説明

内燃機関のバランサ装置

【課題】バランスシャフトの撹拌抵抗を低減しつつ、連結部の剛性の向上とオイルの循環性能の向上の両立を図ることができる内燃機関のバランサ装置を提供すること。
【解決手段】バランサ装置18が、外周部がリブ34〜37を介してクランクケース16の内周部16bに連結されることにより、クランクケース16と一体的に成形されるバランサハウジング31を有し、リブ34、35、バランサハウジング31の外周部およびクランクケース16の内周部16bによって囲まれる空間とリブ36、37、バランサハウジング31の外周部およびクランクケース16の内周部16bによって囲まれる空間とのそれぞれにオイル通路38、39が形成されることに加えて、リブ35、36、37にクランクケース16とオイルパン17とを連通する連通孔35a、36a、37aが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のバランサ装置に関し、特に、一対のバランスシャフトを回転自在に支持するバランサハウジングがエンジンブロックと一体的に成形されてなる内燃機関のバランサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、多気筒内燃機関においては、例えば、ピストンの上下方向の往復運動によって発生する2次慣性力に起因してクランクシャフトの回転バランスに不均衡が生じ、これが原因となって内燃機関に上下振動が生じる。このため、内燃機関には内燃機関の振動を抑制するバランサ装置が設けられている。
【0003】
バランサ装置は、バランスウェイトが偏心して設けられた2本のバランスシャフトが、クランクケースの下部においてオイルパン内に位置するように取付けられたバランサハウジングに回転可能に支持されるとともに、オイルパン内に貯留したオイルおよびシリンダブロックから流下するオイルが接触しないようにバランサハウジングにより覆われている。
【0004】
このような構成を有するバランサ装置は、内燃機関が起動されると、クランクシャフトの回転駆動力によってバランスシャフトがクランクシャフトの回転速度の2倍の速度で回転されることにより、バランスシャフトの作用によって、内燃機関の2次慣性力を除去して、内燃機関の振動を低減するようになっている。
【0005】
また、バランサ装置としては、バランサハウジングをクランクケースと一体的に成形したものがあり、このバランサ装置は、バランサハウジングがリブ等の連結部を介してクランクケースに一体的に形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところで、内燃機関の潤滑部を潤滑したオイルは、シリンダブロックからクランクケースを介してオイルパンに還流されるようになっている。バランサハウジングは、クランクケースとオイルパンとの間に介装されていることから、クランクケースに一体的に成形されたバランサハウジングにあっては、バランサハウジングとクランクケースとを連結する連結部の間を通してシリンダブロックからクランクケースを通して滴下されるオイルをオイルパンに戻すようになっている。
【0007】
一般的に、内燃機関の潤滑部を潤滑するオイルは、多量であり、潤滑部を潤滑したオイルをオイルパンに効率よく還流させる必要がある。このため、連結部の間を通して多量のオイルを戻すには、連結部の間隔を大きくして、すなわち、オイルの通路面積を大きくする必要がある。
【0008】
ところが、オイルの通路面積を大きくするには連結部の幅を小さくする等してオイルの通路面積を確保する必要があるため、連結部の剛性が低下してしまい、バランサ装置をクランクケースに十分な強度で支持できないおそれがある。
【0009】
連結部の剛性が低下するのを防止するものとしては、バランサハウジングが、バランスシャフトを回転自在に支持するバランスシャフト軸受部を有し、このバランスシャフト軸受部にクランクケースとオイルパンとを連通するリターン孔を有するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
特許文献2に記載されたものは、連結部の間にリターン孔を形成するのに代えて、バランスシャフト軸受部にリターン孔を形成することにより、連結部の剛性が低下するのを防止しつつ、クランクケースから滴下されるオイルをリターン孔からオイルを還流することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−250399号公報
【特許文献2】実開平3−59432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2に記載されるバランサ装置にあっては、リターン孔がバランスシャフト軸受部に形成されているため、クランクケースから滴下されるオイルがバランスシャフトに衝突した後にリターン孔からオイルパンに還流されることになるため、バランスシャフトの撹拌抵抗が増大してしまうとともに、バランスシャフトから跳ね返ったオイルがクランクシャフト等の周辺部材に飛散してしまい、クランクシャフト等の周辺部材の撹拌抵抗も増大させてしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、バランスシャフトの撹拌抵抗を低減しつつ、連結部の剛性の向上とオイルの循環性能の向上の両立を図ることができる内燃機関のバランサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る内燃機関のバランサ装置は、上記目的を達成するため、(1)エンジンブロックとオイルパンとの間に介装され、外周部が連結部を介して前記エンジンブロックに連結されることにより、前記エンジンブロックと一体的に成形されたバランサハウジングと、前記バランサハウジング内に回転自在に設けられ、クランクシャフトの回転動力が伝達される一対のバランスシャフトとを備え、前記連結部、前記エンジンブロックおよび前記バランサハウジングによって囲まれる空間に、前記エンジンブロックと前記オイルパンとを連通するオイル通路が形成される内燃機関のバランサ装置であって、前記連結部の少なくとも1つ以上に、前記エンジンブロックと前記オイルパンとを連通する連通孔が形成されるものから構成されている。
【0015】
この内燃機関のバランサ装置は、外周部が連結部を介してエンジンブロックに連結されることにより、エンジンブロックと一体的に成形されるバランサハウジングを有し、連結部、エンジンブロックおよびバランサハウジングによって囲まれる空間にエンジンブロックとオイルパンとを連通するオイル通路が形成されることに加えて、連結部の少なくとも1つ以上に、エンジンブロックとオイルパンとを連通する連通孔が形成されるので、連通孔をバランサハウジングの外周部に形成することができる。
【0016】
このため、エンジンブロックから滴下されるオイルがバランスシャフトに衝突してオイルパンに還流されることがなく、バランスシャフトおよびクランクシャフト等のバランスシャフトの周辺部材の撹拌抵抗が増大するのを防止することができる。
【0017】
また、オイル通路に加えて、連結部に形成された連通孔を通してエンジンブロックから滴下されるオイルをオイルパンに還流することができるため、連結部の剛性が低下することなく、オイルの通路面積を増大させることができる。
【0018】
この結果、連結部の剛性を向上させてバランサハウジングをシリンダブロックに強固に支持することができ、バランサ装置の取付け強度を向上させることができるとともに、オイルの循環性能を向上させることができる。
【0019】
上記(1)に記載の内燃機関のバランサ装置において、(2)前記連結部は、前記バランサハウジングから前記エンジンブロックに向かうに従って幅が大きくなるものから構成されている。
【0020】
この内燃機関のバランサ装置は、連結部が、バランサハウジングからエンジンブロックに向かうに従って幅が大きくなるように構成されるので、エンジンブロックと連結部の連結部位の剛性を大きくすることができ、バランサ装置の取付け強度をより一層向上させることができる。
【0021】
上記(2)に記載の内燃機関のバランサ装置において、(3)前記連結部は、前記バランサハウジングから前記エンジンブロックに向かうに従って横方向の幅が広くなるように構成され、前記連通孔が、前記エンジンブロック側に偏るようにして前記連結部に形成されるものから構成されている。
【0022】
この内燃機関のバランサ装置は、バランサハウジングからエンジンブロックに向かうに従って連結部の横方向の幅が広くなるように構成され、連通孔が、エンジンブロック側に偏るようにして連結部に形成されるので、幅広の連結部の部位に連通孔を形成することができる。このため、連結部の強度を低下させることなく、連通孔の開口面積を大きくすることができ、連結部の剛性の向上とオイルの循環性能の向上の両立を効率よく図ることができる。
【0023】
上記(1)ないし(3)に記載の内燃機関のバランサ装置は、(4)前記連結部の少なくとも1つ以上に、前記内燃機関の潤滑部位にオイルを供給するオイル供給管の一部が挿通されるものから構成されている。
【0024】
この内燃機関のバランサ装置は、連結部の少なくとも1つ以上に、内燃機関の潤滑部位にオイルを供給するオイル供給管の一部が挿通されるので、オイル供給管によって連結部を補強することができ、連結部の強度を向上させることができる。
【0025】
また、オイル通路ではなく、連結部にオイル供給管の一部を挿通しているので、オイル通路の面積がオイル供給管によって減少されてしまうのを防止することができ、オイルの循環性能を向上させることができる。
【0026】
上記(1)ないし(4)に記載の内燃機関のバランサ装置は、(5)前記クランクシャフトは、軸部と、前記軸部に設けられ、前記軸部の軸線方向に離隔して配列されるとともに前記軸部の径よりも大径の複数の大径回転部とを有し、前記連通孔のうち、前記大径回転部の径方向外方に位置する連通孔の開口面積が小さく形成されるとともに、前記軸部の径方向外方に位置する連通孔の開口面積が大きく形成されるものから構成されている。
【0027】
この内燃機関のバランサ装置は、連通孔の位置関係上、大径回転部の径方向外方に連通孔が位置する場合がある。このとき、大径回転部の径方向外方に位置する連通孔にエンジンブロックから滴下されたオイルが導入されるときに、大きい遠心力で回転する大径回転部に衝突して飛散したオイルが連通孔に導入されるオイルに干渉して、連通孔にオイルがスムーズに導入されないおそれがある。このため、大径回転部の径方向外方に位置する連通孔の開口面積は、小さく形成しておく。
【0028】
これに対して、軸部の径方向外方に位置する連通孔に導入されるオイルは、小径な軸部から飛散したオイルによって干渉されることがない。このため、大径回転部の径方向外方に位置する連通孔の開口面積を小さくした分だけ、軸部の径方向外方に位置する連通孔の開口面積を大きく形成することで、連通孔を通してオイルパンに還流されるオイル量が少なくなるのを防止することができ、連通孔とオイル通路と合わせた十分なオイルの通路面積を確保することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、バランスシャフトの撹拌抵抗を低減しつつ、連結部の剛性の向上とオイルの循環性能の向上の両立を図ることができる内燃機関のバランサ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る内燃機関のバランサ装置の一実施の形態を示す図であり、内燃機関の正面断面図である。
【図2】本発明に係る内燃機関のバランサ装置の一実施の形態を示す図であり、バランスシャフトとクランクシャフトの斜視図である。
【図3】本発明に係る内燃機関のバランサ装置の一実施の形態を示す図であり、バランサハウジングおよびクランクケースの上面図である。
【図4】本発明に係る内燃機関のバランサ装置の一実施の形態を示す図であり、内燃機関の下部に位置するバランサ装置周辺の正面断面図である。
【図5】本発明に係る内燃機関のバランサ装置の一実施の形態を示す図であり、内燃機関の下部に位置するバランサ装置周辺の側面断面図である。
【図6】本発明に係る内燃機関のバランサ装置の一実施の形態を示す図であり、オイルの供給通路の配置形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る内燃機関のバランサ装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1〜図6は、本発明に係る内燃機関のバランサ装置の一実施の形態を示す図である。
まず、構成を説明する。
図1において、内燃機関であるエンジン10は、シリンダブロック11、クランクケース16、オイルパン17およびシリンダヘッド25を備えており、シリンダブロック11に設けられた複数、例えば、4つの気筒12内にピストン13を収納している。
【0032】
各ピストン13は、それぞれコンロッド14を介して図2に示すクランクシャフト15のクランクピン15aに連結されており、クランクシャフト15が収納されるクランクケース16の下方側にはオイル(エンジンオイル)を貯留するオイルパン17が装着されている。なお、クランクケース16は、シリンダブロック11の下部に取付けられている。
【0033】
図2に示すように、クランクシャフト15は、4つのクランクピン15aの各々に対応するカウンタウェイト15mと、その軸方向両端側および各気筒12間のクランクジャーナル15jとを備えており、各クランクジャーナル15jでクランクケース16側に回転自在に支持されている。
【0034】
すなわち、クランクシャフト15は、クランクピン15aおよびクランクジャーナル15jの間に、クランクピン15aおよびクランクジャーナル15jよりも大径のカウンタウェイト15mが設けられている。
【0035】
なお、本実施の形態では、カウンタウェイト15mが大径回転部を構成しており、クランクピン15aおよびクランクジャーナル15jが軸部を構成している。
【0036】
また、エンジン10の上部には吸気カム26および排気カム27等を有する動弁機構が設けられており、各気筒12の上部には、例えば、吸気通路10i内に燃料を噴射するインジェクタ10aと点火プラグ10bとが配置されている。複数の気筒12に対応する複数のインジェクタ10aは、複数の気筒12に燃料を供給するデリバリパイプ(図示せず)にそれぞれ接続しており、このデリバリパイプには燃料タンク内の燃料ポンプから吐出された燃料(例えば、ガソリン)が所定の燃料通路を通して供給される。また、排気通路10e上には触媒装置10cが配置されている。
【0037】
一方、図1〜図5に示すように、クランクケース16とオイルパン17との間にはバランサ装置18が設けられており、このバランサ装置18は、クランクシャフト15の回転に応じて回転駆動されるバランスシャフト19、20と、バランスシャフト19、20を回転自在に収納するバランサハウジング31とを含んで構成されている。
【0038】
図2、図3に示すように、バランスシャフト19、20にはそれぞれドリブンギヤ19a、20aが固定されており、これらドリブンギヤ19a、20aは、互いに噛合し同一の歯数を有する。このため、バランスシャフト19、20は、相互に反対方向に同じ速度で回転する。
【0039】
また、バランスシャフト19にはドリブンギヤ19bが固定されており、ドリブンギヤ19bは、クランクシャフト15に設けられた駆動ギヤ15bに噛合し、駆動ギヤ15bとドリブンギヤ19bの歯数は2:1に設定されている。
【0040】
このため、バランスシャフト19、20は、クランクシャフト15の2倍の回転数で回転する。なお、クランクシャフト15の回転をバランスシャフト19、20に伝達する方法として、ギヤ駆動方式以外にチェーン駆動方式、ベルト駆動方式等を用いてもよい。
【0041】
また、バランスシャフト19、20は、バランスウェイト19c、19d、20b、20cを備えており、バランスウェイト19c、19d、20b、20cは半円状に形成されてバランスシャフト19、20の軸線に対して重心が偏心した状態となるように形成されている。したがって、バランサ装置18は、重心位置が回転中心に対して偏心したバランスシャフト19、20を回転することで、エンジン10の2次慣性力に起因する上下振動やこもり音を抑制することができる。
【0042】
なお、バランスウェイト19c、19d、20b、20cは、バランスシャフト19、20と別体に形成され、ボルト等によりバランスシャフト19、20に一体回転自在に締結するようにしてもよい。
【0043】
図6に示すように、オイルパン17内にはオイルポンプ21が設けられており、オイルポンプ21は、オイルパン17に貯留されたオイルを、オイルストレーナ21aを通して吸い上げた後、オイル供給通路22を介してシリンダブロック11に設けられたメインギャラリ23に供給するようになっている。
【0044】
メインギャラリ23からは複数のオイル供給通路24が分岐しており、このオイル供給通路24は、メインギャラリ23に導入されたオイルをクランクシャフト15のクランクジャーナル15jに供給するようになっている。このため、オイル供給通路24から供給されるオイルによってクランクジャーナル15jが潤滑される。
【0045】
また、クランクジャーナル15jに供給されたオイルは、クランクシャフト15の放射方向および軸方向に形成された孔を通してコンロッド14とクランクピン15aの間に供給される。
【0046】
また、メインギャラリ23に供給されたオイルは、シリンダヘッド25内に収容された吸気カム26および排気カム27に供給されるとともに、吸気カム26および排気カム27をそれぞれ回転自在に支持する吸気カムシャフト28および排気カムシャフト29とクランクシャフト15とを連結するタイミングチェーン30に供給される。
【0047】
一方、図4、5に示すように、バランサハウジング31は、ロアハウジング32およびアッパハウジング33を備えており、ロアハウジング32は、図示しないボルトによってアッパハウジング33に締結固定されている。
【0048】
図4に示すように、ロアハウジング32およびアッパハウジング33には軸受部32a、32b、33a、33bが形成されており、バランスシャフト19、20は、軸受部32a、32b、33a、33bに回転自在に支持されている。なお、図4において、バランスシャフト19を図示していないが、バランスシャフト19は、バランスシャフト20と同一の軸受部32a、32b、33a、33bによって回転自在に支持されている。
【0049】
また、軸受部32a、32b、33a、33bにはオイル通路31a、31bが形成されており、このオイル通路31a、31bにはオイル供給通路22から分岐された分岐通路22a(図6参照)を通してオイルが供給されるようになっている。このため、軸受部32a、32b、33a、33bとバランスシャフト19、29との接触面は、オイルによって潤滑される。
【0050】
図3、図5に示すように、アッパハウジング33は、連結部としての4つのリブ34〜37を介してクランクケース16に連結されており、アッパハウジング33は、クランクケース16と一体的に成形されている。
【0051】
具体的には、クランクケース16およびアッパハウジング33は、アルミニウムやアルミニウム合金等から構成されており、鋳造等によって一体的に成形されている。なお、本実施の形態では、シリンダブロック11およびクランクケース16がエンジンブロックを構成している。
【0052】
また、ロアハウジング32は、アッパハウジング33に締結固定されるため、ロアハウジング32およびアッパハウジング33からなるバランサハウジング31は、クランクケース16と一体的に成形されることになる。
【0053】
また、クランクケース16の開口周縁部16aにはオイルパン17がボルト等によって締結固定されるようになっており、クランクケース16の内周部16bの上部の開口内縁部16cにはシリンダブロック11が取付けられている。
【0054】
図3に示すように、リブ34〜37は、アッパハウジング33からクランクケース16の内周部16bに向かうに従って横方向の幅が大きく形成されており、アッパハウジング33に対してクランクケース16側の幅が大きくなっている。
【0055】
リブ34、35、クランクケース16の内周部16bおよびバランサハウジング31の外周部によって囲まれる空間にはオイル通路38が形成されており、このオイル通路38は、クランクケース16とオイルパン17とを連通している。
【0056】
また、リブ36、37、クランクケース16の内周部16bおよびバランサハウジング31の外周部によって囲まれる空間にはオイル通路39が形成されており、このオイル通路39は、クランクケース16とオイルパン17とを連通している。
【0057】
一方、リブ35、36、37にはリブ35、36、37の上下方向に貫通する連通孔35a、36a、37aが形成されており、この連通孔35a、36a、37aは、リブ35、36、37の上面から下面に向かって開口してクランクケース16とオイルパン17とを連通している。なお、図3において、連通孔35a、36a、37aをハッチングで示している。
【0058】
なお、連通孔35a、37aは、クランクシャフト15の軸線方向を挟んで対向して設けられており、連通孔35a、37aの開口面積は、連通孔36aの開口面積よりも大きくなっている。
【0059】
また、本実施の形態では、図示していないが、連通孔35a、37aは、クランクシャフト15の一端部に位置するカウンタウェイト15mの径方向外方に位置しており、連通孔36aは、クランクシャフト15の他端部に位置するクランクピン15aの径方向外方に位置している。
【0060】
また、連通孔35a、36a、37aは、クランクケース16の内周部16b側に偏るようにしてリブ35、36、37に形成されており、リブ35、36、37の幅広の部位に位置している。
【0061】
また、リブ34にはオイル供給管40の一部が挿通されており、このオイル供給管40の内周部によってオイル供給通路22が画成されている。したがって、リブ34は、オイルポンプ21から吐出されたオイルをメインギャラリ23に供給するオイル供給管40を配索するための経路の一部を構成している。なお、図3において、オイル供給管40をハッチングで示す。
【0062】
このような構成を有するバランサ装置18を備えたエンジン10にあっては、オイルポンプ21からオイル供給管40のオイル供給通路22に供給されたオイルの一部は、メインギャラリ23からオイル供給通路24を介してクランクシャフト15に供給されるとともに、他のオイルは、メインギャラリ23から吸気カム26、排気カム27およびタイミングチェーン30等に供給される。
【0063】
これらクランクシャフト15、吸気カム26、排気カム27およびタイミングチェーン30等に供給されたオイルは、自重によってシリンダブロック11およびクランクケース16内を落下した後、オイル通路38、39および連通孔35a、36a、37aを通してオイルパン17に還流される。
【0064】
本実施の形態では、外周部がリブ34〜37を介してクランクケース16の内周部16bに連結されることにより、クランクケース16と一体的に成形されるバランサハウジング31を有し、リブ34、35、バランサハウジング31の外周部およびクランクケース16の内周部16bによって囲まれる空間とリブ36、37、バランサハウジング31の外周部およびクランクケース16の内周部16bによって囲まれる空間とのそれぞれにオイル通路38、39を形成することに加えて、リブ35、36、37にクランクケース16とオイルパン17とを連通する連通孔35a、36a、37aを形成した。
【0065】
このため、連通孔35a、36a、37aをバランサハウジング31の外周部に形成することができ、シリンダブロック11およびクランクケース16から滴下されるオイルがバランスシャフト19、20に衝突してオイルパン17に還流されるのを防止して、バランスシャフト19、20の撹拌抵抗が増大するのを防止することができる。
【0066】
また、バランスシャフト19、20にオイルが衝突してバランスシャフト19、20から跳ね返るオイルがクランクシャフト15等のバランスシャフト19、20の周辺部材に飛散することがなく、周辺部材の撹拌抵抗が増大するのを防止することができる。
【0067】
また、オイル通路38、39に加えて、リブ35、36、37に形成された連通孔35a、36a、37aを通してシリンダブロック11およびクランクケース16から滴下されるオイルをオイルパン17に還流することができるため、リブ34〜37の剛性を低下することなく、オイルの通路面積を増大させることができる。
【0068】
この結果、リブ34〜37の剛性を向上させてバランサハウジング31をクランクケース16に強固に支持することができ、バランサ装置18の取付け強度を向上させることができるとともに、オイルの循環性能を向上させることができる。
【0069】
また、本実施の形態では、リブ34〜37が、バランサハウジング31からクランクケース16の内周部16bに向かうに従って横方向の幅が大きくなるように構成されるので、クランクケース16の内周部16bとリブ34〜37の連結部位の剛性を大きくすることができ、バランサ装置18の取付け強度をより一層向上させることができる。
【0070】
また、本実施の形態では、連通孔35a、36a、37aが、クランクケース16の内周部16b側に偏るようにしてリブ35、36、37に形成されるので、幅広のリブ35、36、37の部位に連通孔35a、36a、37aを形成することができ、リブ35、36、37の強度を低下させることなく、連通孔35a、36a、37aの開口面積を大きくすることができ、リブ34〜37の剛性の向上とオイルの循環性能の向上の両立を効率よく図ることができる。
【0071】
また、本実施の形態では、リブ34に、エンジン10の潤滑部位であるクランクシャフト15等にオイルを供給するオイル供給管40の一部が挿通したので、オイル供給管40によってリブ34を補強することができ、リブ34の強度を向上させることができる。
【0072】
また、オイル通路38、39ではなく、リブ34にオイル供給管40の一部を挿通しているので、オイル通路38、39の面積がオイル供給管40によって減少されてしまうのを防止することができ、オイルの循環性能を向上させることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、カウンタウェイト15mの径方向外方に位置する連通孔36aの開口面積を小さく形成するとともに、クランクピン15aの径方向外方に位置する連通孔35a、37aの開口面積を大きく形成した。
【0074】
すなわち、連通孔35a、36a、37aの位置関係上、カウンタウェイト15mの径方向外方に連通孔36aが位置する場合には、カウンタウェイト15mの径方向外方に位置する連通孔36aにシリンダブロック11およびクランクケース16から滴下されたオイルが導入されるときに、大きい遠心力で回転するカウンタウェイト15mに衝突して飛散したオイルが連通孔36aに導入されるオイルに干渉して連通孔36aにオイルがスムーズに導入されないおそれがある。このため、カウンタウェイト15mの径方向外方に位置する連通孔36aの開口面積は、小さく形成しておく。
【0075】
これに対して、クランクピン15aの径方向外方に位置する連通孔35a、37aに導入されるオイルは、小径なクランクピン15aから飛散したオイルによって干渉されることがない。
【0076】
このため、カウンタウェイト15mの径方向外方に位置する連通孔36aの開口面積を小さくした分だけ、クランクピン15aの径方向外方に位置する連通孔35a、37aの開口面積を大きく形成することで、連通孔35a、36a、37aを通してオイルパン17に還流されるオイル量が少なくなるのを防止することができ、連通孔35a、36a、37aとオイル通路38、39と合わせた十分なオイルの通路面積を確保することができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、バランサハウジング31をリブ34〜37を介してクランクケース16の内周部に連結しているが、バランサハウジング31をリブ34〜37を介してシリンダブロック11に連結するようにしてもよい。
【0078】
また、本実施の形態では、リブ35、36、37に連通孔35a、36a、37aを形成しているが、リブ34〜37の全てに連通孔を形成してもよい。また、少なくともリブ34〜37のうちの1つ以上に連通孔を形成してもよい。
【0079】
また、本実施の形態では、リブ34〜37がアッパハウジング33からクランクケース16の内周部16bに向かうに従って横方向の幅が大きく形成されているが、アッパハウジング33からクランクケース16の内周部16bに向かうに従ってリブ34〜37の縦方向の幅が大きく形成されるようにしてもよい。
【0080】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0081】
以上のように、本発明に係る内燃機関のバランサ装置は、バランスシャフトの撹拌抵抗を低減しつつ、連結部の剛性の向上とオイルの循環性能の向上の両立を図ることができるという効果を有し、一対のバランスシャフトを回転自在に支持するバランサハウジングがエンジンブロックと一体的に成形されてなる内燃機関のバランサ装置等として有用である。
【符号の説明】
【0082】
10 エンジン(内燃機関)
11 シリンダブロック(エンジンブロック)
15 クランクシャフト
15a クランクピン(軸部)
15j クランクジャーナル(軸部)
15m カウンタウェイト(大径回転部)
16 クランクケース(エンジンブロック)
17 オイルパン
18 バランサ装置
19、20 バランスシャフト
31 バランサハウジング
34〜37 リブ(連結部)
35a、36a、37a 連通孔
38、39 オイル通路
40 オイル供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンブロックとオイルパンとの間に介装され、外周部が連結部を介して前記エンジンブロックに連結されることにより、前記エンジンブロックと一体的に成形されたバランサハウジングと、前記バランサハウジング内に回転自在に設けられ、クランクシャフトの回転動力が伝達される一対のバランスシャフトとを備え、前記連結部、前記エンジンブロックおよび前記バランサハウジングによって囲まれる空間に、前記エンジンブロックと前記オイルパンとを連通するオイル通路が形成される内燃機関のバランサ装置であって、
前記連結部の少なくとも1つ以上に、前記エンジンブロックと前記オイルパンとを連通する連通孔が形成されることを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
【請求項2】
前記連結部は、前記バランサハウジングから前記エンジンブロックに向かうに従って幅が大きくなることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のバランサ装置。
【請求項3】
前記連結部は、前記バランサハウジングから前記エンジンブロックに向かうに従って横方向の幅が広くなるように構成され、前記連通孔が、前記エンジンブロック側に偏るようにして前記連結部に形成されることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関のバランサ装置。
【請求項4】
前記連結部の少なくとも1つ以上に、前記内燃機関の潤滑部位にオイルを供給するオイル供給管の一部が挿通されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の内燃機関のバランサ装置。
【請求項5】
前記クランクシャフトは、軸部と、前記軸部に設けられ、前記軸部の軸線方向に離隔して配列されるとともに前記軸部の径よりも大径の複数の大径回転部とを有し、
前記連通孔のうち、前記大径回転部の径方向外方に位置する連通孔の開口面積が小さく形成されるとともに、前記軸部の径方向外方に位置する連通孔の開口面積が大きく形成されることを特徴する請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載の内燃機関のバランサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−7691(P2012−7691A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145083(P2010−145083)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】