説明

内燃機関の過給システム

【課題】アクチュエータの制御室に導入される過給圧が設定圧を上回った場合に、ウェイストゲートバルブを開いて過給圧を低減させる方向に制御し得るようにした排気ターボ過給機付きの内燃機関において、減速後に再加速を行うような状況における過給の応答遅れを緩和ないし解消する。
【解決手段】アクチュエータ8の制御室82に過給圧を導くための過給圧導入経路9と、前記過給圧導入経路9に設けた第1の開閉バルブ10と、前記制御室82にスロットルバルブ14下流の吸気負圧を導くための吸気負圧導入経路11と、前記吸気負圧導入経路11に設けた第2の開閉バルブ12と、スロットルバルブ14が閉じられる状況下で前記第1の開閉バルブ10を閉じるとともに、前記第2の開閉バルブ12を開くようにするためのコントローラ13(ECU)とを具備する過給システムを付設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ターボ過給機を具備する内燃機関の過給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気でタービンを回転させてコンプレッサを駆動し吸気を過給するターボ過給機にあっては、排気ガスの一部をタービンに導入せずに迂回させるバイパス及びウェイストゲートバルブを設け、このウェイストゲートバルブの開閉を通じて過給圧を調整することが通例である。ウェイストゲートバルブは、制御室(ダイヤフラム室)に過給気が導入されるダイヤフラム式アクチュエータによって駆動する(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、従来周知のウェイストゲートバルブを備えたシステムでは、エンジンブレーキを利用すべくアクセルペダルから足が離され、スロットルバルブが閉じられるとき、制御室に一時的に高い過給圧が流入し、ウェイストゲートバルブが開かれる。その直後に再度加速を行うべくアクセルペダルが踏み込まれると、開いていたウェイストゲートバルブが閉じるまでの遅れが発生し、これがターボラグと相俟って良好な再加速性を得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−180112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に着目してなされたものであり、減速後に再加速を行うような状況における過給の応答遅れを緩和ないし解消することを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る内燃機関の過給システムは、アクチュエータの制御室に導入される過給圧が設定圧を上回った場合に、ウェイストゲートバルブを開いて過給圧を低減させる方向に制御し得るようにした排気ターボ過給機付きの内燃機関において、前記制御室に過給圧を導くための過給圧導入経路と、前記過給圧導入経路に設けた第1の開閉バルブと、前記制御室にスロットルバルブ下流の吸気負圧を導くための吸気負圧導入経路と、前記吸気負圧導入経路に設けた第2の開閉バルブと、スロットルバルブが閉じられる状況下で前記第1の開閉バルブを閉じるとともに、前記第2の開閉バルブを開くようにするためのコントローラとを具備することを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、スロットルバルブを閉じてエンジンブレーキを利用するとき等において、スロットルバルブ下流の吸気負圧をアクチュエータの制御室に導き、確実にウェイストゲートバルブを閉じることができる。従って、再加速に際して、開いていたウェイストゲートバルブが閉じるまでの遅れが生じない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、減速後に再加速を行う際の過給の応答遅れを緩和ないし解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の過給システムの概要を示す図。
【図2】同実施形態に係る作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態の排気ターボ過給機1は、例えば自動車用の内燃機関に装着されるもので、内燃機関から排出される排気ガスのエネルギー即ち排気圧を受けて回転する排気タービン2と、排気タービン2によって駆動されるコンプレッサ3とを要素とする。エアクリーナ4を通して吸入した空気は、コンプレッサ3で圧縮されて内燃機関に供給される。並びに、排気タービン2を迂回するバイパス通路6を形成し、そのバイパス通路6にウェイストゲートバルブ7を介設している。バイパス通路6の内径は、排気タービン2のホイール径の約0.6〜1.0倍である。ウェイストゲートバルブ7は、ダイヤフラム式のアクチュエータ8で開閉駆動する。
【0012】
アクチュエータ8は、調圧スプリング83により弾性付勢されたダイヤフラム81及びその制御室82(ダイヤフラム室)を設けてなり、制御室82内の圧力が所定のセット圧P0を上回る場合に、調圧スプリング83の付勢力に抗してダイヤフラム81が変位し作動ロッド84を前方へ進出させる仕組みとなっている。ウェイストゲートバルブ7は、この作動ロッド84により駆動される。すなわち、ウェイストゲートバルブ7は、制御室82内の圧力がセット圧P0以上である場合に開く。
【0013】
しかして本実施形態では、前記制御室82にコンプレッサ3下流の過給圧を導くための過給圧導入経路9と、前記過給圧導入経路9に設けた第1の開閉バルブ10と、前記制御室82にスロットルバルブ14下流の吸気負圧を導くための吸気負圧導入経路11と、前記吸気負圧導入経路11に設けた第2の開閉バルブ12と、前記第1の開閉バルブ10及び第2の開閉バルブ12を個別に開閉操作することのできるコントローラ13とを付設している。
【0014】
過給圧導入経路9は、コンプレッサ3下流の吸気通路5と、制御室82とを連通する。
【0015】
第1の開閉バルブ10は、過給圧導入経路9を遮断する閉止状態と、過給圧導入経路9を開通する開放状態との間で遷移可能である。第1の開閉バルブ10は、例えば、弁体を電磁アクチュエータで作動させるもので、開放時間の長さを規定するデューティ比を有した制御電圧信号(パルス電圧)を電磁アクチュエータに印加することで、そのデューティ比に応じた開度に制御可能である。
【0016】
吸気負圧導入経路11は、スロットルバルブ14下流の吸気通路5(図示例ではサージタンク15)と、制御室82とを連通する。
【0017】
第2の開閉バルブ12は、吸気負圧導入経路11を遮断する閉止状態と、吸気負圧導入経路11を開通する開放状態との間で遷移可能である。第2の開閉バルブ12も、例えば、第1の開閉バルブ10と同様の電磁弁とすることができる。
【0018】
なお、吸気負圧導入経路11は、制御室82の手前で過給圧導入経路9に合流している。その合流箇所は、第1の開閉バルブ10と第2の開閉バルブ12との間に位置する。本実施形態では、アクチュエータ8の制御室82が直接大気圧に連通することはない。
【0019】
内燃機関の各所には、この内燃機関の種々の状況を検出するために、サージタンク15内の吸気圧(過給圧)を検出する吸気圧センサ16、スロットルバルブ14の開度を検出するスロットル開度センサ17、内燃機関の冷却水温度を検出する水温センサ18、エンジン回転数を検出する回転数センサ19、排気ガスの空燃比を検出するO2センサ20等を取り付けている。
【0020】
これら各センサからの信号を受信して処理し、内燃機関の運転状態を制御するコントローラ13(ECU)は、CPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ、I/Oインタフェース等を包有するマイクロコンピュータシステムである。各種制御用のプログラムはROM又はフラッシュメモリに格納されており、そのプログラムがRAMに読み込まれCPUによって解読される。コントローラ13は、当該プログラムに従い、燃料噴射量の制御、点火時期の制御、その他各種の制御を実施する。
【0021】
以下、本実施形態の過給システムにおけるウェイストゲートバルブ7の開閉制御について図2を参照しつつ詳述する。
【0022】
まず、排気ターボ過給機1による吸気の過給を行いたい状況では、図2の(b)に示すように、コントローラ13が、スロットルバルブ14を所要の開度に開くとともに、第1の開閉バルブ10及び第2の開閉バルブ12をともに閉止状態とする。このとき、サージタンク15内の吸気圧P1は予め定められた最大ブースト圧(設定圧Ps)よりも低い。コンプレッサ3下流の過給気はアクチュエータ8の制御室82に流入せず、ウェイストゲートバルブ7は閉じられる。従って、排気タービン2に全排気が供給されてコンプレッサ3の駆動がなされる。
【0023】
次に、サージタンク15内の吸気圧P1が設定圧Psを超えてしまう状況では、図2の(c)に示すように、コントローラ13が、第1の開閉バルブ10を開放状態とし、第2の開閉バルブ12を閉止状態とする。結果、コンプレッサ3下流の過給気の一部がアクチュエータ8の制御室82に流入する。このとき、スロットルバルブ14より上流の部分の過給圧P2がセット圧P0を超えると、調圧スプリング83の付勢力に抗してダイヤフラム81が変位してウェイストゲートバルブ7が開かれる。これにより、排気の一部がバイパスされて排気タービン2に供給されず、コンプレッサ3による過給が適宜抑制される。
【0024】
また、エンジン負荷が所定負荷よりも低いような状況で、過給を必要としない場合には、図2の(a)に示すように、コントローラ13が、第1の開閉バルブ10を開放状態とし、第2の開閉バルブ12を閉止状態とする。結果、コンプレッサ3下流の過給気の一部がアクチュエータ8の制御室82に流入する。このとき、スロットルバルブ14より上流の部分の過給圧P2がセット圧P0を超えると、調圧スプリング83の付勢力に抗してダイヤフラム81が変位してウェイストゲートバルブ7が開かれる。これにより、コンプレッサ3による過給が抑制され、低回転域で過給することによるポンプロスが削減され、また、過給圧が不必要な場面において、過給圧をかけず余分な燃料を噴射させないことで燃費の向上が図られる。
【0025】
その上で、スロットルバルブ14が閉じられる状況においては、図2の(d)に示すように、コントローラ13が、第1の開閉バルブ10を閉止状態とし、第2の開閉バルブ12を開放状態とする。さすれば、スロットルバルブ14の下流で発生した吸気負圧、換言すればサージタンク15内の吸気負圧P1が吸気負圧導入経路11を経てアクチュエータ8の制御室82に導入される。そして、ウェイストゲートバルブ7が強く閉じられる。
【0026】
スロットルバルブ14が閉じられた後、再加速すべく再度スロットルバルブ14が開かれたあかつきには、図2の(d)の状態から速やかに同図の(b)の状態に移行することができる。あるいは、スロットルバルブ14が閉じられた後、エンジン負荷が所定負荷以下となった場合には、図2の(d)の状態から同図の(a)の状態へと移行する。
【0027】
以上に述べたように、本実施形態の過給システムによれば、スロットルバルブ14が閉じられる状況において、第1の開閉バルブ10を閉止状態とし、第2の開閉バルブ12を開放状態とする制御を行うことにより、制御室82に吸気負圧を導入してダイヤフラム81及び作動ロッド84を制御室82側に引き込み、ウェイストゲートバルブ7を強く閉じることが可能である。従って、スロットルバルブ14を閉じた直後に再びスロットルバルブ14が開かれるような場合に、ウェイストゲートバルブ7が閉じるまでの遅れが生じず、減速後に再加速を行う際の過給の応答遅れを緩和ないし解消することができる。
【0028】
加えて、吸気負圧をアクチュエータ8の制御室82に導入してウェイストゲートバルブ7を閉じることにより、過給圧の変動に伴いウェイストゲートバルブ7が高頻度で開閉するチャタリングの発生も防ぐことができる。
【0029】
なお、本発明は以上に述べた実施の形態に限らない。
【0030】
例えば、第1の開閉バルブ及び第2の開閉バルブは、開度をDUTY制御可能な電磁弁には限られない。
【0031】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0032】
1…排気ターボ過給機
7…ウェイストゲートバルブ
8…アクチュエータ
82…制御室
9…過給圧導入経路
10…第1の開閉バルブ
11…吸気負圧導入経路
12…第2の開閉バルブ
13…コントローラ
14…スロットルバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの制御室に導入される過給圧が設定圧を上回った場合に、ウェイストゲートバルブを開いて過給圧を低減させる方向に制御し得るようにした排気ターボ過給機付きの内燃機関において、
前記制御室に過給圧を導くための過給圧導入経路と、
前記過給圧導入経路に設けた第1の開閉バルブと、
前記制御室にスロットルバルブ下流の吸気負圧を導くための吸気負圧導入経路と、
前記吸気負圧導入経路に設けた第2の開閉バルブと、
スロットルバルブが閉じられる状況下で前記第1の開閉バルブを閉じるとともに、前記第2の開閉バルブを開くようにするためのコントローラと
を具備することを特徴とする内燃機関の過給システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−179336(P2011−179336A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41708(P2010−41708)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】