説明

円筒型貯留タンクとその組立工法

【課題】組み立て方法が簡単で、筐体の剛性が高く、運搬性等にも資する円筒型貯水タンクとその組立・施工方法の提供を図る。
【解決手段】液体を貯留する円筒型貯留タンク1であって、 複数の連結孔5を備えた連結フランジ4を両端に有し、複数枚組み合わせることによって円筒体を形成する円弧状の金属外壁エレメント2からなり、該金属外壁エレメント2をその両端にある連結フランジ4に備えられた連結孔5を介して複数枚連結して円筒体を形成することで組み立てられる構造となっている。かかる金属外壁エレメント2の材料として、ステンレス製を採用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を貯留するための組立式の円筒型貯留タンクに関し、詳しくは、組立方法が簡単で且つ筐体の剛性が高い円筒型貯留タンクとその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、組立式の貯留タンクの形状としては、例えば、単位パネルと補強枠で形成される角型の「パネル組立式タンク」(特許文献1)や、球状のユニットタンクと連結フランジで構成される「液体用組み立て式タンクの結合装置」(特許文献2)や、分割された筒型コンテナを組み合わせた「簡易組み立てタンク」(特許文献3)などが提案されている。
【0003】
しかしながら、上記提案を始めとする多くの簡易組立式の貯留タンクは、貯留する液体の容積や重量に合わせてタンクの筐体自体を剛性が高い組み立て補強部材で構成されているものであった。また、水漏れ対策として組み立て部材の加工精度やパッキン部材の選択、正確な水平・垂直・真円度を実現する高い組立技法が必要とされ、高い製造コストと熟練された組立職人が必要とされていた。
【0004】
【特許文献1】特許公開2001−278385号公報
【特許文献1】登録実用新案第3044332号公報
【特許文献1】特許公開2001−40717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、複数の金属外壁エレメントで組み合わされる貯留タンク筐体内にビニール袋体に水を入れ、その水圧で正確に真円を形成し、さらに充填コンクリートを流し込んで養生し、基礎コンクリートと一体化固定して簡単に組み立てることができる、軽量で安価な円筒型貯水タンクを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、液体を貯留する円筒型貯留タンクであって、複数の連結孔を備えた連結フランジを両端に有し、複数枚組み合わせることによって円筒体を形成する円弧状の金属外壁エレメントからなり、金属外壁エレメントをその両端にある連結フランジに備えられた連結孔を介して複数枚連結して円筒体を形成することで組み立てられる構造を採用している。
【0007】
また、本発明は、前記金属外壁エレメントが、ステンレス製からなる構成とすることができる。
【0008】
さらに、本発明は、前記円筒型貯留タンクを設置する組立工法であって、(1)所定の場所に基礎コンクリートを敷設し、(2)該基礎コンクリート上に円筒型貯留タンクの設置位置の墨出し並びにアンカーを打設し、(3)金属外壁エレメントを該墨出し位置に合わせて略円筒体状に複数枚順次配設し、(4)配設された隣接する金属外壁エレメントの各連結フランジ間に帯状のパッキン部材を挟むとともに、該連結フランジに備えられた連結孔を介して金属外壁エレメント同士を仮締めして固定し、(5)複数枚の金属外壁エレメントにより形成された略円筒体内にビニール袋体を介して水を入れ、その水圧によって複数枚の金属外壁エレメントが真円筒体を形成した状態で該金属外壁エレメント同士を本締めして固定し、(6)円筒体内の基礎コンクリートと金属外壁エレメントとの接合部をシーリング処理後、充填コンクリートを流し込んで養生し、基礎コンクリートと金属外壁エレメントを一体化固定し、(7)充填コンクリートの上面を防水塗装またはモルタル仕上げ加工する円筒型貯留タンクの組立工法を採用するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる円筒型貯留タンクとその組立工法によれば、円筒型貯留タンクの筐体を構成するパーツ類を比較的単純な構造で厚みのない寸法で分割・形成することで、重ね合わせて保管したり、狭い場所においての運搬や組立・設置作業が容易になると共に、工場での製造過程における大きさの制限や製造・加工コストの低減が図られるものである。
【0010】
また、本発明にかかる円筒型貯留タンクとその組立工法によれば、円筒状に仮設的に配設された金属外壁エレメント内にビニール袋体を設けて水を充填させ、その水圧でもって真円筒体を正確に形成する工法を採用することで、従来のようなパーツ類の寸法加工精度ならびに組立精度を必要としない上、加工ならびに組立精度に起因する筐体のゆがみによる水漏れの要因を排除することできるものである。
【0011】
さらに、本発明にかかる円筒型貯留タンクとその組立工法によれば、真円筒体を形成する金属外壁エレメント内に充填コンクリートを流し込んで養生し、筐体自体を基礎コンクリートと一体化固定させることにより、円筒型貯留タンクの構造強度も補強されるため、連結フランジが補強リブの役割を果たすなどの要因も含め、構成部品の軽量化・簡素化・密封化が図られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明にかかる円筒型貯留タンクとその組立工法は、複数の金属外壁エレメントで組み合わされる貯留タンク筐体内にビニール袋体に水を入れ、その水圧で正確に真円を形成し、さらに充填コンクリートを流し込んで養生し、基礎コンクリートと一体化固定して簡単に組み立てられることができることを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる円筒型貯留タンクとその組立工法の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明にかかる円筒型貯留タンク1の全体を示す斜視図である。
円筒型貯留タンク1は、複数組み合わせることで円筒体を形成する金属外壁エレメント2からなり、組み立てられた該金属外壁エレメント2の下方据付部を、充填コンクリート9で基礎コンクリート8と密着固定されるステンレス製の貯留タンク筐体である。
【0014】
金属外壁エレメント2は、複数組み合わせことによって円筒体を形成するステンレス製の円弧状の複数のエレメント体で、両端に複数の連結孔5を備えた連結フランジ4を有し、基礎コンクリート8に連結されて組み立てられ、また必要に応じて金属上蓋エレメント3に連結される。
【0015】
なお、本発明にかかる金属外壁エレメント2を何枚組み合わせて一の円筒体を形成させるかについては、完成される円筒型貯留タンク1の大きさから各エレメント体の運搬効率等を考慮して決定される。図面では、円筒体を六分割した大きさで一つの金属外壁エレメント2を構成させる場合について示している。
【0016】
また、必要に応じて一の金属外壁エレメント2には、他のパーツが組み込まれた形態のものも考え得る。例えば、図面にもあるように、所定箇所に排水口を備え持つ金属外壁エレメント2の形態等が考え得る。
【0017】
金属上蓋エレメント3について、本発明の構成要素においては任意であり、形状や材質等、特に限定するものではない。図面では、2つを組み合わせることで円形を形成する半円形状のエレメント体を用いた場合について示しており、周縁上に複数の連結孔5を備えた連結フランジ4を有して金属外壁エレメント2と連結されて組み立てられている。
【0018】
充填コンクリート9は、基礎コンクリート8上に複数の金属外壁エレメント2で枠組みされた状態の円筒体内に充填コンクリート9を流し込んで形成され、さらにシーリング処理後、養生して一体化・固定される。その際、金属外壁エレメント2が型枠の役目を果たすため、作業工数の削減と密封が可能となる。
【0019】
図2は、本発明にかかる円筒型貯留タンク1の組立工法を示す説明図である。
図2(a)は、基礎打ち工程を示すものである。該円筒型貯留タンク1の設置場所において、下地に小砂利、栗石等を敷き占め、場合によって鉄筋メッシュを配し、基礎コンクリート8を埋め戻して敷設する。
鉄筋メッシュは、地盤が弱い場合、温度・湿度の変化が大きい設置箇所、耐用年数等を考慮してひび割れ防止のため使用されるものである。
【0020】
図2(b)は、墨出し・アンカー出し工程を示すものである。基礎コンクリート8上に円筒型貯留タンク1の設置位置の墨出しを行い、金属外壁エレメント2の連結位置にアンカーボルトを打設する。
【0021】
図2(c)は、配設工程を示すものである。金属外壁エレメント2を墨出し位置とアンカー位置に合わせて略円筒体状に配設する。
【0022】
図2(d)は、真円筒出し・仮締め工程を示すものである。配設された隣接する金属外壁エレメント2の各連結フランジ4間に、帯状のパッキン部材7を挟むとともに、該連結フランジ4に備えられた連結孔5を介して金属外壁エレメント2同士を連結ボルト6等により仮締めして固定する。これにより、該金属外壁エレメント2が略円筒体を形成する。
【0023】
図2(e)は、本締め工程を示すものである。上記仮締めにより形成された略円筒体内にビニール袋体21を設け、該ビニール袋体21を介して水を充填する。そうすることで、略円筒体を形成していた複数の金属外壁エレメント2が、水圧によって真円筒体を形成する。このようにして複数の金属外壁エレメント2が真円筒体となった状態において、金属外壁エレメント2同士を連結ボルト6等の微調整を行いつつ本締めして固定する。
【0024】
図2(f)は、シーリング処理、養生固定、防水・仕上げ加工、最終組立工程を示すものある。複数の金属外壁エレメント2からなる円筒体内の基礎コンクリート8との接合部をシーリング剤10によりシーリング処理後、充填コンクリート9を流し込んで基礎コンクリート8と金属外壁エレメント2を養生し一体化・固定する。その後、充填コンクリート9の上面を防水塗装またはモルタル仕上げ加工し、必要に応じて金属外壁エレメント2の上部に金属上蓋エレメント3を連結・固定して組み立て完了する。
【0025】
図3は、本発明にかかる円筒型貯留タンク1の実施形態を示す説明図であり、雨水19の再利用のための貯水タンクに関する実施例である。
家屋の屋根11に降った雨水19は、雨樋12を通って雨水導入口13から円筒型貯留タンク1に貯留される。
円筒型貯留タンク1内の水は、濾過器14と汲み上げポンプ15を経由してトイレや園芸用の散水に活用される。
円筒型貯留タンク1内の水が使用されて一次水位S1より下がった場合、ボールタップ16が作動して上水道17が自動補給される。
雨が多く降り円筒型貯留タンク1内の水が二次水位S2を越えた場合、オーバーフロー排水口18より自然排出される。
清掃用ドレイン20を開放して年2回ほどの円筒型貯留タンク1内の清掃を行う。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の円筒型貯留タンク1によれば、上記実施例のような雨水の貯留タンクのみならず、家庭用の雑水タンク、園芸用の散水タンクや家畜の糞尿処理タンク、農薬の貯蔵タンクや湧き水の貯蔵タンクとして利用することができる外、製造工場の油脂、洗浄液、清掃散水貯留タンクなどにおいて利用される場面は多く、その応用範囲は広いと推測される。したがって、本発明にかかる円筒型貯留タンク1の産業上の利用可能性は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明にかかる円筒型貯留タンクの全体を示す斜視図である。
【図2】円筒型貯留タンクの組立工法を示す説明図である。
【図3】本発明にかかる円筒型貯留タンクの実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 円筒型貯留タンク
2 金属外壁エレメント
3 金属上蓋エレメント
4 連結フランジ
5 連結孔
6 連結ボルト
7 パッキン部材
8 基礎コンクリート
9 充填コンクリート
10 シーリング剤
11 屋根
12 雨樋
13 雨水導入口
14 濾過器
15 汲み上げポンプ
16 ボールタップ
17 上水道
18 オーバーフロー排水口
19 雨水
20 清掃用ドレイン
21 ビニール袋体
S1 一次水位
S2 二次水位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する円筒型貯留タンクであって、
複数の連結孔を備えた連結フランジを両端に有し、複数枚組み合わせることによって円筒体を形成する円弧状の金属外壁エレメントからなり、
金属外壁エレメントをその両端にある連結フランジに備えられた連結孔を介して複数枚連結して円筒体を形成することで組み立てられることを特徴とする円筒型貯留タンク。
【請求項2】
前記金属外壁エレメントが、ステンレス製からなることを特徴とする請求項1に記載の円筒型貯留タンク。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の円筒型貯留タンクを設置する組立工法であって、
(1)所定の場所に基礎コンクリートを敷設し、
(2)該基礎コンクリート上に円筒型貯留タンクの設置位置の墨出し並びにアンカーを打設し、
(3)金属外壁エレメントを該墨出し位置に合わせて略円筒体状に複数枚順次配設し、
(4)配設された隣接する金属外壁エレメントの各連結フランジ間に帯状のパッキン部材を挟むとともに、該連結フランジに備えられた連結孔を介して金属外壁エレメント同士を仮締めして固定し、
(5)複数枚の金属外壁エレメントにより形成された略円筒体内にビニール袋体を介して水を入れ、その水圧によって複数枚の金属外壁エレメントが真円筒体を形成した状態で該金属外壁エレメント同士を本締めして固定し、
(6)円筒体内の基礎コンクリートと金属外壁エレメントとの接合部をシーリング処理後、充填コンクリートを流し込んで養生し、基礎コンクリートと金属外壁エレメントを一体化固定し、
(7)充填コンクリートの上面を防水塗装またはモルタル仕上げ加工
することを特徴とする円筒型貯留タンクの組立工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−12849(P2009−12849A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180216(P2007−180216)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(507231080)
【出願人】(507232216)
【出願人】(507232227)
【出願人】(507232238)
【出願人】(507232249)
【Fターム(参考)】