円筒体の形状測定方法および同装置
【課題】測定装置の複雑化を招くことなく、形状測定の信頼性を確保することができる円筒体の形状測定方法を提供する。
【解決手段】円筒体90の両側端部近傍の内周面92に一対の基準部20,20を当接させたまま円筒体90を回転させ、円筒体90の外側から基準部20,20に対峙する位置31,31において、円筒体90の回転に伴う前記円筒体90の外周面91の半径方向の変位量を変位検出器によって検出する。一方、形状測定されるべき円筒体90が存在しないときに、この円筒体90の変位量測定を行う変位検出器を用いて基準部20,20の回転に伴う変位量検出を行い、この一対の基準部20,20の変位量に応じて、円筒体90の変位量検出を補正する。
【解決手段】円筒体90の両側端部近傍の内周面92に一対の基準部20,20を当接させたまま円筒体90を回転させ、円筒体90の外側から基準部20,20に対峙する位置31,31において、円筒体90の回転に伴う前記円筒体90の外周面91の半径方向の変位量を変位検出器によって検出する。一方、形状測定されるべき円筒体90が存在しないときに、この円筒体90の変位量測定を行う変位検出器を用いて基準部20,20の回転に伴う変位量検出を行い、この一対の基準部20,20の変位量に応じて、円筒体90の変位量検出を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば複写機の感光ドラム用の基体等の円筒体の形状測定装置および同方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機械装置において回転部品等として使用される円筒体には、その形状精度を測定することが求められる。たとえば、複写機等の電子写真システムに用いられる感光ドラム用の基体や素管では、高い形状精度を確保するため、製管工程後の円筒体に対して形状測定が行われている。
【0003】
このような円筒体の形状測定方法として、本発明者は、下記特許文献1に示すように、円筒体の内周面に基準部を接触させて円筒体を回転させ、このときの円筒体外周面の変位量を測定することにより、円筒体の内周面を基準とした外周面のフレ量を測定する方法を提案してきた。
【特許文献1】特開2004−101465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような形状測定では、測定結果の信頼性を確保するため、基準部の位置精度が求められる。ところが、形状測定の基準となる基準部は円筒体の内側に挿入されるものであるから、大きく構成することでその剛性を高めることは困難である。また、基準部の支持機構によって位置精度を高めようとすれば装置の複雑化を招いてしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、装置の複雑化を招くことなく、形状測定の信頼性を確保することができる円筒体の形状測定方法および同装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]円筒体の両側端部近傍の内周面に一対の基準部を当接させ、
前記一対の基準部の位置を固定した状態で、前記円筒体と前記一対の基準部との当接部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させ、
前記円筒体の外側から前記一対の基準部に対峙する位置において、前記円筒体の回転に伴う前記円筒体の外周面の半径方向の変位量を、変位検出器によって検出するとともに、
前記円筒体が前記一対の基準部に当接する位置に存在しないときに、前記一対の基準部を回転させながらその回転に伴う変位量を前記変位検出器によって検出し、
この一対の基準部の変位量に基づいて、検出される前記円筒体の変位量を補正することを特徴とする円筒体の形状測定方法。
【0007】
[2]前記円筒体の内周面と前記一対の基準部とが当接する2つの当接部分を通る仮想的な直線に対し、前記円筒体の外側から対峙する位置であって、前記一対の基準部には対峙しない位置においても、前記円筒体の回転に伴う前記円筒体の外周面の半径方向の変位量の検出を行い、
こうして検出される前記一対の基準部には対峙しない位置における前記円筒体の変位量についても、一対の基準部の変位量に基づいて補正する前項1に記載の円筒体の形状測定方法。
【0008】
前記一対の基準部には対峙しない位置における前記円筒体の変位量の補正は、各基準部の[3]変位量と、各基準部との距離に基づいて行う前項2に記載の円筒体の形状測定方法。
【0009】
[4]前記円筒体の変位量の補正は、前記円筒体の回転位相と前記一対の基準部の回転位相とを対応させて行う前項1〜3のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0010】
[5]前記変位検出器は、所定の検出幅を有し、
前記一対の基準部の変位量検出では、回転する基準部の各時点における最外径部を基準部の位置として検出する前項1〜4のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0011】
[6]前記一対の基準部の変位量検出は、段取り替え直後に行う前項1〜5のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0012】
[7]前記一対の基準部の位置検出は、円筒体の変位量検出における異常な結果の頻度に応じて行う請求項1〜6のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0013】
[8]前記一対の基準部の変位量検出は、円筒体の変位量検出と同じ動作を、円筒体を投入しないで行う前項1〜7のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0014】
[9]前記変位検出器として、光透過型検出器を用いる前項1〜8のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0015】
[10]前記変位検出器として、接触型変位計を用いる前項1〜8のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0016】
[11]前記円筒体は感光ドラム用基体であることを特徴とする前項1〜10のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0017】
[12]円筒体を成形し、
前項1〜11のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法により、円筒体の形状を測定し、
この測定結果に基づいて、前記円筒体の形状が予め設定された所定の許容範囲内にあるか否かを判定し、
この検査結果において前記円筒体の形状が前記所定の許容範囲内にある場合には、その円筒体を完成品と判定することを特徴とする円筒体の製造方法。
【0018】
[13]前項12に記載の円筒体の製造方法によって製造された感光ドラム用基体。
【0019】
[14]円筒体の両側端部近傍の内周面に当接する一対の基準部と、
前記一対の基準部との当接部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させる回転駆動手段と、
前記円筒体の外側から前記一対の基準部に対峙する位置において、前記円筒体の回転に伴う前記円筒体の外周面の半径方向の変位量を検出する一方、前記一対の基準部に当接する位置に円筒体が存在しないときに、前記一対の基準部を回転させながらその回転に伴う変位量を検出する変位検出器と、
前記一対の基準部の変位量に基づいて、検出される前記円筒体の変位量を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする円筒体の形状測定装置。
【0020】
[15]円筒体を成形する製管装置と、
前項14に記載の円筒体の形状測定装置と、
前記変位検出器によって検出された前記変位量に基づいて、前記円筒体の形状が予め設定された所定の許容範囲内にあるか否かを検査し、前記円筒体の形状が前記所定の許容範囲内にある場合には、その円筒体を完成品と判定する合否判定手段と、
を備えたことを特徴とする円筒体の製造システム。
【発明の効果】
【0021】
上記発明[1]によると、一対の基準部の変位量に応じて、検出される円筒体の変位量が補正されるため、形状測定の基準とする一対の基準部に回転に伴う変位があっても、この変位による影響を排除して、信頼性の高い形状測定を行うことができる。また、一対の基準部の変位量の検出は、円筒体の変位量測定を行う変位検出器を用いて、形状測定されるべき円筒体が存在しないときに行うため、装置の複雑化を招くこともない。
【0022】
上記発明[2]によると、基準部には対峙しない位置においても円筒体の外周面の変位量の検出を行うため、円筒体の内周面を基準とした外周面のフレ、すなわち円筒体の偏肉の影響が加味された外周面のフレを、一対の基準部における回転に伴う変位の影響を排除して検出することができる。
【0023】
上記発明[3]によると、円筒体の変位量の補正を基準部との距離に応じて行うため、距離によって変化する基準部の変位量の影響に対応して、より正確に円筒体の変位量を得ることができる。
【0024】
上記発明[4]によると、円筒体の変位量の補正を一対の基準部の回転位相と対応させて行うため、回転位相毎に変化する一対の基準部の変位量に対応して、より正確に円筒体の変位量を得ることができる。
【0025】
上記発明[5]によると、回転する基準部の各時点における最外径部の位置を検出するため、基準部の回転軸が傾いている等の原因で、円筒体の内周面に接触する基準部の最外径部が軸方向位置によって異なってしまっている場合であっても、これを的確に検出することができる。
【0026】
上記発明[6]によると、基準部の変位量検出を段取り替え直後に行うため、段取り替えによって発生した設備の変化に速やかに対応して、信頼性の高い形状測定を行うことができる。
【0027】
上記発明[7]によると、円筒体の変位量検出における異常検出の頻度に応じて基準部の位置検出が行われるため、異常な結果の頻発の原因が、円筒体自体にあるのか、あるいは形状測定装置の側の不具合であるのかを確認することができ、形状測定装置側の不具合であれば速やかに対応して、信頼性に乏しい測定が継続することを未然に防止することができる。また円筒体側に問題がある場合、たとえば上流側の円筒体の製管工程のトラブルを推測して早期の対応を図ることができる。
【0028】
上記発明[8]によると、基準部の変位量検出を円筒体の変位量検出と同じ動作の中で行うため、被検査対象の円筒体を実際に投入したときに基準部に発生するであろう外乱等をより確実に検出することができる。
【0029】
上記発明[9]によると、ため光透過型検出器を用いるため、被検査対象の円筒体に接触によるキズや変形を与えることなく計測を行うことができる。
【0030】
上記発明[10]によると、接触型変位計を用いるため、、光透過型センサ等では検出が難しい凸形状や光が透過してしまうような異物付着状態も確実に検出することができる。
【0031】
上記発明[11]によると、感光ドラム用基体に求められる形状精度を評価して、好適な感光用ドラム基体の生産に寄与することができる。
【0032】
上記発明[12]によると、成形した円筒体の形状精度を高い精度で確実に検査して、高精度な円筒体を製造することができる。
【0033】
上記発明[13]によると、高い形状精度を確実に確保することができる。
【0034】
上記発明[14]によると、一対の基準部の変位量に応じて、検出される円筒体の変位量が補正されるため、形状測定の基準とする一対の基準部に回転に伴う変位があっても、この変位による影響を排除して、信頼性の高い形状測定を行うことができる。また、一対の基準部の変位量の検出は、円筒体の変位量測定を行う変位検出器を用いて、形状測定されるべき円筒体が存在しないときに行うため、装置の複雑化を招くこともない。
【0035】
上記発明[15]によると、成形した円筒体の形状精度を高い精度で確実に検査して、高精度な円筒体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について、模式的な説明図を参照しながら説明する。
【0037】
図1は、この第1実施形態にかかる形状測定装置の検査対象物とされる円筒体(管体)の斜視図である。
【0038】
同図に示すように、円筒体90は、その両端にフランジ部材93等を挿入することで内周面92において回転支持され、その外周面91が所定の機能のために利用される。このため、形状測定装置は、このような円筒体90を回転させた際の外周面91の変位、すなわち回転フレ量を計測し、検査するようになっている。
【0039】
このような円筒体90の用途としては、たとえば電子写真システムを構成する複写機、プリンタ、FAX装置、これらの複合機等において、感光ドラム、転写ローラ、現像ローラ等を挙げることができる。具体的には、電子写真システムを採用した複写機やプリンタ等における感光ドラム用の素管や基体に好適である。感光ドラム用の基体とは、切削加工や引抜き加工等が行われた後の円筒体であって、感光層の形成前の円筒体をいう。また、感光ドラム用基体に感光層を形成した後の円筒体も、本発明の検査対象としての円筒体となる。感光ドラム用基体外周面は、金属光沢を有し、入射した光のほとんどを正反射する鏡面となっている。
【0040】
この円筒体検査装置の検査対象物とされる感光ドラム用基体は、たとえば直径が10〜60mm、長さ200〜500mm程度のものである。
【0041】
このような円筒体90の製造方法としては、後述するように、押出成形および引き抜き成形の組み合わせを挙げることができる。ただし、これに限定されるものではなく、押出成形、引き抜き成形、鋳造、鍛造、射出成形、切削加工またはこれらの組み合わせなど、円筒体90を製管できる方法であればよい。
【0042】
また、対象とする円筒体90の材質は特に限定されるものでなく、各種の金属材料の他、合成樹脂等を適用することができる。たとえば、アルミニウムおよびアルミニウム合金(1000〜7000系)、銅および銅合金、鋼材、マグネシウムおよびマグネシウム合金を挙げることができる。
【0043】
特に好ましい材質の例として、アルミニウム合金の3003合金、6061合金、6051合金および7075合金を挙げることができる。たとえば3003合金は好ましくは感光ドラム用基体として用いることができ、6061合金は好ましくは自動車部品であるプロペラシャフトとして用いることができ、6051合金は好ましくは一般機械部品として用いることができ、7075合金は好ましくはバット用素管として用いることができる。なお、本明細書中の「アルミニウム」はアルミニウム合金を含むものである。
【0044】
図2は、第1実施形態にかかる円筒体の形状測定装置の全体斜視概略図である。図3は、同装置における円筒体の支持構造の拡大斜視図である。図4は、同装置における円筒体支持構造の拡大断面図である。
【0045】
同図に示すように、この形状測定装置10は、円筒体90の内周面92に当接する基準ローラ20,20と、円筒体90の外周面91の回転に伴う変位量を検出する変位検出器30…と、円筒体90を支持する支持ローラ40…と、円筒体90を搬入・搬出する円筒体搬送装置50と、各部の動作を制御するコントローラ60と、を備えている。
【0046】
一対の基準ローラ20,20は、円筒体90の両端近傍の内周面92に当接し、形状測定の基準となる一対の基準部として機能するものである。
【0047】
一対の基準ローラ20,20は、円筒体90が使用時に挿入されるフランジ等によって回転支持される部位(支持予定位置)で円筒体90の内周面92と当接するようになっている。これにより、実際の使用時と同様の条件で形状測定を行いうるようになっている。
【0048】
一対の基準ローラ20,20は、その支持軸21,21が出没駆動部22,22によって円筒体90の軸方向に移動動作できるようになっており、円筒体90を搬入出する際には、円筒体90の軸方向外側に退避できるようになっている。
【0049】
また一対の基準ローラ20,20の支持軸21,21は不図示のベアリング等により回転可能に支持され、駆動モータ23、23によって回転駆動されるようになっており、これにより当接している円筒体90を回転駆動できるようになっている。この駆動モータ23,23は、円筒体90を回転駆動する回転駆動手段として機能する。
【0050】
この基準ローラ20,20は、円筒体90の形状測定の基準とするものであるからその位置精度は高いことが好ましいが、現実には多少の回転に伴う変位が含まれうる。この実施形態では、この一対の基準ローラ20,20に含まれる回転に伴う変位量の影響を排除するようになっている。
【0051】
支持ローラ40…は、円筒体90をその両端部で下側から支持するものであり、円筒体90の両側に2つずつ配置されている。
【0052】
各支持ローラ40…は、一対の基準部20,20より軸方向外側に配置され、一対の基準ローラ20,20が当接している断面の変位量の検出を妨げないようになっている。
【0053】
各支持ローラ40…は、円筒体90の外周面91に接触して円筒体90を支持する小径部41と、円筒体90の軸方向端面に当接して円筒体90の軸方向の位置決めを行う大径部42…とを備えている。
【0054】
支持ローラ40…は、円筒体90の両側のそれぞれにおいて、昇降部材43,43に取り付けられ、昇降駆動源46によって昇降駆動可能となっている。これにより支持ローラ40は、支持ローラ40上に支持された円筒体90をその内周面が一対の基準部20,20に当接する測定位置まで持ち上げ、さらに所定の押圧力で一対の基準ローラ20,20に押し付けることができるようになっている。
【0055】
変位検出器30…は、円筒体90の外周面91の半径方向の変位量を検出するものである。
【0056】
この実施形態では、各変位検出器30…は、光透過型の検出器として構成され、光照射部と受光部とが一組となって円筒体90を挟み込むように配置されている。そして、光照射部から照射された光(たとえばレーザ光)のうち円筒体90によって遮られず透過した光を受光部によって検出することによって、円筒体90の外周面91の表面位置を検出するようになっている。このように変位検出器30…が光透過型の検出器から構成されているため、円筒体90の外表面に損傷を与えることがない。
【0057】
図5(a)は、円筒体の外周面の変位量が検出される領域を示す正面断面説明図、図5(b)は円筒体が存在しない場合を示す正面断面説明図である。
【0058】
同図(a),(b)に示すように、この実施形態では、変位検出器30…は、円筒体90の軸方向位置の異なる5箇所に設けられている。
【0059】
外側の2つの変位検出器30,30は、円筒体90の外側から一対の基準部20,20に対峙する位置31,31を、変位量の検出位置とするように配置されている。これらの位置31,31では、内周面92が基準部20,20と当接した状態で外周面91の位置が検出されるため、円筒体90の肉厚を計測することができる。
【0060】
一方、中央の3つの変位検出器30…は、一対の基準部20,20に対峙する位置31,31以外の位置32…を変位量の検出位置とするように配置されている。この位置32…は、円筒体90の内周面92と一対の基準ローラ20,20との2つの当接部分P,Pを通る仮想的な直線Lに対し、円筒体90の外側から対峙する位置である。これらの検出位置32…では、円筒体10の内周面92を基準とした外周面91のフレを検出することができる。
【0061】
各変位検出器30…の検出領域33…は、円筒体90の直径を超える長さを有しており、各変位検出器30は、円筒体90の外周面91の一箇所の変位量だけではなく、それに対向する位置(円筒体90の周方向について半周分異なる位置、180度回転した位置、あるいは逆位相位置)の変位量も同時に検出できるようになっている。これにより、互いに対向する位置において検出される変位量を組み合わせることにより、これら2つの位置を通る円筒体90の直径を求めることができ、より具体的に円筒体90の形状を把握することができるようになっている。
【0062】
また、この実施形態では、一対の基準ローラ20,20に対峙する位置31,31を検出位置とする外側の2つの変位検出器30,30は、一対の基準ローラ20,20に当接する位置に円筒体90が存在しないとき、基準ローラ20,20の位置を検出するようになっている。ここの検出において基準ローラ20の位置とは、円筒体90がセットされていれば、円筒体90の内周面92と当接する部位の高さ位置である。この実施形態では、基準ローラ20,20の位置検出は、基準ローラ20,20を回転させながら所定時間継続して行い、回転に伴う変位量が検出されるようになっている。
【0063】
また、この外側の2つの変位検出器30,30の検出領域33,33の幅(検出幅)は、基準ローラ20,20よりも大きく設定されており、回転する基準ローラ20,20の各時点における最大径部を各時点における基準ローラ20,20の位置として検出するようになっている。
【0064】
図6は、基準ローラが傾いて取り付けられた場合の位置検出例である。基準ローラ20が回転軸21に対して傾いて取り付けられた状態になった場合、同図(a)に実線および破線で示すように、基準ローラ20は回転するときうねるように姿勢が変化する。このような基準ローラ20を用いて円筒体90の形状測定をすれば、円筒体90の内周面92の高さ位置は基準ローラ20の最も回転軸21から離れた部位(最大径部)によって決定されることになる。このような場合、基準ローラ20の特定の軸方向位置の変位量のみが検出される比較的幅の狭いを検出領域34を設定すると、同図(b)に示すように、その基準ローラ20の位置の変位量は実際の最大径部より小さく検出されてしまう可能性がある。これに対し、基準ローラ20よりも広い検出幅の検出領域33を設定すれば、同図(c)に示すように基準ローラ20の最大径部を確実に検出することができる。
【0065】
図7は、基準ローラに異物が付着している場合の位置検出例である。同図(a)に示すように、異物29が付着している基準ローラ20を用いて円筒体90の形状測定をすれば、円筒体90の内周面92の高さ位置は異物29が挟まるときに外側に押し出されるように変位することになる。このような場合、基準ローラ20の特定の軸方向位置の変位量のみが検出される比較的幅の狭いを検出領域34を設定すると、検出領域34の軸方向位置が異物29とずれているため、同図(b)に示すように、異物29の影響を検出できない可能性がある。これに対し、基準ローラ20よりも広い検出幅の検出領域33を設定すれば、同図(c)に示すように異物29の影響を確実に検出することができる。
【0066】
この実施形態では、後述するように、こうして測定される基準ローラ20,20の変位量に応じて、円筒体90の変位量の補正が行われることになる。
【0067】
図8は、円筒体搬送装置の平面説明図である。図9は、円筒体搬送装置の側面説明図である。
【0068】
円筒体搬送装置50は、この形状測定装置10に供給される円筒体90を、所定の搬入位置50Aから、形状測定が行われる支持ローラ40上まで搬送する第1搬送装置51と、形状測定を終えた円筒体90を支持ローラ40上から所定の搬出位置50Bまで搬送する第2搬送装置52とを備えている。
【0069】
第1搬送装置51および第2搬送装置52は、いずれも、円筒体90をピックアップする搬送アーム53、53と、搬送アーム53,53の先端に形成されたピックアップ突起54,54と、搬送アーム53,53を円筒体90の軸方向に移動させてピックアップ突起54,54を円筒体90内に両側から挿し込むスライド駆動源55,55と、円筒体10をピックアップした搬送アーム53,53を移動させる移動レール56,56とを備えている。
【0070】
コントローラ(制御手段)60は、形状測定装置10の各動作部を統括的に制御するものであり、たとえばCPUやメモリ等を備えたコンピュータからなるシーケンサ等で構成されている。
【0071】
図10は、この形状測定装置の機能ブロック図である。
【0072】
同図に示すように、コントローラ(制御手段)60は、機能的に、円筒体形状測定手段61と、許容範囲記憶手段62と、合否判定手段63と、基準ローラ測定要否判断手段64と、基準ローラ測定手段65と、変位量補正手段66と、を備えている。
【0073】
円筒体形状測定手段61は、この形状測定装置10が備える各動作部を制御して、搬入される円筒体90について、偏肉状態を示す肉厚分布や内周面92を基準とした外周面91の変位量(内径フレ)を測定するものである。なおこうして測定される円筒体90の変位量は、基準ローラ20,20の回転に伴う変位量の影響が含まれているものである。
【0074】
許容範囲記憶手段62は、円筒体90の外周面91の変位量(フレ量)について予め設定されたの許容範囲を記憶するものである。
【0075】
合否判定手段63は、形状測定された円筒体90の変位量が許容範囲内にあるか否かによって、各円筒体90を合否判定するものである。なお合否判定手段63の判定対象となるのは、後述する補正が行われた円筒体90の変位量である。
【0076】
基準ローラ測定要否判断手段64は、基準ローラ20の位置検出(変位量測定)の要否を判断するものである。基準ローラ20の位置検出を行うのは、原則として、基準ローラ20の状態が変化した可能性のある場合である。
【0077】
このような基準ローラ20の位置検出は、たとえば、形状測定装置を起動したとき、測定対象の円筒体90の種類を切り替えるため段取り替えをしたとき等を挙げることができる。このような場合に基準ローラ20の位置検出を行うことで、段取り替え等によって発生した設備の不具合を早期に発見することができる。
【0078】
また基準ローラ20の位置検出は、円筒体90の形状測定において異常な結果の頻度が高いときにも行われる。このようにすると、異常な結果の頻発の原因が、円筒体90にあるのか、あるいは形状測定装置10の側の不具合であるのかを確認することができ、形状測定装置10側の不具合であれば速やかに対応することができる。また円筒体90側に問題がある場合、たとえば上流側の円筒体90の製管工程のトラブルを推測して早期の対応を図ることができる。
【0079】
また複数の円筒体90に対する形状測定を実行中に、所定の間隔で、基準ローラ20の位置検出を断続的に行うようにしてもよい。具体的には、所定本数の円筒体90の測定が完了するたびに行ったり、あるいは円筒体90を切り替える度に毎回行ってもよい。このようにすると、量産稼働中における各種のトラブルを早期に発見することができる。
【0080】
また、基準ローラ20の位置検出は、円筒体の搬出入動作中に行うことが望ましい。このようにすると、基準ローラ20の位置検出のためにタクトタイムが延びることを防止することができる。
【0081】
基準ローラ測定手段65は、円筒体90がセットされていないときに、基準ローラ20を回転させ、その回転位相毎に基準ローラ20の円筒体90と当接する部位の位置(変位量)を測定するものである。こうして測定される基準ローラ20,20の変位量は、円筒体90の外周面91の変位量の補正に用いられる。
【0082】
変位量補正手段66は、基準ローラ20の変位量に基づいて、検出された円筒体90の外周面91の変位量を補正する。
【0083】
次に、この形状測定装置10における形状測定の手順について説明する。
【0084】
図11は、この形状測定装置における形状測定の手順を示すフローチャートである。
【0085】
このフローチャートに示す各手順は、コントローラ60の制御により各動作部が適時動作することによって実行される。
【0086】
同図に示すように、この形状測定装置10では、測定対象物である円筒体(ワーク)90の形状測定に先立って、形状測定の基準となる基準ローラ20,20の状態が測定される。
【0087】
この基準ローラ20,20の測定は、後述する円筒体90に対する形状測定と同様の手順で行われる。具体的には、基準ローラ20,20に当接する位置に円筒体90が存在しない状態において、まず円筒体90の内側に挿入するように、基準ローラ20を内側位置に移動させて(ステップS10)、基準ローラ20を回転させ(ステップS11)、この回転に伴う基準ローラ20の最大径部の位置の変位量を検出する(ステップS12)。この変位量は、基準ローラ20,20の回転位相毎に連続的に検出するようになっている。
【0088】
図12は、基準ローラの回転に伴う変位量の検出結果の例である。同図(a)、(b)はそれぞれ左右の基準ローラ20,20の変位量を示している。この例では、同図(a)に示す左側の基準ローラ20は回転に伴う変位がなく理想的な状態である。同図(b)に示す右側の基準ローラ20に異物が付着し、回転位相が300度の辺りでその位置が外側に膨らんでいる。
【0089】
こうして基準ローラ20,20の回転に伴う変位量が検出されれば、このような変位量が円筒体90の形状測定に及ぼす影響を算出する(ステップS13)。円筒体90の形状測定結果から、この基準ローラ20,20の変位量の影響を除けば、円筒体90自体の形状に基づく測定結果が得られる。このため、基準ローラ20,20の変位量の影響は、円筒体90の形状測定結果に対する補正量として用いられるものである。
【0090】
図13は、基準ローラの回転に伴う変位量から算出した補正量の例である。同図(a)、(b)はそれぞれ左右の基準ローラ20,20に対峙する位置における補正量、同図(c)は左右の基準ローラ20,20から等距離にある軸方向中央位置における補正量を表している。同図の横軸は、円筒体の回転位相で表現している。
【0091】
基準ローラ20,20と円筒体90とは直径が異なるため、両者が滑りなく転がり接触してもその回転位相はずれる。この例では、円筒体90の内周面92の周長が基準ローラ20,20の外周長の2倍である場合、すなわち、円筒体90が1回転する間に基準ローラ20,20はそれぞれちょうど2回転する場合を想定している。
【0092】
図13(a)(b)に示す左右の基準ローラ20,20に対峙する位置では、円筒体90の外周面91の変位量を測定する際、基準ローラ20,20の変位量の影響がそのまま表れる。このため、図13(a)に示すように、回転に伴う変位のない左側の基準ローラ20(図12(a))に対峙する位置では、基準ローラ20の影響はない。これに対し、図13(b)に示すように、異物の付着した右側の基準ローラ20(図12(b))に対峙する位置では、円筒体90が1回転する間に、基準ローラ20に付着した異物による変位が2回現れている。
【0093】
一方、基準ローラ20,20に対峙していない位置では、左右の基準ローラ20,20の変位量の影響を、各基準ローラ20,20からの距離に応じて受けることになる。この影響の程度は、各基準ローラ20,20の回転位相毎に、各基準ローラ20,20の変位量を比例配分した変位量となる。具体的に、図13(c)に示すように、軸方向位置が左右の基準ローラ20,20から等距離であれば、左右の基準ローラ20,20の1/2の変位量の影響を受けることになる。この図13(c)では、左側の基準ローラ20に変位はなく、右側の基準ローラ20にのみ異物による変位があるため、図13(b)に示す補正量の半分の補正量が求められている。
【0094】
このような補正量は、変位検出器30…によって円筒体90の外周面91の変位量が求められる各軸方向位置毎に算出される。
【0095】
なお検出された基準ローラ20の変位量が所定の許容範囲より大きい場合には、補正を行っても適切な円筒体(ワーク)90の形状測定を継続することができないため、オペレータ等にその旨を報知して形状測定を中止することが望ましい。
【0096】
また補正量を算出するために基準ローラ20,20を測定する一連の処理(ステップS10〜S13)は、基準ローラ測定要否判断手段64によってその要否が判断され、たとえば状態の変わらない前日の算出結果が流用できる場合等であればスキップしてもよい。
【0097】
こうして基準ローラ20の変位量に基づく補正量が求められれば、測定対象物である円筒体(ワーク)90の形状測定を開始する。
【0098】
この円筒体90の形状測定は、まず第1搬送装置51により、搬入位置50Aにおかれた円筒体90を支持ローラ40…上の測定位置に搬入する(ステップS14)。この搬入動作は、搬入位置50Aに移動させた搬送アーム53、53の間隔を狭めることで円筒体90をピックアップし、この状態で移動レール56、56によって搬送アーム53、53を支持ローラ40…上の測定位置まで移動させることにより行う。なお、この円筒体90の搬入時には、搬入される円筒体90が基準ローラ20,20と干渉することを防止するため、一対の基準ローラ20,20は両外側に退避させておく。
【0099】
円筒体90が支持ローラ40…上に載置されれば、一対の基準ローラ20,20を円筒体90の内側に挿入する(ステップS15)。そして、この状態で支持ローラ40…とともに円筒体90を持ち上げて、円筒体90の内周面92を一対の基準ローラ20,20に当接させ、さらに所定の押圧力で円筒体90を一対の基準ローラ20,20に押し付ける(ステップS16)。
【0100】
こうして円筒体90の内周面92基準ローラ20,20に押し付けられた状態となれば、基準ローラ20,20を回転駆動して円筒体90を回転させ(ステップS17)、円筒体90が回転している状態で、各変位検出器30…により、円筒体90の各軸方向断面における外周面91の半径方向の変位量を検出する(ステップS18)。この変位量の検出は円筒体90を一回転以上させて、円筒体90の全周について行われる。
【0101】
図14は、円筒体の外周面の回転に伴う変位量を測定した例である。同図(a)、(b)はそれぞれ左右の基準ローラ20,20に対峙する位置における変位量、同図(c)は左右の基準ローラ20,20から等距離にある軸方向中央位置における変位量を表している。同図の横軸は、円筒体90の回転位相で表現している。
【0102】
円筒体90の変位量が検出されれば、検出された円筒体90に変位量を、先に算出した基準ローラ20,20の変位量に基づいて算出された補正量を用いて補正する(ステップ19)。なお、この補正は、後続の円筒体90を搬出する一連の手順(ステップS20〜S22)と並行して行うようにしてもよい。
【0103】
図15は、測定された円筒体の外周面の変位量を補正した例である。同図(a)、(b)はそれぞれ左右の基準ローラ20,20に対峙する位置における変位量、同図(c)は左右の基準ローラ20,20から等距離にある軸方向中央位置における変位量を表している。同図の横軸は、円筒体90の回転位相で表現している。
【0104】
この測定された円筒体90の外周面91の変位量の補正は、円筒体90の測定結果(図14)から、先に算出した補正量(図13)を、各軸方向位置毎に、また各回転位相毎に減算することによって行われる。この例では、右側の基準ローラ20に異物が付着したが、円筒体90の測定結果(図14)には、その影響の変位量の局所的な変化が見られるが、補正後の結果(図15)では、その影響が排除されている。このため、実際の円筒体90自身の形状を正確に把握することができる。
【0105】
なお上記図12〜図15の例では、基準ローラ20に異物が付着した場合を例として説明したが、基準ローラ20,20の一方または両方に、偏心、軸ずれ、欠け等の凹みなど種々の原因による影響の場合も同様にして、円筒体90の変位量を補正することができる。
【0106】
また、具体的な補正の計算方法も上記に限定されることなく、基準ローラ20,20の変位量の影響を適切にうち消すことができる補正であれば、任意の方法を採用することができる。
【0107】
円筒体90の変位量の検出が完了すれば、支持ローラ40を下降させて円筒体90を開放し(ステップS20)、基準ローラ20,20を外側に退避させて(ステップS21)、円筒体90を第2搬送装置52によって搬出する(ステップS22)。この搬出動作は、上述した搬入動作と同様に、搬送アーム53、53の間隔を狭めることで円筒体90をピックアップし、この状態で移動レール56、56によって搬送アーム53、53を搬出位置50Bまで移動させることにより行う。
【0108】
こうして1本の円筒体90の形状測定が完了するが、継続して次の円筒体90の形状測定を行うならば、ステップS14から繰り返せばよい。
【0109】
また、円筒体90の形状測定を行った結果によって、たとえば異常な結果の頻度が高い場合等には、基準ローラ測定要否判断手段64の判断により、補正量を算出するために基準ローラ20,20を測定する一連の処理(ステップS10〜S13)を再度行うようにしてもよい。
【0110】
以上のように本実施形態にかかる円筒体の形状測定装置10によると、一対の基準ローラ20,20の変位量に応じて、検出される円筒体90の変位量が補正されるため、形状測定の基準とする一対の基準ローラ20,20に回転に伴う変位があっても、この変位による影響を排除して、信頼性の高い形状測定を行うことができる。
【0111】
また、基準ローラ20,20の回転に伴う変位量を検出するため、基準ローラ20,20の偏摩耗や回転の偏心、さらに異物付着や破損等の表面状態を検出して適切な補正を行うことができる。
【0112】
また、一対の基準ローラ20,20の変位量の検出は、円筒体90の変位量測定を行う変位検出器30…を用いて、形状測定されるべき円筒体90が存在しないときに行うため、装置の複雑化を招くこともない。
【0113】
また、基準ローラ20,20に対峙する位置の変位量を検出する変位検出器30…によって、円筒体90の端部の肉厚分布(偏肉状態)を検出することができる。また、基準ローラ20,20には対峙しない位置の変位量を検出する変位検出器30…によって、円筒体90の内周面92を基準とした外周面01のフレ、すなわち円筒体90の偏肉の影響が加味された外周面91のフレを検出することができる。
【0114】
また、円筒体90の変位量の補正を各基準ローラ20,20との距離に応じて行うため、距離によって変化する基準ローラ20,20の変位量の影響度合いに対応して、より正確に円筒体90の変位量を得ることができる。
【0115】
また、円筒体90の変位量の補正を一対の基準ローラ20,20の回転位相と対応させて行うため、回転位相毎に変化する一対の基準ローラ20,20の変位量に対応して、より正確に円筒体90の変位量を得ることができる。
【0116】
また、回転する基準ローラ20,20の各時点における最外径部の位置を検出するため、基準ローラ20,20がその回転軸21,21に対して傾いている等の原因で、円筒体90の内周面92に接触する基準ローラ20、20の最外径部が軸方向位置によって異なってしまっている場合であっても、これを的確に検出することができる。
【0117】
また、基準ローラ20,20の位置検出を円筒体90の変位量検出と同じ動作の中で行うため、被検査対象の円筒体90を実際に投入したときに基準ローラ20,20に発生するであろう外乱等をより確実に検出することができる。
【0118】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、円筒体の外周面の変位量(回転フレ)を検出するとともに、外周面の表面状態も同時に検出するものである。
【0119】
図16は、本発明の第2実施形態にかかる円筒体の形状測定装置の概略図である。同図に示すように、第2実施形態にかかる形状測定装置12では、円筒体90は、その両側それぞれの内側に3つのローラ20’、40’、40’が挿入され、これらが離間する方向に付勢されることで支持されており、内周面92の上部に当接するローラが基準ローラ20’となっている。そしてこの基準ローラ20’に対峙する位置の外周面91の変位量等が、上述した第1実施形態と同様に、光透過型の変位検出器30によって検出されるようになっている。
【0120】
また、このような一対の基準ローラ20’,20’と円筒体90の内周面92との当接部位を通る仮想的な直線に対峙する領域に対して表面状態の計測が行われるようになっている。具体的には、この領域に対して、透光部と遮光部が繰り返し形成された遮光体36によって一部が遮光された照明35からの光が照射され、その反射光をカメラ37が検出するようになっている。
【0121】
この第2実施形態においても円筒体90が存在しないときには、変位検出器30によって基準ローラ20の回転に伴う変位量が検出されるようになっている。そして、その結果によって円筒体90の形状測定および表面状態の測定の可否が判断され、信頼性に乏しい状態での測定が未然に防止されるようになっている。
【0122】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0123】
この第3実施形態は、上述した第1実施形態にかかる形状測定装置10を備えた円筒体90の製造システムである。
【0124】
図17は、第3実施形態にかかる円筒体の製造システム700の構成を示す機能ブロック図である。
【0125】
この製造システム700は、円筒体10を製管する製管装置710と、上述した円筒体の形状測定装置10と、形状測定装置10の検査結果を製管装置710にフィードバックするフィードバック部720とを備えている。
【0126】
製管装置710は、たとえば、アルミニウム合金の引抜き加工によって感光ドラム基体を製管する場合であれば、原料を溶解させて押出加工材料を製造する工程、押出工程、引抜工程、曲がり矯正工程、所定長さへの切断工程、粗洗浄工程、仕上げ洗浄工程等を実行する各機械装置の集合として構成されている。
【0127】
押出工程は、たとえばアルミニウム製のビレットを押出してアルミニウム押出素管を得る工程である。
【0128】
図18は、この押出工程を行う押出機の概略平面図である。押出機本体730から押し出されたアルミニウム押出素管740は、複数対配置された支持ローラ750…によって押出方向前方に搬送され、切断機760により所定長さRに切断される。
【0129】
図19は、押出機本体が備える押出ダイスの一例における断面図である。この押出ダイス770は、ポートホールダイスであり、771はダイス雌型、772はダイス雄型である。ダイス雌型771には中央部に貫通上の押出孔773が形成されるとともに、押出孔773の入口側の周面が円形のベアリング部774となされている。なお、775はレリーフ部である。一方、ダイス雄型772は、その中央部に断面円形の成型凸部776を有するとともに、成形凸部776の先端周面に円形のベアリング部777が形成されている。なお778は、アルミニウムビレットを通過させる通過孔である。そして、前記ダイス雌型771と前記ダイス雄型772とが組み合わされ、雄型772の成形凸部776先端が雌型771の押出孔773に望んで雌雄両型のベアリング部774,777が環状の成形間隙779を介して対向状の配置されている。
【0130】
なお、押出方式は特に限定されることはなく、ポートホールダイスを用いたものでもマンドレル押出でもよい。
【0131】
引抜き工程は、押出加工によって得られた所定長さのアルミニウム押出素管を引抜き加工してアルミニウム引抜管を得る工程である。
【0132】
図20は、この引抜き工程を行う引抜き機の一例を示す断面である。この引抜き機780は、たとえば、アルミニウム押出素管781を引抜きダイス782と引抜きプラグ783との間に通し、押出素管781先端に形成された口付け部784をキャリッジ部のチャック部785で掴んで該キャリッジ部を前方に移動させることにより、アルミニウム引抜き管786を得るようになっている。引抜きプラグ783は、ロッド787によって支持されている。このロッド787には1個または複数個の中子788がその略全長に亘って装着されており、この中子788は、押出素管781の内周面に当接して自重により押出素管781がたわむことを防止して、引抜きの初めから終わりまで押出素管781の軸線をダイス782の軸線に一致した状態に保持できるようになっている。また、引抜き加工中には、引抜きダイス782と押出素管781との間に潤滑油が供給されるようになっている。
【0133】
なお、この引抜き工程は、プラグを固定しない浮きプラグ引き方式によって引抜きを行うようにしてもよい。また、引抜きは、1回だけ行ってアルミニウム引抜き管を得るようにしてもよいが、引抜きを複数回繰り返し行って順次的に縮径し、もってアルミニウム引抜き管を得るようにするのが好ましい。とくに、引抜きを2回行ってアルミニウム引抜き管を得るのが好ましい。
【0134】
曲がり矯正工程は、引抜き加工によって得られたアルミニウム引抜き管の曲がりを矯正する工程である。具体的には、引抜き加工によって得られたアルミニウム引抜き管は、まず、その口付け部がプレス切断法により除去され、その後、ロール矯正機に投入され、内部の矯正ロールの作用で真っ直ぐに矯正される。
【0135】
図21は、口付け部切除工程を行う切断機の一例を示す断面図である。この切断機790は、アルミニウム引抜き管791の口付け部792側の端部を金型793,793の内方に挿入し、切断刃794を下降させることにより、該口付け部792を切断除去する。この切断は突切り刃によって行われるから切粉の発生はなく、切粉等がロール矯正機内に持ち込まれ、アルミニウム引抜き管791にキズがつくことがないようになっている。
【0136】
図22は、曲がり矯正工程を行うロール矯正機の一例を示す概念図である。このロール矯正機810は、その内部の矯正ローラ812の作用によって、口付け部が切除されたアルミニウム引抜き管811を真っ直ぐに矯正するようになっている。
【0137】
粗洗浄工程は、上記引抜き工程等においてアルミニウム引抜き管に付着した潤滑油等を除去する工程である。この粗洗浄工程は、たとえば脱脂力を有する溶剤を用いて行われる。具体的手法としては、特に限定されないが、たとえば浸漬法、シャワー法等が挙げられる。
【0138】
仕上げ洗浄工程は、好適には、たとえば超音波洗浄によって行われる。
【0139】
図23は、超音波洗浄機の一例を示す概念図である。この超音波洗浄機830は、洗浄増831に貯められた洗浄液832に被洗浄物である複数個のアルミニウム引抜き管833を浸漬しておき、振動子834によって洗浄液832中に超音波を送ることにより、被洗浄物であるアルミニウム引抜き管833を洗浄するものである。
【0140】
超音波の照射方式は特に限定されることはなく、前図に示す投げ込み型のほか、接着型、振動伝達子型その他各種の洗浄機を用いることができる。また、洗浄液としては、一般には白灯油、軽油、アルカリ、界面活性剤あるいはトリクロロエチレンなどが用いられるが、これらに限定されることはなく、水系、炭化水素系、塩素系有機溶媒などを適宜用いればよい。
【0141】
上記のような押出工程、切断工程、引抜き工程、曲がり矯正工程、洗浄工程、仕上げ洗浄工程を経て得られた円筒体(アルミニウム引抜き管)90は、表面品質精度に優れ、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置の感光ドラム基体として好適である。
【0142】
こうして製管された円筒体(アルミニウム引抜き管)90は、上述した形状測定装置10においてその形状等が所定の許容範囲内にあるか否かが検査され、この検査結果が所定の許容範囲内にあるのであれば、その円筒体90を完成品と判定する。
【0143】
また、表面検査装置1において、円筒体90に発生している不良の種類や特徴等が判別された場合には、この検査結果をフィードバック部720が製管装置710にフィードバックし、これにより不良管の発生を未然に防止するようになっている。
【0144】
こうして検査結果がフィードバックされた製管装置710においては、検査結果の内容に応じて、製管条件の設定に供される。具体的には、押出ダイスの取付状態や押出速度等の押出条件の設定、素管の選別、引抜きダイスの取付状態の確認や引抜き速度等の引抜き条件の設定、ロール矯正機におけるロール高さ調整や搬送速度等のロール矯正機条件が制御される。これにより、より確実に必要十分な形状精度および表面精度を持った円筒体を得ることができるとともに、仮に不良管が発生した場合でも、速やかにこれに対応し、不良管の発生数を抑えることができる。
【0145】
このような製造システム700によれば、所定の形状精度を有する円筒体、および円筒体の集合を確実に得ることができる。
【0146】
[その他の実施形態]
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記に限定されず、以下のように構成してもよい。
【0147】
(1)上記実施形態では、基準部である基準ローラ20に回転駆動手段を設けて、基準ローラ20の回転により円筒体90を回転させるようにしたが、支持ローラ40等によって円筒体90を回転させるようにしてもよい。この場合、基準ローラ20の位置検出において、基準ローラ20の回転に伴う変位量を測定するには、基準ローラ20に別途の回転駆動手段を設けても、回転駆動源を有する支持ローラ40等を基準ローラ20に接触させて回転させるようにしてもよい。
【0148】
(2)上記実施形態では、形状測定対象である円筒体90として感光ドラム基体を挙げたが、これに限らず、複写機等に用いられる搬送ローラ、現像ローラ、転写ローラでも好適に適用できる。その他、円筒体であれば本発明の測定対象となりうる。
【0149】
(3)上記実施形態においては、変位検出器として、円筒体90の外周面に接触しない光透過型の検出器(透過式の光学式センサ)を例示したが、変位検出器としては、円筒体90の外周面91の半径方向の変位量が得られればこれらに限定するものではない。変位検出器としては、たとえば、円筒体90の外周面に接触する接触子を有し、この接触子の動きから変位を検出する接触型変位センサを挙げることができる。このような接触型変位計を用いると、光透過型センサ等では検出が難しい凸形状や光が透過してしまうような異物付着状態も確実に検出することができる。
【0150】
また、その他のセンサとしては、非接触で検出できる反射型の光学式センサ、非接触で検出でき、材料を選ばず汎用的な画像処理用のCCDカメラやラインカメラ、非接触で検出でき、高精度、高速、環境に強く、かつ安価なうず電流式の変位センサ、非接触で検出でき、高精度な静電容量式の変位センサ、非接触で検出できるエアー(差圧)式の変位センサ、あるいは、非接触で検出でき、長距離計測が可能な超音波式変位センサ等、種々の測定原理に基づく検出器を採用することができる。
【0151】
(4)上記実施形態では、円筒体90を搬送する円筒体搬送装置50を備えた構成としたが、作業者等が円筒体90を手で掴むなどして支持ローラ40上の形状測定位置に搬入・搬出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】第1実施形態にかかる形状測定装置の検査対象物とされる円筒体(管体)の斜視図である。
【図2】第1実施形態にかかる円筒体の形状測定装置の全体斜視概略図である。
【図3】同装置における円筒体の支持構造の拡大斜視図である。
【図4】同装置における円筒体支持構造の拡大断面図である。
【図5】(a)は、円筒体の外周面の変位量が検出される領域を示す正面断面説明図、(b)は円筒体が存在しない場合を示す正面断面説明図である。
【図6】基準ローラが傾いて取り付けられた場合の位置検出例である。
【図7】基準ローラに異物が付着している場合の位置検出例である。
【図8】円筒体搬送装置の平面説明図である。
【図9】円筒体搬送装置の側面説明図である。
【図10】形状測定装置の機能ブロック図である。
【図11】形状測定装置における形状測定の手順を示すフローチャートである。
【図12】基準ローラの回転に伴う変位量の検出結果の例である。
【図13】基準ローラの回転に伴う変位量から算出した補正量の例である。
【図14】円筒体の外周面の回転に伴う変位量を測定した例である。
【図15】測定された円筒体の外周面の変位量を補正した例である。
【図16】本発明の第2実施形態にかかる円筒体の形状測定装置の概略図である。
【図17】第3実施形態にかかる円筒体の製造システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図18】押出工程を行う押出機の概略平面図である。
【図19】押出機本体が備える押出ダイスの一例における断面図である。
【図20】引抜き工程を行う引抜き機の一例を示す断面である。
【図21】口付け部切除工程を行う切断機の一例を示す断面図である。
【図22】曲がり矯正工程を行うロール矯正機の一例を示す概念図である。
【図23】超音波洗浄機の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0153】
10 形状測定装置
20 基準ローラ(基準部)
30 変位検出器
40 支持ローラ
50 円筒体搬送装置
60 コントローラ(制御手段)
90 円筒体(ワーク)
91 外周面
92 内周面
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば複写機の感光ドラム用の基体等の円筒体の形状測定装置および同方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機械装置において回転部品等として使用される円筒体には、その形状精度を測定することが求められる。たとえば、複写機等の電子写真システムに用いられる感光ドラム用の基体や素管では、高い形状精度を確保するため、製管工程後の円筒体に対して形状測定が行われている。
【0003】
このような円筒体の形状測定方法として、本発明者は、下記特許文献1に示すように、円筒体の内周面に基準部を接触させて円筒体を回転させ、このときの円筒体外周面の変位量を測定することにより、円筒体の内周面を基準とした外周面のフレ量を測定する方法を提案してきた。
【特許文献1】特開2004−101465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような形状測定では、測定結果の信頼性を確保するため、基準部の位置精度が求められる。ところが、形状測定の基準となる基準部は円筒体の内側に挿入されるものであるから、大きく構成することでその剛性を高めることは困難である。また、基準部の支持機構によって位置精度を高めようとすれば装置の複雑化を招いてしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、装置の複雑化を招くことなく、形状測定の信頼性を確保することができる円筒体の形状測定方法および同装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]円筒体の両側端部近傍の内周面に一対の基準部を当接させ、
前記一対の基準部の位置を固定した状態で、前記円筒体と前記一対の基準部との当接部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させ、
前記円筒体の外側から前記一対の基準部に対峙する位置において、前記円筒体の回転に伴う前記円筒体の外周面の半径方向の変位量を、変位検出器によって検出するとともに、
前記円筒体が前記一対の基準部に当接する位置に存在しないときに、前記一対の基準部を回転させながらその回転に伴う変位量を前記変位検出器によって検出し、
この一対の基準部の変位量に基づいて、検出される前記円筒体の変位量を補正することを特徴とする円筒体の形状測定方法。
【0007】
[2]前記円筒体の内周面と前記一対の基準部とが当接する2つの当接部分を通る仮想的な直線に対し、前記円筒体の外側から対峙する位置であって、前記一対の基準部には対峙しない位置においても、前記円筒体の回転に伴う前記円筒体の外周面の半径方向の変位量の検出を行い、
こうして検出される前記一対の基準部には対峙しない位置における前記円筒体の変位量についても、一対の基準部の変位量に基づいて補正する前項1に記載の円筒体の形状測定方法。
【0008】
前記一対の基準部には対峙しない位置における前記円筒体の変位量の補正は、各基準部の[3]変位量と、各基準部との距離に基づいて行う前項2に記載の円筒体の形状測定方法。
【0009】
[4]前記円筒体の変位量の補正は、前記円筒体の回転位相と前記一対の基準部の回転位相とを対応させて行う前項1〜3のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0010】
[5]前記変位検出器は、所定の検出幅を有し、
前記一対の基準部の変位量検出では、回転する基準部の各時点における最外径部を基準部の位置として検出する前項1〜4のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0011】
[6]前記一対の基準部の変位量検出は、段取り替え直後に行う前項1〜5のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0012】
[7]前記一対の基準部の位置検出は、円筒体の変位量検出における異常な結果の頻度に応じて行う請求項1〜6のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0013】
[8]前記一対の基準部の変位量検出は、円筒体の変位量検出と同じ動作を、円筒体を投入しないで行う前項1〜7のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0014】
[9]前記変位検出器として、光透過型検出器を用いる前項1〜8のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0015】
[10]前記変位検出器として、接触型変位計を用いる前項1〜8のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0016】
[11]前記円筒体は感光ドラム用基体であることを特徴とする前項1〜10のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【0017】
[12]円筒体を成形し、
前項1〜11のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法により、円筒体の形状を測定し、
この測定結果に基づいて、前記円筒体の形状が予め設定された所定の許容範囲内にあるか否かを判定し、
この検査結果において前記円筒体の形状が前記所定の許容範囲内にある場合には、その円筒体を完成品と判定することを特徴とする円筒体の製造方法。
【0018】
[13]前項12に記載の円筒体の製造方法によって製造された感光ドラム用基体。
【0019】
[14]円筒体の両側端部近傍の内周面に当接する一対の基準部と、
前記一対の基準部との当接部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させる回転駆動手段と、
前記円筒体の外側から前記一対の基準部に対峙する位置において、前記円筒体の回転に伴う前記円筒体の外周面の半径方向の変位量を検出する一方、前記一対の基準部に当接する位置に円筒体が存在しないときに、前記一対の基準部を回転させながらその回転に伴う変位量を検出する変位検出器と、
前記一対の基準部の変位量に基づいて、検出される前記円筒体の変位量を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする円筒体の形状測定装置。
【0020】
[15]円筒体を成形する製管装置と、
前項14に記載の円筒体の形状測定装置と、
前記変位検出器によって検出された前記変位量に基づいて、前記円筒体の形状が予め設定された所定の許容範囲内にあるか否かを検査し、前記円筒体の形状が前記所定の許容範囲内にある場合には、その円筒体を完成品と判定する合否判定手段と、
を備えたことを特徴とする円筒体の製造システム。
【発明の効果】
【0021】
上記発明[1]によると、一対の基準部の変位量に応じて、検出される円筒体の変位量が補正されるため、形状測定の基準とする一対の基準部に回転に伴う変位があっても、この変位による影響を排除して、信頼性の高い形状測定を行うことができる。また、一対の基準部の変位量の検出は、円筒体の変位量測定を行う変位検出器を用いて、形状測定されるべき円筒体が存在しないときに行うため、装置の複雑化を招くこともない。
【0022】
上記発明[2]によると、基準部には対峙しない位置においても円筒体の外周面の変位量の検出を行うため、円筒体の内周面を基準とした外周面のフレ、すなわち円筒体の偏肉の影響が加味された外周面のフレを、一対の基準部における回転に伴う変位の影響を排除して検出することができる。
【0023】
上記発明[3]によると、円筒体の変位量の補正を基準部との距離に応じて行うため、距離によって変化する基準部の変位量の影響に対応して、より正確に円筒体の変位量を得ることができる。
【0024】
上記発明[4]によると、円筒体の変位量の補正を一対の基準部の回転位相と対応させて行うため、回転位相毎に変化する一対の基準部の変位量に対応して、より正確に円筒体の変位量を得ることができる。
【0025】
上記発明[5]によると、回転する基準部の各時点における最外径部の位置を検出するため、基準部の回転軸が傾いている等の原因で、円筒体の内周面に接触する基準部の最外径部が軸方向位置によって異なってしまっている場合であっても、これを的確に検出することができる。
【0026】
上記発明[6]によると、基準部の変位量検出を段取り替え直後に行うため、段取り替えによって発生した設備の変化に速やかに対応して、信頼性の高い形状測定を行うことができる。
【0027】
上記発明[7]によると、円筒体の変位量検出における異常検出の頻度に応じて基準部の位置検出が行われるため、異常な結果の頻発の原因が、円筒体自体にあるのか、あるいは形状測定装置の側の不具合であるのかを確認することができ、形状測定装置側の不具合であれば速やかに対応して、信頼性に乏しい測定が継続することを未然に防止することができる。また円筒体側に問題がある場合、たとえば上流側の円筒体の製管工程のトラブルを推測して早期の対応を図ることができる。
【0028】
上記発明[8]によると、基準部の変位量検出を円筒体の変位量検出と同じ動作の中で行うため、被検査対象の円筒体を実際に投入したときに基準部に発生するであろう外乱等をより確実に検出することができる。
【0029】
上記発明[9]によると、ため光透過型検出器を用いるため、被検査対象の円筒体に接触によるキズや変形を与えることなく計測を行うことができる。
【0030】
上記発明[10]によると、接触型変位計を用いるため、、光透過型センサ等では検出が難しい凸形状や光が透過してしまうような異物付着状態も確実に検出することができる。
【0031】
上記発明[11]によると、感光ドラム用基体に求められる形状精度を評価して、好適な感光用ドラム基体の生産に寄与することができる。
【0032】
上記発明[12]によると、成形した円筒体の形状精度を高い精度で確実に検査して、高精度な円筒体を製造することができる。
【0033】
上記発明[13]によると、高い形状精度を確実に確保することができる。
【0034】
上記発明[14]によると、一対の基準部の変位量に応じて、検出される円筒体の変位量が補正されるため、形状測定の基準とする一対の基準部に回転に伴う変位があっても、この変位による影響を排除して、信頼性の高い形状測定を行うことができる。また、一対の基準部の変位量の検出は、円筒体の変位量測定を行う変位検出器を用いて、形状測定されるべき円筒体が存在しないときに行うため、装置の複雑化を招くこともない。
【0035】
上記発明[15]によると、成形した円筒体の形状精度を高い精度で確実に検査して、高精度な円筒体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について、模式的な説明図を参照しながら説明する。
【0037】
図1は、この第1実施形態にかかる形状測定装置の検査対象物とされる円筒体(管体)の斜視図である。
【0038】
同図に示すように、円筒体90は、その両端にフランジ部材93等を挿入することで内周面92において回転支持され、その外周面91が所定の機能のために利用される。このため、形状測定装置は、このような円筒体90を回転させた際の外周面91の変位、すなわち回転フレ量を計測し、検査するようになっている。
【0039】
このような円筒体90の用途としては、たとえば電子写真システムを構成する複写機、プリンタ、FAX装置、これらの複合機等において、感光ドラム、転写ローラ、現像ローラ等を挙げることができる。具体的には、電子写真システムを採用した複写機やプリンタ等における感光ドラム用の素管や基体に好適である。感光ドラム用の基体とは、切削加工や引抜き加工等が行われた後の円筒体であって、感光層の形成前の円筒体をいう。また、感光ドラム用基体に感光層を形成した後の円筒体も、本発明の検査対象としての円筒体となる。感光ドラム用基体外周面は、金属光沢を有し、入射した光のほとんどを正反射する鏡面となっている。
【0040】
この円筒体検査装置の検査対象物とされる感光ドラム用基体は、たとえば直径が10〜60mm、長さ200〜500mm程度のものである。
【0041】
このような円筒体90の製造方法としては、後述するように、押出成形および引き抜き成形の組み合わせを挙げることができる。ただし、これに限定されるものではなく、押出成形、引き抜き成形、鋳造、鍛造、射出成形、切削加工またはこれらの組み合わせなど、円筒体90を製管できる方法であればよい。
【0042】
また、対象とする円筒体90の材質は特に限定されるものでなく、各種の金属材料の他、合成樹脂等を適用することができる。たとえば、アルミニウムおよびアルミニウム合金(1000〜7000系)、銅および銅合金、鋼材、マグネシウムおよびマグネシウム合金を挙げることができる。
【0043】
特に好ましい材質の例として、アルミニウム合金の3003合金、6061合金、6051合金および7075合金を挙げることができる。たとえば3003合金は好ましくは感光ドラム用基体として用いることができ、6061合金は好ましくは自動車部品であるプロペラシャフトとして用いることができ、6051合金は好ましくは一般機械部品として用いることができ、7075合金は好ましくはバット用素管として用いることができる。なお、本明細書中の「アルミニウム」はアルミニウム合金を含むものである。
【0044】
図2は、第1実施形態にかかる円筒体の形状測定装置の全体斜視概略図である。図3は、同装置における円筒体の支持構造の拡大斜視図である。図4は、同装置における円筒体支持構造の拡大断面図である。
【0045】
同図に示すように、この形状測定装置10は、円筒体90の内周面92に当接する基準ローラ20,20と、円筒体90の外周面91の回転に伴う変位量を検出する変位検出器30…と、円筒体90を支持する支持ローラ40…と、円筒体90を搬入・搬出する円筒体搬送装置50と、各部の動作を制御するコントローラ60と、を備えている。
【0046】
一対の基準ローラ20,20は、円筒体90の両端近傍の内周面92に当接し、形状測定の基準となる一対の基準部として機能するものである。
【0047】
一対の基準ローラ20,20は、円筒体90が使用時に挿入されるフランジ等によって回転支持される部位(支持予定位置)で円筒体90の内周面92と当接するようになっている。これにより、実際の使用時と同様の条件で形状測定を行いうるようになっている。
【0048】
一対の基準ローラ20,20は、その支持軸21,21が出没駆動部22,22によって円筒体90の軸方向に移動動作できるようになっており、円筒体90を搬入出する際には、円筒体90の軸方向外側に退避できるようになっている。
【0049】
また一対の基準ローラ20,20の支持軸21,21は不図示のベアリング等により回転可能に支持され、駆動モータ23、23によって回転駆動されるようになっており、これにより当接している円筒体90を回転駆動できるようになっている。この駆動モータ23,23は、円筒体90を回転駆動する回転駆動手段として機能する。
【0050】
この基準ローラ20,20は、円筒体90の形状測定の基準とするものであるからその位置精度は高いことが好ましいが、現実には多少の回転に伴う変位が含まれうる。この実施形態では、この一対の基準ローラ20,20に含まれる回転に伴う変位量の影響を排除するようになっている。
【0051】
支持ローラ40…は、円筒体90をその両端部で下側から支持するものであり、円筒体90の両側に2つずつ配置されている。
【0052】
各支持ローラ40…は、一対の基準部20,20より軸方向外側に配置され、一対の基準ローラ20,20が当接している断面の変位量の検出を妨げないようになっている。
【0053】
各支持ローラ40…は、円筒体90の外周面91に接触して円筒体90を支持する小径部41と、円筒体90の軸方向端面に当接して円筒体90の軸方向の位置決めを行う大径部42…とを備えている。
【0054】
支持ローラ40…は、円筒体90の両側のそれぞれにおいて、昇降部材43,43に取り付けられ、昇降駆動源46によって昇降駆動可能となっている。これにより支持ローラ40は、支持ローラ40上に支持された円筒体90をその内周面が一対の基準部20,20に当接する測定位置まで持ち上げ、さらに所定の押圧力で一対の基準ローラ20,20に押し付けることができるようになっている。
【0055】
変位検出器30…は、円筒体90の外周面91の半径方向の変位量を検出するものである。
【0056】
この実施形態では、各変位検出器30…は、光透過型の検出器として構成され、光照射部と受光部とが一組となって円筒体90を挟み込むように配置されている。そして、光照射部から照射された光(たとえばレーザ光)のうち円筒体90によって遮られず透過した光を受光部によって検出することによって、円筒体90の外周面91の表面位置を検出するようになっている。このように変位検出器30…が光透過型の検出器から構成されているため、円筒体90の外表面に損傷を与えることがない。
【0057】
図5(a)は、円筒体の外周面の変位量が検出される領域を示す正面断面説明図、図5(b)は円筒体が存在しない場合を示す正面断面説明図である。
【0058】
同図(a),(b)に示すように、この実施形態では、変位検出器30…は、円筒体90の軸方向位置の異なる5箇所に設けられている。
【0059】
外側の2つの変位検出器30,30は、円筒体90の外側から一対の基準部20,20に対峙する位置31,31を、変位量の検出位置とするように配置されている。これらの位置31,31では、内周面92が基準部20,20と当接した状態で外周面91の位置が検出されるため、円筒体90の肉厚を計測することができる。
【0060】
一方、中央の3つの変位検出器30…は、一対の基準部20,20に対峙する位置31,31以外の位置32…を変位量の検出位置とするように配置されている。この位置32…は、円筒体90の内周面92と一対の基準ローラ20,20との2つの当接部分P,Pを通る仮想的な直線Lに対し、円筒体90の外側から対峙する位置である。これらの検出位置32…では、円筒体10の内周面92を基準とした外周面91のフレを検出することができる。
【0061】
各変位検出器30…の検出領域33…は、円筒体90の直径を超える長さを有しており、各変位検出器30は、円筒体90の外周面91の一箇所の変位量だけではなく、それに対向する位置(円筒体90の周方向について半周分異なる位置、180度回転した位置、あるいは逆位相位置)の変位量も同時に検出できるようになっている。これにより、互いに対向する位置において検出される変位量を組み合わせることにより、これら2つの位置を通る円筒体90の直径を求めることができ、より具体的に円筒体90の形状を把握することができるようになっている。
【0062】
また、この実施形態では、一対の基準ローラ20,20に対峙する位置31,31を検出位置とする外側の2つの変位検出器30,30は、一対の基準ローラ20,20に当接する位置に円筒体90が存在しないとき、基準ローラ20,20の位置を検出するようになっている。ここの検出において基準ローラ20の位置とは、円筒体90がセットされていれば、円筒体90の内周面92と当接する部位の高さ位置である。この実施形態では、基準ローラ20,20の位置検出は、基準ローラ20,20を回転させながら所定時間継続して行い、回転に伴う変位量が検出されるようになっている。
【0063】
また、この外側の2つの変位検出器30,30の検出領域33,33の幅(検出幅)は、基準ローラ20,20よりも大きく設定されており、回転する基準ローラ20,20の各時点における最大径部を各時点における基準ローラ20,20の位置として検出するようになっている。
【0064】
図6は、基準ローラが傾いて取り付けられた場合の位置検出例である。基準ローラ20が回転軸21に対して傾いて取り付けられた状態になった場合、同図(a)に実線および破線で示すように、基準ローラ20は回転するときうねるように姿勢が変化する。このような基準ローラ20を用いて円筒体90の形状測定をすれば、円筒体90の内周面92の高さ位置は基準ローラ20の最も回転軸21から離れた部位(最大径部)によって決定されることになる。このような場合、基準ローラ20の特定の軸方向位置の変位量のみが検出される比較的幅の狭いを検出領域34を設定すると、同図(b)に示すように、その基準ローラ20の位置の変位量は実際の最大径部より小さく検出されてしまう可能性がある。これに対し、基準ローラ20よりも広い検出幅の検出領域33を設定すれば、同図(c)に示すように基準ローラ20の最大径部を確実に検出することができる。
【0065】
図7は、基準ローラに異物が付着している場合の位置検出例である。同図(a)に示すように、異物29が付着している基準ローラ20を用いて円筒体90の形状測定をすれば、円筒体90の内周面92の高さ位置は異物29が挟まるときに外側に押し出されるように変位することになる。このような場合、基準ローラ20の特定の軸方向位置の変位量のみが検出される比較的幅の狭いを検出領域34を設定すると、検出領域34の軸方向位置が異物29とずれているため、同図(b)に示すように、異物29の影響を検出できない可能性がある。これに対し、基準ローラ20よりも広い検出幅の検出領域33を設定すれば、同図(c)に示すように異物29の影響を確実に検出することができる。
【0066】
この実施形態では、後述するように、こうして測定される基準ローラ20,20の変位量に応じて、円筒体90の変位量の補正が行われることになる。
【0067】
図8は、円筒体搬送装置の平面説明図である。図9は、円筒体搬送装置の側面説明図である。
【0068】
円筒体搬送装置50は、この形状測定装置10に供給される円筒体90を、所定の搬入位置50Aから、形状測定が行われる支持ローラ40上まで搬送する第1搬送装置51と、形状測定を終えた円筒体90を支持ローラ40上から所定の搬出位置50Bまで搬送する第2搬送装置52とを備えている。
【0069】
第1搬送装置51および第2搬送装置52は、いずれも、円筒体90をピックアップする搬送アーム53、53と、搬送アーム53,53の先端に形成されたピックアップ突起54,54と、搬送アーム53,53を円筒体90の軸方向に移動させてピックアップ突起54,54を円筒体90内に両側から挿し込むスライド駆動源55,55と、円筒体10をピックアップした搬送アーム53,53を移動させる移動レール56,56とを備えている。
【0070】
コントローラ(制御手段)60は、形状測定装置10の各動作部を統括的に制御するものであり、たとえばCPUやメモリ等を備えたコンピュータからなるシーケンサ等で構成されている。
【0071】
図10は、この形状測定装置の機能ブロック図である。
【0072】
同図に示すように、コントローラ(制御手段)60は、機能的に、円筒体形状測定手段61と、許容範囲記憶手段62と、合否判定手段63と、基準ローラ測定要否判断手段64と、基準ローラ測定手段65と、変位量補正手段66と、を備えている。
【0073】
円筒体形状測定手段61は、この形状測定装置10が備える各動作部を制御して、搬入される円筒体90について、偏肉状態を示す肉厚分布や内周面92を基準とした外周面91の変位量(内径フレ)を測定するものである。なおこうして測定される円筒体90の変位量は、基準ローラ20,20の回転に伴う変位量の影響が含まれているものである。
【0074】
許容範囲記憶手段62は、円筒体90の外周面91の変位量(フレ量)について予め設定されたの許容範囲を記憶するものである。
【0075】
合否判定手段63は、形状測定された円筒体90の変位量が許容範囲内にあるか否かによって、各円筒体90を合否判定するものである。なお合否判定手段63の判定対象となるのは、後述する補正が行われた円筒体90の変位量である。
【0076】
基準ローラ測定要否判断手段64は、基準ローラ20の位置検出(変位量測定)の要否を判断するものである。基準ローラ20の位置検出を行うのは、原則として、基準ローラ20の状態が変化した可能性のある場合である。
【0077】
このような基準ローラ20の位置検出は、たとえば、形状測定装置を起動したとき、測定対象の円筒体90の種類を切り替えるため段取り替えをしたとき等を挙げることができる。このような場合に基準ローラ20の位置検出を行うことで、段取り替え等によって発生した設備の不具合を早期に発見することができる。
【0078】
また基準ローラ20の位置検出は、円筒体90の形状測定において異常な結果の頻度が高いときにも行われる。このようにすると、異常な結果の頻発の原因が、円筒体90にあるのか、あるいは形状測定装置10の側の不具合であるのかを確認することができ、形状測定装置10側の不具合であれば速やかに対応することができる。また円筒体90側に問題がある場合、たとえば上流側の円筒体90の製管工程のトラブルを推測して早期の対応を図ることができる。
【0079】
また複数の円筒体90に対する形状測定を実行中に、所定の間隔で、基準ローラ20の位置検出を断続的に行うようにしてもよい。具体的には、所定本数の円筒体90の測定が完了するたびに行ったり、あるいは円筒体90を切り替える度に毎回行ってもよい。このようにすると、量産稼働中における各種のトラブルを早期に発見することができる。
【0080】
また、基準ローラ20の位置検出は、円筒体の搬出入動作中に行うことが望ましい。このようにすると、基準ローラ20の位置検出のためにタクトタイムが延びることを防止することができる。
【0081】
基準ローラ測定手段65は、円筒体90がセットされていないときに、基準ローラ20を回転させ、その回転位相毎に基準ローラ20の円筒体90と当接する部位の位置(変位量)を測定するものである。こうして測定される基準ローラ20,20の変位量は、円筒体90の外周面91の変位量の補正に用いられる。
【0082】
変位量補正手段66は、基準ローラ20の変位量に基づいて、検出された円筒体90の外周面91の変位量を補正する。
【0083】
次に、この形状測定装置10における形状測定の手順について説明する。
【0084】
図11は、この形状測定装置における形状測定の手順を示すフローチャートである。
【0085】
このフローチャートに示す各手順は、コントローラ60の制御により各動作部が適時動作することによって実行される。
【0086】
同図に示すように、この形状測定装置10では、測定対象物である円筒体(ワーク)90の形状測定に先立って、形状測定の基準となる基準ローラ20,20の状態が測定される。
【0087】
この基準ローラ20,20の測定は、後述する円筒体90に対する形状測定と同様の手順で行われる。具体的には、基準ローラ20,20に当接する位置に円筒体90が存在しない状態において、まず円筒体90の内側に挿入するように、基準ローラ20を内側位置に移動させて(ステップS10)、基準ローラ20を回転させ(ステップS11)、この回転に伴う基準ローラ20の最大径部の位置の変位量を検出する(ステップS12)。この変位量は、基準ローラ20,20の回転位相毎に連続的に検出するようになっている。
【0088】
図12は、基準ローラの回転に伴う変位量の検出結果の例である。同図(a)、(b)はそれぞれ左右の基準ローラ20,20の変位量を示している。この例では、同図(a)に示す左側の基準ローラ20は回転に伴う変位がなく理想的な状態である。同図(b)に示す右側の基準ローラ20に異物が付着し、回転位相が300度の辺りでその位置が外側に膨らんでいる。
【0089】
こうして基準ローラ20,20の回転に伴う変位量が検出されれば、このような変位量が円筒体90の形状測定に及ぼす影響を算出する(ステップS13)。円筒体90の形状測定結果から、この基準ローラ20,20の変位量の影響を除けば、円筒体90自体の形状に基づく測定結果が得られる。このため、基準ローラ20,20の変位量の影響は、円筒体90の形状測定結果に対する補正量として用いられるものである。
【0090】
図13は、基準ローラの回転に伴う変位量から算出した補正量の例である。同図(a)、(b)はそれぞれ左右の基準ローラ20,20に対峙する位置における補正量、同図(c)は左右の基準ローラ20,20から等距離にある軸方向中央位置における補正量を表している。同図の横軸は、円筒体の回転位相で表現している。
【0091】
基準ローラ20,20と円筒体90とは直径が異なるため、両者が滑りなく転がり接触してもその回転位相はずれる。この例では、円筒体90の内周面92の周長が基準ローラ20,20の外周長の2倍である場合、すなわち、円筒体90が1回転する間に基準ローラ20,20はそれぞれちょうど2回転する場合を想定している。
【0092】
図13(a)(b)に示す左右の基準ローラ20,20に対峙する位置では、円筒体90の外周面91の変位量を測定する際、基準ローラ20,20の変位量の影響がそのまま表れる。このため、図13(a)に示すように、回転に伴う変位のない左側の基準ローラ20(図12(a))に対峙する位置では、基準ローラ20の影響はない。これに対し、図13(b)に示すように、異物の付着した右側の基準ローラ20(図12(b))に対峙する位置では、円筒体90が1回転する間に、基準ローラ20に付着した異物による変位が2回現れている。
【0093】
一方、基準ローラ20,20に対峙していない位置では、左右の基準ローラ20,20の変位量の影響を、各基準ローラ20,20からの距離に応じて受けることになる。この影響の程度は、各基準ローラ20,20の回転位相毎に、各基準ローラ20,20の変位量を比例配分した変位量となる。具体的に、図13(c)に示すように、軸方向位置が左右の基準ローラ20,20から等距離であれば、左右の基準ローラ20,20の1/2の変位量の影響を受けることになる。この図13(c)では、左側の基準ローラ20に変位はなく、右側の基準ローラ20にのみ異物による変位があるため、図13(b)に示す補正量の半分の補正量が求められている。
【0094】
このような補正量は、変位検出器30…によって円筒体90の外周面91の変位量が求められる各軸方向位置毎に算出される。
【0095】
なお検出された基準ローラ20の変位量が所定の許容範囲より大きい場合には、補正を行っても適切な円筒体(ワーク)90の形状測定を継続することができないため、オペレータ等にその旨を報知して形状測定を中止することが望ましい。
【0096】
また補正量を算出するために基準ローラ20,20を測定する一連の処理(ステップS10〜S13)は、基準ローラ測定要否判断手段64によってその要否が判断され、たとえば状態の変わらない前日の算出結果が流用できる場合等であればスキップしてもよい。
【0097】
こうして基準ローラ20の変位量に基づく補正量が求められれば、測定対象物である円筒体(ワーク)90の形状測定を開始する。
【0098】
この円筒体90の形状測定は、まず第1搬送装置51により、搬入位置50Aにおかれた円筒体90を支持ローラ40…上の測定位置に搬入する(ステップS14)。この搬入動作は、搬入位置50Aに移動させた搬送アーム53、53の間隔を狭めることで円筒体90をピックアップし、この状態で移動レール56、56によって搬送アーム53、53を支持ローラ40…上の測定位置まで移動させることにより行う。なお、この円筒体90の搬入時には、搬入される円筒体90が基準ローラ20,20と干渉することを防止するため、一対の基準ローラ20,20は両外側に退避させておく。
【0099】
円筒体90が支持ローラ40…上に載置されれば、一対の基準ローラ20,20を円筒体90の内側に挿入する(ステップS15)。そして、この状態で支持ローラ40…とともに円筒体90を持ち上げて、円筒体90の内周面92を一対の基準ローラ20,20に当接させ、さらに所定の押圧力で円筒体90を一対の基準ローラ20,20に押し付ける(ステップS16)。
【0100】
こうして円筒体90の内周面92基準ローラ20,20に押し付けられた状態となれば、基準ローラ20,20を回転駆動して円筒体90を回転させ(ステップS17)、円筒体90が回転している状態で、各変位検出器30…により、円筒体90の各軸方向断面における外周面91の半径方向の変位量を検出する(ステップS18)。この変位量の検出は円筒体90を一回転以上させて、円筒体90の全周について行われる。
【0101】
図14は、円筒体の外周面の回転に伴う変位量を測定した例である。同図(a)、(b)はそれぞれ左右の基準ローラ20,20に対峙する位置における変位量、同図(c)は左右の基準ローラ20,20から等距離にある軸方向中央位置における変位量を表している。同図の横軸は、円筒体90の回転位相で表現している。
【0102】
円筒体90の変位量が検出されれば、検出された円筒体90に変位量を、先に算出した基準ローラ20,20の変位量に基づいて算出された補正量を用いて補正する(ステップ19)。なお、この補正は、後続の円筒体90を搬出する一連の手順(ステップS20〜S22)と並行して行うようにしてもよい。
【0103】
図15は、測定された円筒体の外周面の変位量を補正した例である。同図(a)、(b)はそれぞれ左右の基準ローラ20,20に対峙する位置における変位量、同図(c)は左右の基準ローラ20,20から等距離にある軸方向中央位置における変位量を表している。同図の横軸は、円筒体90の回転位相で表現している。
【0104】
この測定された円筒体90の外周面91の変位量の補正は、円筒体90の測定結果(図14)から、先に算出した補正量(図13)を、各軸方向位置毎に、また各回転位相毎に減算することによって行われる。この例では、右側の基準ローラ20に異物が付着したが、円筒体90の測定結果(図14)には、その影響の変位量の局所的な変化が見られるが、補正後の結果(図15)では、その影響が排除されている。このため、実際の円筒体90自身の形状を正確に把握することができる。
【0105】
なお上記図12〜図15の例では、基準ローラ20に異物が付着した場合を例として説明したが、基準ローラ20,20の一方または両方に、偏心、軸ずれ、欠け等の凹みなど種々の原因による影響の場合も同様にして、円筒体90の変位量を補正することができる。
【0106】
また、具体的な補正の計算方法も上記に限定されることなく、基準ローラ20,20の変位量の影響を適切にうち消すことができる補正であれば、任意の方法を採用することができる。
【0107】
円筒体90の変位量の検出が完了すれば、支持ローラ40を下降させて円筒体90を開放し(ステップS20)、基準ローラ20,20を外側に退避させて(ステップS21)、円筒体90を第2搬送装置52によって搬出する(ステップS22)。この搬出動作は、上述した搬入動作と同様に、搬送アーム53、53の間隔を狭めることで円筒体90をピックアップし、この状態で移動レール56、56によって搬送アーム53、53を搬出位置50Bまで移動させることにより行う。
【0108】
こうして1本の円筒体90の形状測定が完了するが、継続して次の円筒体90の形状測定を行うならば、ステップS14から繰り返せばよい。
【0109】
また、円筒体90の形状測定を行った結果によって、たとえば異常な結果の頻度が高い場合等には、基準ローラ測定要否判断手段64の判断により、補正量を算出するために基準ローラ20,20を測定する一連の処理(ステップS10〜S13)を再度行うようにしてもよい。
【0110】
以上のように本実施形態にかかる円筒体の形状測定装置10によると、一対の基準ローラ20,20の変位量に応じて、検出される円筒体90の変位量が補正されるため、形状測定の基準とする一対の基準ローラ20,20に回転に伴う変位があっても、この変位による影響を排除して、信頼性の高い形状測定を行うことができる。
【0111】
また、基準ローラ20,20の回転に伴う変位量を検出するため、基準ローラ20,20の偏摩耗や回転の偏心、さらに異物付着や破損等の表面状態を検出して適切な補正を行うことができる。
【0112】
また、一対の基準ローラ20,20の変位量の検出は、円筒体90の変位量測定を行う変位検出器30…を用いて、形状測定されるべき円筒体90が存在しないときに行うため、装置の複雑化を招くこともない。
【0113】
また、基準ローラ20,20に対峙する位置の変位量を検出する変位検出器30…によって、円筒体90の端部の肉厚分布(偏肉状態)を検出することができる。また、基準ローラ20,20には対峙しない位置の変位量を検出する変位検出器30…によって、円筒体90の内周面92を基準とした外周面01のフレ、すなわち円筒体90の偏肉の影響が加味された外周面91のフレを検出することができる。
【0114】
また、円筒体90の変位量の補正を各基準ローラ20,20との距離に応じて行うため、距離によって変化する基準ローラ20,20の変位量の影響度合いに対応して、より正確に円筒体90の変位量を得ることができる。
【0115】
また、円筒体90の変位量の補正を一対の基準ローラ20,20の回転位相と対応させて行うため、回転位相毎に変化する一対の基準ローラ20,20の変位量に対応して、より正確に円筒体90の変位量を得ることができる。
【0116】
また、回転する基準ローラ20,20の各時点における最外径部の位置を検出するため、基準ローラ20,20がその回転軸21,21に対して傾いている等の原因で、円筒体90の内周面92に接触する基準ローラ20、20の最外径部が軸方向位置によって異なってしまっている場合であっても、これを的確に検出することができる。
【0117】
また、基準ローラ20,20の位置検出を円筒体90の変位量検出と同じ動作の中で行うため、被検査対象の円筒体90を実際に投入したときに基準ローラ20,20に発生するであろう外乱等をより確実に検出することができる。
【0118】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、円筒体の外周面の変位量(回転フレ)を検出するとともに、外周面の表面状態も同時に検出するものである。
【0119】
図16は、本発明の第2実施形態にかかる円筒体の形状測定装置の概略図である。同図に示すように、第2実施形態にかかる形状測定装置12では、円筒体90は、その両側それぞれの内側に3つのローラ20’、40’、40’が挿入され、これらが離間する方向に付勢されることで支持されており、内周面92の上部に当接するローラが基準ローラ20’となっている。そしてこの基準ローラ20’に対峙する位置の外周面91の変位量等が、上述した第1実施形態と同様に、光透過型の変位検出器30によって検出されるようになっている。
【0120】
また、このような一対の基準ローラ20’,20’と円筒体90の内周面92との当接部位を通る仮想的な直線に対峙する領域に対して表面状態の計測が行われるようになっている。具体的には、この領域に対して、透光部と遮光部が繰り返し形成された遮光体36によって一部が遮光された照明35からの光が照射され、その反射光をカメラ37が検出するようになっている。
【0121】
この第2実施形態においても円筒体90が存在しないときには、変位検出器30によって基準ローラ20の回転に伴う変位量が検出されるようになっている。そして、その結果によって円筒体90の形状測定および表面状態の測定の可否が判断され、信頼性に乏しい状態での測定が未然に防止されるようになっている。
【0122】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0123】
この第3実施形態は、上述した第1実施形態にかかる形状測定装置10を備えた円筒体90の製造システムである。
【0124】
図17は、第3実施形態にかかる円筒体の製造システム700の構成を示す機能ブロック図である。
【0125】
この製造システム700は、円筒体10を製管する製管装置710と、上述した円筒体の形状測定装置10と、形状測定装置10の検査結果を製管装置710にフィードバックするフィードバック部720とを備えている。
【0126】
製管装置710は、たとえば、アルミニウム合金の引抜き加工によって感光ドラム基体を製管する場合であれば、原料を溶解させて押出加工材料を製造する工程、押出工程、引抜工程、曲がり矯正工程、所定長さへの切断工程、粗洗浄工程、仕上げ洗浄工程等を実行する各機械装置の集合として構成されている。
【0127】
押出工程は、たとえばアルミニウム製のビレットを押出してアルミニウム押出素管を得る工程である。
【0128】
図18は、この押出工程を行う押出機の概略平面図である。押出機本体730から押し出されたアルミニウム押出素管740は、複数対配置された支持ローラ750…によって押出方向前方に搬送され、切断機760により所定長さRに切断される。
【0129】
図19は、押出機本体が備える押出ダイスの一例における断面図である。この押出ダイス770は、ポートホールダイスであり、771はダイス雌型、772はダイス雄型である。ダイス雌型771には中央部に貫通上の押出孔773が形成されるとともに、押出孔773の入口側の周面が円形のベアリング部774となされている。なお、775はレリーフ部である。一方、ダイス雄型772は、その中央部に断面円形の成型凸部776を有するとともに、成形凸部776の先端周面に円形のベアリング部777が形成されている。なお778は、アルミニウムビレットを通過させる通過孔である。そして、前記ダイス雌型771と前記ダイス雄型772とが組み合わされ、雄型772の成形凸部776先端が雌型771の押出孔773に望んで雌雄両型のベアリング部774,777が環状の成形間隙779を介して対向状の配置されている。
【0130】
なお、押出方式は特に限定されることはなく、ポートホールダイスを用いたものでもマンドレル押出でもよい。
【0131】
引抜き工程は、押出加工によって得られた所定長さのアルミニウム押出素管を引抜き加工してアルミニウム引抜管を得る工程である。
【0132】
図20は、この引抜き工程を行う引抜き機の一例を示す断面である。この引抜き機780は、たとえば、アルミニウム押出素管781を引抜きダイス782と引抜きプラグ783との間に通し、押出素管781先端に形成された口付け部784をキャリッジ部のチャック部785で掴んで該キャリッジ部を前方に移動させることにより、アルミニウム引抜き管786を得るようになっている。引抜きプラグ783は、ロッド787によって支持されている。このロッド787には1個または複数個の中子788がその略全長に亘って装着されており、この中子788は、押出素管781の内周面に当接して自重により押出素管781がたわむことを防止して、引抜きの初めから終わりまで押出素管781の軸線をダイス782の軸線に一致した状態に保持できるようになっている。また、引抜き加工中には、引抜きダイス782と押出素管781との間に潤滑油が供給されるようになっている。
【0133】
なお、この引抜き工程は、プラグを固定しない浮きプラグ引き方式によって引抜きを行うようにしてもよい。また、引抜きは、1回だけ行ってアルミニウム引抜き管を得るようにしてもよいが、引抜きを複数回繰り返し行って順次的に縮径し、もってアルミニウム引抜き管を得るようにするのが好ましい。とくに、引抜きを2回行ってアルミニウム引抜き管を得るのが好ましい。
【0134】
曲がり矯正工程は、引抜き加工によって得られたアルミニウム引抜き管の曲がりを矯正する工程である。具体的には、引抜き加工によって得られたアルミニウム引抜き管は、まず、その口付け部がプレス切断法により除去され、その後、ロール矯正機に投入され、内部の矯正ロールの作用で真っ直ぐに矯正される。
【0135】
図21は、口付け部切除工程を行う切断機の一例を示す断面図である。この切断機790は、アルミニウム引抜き管791の口付け部792側の端部を金型793,793の内方に挿入し、切断刃794を下降させることにより、該口付け部792を切断除去する。この切断は突切り刃によって行われるから切粉の発生はなく、切粉等がロール矯正機内に持ち込まれ、アルミニウム引抜き管791にキズがつくことがないようになっている。
【0136】
図22は、曲がり矯正工程を行うロール矯正機の一例を示す概念図である。このロール矯正機810は、その内部の矯正ローラ812の作用によって、口付け部が切除されたアルミニウム引抜き管811を真っ直ぐに矯正するようになっている。
【0137】
粗洗浄工程は、上記引抜き工程等においてアルミニウム引抜き管に付着した潤滑油等を除去する工程である。この粗洗浄工程は、たとえば脱脂力を有する溶剤を用いて行われる。具体的手法としては、特に限定されないが、たとえば浸漬法、シャワー法等が挙げられる。
【0138】
仕上げ洗浄工程は、好適には、たとえば超音波洗浄によって行われる。
【0139】
図23は、超音波洗浄機の一例を示す概念図である。この超音波洗浄機830は、洗浄増831に貯められた洗浄液832に被洗浄物である複数個のアルミニウム引抜き管833を浸漬しておき、振動子834によって洗浄液832中に超音波を送ることにより、被洗浄物であるアルミニウム引抜き管833を洗浄するものである。
【0140】
超音波の照射方式は特に限定されることはなく、前図に示す投げ込み型のほか、接着型、振動伝達子型その他各種の洗浄機を用いることができる。また、洗浄液としては、一般には白灯油、軽油、アルカリ、界面活性剤あるいはトリクロロエチレンなどが用いられるが、これらに限定されることはなく、水系、炭化水素系、塩素系有機溶媒などを適宜用いればよい。
【0141】
上記のような押出工程、切断工程、引抜き工程、曲がり矯正工程、洗浄工程、仕上げ洗浄工程を経て得られた円筒体(アルミニウム引抜き管)90は、表面品質精度に優れ、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置の感光ドラム基体として好適である。
【0142】
こうして製管された円筒体(アルミニウム引抜き管)90は、上述した形状測定装置10においてその形状等が所定の許容範囲内にあるか否かが検査され、この検査結果が所定の許容範囲内にあるのであれば、その円筒体90を完成品と判定する。
【0143】
また、表面検査装置1において、円筒体90に発生している不良の種類や特徴等が判別された場合には、この検査結果をフィードバック部720が製管装置710にフィードバックし、これにより不良管の発生を未然に防止するようになっている。
【0144】
こうして検査結果がフィードバックされた製管装置710においては、検査結果の内容に応じて、製管条件の設定に供される。具体的には、押出ダイスの取付状態や押出速度等の押出条件の設定、素管の選別、引抜きダイスの取付状態の確認や引抜き速度等の引抜き条件の設定、ロール矯正機におけるロール高さ調整や搬送速度等のロール矯正機条件が制御される。これにより、より確実に必要十分な形状精度および表面精度を持った円筒体を得ることができるとともに、仮に不良管が発生した場合でも、速やかにこれに対応し、不良管の発生数を抑えることができる。
【0145】
このような製造システム700によれば、所定の形状精度を有する円筒体、および円筒体の集合を確実に得ることができる。
【0146】
[その他の実施形態]
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記に限定されず、以下のように構成してもよい。
【0147】
(1)上記実施形態では、基準部である基準ローラ20に回転駆動手段を設けて、基準ローラ20の回転により円筒体90を回転させるようにしたが、支持ローラ40等によって円筒体90を回転させるようにしてもよい。この場合、基準ローラ20の位置検出において、基準ローラ20の回転に伴う変位量を測定するには、基準ローラ20に別途の回転駆動手段を設けても、回転駆動源を有する支持ローラ40等を基準ローラ20に接触させて回転させるようにしてもよい。
【0148】
(2)上記実施形態では、形状測定対象である円筒体90として感光ドラム基体を挙げたが、これに限らず、複写機等に用いられる搬送ローラ、現像ローラ、転写ローラでも好適に適用できる。その他、円筒体であれば本発明の測定対象となりうる。
【0149】
(3)上記実施形態においては、変位検出器として、円筒体90の外周面に接触しない光透過型の検出器(透過式の光学式センサ)を例示したが、変位検出器としては、円筒体90の外周面91の半径方向の変位量が得られればこれらに限定するものではない。変位検出器としては、たとえば、円筒体90の外周面に接触する接触子を有し、この接触子の動きから変位を検出する接触型変位センサを挙げることができる。このような接触型変位計を用いると、光透過型センサ等では検出が難しい凸形状や光が透過してしまうような異物付着状態も確実に検出することができる。
【0150】
また、その他のセンサとしては、非接触で検出できる反射型の光学式センサ、非接触で検出でき、材料を選ばず汎用的な画像処理用のCCDカメラやラインカメラ、非接触で検出でき、高精度、高速、環境に強く、かつ安価なうず電流式の変位センサ、非接触で検出でき、高精度な静電容量式の変位センサ、非接触で検出できるエアー(差圧)式の変位センサ、あるいは、非接触で検出でき、長距離計測が可能な超音波式変位センサ等、種々の測定原理に基づく検出器を採用することができる。
【0151】
(4)上記実施形態では、円筒体90を搬送する円筒体搬送装置50を備えた構成としたが、作業者等が円筒体90を手で掴むなどして支持ローラ40上の形状測定位置に搬入・搬出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】第1実施形態にかかる形状測定装置の検査対象物とされる円筒体(管体)の斜視図である。
【図2】第1実施形態にかかる円筒体の形状測定装置の全体斜視概略図である。
【図3】同装置における円筒体の支持構造の拡大斜視図である。
【図4】同装置における円筒体支持構造の拡大断面図である。
【図5】(a)は、円筒体の外周面の変位量が検出される領域を示す正面断面説明図、(b)は円筒体が存在しない場合を示す正面断面説明図である。
【図6】基準ローラが傾いて取り付けられた場合の位置検出例である。
【図7】基準ローラに異物が付着している場合の位置検出例である。
【図8】円筒体搬送装置の平面説明図である。
【図9】円筒体搬送装置の側面説明図である。
【図10】形状測定装置の機能ブロック図である。
【図11】形状測定装置における形状測定の手順を示すフローチャートである。
【図12】基準ローラの回転に伴う変位量の検出結果の例である。
【図13】基準ローラの回転に伴う変位量から算出した補正量の例である。
【図14】円筒体の外周面の回転に伴う変位量を測定した例である。
【図15】測定された円筒体の外周面の変位量を補正した例である。
【図16】本発明の第2実施形態にかかる円筒体の形状測定装置の概略図である。
【図17】第3実施形態にかかる円筒体の製造システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図18】押出工程を行う押出機の概略平面図である。
【図19】押出機本体が備える押出ダイスの一例における断面図である。
【図20】引抜き工程を行う引抜き機の一例を示す断面である。
【図21】口付け部切除工程を行う切断機の一例を示す断面図である。
【図22】曲がり矯正工程を行うロール矯正機の一例を示す概念図である。
【図23】超音波洗浄機の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0153】
10 形状測定装置
20 基準ローラ(基準部)
30 変位検出器
40 支持ローラ
50 円筒体搬送装置
60 コントローラ(制御手段)
90 円筒体(ワーク)
91 外周面
92 内周面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体の両側端部近傍の内周面に一対の基準部を当接させ、
前記一対の基準部の位置を固定した状態で、前記円筒体と前記一対の基準部との当接部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させ、
前記円筒体の外側から前記一対の基準部に対峙する位置において、前記円筒体の回転に伴う前記円筒体の外周面の半径方向の変位量を、変位検出器によって検出するとともに、
前記円筒体が前記一対の基準部に当接する位置に存在しないときに、前記一対の基準部を回転させながらその回転に伴う変位量を前記変位検出器によって検出し、
この一対の基準部の変位量に基づいて、検出される前記円筒体の変位量を補正することを特徴とする円筒体の形状測定方法。
【請求項2】
前記円筒体の内周面と前記一対の基準部とが当接する2つの当接部分を通る仮想的な直線に対し、前記円筒体の外側から対峙する位置であって、前記一対の基準部には対峙しない位置においても、前記円筒体の回転に伴う前記円筒体の外周面の半径方向の変位量の検出を行い、
こうして検出される前記一対の基準部には対峙しない位置における前記円筒体の変位量についても、一対の基準部の変位量に基づいて補正する請求項1に記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項3】
前記一対の基準部には対峙しない位置における前記円筒体の変位量の補正は、各基準部の変位量と、各基準部との距離に基づいて行う請求項2に記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項4】
前記円筒体の変位量の補正は、前記円筒体の回転位相と前記一対の基準部の回転位相とを対応させて行う請求項1〜3のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項5】
前記変位検出器は、所定の検出幅を有し、
前記一対の基準部の変位量検出では、回転する基準部の各時点における最外径部を基準部の位置として検出する請求項1〜4のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項6】
前記一対の基準部の変位量検出は、段取り替え直後に行う請求項1〜5のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項7】
前記一対の基準部の位置検出は、円筒体の変位量検出における異常な結果の頻度に応じて行う請求項1〜6のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項8】
前記一対の基準部の変位量検出は、円筒体の変位量検出と同じ動作を、円筒体を投入しないで行う請求項1〜7のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項9】
前記変位検出器として、光透過型検出器を用いる請求項1〜8のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項10】
前記変位検出器として、接触型変位計を用いる請求項1〜8のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項11】
前記円筒体は感光ドラム用基体であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項12】
円筒体を成形し、
請求項1〜11のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法により、円筒体の形状を測定し、
この測定結果に基づいて、前記円筒体の形状が予め設定された所定の許容範囲内にあるか否かを判定し、
この検査結果において前記円筒体の形状が前記所定の許容範囲内にある場合には、その円筒体を完成品と判定することを特徴とする円筒体の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の円筒体の製造方法によって製造された感光ドラム用基体。
【請求項14】
円筒体の両側端部近傍の内周面に当接する一対の基準部と、
前記一対の基準部との当接部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させる回転駆動手段と、
前記円筒体の外側から前記一対の基準部に対峙する位置において、前記円筒体の回転に伴う前記円筒体の外周面の半径方向の変位量を検出する一方、前記一対の基準部に当接する位置に円筒体が存在しないときに、前記一対の基準部を回転させながらその回転に伴う変位量を検出する変位検出器と、
前記一対の基準部の変位量に基づいて、検出される前記円筒体の変位量を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする円筒体の形状測定装置。
【請求項15】
円筒体を成形する製管装置と、
請求項14に記載の円筒体の形状測定装置と、
前記変位検出器によって検出された前記変位量に基づいて、前記円筒体の形状が予め設定された所定の許容範囲内にあるか否かを検査し、前記円筒体の形状が前記所定の許容範囲内にある場合には、その円筒体を完成品と判定する合否判定手段と、
を備えたことを特徴とする円筒体の製造システム。
【請求項1】
円筒体の両側端部近傍の内周面に一対の基準部を当接させ、
前記一対の基準部の位置を固定した状態で、前記円筒体と前記一対の基準部との当接部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させ、
前記円筒体の外側から前記一対の基準部に対峙する位置において、前記円筒体の回転に伴う前記円筒体の外周面の半径方向の変位量を、変位検出器によって検出するとともに、
前記円筒体が前記一対の基準部に当接する位置に存在しないときに、前記一対の基準部を回転させながらその回転に伴う変位量を前記変位検出器によって検出し、
この一対の基準部の変位量に基づいて、検出される前記円筒体の変位量を補正することを特徴とする円筒体の形状測定方法。
【請求項2】
前記円筒体の内周面と前記一対の基準部とが当接する2つの当接部分を通る仮想的な直線に対し、前記円筒体の外側から対峙する位置であって、前記一対の基準部には対峙しない位置においても、前記円筒体の回転に伴う前記円筒体の外周面の半径方向の変位量の検出を行い、
こうして検出される前記一対の基準部には対峙しない位置における前記円筒体の変位量についても、一対の基準部の変位量に基づいて補正する請求項1に記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項3】
前記一対の基準部には対峙しない位置における前記円筒体の変位量の補正は、各基準部の変位量と、各基準部との距離に基づいて行う請求項2に記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項4】
前記円筒体の変位量の補正は、前記円筒体の回転位相と前記一対の基準部の回転位相とを対応させて行う請求項1〜3のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項5】
前記変位検出器は、所定の検出幅を有し、
前記一対の基準部の変位量検出では、回転する基準部の各時点における最外径部を基準部の位置として検出する請求項1〜4のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項6】
前記一対の基準部の変位量検出は、段取り替え直後に行う請求項1〜5のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項7】
前記一対の基準部の位置検出は、円筒体の変位量検出における異常な結果の頻度に応じて行う請求項1〜6のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項8】
前記一対の基準部の変位量検出は、円筒体の変位量検出と同じ動作を、円筒体を投入しないで行う請求項1〜7のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項9】
前記変位検出器として、光透過型検出器を用いる請求項1〜8のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項10】
前記変位検出器として、接触型変位計を用いる請求項1〜8のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項11】
前記円筒体は感光ドラム用基体であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法。
【請求項12】
円筒体を成形し、
請求項1〜11のいずれかに記載の円筒体の形状測定方法により、円筒体の形状を測定し、
この測定結果に基づいて、前記円筒体の形状が予め設定された所定の許容範囲内にあるか否かを判定し、
この検査結果において前記円筒体の形状が前記所定の許容範囲内にある場合には、その円筒体を完成品と判定することを特徴とする円筒体の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の円筒体の製造方法によって製造された感光ドラム用基体。
【請求項14】
円筒体の両側端部近傍の内周面に当接する一対の基準部と、
前記一対の基準部との当接部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させる回転駆動手段と、
前記円筒体の外側から前記一対の基準部に対峙する位置において、前記円筒体の回転に伴う前記円筒体の外周面の半径方向の変位量を検出する一方、前記一対の基準部に当接する位置に円筒体が存在しないときに、前記一対の基準部を回転させながらその回転に伴う変位量を検出する変位検出器と、
前記一対の基準部の変位量に基づいて、検出される前記円筒体の変位量を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする円筒体の形状測定装置。
【請求項15】
円筒体を成形する製管装置と、
請求項14に記載の円筒体の形状測定装置と、
前記変位検出器によって検出された前記変位量に基づいて、前記円筒体の形状が予め設定された所定の許容範囲内にあるか否かを検査し、前記円筒体の形状が前記所定の許容範囲内にある場合には、その円筒体を完成品と判定する合否判定手段と、
を備えたことを特徴とする円筒体の製造システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2007−178343(P2007−178343A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378903(P2005−378903)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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