説明

内燃機関用ツインステージ型排気タービン駆動式ターボチャージャ機構

排気マニホールド(2a)を有する内燃機関(2)用のツインステージ型排気タービン駆動式過給機構(1)であって、前記排気タービン駆動式過給機構(1)が、前記内燃機関(2)の排出ガスが流れる向きに沿って互いに並列に配置される第1(4)および第2(5)の小型高圧ターボチャージャと、その下流側に直列に配置される低圧ターボチャージャ(3)とを有しており、前記第2高圧タービンハウジング(5a)と前記低圧タービンハウジング(3a)とが、排出ガスを導くように互いに接続されており、一方では前記第2高圧タービンハウジング(4a,5a)を前記排気マニホールド(2a)に、他方では前記低圧タービンハウジング(3a)を前記排気マニホールド(2a)に配置可能であり、さらに前記各高圧タービンハウジング(4a,5a)から来る排出ガスが、前記排気マニホールド(2a)の内部またはこれに隣接して設けた流路(13)を通り前記低圧タービンハウジング(3a)に導かれる、ツインステージ型排気タービン駆動式過給機構。ツインステージ型排気タービン駆動式過給機構の本発明にしたがった構成形態により、コンパクトな構造、ひいてはコストメリットが達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念(所謂おいて部分、プリアンブル部分)に記載の各特徴を具備した、内燃機関用ツインステージ型排気タービン駆動式ターボチャージャ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
これは、特許文献1に由来するものである。この文献から、排気マニホールドを有する内燃機関用ツインステージ型排気タービン駆動式ターボチャージャ機構が知られている。このターボチャージャは、内燃機関の排出ガスが流れる向きに沿って互いに並列に配置される第1および第2の小型高圧ターボチャージャと、その下流側に直列に配置されるさらにもう一つの大型低圧ターボチャージャとを有している。排気マニホールド、第1高圧ターボチャージャの第1高圧タービンハウジング、および低圧ターボチャージャの低圧タービンハウジングは、排出ガスを導くように互いに接続されている。排気マニホールドはさらに、絞り要素を介在して、第2高圧ターボチャージャの第2高圧タービンハウジングに、排出ガスを導くように接続可能である一方で、第1高圧タービンハウジングと低圧タービンハウジングは、常時排出ガスを導くように互いに接続されている。
【0003】
この冒頭に記した種類のツインステージ型排気タービン駆動式ターボチャージャ機構により、内燃機関のために非常に高い出力密度を達成可能であるが、これには、構成部品がかなり複雑でコスト高である点とあわせ、サイズがかなり大型となる点を除き、特段の短所はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE102006011188A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭に記した種類のツインステージ型排気タービン駆動式ターボチャージャ機構のために、できる限りコンパクトな構造を(パッケージング化により)もたらす可能性を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴部分に記載の特徴より解決される。
本発明にしたがった構成形態により、有利なことにも、パッケージング化によるメリットが生じ、またそれに伴いコストメリットが生じることになる。
【0007】
請求項2にしたがった構成形態は、非常に好ましい保守性に優れた組付け手段の可能例の一つである。これは、たとえば定評あるボルト締結部であるとよい。
請求項3および4にしたがった構成形態により、構成部品にかける工数が再度低減され、それによりコストが低減される。
以下では、三つの図に示される好ましい実施例に基づき本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明にしたがった内燃機関用ツインステージ型排気タービン駆動式ターボチャージャ機構の構造を示す図式図である。
【図2】本発明にしたがったツインステージ型排気タービン駆動式ターボチャージャ機構を上から見た三次元図である。
【図3】図2の本発明にしたがったツインステージ型排気タービン駆動式ターボチャージャ機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、図1から3の同じ構成部品に対して同じ符号を適用している。
図1には、本発明にしたがった内燃機関2用のツインステージ型排気タービン駆動式ターボチャージャ機構1の構造が図式的に示されている。内燃機関2は、六気筒内燃機関として例示的に図示されている。内燃機関2の図式的に示唆される六つの気筒は、一つだけしかない排気マニホールド2aに合流している。この排気マニホールド2aは、高圧排気タービン駆動式過給機4のタービンハウジング4aに、排出ガスを導くように永久接続されている。排気マニホールド2aはさらに、第4の絞り要素6を介在して、第1の高圧排気タービン駆動式過給機4と並列に配置される第2の高圧排気タービン駆動式過給機5の第2のタービンハウジング5aに、排出ガスを導くように接続できるようになっている。第1および第2の高圧タービンハウジング4a、5aもまた、低圧排気タービン駆動式過給機3の低圧タービンハウジング3aに、排出ガスを導くように接続されている。排出ガスの流れの向きは、矢印により象徴的に図示されている。
【0010】
図1から明らかであるように、ツインステージ型排気タービン駆動式過給機構1は、排気側では、低圧排気タービン駆動式過給機3、ならびに、互いに並列に配置される二つの高圧排気タービン駆動式過給機4、5により構成されている。第1の高圧排気タービン駆動式過給機4には、排出ガスが連続的に流れる一方で、第2の高圧排気タービン駆動式過給機5は、開ループまたは閉ループ制御が可能な第4の絞り要素6を利用して、オンオフできるようになっている。したがって、以下で説明するように、内燃機関2への燃焼空気の供給方式は、可変式に構成されている。
【0011】
ツインステージ型排気タービン駆動式過給機構1は、内燃機関2の吸気側では、次のように構成される:
新鮮な燃焼空気が、ツインステージ型排気タービン駆動式過給機構1により吸い込まれるが、これも再び吸気系の入口ポートのところの小さな矢印により図示されている。この燃焼空気は、まず低圧排気タービン駆動式過給機3の低圧コンプレッサハウジング3bを通り流れて、続いて第1のインタクーラ11内で空気温度を下げるために冷却された後、続いてガスを通す二つの別々の分岐路に分割される。したがって燃焼空気は、高圧排気タービン駆動式過給機4の高圧コンプレッサハウジング4bに連続的に通して送られ、引き続いて第2のインタクーラ12を通るが、この第2のインタクーラ12により、再度圧縮され、それにより加熱された燃焼空気が再び冷却される。燃焼空気は、続いて楕円記号により図示された内燃機関2の各気筒内へと送られる。
【0012】
ガスを通す二つの別々の分岐路への分割部の、燃焼空気が流れる向きで下流側には、第1の高圧コンプレッサハウジング4bと並列に、第2の排気タービン駆動式過給機5の第2の高圧コンプレッサハウジング5bが配置されている。この高圧コンプレッサハウジング5bの燃焼空気が流れる向きで上流側には、開ループまたは閉ループ制御が可能な第2の絞り要素9が配置されている。さらにこの高圧コンプレッサハウジング5bの、燃焼空気が流れる向きで下流側には、同様に開ループまたは閉ループ制御が可能な第3の絞り要素10が配置されている。第1および第2の絞り要素9、10は、実施可能な二通りの代替例である。高圧コンプレッサハウジング5bと、第2の絞り要素9および第3の絞り要素10との間には、バイパス7が高圧コンプレッサハウジング5bと並列に備えられている。このバイパス7にも同様に、開ループまたは閉ループ制御が可能な第1の絞り要素8、好適には排気フラップが配置されている。
【0013】
図2には、本発明にしたがったツインステージ型排気タービン駆動式過給機構1を、図1に関して既に説明したさまざまなコンポーネントとともに、但し内燃機関2は除いて、上から見た三次元図が示されている。図2においては、一方では二つの高圧タービンハウジング4a、5aを排気マニホールド2aに、他方では低圧タービンハウジング3aを排気マニホールド2aに配置可能であり、またその際にはこれらの高圧タービンハウジング4a、5aから来る排出ガスが、排気マニホールド2aの内部に設けた(図3において見ることができる)流路13を通り低圧タービンハウジング3aに導かれるという、本発明にしたがった構成形態により、ツインステージ型排気タービン駆動式過給機構1の構造がいかにコンパクトに構成されるかを、はっきりと確認することができる。
【0014】
第1のインタクーラ11のハウジングおよび低圧コンプレッサハウジング3bは、取付け空間をさらに最小限化するために、材料を統一した一体型構造であると好適である。それ以外の補助的なコンポーネントについては、符号が付されていないが、というのもそれらは主に管路であるからであって、図1においてもこれらには同様に符号を付していない。符号3を付した二つの矢印は、図3に示されるツインステージ型排気タービン駆動式過給機構1の断面図の切断面を示す。
【0015】
図3には、図2に示される本発明にしたがったツインステージ型排気タービン駆動式過給機構を切断面3−3で切り取った時の断面図が示されている。第1高圧タービンハウジング4aから低圧タービンハウジング3aに至る、排気マニホールド2aの内部に設けた流路13を通る排出ガスの流れの向きが、矢印で図式的に示されている。
【0016】
配列の基本説明:
排気タービン駆動式過給機は、合計で三基、互いに対して並列に配置される、同じサイズまたは異なるサイズの高圧排気タービン駆動式過給機4、5が二基、必要である。高圧排気タービン駆動式過給機4、5の内少なくとも一方は、バリアブルジオメトリターボチャージャとして実施されると好適である。そのためにはこれに低圧排気タービン駆動式過給機3が前置される。低圧コンプレッサハウジング3bと夫々の高圧コンプレッサハウジング4b、5bとの間には、過給温度を低下させるために中間冷却機構が備えられる。中間冷却のために、第1および第2のインタクーラ11、12が利用される。オンオフ式の第2の高圧コンプレッサハウジング5bの上流側および下流側には、遮断用の通常の弁である第2および第3の絞り要素9、10とならび、この第2高圧コンプレッサハウジング5bの入口と出口とを接続する、同様にオンオフできるようになっている、迂回ラインであるバイパス7が位置している。排気側には、遮断弁である第4の絞り要素6が、第2の高圧タービンハウジング5aの入口の上流側に位置して、これを排気流から切り離すためにオンオフできるようになっている。
【0017】
内燃機関の運転点に応じて、排気タービン駆動式過給機構1の異なる運転戦略が弁別される。
【0018】
1.低回転域:
排気弁である第4の絞り要素6が閉じられ、排気質量流量(排気マス流量)は連続的に第1高圧タービンハウジング4aを通って流れ、続いて低圧タービンハウジング3aを通って流れる。吸い込まれた燃焼空気質量流量は、低圧コンプレッサハウジング3bにより予備圧縮され、中間冷却器である第2のインタクーラ11内で冷却され、続いて連続稼動する第1高圧コンプレッサ4b内で圧縮される。第2のオンオフ式高圧排気タービン駆動式過給機5は、規定された排気質量流量が流れることにより、第2高圧コンプレッサハウジング5bが再循環モードで回転する回転数に保持されて、それにより「ポンピング動作」が回避されるようにしている。第2のオンオフ可能な高圧コンプレッサの上流側および下流側の、両方とも弁である第2、第3の絞り要素9、10は、閉じられている。
【0019】
2.高回転域:
排気弁である第4の絞り要素6が開かれ、排気質量流量は、このときには第1および第2の高圧タービンハウジング4a、5aを通り流れ、続いて低圧タービン3aを通り流れる。吸い込まれた燃焼空気質量流量は、低圧コンプレッサハウジング3bにより予備圧縮され、中間冷却器である第1のインタクーラ11内で冷却され、続いて両方の高圧コンプレッサハウジング4b、5b内で圧縮される。再循環弁である第1の絞り要素8は閉じられており、第2のオンオフ可能な高圧コンプレッサの上流側および下流側の、両方とも弁である第2および第3の絞り要素9、10は、排気弁である第4の絞り要素6と同様に開かれている。
【0020】
したがってこの排気タービン駆動式過給機構1は、特性マップの全域においてツインステージモードが可能となるように構成されている。それ以外にも本発明にしたがった構成形態により、第2の低圧排気タービン駆動式過給機を放棄することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 排気タービン駆動式過給機構
2 内燃機関
2a 排気マニホールド
3 低圧ターボチャージャ
3a 低圧タービンハウジング
3b 低圧コンプレッサハウジング
4 第1高圧ターボチャージャ
4a 第1高圧タービンハウジング
4b 第1高圧コンプレッサハウジング
5 第2高圧ターボチャージャ
5a 第2高圧タービンハウジング
5b 第2高圧コンプレッサハウジング
6 第4絞り要素
7 バイパス
8 第1絞り要素
9 第2絞り要素
10 第3絞り要素
11 第1インタクーラ
12 第2インタクーラ
13 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気マニホールド(2a)を有する内燃機関(2)用のツインステージ型排気タービン駆動式過給機構(1)であって、前記排気タービン駆動式過給機構(1)が、前記内燃機関(2)の排出ガスが流れる向きにて互いに並列に配置される第1および第2の小型高圧ターボチャージャ(4,5)と、その下流側に直列に配置される低圧ターボチャージャ(3)とを有しており、前記排気マニホールド(2a)、前記第1の高圧ターボチャージャ(4)の第1高圧タービンハウジング(4a)、および前記低圧ターボチャージャ(3)の低圧タービンハウジング(3a)は、排出ガスを導くように互いに接続されており、前記排気マニホールド(2a)は、前記第2の高圧ターボチャージャ(5)の第2高圧タービンハウジング(5a)に、排出ガスを導くように接続可能であり、さらに前記第2高圧タービンハウジング(5a)と前記低圧タービンハウジング(3a)とが、排出ガスを導くように互いに接続されている、ツインステージ型排気タービン駆動式過給機構において、
一方では前記第2高圧タービンハウジング(4a,5a)を前記排気マニホールド(2a)に、他方では前記低圧タービンハウジング(3a)を前記排気マニホールド(2a)に配置可能であること、またその際に前記各高圧タービンハウジング(4a,5a)から来る排出ガスが、前記排気マニホールド(2a)の内部またはこれに隣接して設けた流路(13)を通って前記低圧タービンハウジング(3a)に導かれることを特徴とする、ツインステージ型排気タービン駆動式過給機構。
【請求項2】
請求項1に記載のツインステージ型排気タービン駆動式過給機構において、
前記第1および第2の高圧タービンハウジング(4a,5a)が、前記排気マニホールド(2a)に着脱自在に接続可能であることを特徴とする、ツインステージ型排気タービン駆動式過給機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のツインステージ型排気タービン駆動式過給機構において、
前記第1および第2の高圧タービンハウジング(4a,5a)が、材料を統一した一体型構造であることを特徴とする、ツインステージ型排気タービン駆動式過給機構。
【請求項4】
前記低圧排気タービン駆動式過給機(3)用に第1のインタクーラ(11)が備えられた、請求項1〜3のいずれか一項に記載のツインステージ型排気タービン駆動式過給機構において、
前記低圧排気タービン駆動式過給機(3)の低圧コンプレッサハウジング(3b)が、前記第1インタクーラ(11)のハウジングと一体式であることを特徴とする、ツインステージ型排気タービン駆動式過給機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−505989(P2012−505989A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531372(P2011−531372)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006613
【国際公開番号】WO2010/043292
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】