料の量を少なくすることができる。
【0075】
(2)電磁弁80に代えて機械式の逆止弁を用いた構成によれば、燃料の流れにともない弁体の位置が変動するため、燃料の圧力の脈動が大きくなる。これに対して、本実施形態では、電磁弁80が設けられているため、逆止弁が用いられる場合と比較して燃料の圧力の脈動を小さくすることができる。
【0076】
(3)本実施形態では、下流側分岐部41Xと上流側分岐部41Yとの間の区間に電磁弁80が設けられるため、1つの電磁弁で高圧デリバリパイプ11および低圧デリバリパイプ21のそれぞれから燃料タンク31への燃料の流れを止めることができる。
【0077】
(4)機関始動時に各デリバリパイプ11,21内が燃料で満たされていないときには、筒内噴射圧力PDが成層始動に必要となる所定圧力PD3まで筒内噴射圧力PDを昇圧するための時間が長くなる。その点、本実施形態では、内燃機関1の運転停止動作に伴い第1供給配管41内の通路が電磁弁80により閉鎖されるため、機関停止中において燃料リーク量RQが少なくなる。これにより、機関始動時において筒内噴射圧力PDを所定圧力PD3まで昇圧するための時間を短くすることができる。
【0078】
(5)本実施形態では、電磁弁80が通電状態において開弁状態となり、非通電状態において閉弁状態となるように制御されている。これにより、機関停止時における車載バッテリの電力の消費を抑制することができる。
【0079】
(6)本実施形態では、電磁弁80が通電および非通電により弁体81が移動するため、電動モータに減速機構を設けた上で弁体を動かす機構のものを電磁弁80の代わりに用いた場合と比較して、弁体81の応答速度が速くなる。これにより、機関停止後において、電磁弁80を非通電とすることにより、閉弁状態に移行するまでの時間を短縮することができる。
【0080】
(7)本実施形態では、電磁弁80が開弁状態のときに、弁体81が第1供給配管41から完全に退避するようになる。したがって、弁体81が燃料の流通方向Y1に対して燃料と干渉することが回避されるようになる。
【0081】
(その他の実施形態)
本発明の内燃機関の燃料供給装置の具体的な構成は、上記実施形態に例示した構成に限定されることなく、例えば以下のように変更することもできる。また以下の変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0082】
・上記実施形態では、電磁弁80が閉弁状態(全閉)および開弁状態(全開)の2つの状態のみであったが、電磁弁80の開度はこれに限定されることはない。例えば、電磁弁80は、コイル82への通電態様により、弁体81が第1供給配管41の移動方向Y2の中間位置に配置される状態(半開)のように様々な開度に制御することができる。これにより、電磁弁が全開および全閉のみの動作を行う場合と比較して、第1供給配管41の電磁弁80より上流側のフィード圧力PFをより細かく制御することができるようになる。これにより、低圧プレッシャレギュレータ56をより小さい設定圧力のものを用いても、フィード圧力PFを調整することができるようになる。したがって、低圧プレッシャレギュレータ56をより小さい設定圧力のものを用いる分、燃費を改善することができる。
【0083】
・上記実施形態では、成層始動を行ったが、機関始動時の筒内噴射インジェクタ12の第1噴射によって均質燃料する始動方法とすることもできる。また機関始動では、ポート噴射インジェクタ22によって始動することもできる。
【0084】
・上記実施形態では、電磁弁80が第1供給配管41の下流側分岐部41Xよりも上流側且つ上流側分岐部41Yよりも下流側に設けられたが、電磁弁80の第1供給配管41における配置位置はこれに限定されることはない。例えば、第1供給配管41の下流側分岐部41Xよりも下流側に電磁弁80を設けることもできる。ここで、下流側分岐部41Xよりも下流側に電磁弁80を設ける場合には、下流側分岐部41Xから高圧デリバリパイプ11までの区間および下流側分岐部41Xから高圧燃料ポンプ33までの区間のそれぞれに電磁弁80を設ける必要がある。
【0085】
・上記実施形態では、電磁弁80として、円盤状の弁体81を第1供給配管41に対して直線方向に移動させる仕切弁を用いたが、これに代えてバタフライ弁、玉形弁または逆止め弁当の他の構造の電磁弁を用いることもできる。
【0086】
・上記実施形態では、筒内噴射インジェクタ12およびポート噴射インジェクタ22を備える内燃機関1を想定したが、ポート噴射インジェクタ22を省略することもできる。反対に、筒内噴射インジェクタ12を省略することもできる。この場合には、高圧燃料ポンプ33も省略されるため、同ポンプ33の空汲みに起因する始動性の低下という問題は生じないものの、燃圧保持制御が実行されることにより、機関停止中に第1供給配管41および低圧デリバリパイプ21内から燃料タンク31内に戻される燃料の量は少なくされる。これにより、第1供給配管41および低圧デリバリパイプ21内に過度に大きな空間が形成された状態で機関始動が行われることが抑制される。
【0087】
・上記実施形態では、高圧プレッシャレギュレータ55および低圧プレッシャレギュレータ56を設ける構成であったが、プレッシャレギュレータの個数はこれに限定されることはない。例えば、高圧プレッシャレギュレータ55のみを設ける構成または低圧プレッシャレギュレータ56のみを設ける構成とすることもできる。この場合、還流弁57は省略される。
【0088】
・上記実施形態では、燃料供給装置をガソリンエンジンに適用したが、ディーゼルエンジンにも適用することもできる。
【符号の説明】
【0089】
1…内燃機関、2…燃料供給装置、3…制御装置、11…高圧デリバリパイプ(第1貯留管)、12…筒内噴射インジェクタ(第1燃料噴射弁)、21…低圧デリバリパイプ(第2貯留管)、22…ポート噴射インジェクタ(第2燃料噴射弁)、30…供給装置本体、31…燃料タンク、32…低圧燃料ポンプ、33…高圧燃料ポンプ、40…燃料配管、41…第1供給配管(燃料供給管A)、41X…下流側分岐部(供給管接続部)、41Y…上流側分岐部、41Z…先端収容部、42…第2供給配管(燃料供給管B)、43…バイパス管、51…還流配管、52…共通還流配管、53…第1分岐配管、54…第2分岐配管、55…高圧プレッシャレギュレータ(高圧調圧機構)、56…低圧プレッシャレギュレータ(低圧調圧機構)、57…還流弁、61…低圧逆止弁、62…高圧逆止弁、71…燃圧センサ、72…電子制御装置、80…電磁弁、81…弁体、82…コイル、83…コイルばね、84…ケース、91…燃焼室、92…吸気ポート(吸気通路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を貯蔵する燃料タンクと、同燃料タンク内の燃料を吐出する燃料ポンプと、燃料を噴射する燃料噴射弁と、同燃料噴射弁が設けられる燃料貯留管と、前記燃料ポンプから吐出された燃料が流れる燃料配管と、前記燃料ポンプと前記燃料貯留管とを接続する前記燃料配管の一部としての燃料供給管と、同燃料供給管内の燃料の圧力が制御圧力よりも大きいときに前記燃料供給管内の燃料を前記燃料タンクに戻す調圧機構とを含む内燃機関の燃料供給装置において、
前記燃料配管のうちの前記調圧機構と前記燃料貯留管との間には、前記燃料供給管内の通路を開放または閉鎖する電磁弁が設けられ、
前記電磁弁は、内燃機関の運転中に開弁状態に維持され、内燃機関の運転停止動作に伴い開弁状態から閉弁状態に切り替えられる
ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置において、
前記燃料噴射弁として、燃焼室に燃料を噴射する第1燃料噴射弁と、吸気通路に燃料を噴射する第2燃料噴射弁とを備え、
前記燃料貯留管として、前記第1燃料噴射弁が設けられる第1燃料貯留管と、前記第2燃料噴射弁が設けられる第2燃料貯留管とを備え、
前記燃料供給管として、前記燃料ポンプと前記第2燃料貯留管とを接続する燃料供給管Aと、同燃料供給管Aの中間の部分と前記第1燃料貯留管とを接続する燃料供給管Bとを備え、
前記燃料供給管Bには、前記燃料ポンプよりも吐出圧の大きい高圧燃料ポンプが設けられ、
前記燃料供給管Aのうちの同供給管Aに対する前記燃料供給管Bの接続部分を供給管接続部として、前記燃料配管のうちの同供給管接続部よりも上流側の部分に前記調圧機構が設けられる
ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の燃料供給装置において、
前記供給管接続部と前記調圧機構との間に前記電磁弁が設けられる
ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の内燃機関の燃料供給装置において、
前記燃料配管は、前記燃料供給管Aのうちの前記調圧機構よりも下流側の部分と前記燃料タンクとを接続する還流配管を含み、
前記調圧機構は、前記還流配管に設けられる
ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関の燃料供給装置において、
前記調圧機構として、前記燃料供給管Aに対する制御圧力が相対的に小さい低圧調圧機構と、前記燃料供給管Aに対する制御圧力が相対的に大きい高圧調圧機構とを備え、
前記還流配管には、前記低圧調圧機構および前記高圧調圧機構と、これら調圧機構に対する燃料の流通態様を変更する還流弁とが設けられ、
前記還流弁が閉弁状態のとき、かつ前記燃料供給管Aの燃料の圧力が前記高圧調圧機構の制御圧力よりも大きいとき、前記燃料供給管A内の燃料が前記高圧調圧機構を介して前記燃料タンクに戻され、
前記還流弁が開弁状態のとき、かつ前記燃料供給管Aの燃料の圧力が前記低圧調圧機構の制御圧力よりも大きいとき、前記燃料供給管A内の燃料が前記低圧調圧機構を介して前記燃料タンクに戻される
ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料供給装置を備える内燃機関において、
前記燃料供給装置は、燃焼室に燃料を噴射する前記燃料噴射弁と、前記燃料ポンプから吐出された燃料を加圧して前記燃料貯留管に供給する高圧燃料ポンプとを備えるものであり、
当該内燃機関は、機関始動時に成層燃焼を行うものである
ことを特徴とする内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−190773(P2011−190773A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59414(P2010−59414)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】