内燃機関
【課題】ペントルーフ型の燃焼室の上部内壁面に燃料噴霧を付着させない。
【解決手段】外開式の燃料噴射弁19は、燃焼室6の稜線12に沿って噴射された燃料噴霧の上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度に比べ、燃焼室6を構成する壁面のうちシリンダヘッド3に形成された吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって噴射された燃料噴霧の上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度が小さくなるよう形成されている。ペントルーフ型の燃焼室6の上部内壁面7に、燃料噴射弁19からの燃料噴霧が接触しないようにすることができ、内燃機関の出力への跳ね返りなく、未燃損失を低減し、燃費を改善することができる。
【解決手段】外開式の燃料噴射弁19は、燃焼室6の稜線12に沿って噴射された燃料噴霧の上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度に比べ、燃焼室6を構成する壁面のうちシリンダヘッド3に形成された吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって噴射された燃料噴霧の上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度が小さくなるよう形成されている。ペントルーフ型の燃焼室6の上部内壁面7に、燃料噴射弁19からの燃料噴霧が接触しないようにすることができ、内燃機関の出力への跳ね返りなく、未燃損失を低減し、燃費を改善することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペントルーフ型の燃焼室を有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、燃料が噴射される噴孔の下流側に、この噴孔から噴射された中空円錐状の燃料噴霧の噴孔軸方向への到達距離を抑制する流動制限手段が設けられた燃料噴射弁が開示されている。
【0003】
この流動制限手段は、前記噴孔から噴射される中空円錐形状の燃料噴霧のうち、この中空円錐形状の頂部の周囲を覆うように設けられており、前記噴孔の中心軸と略平行な壁面Aと、前記噴孔の中心軸と略直交し、前記噴孔から燃料噴霧下流型噴霧の外縁と触れない壁面Bと、を有し、これら壁面A及びBの作用により、燃料の噴射が停止してから一定時間が経過した時点での燃料噴霧の噴孔軸方向への到達距離を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−1220544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示される燃料噴射弁をペントルーフ型の燃焼室の上部中央に配置する場合、ピストンやシリンダ壁に対する燃料付着を抑制することはできるものの、中空円錐形状の燃料噴霧の一部が、ペントルーフ型の燃焼室の上部内壁面のうち、吸気ポートが開口する吸気側傾斜面や排気ポートが開口する排気側傾斜面に対して接触してしまい、これら傾斜面に付着した燃料が未燃燃料となり、燃費が悪化してしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、ペントルーフ型の燃焼室と、中空円錐形状に燃料噴射可能な外開式の燃料噴射弁と、を備えた内燃機関において、前記燃料噴射弁は、前記燃焼室の稜線に沿って噴射された燃料噴霧の上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度に比べ、前記燃焼室を構成する壁面のうちシリンダヘッドに形成された吸気側傾斜面及び排気側傾斜面に向かって噴射された燃料噴霧の上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度が小さくなるよう構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ペントルーフ型の燃焼室の上部内壁面に、燃料噴射弁からの燃料噴霧が接触しないようにすることができ、内燃機関の出力への跳ね返りなく、未燃損失を低減し、燃費を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る内燃機関の全体構成を模式的に示した説明図。
【図2】本発明に係る内燃機関の斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態燃における内燃機関の要部断面図であって、シリンダ軸線及び燃焼室の稜線を含む平面に沿った断面図。
【図4】本発明の第1実施形態燃における内燃機関の要部断面図であって、燃焼室の稜線に直交し、かつシリンダ軸線を含む平面に沿った断面図。
【図5】図4のA−A線に沿った断面図
【図6】図5のB−B線に沿った断面図。
【図7】図3のC−C線に沿った断面図。
【図8】図7のD−D線に沿った断面図。
【図9】本発明の第2実施形態燃における内燃機関の要部断面図であって、シリンダ軸線及び燃焼室の稜線を含む平面に沿った断面図。
【図10】本発明の第2実施形態燃における内燃機関の要部断面図であって、燃焼室の稜線に直交し、かつシリンダ軸線を含む平面に沿った断面図。
【図11】図10のE−E線に沿った断面図。
【図12】図11のF−F線に沿った断面図。
【図13】図9のG−G線に沿った断面図。
【図14】図13のH−H線に沿った断面図。
【図15】本発明の第3実施形態燃における内燃機関の要部断面図であって、シリンダ軸線及び燃焼室の稜線を含む平面に沿った断面図。
【図16】本発明の第3実施形態燃における内燃機関の要部断面図であって、燃焼室の稜線に直交し、かつシリンダ軸線を含む平面に沿った断面図。
【図17】図16のI−I線に沿った断面図。
【図18】図15のJ−J線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る内燃機関の全体構成を模式的に示した説明図であり、図2は本発明に係る内燃機関の斜視図である。
【0010】
本実施形態における内燃機関は、圧縮自己着火式内燃機関であって、内燃機関のシリンダブロック1には、複数のシリンダ2が設けられており、その上面を覆うように、シリンダヘッド3が固定されている。シリンダ2内には、冠面にキャビティ5が凹設されたピストン4が摺動可能に嵌合している。
【0011】
そして、これらシリンダブロック1、シリンダヘッド3、ピストン4により覆われて燃焼室6が構成されている。
【0012】
この燃焼室6は、いわゆるペントルーフ型に構成されており、この燃焼室6を構成する壁面のうち、シリンダヘッド3に形成された上部内壁面7は、2つの吸気ポート8、8が開口する吸気側傾斜面9と、2つの排気ポート10、10が開口する排気側傾斜面11と、これら吸気側傾斜面9と排気側傾斜面11とが突き合わせされた部分に形成され、当該燃焼室6の中心を通る直線状の稜線12と、吸気側傾斜面11の両側に位置し、シリンダ軸線を含む平面と平行な平面である吸気側側壁面13、13と、排気側傾斜面11の両側に位置し、シリンダ軸線を含む平面と平行な平面である排気側側壁面14、14と、吸気側側壁面13、13及び排気側側壁面14、14の外周側に位置し、シリンダヘッド3の下面を含む平面と平行な平面である第1平面部15と、吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11の立ち上がり部分の外周側に位置し、シリンダヘッド3の下面を含む平面と平行な平面である第2平面部16と、を有している。
【0013】
吸気ポート8の燃焼室6に対する開口部は、吸気弁17により開閉される。また排気ポート10の燃焼室6に対する開口部は、排気弁18により開閉される。 中空円錐形状の燃料噴霧(図1中の領域Mを参照)を燃焼室6内に噴射する燃料噴射弁19は、各気筒の一対の吸気弁17、17及び一対の排気弁18、18によって囲まれたシリンダ2の略中心位置である燃焼室6の上部中央に、換言すれば、稜線12上であってその略中央位置に配置されている。
【0014】
この燃料噴射弁19は、弁体33(後述)が本体(後述のノズルボディ30)の外側に突出することによって燃料を噴射する外開式の噴射弁であって、ECU(エンジンコントロールユニット)20からの制御信号に基づいて、その弁体33(後述)のリフト量、噴射パルス幅及び噴射タイミングが制御されている。
【0015】
ECU20には、吸入吸気量を検出するエアフローメータ21、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ22、クランク信号、クランク角位置を検出するクランク角センサ23等の各種センサからの検出信号が入力されており、これらの入力信号に基づいて、燃料噴射弁19を制御している。
【0016】
ここで、本実施形態の内燃機関においては、図1に示すように、低負荷運転時には、圧縮上死点のタイミングで燃料噴射弁19から燃焼室6内に燃料が噴射されるが、噴射された燃料噴霧は、燃焼室6の内壁面にも付着しないようになっている。
【0017】
図3〜図8は、本発明の第1実施形態における内燃機関の要部断面図及び燃料噴射弁19の要部断面図を示している。
【0018】
図3は稜線12及びシリンダ軸線を含む平面に沿った内燃機関の断面図、図4は稜線12に直交し、かつシリンダ軸線を含む平面に沿った沿った内燃機関の断面図、図5は図4のA−A線に沿った断面図、図6は図5のB−B線に沿った断面図、図7は図3のC−C線に沿った断面図、図8は図7のD−D線に沿った断面図である。
【0019】
図5〜図8に示すように、燃料噴射弁19は、燃料噴射弁19の軸方向から見たときに円形の燃料噴射口31が形成されたノズルボディ30と、燃料噴射口31の外周に形成され、燃料噴射弁19の軸を含む断面でみたときにテーパ状のシール面32と、このシール面32に着座することで燃料噴射口31を閉じると共に、シール面32に着座した状態からノズルボディ30の外側に向かって移動(リフト)することによって燃料噴射口31の全周に亙ってシール面32から離間して燃料噴射口31の全周から燃料噴射口31の半径方向(図5、図7における左右方向)に燃料噴射を可能とする弁体33と、を有している。例えば、ノズルボディ30と弁体33は、燃料噴射口31を通る燃料噴射弁19の軸線を中心とした円形であり、断面で見たときにテーパ状のシール面32は、円錐面の一部分である。
【0020】
また、燃料噴射弁19は、弁体33がシール面32から離間した際に燃料噴射口31から噴射された燃料を燃焼室6に向かって案内する案内部34を更に備えている。この案内部34は、弁体33がシール面32から離間した際に、ノズルボディ30と弁体33との間に形成される燃料噴射通路35を有している。
【0021】
そして、この燃料噴射弁19は、図3及び図4に示すように、燃料噴霧が上部内壁面7に接触しないように、燃料噴射口31から稜線12に沿って噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度θ1に比べ、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度θ2が小さくなるよう形成されている。換言すれば、この燃料噴射弁19は、シリンダ軸線方向からみて(図3、図4における上方から下方を見下ろすようにみて)燃料噴射口31の燃料の噴射方向と稜線12とのなす角度が大きくなる位置から噴射される燃料噴霧ほど、シリンダ軸線に直交する方向からみて当該燃料噴霧の上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度が小さくなるように、その案内部34が形成されている。
【0022】
案内部34は、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置と、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置とでは、互いに異なる形状に形成されている。換言すれば、燃料噴射弁19は、ノズルボディ30と弁体33との間に形成されるノズル形状が、燃料噴射口31の周方向で稜線12に近い位置と、稜線12から離れた位置とでは異なるように形成されている。
【0023】
詳述すると、この第1実施形態においては、燃料噴射口31の下流側に位置する燃料噴射通路35が、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置と、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置とでは、互いに異なる長さとなるよう、案内部34が形成されている。より具体的には、この第1実施形態においては、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置において、燃料噴射口31を通る燃料噴射弁19の軸線を中心した円形のノズルボディ30の外周に機械加工等により切欠部36が形成され、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置における燃料噴射通路35の通路長L1に比べて、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置における燃料噴射通路35の通路長L2が長くなるよう、案内部34が形成されている。
【0024】
そのため、燃料噴射弁19は、燃料噴射口31(実質的には、燃料噴射通路35)から稜線12に沿って噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた噴霧角θ3に比べ、燃料噴射口31(実質的には、燃料噴射通路35)から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた噴霧角θ4が小さくなっている。換言すればシリンダ軸線方向からみて(図3、図4における上方から下方を見下ろすようにみて)燃料噴射口31における燃料の噴射方向と稜線12とのなす角度が大きくなる位置から噴射される燃料噴霧ほど、シリンダ軸線に直交する方向からみた燃料噴霧の上部内壁面側の外形線と燃料噴霧のシリンダ軸線側の外形線とのなす角度が小さくなるよう、案内部34が形成されている。
【0025】
ここで、燃料噴射通路35の流路径(通路断面積)をD、燃料噴射通路35の通路長をLとすると、L/Dで定義される値が大きくなるほど、燃料噴霧の噴霧角は小さくなるため、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置において相対的に燃料噴射通路35の通路長が長くなり、この位置における噴霧角θ4が相対的に小さくなっている。
【0026】
そして、弁体33のシール面32からの移動量(リフト量)が小さく、燃料噴射弁19からの燃料噴射量が少ない機関低負荷時においては、燃焼室6の内壁面に噴射された燃料が付着しないよう、燃焼室6内に成層混合気を形成するべく圧縮上死点近傍のタイミングで燃料噴射弁19から燃料を噴射して、圧縮上死点近傍のタイミングで燃焼室6内に成層混合気を形成し、弁体33のシール面32からの移動量(リフト量)が大きく、燃料噴射弁19からの燃料噴射量が多い機関高負荷時においては、燃焼室6内に均質混合気を形成されるように低負荷運転時によりも燃料噴射のタイミングを進角させたタイミングで燃料噴射弁19から燃料を噴射して、燃焼室6内に均質混合気が形成する。
【0027】
つまり、内燃機関は、弁体33のシール面32からの移動量をECU20により制御することによって、燃料噴射弁19から噴射される燃料噴射量と燃焼室6内の混合気分布とが制御されており、機関低負荷時においては、弁体33のシール面32からの移動量を、機関高負荷時に比べて小さくなるように制御し、かつ上死点近傍のタイミングで燃焼室6内に燃料を噴射することで、成層混合気を形成する。
【0028】
このような第1実施形態においては、ペントルーフ型の燃焼室6の上部内壁面7に、燃料噴射弁19からの燃料噴霧が接触しないようにすることができ、内燃機関の出力への跳ね返りなく、未燃損失を低減し、燃費を改善するとともに、排気性能を向上させることができる。
【0029】
また、案内部34により、噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度θ1、θ2や、噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた噴霧角θ3、θ4が上述のように規定されているので、燃焼室6の設計を変更することなく、燃料噴射弁19の案内部34の形状の変更のみで、ペントルーフ型の燃焼室6の上部内壁面7に、燃料噴射弁19から燃料噴霧が接触しないようにすることができる。
【0030】
さらに、ノズルボディ30の切欠部36は、機械加工等により容易に形成することができるので、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置と、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置とで、案内部34の形状を容易に異なる形状に形成することができる。
【0031】
ここで、本実施形態においては、ノズルボディ30にのみ切欠部36が形成されているので、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置において、弁体33が切欠部36よりも外側に張り出すことになる。つまり、この第1実施形態においては、ノズルボディ30に切欠部36が形成されることで、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置において、弁体33に張り出し部37が形成されることになる。
【0032】
このように、弁体33に張り出し部37が形成されると、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置において、この張り出し部37の作用により、シリンダ軸線に直交する方向からみた燃料噴霧の上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角θ5を相対的に大きくすることができる。
【0033】
そして、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置では、燃料噴射通路35が相対的に短くなるので、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置に比べて、燃料噴霧の噴霧角が大きくなるものの、燃料噴霧のペネトレーション(噴霧の到達距離)が短くなるので、燃料噴霧の燃焼室6の上部内壁面7への付着を抑制することができる。
【0034】
燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置においては、燃料噴射通路35が相対的に長くなり、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置に比べて、燃料噴霧の噴霧角が小さくなるので、燃料噴霧のペネトレーション(噴霧の到達距離)が長くなるものの、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度が相対的に小さくなるよう形成されているので、燃料噴霧の燃焼室6の上部内壁面7への付着を抑制することができる。
【0035】
また、相対的に燃料噴射量が少ない機関低負荷時には、ペントルーフ型の燃焼室6の上部内壁面7に燃料噴射弁19から燃料噴霧が接触しないようにしつつ、燃焼室6内の成層混合気を自着火させることで、温度の低い燃焼室6の上部内壁面7との間に形成された空気層による断熱により冷却損失を低減することが可能となる。そして、相対的に燃料噴射量が多い機関高負荷時には、燃料噴射弁19の実質的な開口面積が最大となるので、噴射パルスの増大(燃料噴射弁19の開弁時間)を抑制し、燃料噴霧の混合時間を確保することで、均質燃焼を安定して実施することが可能となる。
【0036】
尚、この第1実施形態においては、ノズルボディ30側を切り欠くことで燃料噴射通路35の通路長を燃料噴射口31の周方向で変化させているが、弁体側を切り欠くことで燃料噴射通路35の通路長を燃料噴射口31の周方向で変化させることも可能である。
【0037】
以下、本発明の他の実施形態について説明するが、上述した第1実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0038】
図9〜図14は、本発明の第2実施形態における内燃機関の要部断面図及び燃料噴射弁19の要部断面図を示している。
【0039】
この第2実施形態における内燃機関は、上述した第1実施形態の内燃機関と略同一構成となっているが、この第2実施形態においては、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置において、断面円形のノズルボディ30及び弁体33の外周に機械加工等によりそれぞれ切欠部36、41が形成されている。つまり、この第2実施形態は、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置において、弁体33がノズルボディ30の外側に張り出しておらず、弁体33が前述した張り出し部37に相当する構成を具備しない以外は、第1実施形態と同一構成となっている。
【0040】
尚、この第2実施形態においても、燃料噴射弁19は、図9及び図10に示すように、燃料噴霧が上部内壁面7に接触しないように、燃料噴射口31から稜線12に沿って噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度θ1に比べ、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度θ2が小さくなるよう形成されている。
【0041】
このような第2実施形態においても、上述した第1実施形態と略同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
次に、図15〜図18を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態における内燃機関は、上述した第1実施形態の内燃機関と略同一構成となっているが、この第3実施形態においては、図18に示すように、燃料噴射弁19の案内部34が、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する燃料噴射弁19の周方向位置に、燃料噴射通路35から燃焼室6への燃料噴霧を妨げることが可能な遮蔽壁51を有している。
【0043】
この遮蔽壁51は、図18に示すように、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口に近接する弁体33に近づくように延びてノズルボディ30と弁体33の間の隙間寸法を狭くするようにノズルボディ30の先端に設けられたシリンダ軸線と略平行な壁面であって、機関低負荷時の燃料噴射量を噴射する際の弁体33のシール面32からの移動量(リフト量)では、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置において燃料噴射通路35から燃焼室6への燃料噴霧を妨げ、機関高負荷時の燃料噴射量を噴射する際の弁体33のシール面32からの移動量(リフト量)では、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置において燃料噴射通路35から燃焼室6への燃料噴霧を許容するよう形成されている。
【0044】
具体的には、機関低負荷時における弁体33のシール面32からの移動量(リフト量)では、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口が遮蔽壁51によって全て覆われた状態となって燃料噴射が妨げられるが、機関高負荷時における弁体33のシール面32からの移動量(リフト量)では、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口が遮蔽壁51の外側まで拡大することによって燃料噴射が許容されように、遮蔽壁51が形成されている。
【0045】
ここで、機関低負荷時における弁体33のシール面32からの移動によって生じるシール部の幅(ノズルボディ30と弁体33の間の断面高さ/隙間寸法)は、20ミクロン程度である。仮に燃料噴射通路35の幅(ノズルボディ30と弁体33の間の断面高さ/隙間寸法)がシール面32の下流側で徐々に拡大するものであった場合、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口が完全に塞がれていなくても、この開口を覆うように遮蔽壁51を弁体33に近接させ、例えば、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口の隙間を20ミクロン程度にすれば、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口からの燃料噴射を妨げることができる。また、仮に燃料噴射通路35の幅(ノズルボディ30と弁体33の間の断面高さ/隙間寸法)がシール面32の下流側で略一定であった場合にも、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口を覆うように遮蔽壁51を弁体33近接させることで、この開口が完全に塞がれていなくても、燃料噴射を妨げることができる。
【0046】
尚、この第3実施形態においても、機関低負荷時においては、圧縮上死点のタイミングで燃料噴射口31から稜線12に向かって燃料が噴射されるが、この第3実施形態における燃料噴射弁19においても、このとき噴射された燃料噴霧が上部内壁面7に接触しないように形成されており、燃焼室6の内壁面にも付着しないようになっている。
【0047】
このような第3実施形態においては、燃料噴射量が少ない機関低負荷時には、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料が噴射されないので、相対的に燃料噴射量が少ない機関低負荷時には、ペントルーフ型の燃焼室6の上部内壁面7に、燃料噴射弁19から燃料噴霧が接触しないので、内燃機関の出力への跳ね返りなく、未燃損失を低減し、燃費を改善することができる。
【0048】
また燃料噴射量が多い機関高負荷時には、燃料噴射口31の全周から燃料が噴射されることになり、燃料噴射弁19の実質的な開口面積が最大となるので、噴射パルスの増大(燃料噴射弁19の開弁時間)を抑制し、燃料噴霧の混合時間を確保することで、均質燃焼を安定して実施することができる。
【0049】
尚、上述した各実施形態における燃料噴射弁19は、いわゆるピエゾ式燃料噴射弁であり、弁体33の駆動用アクチュエータとしてピエゾ素子が用いられているが、駆動用アクチュエータとしてソレノイドを用いソレノイド式燃料噴射弁にも適用可能である。
【0050】
また、上述した第1及び第2実施形態においては、ノズルボディ30に切欠部36を設けることで、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置における燃料噴射通路35の通路長L1が、燃料噴射口35から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置における燃料噴射通路35の通路長L2よりも短くなるようにしているが、燃料噴射口31の周方向で、燃料噴射通路35の長さが変化するように、ノズルボディ30先端、燃料噴射口31、弁体33の形状をそれぞれ円形もしくは楕円形に適宜設定することで、切欠部36を設けることなく、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置における燃料噴射通路35の通路長L1が、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置における燃料噴射通路35の通路長L2よりも短くなるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…シリンダブロック
2…シリンダ
3…シリンダヘッド
6…燃焼室
7…上部内壁面
9…吸気側傾斜面
11…排気側傾斜面
12…稜線
19…燃料噴射弁
30…ノズルボディ
31…燃料噴射口
32…シール面
33…弁体
34…案内部
35…燃料噴射通路
36…切欠部
37…張り出し部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペントルーフ型の燃焼室を有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、燃料が噴射される噴孔の下流側に、この噴孔から噴射された中空円錐状の燃料噴霧の噴孔軸方向への到達距離を抑制する流動制限手段が設けられた燃料噴射弁が開示されている。
【0003】
この流動制限手段は、前記噴孔から噴射される中空円錐形状の燃料噴霧のうち、この中空円錐形状の頂部の周囲を覆うように設けられており、前記噴孔の中心軸と略平行な壁面Aと、前記噴孔の中心軸と略直交し、前記噴孔から燃料噴霧下流型噴霧の外縁と触れない壁面Bと、を有し、これら壁面A及びBの作用により、燃料の噴射が停止してから一定時間が経過した時点での燃料噴霧の噴孔軸方向への到達距離を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−1220544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示される燃料噴射弁をペントルーフ型の燃焼室の上部中央に配置する場合、ピストンやシリンダ壁に対する燃料付着を抑制することはできるものの、中空円錐形状の燃料噴霧の一部が、ペントルーフ型の燃焼室の上部内壁面のうち、吸気ポートが開口する吸気側傾斜面や排気ポートが開口する排気側傾斜面に対して接触してしまい、これら傾斜面に付着した燃料が未燃燃料となり、燃費が悪化してしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、ペントルーフ型の燃焼室と、中空円錐形状に燃料噴射可能な外開式の燃料噴射弁と、を備えた内燃機関において、前記燃料噴射弁は、前記燃焼室の稜線に沿って噴射された燃料噴霧の上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度に比べ、前記燃焼室を構成する壁面のうちシリンダヘッドに形成された吸気側傾斜面及び排気側傾斜面に向かって噴射された燃料噴霧の上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度が小さくなるよう構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ペントルーフ型の燃焼室の上部内壁面に、燃料噴射弁からの燃料噴霧が接触しないようにすることができ、内燃機関の出力への跳ね返りなく、未燃損失を低減し、燃費を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る内燃機関の全体構成を模式的に示した説明図。
【図2】本発明に係る内燃機関の斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態燃における内燃機関の要部断面図であって、シリンダ軸線及び燃焼室の稜線を含む平面に沿った断面図。
【図4】本発明の第1実施形態燃における内燃機関の要部断面図であって、燃焼室の稜線に直交し、かつシリンダ軸線を含む平面に沿った断面図。
【図5】図4のA−A線に沿った断面図
【図6】図5のB−B線に沿った断面図。
【図7】図3のC−C線に沿った断面図。
【図8】図7のD−D線に沿った断面図。
【図9】本発明の第2実施形態燃における内燃機関の要部断面図であって、シリンダ軸線及び燃焼室の稜線を含む平面に沿った断面図。
【図10】本発明の第2実施形態燃における内燃機関の要部断面図であって、燃焼室の稜線に直交し、かつシリンダ軸線を含む平面に沿った断面図。
【図11】図10のE−E線に沿った断面図。
【図12】図11のF−F線に沿った断面図。
【図13】図9のG−G線に沿った断面図。
【図14】図13のH−H線に沿った断面図。
【図15】本発明の第3実施形態燃における内燃機関の要部断面図であって、シリンダ軸線及び燃焼室の稜線を含む平面に沿った断面図。
【図16】本発明の第3実施形態燃における内燃機関の要部断面図であって、燃焼室の稜線に直交し、かつシリンダ軸線を含む平面に沿った断面図。
【図17】図16のI−I線に沿った断面図。
【図18】図15のJ−J線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る内燃機関の全体構成を模式的に示した説明図であり、図2は本発明に係る内燃機関の斜視図である。
【0010】
本実施形態における内燃機関は、圧縮自己着火式内燃機関であって、内燃機関のシリンダブロック1には、複数のシリンダ2が設けられており、その上面を覆うように、シリンダヘッド3が固定されている。シリンダ2内には、冠面にキャビティ5が凹設されたピストン4が摺動可能に嵌合している。
【0011】
そして、これらシリンダブロック1、シリンダヘッド3、ピストン4により覆われて燃焼室6が構成されている。
【0012】
この燃焼室6は、いわゆるペントルーフ型に構成されており、この燃焼室6を構成する壁面のうち、シリンダヘッド3に形成された上部内壁面7は、2つの吸気ポート8、8が開口する吸気側傾斜面9と、2つの排気ポート10、10が開口する排気側傾斜面11と、これら吸気側傾斜面9と排気側傾斜面11とが突き合わせされた部分に形成され、当該燃焼室6の中心を通る直線状の稜線12と、吸気側傾斜面11の両側に位置し、シリンダ軸線を含む平面と平行な平面である吸気側側壁面13、13と、排気側傾斜面11の両側に位置し、シリンダ軸線を含む平面と平行な平面である排気側側壁面14、14と、吸気側側壁面13、13及び排気側側壁面14、14の外周側に位置し、シリンダヘッド3の下面を含む平面と平行な平面である第1平面部15と、吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11の立ち上がり部分の外周側に位置し、シリンダヘッド3の下面を含む平面と平行な平面である第2平面部16と、を有している。
【0013】
吸気ポート8の燃焼室6に対する開口部は、吸気弁17により開閉される。また排気ポート10の燃焼室6に対する開口部は、排気弁18により開閉される。 中空円錐形状の燃料噴霧(図1中の領域Mを参照)を燃焼室6内に噴射する燃料噴射弁19は、各気筒の一対の吸気弁17、17及び一対の排気弁18、18によって囲まれたシリンダ2の略中心位置である燃焼室6の上部中央に、換言すれば、稜線12上であってその略中央位置に配置されている。
【0014】
この燃料噴射弁19は、弁体33(後述)が本体(後述のノズルボディ30)の外側に突出することによって燃料を噴射する外開式の噴射弁であって、ECU(エンジンコントロールユニット)20からの制御信号に基づいて、その弁体33(後述)のリフト量、噴射パルス幅及び噴射タイミングが制御されている。
【0015】
ECU20には、吸入吸気量を検出するエアフローメータ21、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ22、クランク信号、クランク角位置を検出するクランク角センサ23等の各種センサからの検出信号が入力されており、これらの入力信号に基づいて、燃料噴射弁19を制御している。
【0016】
ここで、本実施形態の内燃機関においては、図1に示すように、低負荷運転時には、圧縮上死点のタイミングで燃料噴射弁19から燃焼室6内に燃料が噴射されるが、噴射された燃料噴霧は、燃焼室6の内壁面にも付着しないようになっている。
【0017】
図3〜図8は、本発明の第1実施形態における内燃機関の要部断面図及び燃料噴射弁19の要部断面図を示している。
【0018】
図3は稜線12及びシリンダ軸線を含む平面に沿った内燃機関の断面図、図4は稜線12に直交し、かつシリンダ軸線を含む平面に沿った沿った内燃機関の断面図、図5は図4のA−A線に沿った断面図、図6は図5のB−B線に沿った断面図、図7は図3のC−C線に沿った断面図、図8は図7のD−D線に沿った断面図である。
【0019】
図5〜図8に示すように、燃料噴射弁19は、燃料噴射弁19の軸方向から見たときに円形の燃料噴射口31が形成されたノズルボディ30と、燃料噴射口31の外周に形成され、燃料噴射弁19の軸を含む断面でみたときにテーパ状のシール面32と、このシール面32に着座することで燃料噴射口31を閉じると共に、シール面32に着座した状態からノズルボディ30の外側に向かって移動(リフト)することによって燃料噴射口31の全周に亙ってシール面32から離間して燃料噴射口31の全周から燃料噴射口31の半径方向(図5、図7における左右方向)に燃料噴射を可能とする弁体33と、を有している。例えば、ノズルボディ30と弁体33は、燃料噴射口31を通る燃料噴射弁19の軸線を中心とした円形であり、断面で見たときにテーパ状のシール面32は、円錐面の一部分である。
【0020】
また、燃料噴射弁19は、弁体33がシール面32から離間した際に燃料噴射口31から噴射された燃料を燃焼室6に向かって案内する案内部34を更に備えている。この案内部34は、弁体33がシール面32から離間した際に、ノズルボディ30と弁体33との間に形成される燃料噴射通路35を有している。
【0021】
そして、この燃料噴射弁19は、図3及び図4に示すように、燃料噴霧が上部内壁面7に接触しないように、燃料噴射口31から稜線12に沿って噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度θ1に比べ、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度θ2が小さくなるよう形成されている。換言すれば、この燃料噴射弁19は、シリンダ軸線方向からみて(図3、図4における上方から下方を見下ろすようにみて)燃料噴射口31の燃料の噴射方向と稜線12とのなす角度が大きくなる位置から噴射される燃料噴霧ほど、シリンダ軸線に直交する方向からみて当該燃料噴霧の上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度が小さくなるように、その案内部34が形成されている。
【0022】
案内部34は、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置と、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置とでは、互いに異なる形状に形成されている。換言すれば、燃料噴射弁19は、ノズルボディ30と弁体33との間に形成されるノズル形状が、燃料噴射口31の周方向で稜線12に近い位置と、稜線12から離れた位置とでは異なるように形成されている。
【0023】
詳述すると、この第1実施形態においては、燃料噴射口31の下流側に位置する燃料噴射通路35が、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置と、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置とでは、互いに異なる長さとなるよう、案内部34が形成されている。より具体的には、この第1実施形態においては、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置において、燃料噴射口31を通る燃料噴射弁19の軸線を中心した円形のノズルボディ30の外周に機械加工等により切欠部36が形成され、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置における燃料噴射通路35の通路長L1に比べて、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置における燃料噴射通路35の通路長L2が長くなるよう、案内部34が形成されている。
【0024】
そのため、燃料噴射弁19は、燃料噴射口31(実質的には、燃料噴射通路35)から稜線12に沿って噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた噴霧角θ3に比べ、燃料噴射口31(実質的には、燃料噴射通路35)から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた噴霧角θ4が小さくなっている。換言すればシリンダ軸線方向からみて(図3、図4における上方から下方を見下ろすようにみて)燃料噴射口31における燃料の噴射方向と稜線12とのなす角度が大きくなる位置から噴射される燃料噴霧ほど、シリンダ軸線に直交する方向からみた燃料噴霧の上部内壁面側の外形線と燃料噴霧のシリンダ軸線側の外形線とのなす角度が小さくなるよう、案内部34が形成されている。
【0025】
ここで、燃料噴射通路35の流路径(通路断面積)をD、燃料噴射通路35の通路長をLとすると、L/Dで定義される値が大きくなるほど、燃料噴霧の噴霧角は小さくなるため、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置において相対的に燃料噴射通路35の通路長が長くなり、この位置における噴霧角θ4が相対的に小さくなっている。
【0026】
そして、弁体33のシール面32からの移動量(リフト量)が小さく、燃料噴射弁19からの燃料噴射量が少ない機関低負荷時においては、燃焼室6の内壁面に噴射された燃料が付着しないよう、燃焼室6内に成層混合気を形成するべく圧縮上死点近傍のタイミングで燃料噴射弁19から燃料を噴射して、圧縮上死点近傍のタイミングで燃焼室6内に成層混合気を形成し、弁体33のシール面32からの移動量(リフト量)が大きく、燃料噴射弁19からの燃料噴射量が多い機関高負荷時においては、燃焼室6内に均質混合気を形成されるように低負荷運転時によりも燃料噴射のタイミングを進角させたタイミングで燃料噴射弁19から燃料を噴射して、燃焼室6内に均質混合気が形成する。
【0027】
つまり、内燃機関は、弁体33のシール面32からの移動量をECU20により制御することによって、燃料噴射弁19から噴射される燃料噴射量と燃焼室6内の混合気分布とが制御されており、機関低負荷時においては、弁体33のシール面32からの移動量を、機関高負荷時に比べて小さくなるように制御し、かつ上死点近傍のタイミングで燃焼室6内に燃料を噴射することで、成層混合気を形成する。
【0028】
このような第1実施形態においては、ペントルーフ型の燃焼室6の上部内壁面7に、燃料噴射弁19からの燃料噴霧が接触しないようにすることができ、内燃機関の出力への跳ね返りなく、未燃損失を低減し、燃費を改善するとともに、排気性能を向上させることができる。
【0029】
また、案内部34により、噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度θ1、θ2や、噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた噴霧角θ3、θ4が上述のように規定されているので、燃焼室6の設計を変更することなく、燃料噴射弁19の案内部34の形状の変更のみで、ペントルーフ型の燃焼室6の上部内壁面7に、燃料噴射弁19から燃料噴霧が接触しないようにすることができる。
【0030】
さらに、ノズルボディ30の切欠部36は、機械加工等により容易に形成することができるので、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置と、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置とで、案内部34の形状を容易に異なる形状に形成することができる。
【0031】
ここで、本実施形態においては、ノズルボディ30にのみ切欠部36が形成されているので、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置において、弁体33が切欠部36よりも外側に張り出すことになる。つまり、この第1実施形態においては、ノズルボディ30に切欠部36が形成されることで、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置において、弁体33に張り出し部37が形成されることになる。
【0032】
このように、弁体33に張り出し部37が形成されると、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置において、この張り出し部37の作用により、シリンダ軸線に直交する方向からみた燃料噴霧の上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角θ5を相対的に大きくすることができる。
【0033】
そして、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置では、燃料噴射通路35が相対的に短くなるので、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置に比べて、燃料噴霧の噴霧角が大きくなるものの、燃料噴霧のペネトレーション(噴霧の到達距離)が短くなるので、燃料噴霧の燃焼室6の上部内壁面7への付着を抑制することができる。
【0034】
燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置においては、燃料噴射通路35が相対的に長くなり、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置に比べて、燃料噴霧の噴霧角が小さくなるので、燃料噴霧のペネトレーション(噴霧の到達距離)が長くなるものの、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度が相対的に小さくなるよう形成されているので、燃料噴霧の燃焼室6の上部内壁面7への付着を抑制することができる。
【0035】
また、相対的に燃料噴射量が少ない機関低負荷時には、ペントルーフ型の燃焼室6の上部内壁面7に燃料噴射弁19から燃料噴霧が接触しないようにしつつ、燃焼室6内の成層混合気を自着火させることで、温度の低い燃焼室6の上部内壁面7との間に形成された空気層による断熱により冷却損失を低減することが可能となる。そして、相対的に燃料噴射量が多い機関高負荷時には、燃料噴射弁19の実質的な開口面積が最大となるので、噴射パルスの増大(燃料噴射弁19の開弁時間)を抑制し、燃料噴霧の混合時間を確保することで、均質燃焼を安定して実施することが可能となる。
【0036】
尚、この第1実施形態においては、ノズルボディ30側を切り欠くことで燃料噴射通路35の通路長を燃料噴射口31の周方向で変化させているが、弁体側を切り欠くことで燃料噴射通路35の通路長を燃料噴射口31の周方向で変化させることも可能である。
【0037】
以下、本発明の他の実施形態について説明するが、上述した第1実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0038】
図9〜図14は、本発明の第2実施形態における内燃機関の要部断面図及び燃料噴射弁19の要部断面図を示している。
【0039】
この第2実施形態における内燃機関は、上述した第1実施形態の内燃機関と略同一構成となっているが、この第2実施形態においては、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置において、断面円形のノズルボディ30及び弁体33の外周に機械加工等によりそれぞれ切欠部36、41が形成されている。つまり、この第2実施形態は、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置において、弁体33がノズルボディ30の外側に張り出しておらず、弁体33が前述した張り出し部37に相当する構成を具備しない以外は、第1実施形態と同一構成となっている。
【0040】
尚、この第2実施形態においても、燃料噴射弁19は、図9及び図10に示すように、燃料噴霧が上部内壁面7に接触しないように、燃料噴射口31から稜線12に沿って噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度θ1に比べ、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度θ2が小さくなるよう形成されている。
【0041】
このような第2実施形態においても、上述した第1実施形態と略同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
次に、図15〜図18を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態における内燃機関は、上述した第1実施形態の内燃機関と略同一構成となっているが、この第3実施形態においては、図18に示すように、燃料噴射弁19の案内部34が、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する燃料噴射弁19の周方向位置に、燃料噴射通路35から燃焼室6への燃料噴霧を妨げることが可能な遮蔽壁51を有している。
【0043】
この遮蔽壁51は、図18に示すように、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口に近接する弁体33に近づくように延びてノズルボディ30と弁体33の間の隙間寸法を狭くするようにノズルボディ30の先端に設けられたシリンダ軸線と略平行な壁面であって、機関低負荷時の燃料噴射量を噴射する際の弁体33のシール面32からの移動量(リフト量)では、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置において燃料噴射通路35から燃焼室6への燃料噴霧を妨げ、機関高負荷時の燃料噴射量を噴射する際の弁体33のシール面32からの移動量(リフト量)では、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置において燃料噴射通路35から燃焼室6への燃料噴霧を許容するよう形成されている。
【0044】
具体的には、機関低負荷時における弁体33のシール面32からの移動量(リフト量)では、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口が遮蔽壁51によって全て覆われた状態となって燃料噴射が妨げられるが、機関高負荷時における弁体33のシール面32からの移動量(リフト量)では、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口が遮蔽壁51の外側まで拡大することによって燃料噴射が許容されように、遮蔽壁51が形成されている。
【0045】
ここで、機関低負荷時における弁体33のシール面32からの移動によって生じるシール部の幅(ノズルボディ30と弁体33の間の断面高さ/隙間寸法)は、20ミクロン程度である。仮に燃料噴射通路35の幅(ノズルボディ30と弁体33の間の断面高さ/隙間寸法)がシール面32の下流側で徐々に拡大するものであった場合、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口が完全に塞がれていなくても、この開口を覆うように遮蔽壁51を弁体33に近接させ、例えば、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口の隙間を20ミクロン程度にすれば、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口からの燃料噴射を妨げることができる。また、仮に燃料噴射通路35の幅(ノズルボディ30と弁体33の間の断面高さ/隙間寸法)がシール面32の下流側で略一定であった場合にも、燃料噴射通路35の燃焼室側の開口を覆うように遮蔽壁51を弁体33近接させることで、この開口が完全に塞がれていなくても、燃料噴射を妨げることができる。
【0046】
尚、この第3実施形態においても、機関低負荷時においては、圧縮上死点のタイミングで燃料噴射口31から稜線12に向かって燃料が噴射されるが、この第3実施形態における燃料噴射弁19においても、このとき噴射された燃料噴霧が上部内壁面7に接触しないように形成されており、燃焼室6の内壁面にも付着しないようになっている。
【0047】
このような第3実施形態においては、燃料噴射量が少ない機関低負荷時には、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料が噴射されないので、相対的に燃料噴射量が少ない機関低負荷時には、ペントルーフ型の燃焼室6の上部内壁面7に、燃料噴射弁19から燃料噴霧が接触しないので、内燃機関の出力への跳ね返りなく、未燃損失を低減し、燃費を改善することができる。
【0048】
また燃料噴射量が多い機関高負荷時には、燃料噴射口31の全周から燃料が噴射されることになり、燃料噴射弁19の実質的な開口面積が最大となるので、噴射パルスの増大(燃料噴射弁19の開弁時間)を抑制し、燃料噴霧の混合時間を確保することで、均質燃焼を安定して実施することができる。
【0049】
尚、上述した各実施形態における燃料噴射弁19は、いわゆるピエゾ式燃料噴射弁であり、弁体33の駆動用アクチュエータとしてピエゾ素子が用いられているが、駆動用アクチュエータとしてソレノイドを用いソレノイド式燃料噴射弁にも適用可能である。
【0050】
また、上述した第1及び第2実施形態においては、ノズルボディ30に切欠部36を設けることで、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置における燃料噴射通路35の通路長L1が、燃料噴射口35から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置における燃料噴射通路35の通路長L2よりも短くなるようにしているが、燃料噴射口31の周方向で、燃料噴射通路35の長さが変化するように、ノズルボディ30先端、燃料噴射口31、弁体33の形状をそれぞれ円形もしくは楕円形に適宜設定することで、切欠部36を設けることなく、燃料噴射口31から稜線12に沿って燃料を噴射する位置における燃料噴射通路35の通路長L1が、燃料噴射口31から吸気側傾斜面9及び排気側傾斜面11に向かって燃料を噴射する位置における燃料噴射通路35の通路長L2よりも短くなるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…シリンダブロック
2…シリンダ
3…シリンダヘッド
6…燃焼室
7…上部内壁面
9…吸気側傾斜面
11…排気側傾斜面
12…稜線
19…燃料噴射弁
30…ノズルボディ
31…燃料噴射口
32…シール面
33…弁体
34…案内部
35…燃料噴射通路
36…切欠部
37…張り出し部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックに設けられたシリンダの上方に位置し、吸気ポートが開口する吸気側傾斜面と、排気ポートが開口する排気側傾斜面と、前記吸気側傾斜面と前記排気側傾斜面とが突き合わされた部分に形成された直線状の稜線と、を有するシリンダヘッドの上部内壁面で構成されたペントルーフ型の燃焼室と、
前記稜線上に配置され、燃料噴射口が形成されたノズルボディと、前記燃料噴射口の外周に形成されたテーパ状のシール面と、このシール面に着座することで前記燃料噴射口を閉じると共に、前記ノズルボディの外側に向かって移動することによって前記シール面から離間する弁体と、を備え、前記燃焼室内に中空円錐形状に燃料噴射を行う外開式の燃料噴射弁と、を有する内燃機関において、
前記燃料噴射弁は、前記稜線に沿って噴射された燃料噴霧の前記上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度に比べ、前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって噴射された燃料噴霧の前記上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度が小さくなるよう構成されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記燃料噴射弁は、前記弁体が前記シール面から離間した際に前記燃料噴射口から噴射された燃料を前記燃焼室に向かって案内する案内部を有し、
前記案内部は、前記稜線に沿って燃料を噴射する位置と、前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって燃料を噴射する位置とでは、互いに異なる形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記案内部は、前記ノズルボディと前記弁体とに挟まれた燃料噴射通路を有し、
前記燃料噴射口から前記稜線に沿って燃料を噴射する位置における前記燃料噴射通路に比べて、前記燃料噴射口から前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって燃料を噴射する位置における前記燃料噴射通路が長くなるよう形成されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記ノズルボディと弁体は、燃料噴射口を通る燃料噴射弁の軸線を中心とした円形であり、
前記燃料噴射口から前記稜線に沿って燃料を噴射する位置において前記ノズルボディと前記弁体のうち少なくとも一方が切り欠かれていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記燃料噴射弁は、前記燃料噴射口から前記稜線に沿って噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた噴霧角に比べ、前記燃料噴射口から前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた噴霧角が小さくなるよう形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項6】
前記案内部は、前記ノズルボディと前記弁体とに挟まれ、前記燃料噴射口の下流側に位置する燃料噴射通路と、前記燃料噴射口から前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって燃料を噴射する位置において前記燃料噴射通路から燃焼室への燃料噴霧を妨げることが可能な遮蔽壁と、を有することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記遮蔽壁は、機関低負荷時の燃料噴射量を噴射する際の前記弁体の前記シール面からの移動量では、前記燃料噴射口から前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって燃料を噴射する位置において前記燃料噴射通路から燃焼室への燃料噴霧を妨げ、機関高負荷時の燃料噴射量を噴射する際の前記弁体の前記シール面からの移動量では、前記燃料噴射口から前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって燃料を噴射する位置において前記燃料噴射通路から燃焼室への燃料噴霧を許容するよう形成されていることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記燃料噴射弁が燃料噴射する際に、前記弁体の前記シール面からの移動量が小さい場合には、上死点近傍のタイミングで前記燃焼室内に成層混合気を形成し、圧縮自己着火により前記燃焼室内の成層混合気を燃焼させていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項9】
前記弁体の前記シール面からの移動量を制御することによって、前記燃料噴射弁から噴射される燃料噴射量と燃焼室内の混合気分布とが制御され、
機関低負荷時においては、前記弁体の前記シール面からの移動量を、機関高負荷時に比べて小さくなるように制御し、上死点近傍のタイミングで前記燃焼室内に成層混合気を形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項1】
シリンダブロックに設けられたシリンダの上方に位置し、吸気ポートが開口する吸気側傾斜面と、排気ポートが開口する排気側傾斜面と、前記吸気側傾斜面と前記排気側傾斜面とが突き合わされた部分に形成された直線状の稜線と、を有するシリンダヘッドの上部内壁面で構成されたペントルーフ型の燃焼室と、
前記稜線上に配置され、燃料噴射口が形成されたノズルボディと、前記燃料噴射口の外周に形成されたテーパ状のシール面と、このシール面に着座することで前記燃料噴射口を閉じると共に、前記ノズルボディの外側に向かって移動することによって前記シール面から離間する弁体と、を備え、前記燃焼室内に中空円錐形状に燃料噴射を行う外開式の燃料噴射弁と、を有する内燃機関において、
前記燃料噴射弁は、前記稜線に沿って噴射された燃料噴霧の前記上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度に比べ、前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって噴射された燃料噴霧の前記上部内壁面側の外形線とシリンダ軸線とのなす角度が小さくなるよう構成されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記燃料噴射弁は、前記弁体が前記シール面から離間した際に前記燃料噴射口から噴射された燃料を前記燃焼室に向かって案内する案内部を有し、
前記案内部は、前記稜線に沿って燃料を噴射する位置と、前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって燃料を噴射する位置とでは、互いに異なる形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記案内部は、前記ノズルボディと前記弁体とに挟まれた燃料噴射通路を有し、
前記燃料噴射口から前記稜線に沿って燃料を噴射する位置における前記燃料噴射通路に比べて、前記燃料噴射口から前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって燃料を噴射する位置における前記燃料噴射通路が長くなるよう形成されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記ノズルボディと弁体は、燃料噴射口を通る燃料噴射弁の軸線を中心とした円形であり、
前記燃料噴射口から前記稜線に沿って燃料を噴射する位置において前記ノズルボディと前記弁体のうち少なくとも一方が切り欠かれていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記燃料噴射弁は、前記燃料噴射口から前記稜線に沿って噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた噴霧角に比べ、前記燃料噴射口から前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって噴射された燃料噴霧のシリンダ軸線に直交する方向からみた噴霧角が小さくなるよう形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項6】
前記案内部は、前記ノズルボディと前記弁体とに挟まれ、前記燃料噴射口の下流側に位置する燃料噴射通路と、前記燃料噴射口から前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって燃料を噴射する位置において前記燃料噴射通路から燃焼室への燃料噴霧を妨げることが可能な遮蔽壁と、を有することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記遮蔽壁は、機関低負荷時の燃料噴射量を噴射する際の前記弁体の前記シール面からの移動量では、前記燃料噴射口から前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって燃料を噴射する位置において前記燃料噴射通路から燃焼室への燃料噴霧を妨げ、機関高負荷時の燃料噴射量を噴射する際の前記弁体の前記シール面からの移動量では、前記燃料噴射口から前記吸気側傾斜面及び前記排気側傾斜面に向かって燃料を噴射する位置において前記燃料噴射通路から燃焼室への燃料噴霧を許容するよう形成されていることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記燃料噴射弁が燃料噴射する際に、前記弁体の前記シール面からの移動量が小さい場合には、上死点近傍のタイミングで前記燃焼室内に成層混合気を形成し、圧縮自己着火により前記燃焼室内の成層混合気を燃焼させていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項9】
前記弁体の前記シール面からの移動量を制御することによって、前記燃料噴射弁から噴射される燃料噴射量と燃焼室内の混合気分布とが制御され、
機関低負荷時においては、前記弁体の前記シール面からの移動量を、機関高負荷時に比べて小さくなるように制御し、上死点近傍のタイミングで前記燃焼室内に成層混合気を形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内燃機関。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−47341(P2011−47341A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197657(P2009−197657)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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