説明

円筒型二次電池

【課題】電池の信頼性を低下させない範囲で電池安全性を最大限確保することが可能な円筒型二次電池を提供すること。
【解決手段】炭酸リチウム(LiCO)を含む正極活物質層を備える正極、陰極活物質層を備える陰極及び正極と陰極とを分離させるセパレータを含む電極組立体と、電極組立体が収容される缶と、缶の上部に組み立てられるキャップ組立体と、缶の内部に注入される電解液とを含み、炭酸リチウム(LiCO)の含量は正極活物質層の全体100質量%に対し1.0〜1.5質量%であり、電解液の含量はベアセルの全体100質量%に対し10.8〜11.93質量%であり、キャップ組立体による電流遮断の作動圧力は7〜9Kgf/cmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒型二次電池(Cylinder type Secondary Battery)に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電子機器の小型化及び軽量化が急速に進むにつれ、その駆動電源として用いられる電池の小型化及び高容量化に対する必要性が大きくなっている。特に、リチウム二次電池の作動電圧は3.6V以上であって、携帯電子機器の電源として多く利用されるニッケル−カドミウム電池やニッケル−水素電池よりも作動電圧が3倍も大きく、単位重量当たりエネルギー密度が高いということでその需要は急速に増えている。
【0003】
リチウム二次電池とは、リチウムイオンが正極及び陰極におけるインターカレーション/デインターカレーション時の酸化、還元反応によって電気エネルギーを生成するものである。このようなリチウム二次電池は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質を正極と陰極の活物質として用い、前記正極と前記陰極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充電して製造する。
【0004】
リチウム二次電池は、陰極板と正極板とが、セパレータを間に置いて一定形態、例えば、ゼリーロール(jelly−roll)状に巻回されている電極組立体と、この電極組立体と電解液とが収納される缶と、前記缶の上部に組み立てられるキャップ組立体とで構成される。
【0005】
このようなリチウム二次電池は、過充電、過電流などの状況に置かれると爆発、発火の危険性に直面するため、過充電を防止するための安全装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国特許公報第10−0812549号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、リチウム二次電池は、電解液にバイフェニル(BP)、サイクロヘキシルベンゼン(CHB)などのガス化物質を添加して製造するため、過充電時に多量のガスを発生させて電流遮断手段を作動させることになる。しかしながら、このような方法は、正確なガス発生量をコントロールすることができず、多量添加の場合に電池寿命を低下させて各種の副反応を引き起こす問題点を有する。
【0008】
一方、従来、正極活物質として用いられていたコバルト酸リチウム(LiCoO)は価格が大幅に上昇したため、その代替の正極活物質として脚光を浴びていて、相対的に安価のニッケル系(NCM、NCA)の正極活物質が用いられている。
【0009】
しかし、上述のニッケル系(NCM、NCAなど)の正極活物質の場合も、過充電時に十分なガスが発生しないことがある。
【0010】
すなわち、過充電時に電池内部に一定量のガスが発生し、そのガスによって電流遮断手段を作動させるものであって、電流遮断によって電池の安全性が確保されるべきであるが、ニッケル系正極活物質の場合は、従来の電池設計では十分なガスを発生することができず、また、そのガス発生量では、電流遮断手段の安全性が確保できる時間内に作動させられないという問題点を有する。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、電池の信頼性を低下させない範囲で電池安全性を最大限確保することが可能な、新規かつ改良された円筒型二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、炭酸リチウム(LiCO)を含む正極活物質層を備える正極、陰極活物質層を備える陰極及び正極と陰極とを分離させるセパレータを含む電極組立体と、電極組立体が収容される缶と、缶の上部に組み立てられるキャップ組立体と、缶の内部に注入される電解液とを含み、炭酸リチウム(LiCO)の含量は正極活物質層の全体100質量%に対し1.0〜1.5質量%であり、電解液の含量はベアセルの全体100質量%に対し10.8〜11.93質量%であり、キャップ組立体による電流遮断の作動圧力は7〜9Kgf/cmであることを特徴とする円筒型二次電池が提供される。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電極組立体と、電極組立体が収容される缶と、缶が上部に組み立てられるキャップ組立体と、缶の内部に注入される電解液とを含む円筒型二次電池において、電極組立体は炭酸リチウム(LiCO)を含み、炭酸リチウム(LiCO)の含量は正極活物質層の全体100質量%に対し1.0〜1.5質量%であり、電解液の含量はベアセルの全体100質量%に対し10.8〜11.93質量%であり、キャップ組立体による電流遮断の作動圧力は7〜9Kgf/cmであることを特徴とする円筒型二次電池が提供される。
【0014】
上記正極活物質層はニッケル系正極活物質をさらに含んでもよい。
【0015】
上記ニッケル系の正極活物質は、下記式(1)ないし(7)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
LiNi1−y ……(1)
LiNi1−y2−z ……(2)
LiNi1−yCo2−z ……(3)
LiNi1−y−zCoα ……(4)
LiNi1−y−zCo2−αα ……(5)
LiNi1−y−zMnα ……(6)
LiNi1−y−zMn2−αα ……(7)
(上記式において、0.9≦x≦1.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦α≦2であり、MとM’は同一であるか互いに異なり、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、Sn、V、Ge、Ga、B、As、Zr、Mn、Cr、Fe、Sr、V及び稀土類元素からなる群から選択され、AはO、F、S及びPからなる群から選択され、XはF、S及びPからなる群から選択される。)
【0016】
上記キャップ組立体はキャップアップ及びキャップアップの下部に順に位置するPTC、CID及びベントを含んで形成されてもよい。また、上記電流遮断の作動圧力は、ベントの突出部と電極タップとの溶接部分が破断することで、電池の電気的流れが遮断された際の電池内部圧力であってもよい。
【0017】
上記キャップ組立体は、キャップアップ及びキャップアップの下部に順に位置するPTC、ベント、キャップダウン及びサブプレートを含んで形成されてよい。また、上記電流遮断の作動圧力はベントの突出部とサブプレートとの溶接部分が破断するか、サブプレートの所定領域が短絡することで、電池の電気的流れが遮断された際の電池内部圧力であってもよい。
【0018】
上記陰極活物質としては、結晶質炭素、非晶質炭素、炭素複合体、炭素纎維、リチウム金属及びリチウム合金のうちいずれか一つであってもよい。
【0019】
上記電解液は、非水性有機溶媒及びリチウム塩を含んでもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電池性能を低下させない範囲で電池安全性を最大限確保することができる円筒型二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る円筒型二次電池の構造を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る円筒型二次電池の構造を示す断面図である。
【図3A】本発明の第1実施形態に係る円筒型二次電池の電流遮断の作動圧力を説明するための断面図である。
【図3B】本発明の第1実施形態に係る円筒型二次電池の破断圧力を説明するための断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る電極組立体を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る円筒型二次電池の構造を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る円筒型二次電池の構造を示す断面図である。
【図7A】本発明の第2実施形態に係る円筒型二次電池の電流遮断の作動圧力を説明するための断面図である。
【図7B】本発明の第2実施形態に係る円筒型二次電池の破断圧力を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る円筒型二次電池の構造を示す分解斜視図であり、図2は本発明の第1実施形態に係る円筒型二次電池の構造を示す断面図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、長方形の板形状に形成される二つの電極21、23が積層され、渦巻形に巻回してゼリーロール型の電極組立体20を形成する。この場合、これらの電極間及び二つの電極下側あるいは上側にはセパレータ25a、25bが一つずつ位置するため、重なって巻回された二つの電極の接触部分にはいずれもセパレータが介在しており短絡を防止する。
【0025】
各電極板は、アルミニウムや銅からなる金属ホイルあるいは金属メッシュからなる集電体に活物質スラリーが塗布されて形成される。スラリーは通常的に粒状の活物質と補助導体及びバインダーと可塑剤などが、溶媒の添加された状態で撹拌されて形成される。溶媒はその後の電極形成工程によって除去される。
【0026】
電極板が巻き取られる方向に集電体のスタート端と終了端にはスラリーが塗布されない無地部が存在する。無地部には一電極板に一つずつ電極タップが設けられ、電極タップ27、29は一方が円筒型缶の開口部方向の上側に、他方は下側に、電極から引き出されるように形成される。
【0027】
缶10は、円筒型であり、鉄材、アルミニウム合金などを用いてディップドローイング方法などによって形成される。次いで、缶の開口部を介して缶内部に電極組立体20を挿入する。このとき、電極組立体を挿入する前に、まず電極組立体の下面に下部絶縁板13bを敷き、電極組立体の外側部分から下部に引き出された電極タップ29が下部絶縁板13bの外側を迂回して缶底面に並行するように折曲される。そして、下部絶縁板と電極組立体が一緒に缶内に挿入される。
【0028】
そのとき、電極組立体20は円筒型のゼリーロールをなしており、ゼリーロールの中心は空いている中孔を形成する。また、下部絶縁板の中心には電極組立体の中孔に該当する領域に通孔を有する。折曲された電極タップ29部分は下部絶縁板の通孔を横切るようにする。
【0029】
この状態で、上側から電極組立体の中孔を介して溶接棒(図示せず)が缶の底面方向に下る。溶接棒は下部絶縁板の中央通孔を通って下部絶縁板の下側で中央通孔を横切る電極タップ部分と接触されることで、電極タップ部分は上方からの溶接棒と接し、そして下方に缶底面と接した状態で溶接される。
【0030】
実施形態によっては、電極組立体20の中孔にセンターピン18が設けられる場合もあって、金属センターピン18が中孔に挿入された状態で缶10に入れられ、センターピン上部に溶接棒を接続させてセンターピンに電流を流すことも考えられる。
【0031】
下部電極タップ29を溶接した後、上部絶縁板13aを電極組立体20上に設ける。この場合、上部絶縁板の通孔を通って電極組立体の上部電極タップ27が上方に引き出されるようにする。上部絶縁板に中央通孔がある場合は、上部絶縁板13aを設置した後、下部電極タップ29の溶接を実施してもよい。そして、缶の上部に電極組立体が設けられた上端レベルに合わせて缶側壁を缶内側に曲げてビード15を形成するビーディング作業を行う。ビーディングによって電極組立体は完成の円筒型二次電池の缶内で外部から衝撃を受けても上下に流動しないので、電気的な接続信頼性を高めることができる。
【0032】
次いで、電極組立体の上から電解液の注入が行われる。電解液注入はビーディング以前に行うこともできる。ビーディングが行われた缶上部にガスケット30が挿入され、電極組立体から上方に引き出された電極タップがキャップ組立体の下端ベント40部分と溶接される。キャップ組立体80は、予め結合された形態に一度でガスケット内に設置するか、または部品ごとに順序よくガスケット内に積層することができる。
【0033】
本発明の第1実施形態において、キャップ組立体は、PTC(Positive temperature Coefficient)60上にキャップアップ70が位置し、PTC60の下部に電流遮断素子(CID、current interrupt device)50とベント40が位置する。
【0034】
また、図では示してないが、キャップアップの下部にPTCを含まない場合もある。
次いで、ガスケット30内に入れられたキャップアップを含むキャップ組立体80を蓋にして、円筒型缶10の開口部壁体に内側及び下方から圧力を加えて缶を密封させるクランピング作業が行われる。
【0035】
図3Aは本発明の第1実施形態に係る円筒型二次電池の電流遮断の作動圧力を説明するための断面図であり、図3Bは本発明の第1実施形態に係る円筒型二次電池の破断圧力を説明するための断面図である。
【0036】
まず、図3Aに示すように、多様な要因で、例えば、電池の過充電により電池内部に一定量のガスが発生し、このガスで電池内部圧力が増加することになる。
【0037】
このとき、ベント40は板状で、中央から下部に突出する突出部が形成されており、突出部が電極組立体の上部に引き出された電極タップ27と溶接されて電気的に接続されているが、増加された内部圧力によって突出部が上部方向に変形されることになる。
【0038】
また、このような変形によって電極タップ27の溶接部分が破断され、結局は電池の電気的流れが遮断される。
【0039】
本実施形態では、ベントの突出部と電極タップとの溶接部分が破断されて電池の電気的流れを遮断する際の電池内部圧力を電流遮断の作動圧力と称する。
【0040】
次に、図3Bに示すように、上記ベントの突出部と電極タップとの溶接部分が破断されて電池の電気的流れが遮断されて電池充電は中止されたが、内部的な要因によってガスが継続的に発生して電池内部の圧力が増加するか、または外部的な要因によって電池内部圧力がさらに増加させることになる。
【0041】
このように増加した内部圧力によって下部に突出していたベントの突出部が上部に突き出され、上方に突出したベントの突出部がCIDを破断させる。
【0042】
すなわち、電池内部の圧力が継続的に増加すると、最後には電池が爆発することになるが、これを防止するために一定圧力以上になった場合、CIDを破断させることで、ガスを外部に放出させ内部圧力を減少させることができる。
【0043】
本実施形態では、下部に突出していたベントの突出部が上部に突き出されて、CIDを破断する際の電池内部圧力を破断圧力と称する。
【0044】
このとき、本発明の第1実施形態に係る二次電池の電流遮断の作動圧力は、7〜9Kgf/cmであることが好ましい。
【0045】
電流遮断の作動圧力が7Kgf/cm未満の場合は、作動圧力が低すぎて90度放置特性がよくなく、また電流遮断の作動圧力が9Kgf/cmを超える場合は作動圧力が高すぎて断熱過充電特性がよくない。
【0046】
図4は、本発明の第1実施形態に係る電極組立体を示す断面図である。
図4に示すように、電極組立体20は、第1電極板21(以下、正極板という)、第2電極板23(以下、陰極板という)及びセパレータ25a、25bを含む。
【0047】
電極組立体20は、正極板21、陰極板23及びセパレータ25a、25bを積層し、巻回してゼリーロール状に形成される。
【0048】
セパレータは、正極板21と陰極板23との間に位置する第1セパレータ25b及び二つの電極板21、23の下側あるいは上側に位置する第2セパレータ25aからなり、積層及び巻回される二つの電極の接触する部分に介在されるため二つの電極板間の短絡を防止する。
【0049】
まず、正極板21は、化学反応で発生した電子を集めて外部回路に伝達する正極集電体21a、正極集電体21の一面あるいは両面に正極活物質を含んだ正極用スラリーが塗布される正極活物質層21bからなる。
【0050】
また、正極板21は、正極活物質層21bの両端のうち少なくとも一端を覆うように形成される絶縁部材21cを含むことができる。
【0051】
絶縁部材21cは絶縁テープで形成することができ、接着層と、接着層の一面に付着する絶縁フィルムからなり、本実施形態が絶縁部材21cの形状や材質を限定するものではない。
【0052】
例えば、接着層は、エチレン(Ethylene)−アクリル酸エステル(Acrylic ester)共重合体、ゴム系粘着材、エチレン酢酸ビニル共重合体などで形成することができ、絶縁フィルムは、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリエチレンテレフタルレート(Polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene naphthalate)などで形成することができる。
【0053】
また、正極集電体21aの両末端のうち一側または両側には正極活物質を含む正極用スラリーが塗布されないため正極集電体21aがそのまま露出された正極無地部が形成されており、正極無地部には正極集電体21aに集まった電子を外部回路に伝送するもので、ニッケルまたはアルミニウム材質の薄板で形成された正極タップ29が接合されている。
【0054】
また、正極タップ29が接合されている部位には、その上面に保護部材29aが備えられる。
【0055】
保護部材29aは接合部位を保護し短絡などを防止するものであって、耐熱性を有する素材、例えば、ポリエステルのような高分子樹脂が好ましいが、本実施形態が保護部材29aの形状及び材質を限定するものではない。
【0056】
正極集電体21aとしては、ステインレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタンまたはそれらの合金、アルミニウムまたはステインレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀を表面処理したものなどを用いることができ、それらのうち、アルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましいが、本実施形態が正極集電体21aの材質を限定するものではない。
【0057】
正極集電体21aの形状としては、ホイル、フィルム、シート、パンチングされたもの、多孔質体、発泡剤などとすることができ、厚さは通常1〜50μm、好ましくは1〜30μmであって、本実施形態が形状及び厚さを限定するものではない。
【0058】
本発明の第1実施形態に係る正極活物質層は、リチウムイオンを挿入及び脱離できる物質及び炭酸リチウム(LiCO)を含むことを特徴とする。
【0059】
炭酸リチウム(LiCO)は、電池の過充電時に二酸化炭素を発生させて電池の内圧を増加させる物質である。
【0060】
この場合、本発明の第1実施形態に係る炭酸リチウム(LiCO)の含量は正極活物質層の全体100質量%に対し1.0〜1.5質量%であることが好ましい。
【0061】
炭酸リチウム(LiCO)の含量が1.0質量%未満の場合は、ガス発生量が十分ではないため断熱過充電特性がよくなく、炭酸リチウム(LiCO)の含量が1.5質量%を超える場合は90度放置特性がよくない問題点がある。
【0062】
また、本実施形態において、正極活物質はリチウムイオンを挿入及び脱離できる物質としてニッケル系正極活物質を含み、その代表的な例として下記のリチウム含有化合物が好ましく用いられる。
【0063】
LiNi1−y ……(1)
LiNi1−y2−z ……(2)
LiNi1−yCo2−z ……(3)
LiNi1−y−zCoα ……(4)
LiNi1−y−zCo2−αα ……(5)
LiNi1−y−zMnα ……(6)
LiNi1−y−zMn2−αα ……(7)
(上記式において0.9≦x≦1.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦α≦2であり、MとM’は同一であるか互いに異なり、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、Sn、V、Ge、Ga、B、As、Zr、Mn、Cr、Fe、Sr、V及び稀土類元素からなる群から選択され、AはO、F、S及びPからなる群から選択され、XはF、S及びPからなる群から選択される。)
【0064】
すなわち、従来の正極活物質として用いるコバルト酸リチウム(LiCoO2)に比べて、相対的に安価のニッケル系(NCM、NCA)正極活物質の場合は過充電時に十分なガスを発生しないという問題点があった。よって、従来の電池設計では十分なガスが発生せず、そのガス量では安全性の確保できる時間内に電流遮断手段が作動しないという問題点があって、本実施形態ではニッケル系(NCM、NCA)正極活物質に所定含量の炭酸リチウム(LiCO)を含ませることで、過充電時に十分なガス発生を誘導し、安全性の確保される時間内に電流遮断手段が作動できるようにして電池安全性を増大させることができる。
【0065】
また、正極活物質層は、活物質のペースト化、活物質の相互接着、集電体との接着、活物質の膨脹及び収縮に対する緩衝効果などの役割をする物質としてバインダーをさらに含み、このようなバインダーとしては、ポリビニルリデンフルオライド、ポリヘキサフルオロプロピレン−ポリビニルリデンフルオライドの共重合体、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、アルキレイティドポリエチレンオキサイド、ポリビニルエーテル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロライド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどが用いられる。
【0066】
また、正極活物質層は、電子伝導性を向上させる物質として導電材をさらに含むことができ、このような導電材としては、黒鉛系導電材、カーボンブラック系導電材、金属または金属化合物系導電材からなる群から選択される少なくとも一つを用いることができる。
【0067】
黒鉛系導電材の例では、人造黒鉛、天然黒鉛などがあり、カーボンブラック系導電材の例では、アセチレンブラック、ケチェンブラック(ketjen black)、デンカブラック(denka black)、サーマルブラック(thermal black)、チャンネルブラック(channel black)などがあり、金属系または金属化合物系導電材の例としては、錫、酸化錫、燐酸錫(SnPO4)、酸化チタン、チタン酸カリウム、LaSrCoO、LaSrMnOのようなペロブスカイト(perovskite)物質がある。
【0068】
次に、陰極板23は、化学反応で発生する電子を集めて外部回路に伝達する陰極集電体23a、陰極集電体23aの一面あるいは両面に陰極活物質が含まれている陰極用スラリーが塗布される陰極活物質層23bからなる。
【0069】
また、陰極板23aは、陰極活物質層23bの両端のうち少なくとも一端を覆うように形成される絶縁部材23cを含むことができる。
【0070】
絶縁部材23cは、絶縁テープで形成することができ、接着層と接着層の一面に付着する絶縁フィルムから形成することができるが、本実施形態が絶縁部材23cの形象及び材質を限定するものではない。
【0071】
例えば、接着層は、エチレン(Ethylene)−アクリル酸エステル(Acrylic ester)共重合体、ゴム系粘着材、エチレン酢酸ビニル共重合体などにより形成することができ、絶縁フィルムは、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリエチレンテレフタルレート(Polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene naphthalate)などにより形成することができる。
【0072】
また、陰極集電体23aの両末端のうち一側または両側には陰極活物質が含まれた陰極用スラリーが塗布されないため、陰極集電体23aがそのまま露出される陰極無地部が形成され、陰極無地部には陰極集電体23aに集まった電子を外部回路に伝達し、ニッケル材質の薄板に形成される陰極タップ27が接合される。
【0073】
陰極タップ27が接合される部位にはその上面に保護部材27aが備えられる。
【0074】
保護部材27aは接合部位を保護して短絡などを防止するものであって、耐熱性を有する素材、例えばポリエステルのような高分子樹脂が好ましいが、本実施形態が保護部材29aの形象及び材質を限定するものではない。
【0075】
陰極集電体23aとしては、ステインレス鋼、ニッケル、銅、チタンまたはこれらの合金、銅またはステインレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀を表面処理したものなどを用いることができ、そのうち銅または銅合金が好ましいが、本実施形態が陰極集電体23aの材質を限定するものではない。
【0076】
陰極集電体23aの形態としては、ホイル、フィルム、シート、パンチングされたもの、多孔質体、発泡剤などとすることができ、厚さは通常1〜50μm、好ましくは1〜30μmであるが、本実施形態が形態及び厚さを限定するのではない。
【0077】
陰極活物質層23bは、陰極活物質にカーボンブラック(carbon black)のような導電材と活物質の固定のためのPVDF(Polyvinylidene fluoride)、SBR(Styrene butadiene rubber)、PTFE(Polytelrafluoro ethylene)などのバインダーなどが混合した物質を用いる。
【0078】
陰極活物質としては、結晶質炭素、非晶質炭素、炭素複合体、炭素纎維などの炭素材料、リチウム金属、リチウム合金などが好ましいが、本実施形態が陰極活物質の材質を限定するものではない。
【0079】
次に、セパレータ25a、25bは、通常にポリエチレン(Polyethylene)、ポリプロピレン(Polypropylene)などの熱可塑性樹脂で形成されるが、本実施形態がセパレータの材質及び構造を限定するものではない。
【0080】
続いて、本発明の第1実施形態に係る円筒型二次電池を説明すると、本実施形態の円筒型二次電池は電解液を含むものである。
【0081】
本実施形態に係る電解液は、非水性有機溶媒を含んでおり、この非水性有機溶媒としては、カーボネート、エステル、エーテルまたはケトンを用いることができる。カーボネートとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを用いることができ、エステルとしては、ブチロラックトン(BL)、デカノルラード(decanolide)、バレロラックトン(valerolactone)、メバロノラックトン(mevalonolactone)、カプロラックトン(caprolactone)、n−メチルアセテート、n−エチルアセテート、n−プロピルアセテートなどを用いることができ、エーテルでは、ジブチルエーテルなどを用いることができ、ケトンとしてはポリメチルビニルケトンがあるが、本実施形態は非水性有機溶媒の種類に限定されない。
【0082】
非水性有機溶媒がカーボネート系有機溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートとを混合して用いることが好ましい。この場合、環形カーボネートと鎖型カーボネートは1:1ないし1:9の体積比で混合して用いることが好ましく、1:1.5ないし1:4の体積比で混合して用いることがより好ましい。この体積比で混合しないと電解質の性能が好ましく得られない。
【0083】
本実施形態の電解液は、カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むことができる。芳香族炭化水素系有機溶媒としては芳香族炭化水素系化合物が用いられる。
【0084】
芳香族炭化水素系有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、トリフルオロトルエン、キシレンなどがある。芳香族炭化水素系有機溶媒を含む電解質においてカーボネート系溶媒/芳香族炭化水素系溶媒の体積比が1:1ないし30:1であることが好ましい。この体積比で混合しないと電解質の性能が好ましく得られない。
【0085】
また、本実施形態に係る電解液はリチウム塩を含んでおり、リチウム塩は電池内においてリチウムイオンの供給源として作用して、基本的なリチウム電池の作動を可能とし、その例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2x+1SO)(ここで、x及びyは自然数である)及びLiSOCFからなる群から選択される一つ以上またはそれらの混合物を含む。
【0086】
リチウム塩の濃度は、0.6ないし2.0Mの範囲で用いることができ、0.7ないし1.6Mの範囲がより好ましい。リチウム塩の濃度が0.6M未満であると電解液の粘度が低くなって電解液の性能が低下し、2.0Mを超える場合は電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が減少する問題点がある。
【0087】
この場合、本発明の第1実施形態に係る電解液の含量は、ベアセルの全体100質量%に対し10.8〜11.93質量%であることが好ましい。
【0088】
ベアセルとは、円筒型缶に電極組立体を挿入し、キャップアップを含むキャップ組立体を蓋として円筒型缶の開口部壁体の内側及び下方に圧力を加えて缶を密封するクランピング作業が行われた状態を意味し、保護回路基板が付着される作業及び電池外部に外装材を形成するチュービング(tubing)作業などは行わない状態をいう。
【0089】
電解液の含量が10.8質量%未満の場合は寿命特性がよくなく、電解液の含量が11.93質量%を超える場合は過充電特性がよくないという問題点がある。
【0090】
図5は本発明の第2実施形態に係る円筒型二次電池の構造を示す分解斜視図であり、図6は本発明の第2実施形態に係る円筒型二次電池の構造を示す断面図である。
【0091】
第2実施形態に係る円筒型二次電池は、後述を除き前記第1実施形態と同一である。
【0092】
まず、本発明の第2実施形態に係る円筒型二次電池は、第1実施形態と同様に、長方形の板状に形成されている二つの電極127、128が積層されており、渦巻形に巻回してゼリーロール状の電極組立体120を形成する。この場合、これらの電極間及び二つの電極下側あるいは上側にはセパレータ126a、126bが一つずつ位置されるため、重なって巻回される二つの電極が接触部分にはいずれもセパレータが介在して短絡を防止する。
【0093】
また、電極タップ122、123は、一方が円筒型缶の開口部方向である上側に、他方が下側に電極から引き出されるように形成され、缶110は円筒型として鉄材、アルミニウム合金などを用いてディップドローイング方法などで形成される。
【0094】
また、缶の開口部を通って缶内部に電極組立体120を挿入し、缶内部には上部絶縁板125及び下部絶縁板123が備えられ、電極組立体120の中孔にセンターピン124が設けられる。
【0095】
そして、缶上部に電極組立体が設けられた上端レベルに合わせて缶側壁を缶内側に曲げてビード111が形成され、ビーディングがなされた缶上部にガスケット130が挿入され、キャップ組立体140は予め結合された形態に一度でガスケット内に設置するか、または部品ごとを順にガスケット内に積層することができる。
【0096】
この場合、本発明の第2実施形態おけるキャップ組立体140は、図5及び図6に示すように、従来のCID、PTC、ベントなどの積層構成に対し、CIDを除外した状態に絶縁材143を介在してPTC(Positive temperature Coefficient)146及びベント144を入れて結合させており、ベント144の下部には中孔を有するキャップダウン142が位置し、キャップダウン142の下部にサブプレート141が位置し、ベント144とキャップダウン142は絶縁材143により絶縁され、ベント144の突出部145はサブプレート141と接触し、サブプレート141はキャップダウン142と接続する。
【0097】
さらに詳しく説明すると、本発明の第2実施形態に係るキャップ組立体は、上からキャップアップ147、PTC146、ベント144、キャップダウン142、サブプレート141が備えられて形成される。ここで、キャップアップ147とPTC146及びPTC146とベント144は電気的に接続されており、ベント及びキャップダウンは周辺部に絶縁材143を介在して互いに離隔されて絶縁されると同時に、キャップダウン142の中央通孔を介してベント144の下部に突き出された突出部145が露出されるように形成される。また、突出部はサブプレート141と接触しており、サブプレート141はキャップダウン142と接続される。また、電極組立体の上部電極タップ122はキャップダウン142の一面に接続される。
【0098】
図7Aは本発明の第2実施形態に係る円筒型二次電池の電流遮断の作動圧力を説明するための断面図であり、図7Bは本発明の第2実施形態に係る円筒型二次電池の破断圧力を説明するための断面図である。
【0099】
まず、図7Aに示すように、多様な要因、例えば、電池の過充電により電池内部に所定量のガスが発生し、このガス発生による電池内部の圧力が増加することになる。
【0100】
この場合、ベント144は、板状として中央の下部に突出する突出部145が形成され、突出部145がサブプレート141の上面と溶接されて電気的に接続されているが、前記増加した内部圧力によって突出部が上部方向に変形されるようになる。
【0101】
また、このような変形により突出部145とサブプレート141との溶接部分が破断するか、または、図示するようにサブプレートの所定領域が破断され、結局電池の電気的流れを遮断することになる。
【0102】
本実施形態では、突出部とサブプレートとの溶接部分が破断されるか、またはサブプレートの所定領域が短絡することで、電池の電気的流れが遮断される際の電池内部圧力を電流遮断の作動圧力という。
【0103】
次に、図7Bに示すように、上記突出部とサブプレートとの溶接部分が破断されるか、またはサブプレートの所定領域が短絡することで、電池の電気的流れが遮断されて、電池の充電は中止されたが、内部的要因によりガスが継続的に発生して電池内部の圧力が増加したり、または外部的要因により電池内部に圧力がさらに増加したりすることになる。
【0104】
このような増加した内部圧力によってベント144は短絡することになる。
【0105】
すなわち、電池内部の圧力が継続的に増加することによって結局電池が爆発することになるが、これを防止するために、所定圧力以上になった場合、ベントを破断させることで、ガスを外部に放出させて内部圧力を減少させる。
【0106】
本実施形態では、ベントが破断される時の電池内部の圧力を破断圧力と言う。
この場合、本発明の第2実施形態に係る二次電池の電流遮断の作動圧力は、7〜9Kgf/cmであることが好ましい。
【0107】
前記電流遮断の作動圧力が7Kgf/cm未満の場合は、作動圧力が低すぎて90度放置特性がよくなく、また、前記電流遮断の作動圧力が9Kgf/cmを超える場合は作動圧力が高すぎて断熱過充電特性がよくない。
【0108】
以下、本実施形態の好適な実施例及び比較例を記載する。しかし、下記の実施例は、本実施形態の好適な一実施例であって、本実施形態が下記の実施例に限定されない。
【0109】
[実施例1]
正極活物質としてLiNi1/2Co1/5Mn3/10、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVDF)及び導電材としてカーボンを混合し、また、炭酸リチウム(LiCO)を混合した後、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極スラリーを製造した。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウムホイルにコーティングした後に乾燥、圧延して正極を製造した。陰極活物質として人造黒鉛、バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴム及び増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを混合した後、水に分散させて陰極活物質スラリーを製造した。このスラリーを厚さ15μmの銅ホイルにコーティングした後乾燥、圧延して陰極を製造した。
【0110】
上記製造の電極間にセラミックス物質とバインダーからなる多孔膜及びポリオレフィン系樹脂膜からなるセパレータを介在し、これを巻取及び圧縮して円筒型缶に挿入した。
【0111】
前記円筒型缶に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。
この場合、前記炭酸リチウム(LiCO)の量は、正極活物質層の全体100質量%に対し1.5質量%に混合し、電解液はベアセルの全体100質量%に対し10.8質量%に注入し、二次電池の電流遮断の作動圧力は9Kgf/cmとした。
【0112】
[実施例2]
電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0113】
[実施例3]
電流遮断の作動圧力を7Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0114】
[実施例4]
炭酸リチウム(LiCO)の量を正極活物質層の全体100質量%に対し1.0質量%に混合し、電解液をベアセルの全体100質量%に対し11.1質量%に注入し、電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0115】
[実施例5]
電解液をベアセルの全体100質量%に対し11.1質量%に注入し、リチウム二次電池の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0116】
[実施例6]
電解液をベアセルの全体100質量%に対し11.3質量%に注入し、電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0117】
[実施例7]
電解液をベアセルの全体100質量%に対し11.93質量%に注入し、電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0118】
[比較例1]
電流遮断の作動圧力を9.5Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0119】
[比較例2]
電流遮断の作動圧力を6Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0120】
[比較例3]
炭酸リチウム(LiCO)を混合せず、電解液をベアセルの全体100質量%に対し11.1質量%で注入し、電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0121】
[比較例4]
炭酸リチウム(LiCO)の量を正極活物質層の全体100質量%に対し0.5質量%に混合し、電解液をベアセルの全体100質量%に対し11.1質量%に注入し、電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0122】
[比較例5]
炭酸リチウム(LiCO)の量を正極活物質層の全体100質量%に対し0.8質量%に混合し、電解液をベアセルの全体100質量%に対し11.1質量%に注入し、電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0123】
[比較例6]
電解液をベアセルの全体100質量%に対し10.4質量%に注入し、電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0124】
[比較例7]
電解液をベアセルの全体100質量%に対し10.6質量%に注入し、電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0125】
[比較例8]
炭酸リチウム(LiCO)の量を正極活物質層全体100質量%に対し1.6質量%で混合して、電解液をベアセル全体100質量%に対し11.1質量%で注入して、電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き実施例1と等しく実施した。
【0126】
[比較例9]
炭酸リチウム(LiCO)の量を正極活物質層の全体100質量%に対し1.7質量%に混合し、電解液をベアセル全体100質量%に対し11.1質量%に注入し、電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0127】
[比較例10]
電解液をベアセルの全体100質量%に対し12.17質量%に注入し、電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0128】
[比較例11]
電解液をベアセルの全体100質量%に対し10.74質量%に注入し、電流遮断の作動圧力を8Kgf/cmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0129】
実施例1ないし7、比較例1ないし11のリチウム電池の断熱過充電特性を測定した。断熱過充電特性は電池を満充電して10分以上72時間以内に休止した後、断熱材で電池を包んで断熱させた後、2.0C充放電速度で18.5V、定電流(CC)/定電圧(CV)方式で1時間を充電して外観を観察した。この場合、前記断熱過充電特性を通過するためには、L0水準を維持しなければならず、詳しい基準として、L0は外観に変化がない水準で、L1は液漏れがある水準で、L2は表面温度200℃未満で煙が発生する水準で、また、L3は表面温度200℃以上で煙が発生する水準で、L4は発火が起きる水準で、L5は爆発、破裂が起きる水準を示す。
【0130】
また、実施例1ないし7、比較例1ないし11のリチウム電池の常温寿命特性を測定した。常温寿命特性は、0.8Cの充放電速度で4.2V、定電流(CC)/定電圧(CV)方式でカット−オフ充電した後、10分間休止し、また、1.0C充放電速度で3Vまで放電した後に10分間休止した。前記充電と放電を連続で総300回を実施して300回目の容量維持率を計算して300回の容量維持率%を測定した。容量維持率を測定して70%以上の場合は「OK」、70%未満の場合は「NG」として表示した。
【0131】
また、実施例1ないし7、比較例1ないし11のリチウム電池の90度放置特性を測定した。90度放置特性は、電池を満充電して90度チャンバに放置した後、放置する間の電圧をチェックして電流遮断手段が作動するか否かを観察した。電流遮断手段が8時間以上で作動しない場合は「OK」、8時間以内で作動する場合は「NG」として表示した。
【0132】
前記測定結果を下記の表1に表示した。
【0133】
【表1】

【0134】
表1を参照した場合、まず、実施例1ないし7は、炭酸リチウムの含量と電解液量の調節により断熱過充電時に発生するガス量を増加させて電流遮断時間を短縮することができた。また、電流遮断時間が短縮され、断熱過充電時の最大温度が77度以下になることで、断熱過充電特性がL0であり非常に良好であることがわかる。しかしながら、炭酸リチウムを含まない比較例3及び炭酸リチウムの含量が1.0質量%未満の比較例4、5の場合は断熱過充電特性があまりよくないことがわかる。また、電流遮断の作動圧力が9Kgf/cmを超える比較例1の場合も断熱過充電特性がよくないことがわかる。
【0135】
また、実施例1ないし7は、電解液量の調節によって容量維持率が約91%以上であるよい結果も得られ、電池の信頼性にも問題ないことがわかる。しかし、電解液の量が10.8質量%未満の比較例6及び7の場合は、容量維持率が70%未満であって電池の信頼性に問題があることがわかる。この場合、比較例11の場合も電解液の量が10.8質量%未満の場合であって、容量維持率は良好であるが、電解液の含量が少なくて断熱過充電特性がよくないことがわかる。
【0136】
また、実施例1ないし7は、90度放置時に電流遮断手段が8時間以上で作動しないので、90度放置特性は満足するが、炭酸リチウムの含量が1.5質量%を超える比較例8、9の場合の断熱過充電特性はよいが、90度放置時に電流遮断手段が8時間以内で作動して90度放置特性を満足しないことをわかる。また、電解液の含量が11.93質量%を超える比較例10の場合も断熱過充電特性はよいが、90度放置時に電流遮断手段が8時間以内で作動して90度放置特性を満足しないことがわかる。また、電流遮断の作動圧力が7Kgf/cm未満の比較例2の場合も断熱過充電特性はよいが、90度放置時に電流遮断手段が8時間以内で作動して90度放置特性を満足しないことがわかる。
【0137】
したがって、本実施形態では、炭酸リチウム(LiCO)の含量は正極活物質層の全体100質量%に対し1.0〜1.5質量%、電解液はベアセルの全体100質量%に対し10.8〜11.93質量%、二次電池の作動圧力は7〜9Kgf/cmであることが好ましい。
【0138】
また、本実施形態では、炭酸リチウムの含量、電解液の含量及び二次電池の作動圧力の調節によって、電池性能を低下させない範囲で電池安全性を最大限確保することができ、特に、容量維持率を低下させず、90度放置特性を満たせながら、断熱過充電特性の優れる二次電池を提供することができる。
【0139】
本実施形態によれば、電池性能を低下させない範囲で電池安全性を最大限確保することができる円筒型二次電池を提供することができる。
【0140】
また、炭酸リチウムの含量、電解液の含量及び二次電池の作動圧力の調節によって電池性能を低下させない範囲で電池安全性を最大限確保することができ、特に、容量維持率の低下なしで、90度放置特性を満たせながら断熱過充電特性が優れる二次電池を提供することができる。
【0141】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0142】
10、110 缶
13a、13b、123、125 絶縁板
20、120 電極組立体
21、23、127、128 電極
30、130 ガスケット
40、144 ベント
50 CID(current interrupt device)
60、146 PTC(positive temperature coefficient)
70、147 キャップアップ(Cap up)
80、140 キャップ組立体
141 サブプレート
142 キャップダウン
143 絶縁材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸リチウム(LiCO)を含む正極活物質層を備える正極、陰極活物質層を備える陰極及び前記正極と前記陰極とを分離させるセパレータを含む電極組立体と、
前記電極組立体が収容される缶と、
前記缶の上部に組み立てられるキャップ組立体と、
前記缶の内部に注入される電解液と、を含み、
前記炭酸リチウム(LiCO)の含量は正極活物質層の全体100質量%に対し1.0〜1.5質量%であり、前記電解液の含量はベアセルの全体100質量%に対し10.8〜11.93質量%であり、前記キャップ組立体による電流遮断の作動圧力は7〜9Kgf/cmであることを特徴とする、円筒型二次電池。
【請求項2】
前記正極活物質層は、ニッケル系正極活物質をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の円筒型二次電池。
【請求項3】
前記ニッケル系正極活物質は、下記式(1)ないし(7)からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項2に記載の円筒型二次電池。
LiNi1−y ……(1)
LiNi1−y2−z ……(2)
LiNi1−yCo2−z ……(3)
LiNi1−y−zCoα ……(4)
LiNi1−y−zCo2−αα ……(5)
LiNi1−y−zMnα ……(6)
LiNi1−y−zMn2−αα ……(7)
(上記式において0.9≦x≦1.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦α≦2であり、MとM’は同一であるか互いに異なっており、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、Sn、V、Ge、Ga、B、As、Zr、Mn、Cr、Fe、Sr、V及び稀土類元素からなる群から選択され、AはO、F、S及びPからなる群から選択され、XはF、S及びPからなる群から選択される。)
【請求項4】
前記キャップ組立体は、キャップアップ及び前記キャップアップの下部に順次に位置するPTC、CID及びベントを含んで形成されることを特徴とする、請求項1に記載の円筒型二次電池。
【請求項5】
前記電流遮断の作動圧力は、前記ベントの突出部と電極タップとの溶接部分が破断することで、電池の電気的流れが遮断された際の電池内部の圧力であることを特徴とする、請求項4に記載の円筒型二次電池。
【請求項6】
前記キャップ組立体は、キャップアップ及び前記キャップアップの下部に順次に位置するPTC、ベント、キャップダウン及びサブプレートを含んで形成されることを特徴とする、請求項1に記載の円筒型二次電池。
【請求項7】
前記電流遮断の作動圧力は、前記ベントの突出部とサブプレートの溶接部分が破断するか、またはサブプレートの所定領域が短絡することで、電池の電気的流れが遮断された際の電池内部の圧力であることを特徴とする、請求項6に記載の円筒型二次電池。
【請求項8】
前記陰極活物質としては、結晶質炭素、非晶質炭素、炭素複合体、炭素纎維、リチウム金属及びリチウム合金のうちいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の円筒型二次電池。
【請求項9】
前記電解液は、非水性有機溶媒及びリチウム塩を含むことを特徴とする、請求項1に記載の円筒型二次電池。
【請求項10】
電極組立体と、前記電極組立体が収容される缶と、前記缶が上部に組み立てられるキャップ組立体と、前記缶の内部に注入される電解液と、を含む円筒型二次電池において、
前記電極組立体は炭酸リチウム(LiCO)を含み、前記炭酸リチウム(LiCO)の含量は正極活物質層の全体100質量%に対し1.0〜1.5質量%であり、前記電解液の含量はベアセルの全体100質量%に対し10.8〜11.93質量%であり、前記キャップ組立体による電流遮断の作動圧力は7〜9Kgf/cmであることを特徴とする、円筒型二次電池。
【請求項11】
前記電極組立体は、正極活物質層を備える正極、陰極活物質層を備える陰極及び前記正極と前記陰極とを分離させるセパレータを含み、前記正極活物質層はニッケル系正極活物質をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の円筒型二次電池。
【請求項12】
前記ニッケル系正極活物質は、下記式(1)ないし(7)からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項11に記載の円筒型二次電池。
LiNi1−y ……(1)
LiNi1−y2−z ……(2)
LiNi1−yCo2−z ……(3)
LiNi1−y−zCoα ……(4)
LiNi1−y−zCo2−αα ……(5)
LiNi1−y−zMnα ……(6)
LiNi1−y−zMn2−αα ……(7)
(上記式において0.9≦x≦1.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦α≦2であり、MとM’は同一であるか互いに異なっており、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、Sn、V、Ge、Ga、B、As、Zr、Mn、Cr、Fe、Sr、V及び稀土類元素からなる群から選択され、AはO、F、S及びPからなる群から選択され、XはF、S及びPからなる群から選択される。)
【請求項13】
前記キャップ組立体は、キャップアップ及び前記キャップアップの下部に順次に位置するPTC、CID及びベントを含んで形成されることを特徴とする請求項10に記載の円筒型二次電池。
【請求項14】
前記電流遮断の作動圧力は、前記ベントの突出部と電極タップとの溶接部分が破断することで、電池の電気的流れが遮断された際の電池内部の圧力であることを特徴とする請求項13に記載の円筒型二次電池。
【請求項15】
前記キャップ組立体は、キャップアップ及び前記キャップアップの下部に順次に位置するPTC、ベント、キャップダウン及びサブプレートを含んで形成されることを特徴とする請求項10に記載の円筒型二次電池。
【請求項16】
前記電流遮断の作動圧力は、前記ベントの突出部とサブプレートとの溶接部分が破断するか、またはサブプレートの所定領域が短絡することで、電池の電気的流れが遮断された際の電池内部の圧力であることを特徴とする請求項15に記載の円筒型二次電池。
【請求項17】
前記陰極活物質としては、結晶質炭素、非晶質炭素、炭素複合体、炭素纎維、リチウム金属及びリチウム合金のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項11に記載の円筒型二次電池。
【請求項18】
前記電解液は、非水性有機溶媒及びリチウム塩を含むことを特徴とする請求項10に記載の円筒型二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2010−192438(P2010−192438A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27874(P2010−27874)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】