内燃機関の冷却構造
【課題】 スペーサの重量を最小限に抑えながら、スペーサで仕切られたウオータジャケットの下部冷却水通路に臨むシリンダボアの冷却性能を確保する。
【解決手段】 シリンダブロックのシリンダボアの周囲を囲むように形成されたウオータジャケットに供給された冷却水は、ウオータジャケットの内部に装着されたスペーサ14により区画された上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dに分流してシリンダボアを冷却した後、冷却水出口部14fからシリンダヘッドに排出される。このとき、ウオータジャケットの壁面に向かって径方向に突出する突条14kをスペーサ14の下部に沿って形成し、その突条14kの少なくとも冷却水出口部14fの下方部分を切り欠いたので、スペーサ14全体を突条14kの部分と同じ厚さにする必要をなくして重量を軽減しながら、下部冷却水通路13dの冷却水の流れを冷却水出口部14fまで維持して良好な冷却性能を確保することができる。
【解決手段】 シリンダブロックのシリンダボアの周囲を囲むように形成されたウオータジャケットに供給された冷却水は、ウオータジャケットの内部に装着されたスペーサ14により区画された上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dに分流してシリンダボアを冷却した後、冷却水出口部14fからシリンダヘッドに排出される。このとき、ウオータジャケットの壁面に向かって径方向に突出する突条14kをスペーサ14の下部に沿って形成し、その突条14kの少なくとも冷却水出口部14fの下方部分を切り欠いたので、スペーサ14全体を突条14kの部分と同じ厚さにする必要をなくして重量を軽減しながら、下部冷却水通路13dの冷却水の流れを冷却水出口部14fまで維持して良好な冷却性能を確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボアの周囲を囲むように形成されたウオータジャケットの内部にスペーサを装着し、前記スペーサで前記ウオータジャケット内の冷却水の流れを規制して前記シリンダボアの冷却状態を調整する内燃機関の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
かかるスペーサの外周面の上部、下部および中間部に周方向に延びる3本の横リブを形成するとともに、シリンダ軸線と平行な6本の縦リブで前記3本の横リブを接続し、それらの横リブおよび縦リブ間に肉抜き部を形成することで、ウオータジャケット内の冷却水の流れを規制するスペーサの機能を確保しながら該スペーサの重量を軽減するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4051019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかるスペーサが装着されたウオータジャケットの下流端で冷却水は流れの方向を上向きに変えてシリンダヘッドのウオータジャケットに流入するため、冷却水はウオータジャケットにおけるスペーサの下側の下部冷却水通路の下流端部分に滞留してしまい、その部分でシリンダボアの冷却性能が低下する問題がある。しかしながら上記従来のものは、スペーサの横リブが補強リブとしての機能しか発揮していないため、ウオータジャケットの下部冷却水通路の下流端部分の流れを良好に保つことができない可能性があった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、スペーサの重量を最小限に抑えながら、スペーサで仕切られたウオータジャケットの下部冷却水通路に臨むシリンダボアの冷却性能を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボアの周囲を囲むように形成されたウオータジャケットの内部にスペーサを装着し、前記スペーサで前記ウオータジャケットを上部冷却水通路および下部冷却水通路に分離して冷却水の流れを規制することで前記シリンダボアの冷却状態を調整する内燃機関の冷却構造において、前記スペーサは前記ウオータジャケット内の冷却水をシリンダヘッドに排出する冷却水出口部を備え、前記ウオータジャケットの壁面に向かって径方向に突出する突条を前記スペーサの下部に沿って形成し、前記突条を少なくとも前記冷却水出口部の下方において切り欠いたことを特徴とする内燃機関の冷却構造が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記スペーサのスペーサ本体部は前記ウオータジャケットの内側壁面に沿って配置され、前記突条は前記ウオータジャケットの外側壁面に向かって突出することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の冷却構造が提案される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の構成によれば、シリンダブロックのシリンダボアの周囲を囲むように形成されたウオータジャケットに供給された冷却水は、ウオータジャケットの内部に装着されたスペーサにより区画された上部冷却水通路および下部冷却水通路に分流してシリンダボアを冷却した後、冷却水出口部からシリンダヘッドに排出される。このとき、ウオータジャケットの壁面に向かって径方向に突出する突条をスペーサの下部に沿って形成し、その突条の少なくとも冷却水出口部の下方部分を切り欠いたので、スペーサ全体を突条の部分と同じ厚さにする必要をなくして重量を軽減しながら、下部冷却水通路の冷却水の流れを冷却水出口部まで維持して良好な冷却性能を確保することができる。
【0009】
また請求項2の構成によれば、スペーサのスペーサ本体部をウオータジャケットの内側壁面に沿って配置したので、冷却水がウオータジャケットの内側壁面に直接接触し難くしてスペーサによる保温効果を有効に発揮させることができ、また突条をウオータジャケットの外側壁面に向かって突出させたので、スペーサとウオータジャケットの外側壁面との間に隙間が存在しても、スペーサをウオータジャケットの内側壁面に沿って保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】V型6気筒内燃機関の一方のバンクの斜視図。
【図2】図1の2方向矢視図。
【図3】図1の3方向矢視図。
【図4】図1の4方向矢視図。
【図5】図2の5−5線断面図。
【図6】図2の6−6線断面図。
【図7】図2の7−7線断面図。
【図8】図2の8部拡大図。
【図9】図8の9−9線断面図。
【図10】図8の10−10線断面図。
【図11】図4の11方向矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図11に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1には、V型6気筒内燃機関のシリンダブロック11の一方のバンクが示される。シリンダブロック11にはシリンダ列線L1に沿って3個のシリンダスリーブ12…が埋設されており、それらのシリンダスリーブ12…の外周面を囲むようにウオータジャケット13が形成される。本実施の形態のシリンダブロック11はサイアミーズ型であって隣接するシリンダスリーブ12…間にはウオータジャケット13が形成されておらず、よってウオータジャケット13は3個のシリンダスリーブ12…の外周面を個々に囲むのではなく、3個のシリンダスリーブ12…の全体を囲んでおり、これにより内燃機関のシリンダ列線L1方向の寸法の短縮が図られる。シリンダブロック11のデッキ面11aに開口するウオータジャケット13は、そこからクランクケース側に向けて一定の深さで下向きに延びており、そのウオータジャケット13の内部にシリンダブロック11のデッキ面11aの開口側から挿入された合成樹脂製のスペーサ14が配置される。
【0013】
尚、本明細書において「上下方向」とは、シリンダ軸線L2方向のシリンダヘッド側が「上」と定義され、シリンダ軸線L2方向のクランクケース側が「下」と定義される。
【0014】
図1〜図4から明らかなように、スペーサ14は、シリンダブロック11の3個のシリンダスリーブ12…の外周の大部分を囲むスペーサ本体部14aと、その残りの部分を囲む冷却水入口部14dおよび冷却水出口部14fとを備える。スペーサ14はウオータジャケット13に沿う閉じた形状に形成されていて切断部を持たないため、そのスペーサ14の剛性は高いものとなる。スペーサ本体部14aのシリンダ軸線L2方向の高さH0は、その全周に亙って基本的に一定である。スペーサ14のシリンダ列線L1方向の一端側、つまりシリンダブロック11のタイミングトレーン側の端部には、冷却水入口部14dおよび冷却水出口部14fの間から上下に突出する仕切壁14bが一体に設けられる。
【0015】
また冷却水入口部14dは、仕切壁14bの一側(吸気側)に隣接する部分で、スペーサ14aの上縁および下縁に設けられた入口切欠き14c,14cに上下を挟まれるように形成されており、この冷却水入口部14dの部分でスペーサ14のシリンダ軸線L2方向の高さH1がスペーサ本体部14aの高さH0よりも小さくなっている。同様に、冷却水出口部14fは、仕切壁14bの他側(排気側)に隣接する部分で、スペーサ14の上縁および下縁に設けられた出口切欠き14e,14eに上下を挟まれるように形成されており、この冷却水出口部14fの部分でスペーサ14のシリンダ軸線L2方向の高さH2がスペーサ本体部14aの高さH0よりも小さくなっている。冷却水入口部14dの上下の入口切欠き14c,14cは、スペーサ本体部14aの上縁および下縁に滑らかに湾曲しながら連続している。
【0016】
図2、図4および図6から明らかなように、3個のシリンダボア12a…が相互に近接する部分の近傍では、各シリンダボア12a…の周囲のウオータジャケット13が鋭角で交差するため、その部分のウオータジャケット13のシリンダ列線L1に直交する方向の幅W′(図6参照)は、その他の部分のウオータジャケット13の幅W(図5および図7参照)よりも広がっている。従って、ウオータジャケット13が鋭角で交差する部分に嵌合するスペーサ本体部14aの連結部g…の厚さT′(図6参照)は、その他の部分のスペーサ本体部14aの厚さT(図5および図7参照)よりも広がっている。連結部g…を収納する部分でのウオータジャケット13の幅W′は、シリンダヘッド15に連なる部分で更に広がっており、その広がった部分を塞ぐように前記連結部14g…の上端から径方向内向きに突起14h…が突設される(図6参照)。
【0017】
シリンダブロック11のトランスミッション側の端部に最も近いシリンダボア12aと、それに隣接するシリンダボア12aとが対向する部分に隣接するスペーサ本体部14aの2個の連結部14g,14gから、2本の円錐台状の上部支持脚14i,14iが上向きに突出するとともに、2本の円錐台状の下部支持脚14j,14jが下向きに突出する。上部支持脚14i,14iの上端と仕切壁14bの上端とは同じ高さに整列し、下部支持脚14j,14jの下端と仕切壁14bの下端とは同じ高さに整列する。
【0018】
このように、スペーサ本体部14aの他の部分の厚さTよりも大きい厚さT′を持つ連結部14g,14gに上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jを設けたことで、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jのスペーサ本体部14aに対する結合強度を高め、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jでスペーサ14をウオータジャケット13の内部に強固に支持することができる。また上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jが設けられる位置は、ウオータジャケット13の内部で冷却水の流れの方向が変わって流速が落ちる位置であるため、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jを設けたことによる冷却水の流れに対する影響を小さく抑えることができる。
【0019】
尚、図2から明らかなように、スペーサ14の連結部14g…の上方に臨むシリンダヘッド15の下面には、シリンダブロック11のウオータジャケット13の冷却水の一部をシリンダヘッド15のウオータジャケット13に供給する連通孔15c…が開口している。そして2個の連結部14g,14gに設けられた2個の上部支持脚14i,14iは、前記連通孔15c,15cよりも冷却水の流れ方向下流側に僅かに偏倚して配置されており、これにより冷却水を上部支持脚14i,14iに当てて前記連通孔15c,15cに供給し易くしている。
【0020】
従って、スペーサ14をウオータジャケット13の内部に装着すると、仕切壁14bの下端がウオータジャケット13の底壁に接触し、上端がシリンダブロック11およびシリンダヘッド15間に挟持されたガスケット16の下面に接触することで、スペーサ14のタイミングトレーン側の端部が上下方向に位置決めされる(図9参照)。またスペーサ14のトランスミッション側の部分は、下部支持脚14j,14jの下端がウオータジャケット13の底壁に接触し、上部支持脚14i,14iの上端がガスケット16の下面に接触することで、上下方向に位置決めされる(図4および図6参照)。
【0021】
そしてウオータジャケット13の内部には、スペーサ14の上縁とガスケット16の下面との間に上部冷却水通路13cが区画され、スペーサ14の下縁とウオータジャケット13の底部との間に下部冷却水通路13dが区画される。このとき、上部冷却水通路13cの高さは上部支持脚14c,14cの高さにより決められ、下部冷却水通路13dの高さは下部支持脚14j,14jの高さにより決められる。
【0022】
以下、スペーサ14の細部の構造を順次説明する。
【0023】
図4〜図6から明らかなように、スペーサ本体部14aの径方向の厚さT(図5参照)は上下方向に亙って一定であり、ウオータジャケット13の径方向の幅Wよりも小さく設定される。スペーサ14をウオータジャケット13の内部に装着したとき、スペーサ本体部14aの内周面がウオータジャケット13の内側壁面13aに僅かな隙間を介して対峙しており、従ってスペーサ本体部14aの外周面とウオータジャケット13の外側壁面13bとの間には比較的に大きい隙間αが形成される。
【0024】
図1および図3〜図6から明らかなように、スペーサ本体部14aの外周面の下縁に沿って、畝状の突条14kが径方向外側に向かって突設される。この突条14kの径方向の外端はウオータジャケット13の外側壁面13bに僅かな隙間を介して対峙しており、従ってスペーサ本体部14aは突条14kが形成された下縁において径方向に位置決めされる。尚、前記突条14kは、下側の入口切欠き14cの部分および下側の出口切欠き14eの部分には設けられていない。
【0025】
図2および図8〜図10から明らかなように、シリンダブロック11のタイミングトレーン側の端部にはシリンダ列線L1と平行に延びる冷却水供給通路11bが形成され、この冷却水供給通路11bの下流端は、スペーサ14の仕切壁14bよりも吸気側において、円形の冷却水供給口11cを介してウオータジャケット13に連通する。シリンダブロック11の冷却水供給口11cおよびスペーサ14の冷却水入口部14dは、シリンダ列線L1に対して吸気側に若干偏倚して設けられているため、シリンダ列線L1と平行な冷却水供給通路11bから供給された冷却水は、その流れの方向を大きく変えることなく吸気側のウオータジャケット13にスムーズに流入することができる。また前述したように、冷却水入口部14dの入口切欠き14c,14cがスペーサ本体部14aの上縁および下縁に滑らかに湾曲しながら連続しているので、冷却水供給口11cから流入した冷却水は冷却水入口部14dの入口切欠き14c,14cに案内されて上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dにスムーズに導かれる。
【0026】
スペーサ14の上下の入口切欠き14c,14cに上下を挟まれて幅狭になった冷却水入口部14dは、その断面が三角形になって冷却水供給口11c側に楔状に突出する。冷却水供給通路11bの内部から冷却水供給口11cを通して見ると、スペーサ14の三角形断面の冷却水入口部14dの稜線が露出する(図10参照)。冷却水入口部14dのシリンダ軸線L2方向の高さH1は、冷却水供給口11cのシリンダ軸線L2方向の高さH3よりも小さくなっている。
【0027】
図1、図2、図4、図7および図8から明らかなように、スペーサ14のスペーサ本体部14aはウオータジャケット13の内側壁面13aに沿うように配置されているが、スペーサ14の上下の出口切欠き14e,14eに上下を挟まれた冷却水出口部14fだけは径方向外側に張り出しており、その部分がウオータジャケット13の外側壁面13bに沿うように配置される。従って、スペーサ14の冷却水出口部14fとウオータジャケット13の内側壁面13aとの間には隙間β(図2および図8参照)が形成される。そしてスペーサ14の冷却水出口部14fの上方に、シリンダヘッド15の下面に開口する2個の連通孔15a,15b(図2、図4および図5参照)が臨んでいる。
【0028】
図1、図4および図8から明らかなように、スペーサ14の仕切壁14bの外表面には、上下方向に延びる3本のリブ14m…と、それらに挟まれた2本の溝14n,14nとが形成される。3本のリブ14m…の先端が臨むウオータジャケット13の外側壁面13bは単純な円弧面ではなく、波うつように屈曲している(図8参照)。仕切壁14bの外表面の下端には切欠き14oが形成されており、この切欠き14oを介して仕切壁14bの両側のウオータジャケット13が相互に連通する。
【0029】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0030】
シリンダブロック11のデッキ面11aにシリンダヘッド15を組み付ける前の状態では、デッキ面11aに露出する3個のシリンダスリーブ12…のシリンダボア12a…の外周を囲むようにウオータジャケット13が開口しており、その開口からウオータジャケット13の内部にスペーサ14が挿入される。その後に、シリンダブロック11のデッキ面11aにガスケット16を重ね合わせた状態でシリンダヘッド15が締結される。
【0031】
このスペーサ14の組付状態において、仕切壁14bの下端と下部支持脚14j,14jの下端とがウオータジャケット13の底面に接触し、仕切壁14bの上端と上部支持脚14i,14iの上端とがガスケット16の下面に接触することで、スペーサ14がシリンダ軸線L2方向に位置決めされる。このとき、スペーサ14のスペーサ本体部14aの内周面はウオータジャケット13の内側壁面13aに接するように配置されるが、鋳放しのウオータジャケット13の内側壁面13aの寸法精度は高くないため、スペーサ14がウオータジャケット13の内側壁面13aに擦れて組付性が低下するのを防止すべく、スペーサ本体部14aの内周面とウオータジャケット13の内側壁面13aとの間には若干の隙間が形成される。
【0032】
内燃機関の運転時には、シリンダブロック11に設けられた図示せぬウォータポンプから供給された冷却水が、シリンダブロック11のタイミングトレーン側の端部に設けられた冷却水供給通路11bから冷却水供給口11cを経てウオータジャケット13に流入する。ウオータジャケット13の内部にはスペーサ14が配置されており、冷却水供給口11cに臨むスペーサ14には上下の入口切欠き14c,14cに挟まれた幅狭の冷却水入口部14dが対向する。図8〜図10から明らかなように、冷却水入口部14dのシリンダ軸線L2方向の高さH1は、冷却水供給口11cのシリンダ軸線L2方向の高さH3よりも小さくなっており、かつ三角形断面の冷却水入口部14dは冷却水供給口11cに向かって楔状に突出しているため、冷却水供給口11cを出た冷却水は冷却水入口部14dの上下の斜面に案内されて上下方向に分流し、スペーサ14により分離された上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dにスムーズに流入することができ、そのときの圧損が最小限に抑えられる。
【0033】
冷却水がウオータジャケット13に流入するときの圧損を更に減らすには、冷却水入口部14dを完全に切り欠くことで、その部分でスペーサ14を分断してしまえば良いが、このようにするとスペーサ14の剛性が大幅に低下してしまう問題がある。それに対し、本実施の形態によれば、上下方向の高さH1を小さくした冷却水入口部14dにより冷却水の圧損を低減しながらスペーサ14の剛性を確保することができる。
【0034】
ウオータジャケット13の上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dに流入した冷却水は左右方向に分岐しようとするが、冷却水入口部14dの右側に存在する仕切壁14bによって流れを阻害されるため、左側に向きを変えて上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dの略全長を時計方向に流れ、冷却水供給口11cから見て仕切壁14bの反対側の冷却水出口部11fからシリンダヘッド15の連通孔15a,15bに排出される。このとき、上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dはスペーサ本体部14aの下縁に沿って設けた突条14kによって仕切られているため、上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dを流れる冷却水は殆ど混合することはない。
【0035】
ウオータジャケット13のシリンダ軸線L2方向の中間部の内側壁面13aにはスペーサ14のスペーサ本体部14aの内周面が接触しているため、その内側壁面13aに冷却水が接触し難くなって冷却が抑制される。その結果、スペーサ本体部14aに対向するシリンダボア12a…のシリンダ軸線L2方向の中間部が他の部分よりも高温になり、熱膨張してピストンとの間のクリアランスが増加するため、特に圧縮行程や膨張行程でピストンに大きなサイドスラストが加わるときに、ピストンおよびシリンダボア12a…間のフリクションを低減して内燃機関の燃費向上に寄与することができる。またシリンダボア12a…のシリンダ軸線L2方向中間部が他の部分よりも高温になることで、その部分を潤滑するオイルが温度上昇して粘性が低下するため、フリクションの低減効果が更に高められる。
【0036】
一方、シリンダボア12a…のシリンダ軸線L2方向上部および下部は、スペーサ14の上下の上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dを流れる冷却水によって充分に冷却されるため、シリンダボア12a…に摺動自在に嵌合するピストンの高温になり易い頂部およびスカート部の冷却性能を確保して過熱を防止することができる。
【0037】
シリンダブロック11の冷却水供給口11cからウオータジャケット13に流入した冷却水の一部は、スペーサ14の仕切壁14bの外表面とウオータジャケット13の外側壁面13bとの間を通過して冷却水入口部14d側から冷却水出口部14f側に短絡しようとするが、図8に示すように、スペーサ14の仕切壁14bの外表面は3本のリブ14m…と2本の溝14n,14nを交互に配置したラビリンス構造になっているため、リブ14m…の外側の隙間を通過した冷却水が溝14nの内部で渦を作ることで仕切壁14bを通過し難くなる。よって、スペーサ14の組付性を確保するためにスペーサ14の外表面とウオータジャケット13の外側壁面13bとの間に隙間を形成しても、その隙間を通して冷却水供給口11cと連通孔15a,15bとが短絡するのを効果的に防止することができる。
【0038】
しかも、スペーサ14の仕切壁14bの外表面に対向するウオータジャケット13の外側壁面13bが波打つように湾曲しているため(図8参照)、ラビリンス効果が一層強く発揮されて冷却水の短絡を一層効果的に防止することができる。
【0039】
ウオータジャケット13の上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dを流れた冷却水は、スペーサ14の冷却水出口部14fで合流し、そこから上方に向きを変えてシリンダヘッド15の連通孔15a,15bを通過してシリンダヘッド15のウオータジャケットに供給される。このとき、スペーサ14の冷却水出口部14fのシリンダ軸線L2方向の高さH2はスペーサ本体部14aのシリンダ軸線L2方向の高さH0よりも小さく形成されており、かつ冷却水出口部14fは径方向外側に偏倚してウオータジャケット13の外側壁面13bに接するように配置されるため、下部冷却水通路13dを出た冷却水はスペーサ14の冷却水出口部14fとウオータジャケット13の外側壁面13bとの間の隙間β(図2および図8参照)を通過してシリンダヘッド15の連通孔15a,15bにスムーズに導かれる。このとき、冷却水出口部14fの高さH2がスペーサ本体部14aの高さH0よりも小さいので、下部冷却水通路13dから連通孔15a,15bに向かって流れる冷却水が冷却水出口部14fを通過する際の抵抗を低減することができる。
【0040】
図11(B)に示すように、仮にスペーサ14の突条14kをスペーサ本体部14aの上縁に沿って設けたとしても、突条14kが上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dを仕切る効果には代わりはないが、スペーサ14の冷却水出口部14fにおいて突条14kが途切れた部分における冷却水の挙動に違いが発生する。即ち、図11(A)に示すように、本実施の形態の如くスペーサ14の突条14kをスペーサ本体部14aの下縁に沿って設けた場合には、冷却水は冷却水出口部14fの直近まで水平方向に流れて突条14kが途切れた部分で上向きに流れを変え、シリンダヘッド15の連通孔15a,15bにスムーズに導かれる。これにより、冷却水出口部14fの下方の下部冷却水通路13dにも充分な量の冷却水を供給し、冷却水出口部14fに臨むシリンダボア12aの全周を均一に冷却することができる。
【0041】
一方、図11(B)に示すように、仮にスペーサ14の突条14kをスペーサ本体部14aの上縁に沿って設けた場合には、冷却水は冷却水出口部14fのかなり手前から上向きに流れを変えるため、冷却水出口部14fの下方の下部冷却水通路13dに充分な量の冷却水が流れなくなって冷却性能が低下する問題がある。
【0042】
尚、スペーサ14の仕切壁14bの下端に切欠き14o(図1および図9参照)を設けたので、冷却水入口部14dの下部の冷却水の一部が切欠き14oを通過して冷却水出口部14fの下部に流入し、冷却水出口部14fに滞留する冷却水をシリンダヘッド15の連通孔15a,15bに向けて押し上げる効果を発揮することで、ウオータジャケット13からの冷却水の排出が一層スムーズに行われる。
【0043】
またウオータジャケット13の内部に挿入されたスペーサ14は、仕切壁14bの下端がウオータジャケット13の底壁に接触し、上端がシリンダブロック11およびシリンダヘッド15間に挟持されたガスケット16の下面に接触することで、スペーサ14のタイミングトレーン側の端部が上下方向に位置決めされる(図9参照)。またスペーサ14のトランスミッション側の部分は、下部支持脚14j,14jの下端がウオータジャケット13の底壁に接触し、上部支持脚14i,14iの上端がガスケット16の下面に接触することで上下方向に位置決めされるが、仕切壁14bがシリンダ列線L1方向の一端部に設けられ、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jがシリンダ列線L1方向の最も他端部のシリンダボア12aと、最も他端部から2番目のシリンダボア12aとの間の連結部14g,14gに設けられるので、仕切壁14bから上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jまでの距離を最大限に確保してスペーサ14の支持を安定させることができる。
【0044】
また上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jをスペーサ14の連結部14g,14gに設けたことで、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jを設けたことによるウオータジャケット13の冷却水の流れに対する影響を最小限に抑えることができる。
【0045】
その理由は、連結部14g,14gではスペーサ本体部14aが異なる二つの方向から鋭角で交差するため、シリンダ列線L1に直交する方向のウオータジャケット13の幅W′(図6参照)が、連結部14g,14g以外の一般部におけるウオータジャケット13の幅W(図5および図7参照)よりも大きくなる。よって、ウオータジャケット13の幅W′が大きくなる部分に上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jを配置することで、それがウオータジャケット13の冷却水の流れに対する影響を最小限に抑えることができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0047】
例えば、実施の形態ではV型6気筒内燃機関を例示したが、本発明は任意の気筒数の任意の形式の内燃機関に対して適用することができる。
【0048】
また本発明は、シリンダ列線L1の一端側から供給した冷却水を吸気側側面および排気側側面に二股に分岐させ、シリンダ列線L21他端側で集合させて排出する内燃機関に対しても適用することができる。
【0049】
また実施の形態では突条14kがスペーサ本体部14aの下縁に沿って形成されているが、突条14k位置はスペーサ本体部14aの下縁に限定されず、下縁から上方に若干離れた位置を含むスペーサ本体部14aの下部に形成されていれば良い。
【符号の説明】
【0050】
11 シリンダブロック
12a シリンダボア
13 ウオータジャケット
13a 内側壁面
13b 外側壁面(壁面)
13c 上部冷却水通路
13d 下部冷却水通路
14 スペーサ
14a スペーサ本体部
14f 冷却水出口部
14k 突条
15 シリンダヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボアの周囲を囲むように形成されたウオータジャケットの内部にスペーサを装着し、前記スペーサで前記ウオータジャケット内の冷却水の流れを規制して前記シリンダボアの冷却状態を調整する内燃機関の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
かかるスペーサの外周面の上部、下部および中間部に周方向に延びる3本の横リブを形成するとともに、シリンダ軸線と平行な6本の縦リブで前記3本の横リブを接続し、それらの横リブおよび縦リブ間に肉抜き部を形成することで、ウオータジャケット内の冷却水の流れを規制するスペーサの機能を確保しながら該スペーサの重量を軽減するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4051019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかるスペーサが装着されたウオータジャケットの下流端で冷却水は流れの方向を上向きに変えてシリンダヘッドのウオータジャケットに流入するため、冷却水はウオータジャケットにおけるスペーサの下側の下部冷却水通路の下流端部分に滞留してしまい、その部分でシリンダボアの冷却性能が低下する問題がある。しかしながら上記従来のものは、スペーサの横リブが補強リブとしての機能しか発揮していないため、ウオータジャケットの下部冷却水通路の下流端部分の流れを良好に保つことができない可能性があった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、スペーサの重量を最小限に抑えながら、スペーサで仕切られたウオータジャケットの下部冷却水通路に臨むシリンダボアの冷却性能を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボアの周囲を囲むように形成されたウオータジャケットの内部にスペーサを装着し、前記スペーサで前記ウオータジャケットを上部冷却水通路および下部冷却水通路に分離して冷却水の流れを規制することで前記シリンダボアの冷却状態を調整する内燃機関の冷却構造において、前記スペーサは前記ウオータジャケット内の冷却水をシリンダヘッドに排出する冷却水出口部を備え、前記ウオータジャケットの壁面に向かって径方向に突出する突条を前記スペーサの下部に沿って形成し、前記突条を少なくとも前記冷却水出口部の下方において切り欠いたことを特徴とする内燃機関の冷却構造が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記スペーサのスペーサ本体部は前記ウオータジャケットの内側壁面に沿って配置され、前記突条は前記ウオータジャケットの外側壁面に向かって突出することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の冷却構造が提案される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の構成によれば、シリンダブロックのシリンダボアの周囲を囲むように形成されたウオータジャケットに供給された冷却水は、ウオータジャケットの内部に装着されたスペーサにより区画された上部冷却水通路および下部冷却水通路に分流してシリンダボアを冷却した後、冷却水出口部からシリンダヘッドに排出される。このとき、ウオータジャケットの壁面に向かって径方向に突出する突条をスペーサの下部に沿って形成し、その突条の少なくとも冷却水出口部の下方部分を切り欠いたので、スペーサ全体を突条の部分と同じ厚さにする必要をなくして重量を軽減しながら、下部冷却水通路の冷却水の流れを冷却水出口部まで維持して良好な冷却性能を確保することができる。
【0009】
また請求項2の構成によれば、スペーサのスペーサ本体部をウオータジャケットの内側壁面に沿って配置したので、冷却水がウオータジャケットの内側壁面に直接接触し難くしてスペーサによる保温効果を有効に発揮させることができ、また突条をウオータジャケットの外側壁面に向かって突出させたので、スペーサとウオータジャケットの外側壁面との間に隙間が存在しても、スペーサをウオータジャケットの内側壁面に沿って保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】V型6気筒内燃機関の一方のバンクの斜視図。
【図2】図1の2方向矢視図。
【図3】図1の3方向矢視図。
【図4】図1の4方向矢視図。
【図5】図2の5−5線断面図。
【図6】図2の6−6線断面図。
【図7】図2の7−7線断面図。
【図8】図2の8部拡大図。
【図9】図8の9−9線断面図。
【図10】図8の10−10線断面図。
【図11】図4の11方向矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図11に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1には、V型6気筒内燃機関のシリンダブロック11の一方のバンクが示される。シリンダブロック11にはシリンダ列線L1に沿って3個のシリンダスリーブ12…が埋設されており、それらのシリンダスリーブ12…の外周面を囲むようにウオータジャケット13が形成される。本実施の形態のシリンダブロック11はサイアミーズ型であって隣接するシリンダスリーブ12…間にはウオータジャケット13が形成されておらず、よってウオータジャケット13は3個のシリンダスリーブ12…の外周面を個々に囲むのではなく、3個のシリンダスリーブ12…の全体を囲んでおり、これにより内燃機関のシリンダ列線L1方向の寸法の短縮が図られる。シリンダブロック11のデッキ面11aに開口するウオータジャケット13は、そこからクランクケース側に向けて一定の深さで下向きに延びており、そのウオータジャケット13の内部にシリンダブロック11のデッキ面11aの開口側から挿入された合成樹脂製のスペーサ14が配置される。
【0013】
尚、本明細書において「上下方向」とは、シリンダ軸線L2方向のシリンダヘッド側が「上」と定義され、シリンダ軸線L2方向のクランクケース側が「下」と定義される。
【0014】
図1〜図4から明らかなように、スペーサ14は、シリンダブロック11の3個のシリンダスリーブ12…の外周の大部分を囲むスペーサ本体部14aと、その残りの部分を囲む冷却水入口部14dおよび冷却水出口部14fとを備える。スペーサ14はウオータジャケット13に沿う閉じた形状に形成されていて切断部を持たないため、そのスペーサ14の剛性は高いものとなる。スペーサ本体部14aのシリンダ軸線L2方向の高さH0は、その全周に亙って基本的に一定である。スペーサ14のシリンダ列線L1方向の一端側、つまりシリンダブロック11のタイミングトレーン側の端部には、冷却水入口部14dおよび冷却水出口部14fの間から上下に突出する仕切壁14bが一体に設けられる。
【0015】
また冷却水入口部14dは、仕切壁14bの一側(吸気側)に隣接する部分で、スペーサ14aの上縁および下縁に設けられた入口切欠き14c,14cに上下を挟まれるように形成されており、この冷却水入口部14dの部分でスペーサ14のシリンダ軸線L2方向の高さH1がスペーサ本体部14aの高さH0よりも小さくなっている。同様に、冷却水出口部14fは、仕切壁14bの他側(排気側)に隣接する部分で、スペーサ14の上縁および下縁に設けられた出口切欠き14e,14eに上下を挟まれるように形成されており、この冷却水出口部14fの部分でスペーサ14のシリンダ軸線L2方向の高さH2がスペーサ本体部14aの高さH0よりも小さくなっている。冷却水入口部14dの上下の入口切欠き14c,14cは、スペーサ本体部14aの上縁および下縁に滑らかに湾曲しながら連続している。
【0016】
図2、図4および図6から明らかなように、3個のシリンダボア12a…が相互に近接する部分の近傍では、各シリンダボア12a…の周囲のウオータジャケット13が鋭角で交差するため、その部分のウオータジャケット13のシリンダ列線L1に直交する方向の幅W′(図6参照)は、その他の部分のウオータジャケット13の幅W(図5および図7参照)よりも広がっている。従って、ウオータジャケット13が鋭角で交差する部分に嵌合するスペーサ本体部14aの連結部g…の厚さT′(図6参照)は、その他の部分のスペーサ本体部14aの厚さT(図5および図7参照)よりも広がっている。連結部g…を収納する部分でのウオータジャケット13の幅W′は、シリンダヘッド15に連なる部分で更に広がっており、その広がった部分を塞ぐように前記連結部14g…の上端から径方向内向きに突起14h…が突設される(図6参照)。
【0017】
シリンダブロック11のトランスミッション側の端部に最も近いシリンダボア12aと、それに隣接するシリンダボア12aとが対向する部分に隣接するスペーサ本体部14aの2個の連結部14g,14gから、2本の円錐台状の上部支持脚14i,14iが上向きに突出するとともに、2本の円錐台状の下部支持脚14j,14jが下向きに突出する。上部支持脚14i,14iの上端と仕切壁14bの上端とは同じ高さに整列し、下部支持脚14j,14jの下端と仕切壁14bの下端とは同じ高さに整列する。
【0018】
このように、スペーサ本体部14aの他の部分の厚さTよりも大きい厚さT′を持つ連結部14g,14gに上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jを設けたことで、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jのスペーサ本体部14aに対する結合強度を高め、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jでスペーサ14をウオータジャケット13の内部に強固に支持することができる。また上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jが設けられる位置は、ウオータジャケット13の内部で冷却水の流れの方向が変わって流速が落ちる位置であるため、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jを設けたことによる冷却水の流れに対する影響を小さく抑えることができる。
【0019】
尚、図2から明らかなように、スペーサ14の連結部14g…の上方に臨むシリンダヘッド15の下面には、シリンダブロック11のウオータジャケット13の冷却水の一部をシリンダヘッド15のウオータジャケット13に供給する連通孔15c…が開口している。そして2個の連結部14g,14gに設けられた2個の上部支持脚14i,14iは、前記連通孔15c,15cよりも冷却水の流れ方向下流側に僅かに偏倚して配置されており、これにより冷却水を上部支持脚14i,14iに当てて前記連通孔15c,15cに供給し易くしている。
【0020】
従って、スペーサ14をウオータジャケット13の内部に装着すると、仕切壁14bの下端がウオータジャケット13の底壁に接触し、上端がシリンダブロック11およびシリンダヘッド15間に挟持されたガスケット16の下面に接触することで、スペーサ14のタイミングトレーン側の端部が上下方向に位置決めされる(図9参照)。またスペーサ14のトランスミッション側の部分は、下部支持脚14j,14jの下端がウオータジャケット13の底壁に接触し、上部支持脚14i,14iの上端がガスケット16の下面に接触することで、上下方向に位置決めされる(図4および図6参照)。
【0021】
そしてウオータジャケット13の内部には、スペーサ14の上縁とガスケット16の下面との間に上部冷却水通路13cが区画され、スペーサ14の下縁とウオータジャケット13の底部との間に下部冷却水通路13dが区画される。このとき、上部冷却水通路13cの高さは上部支持脚14c,14cの高さにより決められ、下部冷却水通路13dの高さは下部支持脚14j,14jの高さにより決められる。
【0022】
以下、スペーサ14の細部の構造を順次説明する。
【0023】
図4〜図6から明らかなように、スペーサ本体部14aの径方向の厚さT(図5参照)は上下方向に亙って一定であり、ウオータジャケット13の径方向の幅Wよりも小さく設定される。スペーサ14をウオータジャケット13の内部に装着したとき、スペーサ本体部14aの内周面がウオータジャケット13の内側壁面13aに僅かな隙間を介して対峙しており、従ってスペーサ本体部14aの外周面とウオータジャケット13の外側壁面13bとの間には比較的に大きい隙間αが形成される。
【0024】
図1および図3〜図6から明らかなように、スペーサ本体部14aの外周面の下縁に沿って、畝状の突条14kが径方向外側に向かって突設される。この突条14kの径方向の外端はウオータジャケット13の外側壁面13bに僅かな隙間を介して対峙しており、従ってスペーサ本体部14aは突条14kが形成された下縁において径方向に位置決めされる。尚、前記突条14kは、下側の入口切欠き14cの部分および下側の出口切欠き14eの部分には設けられていない。
【0025】
図2および図8〜図10から明らかなように、シリンダブロック11のタイミングトレーン側の端部にはシリンダ列線L1と平行に延びる冷却水供給通路11bが形成され、この冷却水供給通路11bの下流端は、スペーサ14の仕切壁14bよりも吸気側において、円形の冷却水供給口11cを介してウオータジャケット13に連通する。シリンダブロック11の冷却水供給口11cおよびスペーサ14の冷却水入口部14dは、シリンダ列線L1に対して吸気側に若干偏倚して設けられているため、シリンダ列線L1と平行な冷却水供給通路11bから供給された冷却水は、その流れの方向を大きく変えることなく吸気側のウオータジャケット13にスムーズに流入することができる。また前述したように、冷却水入口部14dの入口切欠き14c,14cがスペーサ本体部14aの上縁および下縁に滑らかに湾曲しながら連続しているので、冷却水供給口11cから流入した冷却水は冷却水入口部14dの入口切欠き14c,14cに案内されて上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dにスムーズに導かれる。
【0026】
スペーサ14の上下の入口切欠き14c,14cに上下を挟まれて幅狭になった冷却水入口部14dは、その断面が三角形になって冷却水供給口11c側に楔状に突出する。冷却水供給通路11bの内部から冷却水供給口11cを通して見ると、スペーサ14の三角形断面の冷却水入口部14dの稜線が露出する(図10参照)。冷却水入口部14dのシリンダ軸線L2方向の高さH1は、冷却水供給口11cのシリンダ軸線L2方向の高さH3よりも小さくなっている。
【0027】
図1、図2、図4、図7および図8から明らかなように、スペーサ14のスペーサ本体部14aはウオータジャケット13の内側壁面13aに沿うように配置されているが、スペーサ14の上下の出口切欠き14e,14eに上下を挟まれた冷却水出口部14fだけは径方向外側に張り出しており、その部分がウオータジャケット13の外側壁面13bに沿うように配置される。従って、スペーサ14の冷却水出口部14fとウオータジャケット13の内側壁面13aとの間には隙間β(図2および図8参照)が形成される。そしてスペーサ14の冷却水出口部14fの上方に、シリンダヘッド15の下面に開口する2個の連通孔15a,15b(図2、図4および図5参照)が臨んでいる。
【0028】
図1、図4および図8から明らかなように、スペーサ14の仕切壁14bの外表面には、上下方向に延びる3本のリブ14m…と、それらに挟まれた2本の溝14n,14nとが形成される。3本のリブ14m…の先端が臨むウオータジャケット13の外側壁面13bは単純な円弧面ではなく、波うつように屈曲している(図8参照)。仕切壁14bの外表面の下端には切欠き14oが形成されており、この切欠き14oを介して仕切壁14bの両側のウオータジャケット13が相互に連通する。
【0029】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0030】
シリンダブロック11のデッキ面11aにシリンダヘッド15を組み付ける前の状態では、デッキ面11aに露出する3個のシリンダスリーブ12…のシリンダボア12a…の外周を囲むようにウオータジャケット13が開口しており、その開口からウオータジャケット13の内部にスペーサ14が挿入される。その後に、シリンダブロック11のデッキ面11aにガスケット16を重ね合わせた状態でシリンダヘッド15が締結される。
【0031】
このスペーサ14の組付状態において、仕切壁14bの下端と下部支持脚14j,14jの下端とがウオータジャケット13の底面に接触し、仕切壁14bの上端と上部支持脚14i,14iの上端とがガスケット16の下面に接触することで、スペーサ14がシリンダ軸線L2方向に位置決めされる。このとき、スペーサ14のスペーサ本体部14aの内周面はウオータジャケット13の内側壁面13aに接するように配置されるが、鋳放しのウオータジャケット13の内側壁面13aの寸法精度は高くないため、スペーサ14がウオータジャケット13の内側壁面13aに擦れて組付性が低下するのを防止すべく、スペーサ本体部14aの内周面とウオータジャケット13の内側壁面13aとの間には若干の隙間が形成される。
【0032】
内燃機関の運転時には、シリンダブロック11に設けられた図示せぬウォータポンプから供給された冷却水が、シリンダブロック11のタイミングトレーン側の端部に設けられた冷却水供給通路11bから冷却水供給口11cを経てウオータジャケット13に流入する。ウオータジャケット13の内部にはスペーサ14が配置されており、冷却水供給口11cに臨むスペーサ14には上下の入口切欠き14c,14cに挟まれた幅狭の冷却水入口部14dが対向する。図8〜図10から明らかなように、冷却水入口部14dのシリンダ軸線L2方向の高さH1は、冷却水供給口11cのシリンダ軸線L2方向の高さH3よりも小さくなっており、かつ三角形断面の冷却水入口部14dは冷却水供給口11cに向かって楔状に突出しているため、冷却水供給口11cを出た冷却水は冷却水入口部14dの上下の斜面に案内されて上下方向に分流し、スペーサ14により分離された上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dにスムーズに流入することができ、そのときの圧損が最小限に抑えられる。
【0033】
冷却水がウオータジャケット13に流入するときの圧損を更に減らすには、冷却水入口部14dを完全に切り欠くことで、その部分でスペーサ14を分断してしまえば良いが、このようにするとスペーサ14の剛性が大幅に低下してしまう問題がある。それに対し、本実施の形態によれば、上下方向の高さH1を小さくした冷却水入口部14dにより冷却水の圧損を低減しながらスペーサ14の剛性を確保することができる。
【0034】
ウオータジャケット13の上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dに流入した冷却水は左右方向に分岐しようとするが、冷却水入口部14dの右側に存在する仕切壁14bによって流れを阻害されるため、左側に向きを変えて上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dの略全長を時計方向に流れ、冷却水供給口11cから見て仕切壁14bの反対側の冷却水出口部11fからシリンダヘッド15の連通孔15a,15bに排出される。このとき、上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dはスペーサ本体部14aの下縁に沿って設けた突条14kによって仕切られているため、上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dを流れる冷却水は殆ど混合することはない。
【0035】
ウオータジャケット13のシリンダ軸線L2方向の中間部の内側壁面13aにはスペーサ14のスペーサ本体部14aの内周面が接触しているため、その内側壁面13aに冷却水が接触し難くなって冷却が抑制される。その結果、スペーサ本体部14aに対向するシリンダボア12a…のシリンダ軸線L2方向の中間部が他の部分よりも高温になり、熱膨張してピストンとの間のクリアランスが増加するため、特に圧縮行程や膨張行程でピストンに大きなサイドスラストが加わるときに、ピストンおよびシリンダボア12a…間のフリクションを低減して内燃機関の燃費向上に寄与することができる。またシリンダボア12a…のシリンダ軸線L2方向中間部が他の部分よりも高温になることで、その部分を潤滑するオイルが温度上昇して粘性が低下するため、フリクションの低減効果が更に高められる。
【0036】
一方、シリンダボア12a…のシリンダ軸線L2方向上部および下部は、スペーサ14の上下の上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dを流れる冷却水によって充分に冷却されるため、シリンダボア12a…に摺動自在に嵌合するピストンの高温になり易い頂部およびスカート部の冷却性能を確保して過熱を防止することができる。
【0037】
シリンダブロック11の冷却水供給口11cからウオータジャケット13に流入した冷却水の一部は、スペーサ14の仕切壁14bの外表面とウオータジャケット13の外側壁面13bとの間を通過して冷却水入口部14d側から冷却水出口部14f側に短絡しようとするが、図8に示すように、スペーサ14の仕切壁14bの外表面は3本のリブ14m…と2本の溝14n,14nを交互に配置したラビリンス構造になっているため、リブ14m…の外側の隙間を通過した冷却水が溝14nの内部で渦を作ることで仕切壁14bを通過し難くなる。よって、スペーサ14の組付性を確保するためにスペーサ14の外表面とウオータジャケット13の外側壁面13bとの間に隙間を形成しても、その隙間を通して冷却水供給口11cと連通孔15a,15bとが短絡するのを効果的に防止することができる。
【0038】
しかも、スペーサ14の仕切壁14bの外表面に対向するウオータジャケット13の外側壁面13bが波打つように湾曲しているため(図8参照)、ラビリンス効果が一層強く発揮されて冷却水の短絡を一層効果的に防止することができる。
【0039】
ウオータジャケット13の上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dを流れた冷却水は、スペーサ14の冷却水出口部14fで合流し、そこから上方に向きを変えてシリンダヘッド15の連通孔15a,15bを通過してシリンダヘッド15のウオータジャケットに供給される。このとき、スペーサ14の冷却水出口部14fのシリンダ軸線L2方向の高さH2はスペーサ本体部14aのシリンダ軸線L2方向の高さH0よりも小さく形成されており、かつ冷却水出口部14fは径方向外側に偏倚してウオータジャケット13の外側壁面13bに接するように配置されるため、下部冷却水通路13dを出た冷却水はスペーサ14の冷却水出口部14fとウオータジャケット13の外側壁面13bとの間の隙間β(図2および図8参照)を通過してシリンダヘッド15の連通孔15a,15bにスムーズに導かれる。このとき、冷却水出口部14fの高さH2がスペーサ本体部14aの高さH0よりも小さいので、下部冷却水通路13dから連通孔15a,15bに向かって流れる冷却水が冷却水出口部14fを通過する際の抵抗を低減することができる。
【0040】
図11(B)に示すように、仮にスペーサ14の突条14kをスペーサ本体部14aの上縁に沿って設けたとしても、突条14kが上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dを仕切る効果には代わりはないが、スペーサ14の冷却水出口部14fにおいて突条14kが途切れた部分における冷却水の挙動に違いが発生する。即ち、図11(A)に示すように、本実施の形態の如くスペーサ14の突条14kをスペーサ本体部14aの下縁に沿って設けた場合には、冷却水は冷却水出口部14fの直近まで水平方向に流れて突条14kが途切れた部分で上向きに流れを変え、シリンダヘッド15の連通孔15a,15bにスムーズに導かれる。これにより、冷却水出口部14fの下方の下部冷却水通路13dにも充分な量の冷却水を供給し、冷却水出口部14fに臨むシリンダボア12aの全周を均一に冷却することができる。
【0041】
一方、図11(B)に示すように、仮にスペーサ14の突条14kをスペーサ本体部14aの上縁に沿って設けた場合には、冷却水は冷却水出口部14fのかなり手前から上向きに流れを変えるため、冷却水出口部14fの下方の下部冷却水通路13dに充分な量の冷却水が流れなくなって冷却性能が低下する問題がある。
【0042】
尚、スペーサ14の仕切壁14bの下端に切欠き14o(図1および図9参照)を設けたので、冷却水入口部14dの下部の冷却水の一部が切欠き14oを通過して冷却水出口部14fの下部に流入し、冷却水出口部14fに滞留する冷却水をシリンダヘッド15の連通孔15a,15bに向けて押し上げる効果を発揮することで、ウオータジャケット13からの冷却水の排出が一層スムーズに行われる。
【0043】
またウオータジャケット13の内部に挿入されたスペーサ14は、仕切壁14bの下端がウオータジャケット13の底壁に接触し、上端がシリンダブロック11およびシリンダヘッド15間に挟持されたガスケット16の下面に接触することで、スペーサ14のタイミングトレーン側の端部が上下方向に位置決めされる(図9参照)。またスペーサ14のトランスミッション側の部分は、下部支持脚14j,14jの下端がウオータジャケット13の底壁に接触し、上部支持脚14i,14iの上端がガスケット16の下面に接触することで上下方向に位置決めされるが、仕切壁14bがシリンダ列線L1方向の一端部に設けられ、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jがシリンダ列線L1方向の最も他端部のシリンダボア12aと、最も他端部から2番目のシリンダボア12aとの間の連結部14g,14gに設けられるので、仕切壁14bから上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jまでの距離を最大限に確保してスペーサ14の支持を安定させることができる。
【0044】
また上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jをスペーサ14の連結部14g,14gに設けたことで、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jを設けたことによるウオータジャケット13の冷却水の流れに対する影響を最小限に抑えることができる。
【0045】
その理由は、連結部14g,14gではスペーサ本体部14aが異なる二つの方向から鋭角で交差するため、シリンダ列線L1に直交する方向のウオータジャケット13の幅W′(図6参照)が、連結部14g,14g以外の一般部におけるウオータジャケット13の幅W(図5および図7参照)よりも大きくなる。よって、ウオータジャケット13の幅W′が大きくなる部分に上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jを配置することで、それがウオータジャケット13の冷却水の流れに対する影響を最小限に抑えることができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0047】
例えば、実施の形態ではV型6気筒内燃機関を例示したが、本発明は任意の気筒数の任意の形式の内燃機関に対して適用することができる。
【0048】
また本発明は、シリンダ列線L1の一端側から供給した冷却水を吸気側側面および排気側側面に二股に分岐させ、シリンダ列線L21他端側で集合させて排出する内燃機関に対しても適用することができる。
【0049】
また実施の形態では突条14kがスペーサ本体部14aの下縁に沿って形成されているが、突条14k位置はスペーサ本体部14aの下縁に限定されず、下縁から上方に若干離れた位置を含むスペーサ本体部14aの下部に形成されていれば良い。
【符号の説明】
【0050】
11 シリンダブロック
12a シリンダボア
13 ウオータジャケット
13a 内側壁面
13b 外側壁面(壁面)
13c 上部冷却水通路
13d 下部冷却水通路
14 スペーサ
14a スペーサ本体部
14f 冷却水出口部
14k 突条
15 シリンダヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダブロック(11)のシリンダボア(12a)の周囲を囲むように形成されたウオータジャケット(13)の内部にスペーサ(14)を装着し、前記スペーサ(14)で前記ウオータジャケット(13)を上部冷却水通路(13c)および下部冷却水通路(13d)に分離して冷却水の流れを規制することで前記シリンダボア(12a)の冷却状態を調整する内燃機関の冷却構造において、
前記スペーサ(14)は前記ウオータジャケット(13)内の冷却水をシリンダヘッド(15)に排出する冷却水出口部(14f)を備え、前記ウオータジャケット(13)の壁面(13b)に向かって径方向に突出する突条(14k)を前記スペーサ(14)の下部に沿って形成し、前記突条(14k)を少なくとも前記冷却水出口部(14f)の下方において切り欠いたことを特徴とする内燃機関の冷却構造。
【請求項2】
前記スペーサ(14)のスペーサ本体部(14a)は前記ウオータジャケット(13)の内側壁面(13a)に沿って配置され、前記突条(14k)は前記ウオータジャケット(13)の外側壁面(13b)に向かって突出することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項1】
内燃機関のシリンダブロック(11)のシリンダボア(12a)の周囲を囲むように形成されたウオータジャケット(13)の内部にスペーサ(14)を装着し、前記スペーサ(14)で前記ウオータジャケット(13)を上部冷却水通路(13c)および下部冷却水通路(13d)に分離して冷却水の流れを規制することで前記シリンダボア(12a)の冷却状態を調整する内燃機関の冷却構造において、
前記スペーサ(14)は前記ウオータジャケット(13)内の冷却水をシリンダヘッド(15)に排出する冷却水出口部(14f)を備え、前記ウオータジャケット(13)の壁面(13b)に向かって径方向に突出する突条(14k)を前記スペーサ(14)の下部に沿って形成し、前記突条(14k)を少なくとも前記冷却水出口部(14f)の下方において切り欠いたことを特徴とする内燃機関の冷却構造。
【請求項2】
前記スペーサ(14)のスペーサ本体部(14a)は前記ウオータジャケット(13)の内側壁面(13a)に沿って配置され、前記突条(14k)は前記ウオータジャケット(13)の外側壁面(13b)に向かって突出することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の冷却構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−106388(P2011−106388A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264142(P2009−264142)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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