説明

内燃機関のクランク軸用のすべり軸受

【課題】異物がすべり軸受の摺動面と軸表面との間に混入し難くして、クランク軸表面に開口する油穴の通過部分に異物の滞留部を形成させないすべり軸受の提供。
【解決手段】本発明に係る主軸受およびコンロッド軸受は、一対の半円形軸受から成り、少なくとも一方の半円形軸受の内周面に、対をなす相手側半円形軸受との突き合せ端面のうち、クランク軸の回転方向に対して後端部側の周方向端面から軸受円周方向中央部に向かって、円周方向に潤滑油溝が形成されており、潤滑油溝の形成された周方向端部と突き合わされた相手側半円形軸受の内周面の周方向端部には、潤滑油溝と連通する2つの分岐溝が円周方向に形成され、2つの分岐溝は、幅方向に間隔を置いて配置され、2つの分岐溝の間の中間領域は、前記潤滑油溝に突き合わされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランク軸のジャーナル部用の主軸受、およびクランク軸のクランクピン部用のコンロッド軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のクランク軸は、そのジャーナル部において、一対の半円形軸受から成る主軸受を介して内燃機関のシリンダブロック下部に支持される。主軸受に対しては、オイルポンプによって吐出された潤滑油が、シリンダブロック壁内に形成されたオイルギャラリーから主軸受の壁に形成された貫通口を通じて主軸受の内周面に沿って形成された潤滑油溝内に送り込まれる。また、ジャーナル部の直径方向に第1潤滑油路が貫通形成され、この第1潤滑油路の両端開口が前記潤滑油溝と連通し、さらにまた、ジャーナル部の直径方向第1潤滑油路から分岐してクランクアーム部を通る第2潤滑油路が形成され、この第2潤滑油路が、クランクピンの直径方向に貫通形成された第3潤滑油路に連通している。かくして、シリンダブロック壁内のオイルギャラリーから主軸受の壁に形成された貫通口を通じて主軸受の内周面に形成された潤滑油溝内に送り込まれた潤滑油は、第1潤滑油路、第2潤滑油路および第3潤滑油路を経て、第3潤滑油路の端部出口から、クランクピンとコンロッド軸受の摺動面間に供給される。
【0003】
機関のシリンダブロックからクランク軸用の主軸受、クランク軸のジャーナル部を経てコンロッド軸受部に送られる潤滑油は、各部分の潤滑油路内に存在する異物を伴う可能性があり、この異物が潤滑油に付随してジャーナル部の主軸受の摺動面間やクランクピン部のコンロッド軸受の摺動面間に送られると、主軸受やコンロッド軸受の摺動面に損傷を与える危惧がある。
【0004】
潤滑油に混入する異物対策として、一対の半円形軸受で構成される、クランク軸ジャーナル部を支承する主軸受のうち、シリンダブロック壁内のオイルギャラリーから直接潤滑油の供給を受ける貫通口を有する半円形軸受の内周面全長に亘って円周方向の潤滑油溝と、該潤滑油溝と内周面の周方向端部にて連通し、半円形軸受の幅方向の端部に開口する異物排出のために軸線方向溝を設けて、潤滑油に付随する異物を排出することを企図した提案がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−69283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ジャーナル部用主軸受の半円形軸受の内周面の周方向溝に異物が進入すると、異物はクランク軸の相対回転方向の方向に流されるために、クランク軸の相対回転方向に対して後端方向に流れる。クランク軸の相対回転方向に沿った後端側の半円形軸受の周方向端面に開口する周方向溝の開口は、他方の半円形軸受の周方向端面により閉ざされる。そのために、半円形軸受の後端に異物が滞留しやすい。回転するクランク軸の表面に開口する潤滑油路の油穴が、ここを通過するときに、油穴の側面に引きずられて、半円形軸受の内周面を傷つける。すなわち、異物が、クランク軸表面に開口する油穴の回転方向の後方側の側面によりひきずられて、下側半円形軸受の摺動面をきずつける。
【0007】
また、油穴が、クランク軸の相対回転の後端部の異物の滞留したところを通過するときに、油とともに異物が軸内部の油路に進入して、異物はクランクピン部のすべり軸受の摺動面に送られて、摺動面を傷つける。
【0008】
特許文献1のように、異物排出のため軸線方向溝を形成しても、異物は潤滑油溝の軸回転方向後方側で滞留しやすいので、同様の問題が発生する。
【0009】
本発明の目的は、異物がすべり軸受の摺動面と軸表面との間に混入し難くすることである。
【0010】
本発明の別の目的は、クランク軸表面に開口する油穴の通過部分に異物の滞留部を形成させないすべり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る主軸受は、クランク軸を支える主軸受の内周面に供給された潤滑油が、クランク軸の内部潤滑油路を経て、コンロッドとクランク軸を連結するクランクピンを回転自在に支承するコンロッド軸受の内周面に供給されるように構成された内燃機関の主軸受である。この主軸受は、一対の半円形軸受から成り、少なくとも一方の半円形軸受の内周面に、対をなす相手側半円形軸受との突き合せ端面のうち、クランク軸の回転方向に対して後端部側の周方向端面から軸受円周方向中央部に向かって、円周方向に潤滑油溝が形成されており、潤滑油溝の形成された周方向端部と突き合わされた相手側半円形軸受の内周面の周方向端部には、前記潤滑油溝と連通する2つの分岐溝が円周方向に形成され、2つの分岐溝は、幅方向に間隔を置いて配置され、2つの分岐溝の間の中間領域は、前記潤滑油溝に突き合わされている。
【0012】
本発明は、クランク軸を支える主軸受の内周面に供給された潤滑油が、クランク軸の内部潤滑油路を経て、コンロッドとクランク軸を連結するクランクピンを回転自在に支承するコンロッド軸受の内周面に供給されるように構成された内燃機関のコンロッド軸受にも係る。
このコンロッド軸受は、一対の半円形軸受から成り、少なくとも一方の半円形軸受の内周面に、対をなす相手側半円形軸受との突き合せ端面のうち、クランクピンの回転方向に対して後端部側の周方向端面から軸受円周方向中央部に向かって、円周方向に潤滑油溝が形成されており、潤滑油溝の形成された周方向端部と突き合わされた相手側半円形軸受の内周面の周方向端部には、潤滑油溝と連通する2つの分岐溝が円周方向に形成され、2つの前記分岐溝は、幅方向に間隔を置いて配置され、2つの分岐溝の間の中間領域は、潤滑油溝に突き合わされている。
【0013】
2つの分岐溝の間の中間領域の円周方向端部での幅は、突き合わされた潤滑油溝の周方向端部の幅の20%以上70%以下であることが好ましい。
【0014】
また、2つの分岐溝の間の中間領域の幅は、半円形軸受の円周方向端面において最小で、半円形軸受の周方向中央部へ向かって次第に大きくなることが好ましい。
【0015】
分岐溝は、半円形軸受の幅方向の端面に開口していることができる。あるいは、分岐溝は、半円形軸受の内周面の幅方向端部で閉じられていることもできる。
【0016】
さらに、本発明は、クランク軸を支える主軸受の内周面に供給された潤滑油が、クランク軸の内部潤滑油路を経て、コンロッドとクランク軸を連結するクランクピンを回転自在に支承するコンロッド軸受の内周面に供給されるように構成された内燃機関であって、上記に記載された主軸受およびコンロッド軸のいずれか、または両方を有する内燃機関にも関する。さらに、この内燃機関を有する車両も本発明の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る内燃機関のクランク軸を、ジャーナル部およびクランクピン部でそれぞれ截断した模式図。
【図2】本発明に係る主軸受を含むジャーナル部の略断面図。
【図3】異物の流れを示す潤滑油溝および分岐溝の模式図。
【図4】本発明に係る潤滑油溝および分岐溝の他の態様を示す模式図。
【図5】本発明に係る潤滑油溝および分岐溝の他の態様を示す模式図。
【図6】本発明に係るコンロッド軸受を含むクランクピン部の略断面図。
【実施例】
【0018】
図1は、内燃機関のクランク軸を、ジャーナル部およびクランクピン部でそれぞれ截断した模式図であり、ジャーナル10、クランクピン12およびコンロッド14を示す。これら三部材の紙面奥行き方向での位置関係は、ジャーナル10が紙面の最も奥側にあり、手前側にクランクピン12があって、クランクピン12が、他端にピストンを担持するコンロッド14の大端部ハウジング16で包囲されている。
ジャーナル10は、一対の半円形軸受18A、18Bを介して、内燃機関のシリンダブロック下部に支持されている。図面では上側に位置する半円形軸受18Aは、その内周面全長に亘って潤滑油溝18aが形成されている。
また、ジャーナル10は、その直径方向貫通孔10aを有し、ジャーナル10が矢印X方向に回転すると、貫通孔10aの両端開口すなわち油穴が交互に潤滑油溝18aに連通する。
さらに、ジャーナル10、図示されないクランクアーム、および、クランクピン12を貫通して潤滑油路20が、クランク軸内部に形成されている。
【0019】
クランクピン12は、一対の半円形軸受22A、22Bを介して、コンロッド14の大端部ハウジング16(これは、コンロッド側大端部ハウジング16Aとキャップ側大端部ハウジング16Bから成る)に保持されている。半円形軸受22A、22Bは、それらの突き合せ端面を互いに突き合わせて組立てて円筒形のコンロッド軸受22になされている。主軸受も、2つの半円形軸受18A、18Bを突き合せ端面を互いに突き合わせて組立てて円筒形の主軸受になされている。
クランク軸を支える主軸受18A、18Bの内周面に供給された潤滑油が、クランク軸の内部潤滑油路20を経て、クランクピン表面の潤滑油出口から、コンロッド16とクランク軸を連結するクランクピン12を回転自在に支承するコンロッド軸受22の内周面に供給されるように構成されている。
【0020】
図2に、クランク軸のジャーナル部用の主軸受に適用した一例を示す。
上側の半円形軸受18Aには全長にわたってその円周方向に潤滑油溝30が設けられている。ジャーナル10内部に設けられた潤滑油路10aの開口(油穴)は潤滑油溝30に整合する幅方向位置に設けられている。
ここで、半円形軸受の円周方向に沿う前端および後端を定義する。クランク軸(ジャーナル)はX方向に回転するので、ジャーナルの表面の任意の一点は、上側半円形軸受18Aの端36Aに最初の接したあと、半円形軸受18Aの円周に沿って回転して他方の端34Aに到達する。そこで36Aを前端、34Aを後端と称する。他方、下側の半円形軸受18Bからみれば、端34Bが前端、端36Bが後端である。この定義はクランクピン部においても同じである。
【0021】
半円形軸受18Aの後端34Aと付き合わせられた半円形軸受18Bの前端34Bには、潤滑油溝30と連通する2つの周方向分岐溝32が設けられる。分岐溝32は、半円形軸受の幅方向に離隔して設けられ、それぞれの分岐溝32は潤滑油溝30の幅方向端部に連通するようになされている。2つの分岐溝32の間には、溝の形成されていない中間領域38が形成され、中間領域38の端面は潤滑油溝30の後端32Aに面している。
【0022】
図3に示すように、潤滑油溝30に油に付随して進入した異物28は、ジャーナル10の相対回転方向の後方に流れ、周方向後端部34Aに到達すると、半円形軸受18Bの周方向端面34Bの2つの分岐溝の間の中間領域38が障壁となり2つの分岐溝32に分岐して進入する。ジャーナル10の潤滑油路10aの油穴24は、ジャーナル10の回転とともに潤滑油溝上を通過する。そのために、分岐溝32に流入した異物上を油穴は実質的に通過しない。このようにしてジャーナル表面に開口する油穴24が通過する部分には、異物28の滞留しがちな部分が形成されなくなる。すなわち、油穴24の通過する部分に異物28が存在する確率が低くなる。このため、異物28が油穴24の側面に引きずられて、半円形軸受の内周面を傷つけたり、異物28が潤滑油とともにジャーナル10に形成された貫通穴を通ってコンロッド部に流れるという従来技術の問題点が起きがたい。
【0023】
図4に分岐溝の形状の他の例を示す。2つの分岐溝の間の中間領域38の幅は、半円形軸受の周方向端面において最小で、半円形軸受の周方向中央部へ向かって次第に大きくなるように形成する。異物28は、分岐溝32の後端(周方向中央部側)に集まるので、この後端部が半円形軸受の幅方向中央部から外れるようにすることにより、分岐溝32内のジャーナル10の表面に開口する油穴24が通過する部分には、異物28の滞留しがちな部分が形成されにくくなり、異物28が油穴24を通過することを更に抑制できる。
【0024】
分岐溝32は、半円形軸受18Bの内周面の周方向端部34Bから円周方向中央部に向かって形成されるが、半円形軸受18Bの周方向端部36B側にも同じ分岐溝32を形成することができる。このような形態にすると、すべり軸受を組み付ける際に誤って半円形軸受18Bの分岐溝32が半円形軸受18Aのジャーナル10の相対回転方向の前方側の端部36Aのみに組み付けられる虞がなくなる。
【0025】
図1および図2では、潤滑油溝30は、溝深さが半円形軸受18Aの周方向の全体に亘って一定とした場合を図示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、溝深さは、半円形軸受の周方向中央部から周方向両端部に向かって次第に小さくなるように、または、大きくなるように形成してもよく、半円形軸受のジャーナルの相対回転方向の後方側の周方向端部からジャーナルの相対回転先側の周方向端部へ向かって次第に小さくなるように、または、大きくなるように形成してもよい。
【0026】
さらに、潤滑油溝は、半円形軸受の全周にわたって形成される必要はなく、ジャーナルの回転方向の後端から円周方向中央部に向かって形成されていればよい。潤滑油溝は、前端36Aに開口せずに閉じられていてもよい。また、潤滑油溝は上下両方の半円形軸受に設けられても、いずれかの半円形軸受に設けられてもよい。分岐溝は、潤滑油溝の後端に付き合わせられた他方の半円形軸受の端部に設けられるので、潤滑油溝が両方の半円形軸受に設けられる場合には、両方の半円形軸受に分岐溝が設けられ、一方の半円形軸受に潤滑油溝が設けられる場合には、他方の半円形軸受に分岐溝が設けられる。
【0027】
潤滑油溝30の幅、深さの寸法は内燃機関の仕様により異なるため一定ではない。潤滑油溝30の幅寸法は、一般的には、ジャーナル10の表面に開口する油穴24の径と同程度になされる。乗用車用の内燃機関のジャーナル部用のすべり軸受の場合、一般的には、潤滑油溝の幅は3〜8mm程度、深さは0.8〜1.5mm程度になされる。
【0028】
分岐溝32の深さは、分岐溝の半円形軸受の円周方向端面において、対向する潤滑油溝30の深さの20%以上であれば、異物28は潤滑油溝30から分岐溝32に油とともに分岐して進入する。分岐溝32の深さと潤滑油溝30の深さが同程度であることがより好ましい。この構成により異物28の進入がよりスムーズになる。
【0029】
また、分岐溝32の深さが、半円形軸受の周方向中央部側へむかって次第に小さくすることも可能である、他方、一定の溝深さの溝でもよい。
【0030】
分岐溝32の形成範囲は、半円形軸受の周方向端面から、少なくとも5°、最大で45°の円周角度にすることが好ましい。円周角度が5°未満では、異物28が分岐溝32に流れにくくなり、円周角度が45°を超えると、半円形軸受の摺動面の面積が小さくなってしまう。
【0031】
2つの分岐溝32の間の中間領域(溝非形成領域)38の幅は、対向する潤滑油溝32の溝幅の20〜70%とすることが好ましい。20%未満であると潤滑油溝30を流れてきた異物28が、そのまま分岐溝32内でも直進しての先側のジャーナルの油穴24の通過する範囲に進入してしまうおそれがある。70%を超えると、潤滑油溝30と分岐溝32との連通部の断面積が小さくなり、異物28がスムーズに分岐溝32に進入しがたくなる。
【0032】
以上、図2および図4に示した分岐溝32は、半円形軸受18Bの幅方向の両端部に開いていた。しかし、図5に示すように、分岐溝32を形成する半円形軸受の幅方向の両端部には、溝非形成領域39を設けてもよい。この溝非形成領域39により、分岐溝の幅方向端部からの油の漏れ量が少なくすることができる。非形成領域39の幅寸法は、1mm以上とすればよい。
【0033】
潤滑油溝30、分岐溝32の横断面形状は実施例に限定されず、逆台形形状やその他の形状であってもよい。
【0034】
次に、図6にクランク軸のクランクピン用のすべり軸受(コンロッド軸受)に適用した例を示す。
クランクピン12部用のコンロッド軸受22はクランク軸内部油路からクランク軸表面に開口する潤滑油路20の油穴から供給される油に付随して異物が混入する。
コンロッド軸受のクランクピンの相対回転方向の後端部側に内周面に部分的に潤滑油溝40A、40Bが形成される。潤滑油溝40A、40Bは、異物を捕捉するために形成する。
潤滑油溝40A、40Bの形成範囲は、半円形軸受22A、22Bの周方向端面から、少なくとも5°、最大で45°の円周角度にすることが好ましい。5°未満では、異物が潤滑油溝40A、40Bに捕捉されにくくなり、45°を超えると、半円形軸受22A、22Bの摺動面の面積が小さくなってしまう。
【0035】
潤滑油溝40A、40Bの幅寸法は、クランク軸表面に開口する油穴の径寸法と同程度にすることが好ましい。油中に混入する異物のサイズは最大で0.1mm程度であるので、周方向端面における溝深さは0.1mm以上0.5mm以下にすればよい。
【0036】
半円形軸受22Aの端部と付き合わせられた半円形軸受22Bの端部には、潤滑油溝40A、41Bと連通するそれぞれ2つの周方向分岐溝42A、42Bが設けられる。分岐溝42A、42Bは、半円形軸受の幅方向に離隔して設けられ、それぞれの2つの分岐溝42A、42Bは潤滑油溝40A、40Bの幅方向端部に連通するようになされている。各端部の2つの分岐溝42A、42Bの間には、溝の形成されていない中間領域が形成され、中間領域の端面は潤滑油溝40A、40Bの後端に面している。
その他、クランクピン用のコンロッド軸受に適用する場合の分岐溝42A、42Bの構成は、ジャーナル部の例で説明した分岐溝32と同じにでき、ジャーナル部の例の説明が、クランクピン用のコンロッド軸受の分岐溝42A、42Bにも適用できる。
コンロッド軸受に適用する場合には、潤滑油溝と分岐溝との連通部における潤滑油溝と分岐溝の溝深さは同じにすることが好ましい。
一対の半円形軸受に対しクランク軸の相対回転方向の前方側と後方側の両方の突き合わせ面の内周面に潤滑油溝および分岐溝を設けた例を示したが、何れか一方の突き合せ面にのみ形成することもできる。
【0037】
主軸受、コンロッド軸受のいずれにおいても、半円形軸受の各円周方向端面に隣接する軸受内周面には面取やクラッシュリリーフを形成してもよい。ここで、クラッシュリリーフとは、半円形軸受の円周方向端面に近い部分の軸受壁を内周面側で除去することによって形成された、軸受内周面の曲率中心とは異なる曲率中心を有する減厚領域(円周方向端面に向かって厚さを減じた領域を指し、SAE J506(項目3.26、項目6.4参照)、DIN1497、§3.2で規定されるとおりである)を意味する。
【0038】
以上、実施例に即して本発明を説明したが、本発明はこれらに限らず、特許請求の範囲に記載された範囲内で種々の変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 ジャーナル
10a ジャーナルの直径方向貫通孔
12 クランクピン
14 コンロッド
16 大端部ハウジング
16A コンロッド側大端部ハウジング
16B キャップ側大端部ハウジング
18A、18B 半円形軸受
20 潤滑油路
22 コンロッド軸受
22A、22B 半円形軸受
24 潤滑油路の開口
28 異物
30 潤滑油溝
32 分岐溝
34A、34B 円周方向端面
36A、36B 円周方向端面
38 中間領域(溝非形成領域)
39 溝非形成領域
40A、40B 潤滑油溝
42A、42B 分岐溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸を支える主軸受の内周面に供給された潤滑油が、前記クランク軸の内部潤滑油路を経て、コンロッドと前記クランク軸を連結するクランクピンを回転自在に支承するコンロッド軸受の内周面に供給されるように構成された内燃機関の前記主軸受であって、
前記主軸受が一対の半円形軸受から成り、
少なくとも一方の前記半円形軸受の内周面に、対をなす相手側半円形軸受との突き合せ端面のうち、前記クランク軸の回転方向に対して後端部側の周方向端面から軸受円周方向中央部に向かって、円周方向に潤滑油溝が形成されており、
前記潤滑油溝の形成された周方向端部と突き合わされた相手側半円形軸受の内周面の周方向端部には、前記潤滑油溝と連通する2つの分岐溝が円周方向に形成され、
2つの前記分岐溝は、幅方向に間隔を置いて配置され、2つの前記分岐溝の間の中間領域は、前記潤滑油溝に突き合わされている、主軸受。
【請求項2】
前記中間領域の円周方向端部での幅は、突き合わされた前記潤滑油溝の周方向端部の幅の20%以上70%以下であることを特徴とする請求項1に記載された主軸受。
【請求項3】
前記中間領域の幅は、前記半円形軸受の円周方向端面において最小で、前記半円形軸受の周方向中央部へ向かって次第に大きくなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された主軸受。
【請求項4】
前記分岐溝は、前記半円形軸受の幅方向の端面に開口していることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された主軸受。
【請求項5】
前記分岐溝は、前記半円形軸受の内周面の幅方向端部で閉じられていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された主軸受。
【請求項6】
クランク軸を支える主軸受の内周面に供給された潤滑油が、前記クランク軸の内部潤滑油路を経て、コンロッドと前記クランク軸を連結するクランクピンを回転自在に支承するコンロッド軸受の内周面に供給されるように構成された内燃機関の前記コンロッド軸受であって、
前記コンロッド軸受が一対の半円形軸受から成り、
少なくとも一方の前記半円形軸受の内周面に、対をなす相手側半円形軸受との突き合せ端面のうち、前記クランクピンの回転方向に対して後端部側の周方向端面から軸受円周方向中央部に向かって、円周方向に潤滑油溝が形成されており、
前記潤滑油溝の形成された周方向端部と突き合わされた相手側半円形軸受の内周面の周方向端部には、前記潤滑油溝と連通する2つの分岐溝が円周方向に形成され、
2つの前記分岐溝は、幅方向に間隔を置いて配置され、2つの前記分岐溝の間の中間領域は、前記潤滑油溝に突き合わされている、コンロッド軸受。
【請求項7】
前記中間領域の円周方向端部での幅は、突き合わされた前記潤滑油溝の周方向端部の幅の20%以上70%以下であることを特徴とする請求項6に記載されたコンロッド軸受。
【請求項8】
前記中間領域の幅は、前記半円形軸受の円周方向端面で最小になり、前記半円形軸受の周方向中央部へ向かって次第に大きくなることを特徴とする請求項6または請求項7に記載されたコンロッド軸受。
【請求項9】
前記分岐溝は、半円形軸受の幅方向の端面に開口していることを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載されたコンロッド軸受。
【請求項10】
前記分岐溝は、半円形軸受の内周面の幅方向端部で閉じられていることを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載されたコンロッド軸受。
【請求項11】
クランク軸を支える主軸受の内周面に供給された潤滑油が、前記クランク軸の内部潤滑油路を経て、コンロッドと前記クランク軸を連結するクランクピンを回転自在に支承するコンロッド軸受の内周面に供給されるように構成された内燃機関において、前記主軸受が請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された主軸受であるか又は前記コンロッド軸受が請求項6から請求項10までのいずれか1項に記載されたコンロッド軸受である、内燃機関。
【請求項12】
請求項11に記載された内燃機関を有する車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−52558(P2012−52558A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193030(P2010−193030)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】