説明

再生医療用インプラント

本発明は、再生医療用モノリシックインプラントの製造プロセスを提供する。このプロセスは、少なくとも一の生体適合性材料をペーストに可塑化するステップと、前記ペーストをダイを通して押出し成形するステップと、前記押出し成形した材料を乾燥させて、水性成分及び/又は非水性成分を除去するステップと、を具える。本発明は、また、このようにして製造したモノリシックインプラント、このインプラントの再生医療用足場としての使用、及び再構築手術又は置換手術における移植組織としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生医療の分野に使用されるインプラント材料の製造プロセス及びこのプロセスで製造されたインプラントに関する。
【0002】
ヒトの骨格はいくつもの機能を持つ。内部器官を保護し、筋肉付着部位を提供して四肢の動きを容易にし、カルシウムとリンの貯蔵所として働き、時には赤血球を製造する[1]。成人の骨格は、およそ206の骨からできており[2]、これらの骨のいずれかが、個人の寿命におけるある時点で復元または代替を必要とすることがある。
【0003】
再生医療は、組織の機能を復元、維持、及び改良するための生物学的代替物の基本的理解と開発に向けた工学技術と生命科学の原理及び方法の応用であると規定される。再生医療は、硬組織と軟組織の両方に適用することができる。硬組織には、例えば、骨や歯が含まれ、軟組織には、例えば、器官、血管、筋肉、靭帯、腱、軟骨、及び神経が含まれる。
【0004】
再生医療に使用されるインプラントは、理想的には以下の特徴を有する。
・生体適合性がある。すなわち、インプラントが身体内で局所的あるいは全身性拒絶反応のいずれをも生じすることなく機能することができる。
・インプラントが交換を意図する構造を複製する機械的特性を有する。例えば、インプラントは、体重がかかる負荷を負うのに十分に強く、壊れずにストレスに耐えるのに十分にフレキシブルであり、必要に応じて互いに滑らかに動くことができる。
【0005】
骨は非常に脈管性である。すなわち、必要なときに迅速な治癒を支援する血管ネットワークを含んでいる。欠陥が骨自身で治癒できないある大きさになると問題が生じる。これは、限界サイズの欠陥として知られており、欠陥が臨界的になるサイズは年齢や個人の健康状態に依存している。このような欠陥は、外傷性障害、疾病、遺伝子異常、感染症、腫瘍増殖、あるいは変性疾患(例えば、変形性関節症)の結果生じることがある。
【0006】
骨インプラントの製造に関して、空隙率と強度に関する要求の間に重大なくい違いがある。なぜなら、これらの物理的特徴は互いに排他的であるためである。骨は生物学的複合体であり、コラーゲン(繊維性たんぱく質)と、ヒドロキシアパタイト結晶(HA)、セラミックからなる。コラーゲンは、マトリックスにフレキシビリティと破壊靱性を与え、ヒドロキシアパタイトは剛性を与える。骨格には二つのタイプが異なる骨がある。図1に示す大腿骨に見られるように、皮質骨と骨梁である。これらの二つのタイプの骨は、同じタイプの細胞と物質を含んでいるが、構造とどれだけの組織が石灰化されているかが異なる。皮質骨は全体で骨格の約80%をなしており、骨梁は約20%をなしているが、骨のこれらのタイプの比率は骨格の様々な部分で異なる。
【0007】
皮質骨(ハバース骨または緻密骨とも呼ばれる)は、ほとんどの骨の外側表面と長骨のシャフトを形成する密度の高い石灰化組織(体積の80−90%が石灰化している)である。表面積対質量比が低く、骨格に強度と構造を与え、ヤング率が約20Gpaである。
【0008】
網状骨(海綿骨あるいは骨梁とも呼ばれる)は、小柱(骨のストランド)のネットワークを形成して、特徴的な海綿状外観を与える。表面積対質量比が高く、長骨の端部や、背骨と腰骨に主に見られる。体積の15−25%が石灰化しているのみであり、残りの空間は血管、結合組織及び骨髄で占められている。骨梁のヤング率は約2GPaに過ぎない。骨梁の主たる機能は代謝であり、ほとんどの骨代謝回転はここで生じる。
【0009】
皮質骨は、その量は生体構造的位置によって異なるが、常に網状骨を取り囲んでいる。好ましい骨インプラントは、皮質骨と骨梁の幾何学的形状については、取り除いた骨部分を複製する。
【0010】
骨の増強には従来の技術範囲が現在使用されており、これらの技術の基礎と固有の利益および不利益が下記の表1にまとめられている。
【0011】
自家移植が現在の究極の基準である。自家移植は、患者の身体の一部から取った骨を別の場所に使用することである。通常、骨は腸骨稜から取って、必要に応じて使用される[4]
【0012】
同種移植は、別のヒトから提供された骨を使用する方法である。通常は、死後に臓器提供者の骨を取り除いて骨バンクに保存して、外科医がそれを必要とするときにいつでも使用できるようにする。
【0013】
異種移植は、異なる種から組織を摘出する方法であり、従って、免疫反応を防ぐ処理を行う間に全ての細胞とたんぱく質が除去される。
【0014】
骨セメントは、手術室で混合して、インサイチュウで欠陥部分に合致させるように成形することができる。混合後セメントは迅速に固まる。歴史的には、PMMA(ポリメチルメタクリレート)セメントが使用されてきた。これは二部セメントであり、50年以上の間人工股関節置換手術に広く使用されてきた。しかしながら、現在はより生体適合性が高いリン酸カルシウムと硫酸カルシウムセメントが使用されている。このうちのいくつかは生体分解性である。
【0015】
生体適合性インプラントは、患者に与える影響が最小である材料で作られたインプラントである。これは、外科医がインサイチュウで作った、あるいはラピッドプロトタイピング技術を用いて手術前に作った、プラスチックまたは金属でできている[5]
【0016】
コラリンは岩礁から採取したサンゴであり、病原体を除去する処理がなされる。その構造と構成は天然の骨に非常に類似しており、インプラント後に内部成長を促進して、天然の骨で置換すべき身体によって徐々に分解する[6]
【0017】
合成骨移植は、セラミックス、ポリマ、あるいはこれらの複合体で作ることができる。この特性は、機械的強度、空隙率、分解時間、形状において変化する。
【0018】



【0019】
理想的な人工骨インプラントは、関連する不利益をなんら被ることなく、複数の公知技術の利点を取り入れている。
【0020】
骨インプラント製造の分野では、(i)ラピッドプロトタイピング(RP)と呼ばれるもの、また、(ii)RP以外の技術をカバーする従来の方法(例えば、射出成形)の、二つの主なプロセスが用いられている。
【0021】
RPは、コンピュータ支援設計(CAD)モデルから自動的に物理的プロトタイプを構築できる広いカテゴリの技術のことを言う。ラピッドプロトタイピングは、非常に複雑な設計の機能的プロトタイプを迅速に作る独自の機会を追加的に提供する。この積層製造は、自由立体造形技術(SFF: Solid freeform fabrication)、デスクトップ製造、及びコンピュータ支援製造(CAM)とも呼ばれる。
【0022】
いくつかのRP法があるが、これらの全てに対して汎用であるものが、これらの方法で使用している基本アプローチであり、これは、(i)幾何学的モデルがCAD/CAMシステム上に構築される、(ii)CADモデルは、光造形(STL)に変換される、(iii)コンピュータプログラムが生成したSTLファイルを読み取ってこのモデルを層状断面の有限集合にスライスする、といった3つの段階で記載することができる。各層は、液体、粉体、あるいは固体から個別に作られており、各層が隣の層の表面に連結されて直前の層の上に重ねられている。
【0023】
セラミック溶融堆積(FDC: Fused Deposition of Ceramic)は、RP技術の一例であり、細いストランドを針から移動ワークピースに堆積させて、図2に示すような構造を作る。ヒドロキシアパタイト(HA)骨格は、まず、ペースト状HAと、プロパン−2−オルと、ポリエチレングリコールと、ポリビニル・ブチラールを異なる比率で作り、所望の堅さに乾燥させることで、この方法を用いて作ることができる[3]。このポリマは、溶液にセラミックパウダを加える前に、溶剤中に完全に溶解する。この混合物を、次いで、約1時間、10分ごとにかき混ぜながら60℃のオーブンで乾燥させ、結果物であるペーストを注射器に装填して移動ワークピースに磨いた皮下注射針を用いて注入する。骨格が完成すると、300℃の空気中で乾燥させて1250℃で焼成する。
【0024】
この技術の特別な欠点は、破砕粉体から押出したペーストを容易に押出すことができず、ノズル出口においてカールした不規則なフィラメントができてしまうことである。この問題は、超音波分散を用いることで克服できるが、この混合は常にかき回す必要がある。
【0025】
RP技術は幅広い様々な材料で複雑な患者に特別な幾何学的形状を作ることが可能であるが、これらの技術には、機械自体が高価である、機械が骨格を作るのが遅い、骨格は後処理を有意に必要とする、といった多くの欠点がある。上述のRP技術はすべて拡張性に欠ける。これは高容量のパーツを低コストで製造することができないことを意味する。
【0026】
現代の自動車の排気ガスは全て触媒コンバータを有する。これによって、炭化水素、一酸化炭素、酸化窒素の大気中への有害な排出を低減している。触媒コンバータはガスを水蒸気へ変換し、有害ガスを減らすよう機能する。
【0027】
自動車触媒は高比表面積の基板を具える。これは通常セラミックまたは金属でできており、その上に活性(触媒)薄め塗装がなされている。薄め塗装は、比表面積を更に大きくし、活性材料をできる限り排気ガスに利用して反応速度を高めるように設計されている。触媒コンバータのコアは、通常ハニカム状多孔性モノリシックセラミック基板であり、1/1000メートル以下の孔を有する。この孔は、プラチナ、パラジウム、ロジウムなどの金属を含有する薄め塗装で被覆されている。
【0028】
触媒用途のコージライト粉末と凝集剤(例えば、酸化ポリエチレンまたはセルロース)混合物からセラミックモノリスを調合することは、すでに行われている工程である。
【0029】
驚いたことに、再生医療におけるインプラントとして使用するモノリシック構造は、セラミック自動車触媒用のものと同じ押出し法で製造できることが分かった。
【0030】
本発明の目的は、交換する天然組織の構造と特性を再現する再生医療用インプラントを提供することである。
【0031】
本発明の目的は、機能的勾配のある材料を具えるインプラントを提供することである。
【0032】
本発明の目的は、これらのインプラントを反復性があり、制御された、迅速な方法で大量生産できるように製造プロセスを改良することである。
【0033】
本発明の第1の態様によれば、再生医療用モノリシックインプラントの製造プロセスが提供されており、このプロセスは:
i)少なくとも一の生体適合性材料をペーストに可塑化するステップと:
ii)このペーストをダイを通して押出すステップと;
iii)この押出した材料を乾燥させて、含水成分及び/又は非含水成分を除去するステップと;を具える。
【0034】
触媒用途のセラミックモノリスを準備することは、非常に良く知られたプロセスであり:(i)原料酸化物を混合して、加熱中に完全に反応させるステップと、(ii)可塑化するステップと、(iii)このペーストを押出すステップと、(iv)乾燥させるステップと、v)焼成して原材料をモノリスに変形するステップと、を含む。このプロセスを図3に示す。
【0035】
i)混合
固体粉末を組み合わせて、乾燥混合させ、混合物中の各成分を均一に分布させる。この段階で押出し助剤、結合剤、及びその他の充填物を選択的に加える。これは、湿式混合段階でこれらの高粘性物質を加えるより簡単である。
【0036】
ii)可塑化
次いで、可塑化あるいは湿式混合を行い、選択した液体がペースト中で均等に分散するまで続ける。この目的は、液体被膜で個々の固体粉末を被覆することである。この液体は、この粉末に組み込まれるので、高粘度のペーストができる。これは、ペーストに、粒子を均一にパッキングし、安定した押出しができるようにする高いせん断力を与えることができるので重要である。ペーストの濃度を注意深く制御する必要があるため、混練チャンバとブレードの幾何学的形状はこの段階における重要なファクタである。粘度が高すぎると、ペーストの混練が完了しないことがある。セラミックペーストは、非ニュートン偽塑性流体であり、高品質の押出し成形を行うためには、その流動学的特性を注意深く制御する必要がある。
【0037】
自動車触媒の場合、水と混合したコージライト粉末と、例えば、酸化ポリエチレンや、セルロースなどの凝集剤をこの段階で含んでいる。流動学的特性、特に、プラスチック強度P、プラスチック粘度η、触媒ペースト流動性の動的限界Pk2は、押出しプロセスと結果物である固体に有意な影響がある。混練プロセス中は、粒子表面の電気的特性、特に、等電点(iEP)、ゼロ点電荷(ZPC)、及び混合物のpHなどを考慮することも重要である[8]
【0038】
ペーストの粘度を下げるため、結合剤として作用させるため、押出し段階で重要である潤滑剤として、といった様々な理由で有機添加剤を用いることができる。これらの添加剤の特性と成分は、最終製品の形態に影響するであろう。メチル−ヒドロキシ−エチル−セルロース(MHEC)は結合剤として使用され、ペーストの粘度を下げるよう作用し、ペースト中の固体粉末の緊密度を改善する。MHECは、水溶性であり、結果物である溶液の表面張力を低減し、これによって粉末流体の湿潤を改良する。ポリ−エチレン−グリコール(PEG)は主に潤滑剤として使用され、押出しに必要な圧力を下げて、ダイにかかる物質速度プロファイルを改善する効果を有する。有機充填剤の濃度が高すぎると、機械的強度の低い高多孔構造となる。クレイやグラスファイバなどの無機添加剤も結合剤として使用することができるが、これらの主たる用途は、最終製品の機械的強度を上げることである[7]
【0039】
マクロ空隙率を改良する(おがくず、でんぷん)ため、あるいは機械的特性を改良する(ムライト、ジルコニア)ために、追加物質を加えることができる。ペーストの押出しを助ける、クラックの発生を防ぐ、表面積を大きくする、あるいは熱膨張を低減するといった目的のために、その他の処理を行うこともできる。この反応の構成要素間の良好な接触を図るためには、原材料の粒子サイズの制御も重要である。
【0040】
iii)押出し成形
結果物としてのペーストを一連のダイを通って押出し成形する。まず、単純なロッド形状の押出しができる。セラミックペーストを、スクリュー押出し機あるいはラムによってダイに通す。連続製造にラムよりスクリュー押出し機が好適である。結果物としての押出し成形品の断面はダイに非常に合致している。次いで、この押出し成形ロッドをラムによって最終ダイに送り込む。最終押出し成形ダイの典型的な例が図4に示されている。
【0041】
押出し成形プロセスは、多くのファクタについて微妙に反応する。このファクタの一つは、ツールを通る物質速度プロファイルである。図5は、二つの曲線を示しており、一方が所望の速度プロファイルであり、他方は所望しないプロファイルである。所望のプロファイル(n=0.1、ペースト2)は、事実上平坦であり、押出し機の壁で速度が急速に落ちている。良好でない速度プロファイル(n=0.4、ペースト1)は、曲線がより強く、周辺部が乾燥しすぎたペーストの特性である。
【0042】
iv)乾燥
未乾燥成分を30−100℃で空気乾燥させる。未乾燥部分から水分を除去し、収縮が生じる乾燥相はこのプロセスの重要な部分である。ここで、モノリスを破壊するのに十分な大きさのクラックが生じることがある。このプロセスの温度と湿度を注意深く制御して、モノリスをゆっくり、均一に乾燥させ、高い圧縮度を達成する。
【0043】
v)焼成
焼成は、モノリス製造の最終段階であり、クラックが入らないように注意深く制御しなくてはならない。第1段階は、ペーストの示差熱分析−熱重量分析(DTA−TG)を行って添加物の発熱燃焼が生じる温度を決定することである。この燃焼相の間に、加熱速度と空気フローを制御して、モノリスにホットスポットができるのを防止する必要がある。モノリスの最終焼成温度は、使用する物質によるが、通常は1300−1400℃で、3−4時間か焼する。
【0044】
本明細書の発明の詳細な説明と特許請求の範囲を通じて、「具える」及び「含む」の用語、および、例えば「具えている」などの変形は、限定することなく有しているとの意味であり、その他の部分、添加物、構成部分、完全体、あるいはステップを排除するものではない。
【0045】
本明細書の発明の詳細な説明と特許請求の範囲を通じて、特別に記載がない限り、単数表現は複数に及ぶ。特に、不定冠詞が用いられている場合、明細書は特に記載がない限り、複数と単数を意図していると解するべきである。
【0046】
本発明の更なる実施例では、このプロセスは更に、乾燥したモノリシックインプラントを、例えば1300−1400℃といった典型的な温度で、3−4時間焼成するステップを具える。
【0047】
生体適合性物質
生体適合性物質は、生体組織中において、毒性、有害、あるいは免疫反応を起こすことなく生物学的に適合可能な特性を有する。本発明の好ましい実施例では、生体適合性物質は、セラミック、ガラスまたはガラスセラミックから選択される。
【0048】
好適なセラミック、ガラス、またはガラス−セラミック材料を、表2、3及び4にそれぞれ挙げる。



【0049】
本発明の代替の実施例では、生体適合性材料がポリマである。好適な合成ポリマの例は、表5に挙げられている。好ましくは、合成ポリマが、ポリラクチド、ポリグリコライドなどのアルファ−ポリエステルである。なぜなら、これらの二つの物質の分解産物は、乳酸とグリコール酸であり、身体の生理学的環境になじむからである。代替的に、このポリマは、例えば、コラーゲン、キチン、キトサン、及びエラスチンなどの天然ポリマである。
【0050】


モノリシックインプラントの成分として使用できるその他の物質には、例えば、ヒドロゲルや、脱ミネラル骨マトリックス(DBM)がある。
【0051】
本発明の更なる実施例では、インプラントが少なくとも二つの生体適合性材料を具え、これによって、両材料の物理的及び化学的特性をあわせている。
【0052】
本発明の更なる実施例では、可塑化したペーストが、少なくとも二つの生物適合性材料の均質な混合物を具える。ペースト中のこれらの二つの物質の混合比は変えることができ、これによって、モノリシックインプラントの物理的及び化学的特性を必要に応じて変えることができる。
【0053】
本発明の更なる実施例では、可塑化したペーストが少なくとも二つの生物適合性材料の層を具える。例えば、このペーストはセラミックコーティングで覆われたポリマコアを具える。
【0054】
本発明の更なる実施例では、第1の生体適合性材料中に第2の生体適合性材料が分散されている。例えば、ポリマの粒子が、可塑化セラミックペースト全体に分散されている。このポリマはセラミックより融点が低いため、セラミックを焼成する間に燃焼して、そこに多孔性構造を残す。
【0055】
骨グラフトが欠陥を修復できる方法は3つある。
・骨形成、グラフトに含まれている細胞による新しい骨を形成
・骨誘導、グラフト(例えば、骨形態形成たんぱく質)に含まれている分子が、患者の細胞を骨形成可能な細胞に変える化学プロセス。
・骨伝導、レシピエントの細胞が新しい骨を形成する骨格をグラフトマトリックスが構成する物理的効果
【0056】
本発明の更なる実施例では、モノリシックインプラントは、骨伝導マトリックス、骨形成物質、及び骨誘導物質を含む生体適合性材料のあらゆる組み合わせを具えていても良く、これによって、上記の良好な骨グラフト3つの条件を満たす。
【0057】
機能傾斜材料(FGMs)あるいは異方性材料は、接合に異なる特性を有する二又はそれ以上の材料が必要な場合の解決を提供する。これらの材料は、異なる材料の特性を一方から他方へ徐々に移行するよう調整することができ、機械的あるいは熱的特性といった特性の不一致を最小限に抑える。本発明の更なる実施例では、モノリシックインプラントがFGMである。
【0058】
インプラント再吸収
インプラントの再吸収は主としてその化学的組成に依存している。従来のインプラントはほぼ不活性である、部分的に再吸収可能である、あるいは全体的に再吸収可能である。
【0059】
インプラントの再吸収能力は、特定の生体構造部位の条件に合わせて選択される。例えば、開放端骨切り術は、実質的に生体分解性であり、新しい骨ができる速度で分解することが好ましい。
【0060】
従って、本発明の好ましい実施例では、インプラントは実質的に不活性である。本発明の代替の実施例では、インプラントは部分的に、あるいは全体的に再吸収可能である。インプラントの再吸収率は、使用する生体材料の選択によって制御される。
【0061】
インプラントの空隙率
インプラントの空隙率は、インプラントと周辺組織管の物理的及び化学的相互作用に有意に影響する。空隙率は、細胞が相互作用する表面積を増やし、例えば、インプラント部位におけるインプラントの機械的一体性と、インプラント再吸収率に影響する。空隙率が低いあるいは多孔性でない材料は、細胞透過ができない。
【0062】
インプラントの空隙率は、天然組織の再現であることが好ましい。例えば、部分的骨欠陥においては、高多孔質の中央部位(模倣骨梁)がより強く、低多孔質の外部シェル(模倣皮質骨)に囲まれて構造的支持を提供する。
【0063】
本発明の好ましい実施例では、インプラントは簡単で規則的な多孔質構造の大チャネル(0.5−2mm)を有する開放構造である。なぜなら、これは血液の搬送が良好であるため、生体内泡式構造より性能が良く、従って、インプラント内に存在する細胞の栄養必要量に合致するためである。
【0064】
孔の形態、モダリティ、及び/又は、分布は、インプラントの条件によって変えることができる。孔は一方向性であっても、多方向性であってもよい。
【0065】
骨インプラントとして使用するモノリシックインプラントは、好ましくは、以下のタイプの多孔質のうちの少なくとも一つを具える:
・マクロ空隙率(100−1000μm)では、新しい骨がインプラント全体の付加インプラント表面に成長する
・連続メソ(0.02−0.05μm)と、マイクロ空隙率(<10μm)では流体通となり、インプラント全体の骨の再成長を支持する栄養搬送が行われる。
・ナノ粒子サイズ(<1nm)構造によれば、細胞媒介インプラント再吸収が容易になる。
【0066】
本発明の実施例では、ダイを通ってペーストを押出す間に、孔が形成される。押出しの後にレーザを用いて更に孔を作ることができる。このような技術は当業者には自明である。
【0067】
本発明の更なる実施例では、例えば、おがくずまたはでんぷんなどの追加の材料を押出しの前に柔軟材料に加えて、マクロ空隙率を改善することができる。
【0068】
本発明の好ましい実施例では、モノリスが、一連の繰り返しポリゴンで構成されており、このポリゴンが組み合わさって構造体を形成している。ポリゴンは、3又はそれ以上のラインセグメントによって境界をなす閉平面形状として定義される。モノリスを形成しているポリゴン状ユニットは、図6に示すように、サイズと形を変えることができる。ポリゴン状ユニットは、例えば、三角形、正方形、あるいは六角形であっても良い。本発明の実施例では、モノリスは同一形状の複数のポリゴン状ユニットでできている。本発明の代替の実施例では、モノリスは、少なくとも二つの異なる形状の複数のポリゴン状ユニットでできている。
【0069】
例えば、可塑化材料をダイアッセンブリを通して押出して、最終製品が機能的勾配を有する多孔構造を具えるようにすることができる。
【0070】
生物活性インプラント
インプラントの表面は、その周辺組織に一体化するための最大能力を決定する。表面エネルギィ、塑性、粗度、及びトポグラフィの複合効果が、たんぱく質吸収、および細胞接着といったインプラントに対する生物学的応答の初期相の間、並びに、この応答の後のより慢性期の間に、主な役割を果たす[13]。骨結合の場合は、インプラント表面が不適当、あるいは最適でなければ、細胞は、インプラント部位における骨形成を適宜刺激するのに必要な自己分泌と傍分泌の適宜の相補性をつくることができなくなる。これに対して、表面が適当であれば、インプラント表面の細胞が、この表面における細胞と、遠位組織中の細胞との間の相互作用を刺激する。これによって、細胞増殖、分化、マトリックス合成、及び局所因子製造を含む一連の事象が適時に開始し、その結果インプラントが周辺骨組織に成功裏に一体化する。
【0071】
骨インプラントインターフェースの大きさは、インプラントの増加する粗度に大きく関連することが示された。サンドブラスト仕上げを行い、酸(HCl/HSO)攻撃を受けた表面は、非常に大きな骨インプラントインターフェースを提供する。
【0072】
従って、本発明の一実施例では、インプラント表面が少なくとも部分的に粗面である。
【0073】
親水性表面は血液と血漿をインプラント表面に迅速に呼び込んで、細胞と、例えば成長ファクタ(例えば、TGF)などのその他の成分が、成長ファクタインプラント中の孔のネットワークへ容易に移動する。
【0074】
従って、本発明の一実施例では、インプラント表面が少なくとも部分的に親水性である。
【0075】
骨は、再吸収及び形成過程によって定義される一定の再形成過程にある。骨再吸収は破骨細胞の独自の機能であり、骨再形成は骨芽細胞の独自の機能である。
【0076】
骨再吸収は、セラミックインプラントに存在しており、二つのタイプの異なる細胞に関連しているように見える。活性再吸収を示唆している酸性ホスファターゼがプラスである破骨細胞状細胞は、表面、特に、リン酸三カルシウムインプラント内に直接付着する。更に、粒状材料と密集しているマクロファージのクラスタは、孔中、及び全インプラントシリンダ周辺に沿って見ることができ、小さい分離セラミック粒子の細胞内分解にこのクラスタが積極的な役割を果たしていることを示唆している。
【0077】
インプラント周囲の組織の再生速度は、再吸収性及び/又は再生性を有する好適な細胞タイプでインプラントを補助することによって改善される。
【0078】
本発明の好ましい実施例では、細胞は、初期段階の胎児、胎児、または成人由来の幹細胞などの、再生コンピテント細胞である。
【0079】
本発明の実施例では、この幹細胞は、全能細胞(totipotent)である。全脳細胞は、受精した胚の4−8細胞分割段階から取られ、分割してヒトになる可能性がある。
【0080】
本発明の実施例では、幹細胞が多能性(pluripotent)である。この多能性細胞は、胚/胎児細胞から取り出され、ヒト全細胞ではないがあらゆるタイプの細部を形成する可能性がある。
【0081】
本発明の実施例では、幹細胞は多能性(multipotent)である。この多能性細胞は、制限された細胞型にのみ分化することができる。
【0082】
本発明の実施例では、この細胞は骨生成細胞である。例えば、骨芽細胞、あるいは骨芽状細胞である。
【0083】
この細胞をモノリシックインプラントの多孔性ネットワークに植えつけるか、あるいは代替的に、当業者に公知の方法でインプラント表面に付着させる。
【0084】
骨中へのインプラントの骨一体化の欠如により問題が生じることがある。インプラントと骨の間の小さなギャップが開いて、慢性の炎症反応、骨再吸収、インプラントの連続的な機械的疾患を引きおこす粒子またはバクテリアが入り込む。インプラントの骨への一体化を改善する一つの方法は、生体適合性及び生物活性フィルムでインプラントを覆うことによって、インプラント表面への骨の成長を促すことである。好適な被覆は、インプラントの表面積と交換時の骨の保持力を有意に増やす。これは、骨一体化とインターロックを改善する多くの凹凸を表面に有している。このフィルムに骨芽細胞を直接接着することで、インプラント後の早い時期の骨とインプラント間のギャップが狭くなり、従って、一体化が改善され、感染症を最小に抑える。これらのフィルムの例には、生物活性ポリマや、生物活性リン酸カルシウムコーティングがある。
【0085】
本発明の更なる実施例では、モノリシックインプラントが生物活性コーティング/フィルムを具える。
【0086】
モノリシックインプラントの幾何学的形状
モノリシック円柱の押出しと同様に、その他の多くの幾何学的形状を作ることができる。成形しやすい材料の適宜形状のダイを用いた押出しによって、自然の器官を模倣した最適化幾何学形状を有するモノリシックインプラントを製造することができる。例えば、ヒトの下顎の代用材を作る(図7a)には、その平面に非常に似たフォームを押出すことが可能となる。次いで外科医がこの押出し成形品の形を整えてよりマッチングさせ、ぴったり合うように機械で加工する。図7bは、この押出し成形品がどのように見えるかを示す図である。例えば、腰骨の代用材の製造では、モノリスを曲線形状に押出して、モノリスの内側構造を自然に発生する腰骨自体の応力ラインに合わせるようにする。図8は、ヒトの腰骨の断面を骨梁アラインメントと共に示す図である。
【0087】
組織工学的足場
モノリシック構造の押出し成形は、骨以外のその他の器官の組織工学的足場に適用することができる。この足場の特性は、あらゆる特別な組織工学のアプリケーションに合わせることができる。例えば、肺組織工学では、この足場は、胸部の一定の動きにあわせ、同様に肺細胞の成長を助けるためには非常にフレキシブルでなくてはならない。このアプリケーションにはフレキシブルポリマあるいはヒドロゲルが最も適している。この足場は、また、インプラントを既存の肺組織に縫合して気密シールを提供する異なる材料でできた外側皮膚も必要である。気孔サイズと、モノリスの全体的な空隙率、並びに材料の表面特性は、足場を装着しやすいように細胞に適合させて調整することができる。
【0088】
組織工学によって作製された器官のその他の例として、肝臓あるいは腎臓を挙げることができる。これらの器官はフレキシビリティがより低くてよく、従って、分解可能なポリマが好適な材料となる。また、足場の空隙率と表面特性は、関連する細胞に合致するように最適化されなくてはならない。もう一つの可能なアプリケーションは、人工合成皮膚の製造である。現在皮膚に使われている材料は、皮膚の多層の修復に役立つ多孔質材料のストリップに押出すことができる。
【0089】
したがって、本発明の一実施例では、モノリシックインプラントは柔組織インプラントである。柔組織インプラントは、従来は、以下の目的に使用されていた:外科手術によって、あるいは外傷によってできた組織空隙の再構築、柔組織ひだあるいはしわの補正のために厚い老化組織を回復させる、あるいは、美容強化のための組織増殖である。柔組織インプラントには、例えば、器官、血管、筋肉、靭帯、腱、軟骨、あるいは神経インプラントが含まれる。
【0090】
本発明の一実施例では、モノリシックインプラントが例えば骨や歯インプラントなどの硬組織である。好ましくは、モノリシックインプラントは整形外科用インプラントである。
【0091】
本発明の更なる態様によれば、本発明のプロセスによって製造したインプラントが提供されている。
【0092】
本発明の更なる態様によれば、本発明の方法によって製造したモノリシックインプラントの組織工学用足場としての使用が提供されている。
【0093】
本発明の更なる態様によれば、本発明の方法によって製造したモノリシックインプラントの再構築術、あるいは置換術における移植用組織としての使用が提供されている。
【0094】
【非特許文献1】1.Margareta Nordin and Victor H. Frankel. Basic Biomechanics of the Musculoskeletal system.89. USA, Williams & Wilkins. 892.Alexander P. Spence. Basic Medical Anotomy. 82. Benjamin-Cummings. 82.3.de Sousa, F.C.Gomes and Evans, J.R.G. Tubular hydroxyapatite scaffolds. Advances in Applied Ceramics 104(1), 30-34(5). 20053.B.D. Porter, J.B. Oldham,S.-L. He, and M.E.Zobitz. Mechanical Properties of a Biodergradable Bone Regeneration Scaffold. Journal of Biomechanical Enfineering 122(3), 286-288.2000. American Society of Mechanical Engineers.4.E.M. Erbe, J.G. Marx, T.D. Clineff, L.D. Bellincampi, Eur Spine J 10 Suppl 2, S141-6(2001).5.Liu Yaxiong, Li Dichen, Lu Bingheng, He Sanhu, and Li Gang. The customized mandible substitute based on rapid prototyping. Rapid Prototyping Journal 9(3), 167-174. 2003. Emerald Group Publishing Ltd.6.H. Petite et al., Nat Biotechnol 18, 959-63 (2000)7.Forzatti, Pio, Ballardini, Daniele, and Sighicelli, Lorenzo. Preparation and characterization of extruded monolithic ceramic catalysts. Catalysis Today 41(1-3), 87-94. 988.Avila, Pedro, Montes, Mario, and Miro, Eduardo E. Monolithic reactors for environmental applications: A review on preparation technologies. Chemical Engineering Journal 109(1-3), 11-36. 20059.Laboratory of Environmental Catalys. Monolithic honeycomb supports and catalysts. 200611. Family Doctor. Sample Chapter –understanding osteoporosis. 2006.12.Medical Art Servie. Cross-section of Femur BA 216. 200613. Kieswetter K, Schwartz Z, Dean DD, Boyan BD. The role of implant surface characteristics in the healing of bone. Crit Rev Oral Bio Med. 1996; 7(4): 329-4514.Buser D, Schenk RK, Steinemann S, Fiorellini JP, Fox CH, Stich H. influence of surface characteristics on bone integration of titanium implants. A hitomorphometric study in miniature pigs. J Biomed Mater Res. 1991 Jul;25(7):889-902
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生医療用モノリシックインプラントの製造プロセスにおいて、当該プロセスが:
i)少なくとも一の生体適合性材料をペーストに可塑化するステップと;
ii)前記ペーストをダイを通して押出し成形するステップと;
iii)前記押出し成形した材料を乾燥させて、水性成分及び/又は非水性成分を除去するステップと;
を具えることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスにおいて、当該プロセスが更に、前記乾燥させた押出し成形材料を焼成するステップを具えることを特徴とするプロセス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロセスにおいて、前記少なくとも一の生体適合性材料がセラミック、ガラス、あるいはガラスセラミックであることを特徴とするプロセス。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプロセスにおいて、前記少なくとも一の生体適合性材料がポリマであることを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプロセスにおいて、前記モノリシックインプラントが実質的に多孔質であることを特徴とするプロセス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプロセスにおいて、前記モノリシックインプラントが、同一形状の複数の多角形ユニットからなることを特徴とするプロセス。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプロセスにおいて、前記モノリシックインプラントが少なくとも2種類の形状の複数の多角形ユニットからなることを特徴とするプロセス。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプロセスにおいて、前記モノリシックインプラントが機能的傾斜材料であることを特徴とするプロセス。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のプロセスにおいて、前記モノリシックインプラントの少なくとも部分が生体再吸収性であることを特徴とするプロセス。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のプロセスにおいて、前記モノリシックインプラント表面の少なくとも部分が細胞誘引を促進するように構成されていることを特徴とするプロセス。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のプロセスにおいて、前記インプラントに細胞型が補充されることを特徴とするプロセス。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスにおいて、前記細胞が再生適格細胞であることを特徴とするプロセス。
【請求項13】
請求項12に記載のプロセスにおいて、前記再生適格細胞が間質細胞であることを特徴とするプロセス。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のプロセスにおいて、前記モノリスが柔組織インプラントであることを特徴とするプロセス。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のプロセスにおいて、前記モノリスが硬組織インプラントであることを特徴とするプロセス。
【請求項16】
請求項1乃至13のいずれか1項、又は請求項15に記載のプロセスにおいて、前記モノリスが整形外科用インプラントであることを特徴とするプロセス。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載のプロセスを用いて製造したモノリシックインプラント。
【請求項18】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載のプロセスによって製造したモノリシックインプラントの使用。
【請求項19】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載したプロセスによって製造したモノリシックインプラント、再構築外科手術または置換外科手術における移植組織としての使用。

【公表番号】特表2009−534151(P2009−534151A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507157(P2009−507157)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001520
【国際公開番号】WO2007/125323
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508320561)ザ ユニバーシティ オブ ウォリック (1)
【Fターム(参考)】