説明

再生エネルギー型発電装置及びその運転方法

再生エネルギーの変動に関わらず、所望の油圧モータの出力を得ることができ、安定した発電を可能とした再生エネルギー型発電装置及びその運転方法を提供する。再生エネルギーから電力を生成する再生エネルギー型発電装置であって、再生エネルギーによって駆動される回転シャフト8と、回転シャフトによって駆動される可変容量型の油圧ポンプ12と、油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される可変容量型の油圧モータ14と、油圧モータに連結された発電機20と、油圧ポンプの吐出側を油圧モータの吸込側に連通させる高圧油ライン16と、油圧ポンプの吸込側を油圧モータの吐出側に連通させる低圧油ライン18と、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpに基づいて、油圧モータ14の目標出力POWERmotorを算出するモータ目標出力算出部45と、モータ目標出力算出部により算出された目標出力POWERmotorに基づいて、発電機20の回転数が一定になるように油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定するモータ要求値算出部46と、油圧モータの押しのけ容積を要求値Dに調節するモータ制御部48とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプ及び油圧モータを組み合わせた油圧トランスミッションを介して、再生エネルギー源から得られるロータの回転エネルギーを発電機に伝達する再生エネルギー型発電装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保全の観点から、風力を利用した風力発電装置や、潮流エネルギーを利用した潮流発電装置等の再生エネルギー型発電装置の普及が進んでいる。
【0003】
このような装置には、従来からギヤ式(機械式)のトランスミッションが多く用いられてきた。ギヤ式トランスミッションは、再生エネルギー源のエネルギー流速が入力される風力発電装置や潮流発電装置のロータのようなエネルギー抽出機構の低速回転を増速し、発電機を駆動するための高速回転に変換する。例えば、一般的な風力発電装置では、ロータの回転数は数rpm〜数十rpm程度であるのに対し、発電機の定格回転数は通常1500rpm又は1800rpmであるから、ロータと発電機との間に機械式(ギヤ式)の増速機が設けられている。すなわち、ロータの回転数は、増速機で発電機の定格回転数まで増速された後、発電機に入力される。
上記したようなギヤ式トランスミッションは、故障しやすかったり、メンテナンス及び交換、あるいは修理の費用が嵩んだりする傾向があるため、これを解消する設計および建設が課題となっていた。
【0004】
さらなる課題として、あらゆる条件下において、エネルギー抽出機構により最も効率的にエネルギーを抽出可能な再生エネルギー型発電装置を設計することが挙げられる。
このような設計を実現する最も効果的な装置として、ピッチ角が固定された状態でブレードを保持し、先端速度比がほぼ一定となるように、動作範囲の大部分にわたる風速または流速に対して比例的にブレードの回転数を変化させるものがある。費用効率が高い規模の再生エネルギー型発電装置においては、ギヤ式トランスミッションはこの比が常に固定されており、そのため複雑化し故障しやすい電力変換装置により配電網へ電力供給しなければならない。
【0005】
そこで、近年、機械式トランスミッションに替えて、可変容量型の油圧ポンプ及び油圧モータを組み合わせた油圧トランスミッションを採用した再生エネルギー型発電装置が注目を浴びている。このような発電装置では、大規模な機構においても可変容量型を実現することができる。油圧トランスミッションは、ギヤ式トランスミッションより軽量で且つロバストであり、またダイレクトドライブ式発電機の駆動機構より軽量である。その結果、発電に関わる全体コストを削減することができる。
【0006】
例えば、非特許文献1には、風力発電装置に適用される油圧トランスミッションの構成が開示されている。この油圧トランスミッションは、ロータに連結される油圧ポンプと、発電機に接続された油圧モータと、油圧ポンプ及び油圧モータの間にそれぞれ設けられた高圧マニホルド及び低圧マニホルドとを備えている。油圧ポンプ及び油圧モータはぞれぞれシリンダ及びピストンを複数有し、シリンダとピストンで囲まれる作動室(ワーキングチャンバ)の作動、非作動を連続的に変化させることで押しのけ容積を変化させるようになっている。
【0007】
また、特許文献1には、風力発電装置のロータ回転数制御装置が開示されている。この装置は、ロータにより駆動される回転シャフトと、回転シャフトによりアクティブ化される多段ポンプとを備える。多段ポンプには、段ごとに共通の作動油吸入ラインおよび排出ラインが設けられており、排出ラインに配置される第1の制御手段により各段のポンプの作動状態が決定される。そして、風力エネルギーを効果的に電力変換する範囲内に回転シャフトの回転数が維持されるように、アイドル状態のシリンダの比率を変化させて回転シャフトのトルクを調節するようになっている。
さらに、特許文献2には、風力発電装置等に用いられる発電機安定制御システムの構成が開示されている。この装置は、油圧トランスミッションの油圧モータの押しのけ容積を調整し、発電機の回転数の安定化を図るようにしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】W.H.S.Rampen,et al.,“Gearlesstransmissions for large wind-turbines-The history and future of hydraulicdrives”,DEWEKBremen, Dec. 2006
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国登録特許第4,496,847号明細書
【特許文献2】国際出願公開第2010/0033035号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したような再生エネルギー型発電装置においては、再生エネルギー源から効率的にエネルギーを抽出し、高い発電効率を維持することが求められる。ところが、このような発電装置で用いられる再生エネルギー源には、通常、風力や潮流等の自然エネルギーが用いられるため発電に利用可能なエネルギーの変動が大きく、これにより常時、最も効率的なエネルギー抽出を行なうことは困難であった。特に、再生エネルギーは短期間での時間的不安定性が高く、効率的なエネルギー抽出を行なうためには、エネルギー変動に対応して迅速に制御することが必要とされる。
【0011】
この点、従来の機械式(ギヤ式)の増速機を用いた風力発電装置では、発電機と電力系統との間に設けられたインバータを制御することで、風速に応じてロータの回転数を変化させる可変速運転を行う技術が確立されており、広く一般に採用されている。
ところが、油圧トランスミッションを用いた風力発電装置では、非特許文献1及び特許文献1、2には、発電効率を向上させるために具体的にどのような制御を行うのかについて何ら開示されておらず、発電効率を向上させるための運転制御技術が未だ確立されていない。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、再生エネルギーの変動に関わらず、所望の油圧モータの出力を得ることができ、安定した発電を可能とした再生エネルギー型発電装置及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る再生エネルギー型発電装置は、再生エネルギーから電力を生成する再生エネルギー型発電装置であって、再生エネルギーによって駆動される回転シャフトと、前記回転シャフトによって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される可変容量型の油圧モータと、前記油圧モータに連結された発電機と、前記油圧ポンプの吐出側を前記油圧モータの吸込側に連通させる高圧油ラインと、前記油圧ポンプの吸込側を前記油圧モータの吐出側に連通させる低圧油ラインと、前記油圧ポンプの目標出力POWERpumpに基づいて、前記油圧モータの目標出力POWERmotorを算出するモータ目標出力算出部と、前記モータ目標出力算出部により算出された前記目標出力POWERmotorに基づいて、前記発電機の回転数が一定になるように前記油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定するモータ要求値算出部と、前記油圧モータの押しのけ容積を前記要求値Dに調節するモータ制御部とを備えることを特徴とする。
【0013】
この再生エネルギー型発電装置では、モータ目標出力算出部によって、油圧ポンプの目標出力POWERpumpに基づいて油圧モータの目標出力POWERmotorを算出し、これを用いてモータ制御を行なうようにしたので、所望の油圧ポンプの出力を得ることが可能となる。
また、モータ要求値算出部によって、目標出力POWERmotorに基づいて発電機の回転数が一定になるように油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定し、モータ制御部で油圧モータの押しのけ容積を要求値Dに調節するようにしたので、油圧ポンプの目標出力が変更されても、発電機の回転数を一定に維持できる。よって、発電機において周波数が一定の電力を発生させることができる。
【0014】
上記再生エネルギー型発電装置において、パワー係数が最大となる前記回転シャフトの理想トルクに基づいて前記油圧ポンプの目標トルクを決定する目標トルク算出部と、前記目標トルク算出部により決定された前記油圧ポンプの前記目標トルクに基づいて、前記油圧ポンプの目標出力POWERpumpを算出するポンプ目標出力算出部とをさらに備えることことが好ましい。
【0015】
このように、目標トルク算出部によって、パワー係数が最大となる回転シャフトの理想トルクに基づいて油圧ポンプの目標トルクを決定し、ポンプ目標出力算出部によって、前記目標トルクに基づいて油圧ポンプの目標出力POWERpumpを算出するようにしたので、再生エネルギー型発電装置の発電効率を高く維持することができる。
【0016】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記回転シャフトの回転数を計測する回転数計と、前記回転シャフトの回転数の計測値に基づいて、前記回転シャフトの前記理想トルクを求める理想トルク算出部とをさらに備えることが好ましい。
【0017】
この再生エネルギー型発電装置では、回転数計による回転シャフトの回転数の計測値に基づいて理想トルクを求めるようにしたので、再生エネルギー型発電装置の発電効率を向上させることができる。また、回転シャフトの回転数は回転数計により高精度に計測可能であるから、この実測した回転シャフトの回転数に基づいて理想トルクを決定することにより、油圧モータの制御を適切に行うことができる。
【0018】
さらにこの再生エネルギー型発電装置において、前記回転数計は複数設けられており、前記理想トルク算出部は、複数の前記回転数計による前記回転シャフトの回転数の計測値の平均値に基づいて、前記回転シャフトの前記理想トルクを求めるようにしてもよい。
【0019】
このように、回転数計が複数設けられ、これらの回転数計による計測値の平均値に基づいて理想トルクを求めることにより、理想トルク算出の正確性が向上するとともに、回転数計自体または外的要因等によるノイズを除去することができる。
【0020】
あるいは、上記再生エネルギー型発電装置において、前記回転シャフトの回転数を計測する回転数計と、前記回転シャフトの回転数の計測値から見積もられる前記再生エネルギー源のエネルギー流の流速に基づいて前記回転シャフトの前記理想トルクを求める理想トルク算出部とをさらに備えることが好ましい。
【0021】
このように、回転数計によって計測された回転シャフトの回転数の計測値から見積もられる再生エネルギー源のエネルギー流の流速に基づいて理想トルクを求めるようにしたので、再生エネルギー型発電装置の発電効率を向上させることができる。また、エネルギー流の流速は、回転数計による回転数の計測値から推定するようにしたため、高い精度でエネルギー流の流速を推定することができ、油圧モータの制御を適切に行うことができる。さらに、エネルギー流の流速を計測する流速計を設置しない構成とすることもでき、コスト削減が図れる。
【0022】
さらにこの再生エネルギー型発電装置において、前記回転数計は複数設けられており、前記エネルギー流の流速は、複数の前記回転数計による前記回転シャフトの回転数の計測値の平均値から見積もられるようにしてもよい。
【0023】
このように、回転数計が複数設けられ、これらの回転数計による計測値の平均値に基づいてエネルギー流の流速を推定し、このエネルギー流の流速から理想トルクを求めることにより、理想トルク算出の正確性が向上するとともに、回転数計自体または外的要因等によるノイズを除去することができる。
【0024】
あるいは、上記再生エネルギー型発電装置において、前記回転シャフトを駆動する前記再生エネルギー源のエネルギー流の流速を計測する流速計と、前記エネルギー流の流速の計測値に基づいて前記回転シャフトの前記理想トルクを求める理想トルク算出部とをさらに備えることが好ましい。
【0025】
このように、流速計によって計測された再生エネルギー源のエネルギー流の流速に基づいて理想トルクを求めるようにしたので、再生エネルギー型発電装置の発電効率を向上させることができる。また、エネルギー流の流速は、流速計で直接計測するようにしたので容易に流速を取得可能となる。
【0026】
さらにこの再生エネルギー型発電装置において、前記流速計は複数設けられており、前記理想トルク算出部は、複数の前記流速計による前記エネルギー流の流速の計測値の平均値に基づいて前記回転シャフトの前記理想トルクを求めるようにしてもよい。
【0027】
このように、流速計が複数設けられ、これらの流速計による計測値の平均値に基づいて理想トルクを求めることにより、理想トルク算出の正確性が向上するとともに、流速計自体または外的要因等によるノイズを除去することができる。
【0028】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記再生エネルギー型発電装置が属する発電ファームのファーム制御装置からの電力要求指令に基づいて、前記ポンプ目標出力算出部により算出された前記油圧ポンプの目標出力POWERpumpを補正するポンプ目標出力補正部をさらに備えることが好ましい。
【0029】
一般に、再生エネルギー型発電装置が属する発電ファームには、複数の再生エネルギー型発電装置が設置されていることが多い。例えば発電ファームにおけるそれぞれの発電装置の稼動状況あるいは発電ファーム全体に要求される電力等によって、それぞれの再生エネルギー型発電装置へ要求される発電出力は異なる。したがって、ポンプ目標出力補正部によって、ファーム制御装置からの電力要求指令に基づいて、油圧ポンプの目標出力POWERpumpを補正することで、再生エネルギー型発電装置に実際に求められる電力要求に応じて適切に発電を行うことが可能となる。
【0030】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記モータ目標出力算出部は、前記油圧ポンプの目標出力POWERpumpに平滑処理を施して前記油圧モータの目標出力POWERmotorを得るローパスフィルタを含むことが好ましい。
【0031】
このように、油圧ポンプの目標出力POWERpumpに平滑処理を施して油圧モータの目標出力POWERmotorを得るようにしたので、油圧ポンプの出力が急激に変化した場合であっても、油圧モータの目標出力を緩やかに変化させることができ、発電機の安定運転が可能となる。
【0032】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記モータ要求値算出部は、前記目標出力POWERmotorを、前記油圧モータの回転数及び前記高圧油ラインの作動油の圧力Pで除算して、前記油圧モータの押しのけ容積の名目要求値Dを求め、該名目要求値Dに基づいて前記油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定することが好ましい。
【0033】
このように、モータ要求値算出部は、目標出力POWERmotorを、油圧モータの回転数及び高圧油ラインの作動油の圧力Pで除算して、油圧モータの押しのけ容積の名目要求値Dを求めるようにしたので、発電機の回転数を一定にするような名目要求値Dを取得できる。
【0034】
さらにこの再生エネルギー型発電装置において、前記モータ要求値算出部は、前記モータ目標出力算出部により算出された前記目標出力POWERmotorに基づいて決定した前記高圧油ラインの作動油の目標圧力Pに、前記高圧油ラインの作動油の圧力Pを調節するための前記油圧モータの押しのけ容積の要求補正値Dを求め、前記名目要求値Dに前記補正値Dを加算して、前記油圧モータの押しのけ容積の補正値Dを決定するようにしてもよい。
【0035】
このように、モータ要求値算出部によって、高圧油ラインの作動油の圧力Pをその目標圧力Pに調節するための油圧モータの押しのけ容積の要求補正値Dを求め、前記名目要求値Dにこの補正値Dを加算して油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定するようにしたので、高圧油ラインの作動油の圧力Pを目標圧力Pに確実に近づけることができる。
【0036】
またこのとき、前記モータ要求値算出部は、前記高圧油ラインの作動油の圧力Pと前記高圧油ラインの目標圧力Pとの偏差に、前記高圧油ラインの作動油の圧力に応じて変化する可変ゲインKを乗算して、前記補正値Dを求めるようにしてもよい。
【0037】
このように、油圧モータの押しのけ容積の補正値Dを求める際に、高圧油ラインの作動油の圧力Pに応じて変化する可変ゲインKを用いるようにしたので、可変ゲインKを適切に設定することで、高圧油ラインの作動油の圧力Pを目標圧力Pに迅速に近づけることができる。このとき、可変ゲインKは圧油ラインの作動油の圧力Pに応じて変化するため、圧力Pに応じた適切な追従性能とすることができる。
【0038】
さらに、前記可変ゲインKは、前記高圧油ラインの圧力Pがその許容範囲の最小値Pmin以下あるいは該許容範囲の最大値Pmax以上である場合には最大値Kmaxとなり、前記高圧油ラインの圧力Pが前記許容範囲の最小値Pminよりも大きく前記許容範囲の最大値Pmaxよりも小さい場合には、前記許容範囲の最小値Pmin又は最大値Pmaxに近づくにつれて前記最大値Kmaxに向かって増加するように設定されるようにしてもよい。
【0039】
これにより、高圧油ラインの作動油の圧力Pを許容範囲内に維持することができるとともに、油圧モータの押しのけ容積の要求値Dにおける補正の要否に応じて、適切にモータ要求補正値を決定することができる。
すなわち、高圧油ラインの圧力Pがその許容範囲の最小値Pmin以下あるいは該許容範囲の最大値Pmax以上である場合には、可変ゲインKが最大値Kmaxとなることで、高圧油ラインの作動油の圧力を目標圧力に近づける速度を最大限速くすることができる。一方、高圧油ラインの圧力Pが前記許容範囲の最小値Pminよりも大きく該許容範囲の最大値Pmaxよりも小さい場合には、可変ゲインKは、許容範囲の最小値Pmin又は最大値Pmaxに近づくにつれて最大値Kmaxに向かって増加する。これにより、高圧油ラインの作動油の圧力Pが適切である場合には可変ゲインKの影響度を小さくし、必要に応じて徐々に可変ゲインKの影響度を大きくしていくことができる。
【0040】
さらにまた、前記許容範囲の最小値Pminは、前記回転シャフトの回転数と前記油圧ポンプの設定可能な押しのけ容積の最大値Dmaxとに基づいて決定されるようにしてもよい。
【0041】
このように、許容範囲の最小値Pminを、回転シャフトの回転数と油圧ポンプの設定可能な押しのけ容積の最大値Dmaxとに基づいて決定するようにしたので、モータ制御において重要な制御因子である最小値Pminを適切に設定することができる。
【0042】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記再生エネルギー型発電装置の周囲の雰囲気温度を計測する雰囲気温度センサをさらに備え、前記雰囲気温度センサによる前記雰囲気温度の計測値に基づいて、前記回転シャフトの前記理想トルクが補正されることが好ましい。
【0043】
一般に、再生エネルギー型発電装置では、再生エネルギー源の密度が温度によって変動する。したがって、再生エネルギー型発電装置の周囲の雰囲気温度を計測し、この計測値に基づいて理想トルクを補正することで、雰囲気温度に応じて最も適切な理想トルクを求めることが可能となる。
【0044】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記高圧油ラインの作動油の温度を計測する油温センサをさらに備え、前記高圧油ラインの作動油の温度の計測値に基づいて、前記油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを補正するモータ要求値補正部をさらに備えることが好ましい。
【0045】
このように、油温センサで計測された高圧油ラインの作動油の温度に基づいて、ポンプ要求値補正部によって油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを補正するようにしたので、オイルの熱膨張を考慮して、適切に油圧モータを制御することが可能となる。
【0046】
上記再生エネルギー型発電装置は、再生エネルギーとしての風から電力を生成する風力発電装置であることが好ましい。
風力発電装置は風力エネルギーの変動が大きいが、上記再生エネルギー型発電装置を採用することで、風力エネルギーの変動に応じたモータ制御が可能となるため、所望の油圧モータの出力を得ることができ、安定した発電が可能となる。
【0047】
上記再生エネルギー型発電装置の運転方法において、再生エネルギーによって駆動される回転シャフトと、前記回転シャフトによって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される可変容量型の油圧モータと、前記油圧モータに連結された発電機と、前記油圧ポンプの吐出側を前記油圧モータの吸込側に連通させる高圧油ラインと、前記油圧ポンプの吸込側を前記油圧モータの吐出側に連通させる低圧油ラインとを備える再生エネルギー型発電装置の運転方法であって、前記油圧ポンプの目標出力POWERpumpに基づいて、前記油圧モータの目標出力POWERmotorを算出するステップと、前記モータ目標出力算出部により算出された前記目標出力POWERmotorに基づいて、前記発電機の回転数が一定になるように前記油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定するステップと、前記油圧モータの押しのけ容積を前記要求値Dに調節するステップとを備えることを特徴とする。
【0048】
この再生エネルギー型発電装置では、油圧ポンプの目標出力POWERpumpに基づいて油圧モータの目標出力POWERmotorを算出して、これを用いてモータ制御を行なうようにしたので、所望の油圧ポンプの出力を得ることが可能となる。
また、目標出力POWERmotorに基づいて発電機の回転数が一定になるように油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定し、油圧モータの押しのけ容積を要求値Dに調節するようにしたので、油圧ポンプの目標出力が変更されても、発電機の回転数を一定に維持できる。よって、発電機において周波数が一定の電力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、モータ目標出力算出部によって、油圧ポンプの目標出力POWERpumpに基づいて油圧モータの目標出力POWERmotorを算出して、これを用いてモータ制御を行なうようにしたので、所望の油圧ポンプの出力を得ることが可能となる。
また、モータ要求値算出部によって、目標出力POWERmotorに基づいて発電機の回転数が一定になるように油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定し、モータ制御部で油圧モータの押しのけ容積を要求値Dに調節するようにしたので、油圧ポンプの目標出力が変更されても、発電機の回転数を一定に維持できる。よって、発電機において周波数が一定の電力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】風力発電装置の構成例を示す図である。
【図2】風力発電装置の油圧トランスミッション及び発電機と制御ユニットの構成を示す図である。
【図3】油圧ポンプの具体的な構成を示す図である。
【図4】油圧モータの具体的な構成を示す図である。
【図5】制御ユニットによる油圧モータの制御を示すフローチャートである。
【図6】制御ユニットの信号伝達フローを示す図である。
【図7】トルクと回転数との相関関係の関数を示す図である。
【図8】可変ゲインの関数の具体例を示す図である。
【図9】高圧油ラインの作動油の目標圧力関数を示す図である。
【図10】制御ユニットの記憶部に記憶されたCp最大曲線を示すグラフである。
【図11】制御ユニットの記憶部に記憶されたCp最大曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0052】
図1は、風力発電装置の構成例を示す図である。図2は、風力発電装置の油圧トランスミッション及び発電機と制御ユニットの構成を示す図である。
【0053】
図1に示すように、風力発電装置1は、主として、風を受けて回転するロータ2と、ロータ2の回転を増速する油圧トランスミッション10と、電力を発生させる発電機20と、ナセル22と、ナセル22を支持するタワー24と、風力発電装置1の油圧トランスミッション10を制御する制御ユニット40(図2参照)と、圧力計31及び回転数計32、36を含む各種計測器とを備える。
【0054】
ロータ2は、ブレード4が取り付けられたハブ6に回転シャフト8が連結された構成を有する。すなわち、3枚のブレード4がハブ6を中心として放射状に延びており、それぞれのブレード4が、回転シャフト8と連結されたハブ6に取り付けられている。これにより、ブレード4が受けた風の力によってロータ2全体が回転し、回転シャフト8を介して油圧トランスミッション10に回転が入力される。
【0055】
油圧トランスミッション10は、図2に示すように、回転シャフト8に従動して駆動する容量可変型の油圧ポンプ12と、発電機20に接続された容量可変型の油圧モータ14と、油圧ポンプ12と油圧モータ14との間に設けられた高圧油ライン16及び低圧油ライン18を有する。
【0056】
油圧ポンプ12の吐出側は、高圧油ライン16によって油圧モータ14の吸込側に接続されており、油圧ポンプ12の吸込側は、低圧油ライン18によって油圧モータ14の吐出側に接続されている。油圧ポンプ12から吐出された作動油(高圧油)は、高圧油ライン16を介して油圧モータ14に流入し、油圧モータ14を駆動する。油圧モータ14で仕事を行った作動油(低圧油)は、低圧油ライン18を介して油圧ポンプ12に流入して、油圧ポンプ12で昇圧された後、再び高圧油ライン16を介して油圧モータ14に流入する。
【0057】
なお、図2には、油圧モータ14を1個だけ含む油圧トランスミッション10を示したが、複数の油圧モータ14を設けて、それぞれの油圧モータ14を油圧ポンプ12に接続してもよい。
【0058】
ここで、一例として、油圧ポンプと油圧モータの具体的な構成例を説明する。図3は油圧ポンプの具体的な構成を示す図で、図4は油圧モータの具体的な構成を示す図である。
【0059】
油圧ポンプ12は、図3に示すように、シリンダ80及びピストン82により形成される複数の油圧室83と、ピストン82に係合するカム曲面を有するカム84と、各油圧室83に対して設けられる高圧弁86および低圧弁88とにより構成される。
高圧弁86は、各油圧室83と高圧油ライン16との間の高圧連通路87に設けられ、低圧弁88は、各油圧室83と低圧油ライン18との間の低圧連通路89に設けられている。
この油圧ポンプ12では、回転シャフト8とともにカム84が回転すると、カム曲線に合わせてピストン82が周期的に上下動し、ピストン82が下死点から上死点に向かうポンプ工程と、ピストン82が上死点から下死点に向かう吸入工程とが繰り返される。
【0060】
油圧モータ14は、図4に示すように、シリンダ90及びピストン92により形成される複数の油圧室93と、ピストン92に係合するカム曲面を有するカム94と、各油圧室93に対して設けられた高圧弁96および低圧弁98とにより構成される。
高圧弁96は、各油圧室93と高圧油ライン16との間の高圧連通路97に設けられ、低圧弁98は、各油圧室93と低圧油ライン18との間の低圧連通路99に設けられている。
この油圧モータ14では、油圧ポンプ12がつくった高圧油ライン16と低圧油ライン18との差圧によって、ピストン92が周期的に上下動し、ピストン92が上死点から下死点に向かうモータ工程と、ピストン92が下死点から上死点に向かう排出工程とが繰り返される。
なお、油圧ポンプ及び油圧モータは、上記したようなピストン式に限定されるものではなく、他にもベーン式等のように、可変容量型の油圧機構であればいずれの形式であってもよい。また、ピストン式としては、アキシアルピストンポンプ・モータ、ラジアルピストンポンプ・モータ、レシプロピストンポンプ・モータ等を用いることができる。
【0061】
図2に戻り、各種計測器として、回転シャフト8の回転数を計測する回転数計32と、高圧油ライン16内の圧力を計測する圧力計31と、油圧モータ14の回転数を計測する回転数計36とが設けられている。さらにまた、各種計測器類として、ナセル22の外部に取り付けられ、風速を計測する風速計33、風力発電装置1の周囲の雰囲気温度を計測する温度センサ34と、高圧油ライン16の作動油の温度を計測する油温センサ35とのうち少なくともいずれかが設けられていてもよい。これらの計測結果は、制御ユニット40に送られて、油圧ポンプ12の制御に用いられる。なお、図には各種計測器が1つずつ設けられた場合を示しているが、同一の計測器が複数設けられていてもよい。
【0062】
また、高圧油ライン16及び低圧油ライン18には脈動防止用アキュムレータ64が設けられている。これにより、高圧油ライン16及び低圧油ライン18の圧力変動(脈動)が抑制される。なお、低圧油ライン18には、作動油中の不純物を除去するオイルフィルタ66と、作動油を冷却するオイルクーラ68が設けられている。
【0063】
高圧油ライン16と低圧油ライン18との間には、油圧モータ14をバイパスするバイパス流路60が設けられている。そして、バイパス流路60には、高圧油ライン16の作動油の圧力を設定圧力以下に保持するリリーフ弁62が設けられている。これにより、高圧油ライン16内の圧力がリリーフ弁62の設定圧力まで上昇すれば、リリーフ弁62が自動的に開いて、バイパス流路60を介して低圧油ライン18に高圧油を逃すことができる。
【0064】
また、油圧トランスミッション10には、オイルタンク70、補充ライン72、ブーストポンプ74、オイルフィルタ76、返送ライン78、低圧リリーフ弁79が設けられている。
油圧モータ14からの戻り流れの全部又は一部がこれらのユニットの一つ以上を通過するようにしてもよい。
【0065】
オイルタンク70は、補充用の作動油が貯留されている。補充ライン72は、オイルタンク70を低圧油ライン18に接続している。ブーストポンプ74は、補充ライン72に設けられ、オイルタンク70から低圧油ライン18に作動油を補充するようになっている。このとき、低圧油ライン18に供給される作動油は、補充ライン72に設けられたオイルフィルタ76によって不純物が除去される。
これにより、作動油の漏洩が油圧トランスミッション10の内部で生じても、ブーストポンプ74によってオイルタンク70から低圧油ライン18に作動油が補充されるので、油圧トランスミッション10内を循環する作動油の量を維持できる。
【0066】
返送ライン78は、オイルタンク70と低圧油ライン18との間に配置されている。低圧リリーフ弁79は、返送ライン78に設けられており、低圧油ライン18内の圧力を設定圧力と同じ又はそれ以下に保持するようになっている。
これにより、ブーストポンプ74によって作動油が低圧油ライン18に供給されても、低圧油ライン18内の圧力が低圧リリーフ弁79の設定圧力に達すれば、低圧リリーフ弁79が自動的に開いて、返送ライン78を介してオイルタンク70に作動油を逃すことができる。よって、油圧トランスミッション10内を循環する作動油の量を適切に維持できる。
【0067】
発電機20は、電力系統50に連系されており、発電した電力を電力系統50に供給するようになっている。発電機20は、図2に示すように、油圧モータ14の出力軸15に接続された回転子20Aと、電力系統50に接続された固定子20Bとで構成された電磁石同期発電機を用いる。発電機20の回転子20Aには励磁機52が接続されており、固定子20Aに流れる界磁電流を変化させて、発電機20の固定子20Bに発生する電力の力率を調節できるようになっている。これにより、所望の力率に調整された良質の電力が電力系統50に供給される。
【0068】
図1に示すナセル22は、ロータ2のハブ6を回転自在に支持するとともに、その内部に油圧トランスミッション10や発電機20等の各種機器を収納している。なお、ナセル22をタワー24に回転自在に支持し、ヨーモータ(不図示)を用いて、風向きに応じてナセル22を旋回させるようにしてもよい。
【0069】
タワー24は、基礎26から上方に延びる柱状であり、例えば、一本の柱状部材で構成してもよいし、複数のユニットを上下方向に連結して柱状に構成してもよい。タワー24が複数のユニットから構成されている場合には、最上部に設けられたユニットの上にナセル22が設置される。
【0070】
ここで、図2に示す制御ユニット40の構成について説明する。なお、制御ユニット40は、ナセル22の内部又は外部の異なる場所に存在し、制御ユニット40が分散型の制御システムを構築していてもよい。制御ユニット40及びこれを構成する各制御部41〜49の一つ以上の機能が一つの演算処理装置に組み込まれていてもよい。
制御ユニット40は、理想トルク算出部41と、目標トルク算出部42と、ポンプ目標出力算出部43と、ポンプ目標出力補正部44と、モータ目標出力算出部45と、モータ要求値算出部46と、モータ要求値補正部47と、モータ制御部48と、記憶部49とを有する。
【0071】
理想トルク算出部41は、回転シャフト8の回転数の計測値に基づいて、回転シャフト8の理想トルクを求める。理想トルクとは、風力エネルギーから回転シャフト8の回転エネルギーへ効率的にエネルギー変換可能な、すなわち、風力エネルギーの抽出効率が高いトルクをいう。
具体的に、理想トルク算出部41としては以下のような構成が挙げられる。
一例として、理想トルク算出部41は、回転数計32による回転シャフト8の回転数の計測値に基づいて、パワー係数Cpが最大となる理想トルクを求める。また、複数の回転数計32による回転シャフトの回転数の計測値の平均値に基づいて、回転シャフト8の理想トルクを求めるようにしてもよい。
【0072】
また、理想トルク算出部41は、雰囲気温度センサ34で計測される風力発電装置1の周囲の雰囲気温度に基づいて、理想トルクを補正するようにしてもよい。回転シャフト8のトルクに影響を与える因子の一つとして、風力発電装置1の周囲の雰囲気温度がある。これは、厳密には、風力エネルギーは風の通過流量(質量流量)と風速とから決定されるので、周囲の雰囲気温度が変化することにより空気密度が変化し、これにともない空気質量が変化するためである。したがって、風力発電装置1の周囲の雰囲気温度に基づいて理想トルクを補正することにより、雰囲気温度に応じて最も適切な理想トルクを求めることが可能となる。
【0073】
目標トルク算出部42は、理想トルク算出部41で求められた理想トルクに基づいて油圧ポンプの目標トルクを決定する。このとき、目標トルク算出部42は、回転シャフト8の理想トルクに、後述するスケール係数Mを乗算して、油圧ポンプ12の目標トルクを決定することが好ましい。
【0074】
ポンプ目標出力算出部43は、油圧ポンプ12の目標トルクに基づいて、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpを算出する。このとき、ポンプ目標出力算出部43は、目標トルク算出部42で決定された油圧ポンプ12の目標トルクに、回転シャフト8の回転数の計測値を乗算して油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpを算出してもよい。
【0075】
ポンプ目標出力補正部44は、ファーム制御装置200からの電力要求指令Sに基づいて、ポンプ目標出力算出部43により算出された油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpを補正する。ファーム制御装置200は、風力発電装置1が属する発電ファームに設置され、複数の風力発電装置1を統括的に制御する装置である。
【0076】
モータ目標出力算出部45は、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpに基づいて、油圧モータ14の目標出力POWERmotorを算出する。例えばモータ目標出力算出部45は、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpに平滑処理を施して、油圧モータ14の目標出力POWERmotorを算出する一次ローパスフィルタを含む。
【0077】
モータ要求値算出部46は、油圧モータ14の目標出力POWERmotorに基づいて、発電機の回転数が一定になるように油圧モータ14の押しのけ容積の要求値Dを決定する。
具体的には、モータ要求値算出部46は、目標出力POWERmotorを、油圧モータ14の回転数及び高圧油ラインの作動油の圧力(高圧油圧力)Pで除算して、油圧モータ14の押しのけ容積の名目要求値Dを求め、該名目要求値Dに基づいて前記油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定する。
【0078】
このとき、モータ要求値算出部46では、高圧油圧力Pが所定範囲内に適切に維持されるように、前記要求値Dを補正してもよい。その場合、モータ要求値算出部46は、目標出力POWERmotorに基づいて決定した高圧油ライン16の作動油の目標圧力Pに高圧油圧力Pを調節するための油圧モータ14の押しのけ容積の要求補正値Dを求め、名目要求値Dに補正値Dを加算して、油圧モータ14の押しのけ容積の補正値Dを決定する。
【0079】
ここで、油圧モータ14の押しのけ容積の要求補正値Dは、以下のように求めてもよい。
この補正値Dは、高圧油圧力Pとその目標圧力Pとの偏差に、高圧油圧力に応じて変化する可変ゲインKを乗算して求める。
可変ゲインKは、図8に示すように、高圧油圧力Pがその許容範囲の最小値Pmin以下あるいは該許容範囲の最大値Pmax以上である場合には最大値Kmaxとなり、一方、高圧油圧力Pが前記許容範囲の最小値Pminよりも大きく該許容範囲の最大値Pmaxよりも小さい場合には、許容範囲の最小値Pmin又は最大値Pmaxに近づくにつれて最大値Kmaxに向かって増加するように設定されていることが好ましい。なお、許容範囲の最小値Pminは、回転シャフト8の回転数と油圧ポンプ12の押しのけ容積の設定可能な最大値Dmaxとに基づいて決定されてもよい。
【0080】
モータ要求値補正部47は、油温センサ35で計測された高圧油ライン16の作動油の温度に基づいて、油圧モータ16の押しのけ容積の要求値Dを補正する。このモータ要求値補正部47は不要とすることもできるが、これを設けることにより、作動油の熱膨張を考慮して適切に油圧モータ16を制御することが可能となる。
【0081】
モータ制御部48は、油圧モータ14の押しのけ容積を、モータ要求値算出部46で決定された要求値Dに調節する。油圧モータ14の制御については後述する。
また、上記した各制御部のほかに、ポンプ制御部(不図示)を有していてもよい。ポンプ制御部は、目標トルク算出部42で求めた目標トルクと、高圧油圧力Pとに基づいて油圧ポンプ12の押しのけ容積の要求値を算出し、この要求値となるように油圧ポンプ12の押しのけ容積を調整する。
【0082】
記憶部49は、油圧ポンプ12の制御に用いるデータが保存されている。具体的には、風力発電装置1の制御に用いられる各種の関数が記憶されている。例えば、図7に示すトルクと回転数との相関関係の関数、図8に示す可変ゲインKの関数、あるいは図9に示す高圧油ラインの作動油の目標圧力関数等が記憶されている。
【0083】
上記した制御ユニット40の動作に関するアルゴリズムについて、図5のフローチャートを用いて説明する。
最初に、回転数計32によって、回転シャフト8の回転数Wが計測される(ステップS1)。
理想トルク算出部41は、回転数計38で計測された回転数Wからパワー係数Cpが最大となる理想トルクTを決定する。具体的には、理想トルク算出部41は、図7に示す関数のうち実線で表されるCp最大曲線600を記憶部49から読み出す。このCp最大曲線600は、空力学的な理想トルク(T, 598)と回転シャフトの回転数(W, 599)との相関関係を示す関数であり、回転数Wに対してパワー係数Cpが最大となる理想トルクTを示すものである。
【0084】
さらに、目標トルク算出部42は、理想トルク算出部41で求められた理想トルクTに基づいて油圧ポンプ12の目標トルクTを決定する(ステップS2)。このとき、目標トルク算出部42は、理想トルク算出部41で決定した理想トルクTにスケール係数Mを乗算して、調整理想トルクMTを算出し、これを目標トルクTとしてもよい。スケール係数Mは、0.9〜1.0の範囲内であることが好ましく、その値は、風力発電装置1の稼働中、風の状況やブレード4の空気力学的変化に応じて変更してもよい。また、スケール係数Mは、ファーム制御装置200から適宜入力されるようにしてもよい。スケール係数M<1の場合、回転シャフト8に与えられるトルクは、通常の理想トルクの場合よりわずかに小さい値となり、その分、回転シャフト8の回転数を通常の理想トルクの場合に比べて少し上昇させることができる。したがって、風速の急速な変化に応じて回転シャフト8の回転数を迅速に追従させることが可能となる。なお、ここでいう突風時とは、風力発電装置1の許容風速範囲の上限値以下であることを前提条件としている。許容風速範囲は、ロータ2が過回転とならず通常運転可能な風速の範囲であり、一般に定格風速範囲の上限値より高く設定されている。
【0085】
ここで、上記した構成を採用することで、凪時には、理想トルクが最適なトルク(M=1の場合)からわずかに外れることとなる。しかし、突風時に風力エネルギーから変換される回転エネルギーは凪時よりも大幅に大きいので、風力発電装置全体としてより多くのエネルギーを得ることができる。そのため、上記した構成を採用することによる効果は大きい。
【0086】
また、目標トルク算出部42では、雰囲気温度センサ34で計測される風力発電装置1の周囲の雰囲気温度に基づいて、理想トルクTを補正するようにしてもよい。補正方法としては、例えば、記憶部49に理想トルクTの補正量と雰囲気温度との関数を記憶しておき、雰囲気温度に基づいて理想トルクTの補正量を求め、これを理想トルクTに加算してもよい。また、別の方法として、雰囲気温度に対応したCp最大曲線600を複数有しておき、雰囲気温度に応じて適切なCp最大曲線600を選択し、選択されたCp最大曲線600から得られる理想トルクTに基づいて目標トルクを算出してもよい。風力エネルギーは、厳密には風の通過流量(質量流量)と風速とから決定されるので、周囲の雰囲気温度が変化することにより空気密度が変化し、これにともない空気質量が変化する。したがって、風力発電装置1の周囲の雰囲気温度に基づいて理想トルクTを補正することにより、雰囲気温度に応じて適切な理想トルクを求めることができる。
【0087】
続いて、ポンプ目標出力算出部43は、回転数計32で測定された回転シャフト8の回転数Wと、理想トルクTまたは調整理想トルクMTとを乗算して、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpを算出する(ステップS3)。なお、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpは、油圧ポンプ12の押しのけ容積の選択された総量、あるいは高圧油圧力P等の油圧情報に基づいて算出することもできる。
【0088】
ここで、ポンプ目標出力補正部44によって、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpを、ファーム制御装置200からの電力要求指令Sから得られる出力補正値POWERcorrectionに基づいて補正してもよい(ステップS4)。
通常、ウィンドファームには、複数の風力発電装置1が設置されており、これらの風力発電装置1を統括的に制御するファーム制御装置200が設けられている。ファーム制御装置200は、複数の風力発電装置1と通信可能であり、風力発電装置1から各種の計測値信号を受信するとともに、風力発電装置1へ各種の制御信号を送信する。
計測値信号は、例えば、各種計測器31〜36の計測値信号であり、高圧油圧力P、回転シャフト8の回転数W、油圧モータ14の回転数W、周囲の風速又は温度、作動油温度等が挙げられる。
制御信号は、前記電力要求指令Sを含む。電力要求指令Sは、ウィンドファームの全体に求められる電力要求から個々の風力発電装置に割り振られた電力要求に関する信号である。
各風力発電装置1への電力要求は、ウィンドファーム全体として一定の発電出力が得られるように設定されてもよいし、あるいはウィンドファーム全体として高効率で発電可能なように設定されてもよいし、あるいは他の風力発電装置の発電出力または高圧油圧力等の変動を考慮して設定されてもよい。
【0089】
そして、モータ目標出力算出部45によって、一次ローパスフィルタを用いて油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpを平滑処理し、油圧モータ14の目標出力POWERmotorを決定する(ステップS5)。
【0090】
次いで、モータ要求値算出部46によって、油圧ポンプ12のヘッドルームトルクTを算出する(S6)。ヘッドルームトルクTは、予期しない突風や風速増加に対しても、回転シャフト8の回転数を適切に制御できるような油圧ポンプ12のトルクの最小値である。このヘッドルームトルクTは、油圧ポンプ12の回転数の関数であり、その特性については図7を用いて後述する。
【0091】
ここで、回転シャフト8のトルクは、油圧ポンプ12の押しのけ容積と高圧油圧力とによって決まる。そこで、このヘッドルームトルクTと、油圧ポンプ12の押しのけ容積の設定可能な最大値Dmaxとに基づいて高圧油圧力Pの最小値Pminが算出できる(ステップS7)。この最小値Pminは、高圧油圧力Pの許容範囲の下限値を示す。また、平滑化(又はアキュムレータ)の最小プリチャージ圧力Pacc,minにより、Pminの下限値がさらに低くなる。その下限値を下回る場合には、高圧油ラインのみでは所望の操作を実行するのに十分でないこととなる。よって、許容圧力範囲は両下限値より上でなければならない。
【0092】
この高圧油圧力の最小値Pminと、許容範囲の上限値である高圧油圧力の最大値Pmaxと、油圧モータ14の目標出力または平滑化された目標出力とを用いて、後述する図8に示す関数に従って可変ゲインKを算出する(ステップS8)。
【0093】
一方、高圧油ライン16の作動油の目標圧力Pを求める(ステップS9)。目標圧力Pは、風力発電装置1の最適運転を可能とする圧力であり、後述する図9に示す関数に従って求められる。
次いで、モータ要求値算出部46は、油圧モータ14の押しのけ容積の名目要求値Dを算出する(ステップS10)。名目要求値Dは、回転数計36で計測された油圧モータ14の回転数Wと、圧力計31で計測された高圧油ライン16の作動油の圧力Pと、油圧モータ14の目標出力POWERmotorとに基づいて算出する。このとき、名目要求値Dは、目標出力POWERmotorを、油圧モータ14の回転数W及び高圧油圧力Pで除算して求めることで、発電機の回転数を一定にするような名目要求値Dを取得できる。
【0094】
一方、モータ要求値算出部46は、油圧モータ14の押しのけ容積の要求補正値Dを算出する(ステップS11)。要求補正値Dは、高圧油圧力Pとその目標圧力Pとの偏差に、ステップS9で求められた可変ゲインKを乗算して算出する。
そして、前記名目要求値Dと要求補正値Dとを加算することによって、油圧モータ14の押しのけ容積の要求値Dを決定する(ステップS12)。
ここで、油温センサ35で計測された高圧油ライン16の作動油の温度に基づいて、ポンプ要求値補正部47によって油圧モータ14の押しのけ容積の要求値Dを補正してもよい。これにより、作動油の熱膨張を考慮して、適切に油圧モータ14を制御することが可能となる。
【0095】
上記により決定された油圧モータ14の押しのけ容積の要求値Dとなるように、モータ制御部48は、油圧モータ14の押しのけ容積を調節する。
【0096】
ここで、図4に示した油圧モータ14を用いて、モータ制御部48による油圧モータ14の押しのけ容積の調節方法について説明する。
油圧モータ14では、油圧ポンプ12がつくった高圧油流路16と低圧油流路18との差圧によって、ピストン92が周期的に上下動し、ピストン92が上死点から下死点に向かうモータ工程と、ピストン92が下死点から上死点に向かう排出工程とが繰り返される。
【0097】
モータ制御部48は、所望の油圧モータ14の押しのけ容積の要求値Dが得られるように、ピストン92が下死点から上死点を経て再び下死点に戻るサイクルの間、高圧弁96を閉じて低圧弁98を開いたままの状態を維持する非作動室の数を変化させる。すなわち、モータ制御部48は、所望の押しのけ容積の要求値Dから、次の式を用いて非作動室の数を決定し、これに基づいて油圧モータ14を制御する。
(数式)
押しのけ容積の要求値D=V×Fdm
(ただし、Vは全シリンダ90の合計容積であり、Fdmは全油圧室93に対する作動室の割合である。Fdmはある期間にわたって決定されてもよく、Fdmは全油圧室93に対する作動室の割合の短時間における平均値であってもよい。)
ここで、油圧モータ14の「非作動室」とは、ピストン92が上死点から下死点に向かうモータ工程において、高圧油流路16からの高圧油の供給を受けない油圧室93をいう。これに対し、ピストン92が上死点から下死点に向かうモータ工程において、高圧油流路16からの高圧油の供給を受ける油圧室93を油圧モータ14の「作動室」という。
【0098】
各油圧室93の状態(非作動状態又は作動状態)は、ピストン92の上下動のサイクルごとに選択できるから、全油圧室93に対する非作動室の割合を変更することで、油圧モータ14の押しのけ容積を迅速に変化させることができる。
また、モータ制御部48における制御において、他の例として、ピストンサイクル中に高圧弁が開く時間を変化させて油圧モータ14の押しのけ容積を調節するようにしてもよい。
【0099】
次に、図6を参照して、制御ユニット40の信号伝達フローを説明する。なお、図6は、上記図5に示したアルゴリズムのフローチャートに対応している。
まず最初に、理想トルク算出部41によって、回転数計32によって計測される回転シャフト8の回転数Wから理想トルクTを決定する。このとき、理想トルクTは、図6に示した目標トルク(ここでは理想トルクT)と回転数Wとの関数600を用いて、パワー係数Cpが最大となる理想トルクTを決定する。
【0100】
目標トルク算出部42は、理想トルク算出部41で求められた理想トルクTに基づいて油圧ポンプ12の目標トルクTを決定する。このとき、目標トルク算出部42は、理想トルク算出部41で求められた理想トルクTにスケール係数Mを乗算して、調整理想トルクMTを算出し、これを目標トルクTとしてもよい。スケール係数Mは0〜1の範囲内であればいずれの値であってもよく、好ましくは0.9〜1の範囲内の値である。スケール係数Mを乗算することで、調整理想トルクMTは理想トルクTよりわずかに低くなり、その分回転数が少し上がる。したがって、突風時には回転シャフト8がより急速に加速することとなる。その結果、スケール係数Mを乗算しない場合に比べて、より大きな出力を得ることができる。
一方、スケール係数Mを用いることで、回転シャフト8はより緩慢に減速する。したがって、凪時においては最適な回転数から少し外れて運転することとなる。しかし、突風に対して追従させることにより得られる追加出力は、凪時の準最適運転による出力損失より大きい。このようにスケール係数Mを用いて理想トルクTを調整することで、風力エネルギーが急増した場合に、より多くの風力エネルギーを抽出することが可能となり、発電出力を増加させることができる。
【0101】
ポンプ目標出力算出部43は、回転数計32で計測された回転シャフト8の回転数Wと調整理想トルクMTの積から、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpを算出する。なお、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpは、油圧ポンプ12の押しのけ容積の選択された総量、あるいは高圧油圧力P等の油圧情報から算出することもできる。
【0102】
さらに、ポンプ目標出力補正部44は、ファーム制御装置200から送信される電力要求指令Sに基づいて、アジャスタ110によって出力補正値POWERcorrectionを算出する。さらに、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpに、この出力補正値POWERcorrectionを加算して目標出力POWERpumpを補正する。ここで、電力要求指令Sは、上述したように、風力発電装置1が属する発電ファームのファーム制御装置200からポンプ目標出力補正部44に入力される。このように、電力要求指令Sに基づいて目標トルクTを補正することにより、必要に応じた適切な発電出力を得ることが可能となる。
【0103】
モータ目標出力算出部45は、一次ローパスフィルタを形成する平滑モジュール112により油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpを平滑処理し、油圧モータ14のモータ目標出力POWERmotorを算出する。
次いで、モータ目標出力算出部45は、モータ目標出力POWERmotorを、油圧センサ31で測定された高圧油圧力P、及び、回転数計36で計測された油圧モータ14の回転数Wで除算して、油圧モータ14の押しのけ容積の名目要求値Dを求める。
【0104】
一方、モータ目標出力算出部45で算出されたモータ目標出力POWERmotorは、モータ要求値補正部47に入力される。モータ要求値補正部47は、可変ゲインKを用いて、油圧モータ14の押しのけ容積の要求補正値Dを算出する圧力フィードバックコントローラ120を含む。圧力フィードバックコントローラ120には、図9に示す目標圧力関数(802,812,820)に従って前記モータ目標出力POWERmotorから求められた目標圧力Pと、高圧油圧力Pと、可変ゲインKとが入力され、これらにより名目要求値Dを補正するための油圧モータ14の押しのけ容積の要求補正値Dを算出する。
【0105】
可変ゲインKは、図8に示す可変ゲインの関数700に従って、現在の高圧油圧力Pが許容圧力範囲内であるか、さらには許容範囲内の第1範囲または第2範囲内であるかによって算出される。この許容範囲は、高圧油圧力の最大値Pmaxと最小値Pminとにより定義される。このとき、高圧油圧力の最小値Pminは、油圧ポンプ14の設定可能な押しのけ容積の最大値DmaxでヘッドルームトルクTを除算することにより求められる。ヘッドルームトルクTについては、図7を用いて後述する。油圧モータ14の押しのけ容積の要求値Dは、名目要求値Dと要求補正値Dを加算したものである。
【0106】
本実施形態では、圧力フィードバックコントローラ120に比例コントローラを用い、平滑モジュール112に一次ローパスフィルタを用いた場合について説明しているが、そのほかの形態を用いることも可能である。例えば、圧力フィードバックコントローラ120として、PI(比例積分)コントローラを用い、平滑モジュール112と名目要求値Dをともに省略してもよい。その場合は、出力値の入力値への追従性を向上させるために、通常、PIコントローラはいくつかのコントローラ候補の中から選択する。このとき、積分ゲインが十分に小さいと、コントローラは風力エネルギーを平滑化し、これにより平滑化された要求補正値Dを得ることができる。
【0107】
図7には、回転シャフトの回転数(W, 599)に対する空力学的理想トルク(T, 598)の関数(600)を示す。この関数は、理想トルク算出部によって理想トルクTを決定する際に用いられる。なお、理想トルクTは、回転シャフトの回転数Wに対してパワー係数Cpが最大となるトルクである。
風力発電装置1においては、風速がカットイン速度まで上昇すると、ブレードのフェザリングを停止し、機械的なブレーキを解除する。セクションIで回転数Wが最低速度(601)を下回るときは、理想トルクは略ゼロであり、ポンプがトルクを与えることなく発電機は最低速度まで加速する。
【0108】
セクションIIでは、予め設定されたトルク増加プロファイルに従って増加エネルギを与えて発電機回転数を安定させるように、制御ユニットから油圧ポンプに指令を与える。ブレードのピッチが固定された風力発電機の最適トルクは、風速又はロータ回転数の二乗の関数となる。セクションIIIは、ブレードの先端速度比に対応するもので、理想トルク曲線は予め設定された最適プロファイルに従って、ブレードが最適ピッチとなるようにピッチ制御する。セクションIVでは、発電機が略最大回転数であり、トルク曲線は、最大圧力(定格トルク)未満で且つ急勾配で上昇するような形状の関数となる。セクションIVの目的は、一定回転数でトルクを最大値(603)まで増加させることにより、発電機速度を制限することである。セクションVでは、風力エネルギーから入力されるトルクが最大トルク出力に到達し、発電機は最大速度で駆動する。この範囲では、ピッチ制御を行って積極的に発電機回転数を制御し、ポンプは一定(最大)出力トルクを出すようにする。
【0109】
図7には、さらにヘッドルームトルク曲線(610)も示している。同図において、ヘッドルームトルク曲線(610)は破線で表される曲線である。ヘッドルームトルクTは、発電機の最適トルクからの一定オフセットを用いた二次関数としてセクションIIIにあらわされる。ただし、ヘッドルームトルク曲線(610)は、回転シャフト8の回転数W以外の変数によって決定する場合には、他の関数であってもよい。ヘッドルームトルク曲線は使用中に風の状態変化に従って調整しても良い。例えば、突風又は凪の予測や、過去又は現在の状況に基づいてヘッドルームトルク曲線(610)を調整しても良い。
【0110】
図8には、圧力P(702)の関数として典型的な可変ゲインK(700)を示す。高圧油圧力の許容範囲の最小値Pminは、回転シャフトの回転数とともに変化する。同図には、低速(704)において特徴的なK関数、及び高速(706)において特徴的なK関数を示す。高圧油圧力の最小値Pminから最大値Pmaxで定義される許容範囲は、現時点における回転シャフトの回転数とともに変化する。作動油の圧力が最小値Pmin(708,710)を下回るとき、可変ゲインKを最大値Kmaxに設定する。同様に、高圧油圧力がその許容範囲の最大値Pmax(714)を超えるとき、可変ゲインKを最大値Kmaxに設定する。これにより、高圧油圧力が前記許容範囲外のとき、油圧モータ14の押しのけ容積の要求値Dを積極的に制御することとなり、高圧油圧力を許容範囲内とすることができる。
【0111】
許容範囲内のうち、圧力の最小値Pminと最大値Pmaxより内側に存在する第1範囲(716)では、可変ゲインKは最小値Kminのまま一定である。このとき、可変ゲインKの最小値Kminはゼロではないが十分に低いので、制御にほとんど影響を与えない。これにより、高圧油圧力が第1範囲内にあるときは、目標圧力に近づけようとしながらも、アキュムレータへエネルギーを吸収したり、アキュムレータからエネルギーを抽出するようにして圧力を大幅に変化させる。つまり、油圧モータによる作動油の押しのけ容積は、高圧油圧力に関係なく選択することができる。
【0112】
第1範囲(716)と、最小値Pminまたは最大値Pmaxとの間は、可変ゲインKが変化する第2範囲となる。この第2範囲のうち最小値(720)側と最大値側(722)では、可変ゲインKは最小値Kminから最大値Kmaxへ直線的に増加する。したがって、高圧油圧力が許容範囲の最小値Pmin又は最大値Pmaxに近づくにつれて、変ゲインKは徐々に大きくなり、圧力が調整される度合いは徐々に強くなる。これにより、油圧モータの押しのけ容積Dをより積極的に制御して圧力を許容範囲内に維持しようとするので、高圧油圧力が許容範囲の最大値または最大値に達する可能性を低減する。
【0113】
図9に、本発明によって実施可能な目標圧力関数の例を示す。目標圧力関数は、油圧モータの目標出力、または平滑化された目標出力(800)の関数である。この目標圧力関数により、圧力フィードバックコントローラ120に入力される目標圧力が決定される。
この関数の形状は、各種の変数によって決まるものである。
図中、破線(802)は第1目標圧力関数を示す。この第1目標圧力関数は、目標圧力がゼロと第1出力間の第1範囲においては一定の最小圧力Pacc,min(804)以上であり、第4出力から(810)と最大定格出力POWERmotor,max間の第5範囲においては一定の最大圧力Pmax(808)以上であり、第1範囲と第5範囲の間ではPOWERmotorとともに直線的に増加する。
【0114】
ここで、最小圧力Pacc,minとは、これを下回ると高圧油ラインへの作動油流入性が十分でない圧力の下限、すなわちアキュムレータのプレチャージ圧力を下回るような圧力に対する下限である。また、最大圧力Pmaxは、部品寿命やリリーフ弁の設定を考慮した加圧作動油の最大許容圧力に関係する。よって、目標圧力は変動エネルギー流、油圧ポンプ、油圧モータおよびアキュムレータの特性に対応する。
【0115】
第1目標圧力関数では、第5範囲(V)の高出力状態でポンプがロータ(回転シャフトを含む)に最大トルクを与えるのに十分な圧力があることを保障する。さらに第1目標圧力関数では、ロータの運動エネルギーが低い第1範囲(I)において、ポンプの各作動室の作動により吸収される相対エネルギートルクが、ブレード又はその他の部位にトルクを与えるほど十分ではなく、上記した圧力の許容範囲の最小値Pminよりは高いが、しかし確実に、圧力が十分に低く保たれるという特性がある。
【0116】
図中、実線(812)は第2目標圧力関数を示す。この第2目標圧力関数は、第1範囲(I)及び第5範囲(V)において第1目標圧力関数と類似する。しかし、第2出力(814)と第3出力(816)間の第3範囲(III)では、目標圧力が最適圧力Popt(818)であり、第1出力と第2出力間の第2範囲(II)と、第3出力と第4出力間の第4範囲(IV)では、隣接する範囲間の円滑な移行を可能としている。
最適圧力Poptは、ポンプとモータがともに最適油圧効率で稼動する。この最適圧力Poptは、実験、シミュレーション、計算、あるいはこれらの組み合わせにより求めてもよい。ポンプとモータの少なくともひとつは最適圧力Poptにより最適な効率が得られるように設計され、それは設計者によって選択されるようにしてもよい。よって、目標圧力は変動圧力、油圧ポンプ及び油圧モータの特性に対応する。この第2目標圧力関数により、発電機が最適圧力で駆動し、これによりエネルギー効率を最も高くすることができる。
【0117】
図中、破線(820)は第3目標圧力関数を示す。この第3目標圧力関数により、発電機の駆動レベルの大部分において、最小圧力により近い目標圧力が決定される。第3目標圧力関数は、アキュムレータの蓄圧状態を低くし、突風時の風力エネルギーを受ける蓄圧領域を最大化したり、高圧よりむしろ流量が大きい状態で発電機を駆動するという利点がある。高圧力であれば、脈動やノイズを抑制したり、発電機の寿命を延ばすことができる。
【0118】
このような特定目標圧力関数は、外部から入力される出力要求の推定値、発電機の構成部品の推定寿命や効率、発電機の始動や停止、あるいはその他の運転モードの必要性に対して秒単位で変化する。例えば、風速が大きく変動しない場合は、制御ユニットは第2目標圧力関数(812)を選択し、油圧効率に対して圧力が最適化される。一方、突風状態のときは、制御ユニットが第3目標圧力関数(820)を選択し、アキュムレータが突風エネルギーを吸収できるようにする。よって、高圧油ライン内の圧力が閾値を超えるようなエネルギーが入力されることを予測して、目標圧力を低減する。また他の例では、制御ユニットは、微量の漏れを検知した場合、第3目標圧力関数(820)を選択する。第3目標圧力関数は圧力を低く維持するので、漏れを最小にとどめ、重大な故障につながることを回避する。前記制御ユニットは上記目標圧力を自由に組み合わせることにより、無限の組み合わせを可能とし、いかなる状況や場所にも最適化できる。
【0119】
以上説明したように、上述の実施形態では、モータ目標出力算出部45によって、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpに基づいて油圧モータ14の目標出力POWERmotorを算出し、これを用いてモータ制御を行なうようにしたので、所望の油圧ポンプ12の出力を得ることが可能となる。
また、モータ要求値算出部46によって、目標出力POWERmotorに基づいて発電機20の回転数が一定になるように油圧モータ14の押しのけ容積の要求値Dを決定し、モータ制御部48で油圧モータ14の押しのけ容積を要求値Dに調節するようにしたので、油圧ポンプ12の目標出力が変更されても、発電機20の回転数を一定に維持できる。よって、発電機20において周波数が一定の電力を発生させることができる。
【0120】
また、目標トルク算出部42によって、パワー係数Cpが最大となる回転シャフト8の理想トルクに基づいて油圧ポンプ12の目標トルクを決定し、ポンプ目標出力算出部45によって、前記目標トルクに基づいて油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpを算出するようにしたので、風力発電装置1の発電効率を高く維持することができる。
【0121】
また、理想トルク算出部41では、回転数計32による回転シャフト8の回転数の計測値に基づいて理想トルクを求めるようにしたので、風力発電装置1の発電効率を向上させることができる。また、回転シャフト8の回転数は回転数計32により高精度に計測可能であるから、この実測した回転シャフト8の回転数に基づいて理想トルクを決定することにより、油圧モータ14の制御を適切に行うことができる。なお、複数の回転数計32による回転シャフト8の回転数の計測値の平均値を用いてもよく、この場合、理想トルク算出の正確性が向上するとともに、回転数計自体または外的要因等によるノイズを除去することができる。
【0122】
また、ポンプ目標出力補正部44によって、ファーム制御装置200からの電力要求指令Sに基づいて、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpを補正することで、風力発電装置1に実際に求められる電力要求に応じて適切に発電を行うことが可能となる。
また、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpに平滑処理を施して油圧モータ14の目標出力POWERmotorを得るようにしたので、油圧ポンプ12の出力が急激に変化した場合であっても、油圧モータ14の目標出力を緩やかに変化させることができ、発電機20の安定運転が可能となる。
【0123】
また、モータ要求値算出部は46、目標出力POWERmotorを、油圧モータ14の回転数及び高圧油圧力Pで除算して、油圧モータ14の押しのけ容積の名目要求値Dを求めるようにしたので、発電機20の回転数を一定にするような名目要求値Dを取得できる。
このとき、モータ要求値算出部46によって、高圧油圧力Pをその目標圧力Pに調節するための油圧モータ14の押しのけ容積の要求補正値Dを求め、前記名目要求値Dにこの補正値Dを加算して油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定するようにしたので、高圧油圧力Pを目標圧力Pに確実に近づけることができる。
【0124】
さらに、油圧モータ14の押しのけ容積の補正値Dを求める際に、高圧油圧力Pに応じて変化する可変ゲインKを用いるようにしたので、可変ゲインKを適切に設定することで、高圧油ラインの作動油の圧力Pを目標圧力Pに迅速に近づけることができる。
このとき、可変ゲインKを、図8に示した可変ゲイン関数に従って求めることで、高圧油圧力Pを許容範囲内に維持することができるとともに、油圧モータ14の押しのけ容積の要求値Dにおける補正の要否に応じて、適切にモータ要求補正値を決定することができる。
【0125】
また、前記許容範囲の最小値Pminは、回転シャフトの回転数と油圧ポンプの設定可能な押しのけ容積の最大値Dmaxとに基づいて決定されるようにしたので、モータ制御において重要な制御因子である最小値Pminを適切に設定することができる。
【0126】
以上、本実施形態の一例について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0127】
例えば、上述の実施形態では、本発明を風力発電装置に適用した例について説明したが、本発明は潮流発電装置に適用してもよい。ここでいう「潮流発電装置」は、海、川または湖等に設置され、潮流のエネルギーを利用して発電を行う装置であり、ロータ2が風ではなく潮流を受けて回転する点を除けば上述の風力発電装置1と基本的な構成は共通する。風力発電装置1と共通する構成要素について同一の符号を用いて説明すれば、潮流発電装置は、潮流を受けて回転するロータ2と、ロータ2の回転を増速する油圧トランスミッション10と、電力を発生させる発電機20と、潮流発電装置の各部を制御する制御ユニット40とを備える。
ここで、潮流発電装置の制御ユニット40は、上述のとおり、油圧ポンプ12の目標出力POWERpumpに基づいて油圧モータ14の目標出力POWERmotorを算出し、この目標出力POWERmotorに基づいて油圧モータ14の押しのけ容積の要求値Dを決定し、油圧モータ14の押しのけ容積をこの要求値Dに調節するようにしたので、所望の油圧モータの出力を得ることが可能となり、発電効率を向上させることができる。
【0128】
また、上述の実施形態では、回転数計32で計測した回転シャフト8の回転数Wに基づいて、パワー係数が最大となる油圧ポンプ12の理想トルクTを求める例について説明したが、理想トルクTiの求め方は以下の方法を用いてもよい。
まず第1の変形例として、回転数計32によって計測された回転シャフト8の回転数から見積もられる風速に基づいて理想トルクTを求めるようにしてもよい。この場合、図10及び図11に示すCp最大曲線を用いる。これらのCp最大曲線は、制御ユニット40の記憶部49に記憶されている。風速Vを横軸にとり、回転シャフト8の回転数Wを縦軸にとった座標系においてCp最大曲線900を表したのが図10であり、回転シャフト8の回転数Wを横軸にとり、油圧ポンプ12の目標トルクを縦軸にとった座標系においてCp最大曲線902を表したのが図11である。
【0129】
パワー係数Cpが最大の運転状態が維持されていることを前提として、図10に示すCp最大曲線900に基づいて、計測された回転数Wに対応する風速Vを求める。そして、図11に示すCp最大曲線902に基づいて、上記で推定された風速Vに対応する油圧ポンプ12の理想トルクTを求める。なお、図11には、推定された風速VがVである場合に油圧ポンプ12の理想トルクTを決定する例を示した。
【0130】
このように、回転数計32によって計測された回転シャフト8の回転数から見積もられる風速に基づいて理想トルクTを求めることで、風力発電装置1の発電効率を向上させることができる。また、風速は、回転数計32による回転数の計測値から推定するようにしたため、高い精度で風速を推定することができ、油圧モータ14の制御を適切に行うことができる。なお、複数の回転数計32による回転シャフト8の回転数の計測値の平均値を用いてもよく、この場合、理想トルク算出の正確性が向上するとともに、回転数計自体または外的要因等によるノイズを除去することができる。
【0131】
また、第2の変形例として、風速計33によって計測された風速に基づいて理想トルクTを求めるようにしてもよい。
このように、風速計33によって計測された風速に基づいて理想トルクTを求めることで、風力発電装置1の発電効率を向上させることができる。また、風速は、風速計33によって直接計測するようにしたため、容易に理想トルクを算出することができる。なお、複数の風速計33による風速の平均値を用いてもよく、この場合、理想トルク算出の正確性が向上するとともに、風速計自体または外的要因等によるノイズを除去することができる。
【符号の説明】
【0132】
1 風力発電装置
2 ロータ
4 ブレード
6 ハブ
8 回転シャフト
10 油圧トランスミッション
12 油圧ポンプ
14 油圧モータ
16 高圧油ライン
18 低圧油ライン
20 発電機
22 ナセル
24 タワー
26 基礎
31 圧力計
32 回転数計
33 風速計
34 雰囲気温度センサ
35 油温センサ
36 回転数計
40 制御ユニット
41 理想トルク算出部
42 目標トルク算出部
43 目標トルク補正部
44 ポンプ要求値算出部
45 ポンプ要求値補正部
46 ポンプ制御部
47 記憶部
50 電力系統
52 励磁機
60 バイパス流路
62 リリーフ弁
64 脈動防止用アキュムレータ
66 オイルフィルタ
68 オイルクーラ
70 オイルタンク
72 補充ライン
74 ブーストポンプ
76 オイルフィルタ
78 返送ライン
79 低圧リリーフ弁
110 アジャスタ
112 平滑モジュール
120 圧力フィードバックコントローラ
600 Cp最大曲線
610 ヘッドルームトルク曲線
802、812、820 目標圧力関数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生エネルギーから電力を生成する再生エネルギー型発電装置であって、
再生エネルギーによって駆動される回転シャフトと、
前記回転シャフトによって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される可変容量型の油圧モータと、
前記油圧モータに連結された発電機と、
前記油圧ポンプの吐出側を前記油圧モータの吸込側に連通させる高圧油ラインと、
前記油圧ポンプの吸込側を前記油圧モータの吐出側に連通させる低圧油ラインと、
前記油圧ポンプの目標出力POWERpumpに基づいて、前記油圧モータの目標出力POWERmotorを算出するモータ目標出力算出部と、
前記モータ目標出力算出部により算出された前記目標出力POWERmotorに基づいて、前記発電機の回転数が一定になるように前記油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定するモータ要求値算出部と、
前記油圧モータの押しのけ容積を前記要求値Dに調節するモータ制御部とを備えることを特徴とする再生エネルギー型発電装置。
【請求項2】
パワー係数が最大となる前記回転シャフトの理想トルクに基づいて前記油圧ポンプの目標トルクを決定する目標トルク算出部と、
前記目標トルク算出部により決定された前記油圧ポンプの前記目標トルクに基づいて、前記油圧ポンプの目標出力POWERpumpを算出するポンプ目標出力算出部とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項3】
前記回転シャフトの回転数を計測する回転数計と、
前記回転シャフトの回転数の計測値に基づいて、前記回転シャフトの前記理想トルクを求める理想トルク算出部とをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項4】
前記回転数計は複数設けられており、
前記理想トルク算出部は、複数の前記回転数計による前記回転シャフトの回転数の計測値の平均値に基づいて、前記回転シャフトの前記理想トルクを求めることを特徴とする請求項3に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項5】
前記回転シャフトの回転数を計測する回転数計と、
前記回転シャフトの回転数の計測値から見積もられる前記再生エネルギー源のエネルギー流の流速に基づいて前記回転シャフトの前記理想トルクを求める理想トルク算出部とをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項6】
前記回転数計は複数設けられており、
前記エネルギー流の流速は、複数の前記回転数計による前記回転シャフトの回転数の計測値の平均値から見積もられることを特徴とする請求項5に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項7】
前記回転シャフトを駆動する前記再生エネルギー源のエネルギー流の流速を計測する流速計と、
前記エネルギー流の流速の計測値に基づいて前記回転シャフトの前記理想トルクを求める理想トルク算出部とをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項8】
前記流速計は複数設けられており、
前記理想トルク算出部は、複数の前記流速計による前記エネルギー流の流速の計測値の平均値に基づいて前記回転シャフトの前記理想トルクを求めることを特徴とする請求項7に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項9】
前記再生エネルギー型発電装置が属する発電ファームのファーム制御装置からの電力要求指令に基づいて、前記ポンプ目標出力算出部により算出された前記油圧ポンプの目標出力POWERpumpを補正するポンプ目標出力補正部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項10】
前記モータ目標出力算出部は、前記油圧ポンプの目標出力POWERpumpに平滑処理を施して前記油圧モータの目標出力POWERmotorを得るローパスフィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項11】
前記モータ要求値算出部は、前記目標出力POWERmotorを、前記油圧モータの回転数及び前記高圧油ラインの作動油の圧力Pで除算して、前記油圧モータの押しのけ容積の名目要求値Dを求め、該名目要求値Dに基づいて前記油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定することを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項12】
前記モータ要求値算出部は、前記モータ目標出力算出部により算出された前記目標出力POWERmotorに基づいて決定した前記高圧油ラインの作動油の目標圧力Pに、前記高圧油ラインの作動油の圧力Pを調節するための前記油圧モータの押しのけ容積の要求補正値Dを求め、前記名目要求値Dに前記補正値Dを加算して、前記油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定することを特徴とする請求項11に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項13】
前記モータ要求値算出部は、前記高圧油ラインの作動油の圧力Pと前記高圧油ラインの目標圧力Pとの偏差に、前記高圧油ラインの作動油の圧力に応じて変化する可変ゲインKを乗算して、前記補正値Dを求めることを特徴とする請求項12に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項14】
前記可変ゲインKは、
前記高圧油ラインの圧力Pがその許容範囲の最小値Pmin以下あるいは該許容範囲の最大値Pmax以上である場合には最大値Kmaxとなり、
前記高圧油ラインの圧力Pが前記許容範囲の最小値Pminよりも大きく前記許容範囲の最大値Pmaxよりも小さい場合には、前記許容範囲の最小値Pmin又は最大値Pmaxに近づくにつれて前記最大値Kmaxに向かって増加するように設定されることを特徴とする請求項13に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項15】
前記許容範囲の最小値Pminは、前記回転シャフトの回転数と前記油圧ポンプの設定可能な押しのけ容積の最大値Dmaxとに基づいて決定されることを特徴とする請求項14に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項16】
前記再生エネルギー型発電装置の周囲の雰囲気温度を計測する雰囲気温度センサをさらに備え、
前記雰囲気温度センサによる前記雰囲気温度の計測値に基づいて、前記回転シャフトの前記理想トルクが補正されることを特徴とする請求項2に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項17】
前記高圧油ラインの作動油の温度を計測する油温センサをさらに備え、
前記高圧油ラインの作動油の温度の計測値に基づいて、前記油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを補正するモータ要求値補正部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項18】
前記再生エネルギー型発電装置は、再生エネルギーとしての風から電力を生成する風力発電装置であることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項19】
再生エネルギーによって駆動される回転シャフトと、前記回転シャフトによって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される可変容量型の油圧モータと、前記油圧モータに連結された発電機と、前記油圧ポンプの吐出側を前記油圧モータの吸込側に連通させる高圧油ラインと、前記油圧ポンプの吸込側を前記油圧モータの吐出側に連通させる低圧油ラインとを備える再生エネルギー型発電装置の運転方法であって、
前記油圧ポンプの目標出力POWERpumpに基づいて、前記油圧モータの目標出力POWERmotorを算出するステップと、
前記モータ目標出力算出部により算出された前記目標出力POWERmotorに基づいて、前記発電機の回転数が一定になるように前記油圧モータの押しのけ容積の要求値Dを決定するステップと、
前記油圧モータの押しのけ容積を前記要求値Dに調節するステップとを備えることを特徴とする再生エネルギー型発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−501891(P2013−501891A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524407(P2012−524407)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【国際出願番号】PCT/JP2011/003005
【国際公開番号】WO2011/148654
【国際公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】