説明

内燃機関の排気装置

【課題】排気通路に配置された共通の燃料添加弁から、触媒コンバータと着火装置とに燃料を供給する構成において、両者に好適に燃料を供給するにあたり、コストの上昇を抑制する。
【解決手段】可動衝突板50を駆動して、可動衝突板50が燃料添加弁7からの燃料軌道に干渉する展開状態と、燃料軌道から退避する退避状態と、を実現する。展開状態ではグロープラグ21への燃料の供給が促進され、退避状態ではグロープラグ21への燃料の供給が抑制される。前処理触媒コンバータ8とグロープラグ21とに燃料を供給するために複数の燃料添加弁を設ける必要がなく、コストの上昇を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に燃料を供給することが可能な排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気を浄化することを目的として、内燃機関の排気通路に燃料を供給するようにした排気装置が提案されている。
【0003】
特許文献1が開示する装置は、排気通路に設けられた燃料添加弁からの燃料が直接接触する位置に、グロープラグなどの着火手段を配置し、これら燃料添加弁及びグロープラグの下流側に触媒コンバータを配置している。燃料は着火手段によって着火され、その火炎によって触媒コンバータが昇温される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006‐112401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、着火手段に供給する燃料の量と、着火手段を経由せずに触媒コンバータに直接供給する燃料の量との比率を変更することができず、これを行うには、着火手段に供給するための燃料添加弁と、触媒コンバータに供給するための燃料添加弁とを設けることが必要になり、コストの上昇を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、排気通路に配置された共通の燃料添加弁から、触媒コンバータと着火装置とに燃料を供給する構成において、両者に好適に燃料を供給するにあたり、コストの上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、
内燃機関の排気通路に配置された触媒コンバータと、
前記触媒コンバータよりも上流側に配置され前記排気通路内に燃料を供給する燃料添加弁と、
前記燃料添加弁から供給された燃料に着火させることが可能な着火装置と、
前記燃料添加弁からの燃料を衝突させて前記着火装置の着火部分に誘導するための可動衝突部材と、
前記可動衝突部材を所定の回動軸を中心に回動させる駆動手段と、を備えたことを特徴とする内燃機関の排気装置である。
【0008】
この態様では、燃料添加弁からの燃料が触媒コンバータに供給され、着火装置は、前記燃料添加弁から供給された燃料に着火させることが可能である。可動衝突部材は、燃料添加弁からの燃料を衝突させて、着火装置の着火部分に誘導する。そして駆動手段が、可動衝突部材を駆動して、可動衝突部材を所定の回動軸を中心に回動させる。可動衝突部材の姿勢が変化することにより、これに衝突する燃料の軌道が変化し、触媒コンバータと着火装置とに供給される燃料の比率が変化する。したがって、触媒コンバータと着火装置とに燃料を供給する構成において、両者に好適に燃料を供給するにあたり、複数の燃料添加弁を設ける必要がなく、コストの上昇を抑制することができる。
【0009】
好適には、前記所定の回動軸は、排気流方向に交差している。また好適には、駆動手段は、可動衝突部材が燃料添加弁からの燃料軌道に干渉する展開状態と、燃料軌道から退避する退避状態と、を実現する。これらの態様では、簡易な構成によって燃料の軌道を大きく変化させることができる。
【0010】
好適には、駆動手段は、前記可動衝突部材の清掃動作状態を更に実現する。この態様では、可動衝突部材の機能を維持ないし回復することが可能になる。
【0011】
好適には、前記駆動手段は、前記可動衝突部材の排気抵抗が最小となる待機状態を更に実現する。この態様では、可動衝突部材による排気抵抗を抑制することができる。
【0012】
好適には、前記可動衝突部材は板状であり、前記待機状態においては、前記可動衝突部材の厚さ方向が排気流方向に直交する。この態様では、前面投影面積の減少によって排気抵抗を好適に抑制することができる。
【0013】
好適には、前記可動衝突部材は、その動作により前記燃料添加弁及び前記着火装置の少なくとも一方を清掃可能に、前記少なくとも一方に近接して配置されている。この態様では、燃料添加弁及び着火装置のうち当該少なくとも一方の機能を維持ないし回復することができる。
【0014】
なお、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、触媒コンバータと着火装置とに燃料を供給する構成において、両者に好適に燃料を供給するにあたり、コストの上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の概念図である。
【図2】可動衝突板を展開した状態のバーナ装置を示す要部拡大図である。
【図3】可動衝突板を展開した状態のバーナ装置を軸方向視した断面図である。
【図4】可動衝突板を退避させた状態のバーナ装置を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好適な実施形態について、以下に詳細に説明する。ただし、本発明の実施態様は下記の各態様のみに限らず、本発明は、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例を含むことに注意しなければならない。実施形態として記載されている各構成要素の寸法、材質、形状、相対配置は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
図1は実施形態におけるエンジン本体1と、その吸排気系の概略構成を示す。エンジン本体1は、車載の4サイクル・ディーゼルエンジンである。エンジン本体1には、吸気管2および排気管3(排気通路)が接続されている。吸気管2の途中には、吸気管2内を流通する吸気の流量に応じた信号を出力するエアフローメータ4が設けられている。このエアフローメータ4により、エンジン本体1への吸入空気量が測定される。なお、エンジン本体1は複数の気筒を有し、各気筒には筒内燃料噴射弁9が設けられているが、図1では単一の筒内燃料噴射弁9のみを示している。
【0019】
排気管3の終端は、図示しない消音器に接続され、消音器の出口で大気に開放されている。排気管3の途中には、酸化触媒コンバータ6及びNOx触媒コンバータ26が、この順に直列に配置されている。酸化触媒コンバータ6は、HC,COなどの未燃成分をO2と反応させてCO,CO2,H2O等とする。触媒物質としては例えばPt/CeO2、Mn/CeO2、Fe/CeO2、Ni/CeO2、Cu/CeO2等を用いることができる。NOx触媒コンバータ26は、好ましくは、吸蔵還元型NOx触媒コンバータ(NSR: NOx Storage Reduction)からなる。NOx触媒コンバータ26は、流入する排気の酸素濃度が高いときは排気中のNOxを吸蔵し、流入する排気の酸素濃度が低下し且つ還元成分(例えば、燃料等)が存在するときは吸蔵していたNOxを還元する機能を有する。NOx触媒コンバータ26は、アルミナAl23等の酸化物からなる基材表面に、触媒成分としての白金Ptのような貴金属と、NOx吸収成分とが担持されて構成されている。NOx吸収成分は、例えばカリウムK、ナトリウムNa,リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つから成る。なお、NOx触媒コンバータ26は選択還元型NOx触媒コンバータ(SCR: Selective Catalytic Reduction)であってもよい。
【0020】
排気管3における酸化触媒コンバータ6の上流には、燃料添加弁7、前処理触媒コンバータ8、およびグロープラグ21が配置されている。これら燃料添加弁7、前処理触媒コンバータ8、およびグロープラグ21は、バーナ装置30を構成する。バーナ装置30は、エンジン本体1に接続された排気マニホールド(不図示)の集合部よりも下流側に配置されている。燃料添加弁7は、排気中に液体の燃料(軽油)を添加することができる。
【0021】
燃料タンク11は、燃料吸引管12、低圧燃料ポンプ13、高圧燃料ポンプ14及び燃料供給管15を介して、燃料添加弁7に接続されている。燃料ポンプ13,14が、燃料吸入管12を介して燃料タンク11に貯留されている燃料を吸入し、燃料供給管15へと吐出することで、燃料添加弁7に燃料が供給される。高圧燃料ポンプ14の下流側に分岐して、エンジン本体1に設置された筒内燃料噴射弁9への配管27が接続されている。詳細は図示しないが、配管27は気筒数に応じた数の筒内燃料噴射弁9に向けて分岐している。燃料ポンプ13,14は例えば機械式であり、エンジン本体1の図示しない出力軸(クランクシャフト)の駆動力を利用して作動する。なお燃料ポンプ13,14の少なくとも一方は電動式であってもよく、また燃料添加弁7と筒内燃料噴射弁9のために個別の高圧燃料ポンプを設けてもよい。
【0022】
図2及び図3に示されるように、燃料添加弁7は、その本体軸7aを下流側に向けて傾斜した姿勢で、排気管3に配置されている。燃料添加弁7は、単一の噴孔7bを有している。噴孔7bの噴孔軸7cは、本体軸7aと一致しており、且つ排気管3を横断する方向の成分を含んでいる。
【0023】
排気管3における燃料添加弁7と酸化触媒コンバータ6との間の部分に、燃料添加弁7から噴射された燃料を改質する前処理触媒コンバータ8が設けられている。この前処理触媒コンバータ8は、例えばゼオライト製の担体にロジウム等を担持させた酸化触媒コンバータとして構成することができる。
【0024】
燃料が前処理触媒コンバータ8に供給されると、そのとき前処理触媒コンバータ8が活性化していれば、前処理触媒コンバータ8内で燃料が酸化させられ、このとき発生する酸化反応熱によって、前処理触媒コンバータ8が昇温させられる。また、前処理触媒コンバータ8の温度が高くなると、燃料中の炭素数の多い炭化水素が分解して、炭素数が少なく反応性の高い炭化水素が生成され、これによって燃料が反応性の高い燃料に改質される。換言すれば、前処理触媒コンバータ8は、一方では急速に発熱する急速発熱器を構成し、他方では、改質された燃料を排出する改質燃料排出器を構成する。
【0025】
図2及び図3に示されるように、排気管3は概ね円筒形に形成されている。前処理触媒コンバータ8の外径は、排気管3の内径よりも小さく、前処理触媒コンバータ8が排気管3に収容されると、前処理触媒コンバータ8の外周面と排気管3の内周面との隙間である触媒迂回路に、排気が通過することが可能になる。前処理触媒コンバータ8は、個々のセルが上流から下流へと連通した所謂ストレートフロー型である。前処理触媒コンバータ8は概ね円筒状の外枠8a内に配置されており、この外枠8aは、概ね放射状に配置された複数のステー8bによって排気管3内に支持されている。前処理触媒コンバータ8は、ステー8bを除く実質的に全周にわたって、触媒迂回路に囲まれている。外枠8aの前端部の下部は、上流側に向けて突出した樋状の突出部8cになっている。
【0026】
グロープラグ21は、燃料添加弁7よりも下流側であって、前処理触媒コンバータ8よりも上流側に設置されている。グロープラグ21は、図1に示されるように、昇圧回路22を経て車載直流電源23に接続されており、通電された際に発生する熱により、燃料添加弁7から供給された燃料に着火させることが可能である。グロープラグ21は、その軸心が水平かつ排気流方向aに直交しているが、他の姿勢で配置することもできる。本実施形態では、グロープラグ21の先端部が発熱部21aとなっているが(図3参照)、着火部分はグロープラグ21のうち排気管3内にある部分の全体であってもよい。なお、着火手段としては、セラミックヒータやスパークプラグなどの他の装置、とくに電熱式または火花着火式の装置を好適に用いることができる。
【0027】
他方、グロープラグ21の先端の発熱部21aの上流側に隣接して、可動衝突板50が配置されている。可動衝突板50は、排気管3内で上側に偏向した位置に配置されている。図3に外周部の軌道50dとして示されるように、可動衝突板50は、概ね平坦な楕円板状の本体50aと、その長軸に沿って固定された軸50bとから構成されており、軸50bによって旋回可能に排気管3に支持されている。
【0028】
図3に示されるように、可動衝突板50の軸50aには、回転アクチュエータ41が固定されている。回転アクチュエータ41の動作により、可動衝突板50は回転方向の任意の姿勢をとることができる。回転アクチュエータ41は、図示しないステーによって排気管3に固定されている。回転アクチュエータ41には、ステッピングモータやロータリーソレノイドなど、各種の機構を採用することができる。
【0029】
可動衝突板50は、SUSなどの耐熱性及び耐衝撃性に優れた材料から形成することができる。燃料添加弁7は可動衝突板50に向けて、斜め下向きに燃料を噴射する。燃料添加弁7から供給される燃料の軌道は、排気管3を横断する方向の成分を含む。可動衝突板50は、燃料が衝突することによって燃料の微粒化、霧化を促進させ、分散性、拡散性を向上させる。
【0030】
図2に示されるように、燃料添加弁7から供給された燃料が衝突する可動衝突板50の衝突点50cと、燃料添加弁7の噴孔7bとの排気管3の横断方向の間隔d2は、燃料添加弁7から供給された燃料が衝突する突出部8cの衝突点8dと燃料添加弁7の噴孔7bとの排気管3の横断方向の間隔d1よりも小さい。換言すれば、可動衝突板50の衝突点50aと、突出部8cの衝突点8dとは、排気管3の幅方向(すなわち横断方向)に関して互いに異なる位置に配置されている。なお、図2及び図4では、衝突点8d,50cをそれぞれ噴孔軸7c上に描いているが、実際の衝突点の位置は排気流によって下流側に偏向される場合がある。また、突出部8cは省略することができ、その場合には排気管3の管壁に燃料を衝突させるのが好適である。
【0031】
図2及び図3に示されるように、可動衝突板50が水平よりもやや上流側に傾斜した姿勢では、可動衝突板50が燃料添加弁7からの燃料軌道に干渉する。この状態を、可動衝突板50の展開状態と称する。展開状態では、噴射された燃料は衝突点50cで可動衝突板50に衝突し微粒化して、主としてグロープラグ21の発熱部21aに供給される。
【0032】
他方、図4に示されるように、可動衝突板50が鉛直よりもやや上流側に傾斜した姿勢では、可動衝突板50が燃料添加弁7からの燃料軌道に干渉せず退避している。この状態を、可動衝突板50の退避状態と称する。退避状態では、噴射された燃料は衝突点8dで突出部8cに衝突し微粒化して、主として前処理触媒コンバータ8に供給される。
【0033】
また、可動衝突板50の外周部の軌道50dは、燃料添加弁7の噴孔7b、及びグロープラグ21の発熱部21aに近接して配置されており、可動衝突板50が回転することによって、燃料添加弁7の噴孔7b近傍、及びグロープラグ21の各表面に付着したPM(粒子状物質)やスラッジなどの堆積物を掻き落とすことができる。
【0034】
エンジン本体1には、エンジン本体1の運転条件や運転者の要求に応じて運転状態を制御するための電子制御ユニットであるECU10が併設されている。このECU10は、エンジン本体1の制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成される。
【0035】
ECU10には、エアフローメータ4の他、エンジン本体1のクランク角を検出するクランクポジションセンサ24、アクセル開度に応じた電気信号を出力するアクセル開度センサ25、NOx触媒コンバータ26の下流側の排気通路に配置されたNOxセンサ32、エンジン冷却水温を検出する水温センサ33、NOx触媒コンバータ26の入口近傍に設けられた固体電解質等からなるSOxセンサ34、不図示の駆動輪の近傍に配置され車速を検出する車速センサ35を含む各種センサ類が、電気配線を介して接続され、これらの出力信号がECU10に入力される。また、ECU10には、燃料添加弁7、筒内燃料噴射弁9等が電気配線を介して接続され、これらの開閉弁がECU10によって制御される。ECU10は、クランクポジションセンサ24の出力値に基づいて機関回転数を検出し、アクセル開度センサ25の出力値に基づいてエンジン本体1の要求負荷を検出することができる。
【0036】
本実施形態では、燃料の着火による昇温処理、前処理触媒コンバータ8及び酸化触媒コンバータ6に対するPM酸化処理、NOx触媒コンバータ26に対するNOx還元処理及びSOx被毒回復処理として、ECU10が燃料添加弁7を制御して燃料を排気中に噴射させ、この燃料を前処理触媒コンバータ8、酸化触媒コンバータ6及びNOx触媒コンバータ26に供給する。これらのうち、燃料の着火による昇温処理は、可動衝突板50を展開した展開状態で行われ、供給された燃料のほぼ全量が、グロープラグ21に供給される。この昇温処理の際には、グロープラグ21がECU10の制御により昇温される。他の処理は、いずれも可動衝突板50を退避した退避状態で行われ、供給された燃料のほぼ全量が、前処理触媒コンバータ8に供給される。ECU10は各処理を実行するタイミングを、上述した各センサ類の検出値に基づいて決定することができ、また燃料添加弁7に噴射される燃料の噴射量を個々の制御毎に設定することができる。
【0037】
またECU10は、燃料添加弁7からの噴射を利用する上記各種の処理を行わない場合には、回転アクチュエータ41により可動衝突板50を駆動して、可動衝突板50の厚さ方向が排気流方向(図2における矢印a)に直交する待機状態を更に実現する。
【0038】
またECU10は、エンジン本体1を停止させるべく運転者により不図示のイグニッションスイッチがオフされたことが検出されると、回転アクチュエータ41によって可動衝突板50を駆動して、可動衝突板50の付着物を除去しうる清掃動作を実行する。この清掃動作は、可動衝突板50を所定回転数にわたり連続的又は断続的に回転させるものである。この清掃動作状態の実現によって、可動衝突板50の表面に付着したPM(粒子状物質)やスラッジなどの堆積物を払い落とすと共に、燃料添加弁7及びグロープラグ21の表面に付着したこれら堆積物をも掻き落とすことができる。
【0039】
以上のとおり、本実施形態では、ECU10の制御により可動アクチュエータ41が可動衝突板50を駆動して、可動衝突板50を、軸50bを中心に回動させる。可動衝突板50の姿勢が変化することにより、これに衝突する燃料の軌道が変化し、前処理触媒コンバータ8とグロープラグ21とに供給される燃料の比率が変化する。したがって、触媒コンバータと着火装置とに燃料を供給する構成において、両者に好適に燃料を供給するにあたり、複数の燃料添加弁を設ける必要がなく、コストの上昇を抑制することができる。
【0040】
また、可動衝突板50の回動軸である軸50bは、排気流方向に直交しており、また可動アクチュエータ41は、可動衝突板50が燃料添加弁からの燃料軌道に干渉する展開状態と、燃料軌道から退避する退避状態と、を実現する。燃料軌道に干渉する展開状態では、燃料添加弁7の噴孔7bからグロープラグ21への燃料の供給が促進されるが、燃料軌道から退避する退避状態では、グロープラグ21への燃料の供給が抑制される。したがって、簡易な構成によって燃料の軌道を大きく変化させることができる。
【0041】
また、可動衝突板50の表面への付着物の堆積は、噴射した燃料が付着物に浸透することによりグロープラグ21の着火性を悪化させる場合があるが、本実施形態では可動アクチュエータ41が可動衝突板50の清掃動作状態を実現するので、可動衝突板50の機能を維持ないし回復することが可能になる。
【0042】
また本実施形態では、回転アクチュエータ41が可動衝突板50の排気抵抗が最小となる待機状態を更に実現するので、可動衝突板50による排気抵抗を抑制することができる。また、可動衝突部材を板状とし、回転アクチュエータ41は、可動衝突板50を駆動して、可動衝突板50の厚さ方向が排気流方向に直交する待機状態を更に実現するので、可動衝突板50の前面投影面積の減少によって、排気抵抗を好適に抑制することができる。
【0043】
また本実施形態では、可動衝突板50が、その動作により燃料添加弁7及びグロープラグ21を清掃可能に、これらに近接して配置されているので、燃料添加弁7及びグロープラグ21の機能を維持ないし回復することができる。
【0044】
本発明をある程度の具体性をもって説明したが、クレームされた発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。本発明の実施態様は上述の各態様のみに限らず、本発明は、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例を含む。したがって本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて使用することができる。
【0045】
例えば、燃料添加弁7から噴射された燃料を微粒化させる機能、および当該燃料を前処理触媒コンバータ8へと誘導する機能を有する範囲で、可動衝突板50の配置方法や形状を適宜変更することができる。可動衝突板の回動軸の方向は、排気流方向に直角以外の角度で交差する方向であってもよく、また交差しない(すなわち排気流に平行な)方向であってもよい。可動衝突板50には任意の個数の通孔、凹部及び/又は凸部を設けてもよい。可動衝突板50の縦断面及び/又は横断面は直状でなく弧状など湾曲状であってもよい。可動衝突板50は軸対称に構成したが、例えば上流側の端部に回動軸を有するものなど、他の任意の構造を採用でき、また板状でなくてもよい。板状でない複雑な形状の可動衝突部材を採用した場合には、その排気抵抗が最小となる姿勢をもって待機状態の姿勢とすることができる。
【0046】
可動衝突板50は燃料添加弁7及びグロープラグ21の両者を清掃しうるように配置したが、これらのうち一方のみを清掃可能であってもよく、その限りにおいて本発明に所期の効果を得ることができる。
【0047】
可動衝突部材を駆動する駆動手段には、ダイヤフラムや油圧アクチュエータを用いるもの等、他の構成を任意に採用することができる。
【0048】
前処理触媒コンバータ及び排気管のうち少なくとも一方は、断面が楕円形や長円形など、非円形であってもよい。排気管3の横断方向の間隔は、前処理触媒コンバータ8がグロープラグ21(着火装置)の発熱部分よりも燃料添加弁7に近くてもよい。排気管3の横断方向における前処理触媒コンバータ8の断面は、排気管3の内部の全体にわたっていてもよい。前処理触媒コンバータ8よりも下流側に存在する他の排気処理装置の種類や順序も任意である。
【符号の説明】
【0049】
1 エンジン本体
3 排気管
6 酸化触媒コンバータ
7 燃料添加弁
8 前処理触媒コンバータ
9 筒内燃料噴射弁
10 ECU
21 グロープラグ
26 NOx触媒コンバータ
30 バーナ装置
41 回転アクチュエータ
50 可動衝突板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置された触媒コンバータと、
前記触媒コンバータよりも上流側に配置され前記排気通路内に燃料を供給する燃料添加弁と、
前記燃料添加弁から供給された燃料に着火させることが可能な着火装置と、
前記燃料添加弁からの燃料を衝突させて前記着火装置の着火部分に誘導するための可動衝突部材と、
前記可動衝突部材を所定の回動軸を中心に回動させる駆動手段と、を備えたことを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の排気装置であって、
前記所定の回動軸は、排気流方向に交差していることを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の内燃機関の排気装置であって、
前記駆動手段は、前記可動衝突部材を駆動して、前記可動衝突部材が前記燃料添加弁からの燃料軌道に干渉する展開状態と、前記燃料軌道から退避する退避状態と、を実現することを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関の排気装置であって、
前記駆動手段は、前記可動衝突部材の付着物を除去しうる清掃動作状態を更に実現することを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の内燃機関の排気装置であって、
前記駆動手段は、前記可動衝突部材の排気抵抗が最小となる待機状態を更に実現することを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の排気装置であって、
前記可動衝突部材は板状であり、
前記待機状態においては、前記可動衝突部材の厚さ方向が排気流方向に直交することを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の内燃機関の排気装置であって、
前記可動衝突部材は、その動作により前記燃料添加弁及び前記着火装置の少なくとも一方を清掃可能に、当該少なくとも一方に近接して配置されていることを特徴とする内燃機関の排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−247188(P2011−247188A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121651(P2010−121651)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】