説明

内部人工器官及び内部人工器官を作成する方法

内部人工器官は、血管壁、厳密には動脈(14)の壁の変形によって生じた患者の動脈瘤(12)に植え込まれるように設計されており、同内部人工器官は、方向(Y−Y’)に延びている管状包体(22、24)と、包体(22、24)に固定されている複数の圧力プローブ(26)を備えており、各プローブ(26)は、圧力を測定するためのセンサー(28)と、圧力の測定値を患者の体外に設置されている監視装置に送信するための手段(34、36)を備えている。圧力測定値を各プローブ(26)から送信するための手段(34、36)は、これらの手段(34、36)が一部を形成しているプローブ(26)の少なくとも1つの区別できる特徴を備えている電磁圧力測定送信信号を生成するように設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の動脈瘤に植え込まれる管状内部人工器官に関する。本発明は、更に、管状内部人工器官を作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の動脈の壁が弱いと、動脈の局部的な拡張が生じて、動脈瘤が形成される場合がある。動脈瘤があると、動脈壁の破裂による内出血(出血)の危険から、患者の生命が脅かされることになる。この様な破裂は、例えば、弱くなった動脈の壁に血圧が掛かった結果生じる。
【0003】
動脈瘤は、従来のやり方では、破裂が起こる前に治療される。2通りの外科手術が、実施されている。
【0004】
1.従来のやり方による動脈瘤の手術又はアブレーションを実施する。
【0005】
2.経大腿動脈での低侵襲的血管内手術を実施する。この手術は、動脈瘤の部位に内部人工器官を配置することによって動脈瘤を血液循環から排除することにある。内部人工器官は、動脈瘤の部位の動脈を置換することを目的としている。
【0006】
内部人工器官を装着する処置は今では周知されているが、手術直後又は術後数カ月かの何れかの時期に漏出が起こる恐れがあり、即ち、動脈瘤が完全に排除された状態にならないこともある。その様な漏出は、その起始(不適切な錨着に起因する内部人工器官の遊走、腎臓下側側副判定基準(subrenal collateral criteria)に起因する排除された動脈瘤嚢内の血液循環の存在、その他)によって「I型又はII型エンドリーク」と呼ばれる。
【0007】
従って、エンドリークを検出するため、特に、術後破裂の危険を回避するためには、内部人工器官と動脈瘤を監視することが不可欠である。この場合、最も適切な手術を実施することが賢明であろう。
【0008】
この様な監視は、磁気共鳴映像法の様な医用画像化法によって行うことができるが、この方法は患者にとって拘束性が高い。
【0009】
米国特許第6,159,156号に記載されている別の可能性は、同一圧力プローブを動脈瘤の中に挿置し、その測定値を患者の体外の装置によって収集するというものである。この文献には、更に、プローブが動脈瘤内で固定位置を維持できるようにプローブを内部人工器官に固定することが記載されている。
【0010】
この文献には、過度の高圧又はこれまでの測定値に比べ大きく変化した圧力が動脈瘤内のどこかで検知された場合に破裂の危険があると判定する、という方法が提案されている。
【0011】
しかしながら、この解決法は、しばしば不正確な結論、特に誤認警報につながることが判明している。従って、この方法は精度に欠ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,159,156号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、動脈瘤壁の弱まりの検知を向上させることによって、上記問題を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、血管、特に動脈壁14の変形によって生じた患者の動脈瘤12の中に植え込むための内部人工器官において、
−方向Y−Y’に従って延びている管状包体22、24と、
−包体22、24に固定されている複数の圧力プローブ26であって、
各プローブ26が、
−圧力測定を実施するためのセンサー28と、
−圧力測定値を患者の体外に設置されている監視装置に送信するための手段34、36と、を備えている、プローブ26と、を備えており、
各プローブ26の圧力測定値を送信するための手段34、36は、手段34、36がその一部を形成しているプローブ26を区別できる少なくとも1つの特徴を含んでいる電磁圧力測定送信信号を生成することに適していることを特徴とする、内部人工器官を提供している。
【0015】
発明人らは、排除した動脈瘤嚢の中には、血餅、即ち「血栓」が存在し、これが圧力分散を局所的に変えてしまうことを実際に見い出した。従って、動脈瘤の所与の位置に或る特定の値の圧力が存在することは、動脈瘤内の別の位置では圧力が上昇し破裂を引き起こす可能性があったとしても、全く当たり前に見られる状況である。このため、破裂の危険を検知するために閾値を用いることは適切ではない。
【0016】
本発明に基づくと、各プローブによって送信される測定値同士を差別化することが可能であるため、プローブ毎に実施された圧力測定の成果を得ることが可能になる。従って、一方のプローブによって測定された圧力が、2つの連続した測定の間で突然上昇した時は、たとえ他方のプローブからの測定値に変化が見られなくても、動脈瘤壁は弱くなっており、破裂の危険が切迫していることがほぼ確実である。
【0017】
本発明は、特許請求の範囲の請求項10に記載の内部人工器官において、区別できる特徴は、送信信号として送られるデジタルデータの中に含まれていることを特徴とする、内部人工器官を提供している。
【0018】
本発明は、特許請求の範囲の請求項10又は11に記載の内部人工器官において、
−センサー28は、アナログ電気信号を供給するのに適していることと、
−内部人工器官20は、アナログ信号が圧力測定値を監視装置へ送信するための手段34、36に取り込まれる前に、アナログ信号を増幅するための低ノイズ増幅器30を備えていることを特徴とする、内部人工器官を提供している。
【0019】
本発明は、特許請求の範囲の請求項12に記載の内部人工器官において、
−圧力測定値を送信するための手段34、36は、デジタルデータをエンコードする送信信号を生成することを目的としていることと、
−内部人工器官20は、センサー28によって供給されその後増幅されたアナログ信号を変換するためのアナログ/デジタル変換器32を備えていることを特徴とする、内部人工器官を提供している。
【0020】
本発明は、特許請求の範囲の請求項10から13の何れかに記載の内部人工器官において、プローブ26は、1つ又はそれ以上のプローブ群26A、26Bとして分散しており、各群26A、26Bのプローブは、内部人工器官20の同じ区間27A、27Bの内部人工器官20の周囲に一定の間隔を空けて固定されていることを特徴とする、内部人工器官を提供している。
【0021】
5本発明は、特許請求の範囲の請求項10から14の何れかに記載の内部人工器官において、複数のプローブの各プローブのセンサー28は指向性センサーであり、その感度は、圧力がその測定面に垂直に加えられた場合に極大になることを特徴とする、内部人工器官を提供している。
【0022】
本発明は、特許請求の範囲の請求項15に記載の内部人工器官において、変形は拡張であって、プローブ26は、包体22、24の外に向けて配置されていることを特徴とする、内部人工器官を提供している。
【0023】
本発明は、特許請求の範囲の請求項16に記載の内部人工器官において、変形は収縮であって、プローブ26は、包体22、24の中に向けて配置されていることを特徴とする、内部人工器官を提供している。
【0024】
本発明は、特許請求の範囲の請求項10から17の何れかに記載の内部人工器官において、送信信号は、ISM標準に定義されている自由周波数帯域の1つの帯域内の搬送周波数を有していることを特徴とする、内部人工器官を提供している。
【0025】
本発明は、血管、厳密には、動脈壁14の変形によって生じた患者の動脈瘤の中に植え込むための内部人工器官20を作成する方法であって、同内部人工器官は、
−方向Y−Y’に従って延びている管状包体22、24と、
−包体22、24に固定されている複数の圧力プローブ26であって、
各プローブ26が、
−圧力測定を実施するためのセンサー28と、
−圧力測定値を患者の体外に設置されている監視装置に送信するための手段34、36と、を備えている、プローブ26と、を備えており、
各プローブ(26)の圧力測定値を送信するための手段34、36は、手段34、36がその一部を形成しているプローブ26を区別できる少なくとも1つの特徴を含んでいる電磁圧力測定送信信号を生成するのに適している、その様な内部人工器官を作成する方法において、以下の段階、即ち、
−包体22、24を作成する段階と、
−圧力プローブ26を包体22、24に固定する段階と、を含んでいることを特徴とする、方法を提供している。
【0026】
本発明による方法は、更に以下の特性の内の1つ又はそれ以上を有していてもよく、即ち、
−複数のプローブの各プローブのセンサーが指向性センサーであって、その感度は圧力がその測定面に垂直に加えられた場合に極大となる、その様な内部人工器官を形成するために、同方法は、更に以下の段階、即ち、
−医用画像によって患者の動脈瘤12の視覚的表現を入手する段階と、
−動脈瘤12の形状に適合させた形状の包体22、24を作成する段階と、
−動脈瘤12の中の血流によって、患者の動脈瘤12の壁14に加えられる少なくとも1つの局所圧極大A、Bを突き止める段階と、
−圧力プローブ26の少なくとも1つを包体22、24に固定する段階であって、内部人工器官20が動脈瘤12に植え込まれる時、プローブ26が局所圧極大に向いて配置されるように、プローブ26は包体22、24の外に向けて配置される、固定する段階と、を特徴としている。
【0027】
本発明は、特許請求の範囲の請求項2に記載の方法において、以下の段階、即ち、
−視覚的表現から動脈瘤12のモデルを導き出す段階と、
−モデル化された動脈瘤12の壁14に加えられる1つ又は複数の局所圧極大A、Bを、計算によって突き止める段階と、を含んでいることを特徴とする方法を提供している。
【0028】
本発明は、特許請求の範囲の請求項3に記載の方法において、視覚的表現は、スキャナ又はMRIによる映像であることを特徴とする、方法を提供している。
【0029】
本発明は、特許請求の範囲の請求項3又は4に記載の方法において、圧力プローブ26を内部人工器官20に固定するために、以下の段階、即ち、
−内部人工器官20を装着するための配置設定を、内部人工器官20が血流の流れの方向X−X’に沿って延びるように、動脈瘤12のモデルから選定する段階と、
−センサー26を内部人工器官20の包体22、24に固定するための帯域27A、27Bを、局所極大A、Bが包体22、24に関して固定帯域27A、27Bに垂直に位置するように、確定する段階と、
−圧力プローブ26を固定部位27A、27Bに固定する段階であって、プローブ26は、内部人工器官20の外に向けて包体22、24に垂直な向きに配置される、固定する段階と、を含んでいることを特徴とする方法を提供している。
【0030】
本発明は、特許請求の範囲の請求項5に記載の方法において、以下の段階、即ち、
−動脈瘤12の、流れの方向X−X’に垂直であって局所極大を形成している危険な状態にある部分A、Bを確定する段階と、
−内部人工器官20を装着するための配置設定の包体22、24の方向Y−Y’に沿って、危険な状態にある部分A、Bによって境界を定められる包体22、24の区間27A、27Bを確定する段階であって、同区間は、圧力プローブ26を固定するための帯域を形成している、区間27A、27Bを確定する段階と、を含んでいることを特徴とする方法を提供している。
【0031】
本発明は、特許請求の範囲の請求項6に記載の方法において、圧力プローブ26が固定される時、危険な状態にある部分A、Bは、包体22、24の方向Y−Y’に沿って、圧力プローブ26が呈する寸法に相当する厚さを有していることを特徴とする方法を提供している。。
【0032】
本発明は、特許請求の範囲の請求項7に記載の方法において、以下の段階、即ち、
−複数の圧力プローブ26を、内部人工器官の方向Y−Y’の周りの固定区間27A、27Bに固定する段階、を含んでいることを特徴とする方法を提供している。
【0033】
本発明は、特許請求の範囲の請求項8に記載の方法において、プローブ26は包体22、24の方向Y−Y’の周りに一定の間隔を空けて分散されていることを特徴とする方法を提供している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】動脈瘤の断面図である。
【図2】圧力プローブを装備した本発明による内部人工器官の正面図である。
【図3】内部人工器官に固定されたプローブの要素を示している略図である。
【図4】図1の動脈瘤のモデルの断面図である。
【図5】モデル化された内部人工器官を装着した、図4の動脈瘤と同様の図である。
【図6】図2の内部人工器官の上面図である。
【図7】内部人工器官が動脈瘤に装着されている、図1の動脈瘤と同様の図である。
【図8】内部人工器官を作成する方法のブロック図である。
【図9】植え込まれた内部人工器官を使用する方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、単に一例として提示されている以下の説明を読み添付図面を参照すれば、より深く理解されるであろう。
【0036】
図1を参照すると、患者の大動脈10には、動脈10を形成している壁14の一部の拡張によって生じた動脈瘤12がある。
【0037】
図示されている動脈瘤12は、動脈壁14から動脈瘤12の中心に向かって広がっている柔らかい血餅又は血栓16を備えている。循環血液(矢印17で表示)が触れる血栓16の一部は、しばしば膜又は内膜(intemna)18を形成する。
【0038】
図2に示す内部人工器官20は、動脈瘤12を循環血液17から排除することを目的としている。内部人工器官20は、エラストマーの様な血液密性及び生体適合性を有する伸縮性の織物又はフィルム24に埋め込まれた管状メッシュ22を備えている。メッシュ22とフィルム24によって構成されているアッセンブリは、こうして、内部人工器官20の管状包体22、24を形成している。メッシュ22は、ステンレス鋼又は弾性を有する合金で作られているので、内部人工器官20は自己伸張性である。この様な内部人工器官は、英語用語の「ステント」という呼び名で一般に知られている。
【0039】
内部人工器官20は、圧縮状態、即ち、本事例では直径が小さくなっている状態から、直径がより大きくなった拡張状態まで、自発的に形を変化させることができ、拡張した状態が静止状態に相当する。その弾性により、内部人工器官20は、一旦装着すると、動脈瘤12の各側の動脈10の内面を圧迫し、而して、内側スリーブを構成する。
【0040】
装着前、内部人工器官20は、方向Y−Y’に沿って延びている。図示の実施例では、内部人工器官20は「単純」であり、即ち、単に一本の直線状の管を形成しているだけである。他の実施形態では、動脈10に沿った動脈瘤12の位置によって、内部人工器官は、「二重又は二又」である場合があり、即ち、その様な人工器官は、一方の側では一本の管が画定されているがその管が分かれて他方側では二本の管になっている。この事例では、内部人工器官20は、問題となっている管に準じて幾つかの異なる方向に沿って延びていることは明白である。
【0041】
内部人工器官20は、包体20、24に固定され、包体22、24の外に向けて配置されている複数のプローブ26を更に備えている。
【0042】
プローブ26は、2つの群26Aと26Bに分散されている。各群26A、26Bのプローブは、内部人工器官20の同じ区間27A、27Bそれぞれに対し方向Y−Y’を中心にしてその外周に固定されている。プローブの各群は、内部人工器官20に沿って画定された位置を有している。それらの位置は、例えば、循環血液17が進入時に通過する上端20Aの様な内部人工器官20の端部20A、20Bの1つに関係づけて識別されている。
【0043】
図3から分かる様に、各群のプローブ26は、内部人工器官の周囲に等間隔に固定されている。
【0044】
図4を参照すると、各圧力プローブ26は、測定された圧力の関数としてアナログ電圧を送出するトランスデューサを形成している圧力センサー28を備えている。センサー28は、局所的に測定面(図示せず)の付近の圧力を側定する。それでもなお、エンドリークによって生まれる圧力により、測定面の部位に過度の圧力が生じる結果になるので、センサー28は、測定面から離れた位置にあるエンドリークの存在を測定することができる。
【0045】
センサー28は、指向性を有しており、その感度は、圧力が測定面に垂直に加えられた場合に極大となる。
【0046】
以下に説明するが、各プローブ26は、センサー28が包体22、24に垂直に向けて配置されるやり方で、即ち、測定面が包体22、24に平行になるやり方で、内部人工器官20に固定されている。
【0047】
センサー28によって送出される電圧は、測定ノイズを制限するため、差動式であるのが望ましい。
【0048】
センサー28は、「絶対」圧力値、即ち、所定の固定基準(大気圧)に対する圧力値を測定する。プローブ26は、而して、動脈瘤内の2つの異なる地点で採取される相対圧力を測定する既存のプローブとは異なっている。センサー28の測定範囲は、水銀柱で10から300mmまでの範囲にあるのが望ましい。
【0049】
センサー28によって送出される電圧は、アナログ信号を形成するために、低ノイズ増幅器30の中に取り込まれる。低ノイズ増幅器30は、望ましくは80より大きい同相信号除去比を有する計装用増幅器(図示せず)と、信号の基本周波数のみならず、収縮期圧を読み出すのに十分な高調波も取り出すことができるように、遮断周波数が選定されている低域通過フィルター(同じく図示せず)を備えている。実際、除去比が低いとノイズが生じる原因になることが判明している。
【0050】
遮断周波数は、患者の周波数が0.3から2Hzまでの値を有する事実を考慮し、更に安全係数を5と選定して確定される。
【0051】
各プローブ26は、従って、低ノイズ増幅器30によって調整されたアナログ信号をデジタルデータに変換するためのアナログ/デジタル変換器32を備えている。アナログ/デジタル変換器32は、16ビットより高い分解能と、100ヘルツ(Hz)より高いサンプリング周波数を有していることが望ましい。シャノンの定理によれば、2Hz(固有生理周波数)より少なくとも2倍大きいサンプリング周波数を使用することが実際に必要である。ここでは、安全係数50、即ち100Hzが採用されている。変換器32の構造は、ダブルランプ様式のものか、或いは、より高速であるという理由で連続近似様式であるのが望ましい。
【0052】
デジタル化されたデータは、患者の体外に配置されるはずのアンテナ36を経由して電磁信号を発することになっているトランスポンダー34に取り込まれる。
【0053】
各プローブの電子工学的構造は、プローブをRFID(高周波識別)様式の圧力プローブと見なすことができる根拠となる全ての要素(トランスデューサ、アナログ/デジタル変換器、及びトランスポンダー)を備えている。
【0054】
アンテナ36は、データの放出に関するISM(工業、科学、及び医療)標準に定義されている自由周波数帯域の1つの帯域内の搬送周波数を有しており、この周波数は、各プローブ26に特有である。従って、プローブ26のそれぞれから発せられる信号は、使用される搬送周波数に基づいて互いに区別することができる。而して、或る特定のセンサーによって発せされる信号を選択することは非常に容易である。変動を通して、信号は、送られたデジタルデータに基づいて区別することができる。従来のやり方では、プローブの正に構造自体を修正せねばならないが、このやり方では、プローブの間で、即ちIMS帯域(例えば125kHz、13.56MHz、480MHz、900MHz又は2.45GHz)の中で、1つのソフトウェアのパラメータを変更するだけでよいため、作成コストを削減することができる。2つの異なるやり方を組み合せてもよい。
【0055】
図8を参照しながら、これより、内部人工器官20を作成する方法、特にプローブ群26Aと26Bを、どの様に内部人工器官20に沿って位置決めするかを説明する。
【0056】
第1ステップ100で、処置対象の患者の動脈瘤12の視覚的表現を、医用画像化法によって得る。この表現は、例えば、図1のものと同様の動脈瘤の画像を与えるスキャナ又はMRIによる映像であるのが望ましい。
【0057】
MRIとスキャナの選定は、特に、内部人工器官を形成している材料に応じて行なわれる。
【0058】
この後にステップ110が続き、ここで、形状を動脈瘤12の形状に適合させた包体22、24が作成される。
【0059】
ステップ120で、動脈瘤のモデルが視覚的表現から導き出される。可能なモデルを、例として図5に示している。実際の動脈瘤の大凡の形状に対応するため単純な形状を用いる。更に、血流17の流れの大凡の方向X−X’もステップ120で確定される。この流れの方向X−X’は、動脈瘤がなかった場合に血液が進むはずである経路に対応しているのが望ましい。説明している実施例では、この方向は真っ直ぐであるが、湾曲している場合もあれば、動脈瘤が分岐部位に発生している場合には、分かれていることもある。
【0060】
モデルは、非線形弾性を備えて作成されることが望ましい。モデル化に際し、様々な組織は、異なる機械的係数を有する一連の弾性を有する媒体によって表現される。例えば、動脈瘤14の動脈壁に対し、血栓16に対し、動脈内膜18に対し、及び動脈10を循環している血液17に対して、異なる弾性係数が選択される。
【0061】
異なる機械係数の選定は、以下に説明するが、1つの実施形態では、前回の患者の処置に基づいて行われる。
【0062】
作成方法は、ステップ130に進み、ここでエコーグラフが作成され、次にステップ140に進み、動脈瘤12の中へ進入する際の血流17が、エコーグラフを基に測定される。
【0063】
組織のモデル化と血流の測定により、ステップ150で動脈瘤内の血流に関する流体力学の数式が定められ、解が求められる。
【0064】
この解により、ステップ160で、動脈瘤12の動脈壁14に加えられている局所圧極大を得ることが可能になる。それらは、破裂の危険性が最も高くなっている最も弱い場所である。
【0065】
説明している実施形態では、局所極大を突き止めるステップ160は、動脈瘤の危険な状態にある部分の位置を、流れの方向X−X’に沿って、方向X−X’に垂直な位置として確定する段階から成る。実際、発明人らは、動脈壁14の弱くなった帯域は、その空間的幾何学によって異なり、概ね流れの方向X−X’の周りに環状に集中することを見い出した。これは、特に、エンドリークが、それが起こっている場所のみならず、より小規模ながら、流れの方向X−X’の周り一帯で、過大な圧力を生み出しているという事実の結果である。
【0066】
而して、それぞれが、動脈瘤12の弱くなった帯域に対応している、幾つかの危険な状態にある部分が入手される。図示の実施例では、AとBの符号を付した2つの部分が確定されている。それら部分の高さは、各プローブ26の、プローブが固定された時の内部人工器官に沿った大きさに実質的に対応しているのが望ましい。
【0067】
図6を参照すると、ステップ170で、内部人工器官20の方向Y−Y’が、流れの方向X−X’と一致するように調整され、次いで、内部人工器官20を装着させる配置設定、即ち、流れの方向X−X’に沿った内部人工器官の位置が、動脈瘤12のモデル上で選定される。
【0068】
ステップ180で、プローブ群26A、26Bを固定する区間27A、27Bの位置(がそこから導き出され、このとき、それら固定区間は、危険な状態にある部分A、Bが、内部人工器官20の包体22、24と交差する部分に対応している。
【0069】
各区間27A、27Bは、内部人工器官に沿って、内部人工器官20の方向Y−Y’の方向に、内部人工器官20の一方の端部、例えば上端20A、に関係づけられる各々の距離だけ隔てて位置している。
【0070】
方法は、次の段階として、複数のプローブが各区間17A、27Bに固定されるステップ190を含んでおり、このとき、同じ区間に固定される複数のプローブがそれぞれプローブ群26A、26Bを形成する。同じ群26A、26Bのプローブは、内部人工器官20の方向の周りに一定の間隔で固定される。各プローブ26は、内部人工器官20の包体に垂直に、即ち、方向Y−Y’に垂直に向けて配置される。その結果、動脈瘤の問題になっている危険な状態にある部分では、方向Y−Y’を横断する全ての方向について圧力を測定することができる。
【0071】
プローブは、接着結合によって内部人工器官の包体に固定されるのが望ましい。使用される接着剤は、生体に適した種類の接着剤である。この固定様式により、例えば、プローブを包体に縫い付けた場合の様に生体適合性を有する織物24が弱くなるのを回避することができる。
【0072】
プローブ26Aと26Bを装備している内部人工器官20は、モデル上で選定されたその装着配置設定で内部人工器官を配備するため、従来式の方法によって植え付けられる。装着された内部人工器官を図7に示している。
【0073】
なお、プローブ26は、流れの方向X−X’の周りに等間隔に分散されているので、一旦装着された内部人工器官の効率は、内部人工器官の同流れの方向を中心とした角度方向には感度が高くないことに注目されたい。これにより、内部人工器官の装着は大幅にやり易くなり、何れの角度方向に向けても配置することができるようになる。
【0074】
これより、装着された内部人工器官20を使用する方法を説明する。
【0075】
内部人工器官20の装着に続き、プローブ26の位置に対応している様々な点における動脈瘤の圧力を求めるために、ステップ200で、患者の体外に設置されている監視装置(図示せず)は、プローブ26のそれぞれに問い合わせを行う。
【0076】
それら実際の圧力値に基づき、ステップ210で、動脈瘤のモデルは弾性係数を修正することによって更新され、更新後のモデルで、実際に得られた圧力値が見つけられるようにする。これは、逆方式の対処法であり、このやり方では、プローブによって供給されたデータが同じ流れのデジタルモデルから得られたデータと比較される。この更新処理は、いわゆる「レトロプロパゲーション」技法によって極値を見つける方法を用いて、物理的パラメータを変えることにより実現されるのが望ましい。
【0077】
同ステップ210は、更に、以降の患者に対して使用することができる機械係数値も供給する(ステップ110参照)。
【0078】
係数が一旦更新されてしまうと、センサーのそれぞれの圧力測定値は、オペレータが決めた間隔で採取される。それらの読み値は、ブロック220で表示される。
【0079】
各測定の読み値によって、第1に、プローブ26に関連づけられた局所圧が突然上昇したかどうかを判定することが可能になり、その様な場合には、センサーの向きに沿って位置する動脈壁14、より一般的には、対応する危険のある部分全体に、破裂の危険が存るということである。
【0080】
更に、センサー26によって監視されている危険な状態にある部分の外で新たに弱い帯域が出現したことを検知することを目的として、プローブ26の対象範囲の外の動脈瘤12の圧力の発達を判定するのに、デジタルモデルが使用される。
【0081】
なお、本発明による人工器官は、更に、血管壁の収縮によって生じた動脈瘤の症例にも使用できることに注目されたい。この場合、内部人工器官は、壁を引き離す方向に動かす働きをする。その後、プローブ26は、中を向いた状態で、包体22、24に接着結合される。血流の減少は動脈が再び通りにくくなっていることを意味するが、圧力測定では、その様な事態が起きないことを確実にするため、血流を計算することが可能になる。
【符号の説明】
【0082】
10 大動脈
12 動脈瘤
14 血管壁
16 血餅又は血栓
17 循環血液
18 膜
20 内部人工器官
22、24 管状包体
26 プローブ
26A、26B プローブ群
27A、27B 固定帯域
28 センサー
30 低ノイズ増幅器
32 アナログ/デジタル変換器
34、36 圧力測定値を送信するための手段
A、B 局所圧極大
X−X’ 血液の流れの方向
Y−Y’ 人工器官の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管、厳密には、動脈壁(14)の変形によって生じた患者の動脈瘤(12)の中に植え込むための内部人工器官(20)を作成する方法であって、前記内部人工器官は、
−方向(Y−Y’)に従って延びている管状包体(22、24)と、
−前記包体(22、24)に固定されている複数の圧力プローブ(26)であって、
各プローブ(26)が、
−圧力測定を実施するためのセンサー(28)と、
−圧力測定値を患者の体外に設置されている監視装置に送信するための手段(34、36)と、を備えている、プローブ(26)と、を備えており、
各プローブ(26)の前記圧力測定値を送信するための前記手段(34、36)は、前記手段(34、36)がその一部を形成している前記プローブ(26)を区別できる少なくとも1つの特徴を含んでいる電磁圧力測定送信信号を生成するのに適している、その様な前記内部人工器官を作成する方法において、以下の段階、即ち、
−前記包体(22、24)を作成する段階と、
−前記圧力プローブ(26)を前記包体(22、24)に固定する段階と、から成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記複数のプローブの各プローブのセンサーは指向性センサーであって、その感度は圧力がその測定面に垂直に加えられた場合に極大となる、その様な内部人工器官を形成する方法において、更に以下の段階、即ち、
−医用画像によって患者の前記動脈瘤(12)の視覚的表現を入手する段階と、
−前記動脈瘤(12)の形状に適合させた形状の包体(22、24)を作成する段階と、
−前記動脈瘤(12)の中の血流によって、患者の前記動脈瘤(12)の前記壁(14)に加えられる少なくとも1つの局所圧極大(A、B)を突き止める段階と、
−前記圧力プローブ(26)の少なくとも1つを前記包体(22、24)に固定する段階であって、前記内部人工器官(20)が前記動脈瘤(12)に植え込まれる時、前記プローブ(26)が前記局所圧極大に向いて配置されるように、前記プローブ(26)は、前記包体(22、24)の外に向けて配置される、固定する段階と、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の段階、即ち、
−前記視覚的表現から前記動脈瘤(12)のモデルを導き出す段階と、
−モデル化された前記動脈瘤(12)の前記壁(14)に加えられる単数又は複数の前記局所圧極大(A、B)を、計算によって突き止める段階と、を含んでいることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記視覚的表現は、スキャナ又はMRIによる映像であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記圧力プローブ(26)を前記内部人工器官(20)に固定するために、以下の段階、即ち、
−前記内部人工器官(20)を装着するための配置設定を、前記内部人工器官(20)が血流の流れの方向(X−X’)に沿って延びるように、前記動脈瘤(12)のモデルから選定する段階と、
−前記センサー(26)を前記内部人工器官(20)の前記包体(22、24)に固定するための帯域(27A、27B)を、前記局所極大(A、B)が前記包体(22、24)に関して前記固定帯域(27A、27B)に垂直に位置するように、確定する段階と、
−前記圧力プローブ(26)を前記固定部位(27A、27B)に固定する段階であって、前記プローブ(26)は、前記内部人工器官(20)の外に向けて前記包体(22、24)に垂直な向きに配置される、固定する段階と、を含んでいることを特徴とする、請求3又は4に記載の方法。
【請求項6】
以下の段階、即ち、
−前記動脈瘤(12)の、前記流れの方向(X−X’)に垂直であって前記局所極大を形成している危険な状態にある部分(A、B)を確定する段階と、
−前記内部人工器官(20)を装着するための前記配置設定の前記包体(22、24)の前記方向(Y−Y’)に沿って、前記危険な状態にある部分(A、B)によって境界を定められる前記包体(22、24)の区間(27A、27B)を確定する段階であって、前記区間は、前記圧力プローブ(26)を固定するための帯域を形成している、区間(27A、27B)を確定する段階と、を含んでいることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記圧力プローブ(26)が固定される時、前記危険な状態にある部分(A、B)は、前記包体(22、24)の前記方向(Y−Y’)に沿って、前記圧力プローブ(26)が呈する寸法に相当する厚さを有していることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
以下の段階、即ち、
−複数のプローブ(26)を前記内部人工器官の前記方向(Y−Y’)の周りの前記固定区間(27A、27B)に固定する段階、を含んでいることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プローブ(26)は、前記包体(22、24)の前記方向(Y−Y’)の周りに一定の間隔を空けて分散されていることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
血管、特に動脈壁(14)の変形によって生じた患者の動脈瘤(12)の中に植え込むための内部人工器官において、
−方向Y−Y’に従って延びている管状包体(22、24)と、
−前記包体(22、24)に固定されている複数の圧力プローブ(26)であって、
各プローブ(26)が、
−圧力測定を実施するためのセンサー(28)と、
−圧力測定値を患者の体外に設置されている監視装置に送信するための手段(34、36)と、を備えている、プローブ(26)と、を備えており、
各プローブ(26)の圧力測定値を送信するための前記手段(34、36)は、前記手段(34、36)がその一部を形成している前記プローブ(26)を区別できる少なくとも1つの特徴を含んでいる電磁圧力測定送信信号を生成することに適している、ことを特徴とする内部人工器官。
【請求項11】
前記区別できる特徴は、前記送信信号として送られるデジタルデータの中に含まれていることを特徴とする、請求項10に記載の内部人工器官。
【請求項12】
−前記センサー(28)は、アナログ電気信号を供給するのに適していることと、
−前記内部人工器官(20)は、前記アナログ信号が、前記圧力測定値を前記監視装置へ送信するための手段(34、36)に取り込まれる前に、前記アナログ信号を増幅するための低ノイズ増幅器(30)を備えていることを特徴とする、請求項10又は11に記載の内部人工器官。
【請求項13】
−圧力測定値を送信するための前記手段(34、36)は、前記デジタルデータをエンコードする送信信号を生成することを目的としていることと、
−前記内部人工器官(20)は、前記センサー(28)によって供給されその後増幅された前記アナログ信号を変換するためのアナログ/デジタル変換器(32)を備えていることを特徴とする、請求項12に記載の内部人工器官。
【請求項14】
前記プローブ(26)は、1つ又はそれ以上のプローブ群(26A、26B)として分散しており、各群(26A、26B)の前記プローブは、前記内部人工器官(20)の同じ区間(27A、27B)の前記内部人工器官20の周囲に一定の間隔を空けて固定されていることを特徴とする、請求項10から13の何れかに記載の内部人工器官。
【請求項15】
複数のプローブの各プローブの前記センサー(28)は、指向性センサーであり、その感度は、圧力がその測定面に垂直に加えられた場合に極大になることを特徴とする、請求項10から14の何れかに記載の内部人工器官。
【請求項16】
前記変形は拡張であって、前記プローブ(26)は、前記包体(22、24)の外に向けて配置されていることを特徴とする、請求項15に記載の内部人工器官。
【請求項17】
前記変形は収縮であって、前記プローブ(26)は、前記包体(22、24)の中に向けて配置されていることを特徴とする、請求項16に記載の内部人工器官。
【請求項18】
前記送信信号は、ISM標準に定義されている自由周波数帯域の1つの帯域内の搬送周波数を有していることを特徴とする、請求項10から17の何れかに記載の内部人工器官。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−502241(P2010−502241A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526149(P2009−526149)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001431
【国際公開番号】WO2008/029020
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(509061911)
【出願人】(500356876)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (9)
【出願人】(509040363)
【Fターム(参考)】