説明

円筒型蓄電池

【課題】簡単な構成にして内部短絡の発生を抑制可能な円筒型蓄電池を提供する。
【解決手段】セパレータを介して正極板及び負極板を渦巻き状に巻回して形成される電極群を円筒状の外装缶に収納してなる円筒型蓄電池において、負極板は正極集電板から離間してなり、正極板(6)の正極基板(7)に接合された金属薄板(32)は、正極板の巻き始めに対応する端部に金属薄板と正極基板との連結部分が正極基板の内方に偏倚して位置するよう切り欠かれた切欠部(33)を形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円筒型蓄電池、詳しくは円筒型蓄電池の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばニッケル水素二次電池のような円筒型蓄電池は、円筒状の密閉容器内に正極板と負極板とをセパレータを挟んで渦巻き状に巻回し収納して構成されている。
このような円筒型蓄電池では、一端側に正極板の正極集電板を備えるとともに、他端側に負極板の負極集電板を備えており、これら正極集電板及び負極集電板が電池の正電極及び負電極とそれぞれ電気的に接続される。
正極板は、金属多孔体からなる基板を備え、この基板には活物質が充填されている。基板の上記一端側の端部からは金属多孔体からなる連結部が一体に突出しており、当該連結部の一方の面には当該端部に沿い延びて金属薄板が溶接等されている。
【0003】
ところで、円筒型蓄電池では、金属多孔体と金属薄板で材質が異なり、一般に金属多孔体は柔らかく曲がり易い一方で金属薄板は堅く曲がり難いことから、巻径が小さくなる正極板の円筒型蓄電池の中心側の端部、即ち正極板の巻き始めの部分では、金属薄板と金属多孔体の連結部との連結部分において金属多孔体が切れ易いという問題がある。このように金属多孔体が切れてしまうと、金属多孔体から離間して突出した金属薄板の先端がセパレータを破り、隣接する負極板と接触して内部短絡しかねず、好ましいことではない。
そこで、例えば、金属薄板と金属多孔体の連結部との連結部分を粘着テープ等の絶縁被膜で覆うようにし、内部短絡を防止する技術が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−307089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるように金属薄板と金属多孔体の連結部との連結部分に比較的小さな粘着テープを適切に貼付する作業は容易なことではなく、製造作業に手間がかかるという問題がある。
本発明は上述の事情に基づきなされたもので、その目的とするところは、簡単な構成にして内部短絡の発生を抑制可能な円筒型蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の円筒型蓄電池は、セパレータを介して正極板及び負極板を渦巻き状に巻回して形成される電極群を円筒状の外装缶に収納してなる円筒型蓄電池であって、前記正極板と前記外装缶の正極端子との間には正極集電板が通電可能に介装され、前記正極板は、正極活物質の充填された金属多孔体からなる導電性の正極基板と、該正極基板の前記正極集電板側の端部に該正極集電板側に突出して接合された帯状の金属薄板とを備え、該金属薄板が前記正極集電板と通電可能に接触してなり、前記負極板は、前記正極集電板から離間してなり、前記金属薄板は、前記正極板の巻き始めに対応する端部に、該金属薄板と前記正極基板との連結部分が前記正極集電板側の角部に対し該正極基板の内方に偏倚して位置するよう切り欠かれた切欠部を形成してなることを特徴とする。
【0007】
請求項2の円筒型蓄電池では、請求項1において、前記切欠部は、前記金属薄板を前記正極基板に接合したときに該金属薄板の切り欠いた辺と該正極基板の正極集電板側の辺とのなす角度が60°〜85°の範囲となるように、前記正極集電板側の角部を基点として前記正極基板に向け斜めに切り欠かれてなることを特徴とする。
【0008】
請求項3の円筒型蓄電池では、請求項1または2において、前記負極板の上端は、前記金属薄板の下端より下方に位置することを特徴とする。
請求項4の円筒型蓄電池では、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記セパレータの上端は、前記負極板の上端と前記正極集電板の間に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の円筒型蓄電池によれば、セパレータを介して正極板及び負極板を渦巻き状に巻回して形成される電極群を円筒状の外装缶に収納してなる円筒型蓄電池において、負極板は正極集電板から離間しており、正極基板に接合された金属薄板の正極板の巻き始めに対応する端部には、金属薄板と正極基板との連結部分が正極集電板側の角部に対し正極基板の内方に偏倚して位置するよう切り欠かれた切欠部が形成されている。
【0010】
従って、正極板の巻き始めに対応する端部において正極基板が金属薄板と正極基板との連結部分で切れ、金属薄板の正極集電板側の先端がセパレータを破って負極板の領域に達したとしても、負極板は正極集電板から離間しているので、当該金属薄板の先端が負極板と接触することは無く、また金属薄板のうち金属薄板と正極基板との連結部分に対応する部位は、先端に比べて尖っていないので、セパレータを破って負極板の領域に達することが好適に抑止される。
これにより、正極板の金属薄板と負極板とが不用意に短絡することが防止され、簡単な構成でありながら円筒型蓄電池の内部短絡を防止することができる。故に、円筒型蓄電池の生産効率(歩留まり)を向上させることができるとともに、円筒型蓄電池の安全性の向上を図ることができる。
【0011】
また、請求項2の円筒型蓄電池によれば、切欠部は金属薄板の切り欠いた辺と正極基板の正極集電板側の辺とのなす角度が60°〜85°の範囲となるように正極集電板側の角部を基点として正極基板に向け斜めに切り欠かれてなるので、当該角度が仮に60°未満であると正極基板が金属薄板と正極基板との連結部分で切れ易くなったり、金属薄板の先端が鋭利になり過ぎてセパレータを破り易くなったりし、一方、当該角度が仮に85°を越えると金属薄板の先端全体がセパレータを貫通して負極板の領域に達する可能性が高くなるおそれがあるのであるが、斯かる不都合を回避でき、確実に内部短絡を防止することができる。
【0012】
また、請求項3の円筒型蓄電池によれば、負極板の上端は金属薄板の下端より下方に位置するので、金属薄板の正極基板からの突出部分がセパレータを貫通して負極板の領域に達したとしても、この範囲に負極板は無いので、確実に金属薄板の先端が負極板と接触することを回避でき、内部短絡を防止することができる。
【0013】
また、請求項4の円筒型蓄電池によれば、セパレータの上端は負極板の上端と正極集電板の間に位置するので、正極板の巻き始めに対応する端部において正極基板が金属薄板と正極基板との連結部分で切れたとしても、金属薄板の切欠部の辺がセパレータに当たることになり、金属薄板のうち金属薄板と正極基板との連結部分に対応する部位がセパレータを破って負極板の領域に達することが好適に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の円筒型蓄電池の一実施形態に係るニッケル水素二次電池について一部を展開して示した縦断面図である。
【図2】図1のニッケル水素二次電池における正極板と正極集電板及び負極板と負極集電板との接続部を示す断面図である。
【図3】図1のニッケル水素二次電池の正極板を示す正面図である。
【図4】図1のA−A線における横断面図であって、本発明に係るニッケル水素二次電池の作用効果を説明する図である。
【図5】図2に対し本発明に係るニッケル水素二次電池の作用効果に係る内容を追加して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の円筒型蓄電池の一実施形態に係る円筒形のニッケル水素二次電池について一部を展開して示した縦断面図である。
ニッケル水素二次電池(円筒型蓄電池)は、一端が開口した円筒状の外装缶2を備え、外装缶2は導電性を有している。外装缶2の中には、アルカリ電解液(図示せず)とともに略円筒状の電極群4が収容され、電極群4は、それぞれ帯状の正極板6及び負極板8がセパレータ10を挟んで渦巻き状に巻回して形成されている。
【0016】
外装缶2の開口は蓋体14によって閉塞され、蓋体14は、中央に弁孔16aを有する略円形の蓋板16を含んでいる。蓋板16の外周部は、絶縁ガスケット18を介し外装缶2に開口縁をかしめ加工して固定されている。また、蓋板16の外面上には、弁孔16aを閉塞するようにゴムと金属板とを張り合わせた弁体20が配置され、弁体20を覆うようにフランジ付きの円筒形状の正極端子22が固定されている。正極端子22内には、弁体20を付勢する圧縮コイルばね24が収容されている。
蓋板16の内面には、折り曲げられた正極リード26の一端が溶接され、正極リード26の他端は円形の正極集電板28に接続されている。電極群4の一端側において、正極集電板28と正極板6とは電気的に接続されており、これにより、正極板6と正極端子22とが電気的に接続されている。
【0017】
正極板6は、例えば非焼結式電極であって、帯状をなす導電性の正極基板7を有している。正極基板7は、多孔質構造を有する金属多孔体であり、3次元網目構造の骨格により形成される無数の空孔を含み、正極基板7の空孔内には、正極活物質として水酸化ニッケル粒子が充填されている。
図2に正極板と正極集電板及び負極板と負極集電板との接続部を断面図で示すように、正極集電板28側の正極基板7の端部には、金属多孔体から延びて連結部30が形成されている。そして、連結部30の径方向内面には、例えばニッケルリボン等からなる帯状の金属薄板32が溶接又は導電性接着剤によって接合され固定されている。
金属薄板32は、ニッケル水素二次電池の軸線方向で視て連結部30から正極集電板28側に突出しており、金属薄板32及び正極基板7の径方向内面は略面一をなしている。
【0018】
このように正極基板7の端部に金属薄板32が接合されることで、金属薄板32を介して正極集電板28と正極板6とが接触し、確実に電気的に接続されている。
図3は、図1に示すニッケル水素二次電池の正極板を示す正面図であり、以下、正極板6の本発明に係る構成の詳細について説明する。
上述したように、正極板6は、連結部30に金属薄板32が溶接又は導電性接着剤によって固定されて構成されているが、金属薄板32のうち、電極群4をニッケル水素二次電池に収納したときにニッケル水素二次電池の中心側に位置する端部、即ち巻径が小さくなる正極板6の巻き始めに対応する端部は正極集電板28側の角部を基点として正極基板7に向け斜めに切り欠かれて切欠部33を形成している。
【0019】
ここに、切欠部33において金属薄板32を切り欠く量については、図3に示すように、金属薄板32を連結部30に固定したときに金属薄板32の切り欠いた辺と正極基板7の正極集電板28側の辺とのなす角度(挟角)が60°〜85°の範囲となるように設定されている。つまり、正極板6の巻き始めに対応する端部では、金属薄板32と正極基板7の連結部30との連結部分において、金属薄板32が正極集電板28側の角部に対し正極基板7の内方に偏倚して位置するよう構成されている。
【0020】
一方、負極板8は、水素吸蔵合金からなり、帯状をなす導電性の負極基板9を有している。負極基板9は、極板芯体の表面に負極活物質としてペースト状の水素吸蔵合金を充填して構成されている。
また、負極板8の上端は、金属薄板32の下端より下方に位置するように構成され、さらに、セパレータ10の上端は、負極板8の上端と正極集電板28の間に位置するように構成されている。
以下、このように構成された電極群4の作用効果について説明する。
図4は、図1のA−A線における横断面図、即ち外装缶2に収納された電極群4の巻回状態を示す図である。
【0021】
図4では、正極板6の金属薄板32が正極基板7と共に適正に巻回されているときの金属薄板32が実線で示されるとともに、正極板6の巻き始めに対応する端部において正極基板7が金属薄板32と正極基板7との連結部分で切れた場合の金属薄板32が破線で示されている。
同図に示すように、正極板6の巻き始めに対応する端部において正極基板7が金属薄板32と正極基板7との連結部分で切れた場合には、金属薄板32は、正極基板7に追従して曲がることなく正極基板7から離間し、先端Sは尖っていることからセパレータ10を破って負極板8の領域に達することとなる。
【0022】
しかしながら、図5を参照すると、上記図2に対し金属薄板32の先端Sがセパレータ10を破って負極板8の領域に達した状態の図が示されているが、正極集電板28側における負極板8の負極基板9の端部、即ち負極板8の上端は、正極集電板28から充分に離間して位置するように構成されており、さらに、正極板6の巻き始めに対応する端部では、金属薄板32と正極基板7との連結部分において金属薄板32が正極集電板28側の角部に対し正極基板7の内方に偏倚して位置しているので、金属薄板32の正極集電板28側の先端Sがセパレータ10を破って負極板8の領域に達したとしても、金属薄板32の先端Sが負極板8と接触することは無く、また金属薄板32のうち金属薄板32と正極基板7との連結部分に対応する部位は、先端Sに比べて尖っていないので、セパレータ10を破って負極板8の領域に達することが好適に抑止される。
【0023】
これにより、正極板6の金属薄板32と負極板8とが不用意に短絡することが防止される。
以上説明したように、本発明に係る円筒型蓄電池によれば、負極板8の正極集電板28側における負極基板9の端部、即ち負極板8の上端が正極集電板28から充分に離間して位置する構成にして、正極板6の巻き始めに対応する端部において、金属薄板32を斜めに切り欠き、金属薄板32と正極基板7との連結部分で金属薄板32が正極集電板28側の角部に対し正極基板7の内方に偏倚して位置するようにしたので、簡単な構成でありながら内部短絡を防止することができる。これにより、円筒型蓄電池の生産効率(歩留まり)を向上させることができるとともに、円筒型蓄電池の安全性を向上させることができる。
【0024】
特に、金属薄板32を切り欠く量については、図3に示すように、金属薄板32を連結部30に固定したときに金属薄板32の切り欠いた辺と正極基板7の正極集電板28側の辺とのなす角度が60°〜85°の範囲となるように設定されている。従って、当該角度が仮に60°未満であると正極基板7が金属薄板32と正極基板7との連結部分で切れ易くなるとともに、金属薄板32の先端Sが鋭利になり過ぎてセパレータ10を破り易くなり、一方、当該角度が仮に85°を越えると金属薄板32の先端全体がセパレータ10を貫通して負極板8の領域に達する可能性が高くなるのであるが、当該角度を60°〜85°の範囲で設定することにより、斯かる不都合もなく良好に上記効果を得ることができ、確実に内部短絡を防止することができる。
【0025】
また、負極板8の上端については、正極集電板28から充分に離間し、金属薄板32の下端より下方に位置するように構成されているので、金属薄板32の連結部30からの突出部分がセパレータ10を貫通して負極板8の領域に達したとしても、この範囲に負極板8は無く、確実に金属薄板32が負極板8と接触することを回避し、内部短絡を防止することができる。
さらに、セパレータ10の上端は、負極板8の上端と正極集電板28の間に位置するように構成されているので、金属薄板32の切り欠いた辺がセパレータ10に当たることになり、金属薄板32のうち金属薄板32と正極基板7との連結部分に対応する部位がセパレータ10を破って負極板8の領域に達することを好適に防止できる。
以上で本発明に係る円筒型蓄電池の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
【0026】
例えば、上記実施形態では、金属薄板32と正極基板7との連結部分を特に粘着テープ等の絶縁被膜で覆うようにしていないが、金属薄板32と正極基板7との連結部分を粘着テープ等の絶縁被膜で覆い補強するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、金属薄板32を斜めに切り欠くようにしているが、金属薄板32と正極基板7との連結部分で金属薄板32が正極集電板28側の角部に対し正極基板7の内方に偏倚して位置するように設定されれば、金属薄板32を斜め以外に円弧状、階段状に切り欠くようにしてもよい。
また、上記実施形態では、ニッケル水素二次電池を例に説明したが、これに限定されず、本発明をニッケル−カドミウム二次電池、リチウムイオン二次電池、さらには1次電池に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
4 電極群
6 正極板
7 正極基板
8 負極板
9 負極基板
10 セパレータ
30 連結部
32 金属薄板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して正極板及び負極板を渦巻き状に巻回して形成される電極群を円筒状の外装缶に収納してなる円筒型蓄電池であって、
前記正極板と前記外装缶の正極端子との間には正極集電板が通電可能に介装され、
前記正極板は、正極活物質の充填された金属多孔体からなる導電性の正極基板と、該正極基板の前記正極集電板側の端部に該正極集電板側に突出して接合された帯状の金属薄板とを備え、該金属薄板が前記正極集電板と通電可能に接触してなり、
前記負極板は、前記正極集電板から離間してなり、
前記金属薄板は、前記正極板の巻き始めに対応する端部に、該金属薄板と前記正極基板との連結部分が前記正極集電板側の角部に対し該正極基板の内方に偏倚して位置するよう切り欠かれた切欠部を形成してなることを特徴とする円筒型蓄電池。
【請求項2】
前記切欠部は、前記金属薄板を前記正極基板に接合したときに該金属薄板の切り欠いた辺と該正極基板の正極集電板側の辺とのなす角度が60°〜85°の範囲となるように、前記正極集電板側の角部を基点として前記正極基板に向け斜めに切り欠かれてなることを特徴とする、請求項1に記載の円筒型蓄電池。
【請求項3】
前記負極板の上端は、前記金属薄板の下端より下方に位置することを特徴とする、請求項1または2記載の円筒型蓄電池。
【請求項4】
前記セパレータの上端は、前記負極板の上端と前記正極集電板の間に位置することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか記載の円筒型蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−38545(P2012−38545A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177147(P2010−177147)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(510206213)FDKトワイセル株式会社 (36)
【Fターム(参考)】