説明

内燃機関のシリンダヘッド組立体

【課題】 部品点数が少なくて製造コストが安価なシリンダヘッド組立体を提供する。
【解決手段】 本発明のシリンダヘッド組立体は、吸気弁および排気弁を保持するシリンダヘッド2と、ヘッドカバー組立体とを具備する。ヘッドカバー組立体は、シリンダヘッド上に取付けられるヘッドカバー本体3と、このヘッドカバー本体に取付けられると共に吸気弁および排気弁を駆動するカムシャフト14、15のうち少なくとも一つを支持するシャフト支持部材17とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッド組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダヘッドには吸気ポートおよび排気ポートをそれぞれ開閉するための吸気弁および排気弁が設けられ、これら吸気弁および排気弁は、クランクシャフトに同期して回転せしめられるカムシャフトに一体的に形成された吸気カムおよび排気カムによって駆動せしめられる。多くの内燃機関では、カムシャフトはシリンダヘッドに形成された軸受部によって支持される。
【0003】
カムシャフトを支持するための軸受部をシリンダヘッドに形成する場合、軸受部は吸気弁(または排気弁)を駆動するためのカムの間に配置される。したがって、これら軸受部は、隣り合った気筒に対応する吸気弁を駆動するカムの間に配置されるか、または1気筒あたり複数の吸気弁が設けられる場合には各気筒に対応する複数の吸気弁を駆動するカムの間に配置される。一方、多くの内燃機関では、カムシャフトの下方にシリンダヘッドをシリンダブロックに取付けるためのヘッドボルトが配置されることになる。このため、シリンダヘッドに対して軸受部を配置する位置は、ヘッドボルトを配置する位置に応じて制限されることとなり、カムシャフトを支持するための軸受部の位置についての設計自由度は低いものとなっていた。
【0004】
そこで、特許文献1に記載のシリンダヘッド構造では、シリンダヘッド本体に上記軸受部を配置せず、カムシャフトを支持するためのカムキャリアをシリンダヘッドと別体として形成し、このカムキャリアをシリンダヘッドに取付けるようにしている。カムシャフトを支持するためのカムキャリアはヘッドボルトの位置による制限を受けずに任意の位置に配置することができるため、特許文献1に記載のシリンダヘッド構造によればカムシャフトを支持するためのカムキャリアの設計自由度は高いものとされる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−146822号公報
【特許文献2】特開2003−227321号公報
【特許文献3】特開平11−247710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、シリンダヘッドと別体としてカムキャリアを設ける場合、シリンダヘッドに軸受部を形成する場合と比べて部品点数が多くなる。特に、カムキャリアが一部品として増えるだけでなく、カムキャリアをシリンダヘッドに取付けるためのボルトが必要となる。このため、シリンダヘッド組立体の構造が複雑になると共に必要な製造工程が多くなり、結果として製造コストの増大という結果を招いていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、部品点数が少なくて製造コストが安価なシリンダヘッド組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の発明では、吸気弁および排気弁を保持するシリンダヘッドと、ヘッドカバー組立体とを具備し、上記ヘッドカバー組立体は、上記シリンダヘッド上に取付けられるヘッドカバー本体と、上記吸気弁および排気弁を駆動するカムシャフトのうち少なくとも一つを上記ヘッドカバー本体に支持させるシャフト支持手段とを有する内燃機関のシリンダヘッド組立体が提供される。
第1の発明によれば、シャフト支持手段により、カムシャフトはシリンダヘッドではなく、ヘッドカバー本体に支持される。このため、シリンダヘッドには、カムシャフトを支持するための軸受部やカムキャリアを設ける必要がなく、ヘッドボルトの取付け場所のみを確保すればよい。したがって、第1の発明によれば、シリンダヘッドにはヘッドボルトの取付け場所のみを確保すればよいためシリンダヘッドの設計自由度を高く維持することができると共に、カムキャリアおよびそれに付属する取付ボルトが不要になるため、部品点数を削減することができる。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、上記ヘッドカバー組立体がアルミニウムよりも軽量な材料で製造される。
多くの内燃機関では、一般に、シリンダヘッドはアルミニウムまたはアルミニウム合金で製造されている。したがって、従来から、カムキャリア等、カムシャフトを支持するための構成要素も同様にアルミニウム等で製造されている。第2の発明によれば、ヘッドカバー組立体、特にシャフト支持手段がシリンダヘッドよりも軽量な材料で形成される。すなわち、カムシャフトを支持するための構成要素が軽量な材料で形成されており、結果として機関本体(エンジン)全体の重量を低減することができる。
【0010】
第3の発明では、第1または第2の発明において、上記ヘッドカバー本体には上記カムシャフトを支持する軸受部が形成され、上記シャフト支持部材は上記カムシャフトを上記軸受部上に位置決めしつつ該カムシャフトを支持するカムキャップを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カムキャリアおよびそれに付属する取付ボルトが不要になるため、部品点数を削減することができ、よって製造コストが安価なシリンダヘッド組立体が提供される。
【0012】
第2の発明によれば、カムシャフトを支持するための構成要素が軽量な材料で形成されるため、機関本体全体の重量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の内燃機関のシリンダヘッド組立体について説明する。図1〜図4は、本発明のシリンダヘッド組立体の実施形態を示しており、本実施形態では本発明のシリンダヘッド組立体が3気筒の内燃機関に用いられる場合について説明するが、本発明のシリンダヘッド組立体は3気筒の内燃機関に限られず、4気筒、V型8気筒等、さまざまな内燃機関に用いることができる。図1は、シリンダヘッド組立体の側面図であり、図2および図3はそれぞれ図1の断面線II−IIおよび断面線III−IIIに沿って見たシリンダヘッド組立体の断面図である。また、図4は、シリンダヘッド組立体を下方から見た分解斜視図である。なお、本明細書では、図1の矢印Aの方向を上、矢印Aと反対向きの方向を下として説明するが、実際には矢印Aの方向が鉛直方向上向きでなくてもよく、例えば水平方向等であってもよい。
【0014】
図1に示したように、シリンダヘッド組立体1はシリンダヘッド本体2とヘッドカバー本体3とを有する。シリンダヘッド本体2は、ピストンが往復運動する複数のシリンダを有するシリンダブロック(図示せず)上にガスケットまたはシールを介して取付けられる。ヘッドカバー本体3は、シリンダヘッド本体2の上方に、シリンダヘッド本体2の上面を覆うように配置される。シリンダヘッド本体2とヘッドカバー本体3との間の接触面にはガスケットまたはシール(図示せず)が配置される。
【0015】
図2に示したように、シリンダヘッド本体2には、シリンダブロックに形成されるシリンダ(図示せず)内に吸気ガスを流入されるための吸気ポート5と、シリンダ内から排気ガスを流出させるための排気ポート6とが設けられる。さらに、シリンダヘッド本体2には、吸気ポート5を開閉するための吸気弁7と、排気ポート6を開閉するための排気弁8とが設けられる。本実施形態では、各シリンダあたり二つの吸気弁7および二つの排気弁8が設けられるが、各シリンダあたりの弁の数はこれとは異なる数であってもよい。
【0016】
吸気弁7および排気弁8はバルブスプリング9により閉弁方向に付勢され、それぞれロッカーアーム10を介して吸気カム11および排気カム12により開弁方向に駆動せしめられる。ロッカーアーム10の一方の端部は吸気弁7または排気弁8と係合し、他方の端部はラッシュアジャスタ13と係合しており、またロッカーアーム10の中央部はカム11、12と接触している。ロッカーアーム10は、吸気カム11および排気カム12との接触部にローラが用いられており、ロッカーアーム10とこれらカム11、12との間の摩擦を低減することができる。また、ラッシュアジャスタ13により、ロッカーアーム10とカム11、12との隙間は常に零に保たれる。
【0017】
吸気カム11および排気カム12は、吸気カムシャフト14および排気カムシャフト15にそれぞれ固定されており、これらカムシャフト14、15の回転に伴って回転せしめられる。カムシャフト14、15は、タイミングベルト(図示せず)によりクランクシャフト(図示せず)に同期して回転せしめられる。カムシャフト14、15は、ヘッドカバー組立体に形成された軸受孔16に回転可能に支持される(図3参照)。
【0018】
図3に示したように、ヘッドカバー組立体は、ヘッドカバー本体3とカムキャップ17とを有する。ヘッドカバー本体3は、シリンダヘッド組立体がシリンダブロック上に載置された際にシリンダの並ぶ方向(以下、「シリンダ整列方向」と称す)に対して垂直方向に延びる壁状部分18を有し、これら壁状部分18は吸気ポート5側(図3において右側)と排気ポート6側(図3において左側)とにおいてそれぞれシリンダ整列方向に等間隔に複数個配置される。各ポート5、6側に配置される各壁状部材18は、隣り合う二つのシリンダの間の領域に対応するヘッドカバー本体3上の領域および両端のシリンダの外側の領域に対応するヘッドカバー本体3上の領域に配置され、すなわち隣り合う二つの壁状部材18の間の領域にシリンダが位置するように配置せしめられる。本実施形態では、3気筒の内燃機関が用いられているため、ヘッドカバー本体3には各ポート5、6側について4つの壁状部材18が設けられる。
【0019】
各カムキャップ17は、各壁状部材18の下面に配置され、二つのキャップ用ボルト19によって壁状部材18に繋止される。壁状部材18にはカムキャップ17と対面する側に半円筒状の軸受部20が形成され、カムキャップ17には壁状部材18と対面する側に、壁状部材18に形成された軸受部20と整列するように半円筒状の軸受部21が形成される。これら軸受部20、21は、カムシャフト14、15を回転可能に支持するための軸受孔16を画成する。したがって、吸気カムシャフト14および排気カムシャフト15は、壁状部材18が配置された位置において、すなわちそれぞれ隣り合う二つのシリンダの間の領域および両端のシリンダの外側の領域において支持される。また、図4から分かるように、カムシャフト14、15と対面する軸受部20、21の面上にはメタルベアリング22が配置され、カムシャフト14、15と軸受部20、21との間の摩擦を低減している。
【0020】
また、シリンダヘッド本体2にヘッドカバー本体3が取付けられた場合に、壁状部材18およびカムキャップ17によって形成される軸受孔16の下方には、シリンダヘッド本体2をシリンダブロックに締結するためのヘッドボルト(図示せず)を挿入するためのボルト孔23が配置される。したがって、本実施形態では、シリンダヘッド本体2をヘッドボルトによりシリンダブロックに締結した後に、カムシャフト14、15を支持するヘッドカバー組立体がシリンダヘッド本体2に取付けられる。
【0021】
本実施形態では、ヘッドカバー組立体、すなわちヘッドカバー本体3およびカムキャップ17は、マグネシウムまたはマグネシウム合金で製造される。しかしながら、ヘッドカバー組立体の材料はこれに限られず、通常シリンダヘッド本体2を構成するアルミニウムまたはアルミニウム合金よりも軽量であれば、如何なる非鉄金属(チタン等)または樹脂材料(FRP等)で製造されてもよい。
【0022】
ところで、本発明では、カムシャフトがヘッドカバー組立体に支持されているが、従来のシリンダヘッド組立体ではカムシャフトは、例えば、シリンダヘッドとは別体として形成され且つシリンダヘッドに取付けられたカムキャリアに支持されている。このように、カムシャフトをシリンダヘッドに直接形成された軸受部によって支持せずに、シリンダヘッドとは別体のカムキャリアによって支持している理由は、例えば、シリンダヘッドに軸受部を直接形成することによる設計自由度の低下を防止することにある。すなわち、カムシャフトの軸受部を配置するのに最適な場所と、シリンダヘッドをシリンダブロックに締結するためのヘッドボルト用のボルト孔を配置するのに最適な場所とがシリンダヘッドのほぼ同一の場所であるため、これらを共に最適に配置するためのシリンダヘッドの設計は限られたものとなってしまうので、このような事態を回避するためである。
【0023】
ところが、このようにシリンダヘッドとは別体のカムキャリアをシリンダヘッドに配置する構成では、シリンダヘッドの設計自由度を確保することができるようになる反面、カムキャリア自体に加えてカムキャリアをシリンダヘッドに締結するためのボルト等が必要となるため、シリンダヘッド組立体を構成する部品点数が多くなる。すなわち、この構成では、カムキャリアおよびその締結用ボルトと、カムキャリアと協動して軸受孔を画成するカムキャップおよびその締結用ボルトとが必要である。このため、シリンダヘッド組立体の構造が複雑になると共に、シリンダヘッド組立体の製造に必要な工程が多くなり、結果として製造コストの増大という結果を招いていた。
【0024】
これに対して、本発明のシリンダヘッド組立体では、カムシャフト14、15はシリンダヘッド本体2ではなくヘッドカバー本体3によって支持されている。さらに、本発明では、ヘッドカバー本体3に形成された軸受部20によってカムシャフト14、15が支持されており、カムキャリアに対応する部品が不要である。このため、シリンダヘッド組立体を構成する部品点数も少なく、よって製造コストの増大という問題も解決される。
【0025】
また、従来のシリンダヘッド組立体では、カムシャフトを支持するための構成要素(例えば、カムキャップ、カムキャリア、軸受部を形成するシリンダヘッドの部分)は、シリンダヘッドの材料と同一の材料、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成されている。これに対して、本発明のシリンダヘッド組立体では、カムシャフト14、15を支持するための構成要素(すなわち、カムキャップ17および壁状部分18)は、シリンダヘッド本体2を形成するアルミニウム等よりも軽量な材料で形成されている。したがって、本発明のシリンダヘッド組立体は、従来のシリンダヘッド組立体よりも軽量であり、ひいては内燃機関全体および車両重量全体を軽量化することができる。
【0026】
図2および図3を参照すると、吸気カムシャフト14および排気カムシャフト15は、共に中空であり、これらカムシャフト14、15の軸線方向に延びるオイル通路(以下、「軸線オイル通路」と称す)25、26をそれぞれ有する。また、これらカムシャフト14、15は、軸線オイル通路25、26に対して垂直に延びるオイル通路(以下、「垂直オイル通路」と称す)27、28をそれぞれ有する。垂直オイル通路27、28の一方の端部は、軸線オイル通路25、26に連通しており、他方の端部はカムシャフト14、15の外面に連通している。また、垂直オイル通路25、26は、カムシャフト14、15が軸受部20、21によって支持される位置に配置されており、従って、垂直オイル通路25、26の上記他方の端部はカムシャフト14、15と軸受部20、21との間の接触部に連通している。これにより、カムシャフト14、15と軸受部20、21との間に潤滑油が供給されるようになる。
【0027】
また、カムキャップ17の軸受部21の軸受面およびこの軸受面上に載置されるメタルベアリングには貫通孔(図示せず)が設けられており、この貫通孔はカムキャップ17の外面に配置された小孔29に連通している。小孔29は、カムキャップ17に隣接するカム11、12とロッカーアーム10のローラとの間の接触部に向けられており、したがって、カムシャフト14、15の垂直オイル通路27、28を通った潤滑油の多くは上記貫通孔および小孔29を介してカム11、12とロッカーアーム10との間の接触部に向けて噴射される。これにより、この接触部にも潤滑油が供給されるようになる。
【0028】
したがって、本実施形態のシリンダヘッド組立体では、オイルポンプ(図示せず)により加圧された潤滑油が軸線オイル通路25、26に供給され、この軸線オイル通路25、26を介して各垂直オイル通路27、28に流入せしめられ、該通路27、28を径方向外側へ向かって流れる。そして、垂直オイル通路27、28から流出した潤滑油の一部はカムシャフト14、15と軸受部20、21との間に供給され、これによりこれらの間の摩擦が低減される。また、垂直オイル通路27、28から流出した潤滑油の残りは、貫通孔および小孔29を介してカム11、12とロッカーアーム10との間の接触部に向けて噴射され、これによりこれらの間の摩擦が低減される。
【0029】
ところで、カムとロッカーアームとの間の接触部に潤滑油を供給するにあたっては、従来、潤滑油供給用パイプがカムシャフト等とは別体としてヘッドカバー等に取付けられている。また、このような潤滑油供給用パイプはカムとロッカーアームとの間の接触部から離れて配置されており、目標とした領域に正確に潤滑油を供給するのが困難であった。このため、上記接触部における油膜切れによる摩擦の増大や、潤滑油供給用パイプから広範囲に渡って潤滑油を噴射することによるオイルポンプの負荷増大等を招いていた。
【0030】
これに対して、本発明では、潤滑油はカムシャフト14、15内を通って供給されるため、潤滑油供給用パイプを別体として設ける必要がなく、よってシリンダヘッド組立体を構成する部品点数を低減することができ、シリンダヘッド組立体の製造に必要な工程を減少させることができる。また、本発明では、カムキャップ17に形成された小孔29からカム11、12とロッカーアーム10との間の接触部までの距離は短く、よってこの接触部に潤滑油を正確に供給することができるようになる。このため、上記接触部における摩擦の増大やオイルポンプの負荷増大を防止することができる。
【0031】
図5は、図1の断面線V−Vに沿って見たシリンダヘッド組立体の断面図である。図から分かるように、ヘッドカバー本体3の一方の端部にはオイルコントロールバルブ(油圧アクチュエータ。以下、OCVと称す)30および油圧ポート31a〜31eが配置されている。
【0032】
ところで、吸気弁または排気弁の位相角を連続的に変更する位相角変更機構を有する場合、吸気弁または排気弁の位相角は後述するようにOCVによって制御される。位相角変更機構は後述するようにカムシャフトの端部に取付けられる。このため、従来のシリンダヘッド組立体においては、カムシャフトがシリンダヘッド本体に支持される関係上、位相角変更機構も同様にシリンダヘッド本体に取付けられていた。
【0033】
これに対して、本発明では、カムシャフト14、15がヘッドカバー組立体に支持されており、OCV30がヘッドカバー本体3に取付けられている。このため、OCV30のスプール31を受容するOCV用開口32はヘッドカバー本体3によって画成される。上述したように、本実施形態では、ヘッドカバー本体3はマグネシウム合金等により製造されており、シリンダヘッド本体2よりも軽量であるため、OCVがシリンダヘッド本体に配置される場合に比べてシリンダヘッド組立体全体の重量を軽減することができ、ひいては機関本体の重量を軽減することができる。
【0034】
以下、図6を用いて本実施形態で用いられる位相角変更機構について説明する。図6中、35は位相角変更機構、36は油圧ポンプである。
【0035】
位相角変更機構35は、いわゆるベーン式位相角変更機構であり、内燃機関のクランクシャフト(図示せず)からベルトにより回転駆動されるタイミングプーリ37と、そのタイミングプーリ37と一体になって回転駆動されるハウジング38と、このハウジング38内に回動可能に配置され、ハウジング38内に進角油圧室39と遅角油圧室40とを区画形成する、カムシャフト14、15に連結されたベーン体41とを備える。ベーン式位相角変更機構35では、上記進角油圧室39と遅角油圧室40とに作動油を供給することにより、ハウジング38とベーン体41とを相対的に回動させてクランクシャフトとカムシャフトとの回転位相を変化させて吸気弁7等の位相角を変更する。すなわち、進角油圧室39に作動油を供給するとともに遅角油圧室40から作動油を排出することにより、ベーン体41をハウジング38に対して位相角が進角する側に相対回動させ、遅角油圧室40に作動油を供給し進角油圧室39から作動油を排出することにより、ベーン体41をハウジング38に対して位相角が遅角する方向に相対回動させる。
【0036】
このような各油圧室39、40内の作動油圧力の制御、すなわちこれら油圧室39、40への作動油の供給制御はOCV30によって行われる。OCV30は、スプール31を有するスプール弁であり、進角油圧室39に通じる油圧ポート31a、遅角油圧室40へ通じる油圧ポート31b、機関出力軸に駆動される油圧ポンプ36に接続されたポート31c及び2つのドレーンポート31d、31eを備えている。OCV30のスプール31はポート31aと31bのうちの何れかをポート31cに連通し、他方をドレーンポートに接続するように動作する。
【0037】
すなわち、図6においてスプール40が右方向に移動すると、進角油圧室39に連通するポート31aはポート31cを介して油圧ポンプ36に接続され、ドレーンポート31dは閉鎖される。また、この時同時に遅角油圧室40に通じるポート31bはドレーンポート31eに連通する。このため、位相角変更機構35の進角油圧室39には、油圧ポンプ36から作動油が流入し、進角油圧室39内の油圧を上昇させてベーン体41を図6の矢印R方向(進角方向)に押動する。また、この時遅角油圧室40内の作動油はOCV52のポート31bを通りドレーンポート31eから排出される。このため、ベーン体41はハウジング38に対して図6のR方向に回動する。
【0038】
また、図6において逆にスプール40が左方向に移動すると、ポート40bはポート40cに接続され、ポート40aはドレーンポート40dに接続される。これにより、遅角油圧室40には作動油が流入し、進角油圧室39からは作動油が排出されるため、ベーン体41はハウジング38に対して図6の矢印Rとは逆の方向に回動する。
【0039】
スプール31はリニアソレノイドアクチュエータ61により駆動される。リニアソレノイドアクチュエータ42は電子制御ユニット43からの制御パルス信号を入力し、この制御パルス信号に応じてスプール31を移動させることにより、ベーン体41の位置、すなわち位相角を変更する。
【0040】
図7は、図1の断面線VII−VIIに沿って見たシリンダヘッド組立体の断面図である。図から分かるように、ヘッドカバー本体3の上記OCV30が取付けられた端部とは反対側の端部には高圧燃料ポンプ50を取付けるための取付け座51が設けられており、この取付け座51には高圧燃料ポンプ50が配置されている。この高圧燃料ポンプ50は、ボルト(図示せず)等によりヘッドカバー本体3に取付けられている。高圧燃料ポンプ50はプッシュロッド52を有しており、このプッシュロッド52を上下動させることにより燃料をポンピングし、加圧するものである。
【0041】
一方、排気カムシャフト15の端部には、偏心カム(例えば、図7に示したようなほぼ三角形状のカム)53が一体的に形成されており、この偏心カム53は高圧燃料ポンプ50のプッシュロッド52の先端と接するように配置される。このため、排気カムシャフト15が回転すると偏心カム53が回転し、これにより偏心カム53と接しているプッシュロッド52が上下動せしめられ、燃料のポンピングが行われる。
【0042】
このように、本発明では、高圧燃料ポンプ50を取付けるための取付け座51がヘッドカバー本体3に形成される。上述したように、ヘッドカバー本体3はマグネシウム合金等の軽量材料で製造されるため、高圧燃料ポンプ用の取付け座をシリンダヘッド本体に形成した場合に比べてシリンダヘッド組立体全体を軽量化することができ、その結果、機関本体の重量を低減することができる。
【0043】
また、ヘッドカバー本体3の下方にはカムキャップ17’が設けられている。このカムキャップ17’はヘッドカバー本体3と共にカムシャフト用の軸受孔16を画成すると共に、偏心カム53の下方に位置する油受け部54を有する。油受け部54は、排気カムシャフト15を中心とした円弧状の部材であり、排気カムシャフト15が回転しても偏心カム53の頂部が油受け部54と接触しない範囲内で最も排気カムシャフト15に近接して配置される。油受け部54には潤滑油が溜まるため、偏心カム53が回転することにより偏心カム53の表面上に潤滑油が付着せしめられる。このため、偏心カム53の表面上には常に潤滑油が付着せしめられた状態となっており、これにより偏心カム53と高圧燃料ポンプ50のプッシュロッド52との間の摩擦が低減せしめられる。なお、偏心カムは吸気カムシャフト14に一体的に形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のシリンダヘッド組立体の側面図である。
【図2】図1の断面線II−IIに沿って見たシリンダヘッド組立体の断面図である。
【図3】図1の断面線III−IIIに沿って見たシリンダヘッド組立体の断面図である。
【図4】シリンダヘッド組立体を下方から見た分解斜視図である。
【図5】図1の断面線V−Vに沿って見たシリンダヘッド組立体の断面図であり、シリンダヘッド本体が省略されている。
【図6】位相角変更機構の概略図である。
【図7】図1の断面線VII−VIIに沿って見たシリンダヘッド組立体の断面図であり、シリンダヘッド本体が省略されている。
【符号の説明】
【0045】
1 シリンダヘッド組立体
2 シリンダヘッド本体
3 ヘッドカバー本体
5 吸気ポート
6 排気ポート
7 吸気弁
8 排気弁
10 ロッカーアーム
11 吸気カム
12 排気カム
14 吸気カムシャフト
15 排気カムシャフト
17 カムキャップ
18 壁状部分
20、21 軸受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気弁および排気弁を保持するシリンダヘッドと、ヘッドカバー組立体とを具備し、
上記ヘッドカバー組立体は、上記シリンダヘッド上に取付けられるヘッドカバー本体と、該ヘッドカバー本体に取付けられると共に上記吸気弁および排気弁を駆動するカムシャフトのうち少なくとも一つを支持するシャフト支持部材とを有する内燃機関のシリンダヘッド組立体。
【請求項2】
上記ヘッドカバー組立体がアルミニウムよりも軽量な材料で製造される請求項1に記載の内燃機関のシリンダヘッド組立体。
【請求項3】
上記ヘッドカバー本体には上記カムシャフトを支持する軸受部が形成され、上記シャフト支持部材は上記カムシャフトを上記軸受部上に位置決めしつつ該カムシャフトを支持するカムキャップを有する請求項1または2に記載の内燃機関のシリンダヘッド組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−77705(P2006−77705A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263721(P2004−263721)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】