説明

内燃機関の制御方法および装置

【課題】燃焼室と吸気管に噴射弁を設けて、全てのシリンダに同じ燃料量を均等に供給する。
【解決手段】第1のシリンダ10aが少なくとも1つの第1の直接噴射弁110aおよび少なくとも1つの第1の吸気管噴射弁150aを有する、第1の排気列Aの第1のシリンダ10aの第1の吸気管噴射弁150aの噴射量の校正方法に関する。燃料が第1のシリンダ10a内に直接のみにより噴射される直接噴射λ測定ステップにおいて、第1のシリンダ10aの直接噴射λ信号が決定され、および燃料が第1の吸気管噴射弁150aと第1の直接噴射弁110aとの間の設定可能な分配比で第1のシリンダ10a内に噴射される吸気管λ測定ステップにおいて、第1のシリンダ10aの吸気管噴射λ信号が決定され、およびλ比較ステップにおいて、直接噴射λ信号の値が吸気管噴射λ信号の値と比較される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102008002511号明細書から、噴射弁が吸気管内においてのみならず燃焼室内においてもまた配置されている内燃機関が既知である。特に、噴流による燃焼方法は、全ての利点を最適に利用可能にするために、噴射弁の高い配量精度を必要とする(例えば、特に始動のために、または暖機のために、または触媒の加熱のために、きわめて少量の個別噴射を有する多重噴射)。要求される配量精度は、特に最小量の範囲内において、特別の方法によって保証されるべきである。
【0003】
独国特許出願公開第102007020964号明細書から、直接噴射を有する内燃機関において、できるだけ良好な回転規則性を達成させるために、個々のシリンダがそのトルク・シェアに関して均等化される方法が既知である。ここで、内燃機関のトルクに対するシェアを決定する1つの噴射により燃料がシリンダの燃焼室内に噴射され、且つシリンダの作業行程の間における後噴射においてトルクがニュートラルとなるように燃料が噴射され、この場合、排気ガスがほぼ理論空気/燃料混合物に対応するように後噴射の量が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008002511号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102007020964号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、噴射弁が燃焼室内においてのみならず吸気管内においてもまた配置されている内燃機関において、回転規則性を改善し且つエミッションを低減させるために、特に、全てのシリンダ内に同じ燃料量が噴射されるべく、全てのシリンダが均等化されるように、吸気管噴射弁の燃料量を校正することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、独立請求項に記載の方法により解決される。
【0007】
ドイツ特許公開第102007020964号からわかるように、吸気管噴射はエミッションがニュートラルとなるように作動可能ではないので、シリンダ均等化機能(Zylindergleichstellungsfunktion)は吸気管噴射弁に行わせることができない。したがって、吸気管噴射弁の校正は直ちに可能ではない。噴射弁が燃焼室内においてのみならず吸気管内においてもまた配置されている内燃機関においては、ドイツ特許公開第102007020964号からわかるように、例えばシリンダ均等化機能を介して直接噴射弁が校正可能である。λセンサの信号の比較により、1つのシリンダに対して、吸気管噴射弁および直接噴射弁の噴射量が相互に比較可能である。これにより、吸気管噴射弁はシリンダごとに直接噴射弁において校正される。したがって、特に、吸気管噴射弁の噴射量を均等化することが可能である。
【0008】
本発明により、λセンサの第1の信号が、燃料が第1のシリンダ内に直接のみにより噴射される直接噴射λ測定ステップにおいて決定される。吸気管λ測定ステップにおいて、燃料が第1のシリンダ内に吸気管噴射弁のみによりまたは吸気管噴射弁および直接噴射弁により噴射され、この場合、吸気管噴射弁ないしは直接噴射弁により噴射される燃料量間の分配比は固定選択されている。この吸気管λ測定ステップにおいて、λセンサの第2の信号が決定される。λ比較ステップにおいて、決定された第1の信号が決定された第2の信号と比較される。これは、吸気管噴射弁が噴射した噴射量が、直接噴射弁が噴射した噴射量から偏差を有しているかどうか、およびいかなる量の偏差を有しているかの推測を可能にする。
【0009】
第1のシリンダの直接噴射弁が直接噴射校正ステップにおいて校正された場合、この方法は、吸気管噴射弁が校正可能であるという決定的な利点を有している。
【0010】
第1のシリンダの直接噴射弁が第1のシリンダおよびその他のシリンダのトルク・シェアの均等化により校正された場合、これは、直接噴射弁の校正が特に簡単であり、および吸気管噴射弁の均等化が可能となるという特別の利点を有している。
【0011】
吸気管λ測定ステップにおいて、燃料が、第1のシリンダを除く第1のシリンダと排気系を共有する全てのシリンダ内に、既に校正された噴射弁のみを介して噴射された場合、これは、λ比較ステップにおいて決定されたλ信号の偏差が特に確実に第1の吸気管噴射弁に割当可能であるという特別の利点を有している。
【0012】
吸気管λ測定ステップにおいて、燃料が、第1のシリンダを除く第1のシリンダと排気系を共有する全てのシリンダ内に、直接噴射弁のみを介して噴射され、吸気管噴射弁を介しては噴射されない場合、直接噴射弁および吸気管噴射弁の校正が別々に実行可能であるので、本発明による方法は特に確実であり且つ特に簡単であるという特別の利点を有している。
【0013】
噴射補正ステップにおいて、第1の吸気管噴射弁の噴射量がλ比較ステップの結果の関数として変化された場合、これは、第1の吸気管噴射弁の噴射量が補正されるという決定的な利点を有している。
【0014】
噴射補正ステップにおいて、吸気管噴射λ信号の値が直接噴射λ信号の値より大きいとき、吸気管噴射弁の噴射量が上昇された場合、これは、吸気管噴射弁のきわめてリーンな噴射が阻止可能であるという利点を有している。
【0015】
噴射補正ステップにおいて、吸気管噴射λ信号の値が直接噴射λ信号の値より小さいとき、吸気管噴射弁の噴射量が低下された場合、これは、吸気管噴射弁のきわめてリッチな噴射が阻止可能であるという利点を有している。
【0016】
吸気管噴射λ信号の値が直接噴射λ信号の値から設定可能なしきい値より小さい偏差を有するようになるまで噴射補正ステップが反復された場合、これは、吸気管噴射弁により噴射される噴射量が少なくとも近似的に直接噴射弁により噴射される噴射量に等しいという特別の利点を有している。
【0017】
燃料が第1の吸気管噴射弁のみを介して噴射され、第1の直接噴射弁を介しては噴射されないように設定可能な分配比が選択された場合、これは、この方法が特に確実であるという特別の利点を有している。
【0018】
本発明による方法が、少なくとも2つの吸気管噴射弁に対して、特に全ての吸気管噴射弁に対して実行された場合、これは、その吸気管噴射弁が校正されるシリンダの噴射量およびトルク・シェアが均等化されるという特別の利点を有している。
【0019】
以下に本発明の実施形態が添付図面に関して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、請求項1の上位概念に記載の内燃機関のシリンダの概略図を示す。
【図2】図2は、多気筒内燃機関の構成図を示す。
【図3】図3は、本発明による方法の流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、燃焼室20、ピストン30を有する内燃機関のシリンダ10を示し、ピストン30は連接棒40によりクランク軸50と結合されている。
【0022】
吸気管80を介して、既知のように、ピストン30の下方運動において、燃焼されるべき空気が燃焼室20内に吸い込まれる。排気管90を介して、燃焼された空気は、ピストン30の上方運動において、燃焼室20から排出される。吸気管80を介して吸い込まれた空気の量は、充填変化装置(Fullungsanderungsvorrichtung)を介して、即ち、この実施例においては、その位置が制御装置70により決定される絞り弁100を介して調節される。
【0023】
燃焼室20内に配置されている直接噴射弁110を介して、および吸気管80内に配置されている吸気管噴射弁150を介して、燃料が吸気管80から吸い込まれた空気内に噴射され、且つ燃焼室20内に燃料/空気混合物が発生される。直接噴射弁110により噴射される燃料の量および吸気管噴射弁150により噴射される燃料の量は、制御装置70により、通常、操作信号の時間長さおよび/または強さを介して決定される。点火プラグ120が燃料/空気混合物を点火する。
【0024】
直接噴射弁110を介しての燃料の噴射においては、燃焼室20内に特にリーンな燃料/空気混合物が発生可能である。このリーンな燃料/空気混合物の点火により発生されるトルクは、ほぼ噴射された燃料の量によって決定される。したがって、このような燃料の直接噴射においては、発生されたトルクから噴射された燃料の量を推測することが可能である。
【0025】
吸気管噴射弁150を介しての燃料の噴射においては、燃焼室20内に、通常、均一な理論燃料/空気混合物が発生される。このような均一な燃料/空気混合物においては、点火により発生されるトルクは、ほぼ吸い込まれた空気充填量により決定される。したがって、このような燃料の吸気管噴射においては、一般に、発生されたトルクから噴射された燃料の量を推測することが可能ではない。
【0026】
排気管90内にλセンサ130が存在し、λセンサ130は燃焼空気比(Verbrennungsluftverhaltnis)λを決定し且つそれを制御装置70に伝送する。排気管90の経路内のNOx吸蔵触媒140は、排気ガス内のNOx成分が明らかに低減されることを保証する。
【0027】
吸気管80の燃焼室20との接続口(Zufuhrung)における吸気弁160はカム180を介してカム軸190により操作される。同様に、排気管90の燃焼室20との接続口における排気弁170はカム182を介してカム軸190により操作される。カム軸190はクランク軸50と結合されている。通常、カム軸190は、クランク軸50の2回転ごとに1回転を実行する。
【0028】
図2は、内燃機関の構成図を示し、この実施例においては、8個のシリンダを有する内燃機関の構成図を示す。第1のシリンダ10a、第2のシリンダ10b、第3のシリンダ10c、第4のシリンダ10d、第5のシリンダ10e、第6のシリンダ10f、第7のシリンダ10gおよび第8のシリンダ10hが示されている。8個のシリンダ10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの各々に、それぞれ1つの直接噴射弁110a、110b、110c、110d、110e、110f、110g、110hおよびそれぞれ1つの吸気管噴射弁150a、150b、150c、150d、150e、150f、150g、150hが付属されている。
【0029】
全てのシリンダが吸気管80および排気管90を共有し、この場合、吸気管80のみならず排気管90もまた、シリンダへの供給管ないしはシリンダからの排出管に分岐している。図2には、排気管90のシリンダごとの分岐は示されていない。図示されていないシリンダ10a、10b、10c、10dの排出管は、合わせられて第1の排気列Aを形成する。図示されていないシリンダ10e、10f、10g、10hの排出管は、合わせられて第2の排気列Bを形成する。第1の排気列Aの排気ガスは第1のλセンサ130aを通過するように案内され、次に、排気ガスは、第2のλセンサ130bを通過するように案内された第2の排気列Bの排気ガスと共に、共通の排気管90により排出される。
【0030】
図3は、本発明による方法の流れ図を示す。ステップ1000は方法の開始を表わす。ステップ1010がそれに続き、ステップ1010において、吸気管噴射弁150a、150b、150c、150d、150e、150f、150g、150hの校正が既に実行されたかどうかが検査される。その代わりに、吸気管噴射弁150a、150b、150c、150d、150e、150f、150g、150hの部分量の校正が既に実行されたかどうかのみが検査されることもまた考えられる。後者は、特に、吸気管噴射弁の幾つかのみが校正されるべきで、吸気管噴射弁の全てが校正されるべきではないとき、特に有意義である。校正が既に実行された場合、ステップ1020がそれに続き、ステップ1020により方法が終了する。校正がまだ実行されなかった場合、ステップ1030がそれに続く。
【0031】
ステップ1030において、全ての直接噴射弁110a、110b、110c、110d、110e、110f、110g、110hが校正されたかどうかが検査される。吸気管噴射弁の幾つかのみの校正が希望されている場合、ステップ1030において、校正されるべき吸気管噴射弁と排気列を共有する全ての直接噴射弁が校正されたかどうかのみが検査される。例えば、第1の吸気管噴射弁150aのみが校正されるべき場合、ステップ1030において、排気列Aの直接噴射弁、この実施例においては、即ち、直接噴射弁110a、110b、110c、110dが校正されているかどうかが検査される。これが肯定の場合、直接噴射λ測定ステップ1050がそれに続く。これが否定の場合、直接噴射校正ステップ1040がそれに続く。はじめに記載されたように、本方法のその他の経過において、特にステップ1060、1070、1080において、校正されるべき吸気管噴射弁がそれに付属されている排気列の直接噴射弁が校正されていることから出発される。
ステップ1040において、直接噴射弁が校正される。このような校正は、例えばドイツ特許公開第102007020964号から既知のように、シリンダ均等化方法により達成可能である。ステップ1040において、全ての直接噴射弁が校正されてもよいが、ステップ1030においてそれらが校正されているかどうかが検査される直接噴射弁のみが校正されることもまた考えられる。ステップ1040が終了したのちに、フローはステップ1030に戻される。
【0032】
ステップ1050において、校正されるべき吸気管噴射弁がその中に存在する排気列の全てのシリンダ10内に、燃料が直接噴射弁110のみを介して噴射され、吸気管噴射弁150を介しては噴射されない。対応するλセンサ130により検出されたλ値は、例えば制御装置70内に記憶される。例えば全ての吸気管噴射弁150a、150b、150c、150d、150e、150f、150g、150hが校正されるべき場合、全てのシリンダ10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h内に、燃料が直接噴射弁110a、110b、110c、110d、110e、110f、110g、110hのみを介して噴射される。吸気管噴射弁150a、150b、150c、150d、150e、150f、150g、150hを介しては燃料は全く噴射されない。λセンサ130aは排気列Aの直接噴射λ信号を測定する。λセンサ130bは排気列Bの第2の直接噴射λ信号を測定する。直接噴射λ信号および第2の直接噴射λ信号の値は制御装置70内に記憶される。
【0033】
これに対して、第1の吸気管噴射弁150aのみが校正されるべき場合、第1の排気列Aの全てのシリンダ内に、即ちシリンダ10a、10b、10c、10d内に、燃料が直接噴射弁110a、110b、110c、110dのみを介して噴射される。吸気管噴射弁150a、150b、150c、150dを介しては燃料は全く噴射されない。λセンサ130aは直接噴射λ信号を測定し、その値は制御装置70内に記憶される。第2の排気列Bのシリンダ10e、10f、10g、10h内には、燃料が、直接噴射弁110e、110f、110g、110hを介して噴射されても、または吸気管噴射弁150e、150f、150g、150hを介して噴射されても、または直接噴射弁と吸気管噴射弁との組み合わせを介して噴射されてもよい。
【0034】
ステップ1050のあとにステップ1060が続く。相前後して続くステップ1060、1070、1080、1090および1100において、吸気管噴射弁の本来の校正が実行される。これらのステップは、はじめに、校正されるべき第1の吸気管噴射弁に対してのみ実行される。ステップ1100に続くステップ1110において、校正されるべき全ての吸気管噴射弁が校正されたかどうかが検査される。これが否定の場合、フローはステップ1060に戻され、且つ校正されるべき第2の吸気管噴射弁に対してステップ1060、1070、1080、1090および1100が実行される。これは、ステップ1110において校正されるべき全ての吸気管噴射弁が校正されたことが特定されるまで反復される。ステップ1110において校正されるべき全ての吸気管噴射弁が校正されたことが特定された場合、ステップ1120がそれに続き、ステップ1120により方法は終了する。
【0035】
ステップ1060、1070、1080、1090および1100は、例として、第1の吸気管噴射弁150aが校正されるべき場合に対して説明される。しかしながら、これらのステップは、他の吸気管噴射弁150b、150c、150d、150e、150f、150g、150hの各々に対しても同様に実行可能である。
【0036】
吸気管λ測定ステップ1060において、第1のシリンダ10a内に、燃料が定義された分配比で直接噴射弁110aおよび第1の吸気管噴射弁150aにより噴射される。この分配比は、例えば、燃料が第1の吸気管噴射弁150aのみにより噴射され、燃料は直接噴射弁110aによっては全く噴射されないように選択されている。しかしながら、分配比は、例えば、燃料の50%が第1の吸気管噴射弁150aにより噴射され、燃料の50%が直接噴射弁110aにより噴射されるように選択されていてもよい。任意の他の分配比もまた考えられる。特に、本方法の間における内燃機関の特別な回転規則性のためには、燃料の80%を超える量が直接噴射弁110aにより、それに対応して燃料の20%未満の量が第1の吸気管噴射弁150aによる分配比が好ましい。特に確実な方法に対しては、逆に、燃料の80%を超える量が第1の吸気管噴射弁150aにより、それに対応して燃料の20%未満が直接噴射弁110aによる分配比が好ましい。排気列Aの他の全てのシリンダにおいて、燃料は既に校正された直接噴射弁110b、110c、110dのみにより噴射される。第1の排気列Aのλセンサ130aは吸気管噴射λ信号を決定する。λ比較ステップ1070がそれに続く。
【0037】
ステップ1070において、制御装置70内に記憶されている第1の排気列Aの直接噴射λ信号の値が、吸気管噴射λ信号の値と比較され、且つ両方の値の差が形成される。この差が0より大きい場合、吸気管λ測定ステップ1060においてλセンサ130aにより測定された値が、直接噴射λ測定ステップ1050においてλセンサ130aにより測定された値より小さくなっている。したがって、吸気管λ測定ステップ1060において、直接噴射λ測定ステップ1050においてよりも多い燃料が噴射されたことが推測される。直接噴射λ測定ステップ1050において燃料は校正された噴射弁のみにより噴射されたので、これにより、吸気管λ測定ステップ1060においてきわめて多量の燃料が噴射されたことが推測される。吸気管λ測定ステップ1060において、第1の吸気管噴射弁150aを除いて燃料が校正された噴射弁のみにより噴射されたので、第1の吸気管噴射弁150aがきわめて多量に燃料を噴射したことが推測される。逆に、この差が0より小さい場合、第1の吸気管噴射弁150aがきわめて少量に燃料を噴射したことが推測される。
【0038】
既知のように、差の絶対値から、第1の吸気管噴射弁150aがきわめて多量にないしはきわめて少量に噴射したエラー噴射燃料量(Fehleinspritzungskraftstoffmenge)がいかなる大きさであるかもまた推測可能である。
【0039】
噴射補正ステップ1080がそれに続く。ステップ1080においては、制御装置70内において、第1の吸気管噴射弁150aに対する操作が、ステップ1070において決定されたエラー噴射燃料量の値が補正されるように変化される。これは、例えば、サイバネティック制御アルゴリズム(kybernetischen Regelalgorithmus)(例えばPI制御器)により行われてもよい。この場合、フローはステップ1080からステップ1060に戻され、且つステップ1060、1070、1080が、ステップ1070において決定された差が0に等しくなるまで反復される。このために、既知のように、ステップ1070において決定された差が設定可能なしきい値より小さいかどうかが検査され、この場合、設定可能なしきい値は、特に、λセンサ130の測定解像度(Messauflosung)および吸気管噴射弁150の最小配量精度により決定されている。
【0040】
しかしながら、エラー噴射燃料量の補正は特性曲線群(Kennfelder)によって行われてもよく、この特性曲線群を用いて、エラー噴射燃料量から、第1の吸気管噴射弁150aの操作信号がいかに変化されなければならないかが計算される。このような補正は、例えば、上記のサイバネティック制御アルゴリズムと組み合わされてもよい。
【0041】
ステップ1090がそれに続く。ステップ1080において場合によりステップ1060および1070の反復によって与えられた第1の吸気管噴射弁150aの操作信号の変化は、第1の吸気管噴射弁150aの操作信号の補正値として、制御装置70内に記憶されてもよい。ステップ1100がそれに続く。
【0042】
ステップ1100において、オプションとして、特に第1の吸気管噴射弁150aの校正の目的がシリンダ10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの少なくとも2つのトルク・シェアの均等化であるとき、ステップ1090において計算された第1の吸気管噴射弁150aの操作信号の補正値が、シリンダ均等化機能の適応値として算入されてもよい。ステップ1110がそれに続く。
【0043】
ステップ1110において、校正されるべき全ての吸気管噴射弁が校正されたかどうかが検査される。これが否定の場合、次に校正されるべき吸気管噴射弁が選択され、且つフローはステップ1060に戻される。校正されるべき全ての吸気管噴射弁が校正された場合、方法はステップ1120において終了する。
【0044】
図示の実施例において、シリンダ10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの各々に、それぞれ1つの直接噴射弁110a、110b、110c、110d、110e、110f、110g、110hが付属されている。しかしながら、同様に、シリンダ10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの1つまたは複数に、1つより多い直接噴射弁が付属されていることもまた可能である。この場合、ステップ1030において、複数の直接噴射弁を有する1つまたは複数のシリンダに対して、直接噴射弁の1つの校正の代わりに、当該シリンダに付属されている全ての直接噴射弁の全噴射量が校正されているかどうかが検査されるべきである。しかしながら、各直接噴射弁が個々に校正されているかどうかが検査されてもよい。
【0045】
同様に、図示の実施例においては、シリンダ10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの各々に、それぞれ1つの吸気管噴射弁150a、150b、150c、150d、150e、150f、150g、150hが付属されている。シリンダの幾つかには吸気管噴射弁が全く付属されていないことが可能である。本発明による校正方法は、存在する吸気管噴射弁に対して、実施例と同様に実行可能である。
【0046】
同様に、1つのシリンダに複数の吸気管噴射弁が付属されていることが可能である。この場合、本発明による方法により、当該シリンダに付属された全ての吸気管噴射弁の全噴射量が校正されてもよい。燃料が複数の吸気管噴射弁のそれぞれ1つのみによって噴射された場合、吸気管噴射弁の各々は個々に校正されてもよい。
【0047】
さらに、ステップ1060において、当該吸気管噴射弁が既に校正されているかぎり、吸気管噴射弁150b、150c、150dの1つまたは複数を介してシリンダ10b、10cおよび10d内に燃料が噴射されることもまた可能である。
【符号の説明】
【0048】
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h シリンダ
20 燃焼室
30 ピストン
40 連接棒
50 クランク軸
70 制御装置
80 吸気管
90 排気管
100 絞り弁
110、110a、110b、110c、110d、110e、110f、110g、110h 直接噴射弁
120 点火プラグ
130、130a、130b λセンサ
140 NOx吸蔵触媒
150、150a、150b、150c、150d、150e、150f、150g、150h 吸気管噴射弁
160 吸気弁
170 排気弁
180、182 カム
190 カム軸
1000 方法の開始ステップ
1010 吸気管噴射弁の校正完了の検査ステップ
1020、1120 方法の終了ステップ
1030 直接噴射弁の校正完了の検査ステップ
1040 直接噴射校正ステップ
1050 直接噴射λ測定ステップ
1060 吸気管λ測定ステップ
1070 λ比較ステップ
1080 噴射補正ステップ
1090 吸気管噴射弁の操作信号の補正値の記憶ステップ
1100 補正値がシリンダ均等化機能の適応値として算入されるステップ
1110 全ての吸気管噴射弁の校正完了の検査ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシリンダ(10a)が少なくとも1つの第1の直接噴射弁(110a)および少なくとも1つの第1の吸気管噴射弁(150a)を有する、内燃機関の第1の排気列(A)の第1のシリンダ(10a)の少なくとも1つの第1の吸気管噴射弁(150a)の噴射量の校正方法において、
燃料が第1のシリンダ(10a)内に直接のみにより噴射され且つ第1のシリンダ(10a)の直接噴射λ信号が決定される直接噴射λ測定ステップ(1050)と、
燃料が第1の吸気管噴射弁(150a)と第1の直接噴射弁(110a)との間の設定可能な分配比で第1のシリンダ(10a)内に噴射され、且つ第1のシリンダ(10a)の吸気管噴射λ信号が決定される吸気管λ測定ステップ(1060)と、
直接噴射λ信号の値が吸気管噴射λ信号の値と比較されるλ比較ステップ(1070)と、
を含む、内燃機関の第1の排気列の第1のシリンダの少なくとも1つの第1の吸気管噴射弁の噴射量の校正方法。
【請求項2】
少なくとも第1のシリンダ(10a)の第1の直接噴射弁(110a)が校正される直接噴射校正ステップ(1040)を含むことを特徴とする請求項1に記載の校正方法。
【請求項3】
直接噴射校正ステップ(1040)において、第1のシリンダ(10a)の直接噴射弁(110a)の校正が、第1のシリンダ(10a)および少なくとも1つの他のシリンダのトルク・シェアの均等化によって行われることを特徴とする請求項2に記載の校正方法。
【請求項4】
直接噴射校正ステップ(1040)において、全てのシリンダ(10)の直接噴射弁(110)のトルク・シェアの均等化が行われることを特徴とする請求項3に記載の校正方法。
【請求項5】
吸気管λ測定ステップ(1060)において、燃料が、第1のシリンダ(10a)を除く第1の排気列(A)の全てのシリンダ内に、既に校正された噴射弁のみを介して噴射されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の校正方法。
【請求項6】
吸気管λ測定ステップ(1060)において、燃料が、第1のシリンダ(10a)を除く第1の排気列(A)の全てのシリンダ内に、直接のみにより噴射されることを特徴とする請求項5に記載の校正方法。
【請求項7】
第1の吸気管噴射弁(150a)の噴射量がλ比較ステップ(1070)の結果の関数として変化される噴射補正ステップ(1080)を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の校正方法。
【請求項8】
噴射補正ステップ(1080)において、吸気管噴射λ信号の値が直接噴射λ信号の値より大きいとき、第1の吸気管噴射弁(150a)の噴射量が上昇されることを特徴とする請求項7に記載の校正方法。
【請求項9】
噴射補正ステップ(1080)において、吸気管噴射λ信号の値が直接噴射λ信号の値より小さいとき、第1の吸気管噴射弁(150a)の噴射量が低下されることを特徴とする請求項7または8に記載の校正方法。
【請求項10】
吸気管噴射λ信号の値が直接噴射λ信号の値から設定可能なしきい値より小さい偏差を有するようになるまで、噴射補正ステップ(1080)が反復されることを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の校正方法。
【請求項11】
設定可能な分配比は、燃料が吸気管噴射弁のみを介して噴射されるように選択されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の校正方法。
【請求項12】
それが、少なくとも2つの吸気管噴射弁に対して、特に全ての吸気管噴射弁に対して実行されることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の校正方法。
【請求項13】
それが請求項1ないし12のいずれかに記載の校正方法において使用するためにプログラミングされていることを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項14】
請求項1ないし12のいずれかの校正方法において使用するためのコンピュータ・プログラムがその上に記憶されていることを特徴とする内燃機関の操作/制御装置用電気記憶媒体。
【請求項15】
それが請求項1ないし12のいずれかに記載の校正方法において使用するためにプログラミングされていることを特徴とする内燃機関の操作/制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−31859(P2012−31859A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165679(P2011−165679)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】