説明

内面にアンダ−カットのある射出金型構造とその成形法

【課題】大きな段差となり、この部分が家庭用給水等では大きなヘッドロス(エネルギ−損出)を起こしているパイプ挿入ストッパーを改良し、内面内側にRをつけ、且つ段差を低くするプラスチック成形品及びその金型を提供する。
【解決手段】エルボ−の内面内側全周のパイプ挿入ストパ−部分にRを付け、ストッパーの段差は非常に低く且つ内面外側半分のみの構造。成形方法として、射出成形機を用い射出、冷却固化完了後スリ−ブ押出し、スリ−ブと同時に分割されたコア−6を適当な距離押出し、ス−リブとコア−の隙間よりエア−を噴出し成形品の内面内側R部分を回転方向に押し,更に傾斜孔9−7より出るエア−で成形品を外方向Nに押す事によりアンダ−カットRを回転、と外方に移動させて外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
射出金型で内面にアンダカットR(3−2)のある成形品で、そのアンダカットをはずすのは一般的に困難な場合が多い、今回は例として給水管のエルボ−(図1)について説明する。このようなエルボ−(図1)(1)が家庭用給水の90°方向変換の通路として多く用いられている、この形状は単に2方向(F、Pの2方向)にコア−5の横移動とスリ−ブで押す金型構造で非常に簡単である、しかし(図1)に示す如く内面には給水管挿入の当たり面として高い段差と(3−1)と、また90°エッジ(直角エッジ)となり、従って給水のための水の流れにおいて大きなヘッドロス(エネルギ−損失)を起こしている。これを解消するために考案された方法で内面内側にRをつけ、且つ段差を低くするプラスチックス成形品及びその金型に関する。
【背景技術】
【従来の射出金型形状】
【0002】
エネルギ−を消費するものは全て省エネが要求される現在、今回取り上げた給水関係のエルボ−(図1)(1)は省エネには程遠い形状といえる。水の通り道が内面外側はRであるが内側は挿入されるパイプストパ−部(3−1)が金型のコア−の突合せの関係でエッジ(3−1)形状になっていることである、このエッジにより計算値であるが約0.078m/個のヘッドロス(エネルギ−損出)が起こる、これが1軒あたり約10個以上使用されているので、もしこれを(図1)(2)のように内面内側R(3−2)に変換すれば約0.034m/個のヘッドロスとなって小さくなる。 現在家は毎年約120〜130万軒建設されているので、その差を120万軒1日で計算すると約130万kw・dayとなって莫大な省エネとなる。 径が大きければ排水管(直径75mm以上)のようにコア−をラックギヤ−やモ−タ−で回転して成形品を作ることは既に行われている。しかし家庭給水管は内径13mm(VP13)で小さく、しかも8〜12個の多数個取り金型ではそのようなことは出来ない。その理由はそのR部分がアンダ−カット(3−2)をはづすことが困難であるからである、そこで研究考案されたのが本案であり、従来の金型を改造するだけで容易に省エネの効果、たとえ新型を起こしても効果/費用の面では最高といえる事が出来る(太陽光、地熱、波力等との比較において)。
【特許文献】公開実用新案公報(U)実開平6−23724
【0003】
この方法は射出金型を用いて曲がり管を成形、これをRのついた金型に入れ替え内面の温度調整によって内面内側にRを形成させるもので、最初よりR(3−2)の付いた金型で成形し、そのRをはづすのとは基本的に異なっている、しかもこの方法は成形時間が長くなり、2段回成形のためコスト高につながる。径の大きなものは問題ないが径13mmのような小口径品では非常に困難と思われる。
審査未請求
公開特許公報(A) 特開平5−16186
【0004】
フュ−ジブルコア−(規定してないが恐らく合成ゴム、シリコンゴム等と考えられる)により内面Rをつける方法であるが、エルボ−成形品材質は無可塑ポリ塩化ビニ−ルである、この樹脂の成形温度は180°Cでコア−の材質では耐熱性が低く金型としての役目を果たさない。
またこの方法は上記実用新案同様、誰でも直ぐに考えつく方法で、小生も、今から十数年前気づき実施したが数十ショットでゴムコア−が耐熱性が低い関係で、ぼろぼろになり実用に耐えなかった経験を持っている、本件も同様なことで審査未請求になっているものと思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(1)現在使用されている(図1)(1)エルボ−(JIS規定)を示し、パイプ挿入ストッパ−部分(3−1)は金型の関係で90°エッジとなっている、この形状では家庭用給水の流れを阻害し大きなヘッドロス(エネルギ−損失)を引き起こしていることの解消。
(2)各種ゴム等のフュ−ジブルコア−では内面の外内側にRをつけることは出来るが成形の際耐熱問題で実用に耐えない。
(3)金属であれば問題ないがフュ−ジブル性がない。
(4)従って上記(3)項の金属で如何なる構造にしてアンダ−カットをはずすかである。
【問題を解決する手段】
【0006】
解決する手段として(図1)に示す如く
(1)家庭用給水の流れを妨げるパイプ挿入ストッパ−(3−1)をなくしてR(3−2)を形成しストッパ−の段差2を低くし、しかも内面外方半分のみとする。
(2)コア−はフュジブルなものは使用せず、長期使用可能な金族性のものとする。
(3)コア−を分割し内面内側のコア−にR(3−2)を形成し水がスム−スに流れるようにする。
(4)R(3−2)はアンダ−カットとなるため、これをはずす方法を考案する。
以下その詳細を説明する。
【0007】
(図3)に示す如く溶融原料はスプル−(10−1)より金型に入りストリッパ−ランナ−(10−2)を第二スプル−(10−3)、更にランナ−、ゲ−ト(10−4)(ほぼ同じ太さ)を通ってキャビテ−(成形品エルボ−)に入り内面内側にR(3−2)が形成され、冷却されて取り出されるが、コア−6はアンダ−カット(3−2)を有し、はづさなければ、成形品(エルボ−)は取り出すことは出来ない、そこで考案された事項を説明する。(図4)に示す如く、先ずエルボ−横方向コア−5を傾斜ピン又はエア−シリンダ−等にて抜くと縦方向のコア−6,7との当たり面4の部分はフリ−となりコア−6は下部のスプリング(6−2)により、必要な隙間(6−1)だけ上方に動き成形品との間に隙間(6−1)に相当する隙間が出来る、この状態で(図4)に示されているように押出板に保持されているスリ−ブエジェクタ−ピン8、可動コア−6は一緒に適当な距離だけ上昇させる、固定コア−7コア−押え板25に固定されているので可動しない、従って成形品は全くフリ−な状態になる。
【0008】
この状態(図4)でエア−通路(9−1)(9−2)を通り送られてくるエア−通路の隙間(9−3)(エア−は通るが溶融原料は入らない隙間)及びエア−通路(9−4)(9−5)を通り送られてくるエア−孔(9−7)より噴出させて成形品をGを中心として回転(矢印O)及び外方(図面では上方向矢印P))に押出してアンダカットをはづす方法で内面内側にRのついたエルボ−成形品を得ることが出来るし、落下するので無人自動運転が出来る。
更にエア−又は油圧シリンダ−等を設置し押出されて全くフリ−となった成形品の第2スプル−、ランナ−、又は成形品をN方向(実際には下方向)に押すことによってアンダ−カットのはづしは更に確実になる、又自動運転確実性は向上する。
尚省エネのため挿入するパイプ(15−1)の端面は内面テ−パ−30°以内に削る(この角度以内の縮小、拡大は無視できると水力学の本に記載されている)、外面エッジは糸面取りとし、当たり面(15−2)は出来るだけ薄くする(0.5mm程度)とする。
【実施例】
【0009】
エルボ−について実際に金型を作り成形実施しアンダ−カットをはづし成形品は自動落下確認と別に装置を作り省エネデ−タ−も得ている。
【産業上の利用の可能性】
【0010】
上記のとおり実施確認により、更に分岐管の内面内側にRをつける改良、家庭内ピプ(VP13)、本管パイプ(VP100)内面の凹凸をなくし、鏡面光沢のパイプを作り、新設又は改造の家屋120万軒に適用すれば計算値であるが180万KW/day以上、石炭火力発電で換算すれば炭酸ガス555ton/年以上の効果を得るものである。
省エネの叫ばれる今日規制をかけてでも実施すべき事項と考えています。
【図面の簡単な説明】
【0011】
各図面は一例としてエルボ−成形品とその成形法をもって示す。(本金型構造は他にも適用可能であるため)
【図1】(1)現在使用されているJISに規定のエルボ−断面図でパイプ挿入ストッパ−(3−1)付き、且つ内面内側全周のものを示す。(2)は改良したものを示し、内面内側R付き、且つストッパ−は内面外周半分とする。
【図2】金型可動側断面図を示す。溶融原料の射出後固化状態を示す。
【図3】金型固定側断面図を示し、溶融原料がキャビテ−に入る通路、及びパ−テイングライン(PL)(A−B−C−D−E)を示す。
【図4】可動側断面図で成形品が押出された状態を示す。また可動側コア−6,7が分割コア−を示し、アンタ−カットR部分(3−2)が分割されたコア−6にはりついていることを示す。
【符号の説明】
【0012】
1−1.内面内側がRとなっているキャビテ−(成形品面)断面形状(図1)(2)
1−2.内面内側がRとなっているキャビテ−(成形品面)正面形状(図3)
1−3.内面内側がRとなっているキャビテ−(成形品面)側面形状(図3)
2. パイプ挿入ストッパ−の段差(図2)
3−1.現在使用中パイプ挿入ストッパ−段差の形状(図1)(1)
3−2.内面内側のR(図1、2)
4. 横方向スライドコア−5と垂直コア−6,7との押切り面)(図2)
5. 横方向スライドコア−5の形状(図2,4)
6. 分割コア−(押出しスリ−ブエジェクタ−ピンと一緒に動く)(図2、4)
6−1.分割コア−6の可動隙間(図2)
6−2.分割コア−6を押上げるスプリング(図2,4)
7. 分割コア−(コア−押え板に固定)(図2,4)
9−1.エア−通路孔(図2,4)
9−2.エア−通路溝
9−3.エア−噴出孔
9−4.エア−通路溝(9−2)に繋がるエア−通路孔
9−5.エア−通路孔(9−4)に繋がるエア−通路孔
9−6.エア−通路孔(9−5)のエア−孔栓
9−7.エア−噴出孔
10−1.第1スプル−(図3)
10−2.ランナ−(図3)
10−3.第2スプル−(図3)
10−4.第2ランナ−、ゲート(図3)
15−1 挿入するパイプ本体(図4)
15−2 挿入するパイプの当たり面
15−3 挿入するパイプの内面テエパ−
20 固定側金型取付板(図3)
21 固定側ランナ−ピン固定板(図3)
22 ランナ−ストリッパ−
25 コア−ピン押え板(図2,4)
26 押出板後板
27 押出板前板
A−B−C−D−E (図3)パ−テイングライン(PL)
E. 横方向スライドコア−センタ−
G−H.スリ−ブエジェクタ−と成形品との境界線(図2,4)
N. 第2スプル−、ランナ−、成形品等を押す矢印(図2,4)
O. 成形品回転の矢印
P. 成形品を押出す方向の矢印(図2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(図1)(1)項に示す如くエルボ−内面内側全周のパイプ挿入ストッパ−(3−1)部分を(図1)(2)項に示すようにR(3−2)を付け、ストッパ−の段差2は非常に低く且つ内面外側半分のみの構造とする。
【請求項2】
(請求項1)の成形品の成形方法として射出成形機を用い射出、冷却固化完了後スリ−ブ押出し、スリ−ブと同時に分割されたコア−6を(図4)に示すように適当な距離押出し、ス−リブとコア−の隙間(9−3)よりエア−を噴出し成形品の内面内側R部分を回転方向Oに押し,更に傾斜孔(9−7)より出るエア−で成形品を外方向Nに押す事によりアンダ−カットR(3−2)を回転、と外方に移動させてはづす方法。
【請求項3】
アンダタ−カット(3−2)を確実にはづすため(図3)に示す如く第2スプル−、ランナ−、成形品の部分を金型の上面に設置されたエア−シリンダ−のロッド、又はそれに設置された部品等によって押し、エア−も併用する、或いはロッド及びロッドの付属品等にてスプル−、ランナ−を挟み成形品を強制的に移動させ落下させる方法。
【請求項4】
コア−を数部分に分割し(この場合は2個、6,7)、その1個または数個にアンダ−カット部分を設け、そのアンダ−カットを設けたコア−6の底部にスプリング(6−2)を設けて成形品が移動できる隙間(6−1)を設置する金型構造

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−149044(P2009−149044A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341831(P2007−341831)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(508024049)株式会社タミーマシナリー (1)
【出願人】(502321386)
【Fターム(参考)】