説明

内燃機関の燃料供給装置

【課題】リリーフ弁の吐出部を液密に保持するとともにリリーフ配管に接続される接続通路を有するホルダを備える燃料供給装置にあって、ホルダ内に凝縮水が滞留することに起因した腐蝕の発生を抑制することができる。
【解決手段】内燃機関の燃料供給装置は、高圧燃料通路内の燃料をリリーフする上流側リリーフ配管及び下流側リリーフ配管63と、これらリリーフ配管の間に設けられる電動式のリリーフ弁31を備えている。また、下流側リリーフ配管63に対してリリーフ弁31を取り付けるべくリリーフ弁31の吐出部32を液密に保持するとともに下流側リリーフ配管63に接続される接続通路52を有する下流側ホルダ50を備えている。また、接続通路52において下流側ホルダ50の内底壁53に開口する開口部52aの中心C2がリリーフ弁31の吐出口32aの中心軸線C1から偏倚している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧燃料通路内の燃料をリリーフするリリーフ配管と、リリーフ配管の途中に設けられる電動式のリリーフ弁とを備える内燃機関の燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直噴式内燃機関の燃料供給装置では、高圧ポンプから高圧燃料通路に吐出された燃料を燃料噴射弁を介して気筒内に直接噴射供給するようにしている(特許文献1参照)。また、こうした燃料供給装置では、高圧燃料通路の途中にリリーフ通路を接続するとともに同リリーフ通路を構成するリリーフ配管の途中に電磁駆動式のリリーフ弁を設けたものがある。具体的には、上流側リリーフ配管の下流側端部にリリーフ弁の上流側端部である導入部が接続され、リリーフ弁の下流側端部である吐出部に下流側リリーフ配管の上流側端部が接続されている。また、下流側リリーフ配管の下流側端部は燃料タンク内に開口している。そして、例えば高圧燃料通路内の燃料の温度が所定温度以上となったときにリリーフ弁を開弁して高圧燃料通路内の燃料を燃料タンクにリリーフする。このことにより、高圧燃料通路内の高温の燃料を低温の燃料と入れ替えることで高圧燃料通路内の燃料の温度が過度に高くなることが抑制されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008―8221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした燃料供給装置では、リリーフ配管に対して既存のリリーフ弁を容易に取り付けるためにこれらリリーフ配管とリリーフ弁との間にホルダをそれぞれ設けることが考えられる。具体的には、上流側リリーフ配管とリリーフ弁との間に設けられるホルダ(以下、上流側ホルダ)は、有底筒状をなすとともにリリーフ弁の導入部全体を覆うものであり、機関本体に固定されて導入部を保持する。また、下流側リリーフ配管とリリーフ弁との間に設けられるホルダ(以下、下流側ホルダ)は、有底筒状をなすとともにリリーフ弁の吐出部全体を覆うものであり、機関本体に固定されて吐出部を保持する。また、これらホルダの内周面と導入部及び吐出部の外周面との間にはOリングが配設されており、導入部及び吐出部と各ホルダとの間が液密とされている。
【0005】
ところで、こうしたホルダを備える燃料供給装置では、以下の問題が生じるおそれがある。すなわち、下流側ホルダの内部には燃料が存在する。また、リリーフ弁は基本的には高圧燃料通路内の燃料の温度が所定温度以上となったときに開弁されるものであり、その開弁される頻度が少ない。これらのことから、下流側ホルダの内部の燃料は揮発するようになるが、同燃料に混入していた水成分は凝縮して凝縮水となり下流側ホルダ内に滞留することとなる。そして、こうした凝縮水が長期にわたり滞留することによってリリーフ弁や下流側ホルダが腐蝕するおそれがある。
【0006】
尚、こうした問題は、ディーゼルエンジンの燃料供給装置に限定されるものではなく、気筒内に燃料を直接噴射供給するガソリンエンジの燃料供給装置においても概ね共通して生じ得る。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、リリーフ弁の吐出部を液密に保持するとともにリリーフ配管に接続される接続通路を有するホルダを備える燃料供給装置にあって、ホルダ内に凝縮水が滞留することに起因した腐蝕の発生を抑制することのできる内燃機関の燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、高圧燃料通路内の燃料をリリーフするリリーフ配管と、前記リリーフ配管の途中に設けられる電動式のリリーフ弁と、前記リリーフ配管に対してリリーフ弁を取り付けるべく同リリーフ弁の吐出部を液密に保持するとともに前記リリーフ配管に接続される接続通路を有するホルダとを備える内燃機関の燃料供給装置において、前記接続通路において前記ホルダの内壁に開口する開口部の中心が前記リリーフ弁の吐出口の中心軸線から偏倚してなることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、ホルダの内壁に形成される開口部の中心がリリーフ弁の吐出口の中心軸線から偏倚しているため、リリーフ弁の吐出口から吐出された燃料が同吐出口に対向するホルダの内壁に衝突することでホルダの内部に拡散されるようになる。このことにより、ホルダ内に滞留している凝縮水が燃料と共にリリーフ配管に好適に排出されるようになる。従って、リリーフ弁の吐出部を液密に保持するとともにリリーフ配管に接続される接続通路を有するホルダを備える燃料供給装置にあって、ホルダ内に凝縮水が滞留することに起因した腐蝕の発生を抑制することができる。
【0010】
請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置は、請求項2に記載の発明によるように、前記開口部は前記リリーフ弁の吐出口に対向する前記ホルダの内底壁に形成されてなるといった態様をもって具体化することができる。この場合、ホルダの開口部の形成位置を従来の位置、すなわちリリーフ弁の吐出口に対向するホルダの内底壁の中心から僅かに変更するだけで、請求項1に係る発明の効果を奏することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の内燃機関の燃料供給装置において、前記リリーフ弁の吐出口をその中心軸線に沿って前記ホルダの内底壁に投影した投影部が前記開口部と重なり合わないように構成されてなることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、リリーフ弁の吐出口から吐出された燃料の多くが同吐出口に対向するホルダの内底壁に衝突することとなり、ホルダの内部への拡散が一層促進されるようになる。このため、ホルダ内に滞留している凝縮水がリリーフ配管に一層好適に排出されるようになる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料供給装置において、前記ホルダの接続通路に接続されるリリーフ配管は同ホルダとの接続部から鉛直方向上方に延びてなることをその要旨としている。
【0014】
ホルダの接続通路に接続されるリリーフ配管が同ホルダとの接続部から鉛直方向上方に延びる構成にあっては、これらリリーフ配管及び接続通路内に燃料が常に存在することとなる。このため、こうした燃料に含まれる水成分が凝縮することでホルダ内に水成分が滞留しやすい。この点、こうした構成を備える内燃機関の燃料供給装置に対して、請求項1又は請求項2に記載の発明を適用すれば、ホルダ内に滞留している凝縮水が燃料と共にリリーフ配管に好適に排出されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る内燃機関の燃料供給装置の概略構成を示す概略構成図。
【図2】同実施形態におけるリリーフ弁及びホルダの断面構造を示す断面図。
【図3】図2のA方向から視た端面構造を示す端面図。
【図4】同実施形態のリリーフ弁の吐出部を中心とした断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図4を参照して、本発明に係る内燃機関の燃料供給装置を具体化した一実施形態について詳細に説明する。尚、本実施形態では、直噴式ガソリンエンジン(以下、内燃機関)の燃料供給装置について例示する。
【0017】
図1に本実施形態に係る内燃機関の燃料供給装置1の概略構成を示す。
図1に示すように、燃料供給装置1では、燃料タンク2内に電動式のフィードポンプ3が配置されており、このフィードポンプ3には低圧燃料供給管4が接続されている。フィードポンプ3により燃料タンク2内に貯留されている燃料が吸引されるとともに所定のフィード圧PF(例えば、数百kPa)まで加圧されて低圧燃料として低圧燃料供給管4へ圧送される。
【0018】
低圧燃料供給管4の下流側には高圧ポンプ10が接続されている。また、低圧燃料供給管4の途中にはリターン管5が分岐接続されている。このリターン管5の途中には調圧弁6が設けられており、低圧燃料供給管4内の燃料の圧力が上記フィード圧PF以上になると調圧弁6が開弁する。これにより、フィードポンプ3から吐出された燃料の一部がリターン管5を介して燃料タンク2に燃料が戻され、低圧燃料供給管4内の燃料の圧力が所定の大きさに維持されるようになっている。
【0019】
高圧ポンプ10のケーシング11の内部には、上記低圧燃料供給管4の下流側に接続される吸入通路12、この吸入通路12の下流側に接続されるシリンダ13、及びシリンダ13の下流側に接続される吐出通路14が形成されている。
【0020】
シリンダ13は略円筒状をなしており、その上流側の端部(図1において上側端部)には低圧燃料を吸入する吸入口21が形成されている。また、シリンダ13の側面には(図1において右側面)には高圧燃料を吐出する吐出口22が形成されている。このシリンダ13内にはプランジャ15が往復動可能に設けられている。また、シリンダ13の内壁とプランジャ15の頂面とにより加圧室16が区画されている。尚、上記吐出口22は加圧室16に連通するように形成されている。
【0021】
シリンダ13内には、吸入口21を開閉するスピル弁20の弁体23が設けられている。この弁体23はニードル23aを介してシリンダ13の軸線方向に沿って移動可能に設けられている。スピル弁20は、所謂、ノーマルオープン型の弁であり、ばね25の付勢力により吸入口21を開放する方向に付勢されている。また、スピル弁20はソレノイド24への通電により吸入口21を閉塞する方向に吸引される。ソレノイド24に通電されていないときには、弁体23はばね25の付勢力により吸入口21から離間する方向(図1において下方向)に付勢され、吸入口21が開放状態とされる。一方、ソレノイド24に通電されているときには、弁体23はソレノイド24により吸入口21に近接する方向(図1において上方向)に吸引され、吸入口21が閉塞状態とされる。こうしたソレノイド24の通電制御は電子制御装置90により行なわれる。
【0022】
プランジャ15は内燃機関のクランクシャフトの回転により駆動される。具体的には、クランクシャフトの回転により吸気カムシャフト71が回転駆動され、この吸気カムシャフト71に固設されたカム72の回転に伴ってプランジャ15が往復動する。尚、プランジャ15の下方にはリフタ17が設けられており、このリフタ17はばね18の付勢力によってカム72のカム面に当接した状態に維持されている。
【0023】
高圧ポンプ10では、プランジャ15が下降して加圧室16の容積が増大するときに、電子制御装置90によりソレノイド24を非通電状態として吸入口21を開放することで、低圧燃料供給管4及び吸入通路12からの低圧燃料が加圧室16内に吸入される(吸入行程)。
【0024】
また、プランジャ15が上昇して加圧室16の容積が減少するときに、電子制御装置90によりソレノイド24を通電状態として吸入口21を閉塞することで、加圧室16内の燃料が加圧されて所定の圧力(例えば35MPa)とされた高圧燃料が吐出口22から吐出通路14に吐出される。また、ソレノイド24への通電時期、すなわち吸入口21の閉塞時期を調節することにより、燃料の吸入量が調節される。
【0025】
高圧ポンプ10の外部であって吐出通路14の下流側には高圧燃料供給管7が接続されており、この高圧燃料供給管7の下流側にはデリバリパイプ8が接続されている。デリバリパイプ8には、各気筒内に燃料を噴射供給するための燃料噴射弁9が接続されている。燃料噴射弁9の駆動制御は電子制御装置90により行なわれる。尚、吐出通路14、高圧燃料供給管7、及びデリバリパイプ8が高圧燃料通路に相当する。
【0026】
吐出通路14の途中には高圧燃料供給管7に供給される燃料の圧力を一定にするための吐出弁19が設けられている。加圧室16側から吐出弁19の弁体19aに対して作用する燃料の圧力が所定の吐出圧PD(例えば20MPa)以上となると、弁体19aを閉弁方向に付勢するばね19bの付勢力に抗して弁体19aが変位することで吐出弁19が開弁する。これにより、燃料噴射弁9側への燃料の圧送が許容される。
【0027】
また、高圧ポンプ10の内部には、吐出通路14に分岐接続されるとともに吐出弁19を迂回する第1リリーフ通路26が形成されており、この第1リリーフ通路26の途中には機械式リリーフ弁27が設けられている。吐出通路14において吐出弁19の下流側から機械式リリーフ弁27の弁体27aに対して作用する燃料の圧力が所定のリリーフ圧PR(例えば25MPa)以上になると、弁体27aを開弁方向に付勢するばね27bの付勢力に抗して弁体27aが変位することで機械式リリーフ弁27が開弁する。これにより、燃料がリリーフされて高圧燃料通路内の燃料の圧力が低下して適正な大きさに維持される。尚、リリーフ圧PRは、高圧燃料通路内の燃料の圧力が燃料噴射弁9が開弁し得る範囲の上限値Pth1(例えば22MPa)よりも高い値に設定されている。
【0028】
本実施形態の燃料供給装置1では、高圧燃料通路内の燃料の圧力にかかわらず同通路内の燃料を燃料タンク2にリリーフ可能な電動式のリリーフ機構が設けられている。以下、リリーフ機構の構造について説明する。
【0029】
高圧ポンプ10の内部には吐出通路14に分岐接続される第2リリーフ通路61が形成され、第2リリーフ通路61の下流側には上流側リリーフ配管62が接続されている。また、上流側リリーフ配管62の下流側には電動式のリリーフ弁ユニット30の導入側が接続され、リリーフ弁ユニット30の吐出側には下流側リリーフ配管63が接続されている。
【0030】
ここで、図2を参照してリリーフ弁ユニット30の構造について説明する。
図2に示すように、リリーフ弁ユニット30は、略円柱状をなすリリーフ弁31と、リリーフ弁31の各端部をそれぞれ保持する上流側ホルダ40及び下流側ホルダ50とにより構成されている。
【0031】
リリーフ弁31は電磁駆動式の弁であり、その内部には、中心軸線C1に沿って変位可能な弁体33が設けられている。リリーフ弁31の吐出部32の先端面に形成された吐出口32aとリリーフ弁31の内部空間とが弁体33により連通・遮断されることでリリーフ弁31が開閉される。吐出口32aは円柱状をなしており、その中心は中心軸線C1と一致している。リリーフ弁31の開閉制御は電子制御装置90により行なわれる。
【0032】
上流側ホルダ40は略有底筒状をなして導入部34全体を覆うものであり、ボルト41により機関本体に対して固定されている。上流側ホルダ40には内底壁43に開口する接続通路42が形成されており、この接続通路42には上流側リリーフ配管62が接続されている。また、上流側ホルダ40の内周面とリリーフ弁31の導入部34の外周面との間にはOリング45が設けられており、上流側ホルダ40と導入部34との間が液密とされている。
【0033】
下流側ホルダ50は略有底筒状をなして吐出部32全体を覆うものであり、ボルト51により機関本体に対して固定されている。下流側ホルダ50には内底壁53に開口する接続通路52が形成されており、この接続通路52には下流側リリーフ配管63が接続されている。また、下流側ホルダ50の内周面とリリーフ弁31の吐出部32の外周面との間にはOリング55が設けられており、下流側ホルダ50と吐出部32との間が液密とされている。
【0034】
ちなみに、本実施形態のリリーフ弁ユニット30は燃料供給装置1における鉛直方向下側に位置している。また、下流側リリーフ配管63は下流側ホルダ50との接続部63aから鉛直方向上方に延びている。
【0035】
本実施形態では、電子制御装置90により、温度センサ(図示略)により高圧燃料通路内の燃料の温度を検出するとともに、同燃料の温度が所定温度以上となったときにリリーフ弁31を開弁して高圧燃料通路内の燃料の一部を燃料タンク2にリリーフする。これにより、高圧燃料通路内の高温の燃料の一部が低温の燃料と入れ替えられることで高圧燃料通路内の燃料の温度が過度の上昇が抑制される。
【0036】
ところで、リリーフ弁ユニット30は燃料供給装置1における鉛直方向下側に位置していることから、下流側リリーフ配管63の接続部63a、接続通路52、及び下流側ホルダ50内には燃料が常に存在することとなる。また、リリーフ弁31は基本的には高圧燃料通路内の燃料の温度が所定温度以上となったときに開弁されるものであり、その開弁される頻度が少ない。これらのことから、下流側ホルダ50の内部の燃料は揮発して接続通路52及び下流側リリーフ配管63を通じて燃料タンク2に戻されるようになるが、同燃料に混入していた水成分は凝縮して凝縮水となり下流側ホルダ50内に滞留することとなる。そして、こうした凝縮水が長期にわたり滞留することによってリリーフ弁31や下流側ホルダ50が腐蝕するおそれがある。
【0037】
そこで、本実施形態では、下流側ホルダ50の接続通路52において内底壁53に開口する開口部52aの形成位置を以下のように設定することで、上述した不都合の発生を抑制するようにしている。
【0038】
ここで、図3を参照して、開口部52aの形成位置について詳細に説明する。尚、図3は、図2のA方向から視た端面構造を示している。また、同図中においてリリーフ弁31の吐出口32aをその中心軸線C1に沿って下流側ホルダ50の内底壁53に投影した投影部32bを二点鎖線で示している。
【0039】
図3に示すように、開口部52aは略円状をなしておりその中心C2は吐出口32aの中心軸線C1から鉛直方向上方に偏倚している。具体的には、開口部52aは吐出口32aの投影部32bと重なり合わないように形成されている。
【0040】
次に、図4を参照して、本実施形態の作用について説明する。
図4に示すように、接続通路52の開口部52aの中心C2がリリーフ弁31の吐出口32aの中心軸線C1から偏倚しているため、吐出口32aから吐出された燃料は吐出口32aに対向する下流側ホルダ50の内底壁53に衝突し、下流側ホルダ50の内部に拡散されるようになる。このことにより、下流側ホルダ50の内周面近傍に滞留している凝縮水が燃料と共に下流側リリーフ配管63に好適に排出されるようになる。
【0041】
以上説明した本実施形態に係る内燃機関の燃料供給装置によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)内燃機関の燃料供給装置1は、高圧燃料通路内の燃料をリリーフする上流側リリーフ配管62及び下流側リリーフ配管63と、これらリリーフ配管62,63の間に設けられる電動式のリリーフ弁31を備えている。また、下流側リリーフ配管63に対してリリーフ弁31を取り付けるべくリリーフ弁31の吐出部32を液密に保持するとともに下流側リリーフ配管63に接続される接続通路52を有する下流側ホルダ50を備えている。また、接続通路52において下流側ホルダ50の内壁に開口する開口部52aの中心C2がリリーフ弁31の吐出口32aの中心軸線C1から偏倚している。具体的には、開口部52aはリリーフ弁31の吐出口32aに対向する下流側ホルダ50の内底壁53に形成されている。
【0042】
こうした構成によれば、リリーフ弁31の吐出部32を液密に保持するとともに下流側リリーフ配管63に接続される接続通路52を有する下流側ホルダ50を備える燃料供給装置1にあって、下流側ホルダ50内に凝縮水が滞留することに起因して下流側ホルダ50やリリーフ弁31が腐蝕することを抑制することができる。また、下流側ホルダ50の開口部52aの形成位置を従来の位置、すなわち内底壁53の中心から僅かに変更するだけで、上記効果を奏することができる。
【0043】
(2)リリーフ弁31の吐出口32aをその中心軸線C1に沿って下流側ホルダ50の内底壁53に投影した投影部32bが接続通路52の開口部52aと重なり合わないように構成されている。こうした構成によれば、リリーフ弁31の吐出口32aから吐出された燃料の多くが下流側ホルダ50の内底壁53に衝突することとなり、下流側ホルダ50の内部への拡散が一層促進されるようになる。このため、下流側ホルダ50内に滞留している凝縮水が下流側リリーフ配管63に好適に排出されるようになる。
【0044】
尚、本発明に係る内燃機関の燃料供給装置は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0045】
・上記実施形態では、直噴式ガソリンエンジンに対して本発明を適用したが、これに代えてディーゼルエンジンに対して本発明を適用することもできる。
・上記実施形態では、電磁駆動式のリリーフ弁31について例示したが、本発明に係るリリーフ弁はこれに限られるものではなく、電動式のリリーフ弁であればよい。
【0046】
・上記実施形態では、接続通路52の開口部52aの中心C2がリリーフ弁31の吐出口32aの中心軸線C1から鉛直方向上方に偏倚したものについて例示した。しかしながら、リリーフ弁31の吐出口32aの中心軸線C1に対する接続通路の開口部の中心の偏倚方向はこれに限定されるものではなく、鉛直方向下方に偏倚したものであってもよいし、水平方向に偏倚したものであってもよい。
【0047】
・上記実施形態によるように、リリーフ弁ユニット30が燃料供給装置1における鉛直方向下側に位置し、下流側リリーフ配管63が下流側ホルダ50との接続部63aから鉛直方向上方に延びる構造を有する場合には、下流側リリーフ配管63の接続部63a、接続通路52、及び下流側ホルダ50内に燃料が常に存在することとなる。このため、下流側ホルダ50の内部に凝縮水が生じやすく、凝縮水が滞留することに起因した腐蝕の発生が生じやすい。しかしながら、本発明はこうした構造を有する燃料供給装置に限定されるものではなく、他に例えば、下流側リリーフ配管が下流側ホルダとの接続部から鉛直方向下方に延びる構造を有するものとしてもよい。この場合であっても程度の差こそあれ、下流側ホルダの内部に凝縮水が生じることとなり、上記実施形態と同様な問題が生じ得る。このため、こうした構造を有する燃料供給装置に対して本発明を適用すれば、上記実施形態の効果に準じた効果を奏することができるようになる。
【0048】
・上記実施形態では、リリーフ弁31の吐出口32aの投影部32bが接続通路52の開口部52aと重なり合わないものについて例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、リリーフ弁の吐出口の投影部が接続通路の開口部と部分的に重なり合うものであってもよい。
【0049】
・上記実施形態では、接続通路52の開口部52aがリリーフ弁31の吐出口32aに対向する下流側ホルダ50の内底壁53に形成されるものについて例示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他に例えば、接続通路の開口部が下流側ホルダの内周面に形成されるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…燃料供給装置、2…燃料タンク、3…フィードポンプ、4…低圧燃料供給管、5…リターン管、6…調圧弁、7…高圧燃料供給管(高圧燃料通路)、8…デリバリパイプ(高圧燃料通路)、9…燃料噴射弁、10…高圧ポンプ、11…ケーシング、12…吸入通路、13…シリンダ、14…吐出通路(高圧燃料通路)、15…プランジャ、16…加圧室、17…リフタ、18…ばね、19…吐出弁、19a…弁体、19b…ばね、20…スピル弁、21…吸入口、22…吐出口、23…弁体、23a…ニードル、24…ソレノイド、25…ばね、26…第1リリーフ通路、27…機械式リリーフ弁、27a…弁体、27b…ばね、30…リリーフ弁ユニット、31…リリーフ弁、32…吐出部、32a…吐出口、32b…投影部、33…弁体、34…導入部、34a…導入口、40…上流側ホルダ、41…ボルト、42…接続通路、42a…開口部、43…内底壁、45…Oリング、50…下流側ホルダ、51…ボルト、52…接続通路、52a…開口部、53…内底壁、55…Oリング、61…第2リリーフ通路、62…上流側リリーフ配管(リリーフ配管)、63…下流側リリーフ配管(リリーフ配管)、63a…接続部、71…吸気カムシャフト、72…カム、90…電子制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧燃料通路内の燃料をリリーフするリリーフ配管と、前記リリーフ配管の途中に設けられる電動式のリリーフ弁と、前記リリーフ配管に対してリリーフ弁を取り付けるべく同リリーフ弁の吐出部を液密に保持するとともに前記リリーフ配管に接続される接続通路を有するホルダとを備える内燃機関の燃料供給装置において、
前記接続通路において前記ホルダの内壁に開口する開口部の中心が前記リリーフ弁の吐出口の中心軸線から偏倚してなる
ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置において、
前記開口部は前記リリーフ弁の吐出口に対向する前記ホルダの内底壁に形成されてなる
ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の燃料供給装置において、
前記リリーフ弁の吐出口をその中心軸線に沿って前記ホルダの内底壁に投影した投影部が前記開口部と重なり合わないように構成されてなる
ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料供給装置において、
前記ホルダの接続通路に接続されるリリーフ配管は同ホルダとの接続部から鉛直方向上方に延びてなる
ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−219774(P2012−219774A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89170(P2011−89170)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】