説明

内輪形成用部材、車輪用軸受装置及びその製造方法

【課題】外側軌道部の勾配角度及び大鍔の内側端面の勾配角度が適正な角度に設定されるとともに、大鍔の外周面に適正なシール締め代をもつ内輪が得られる内輪形成用部材、車輪用軸受装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】外方部材3、内輪7、ハブ輪6、及び外方部材3と内輪7との間に装着されるシール部材10を備え、ハブ輪6にかしめ部6cを形成することによりハブ輪6の外周面に内輪7を固定する車輪用軸受装置1の内輪7となる第2の内輪形成用部材71Aは、内輪用テーパ部710A及び内側端面713Bが、かしめ部6cの形成によってその勾配角度が適正化される寸法に設定され、かつ大フランジ711Aは、かしめ部6cの形成によってその外面に装着されるシール部材10の締め代が適正化されるように外径寸法が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内輪形成用部材、車輪用軸受装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車輪用軸受装置として、中心軸線の回りに回転可能な内方部材と、この内方部材の外周囲に配置された外方部材(外輪)と、この外方部材と内方部材との間に介在する複列の転動体とを備えたものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
内方部材は、ハブ輪及び内輪からなり、中心軸線上に回転可能に配置されている。ハブ輪は、その外周面に車輪取付用フランジを有している。内輪は、車両アウタ側の内輪及び車両インナ側の内輪からなり、ハブ輪の外周面に取り付けられている。
【0004】
一方(車両アウタ側)の内輪は、複列の転動体のうち車両アウタ側列の転動体を転動させる第1の外側軌道部、及び第1の外側軌道部を介して並列する大小2つの鍔を有している。
【0005】
他方(車両インナ側)の内輪は、複列の転動体のうち車両インナ側列の転動体を転動させる第2の外側軌道部、及び第2の外側軌道部を介して並列する大小2つの鍔を有している。
【0006】
外方部材は、車体取付用フランジを有し、車両インナ側に懸架装置のナックルを介して取り付けられている。外方部材には、複列の転動体のうち車両アウタ側列の転動体を転動させる第1の内側軌道部、及び複列の転動体のうち車両インナ側列の転動体を転動させる第2の内側軌道部が設けられている。
【0007】
複列の転動体は、円錐ころからなり、各列の転動体が保持器によって転動可能に保持されている。
【0008】
一方側列(車両アウタ側列)の転動体は、第1の内側軌道部と第1の外側軌道部との間に介在して配置されている。一方側列の転動体の車両アウタ側には、外方部材と車両アウタ側の内輪との間に介在するシール部材が配置されている。
【0009】
他方側列(車両インナ側列)の転動体は、第2の内側軌道部と第2の外側軌道部との間に介在して配置されている。他方側列の転動体の車両インナ側には、外方部材と車両インナ側の内輪との間に介在するシール部材が配置されている。
【0010】
以上の構成により、車輪が回転すると、この回転がハブ輪及び内輪に伝達され、ハブ輪が内輪と共に回転する。
【0011】
ところで、この種の車輪用軸受装置の製造は、例えば図6に示すように、外輪形成用部材100の車両アウタ側テーパ部100a及び車両インナ側テーパ部100bにそれぞれ転動体列101,102を介して予め配置された内輪形成用部材103,104にハブ輪形成用の軸部材105を挿通させ、これら挿通端部105a,105bのうち車両インナ側挿通端部105bを塑性変形(かしめる)ことにより行われる場合がある。
【0012】
この場合、外輪形成用部材100としては、軸部材105の車両インナ側挿通端部105bの変形量が車両アウタ側挿通端部105aの変形量と比べて大きいことから、車両インナ側テーパ部100bの勾配角度θ及び車両アウタ側テーパ部100aの勾配角度θをθ>θとする外輪形成用部材が用いられる。
【0013】
これにより、車輪用軸受装置の製造後には、車両アウタ側の内輪における第1の外側軌道部の勾配角度及び車両インナ側の内輪における第2の外側軌道部の勾配角度が転動体列101,102を円滑に転動させることができる適正な角度に設定された車両アウタ側の内輪及び車両インナ側の内輪を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−206538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来における車輪用軸受装置の製造方法では、車両インナ側挿通端部105bのかしめ前後における内輪の大鍔の内側端面の勾配角度の変化、及び大鍔の外周面の外径の変化は考慮されていなかった。そのため、車両インナ側挿通端部105bのかしめ後においては、大鍔の内側端面の勾配角度が必ずしも適正な角度ではなく、また大鍔の外周面に配置されるシール部材の締め代が必ずしも適正な寸法ではなかった。
【0016】
従って、本発明の目的は、外側軌道部の勾配角度及び大鍔の内側端面の勾配角度が適正な角度に設定されるとともに、大鍔の外周面に適正なシール締め代をもつ内輪が得られる内輪形成用部材、車輪用軸受装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、車両インナ側の外側軌道部の勾配角度及び大鍔の内側端面の勾配角度が適正な角度に設定されるとともに、大鍔の外周面に適正なシール締め代をもつ内輪を得るための検討を開始し、その過程において次に示す手段を採用すると、所望の効果をもつ内輪が得られることを見出した。
【0018】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、(1)〜(4)の内輪形成用部材、車輪用軸受装置及びその製造方法を提供する。
【0019】
(1)軸受用円錐ころを転動させる内側軌道部を有する外輪と、前記内側軌道部との間で前記軸受用円錐ころを転動させる外側軌道部、及び前記外側軌道部を介して並列する大鍔及び小鍔を有する内輪と、車輪取付用フランジを有するハブ輪と、前記内輪と前記外輪との間に装着されるシール部材とを備え、前記内輪の前記大鍔側における前記ハブ輪のかしめによって前記内輪が前記ハブ輪の外周面に固定された車輪用軸受装置の前記内輪を形成するための内輪形成用部材であって、前記外側軌道部となる内輪用テーパ部、及び前記内輪の大鍔,小鍔となる大フランジ,小フランジを有し、前記内輪用テーパ部、及び前記大フランジの前記内輪用テーパ部側の内側端面は、前記ハブ輪のかしめによって、その勾配角度が適正化される寸法に設定され、かつ前記大フランジは、前記ハブ輪のかしめによって、その外面に装着される前記シール部材の締め代が適正化されるように外径寸法が設定されている内輪形成用部材。
【0020】
(2)上記(1)に記載の内輪形成用部材において、前記大フランジは、その外径が前記内輪用テーパ部側からその反対側に向かって漸次小さくなる寸法に設定されている。
【0021】
(3)上記(1)又は(2)に記載の内輪形成用部材、外輪の内側軌道部となる外輪用テーパ部を有する外輪形成用部材、及び車輪取付用フランジ付きのハブ輪となる円筒状の軸部材を用いて車輪用軸受装置を製造する方法であって、前記外輪用テーパ部に前記軸受用円錐ころを挟んで前記内輪用テーパ部を対向させて前記外輪形成用部材の内周囲に予め配置された前記内輪形成用部材に前記軸部材を挿通させる第1の工程と、前記大フランジの径方向外側への変形を規制しつつ、前記軸部材の挿通端部のうち車両インナ側挿通端部を前記大フランジの外側端面側にかしめることによりかしめ部を形成する第2の工程とを備え、前記かしめ部を形成するにあたり、前記外側軌道部の勾配角度α及び前記内輪用テーパ部の勾配角度αの角度差α−αと、前記大鍔の内側端面の勾配角度β及び前記大フランジの内側端面の勾配角度βの角度差β−βとの比(α−α)/(β−β)が不等式(α−α)/(β−β)>1を満たす比に設定される車輪用軸受装置の製造方法。
【0022】
(4)内側軌道部を有する外輪と、前記外輪の内周囲に配置され、車輪取付用フランジを外周面に有するハブ輪と、前記ハブ輪を挿通させ、前記内側軌道部との間で軸受用円錐ころを転動させる外側軌道部、及び前記外側軌道部を介して並列する大小2つの鍔を有し、前記大小2つの鍔のうち大鍔の径方向外側への変形を規制して前記ハブ輪の車両インナ側挿通端部を前記大鍔の外側端面側にかしめることにより形成されたかしめ部と前記車輪取付用フランジとの間に介在して固定された内輪とを備え、前記内輪は、前記かしめ部の形成前後における前記外側軌道部の勾配角度の角度差α−αと、前記かしめ部の形成前後における前記大鍔の内側端面の勾配角度の角度差β−βとの比(α−α)/(β−β)が不等式(α−α)/(β−β)>1を満たす比に設定されている車輪用軸受装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、外側軌道部の勾配角度及び大鍔の内側端面の勾配角度が適正な角度に設定されるとともに、大鍔の外周面に適正なシール締め代をもつ内輪を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る車輪用軸受装置の全体を説明するために示す断面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る車輪用軸受装置の要部を説明するために示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る車輪用軸受装置の内輪を形成するための内輪形成用部材を示す断面図。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の実施の形態に係る車輪用軸受装置における内輪の製造方法を説明するために示す断面図。(a)は内輪形成用部材の組付工程を、(b)はシール部材の取付工程を、(c)は軸部材の組付工程を、また(d)はかしめ部の形成工程をそれぞれ示す。
【図5】本発明の実施の形態に係る車輪用軸受装置の内輪を形成するための他の内輪形成用部材を示す断面図。
【図6】従来の車輪用軸受装置における内輪を用いて研磨した場合の不具合を説明するために示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態]
(車輪用軸受装置の全体構成)
図1は車輪用軸受装置の全体を示す。図2は車輪用軸受装置の要部を示す。図1に示すように、車輪用軸受装置1は、中心軸線Oの回りに回転可能な内方部材2と、この内方部材2の外周囲に配置された外方部材(外輪)3と、この外方部材3と内方部材2との間に介在する複列の転動体4,5とを備え、車体(図示せず)と車輪(図示せず)との間に配置されている。
【0026】
(内方部材2の構成)
内方部材2は、ハブ輪6及び内輪7からなり、中心軸線O上に回転可能に配置されている。
【0027】
ハブ輪6は、各外径が互いに異なる大小2つの胴部6a,6b(大径の胴部6a,小径の胴部6b)を有し、内輪7を挿通して外方部材3の内周囲に配置され、全体が例えば軸受鋼,浸炭鋼等からなる円筒状の成形体によって形成されている。
【0028】
大径の胴部6aは、ハブ輪6の車両アウタ側(図1の左側)に配置されている。大径の胴部6aには、その外周面に車両アウタ側で突出し、車輪(図示せず)を取り付けるための円環状の車輪取付用フランジ60aが一体に設けられている。車輪取付用フランジ60aには、円周方向に並列し、かつハブボルト8を挿通させる複数のボルト挿通孔600a(1個のみ図示)が設けられている。
【0029】
小径の胴部6bは、内輪7を取り付けるための円環状の凹部60bを外周面に有し、ハブ輪6の車両インナ側(図1の右側)に配置されている。凹部60bの形成は、ハブ輪6となる円筒状の軸部材の開口端部A(図1に二点鎖線で示す)をかしめることにより行われる。図1における符号6cは、開口端部Aのかしめによって形成されるかしめ部6cである。
【0030】
一方、内輪7は、第1の内輪70及び第2の内輪71からなり、中心軸線O方向に互いに並列して配置され、かつハブ輪6の凹部60b内に固定され、全体が例えば軸受鋼,浸炭鋼からなる円筒状の成形体によって形成されている。
【0031】
第1の内輪70は、複列の転動体4,5の車両アウタ側列の転動体4を転動させる外側軌道部70a、及びこの外側軌道部70aを介して並列する大小2つの鍔70b,70c(大鍔70b,小鍔70c)を有し、内輪7の車両アウタ側に中心軸線Oに沿って配置されている。第1の内輪70の内径dは、例えばd=57mmの寸法に設定されている。
【0032】
外側軌道部70aは、第1の内輪70の外周部に円環状の凹溝70dを形成することにより、その溝底に設けられている。外側軌道部70aの勾配角度は、その外径を車両インナ側から車両アウタ側に向かって漸次大きくする角度(図2に示す第2の内輪71における外側軌道部71aの勾配角度αと同一の勾配角度)に設定されている。
【0033】
大鍔70bは、第1の内輪70の車両アウタ側に配置されている。そして、大鍔70bは、外側端面700bが中心軸線Oに略直交する扁平な面で、また内側端面701bが外側端面700bに対して外側軌道部70a側に所定の勾配角度(図2に示す第2の内輪71における外側軌道部70aの勾配角度βと同一の勾配角度)をもって傾斜する傾斜面でそれぞれ形成されている。大鍔70bの外周面は、中心軸線Oに沿って均一な外径(図2に示す第2の内輪71における大鍔71bの外径Dと同一の外径)をもつシール部材9を受ける受面としてのシール面702bで形成されている。
【0034】
小鍔70cは、第1の内輪70の車両インナ側に配置されている。そして、小鍔70cは、外側端面700cが中心軸線Oに略直交する扁平な面で、また内側端面701cが外側端面700cに対して外側軌道部70a側に所定の勾配角度(図2に示す第2の内輪71における内側端面711cの勾配角度βと同一の勾配角度)をもって傾斜する傾斜面でそれぞれ形成されている。
【0035】
第2の内輪71は、複列の転動体4,5の車両インナ側列の転動体5を転動させる外側軌道部71a、及びこの外側軌道部71aを介して並列する大小2つの鍔71b,71c(大鍔71b,小鍔71c)を有し、内輪7の車両インナ側に中心軸線Oに沿って配置されている。第2の内輪71の内径は、第1の内輪70の内径dと同一の寸法に設定されている。
【0036】
また、第2の内輪71は、図1に示すように、外方部材3の内側軌道部3bに転動体5を介して外側軌道部71aを対向させ、この状態で大鍔71bの径方向外側への変形を所定の位置(例えば規制用リングとしての拘束リングの内周面)で規制してハブ輪6の車両インナ側挿通端部を大鍔71bの外側端面710b側にかしめることにより形成されたかしめ部6cと車輪取付用フランジ60aとの間に第1の内輪70と共に介在して固定されている。またさらに、第2の内輪71は、図2に示すように、かしめ部6cの形成前後における外側軌道部71aの勾配角度の角度差α−αとかしめ部6cの形成前後における大鍔71bの内側端面711bの勾配角度の角度差β−βとの比(α−α)/(β−β)が不等式(α−α)/(β−β)>1を満たす比に設定されている。
【0037】
外側軌道部71aは、第2の内輪71の外周部に円環状の凹溝71dを形成することにより、その溝底に設けられている。外側軌道部71aの勾配角度(ハブ輪6におけるのかしめ部6cの形成後の回転軸線Oに対する勾配角度)αは、その外径を車両アウタ側から車両インナ側に向かって漸次大きくする角度に設定されている。勾配角度αは、かしめ部6cの形成前における外側軌道部71aの勾配角度α(α<α)よりも大きい角度に設定されている。
【0038】
大鍔71bは、第2の内輪71の車両インナ側に配置されている。そして、大鍔71bは、外側端面710bが中心軸線Oに略直交する扁平面で、また内側端面711bが外側端面710bに対して外側軌道部71a側に勾配角度(ハブ輪6におけるかしめ部6cの形成後の回転軸線Oの径方向に対する勾配角度)βをもって傾斜する傾斜面でそれぞれ形成されている。勾配角度βは、かしめ部6cの形成前における大鍔71b(内側端面711b)の勾配角度β(β<β)よりも大きい角度に設定されている。大鍔71bの外周面は、中心軸線Oに沿って均一な外径D(例えばD=80mm)をもち、シール部材10を受ける受面としてのシール面712bで形成されている。外径Dは、かしめ部6cの形成前における大鍔71bの外径D(D<D)よりも大きい寸法に設定されている。
【0039】
かしめ部6cの形成後における勾配角度α及び勾配角度βは、第1の内輪70の外輪軌道部70aの勾配角度及び内側端面701bの勾配角度と実質的に同一であり、転動体5を円滑に転動させることができる適正な角度である。つまり、かしめ部6cの形成前における外側軌道部71aの勾配角度α及び内側端面711bの勾配角度βは、かしめ部6cの形成によって適正化される寸法に設定されている。なお、ここで「適正化される」とは、かしめ部6cの形成前における勾配角度α,βの状態で転動体5を転動させた場合に比較して、かしめ部6cの形成後における勾配角度α,βの状態で転動体5を転動させた場合の方がより転動体5の転動が円滑になることを意味する。
【0040】
また、かしめ部6cの形成後における大鍔71bの外周面の外径Dは、シール部材10を外方部材3との間に装着するための締め代が、シール部材10によるシール性を確実にする適正な締め代となる寸法である。つまり、かしめ部6cの形成前における大鍔71bの外周面の外径Dは、かしめ部6cの形成によって適正化される寸法に設定されている。なお、ここで「適正化される」とは、かしめ部6cの形成前における外径Dの状態でシール部材10を装着した場合に比較して、かしめ部6cの形成後における外径Dの状態でシール部材10を装着した場合の方が、よりシール部材10のシール性が確実になることを意味する。
【0041】
小鍔71cは、第2の内輪71の車両アウタ側に配置されている。そして、小鍔71cは、外側端面710cが中心軸線Oに略直交する扁平な面で、また内側端面711cが外側端面710cに対して外側軌道部71a側に所定の勾配角度βをもって傾斜する傾斜面で形成されている。
【0042】
(外方部材3の構成)
外方部材3は、複列の転動体4,5をそれぞれ転動させる内側軌道部3a,3bを有し、車両インナ側に懸架装置(図示せず)の構成部品としてのナックル(図示せず)を介して固定され、全体が中心軸線Oの両方向に開口する例えば軸受鋼,浸炭鋼等からなる円筒状の成形体によって形成されている。
【0043】
(複列の転動体4,5の構成)
車両アウタ側列の転動体4は、図1に示すように、円錐ころからなり、第1の内輪70の外側軌道部70aと外方部材3の内側軌道部3aとの間に介在して配置され、かつころ保持器11によって転動可能に保持されている。転動体4の車両アウタ側には、第1の内輪70のシール面702bと外方部材3の車両アウタ側開口内周面との間に介在する車両アウタ側のシール部材9が配置されている。
【0044】
車両インナ側列の転動体5は、円錐ころからなり、第2の内輪71の外側軌道部71aと外方部材3の内側軌道部3bとの間に介在して配置され、かつころ保持器12によって転動可能に保持されている。転動体5の車両インナ側には、第2の内輪71のシール面712bと外方部材3の車両インナ側開口内周面との間に介在する車両インナ側のシール部材10が配置されている。
【0045】
(車輪用軸受装置1の動作)
本実施の形態に示す車輪用軸受装置1の動作は、従来における車輪用軸受装置の動作と同様に行われる。すなわち、車輪が回転すると、この回転がハブ輪6及び内輪7に伝達され、ハブ輪6が内輪7と共に回転する。
【0046】
(車輪用軸受装置1の製造方法)
次に、本実施の形態に示す車輪用軸受装置1を製造する方法につき、図3及び図4(a)〜(d)を参照して説明する。図3は内輪形成用部材を示す。図4(a)〜(d)は車輪用軸受装置の製造手順を示す。
【0047】
本実施の形態に示す車輪用軸受装置の製造方法は、「内輪形成用部材の組み付け」,「シール部材の取り付け」,「軸部材の組み付け(第1の工程)」及び「かしめ部の形成(第2の工程)」の各工程が順次実施されるため、これら各工程を順次説明する。
【0048】
本実施の形態に示す車輪用軸受装置1の製造には、第1の内輪70(図1に示す)となる第1の内輪形成用部材70A(図4(a)及び(b)に示す)、第2の内輪71(図1に示す)となる第2の内輪形成用部材71A、外方部材3(図1に示す)となる外輪形成用部材3A(図4(a)及び(b)に示す)及びハブ輪6(図1に示す)となる軸部材6A(図4(c)に示す)を用いて行われる。
【0049】
第1の内輪形成用部材70Aは、転動体4(図1に示す)を転動させる第1の内輪70の外側軌道部70a(図1に示す)となる内輪用テーパ部700A、及び内輪用テーパ部700Aを介して並列する第1の内輪70の大鍔70b,70c(図1に示す)となる大小2つのフランジ701A,702Aを有している。第1の内輪形成用部材70Aとしては、かしめ部6c(図1に示す)の形成による変形が少ないため、標準の素材が用いられる。
【0050】
第2の内輪形成用部材71Aは、図3に示すように、転動体5(図1に示す)を転動させる第2の内輪71の外側軌道部71aとなる内輪用テーパ部710A、及び内輪用テーパ部710Aを介して並列する第2の内輪71の大鍔71b,小鍔71cとなる大小2つのフランジ711A,712Aを有している。内輪用テーパ部710Aの勾配角度αは外側軌道部71aの勾配角度α(α<α)よりも小さい角度に、また大フランジ711Aの内側端面713Aの勾配角度βは大鍔71bの内側端面711bの勾配角度β(β<β)よりも小さい角度にそれぞれ設定されている。大小2つのフランジ711A,712Aのうち大鍔71bとなる大フランジ711Aの外径Dは、大鍔71bの外径D(D>D)よりも小さい寸法に設定されている。
【0051】
外輪形成用部材3Aは、外方部材3の内側軌道部3a(図1に示す)となる外輪用テーパ部30A、及び内側軌道部3bとなる外輪用テーパ部31Aを有している。
【0052】
軸部材6Aは、ハブ輪6における小径の胴部6b(図1に示す)となる胴部60Aを有し、胴部60Aの軸線方向寸法が内輪7の軸線方向寸法よりも大きい寸法に設定されている。
【0053】
「内輪形成用部材の組み付け」
図4(a)に示すように、外輪用テーパ部30Aに転動体4を挟んで内輪用テーパ部700Aを対向させて第1の内輪形成用部材70Aを、また外輪用テーパ部31Aに転動体5を挟んで内輪用テーパ部710Aを対向させて第2の内輪形成用部材71Aを外輪形成用部材3Aの内周囲に配置する。この場合、第1の内輪形成用部材70A及び第2の内輪形成用部材71Aが外輪形成用部材3Aの内周囲に配置されると、外輪形成用部材3Aに対して第1の内輪形成用部材70A及び第2の内輪形成用部材71Aが組み付けられる。
【0054】
「シール部材の取り付け」
図4(b)に示すように、外輪形成用部材3Aの車両アウタ側開口内周面と第1の内輪形成用部材70Aの大フランジ701Aの外周面との間にシール部材9を、また外輪形成用部材3Aの車両インナ側開口内周面と第2の内輪形成用部材71Aの大フランジ711Aの外周面との間にシール部材10をそれぞれ介在させて取り付ける。
【0055】
「軸部材の組み付け」
図4(c)に示すように、第1の内輪形成用部材70A及び第2の内輪形成用部材71Aに軸部材6Aの胴部60Aを圧入して挿通させる。軸部材6Aの胴部60Aが第1の内輪形成用部材70A及び第2の内輪形成用部材71Aに挿通すると、第1の内輪形成用部材70A及び第2の内輪形成用部材71Aに対して軸部材6Aが組み付けられる。
【0056】
「かしめ部の形成」
図4(d)に示すように、図4(c)に示す拘束リング200(内径Dを例えばD=80.031mmとする拘束リング)を用いて第2の内輪形成用部材71Aにおける大フランジ711A(図4(c)に示す)の径方向外側への変形を規制しつつ、専用の治具(図示せず)を用いて軸部材6Aにおける胴部60A(図4(c)に示す)の車両インナ側挿通端部61Aを大フランジ711Aの外側端面714A側にかしめることによりかしめ部6cを形成する。
【0057】
このようにして、ハブ輪6,内輪7及び外輪(外方部材)3を有し、外側軌道部71aの勾配角度α(図2及び図3に示す)及び内輪用テーパ部の勾配角度α(図2及び図3に示す)の角度差α−αと大鍔71bの内側端面711bの勾配角度β(図2及び図3に示す)及び大フランジ711Aの内側端面713Aの勾配角度β(図2及び図3に示す)の角度差β−βとの比(α−α)/(β−β)が不等式(α−α)/(β−β)>1を満たす比に設定された車輪用軸受装置1を製造することができる。
【0058】
これにより、本実施の形態に示す車輪用軸受装置1及びその製造方法おいては、外側軌道部71aの勾配角度α及び大鍔71b(内側端面711b)の勾配角度βが適正な角度に設定されるとともに、大鍔71bの外周面(シール面712b)に適正なシール締め代をもつ第2の内輪71が得られる。
【0059】
ここで、本実施の形態に示す車輪用軸受装置1及びその製造方法において、上記した効果について考察する。
【0060】
本考察は、内輪形成用部材70A,内輪形成用部材71A,外輪形成用部材3A、及び軸部材6Aを用意し、上記した製造方法によって製造された9種の車輪用軸受装置1(No1〜9)において、ハブ輪6に形成されたかしめ部6cの変形前後の外側軌道部71aの勾配角度の角度差α−α,大鍔71bの内側端面711bの勾配角度の角度差β−β及び大鍔71bの外径の変化量D−Dを測定することにより、すなわち外側軌道部71aの勾配角度α及び内輪用テーパ部710Aの勾配角度αの角度差α−α,大鍔71bの内側端面711bの勾配角度β及び大フランジ711Aの内側端面713Aの勾配角度βの角度差β−β,大鍔71bの外径D及び大フランジ701Aの外径Dの変化量D−Dを測定することにより試みた。
【0061】
この場合、かしめ部6cの形成は、拘束リング200を用いて第2の内輪形成用部材71Aにおける大フランジ711Aの径方向外側への変形を規制しつつ、専用の治具(かしめ機)を用いて軸部材6Aにおける胴部60Aの車両インナ側挿通端部61Aを大フランジ711Aの外側端面714A側に所定のかしめ圧(12.5t)でかしめ変形させて行われる。
【0062】
この結果、外側軌道部71aの勾配角度α及び内輪用テーパ部の勾配角度αの角度差α−α、大鍔71bの内側端面711bの勾配角度β及び大フランジ711Aの内側端面713Aの勾配角度βの角度差β−βとの比(α−α)/(β−β)を(α−α)/(β−β)>1とする比に設定すると、外側軌道部71aの勾配角度α及び大鍔71bの勾配角度βが適正な角度に設定されるとともに、大鍔71bの外周面(シール面712b)に適正なシール締め代をもつ第2の内輪71が得られることが確認された。
【0063】
このことは、表1に示す通りである。表1は、車輪用軸受装置1において、上記した効果を考察した結果を示す。表1において、例えばNo3の車輪用軸受装置1では、外側軌道部71aの勾配角度の角度差α−α及び大鍔71bの勾配角度の角度差β−βがそれぞれα−α=0.14472μm,β−β=0.08594μmであり、(α−α)/(β−β)が(α−α)/(β−β)>1となる。また、大鍔71bにおける軌道側の外径の変化量D−DがD−D=83μmであり、端面側の外径の変化量D−DがD−D=98μmである。
【0064】
【表1】

【0065】
[実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0066】
(1)本実施の形態では、かしめ部6cの形成前における外側軌道部71aの勾配角度α及び内側端面711bの勾配角度βは、かしめ部6cの形成によって適正化される寸法に設定されている。このため、第2の内輪形成用部材71Aがかしめ力を受けると、内輪用テーパ部710A(変形前の外側軌道部71a)の勾配が大きくなるように変形し、外側軌道部71aの勾配角度αが適正な角度(外側軌道部71aと内側軌道部3bとの間で転動体5を円滑に転動させることができる角度)となると共に、大鍔71bの内側端面711bの勾配角度βが適正な角度(大鍔71bの内側端面711bと小鍔71cの内側端面711cとの間で転動体5を円滑に転動させることができる角度)となる。これにより、転動体5を外方部材3の内側軌道部3bとの間で円滑に転動させることが可能となる。
【0067】
(2)また、本実施の形態では、かしめ部6cの形成後における大鍔71bの外周面の外径Dは、シール部材10を外方部材3との間に装着するための締め代が、シール部材10によるシール性を確実にする適正な締め代となる寸法に設定されている。このため、第2の内輪形成用部材71Aがかしめ力を受けると、大フランジ711A(変形前の大鍔71b)の外径φDが拡径してφDとなり、大鍔71bの外周面をシール面712bとした場合にシール部材10を適切に保持できる適正な締め代(シール部材10によるシール性を確実にする締め代)が得られる。これにより、外方部材3と内輪7との間の空間を適切に外部から密封することができる。
【0068】
(3)本実施の形態では、外側軌道部71aの勾配角度α及び内輪用テーパ部710A(変形前の外側軌道部71a)の勾配角度αの角度差α−αと、大鍔71bの内側端面711bの勾配角度β及び大フランジ711A(変形前の大鍔71b)の内側端面の勾配角度βの角度差β−βとの比(α−α)/(β−β)が不等式(α−α)/(β−β)>1を満たす比に設定されている。かしめ部6cの形成時には、表1に示されるように、内輪用テーパ部710Aの勾配角度の変化量が大フランジ711Aの内側端面の勾配角度の変化量よりも大きくなるので、上記の不等式を満たすようにそれぞれの勾配角度が設定されていることによって、かしめ部6cの形成後において、外側軌道部71aの勾配角度α及び内側端面711bの勾配角度βがより適正な角度となる。このように、転動体5をより円滑に回転させることができる形状の内輪71を得ることができる。
(4)本実施の形態では、かしめ部6cの形成により、第2の内輪71の外側軌道部71aの勾配角度が第1の内輪70の外側軌道部70aの勾配角度と等しくなるように変形すると共に、第2の内輪71の内側端面711bの勾配角度が第1の内輪70の内側端面701bの勾配角度と等しくなるように変形する。これにより、図6を参照して説明した従来の車両用軸受装置(車両インナ側テーパ部100bの勾配角度θ>車両アウタ側テーパ部100aの勾配角度θ)に比較して、複列の転動体4,5をよりバランスよく円滑に転動させることが可能となる。
【0069】
以上、本発明の内輪形成用部材、車輪用軸受装置、及びその製造方法を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0070】
(1)上記実施の形態では、図3に示す第2の内輪形成用部材71Aが用いられる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば図5に示す第2の内輪用形成用部材81Aを用いてもよい。
【0071】
図5に示すように、第2の内輪用形成用部材81Aは、車両インナ側の転動体5(図1に示す)を転動させる第2の内輪71(図1に示す)の外側軌道部71a(図1に示す)となる内輪用テーパ部810A、及び内輪用テーパ部810Aを介して並列する第2の内輪71の大鍔71b,小鍔71c(図1に示す)となる大小2つのフランジ811A,812Aを有し、大小2つのフランジ811A,812Aのうち大鍔71bとなる大フランジ811Aの外周面811bの外径が外側端面813Aから内側端面814Aに向かって漸次大きくなる寸法に設定されている。換言すれば、大フランジ811Aの外周面811bの外径が内輪用テーパ部810A側からその反対側(外側端面813A側)に向かって漸次小さくなる寸法に設定されている。
【0072】
大フランジ811Aの外周面811bの外側端面813Aと内側端面814Aとの寸法差は、例えば10μmの寸法差に設定されている。図5において、符号γは大フランジ811Aの外周面の勾配角度を、αは内輪用テーパ部810Aの勾配角度を、またβは内側端面814Aの勾配角度をそれぞれ示す。
【0073】
かしめ部6cの形成時に大フランジ811Aがその外径を大きくする方向のかしめ力を受けると、外側端面813A側における外径が内側端面814A側の外径よりも大きな変形量で拡径し、大フランジ811Aの外周面上における任意の点から中心軸線Oまでの最小寸法が略等しくなる。これにより、中心軸線Oに沿って略均一な外径φDをもつシール面712bが得られ、シール部材10(図1に示す)をより適切に保持することができる。
【0074】
(2)上記実施の形態では、第1の内輪70と外方部材3との間に車両アウタ側の転動体4が、また第2の内輪71と外方部材3との間に車両インナ側の転動体5がそれぞれ介在して転動可能に配置されているタイプに適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ハブ輪と外方部材との間に車両アウタ側の転動体が、また内輪と外方部材との間に車両インナ側の転動体がそれぞれ介在して転動可能に配置されているタイプにも適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…車輪用軸受装置、2…内方部材、3…外方部材、3a,3b…内側軌道部、3A…外輪形成用部材、30A,31A…外輪用テーパ部、4,5…転動体、6…ハブ輪、6a…大径の胴部、60a…車輪取付用フランジ、600a…ボルト挿通孔、6b…小径の胴部、60b…凹部、6c…かしめ部、6A…軸部材、60A…胴部、61A…車両インナ側挿通端部、7…内輪、70…第1の内輪、70a…外側軌道部、70b…大鍔、700b…外側端面、701b…内側端面、702b…シール面、70c…小鍔、700c…外側端面、701c…内側端面、70d,71d…凹溝、70A…第1の内輪形成用部材、700A…内輪用テーパ部、701A…大フランジ、702A…小フランジ、71…第2の内輪、71a…外側軌道部、71b…大鍔、710b…外側端面、711b…内側端面、712b…シール面、71c…小鍔、710c…外側端面、711c…内側端面、71A…第2の内輪形成用部材、710A…内輪用テーパ部、711A…大フランジ、712A…小フランジ、713A…内側端面、714A…外側端面、81A……第2の内輪形成用部材、810A…内輪用テーパ部、811A…大フランジ、812A…小フランジ、813A…外側端面、814A…内側端面、8…ハブボルト,9…シール部材、10…シール部材、11…保持器、12…保持器、100…外輪形成用部材、100a…車両アウタ側テーパ部、100b…車両インナ側テーパ部、101,102…転動体、103,104…内輪形成用部材、105…軸部材、105a…車両アウタ側挿通端部、105b…車両インナ側挿通端部、O…中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受用円錐ころを転動させる内側軌道部を有する外輪と、前記内側軌道部との間で前記軸受用円錐ころを転動させる外側軌道部、及び前記外側軌道部を介して並列する大鍔及び小鍔を有する内輪と、車輪取付用フランジを有するハブ輪と、前記内輪と前記外輪との間に装着されるシール部材とを備え、前記内輪の前記大鍔側における前記ハブ輪のかしめによって前記内輪が前記ハブ輪の外周面に固定された車輪用軸受装置の前記内輪を形成するための内輪形成用部材であって、
前記外側軌道部となる内輪用テーパ部、及び前記内輪の大鍔,小鍔となる大フランジ,小フランジを有し、
前記内輪用テーパ部、及び前記大フランジの前記内輪用テーパ部側の内側端面は、前記ハブ輪のかしめによって、その勾配角度が適正化される寸法に設定され、かつ前記大フランジは、前記ハブ輪のかしめによって、その外面に装着される前記シール部材の締め代が適正化されるように外径寸法が設定されている
内輪形成用部材。
【請求項2】
前記大フランジは、その外周面の外径が前記内輪用テーパ部側からその反対側に向かって漸次小さくなる寸法に設定されている請求項1に記載の内輪形成用部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内輪形成用部材、外輪の内側軌道部となる外輪用テーパ部を有する外輪形成用部材、及び車輪取付用フランジ付きのハブ輪となる円筒状の軸部材を用いて車輪用軸受装置を製造する方法であって、
前記外輪用テーパ部に前記軸受用円錐ころを挟んで前記内輪用テーパ部を対向させて前記外輪形成用部材の内周囲に予め配置された前記内輪形成用部材に前記軸部材を挿通させる第1の工程と、
前記大フランジの径方向外側への変形を規制しつつ、前記軸部材の挿通端部のうち車両インナ側挿通端部を前記大フランジの外側端面側にかしめることによりかしめ部を形成する第2の工程とを備え、
前記かしめ部を形成するにあたり、前記外側軌道部の勾配角度α及び前記内輪用テーパ部の勾配角度αの角度差α−αと、前記大鍔の内側端面の勾配角度β及び前記大フランジの内側端面の勾配角度βの角度差β−βとの比(α−α)/(β−β)が不等式(α−α)/(β−β)>1を満たす比に設定される
車輪用軸受装置の製造方法。
【請求項4】
内側軌道部を有する外輪と、
前記外輪の内周囲に配置され、車輪取付用フランジを外周面に有するハブ輪と、
前記ハブ輪を挿通させ、前記内側軌道部との間で軸受用円錐ころを転動させる外側軌道部、及び前記外側軌道部を介して並列する大小2つの鍔を有し、前記大小2つの鍔のうち大鍔の径方向外側への変形を規制して前記ハブ輪の車両インナ側挿通端部を前記大鍔の外側端面側にかしめることにより形成されたかしめ部と前記車輪取付用フランジとの間に介在して固定された内輪とを備え、
前記内輪は、前記かしめ部の形成前後における前記外側軌道部の勾配角度の角度差α−αと、前記かしめ部の形成前後における前記大鍔の内側端面の勾配角度の角度差β−βとの比(α−α)/(β−β)が不等式(α−α)/(β−β)>1を満たす比に設定されている
車輪用軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−7441(P2013−7441A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140610(P2011−140610)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】