再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法
【課題】蓄電システムが併設された出力変動を緩和する風力発電などの再生可能エネルギー利用発電システムにおいて、電力変動の緩和に際して、自然エネルギーの有効利用を可能にする。
【解決手段】風力発電装置群の発電電力と蓄電システムの充放電電力の和である再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を設定し、蓄電システムの充電率に基づき充電可能な電力を演算し、設定された出力電力の上限値と演算された充電可能な電力との和に基づき風力発電装置群の電力制限指令を演算し、電力制限指令に基づき風力発電装置群の発電電力を制限し、風力発電装置群の発電電力が発電システムの出力電力の上限値を超える場合において、蓄電システムに充電可能な場合には、蓄電システムに発電システムの出力電力の上限値を超える風力発電装置の発電電力を充電する。
【解決手段】風力発電装置群の発電電力と蓄電システムの充放電電力の和である再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を設定し、蓄電システムの充電率に基づき充電可能な電力を演算し、設定された出力電力の上限値と演算された充電可能な電力との和に基づき風力発電装置群の電力制限指令を演算し、電力制限指令に基づき風力発電装置群の発電電力を制限し、風力発電装置群の発電電力が発電システムの出力電力の上限値を超える場合において、蓄電システムに充電可能な場合には、蓄電システムに発電システムの出力電力の上限値を超える風力発電装置の発電電力を充電する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システムと風車発電装置などの再生可能エネルギー利用発電装置とを備える再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界に存在する再生可能なエネルギーを電力エネルギーに変換する手段として、風力発電装置群が利用されている。
【0003】
風力発電装置群のエネルギー源は、時間的に変動する風のエネルギーであるため、風力発電装置群の発電電力も時間的に変動する。
【0004】
電力系統は、電力需要の大きさに応じて大型発電機の発電電力を調整することで、電力の需給のバランスを保っている。このため、非特許文献1にあるように、変動の大きな電源である風力発電装置群が大量に電力系統に連系した場合、調整力不足や、周波数変動の拡大が懸念される。
【0005】
これを防止するため、例えば特許文献1に示されるように、風力発電装置群に蓄電システムを併設し、風力発電装置群の変動する発電電力を、蓄電システムが充放電することで、電力系統に流出する電力変動を緩和するなどの手段が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−124780号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「東北系統への風力発電の連系可能量の検討結果」東北電力株式会社 平成16年9月3日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に示されているように、緩和対象となる電力変動はその変動周期によりいくつかの領域に分けられる。特に中周期領域と呼ばれる数分〜20分程度の変動は、調整力不足による需給不均衡の拡大、周波数変動の拡大などに繋がる虞がある。このような中周期領域の電力変動による悪影響を回避するには、この周波数帯にある電力変動を緩和する必要がある。具体的には、任意の時間から始まる一定の期間(例えば20分以内)、出力電力の出力変動幅を、所定の一定値(例えば風力発電システム定格値の10%)以内に抑制することが望ましい。
【0009】
中周期領域の電力変動を緩和する手段として、例えば特許文献1に示されるように、風力発電装置群の発電電力の平均値に対して所定の範囲を設け、この範囲を逸脱するときのみ蓄電池の充放電を行う手段がある。
【0010】
しかしながら、特許文献1に示された制御方式を用いた場合、対象とすべき中周期領域の変動を緩和するために、発電電力の平均値という簡易な出力目標値を用いるため、中周期領域の変動緩和には寄与しない不必要な蓄電池の充放電が発生する虞がある。
【0011】
蓄電池の充放電操作には、蓄電池内部での損失が必ず伴う。このため、変動緩和に寄与しない蓄電池の充放電は、損失を増大させることになり、自然エネルギーを最大限有効に利用できない虞がある。
【0012】
また、風力発電システムの電力変動を緩和について、風速が急激に増加している期間は、風力発電装置の電力制限が行われる。しかしながら、電力制限機能は、本来利用可能であった風のエネルギーを、ピッチ角を調整し逃がすことで実現される。これでは、自然エネルギーを有効に利用していない。
【0013】
本発明は、蓄電池を備える風力発電などの再生可能エネルギー利用発電システムにおいて、電力変動の緩和に際して、自然エネルギーの有効利用を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、電力変動の緩和に際して、蓄電池の充電機能により、可能な限り蓄電し、蓄電しきれなかった電力のみを、電力制限機能により抑制するものであり、具体的には、風力発電装置群と蓄電システムとを有する再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法であって、風力発電装置群の発電電力と蓄電システムの充放電電力の和である再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を設定し、蓄電システムの充電率に基づき充電可能な電力を演算し、設定された出力電力の上限値と演算された充電可能な電力との和に基づき風力発電装置群の電力制限指令を演算し、電力制限指令に基づき風力発電装置群の発電電力を制限し、風力発電装置群の発電電力が再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を超える場合において、蓄電システムに充電可能な場合には、蓄電システムに再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を超える風力発電装置の発電電力を充電することを特徴とする。
【0015】
再生可能エネルギー利用発電装置として、風力発電装置群の代わりに、太陽光発電システムまたは波力発電システムを用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力変動の緩和に際して、自然エネルギーの有効利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一の実施形態における風力発電システムの構成を示した図。
【図2】本発明の第一の実施形態における風力発電装置の一例を示した図。
【図3】本発明の第一の実施形態における風力発電装置の一例を示した図。
【図4】本発明の第一の実施形態における風力発電装置の一例を示した図。
【図5】本発明の第一の実施形態における風力発電装置の一例を示した図。
【図6】本発明の第一の実施形態における蓄電装置の一例を示した図。
【図7】本発明の第一の実施形態における風力発電システムの出力電力を示した図。
【図8】本発明の第一の実施形態における上位コントローラの制御系を説明する図。
【図9】本発明の第一の実施形態における充電率目標値作成手段を示した図。
【図10】本発明の第一の実施形態における最大値・最小値演算手段を示した図。
【図11】本発明の第一の実施形態における充放電電力指令作成手段を示した図。
【図12】本発明の第一の実施形態における充電率管理手段を示した図。
【図13】本発明の第一の実施形態における電力制限指令作成手段を示した図。
【図14】本発明の第一の実施形態における充電可能電力演算手段を示した図。
【図15】本発明の第一の実施形態における風力発電システムの動作例を示した図。
【図16】本発明の第一の実施形態における風力発電システムの動作例を示した図。
【図17】本発明の第一の実施形態における本発明の効果を表した図。
【図18】本発明の第二の実施形態における充放電電力指令作成手段を示した図。
【図19】本発明の第二の実施形態における電力制限指令作成手段を示した図。
【図20(a)】本発明の第二の実施形態におけるシステム出力上限を設定しなかった場合の風力発電システムの動作例を示した図。
【図20(b)】本発明の第二の実施形態におけるシステム出力上限を設定した場合の風力発電システムの動作例を示した図。
【図21】本発明の第三の実施形態における風力発電システムの構成を示した図。
【図22】本発明の第三の実施形態における充電率目標値作成手段を示した図。
【図23】本発明の第三の実施形態における充放電電力指令作成手段を示した図。
【図24】本発明の第三の実施形態における電力制限指令作成手段を示した図。
【図25】本発明の第三の実施形態における出力電力上限値演算手段を示した図。
【図26(a)】本発明の第三の実施形態における風力発電システムの、発電電力予測値を用いなかった場合の動作例を示した図。
【図26(b)】本発明の第三の実施形態における風力発電システムの、発電電力予測値を用いた場合の動作例を示した図。
【図27(a)】本発明の第三の実施形態における風力発電システムの、発電電力予測値を用いなかった場合の動作例を示した図。
【図27(b)】本発明の第三の実施形態における風力発電システムの、発電電力予測値を用いた場合の動作例を示した図。
【図28】本発明の第四の実施形態における充放電電力指令作成手段を示した図。
【図29】本発明の第四の実施形態における風力発電システムの動作例を示した図。
【図30】本発明の第五の実施形態における充放電電力指令作成手段を示した図。
【図31】本発明の第五の実施形態における電力制限指令作成手段を示した図。
【図32】本発明の第五の実施形態における電力制限指令作成手段を示した図。
【図33】本発明の第五の実施形態における、蓄積エネルギーと電力制限指令の関係を説明する図。
【図34(a)】本発明の実施形態における、実施例一の制御動作を示した図。
【図34(b)】本発明の実施形態における、実施例五の制御動作を示した図。
【図35】本発明の第六の実施形態における風力発電システムの構成を示した図。
【図36】本発明の第六の実施形態における蓄電装置の充放電可能範囲を示した図。
【図37(a)】本発明の第六の実施形態における、従来の充電率制御を示した図。
【図37(b)】本発明の第六の実施形態における、本発明の充電率制御を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の風力発電システムは、所定期間T1の過去における風力発電装置群と蓄電システムの出力電力の和の最大値と最小値から、次の制御周期T2の未来における出力可能範囲Rを設定する。蓄電システムは、風力発電装置群の発電電力が、前記出力可能範囲Rを逸脱する場合、あるいは蓄電池の充電率が充電率の目標範囲から逸脱している場合のみ、充放電動作を行う。風力発電システムは、この制御周期T2ごとに前記出力可能範囲を更新する。
【0019】
また本発明の風力発電システムは、所定期間T1の過去における風力発電装置群と蓄電システムの出力電力の最小値と蓄電池の充電可能電力から、次の所定時間T3の未来における電力制限指令を演算し、一台以上の風力発電装置で構成される風力発電装置群は、所定時間の未来において、風力発電装置群の発電電力を前記制限指令以下に制限する。
【実施例1】
【0020】
本発明の第一の実施例について、図1から図17を用いて説明する。
【0021】
本発明の対象となる風力発電システムの構成について、図1を用いて説明する。本発明の風力発電システムは風力発電装置群1,蓄電システム2,上位コントローラ3,連系変圧器4で構成される。風力発電システムは、電力系統5に連系し、発電電力を電力系統5に送電する。風力発電装置群の連系点には、風力発電装置群の発電電力PWを計測する電力計6が設置される。また、蓄電システムの連系点には、蓄電システムの充放電電力PBを計測する電力計7が設置される。なお、風力発電システムの出力電力PSと、PW,PBには、数1の関係が成り立つ。
【0022】
(数1) PS=PW+PB
風力発電システムを構成物する風力発電装置群1について、以下に説明する。風力発電装置群1は、1台以上の風力発電装置1−1−1,1−1−2,・・・,1−1−nと、SCADA1−1によって構成される。SCADA1−1は、風力発電装置群の運転状況や、発電電力等の運転情報を収集する役割を担う。同時に、SCADA1−1は、上位コントローラから、風力発電装置群1の発電電力の制限指令PLCを受信し、個々の風力発電装置1−1−1,・,・,・,1−1−nの発電電力の和が、PLC以下になるように、個々の風力発電装置1−1−1,・,・,・,1−1−nに、それぞれ電力制限指令PLC1,PLC2,・,・,・,PLCnを与える。
【0023】
風力発電装置1−1−1,・,・,・,1−1−nについて、図2,図3,図4,図5を用いて説明する。図2は、風力発電装置の一形態を示した図である。風力発電装置は、ブレード1−1−1−1により風を受け、風のエネルギーを回転エネルギーに変換する。
回転エネルギーは、発電機1−1−1−4に伝達される。図1では発電機1−1−1−4として、直流励磁型同期発電機1−1−1−4を示している。直流励磁型同期発電機1−1−1−4のステータは、交直変換器1−1−1−5,変換器1−1−1−6を介して、系統に連系される。また、直流励磁型同期発電機1−1−1−4の回転子も、励磁装置1−1−1−9を介して系統に接続されており、励磁装置1−1−1−9を制御し直流励磁電流の強弱を調節することにより、可変速運転を実現している。図3は、発電機として、交流励磁型同期発電機1−1−1a−4を用いた風力発電装置の例である。また、図4は、発電機として、永久磁石型同期発電機1−1−1b−3を用いた風力発電装置の例である。図2,図3,図4の風力発電装置群は、いずれも電力変換器とブレードのピッチ角を調整することにより、可変速運転を可能としている。またこれらの風力発電装置は、ピッチ角の制御と、電力変換器の制御を組み合わせることにより、その発電電力を所定値以下に制限することが可能である。また、図5は、発電機として、誘導発電機1−1−1c−4を用いた風力発電装置の例である。図5に示した風力発電装置は、誘導発電機1−1−1c−4の固定子が、電力変換器を介さず、直接電力系統に連系する。この、誘導発電機1−1−1c−4を用いた風力発電装置も、ピッチ角を制御することにより、その発電電力を所定値以下に制限することが可能である。風力発電装置群1は、図2,図3,図4,図5に示した風力発電装置のいずれか一種類、あるいはこれらの組み合わせにより構成される。
【0024】
次に風力発電システムを構成する蓄電システム2について説明する。蓄電システム2は、一台以上の蓄電装置2−2−1,2−2−2,・,・,・,2−2−mによって構成される。個々の蓄電装置について、図6を用いて説明する。蓄電装置2−1−1は、複数の二次電池2−1−1−1と、変換器2−1−1−2,連系変圧器2−1−1−3,遮断器2−1−1−4等で構成される。二次電池は、鉛蓄電池,ナトリウム硫黄電池,レドックスフロー電池,リチウムイオン電池,ニッケル水素電池,リチウムイオンキャパシタのいずれか一種類、あるいはこれらの組み合わせにより構成される。なお図6は、蓄電装置として、二次電池を使用した例を示したが、二次電池の代わりにキャパシタとして、電気二重層キャパシタや、コンデンサを用いる形態、あるいは、二次電池とキャパシタの組み合わせ、あるいは他の蓄電要素の組み合わせで構成しても、本発明の効果は同じである。また、蓄電装置として、フライホイールなどの電気エネルギーを運動エネルギーとして蓄積可能なシステムを用いても、本発明の効果は失われない。蓄電装置2−2−1,2−2−2,・,・,・,2−2−mは、それぞれ上位コントローラ3からの充放電電力指令に従って、風力発電装置群の発電電力を充電、あるいは蓄えた電力を放電することができる。また、蓄電装置2−2−1,2−2−2,・,・,・,・2−2−mは、それぞれ蓄電池の充電率SOCを計測しており、SOCの値を上位コントローラ3に伝達する。
【0025】
風力発電装置群1に蓄電システム2を併設した風力発電システムは、蓄電システムの充放電動作により、変動の大きな風力発電装置群の発電電力変動を緩和することが可能であり、系統に悪影響を与えにくい風力発電システムであると言える。
【0026】
一方、蓄電池の充放電動作には、電力変換器による損失,蓄電池内部での損失などにより、必ず損失が伴う。自然エネルギーを最大限に活用するためには、蓄電池が充放電する電力量を、可能な限り少なくすることが望ましい。
【0027】
よって、電力変動の緩和と自然エネルギーの有効利用を両立させるためには、変動緩和に寄与しない不必要な充放電動作を、可能な限り少なくする必要がある。
【0028】
風力発電装置群が出力する発電電力変動は、広い周波数域に渡り存在する。中でも、中周期領域と呼ばれる数分〜20分程度の変動は、電力系統の調整力不足による需給不均衡の拡大,周波数変動の拡大などに繋がる虞がある。このような中周期領域の電力変動による悪影響を回避するには、この周波数帯にある電力変動を緩和する必要がある。具体的には、任意の時間から始まる一定の期間(例えば20分以内)の間の、発電電力の出力変動を、常に一定値(例えば風力発電システム定格の10%以下)以内に収めることが有効である。風力発電システムの電力変動が定格値の10%以下程度であれば、風力発電装置群が多く連系した場合でも、系統に与える影響を小さくすることが可能である。以下では、任意の時刻から始まる20分間の電力変動を、風力発電システム定格の10%以下に収める制御方式について説明する。
【0029】
20分間の電力変動を、風力発電システム定格の10%以下に抑制しつつ、かつ蓄電池の充放電電力量を可能な限り少なくするためには、図7に示す制御を実現すれば良い。つまり、所定の期間(図7では19分間)前から、現在の時刻tまでの、風力発電システムの出力電力PSの出力変動幅から、次の制御期間(図7では1分間)におけるPSの出力可能範囲Rを設定する。具体的には、所定の期間の過去(図7では19分間)におけるPSの最小値PSminに10%を加えたものを、範囲Rの上限に設定し、所定の期間の過去におけるPSの最大値PSmaxから10%を減算した値を、範囲Rの下限に設定する。
【0030】
次の制御期間(図7では1分間)は、PSがこの範囲内に収まるように、蓄電システムの充放電電力PBを調整する。蓄電システム2が充放電を行うのは、風力発電装置群1の発電電力が、前記範囲を逸脱した場合か、あるいは蓄電システム2のSOCが、充電率目標範囲を外れている場合のみである。このように蓄電システム2の充放電制御を行うことで、風力発電システムの出力電力PSの20分間における電力変動を、常時10%以下に抑えつつ、かつ蓄電池の充放電電力量を少なくすることが可能となる。
【0031】
なお、風力発電システムの電力変動を緩和する他の手段として、風力発電装置群の電力制限を利用することができる。つまり、風速が急激に増加している期間において、風力発電装置の電力制限機能を用いることで、風力発電装置群1の発電電力PWの上昇を制限し、緩和することが可能である。しかしながら、電力制限機能は、本来利用可能であった風のエネルギーを、ピッチ角を調整し逃がすことで実現される。このため、自然エネルギーを有効に利用するには、可能な限り電力制限機能を使用しないことが望ましい。
【0032】
このように、風力発電システムの出力電力PSの急増を抑制する手段としては、できる限り蓄電システム2の充電を利用することが望ましい。蓄電システム2に充電された電力は、損失で一部が失われるものの、放電することで有効利用することができるためである。よって、自然エネルギーを有効に利用するには、蓄電池の充電機能により、可能な限り蓄電し、蓄電しきれなかった電力のみを、電力制限機能により抑制することが必要である。
【0033】
以降では、蓄電池の充放電電力量を最小限に抑える制御方式、及び、蓄電システム2の充電機能を利用し、電力制限機能を可能な限り用いない制御方式を実現する風力発電システムについて、詳細に説明する。
【0034】
図8は、本発明の風力発電システムを構成する上位コントローラ3の制御構成を示した図である。上位コントローラ3は、風力発電装置群の発電電力PW,蓄電システムの充放電電力PB,蓄電装置の充電率SOC1,SOC2,・,・,・,SOCmから、蓄電池装置の充放電電力指令PBC1,PBC2,・,・,・,PBCmと風力発電装置群1の電力制限指令PLCを決定する。上位コントローラ3は、SOC目標値演算部3−1において、蓄電システム2の充電率目標値SOCTを演算する。また、上位コントローラ3は、PWとPBを加算することにより、風力発電システムの出力電力PSを演算する。上位コントローラ3は、最大値・最小値演算部3−2において、過去19分間におけるPSの最大値PSMaxと最小値PSMinを演算する。また上位コントローラ3は、充放電電力指令演算部3−3において、蓄電システムの充放電電力指令PBCを演算する。充放電電力指令PBCは、充放電電力指令分配部3−5において、個々の蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mへの充放電電力指令PBC1,PBC2,・,・,・,PBCmに分配され、個々の蓄電装置へ伝達される。なお蓄電システムの充放電電力指令PBCと、個々の蓄電装置への充放電電力指令PBC1,PBC2,・,・,・,PBCmには、数2に示される関係が成り立つ。
(数2) PBC=PBC1+PBC2+PBC3+・・・・・・+PBCm
上位コントローラ3は、電力制限指令演算部3−4において、風力発電装置群の電力制限指令PLCを演算する。
【0035】
次に、SOC目標値演算部3−1の動作について、図9を用いて詳細に説明する。SOC目標値演算部3−1は、風力発電装置群1の発電電力PWから、蓄電システム2の充電率目標値SOCTを演算する。蓄電システム2の充電率目標値としては、図9に示したように、PWとSOCTが一対一に対応する値を内部に保持しており、この内部値を参照することで、SOCTを決定する。なおSOCTの決定の仕方は、図9に示したように、必ずしもPWに依存する必要は無く、例えばPWに依存せず、一定値であっても本発明の効果は失われない。
【0036】
次に最大値・最小値演算部3−2の動作について、図10を用いて詳細に説明する。最大値・最小値演算部3−2は、現在の時刻から一定期間の過去のPSを内部メモリに保存する。また、最大値・最小値演算部3−2は、現在の時刻から一定期間の過去の間におけるPSの最大値PSMaxとPSMinを演算する。
【0037】
次に、充放電電力指令演算部3−3の動作について、図11を用いて詳細に説明する。充放電電力指令演算部3−3は、SOC管理制御部3−3−1において、SOC管理のための充放電電力指令の中間値PBSOCを作成する。充放電電力指令演算部3−3は、PBSOCにPWを加えた値PBC1を作成し、これにリミッター3−3−2とリミッター3−3−3を作用させることにより、充放電電力指令の中間値PBC3を求める。充放電電力指令演算部3−3は、中間値PBC3からPWを減算することにより、充放電電力指令PBCを求める。一つ目のリミッター3−3−2は、上限値をPSMinに風力発電システム定格の10%を加算した値、下限値をPSMaxから風力発電システム定格の10%を減算した値に設定する。このリミッター3−3−2の効果により、任意の20分間断面において、風力発電システムの出力電力PSの変動を10%以下に抑制することができる。また、風力発電装置群の発電電力PWが、リミッターの範囲内に収まっているときは、蓄電システムは充放電せず、不必要な充放電を避けることができる。2つ目のリミッター3−3−3は、上限値を風力発電システム定格100%、下限値を0%に設定する。リミッター3−3−3の効果により、風力発電システムの出力電力PSが、風力発電システムの定格を越える、あるいはPSが負値になり、風力発電システムが充電状態になることを防止できる。
【0038】
次に、SOC管理制御部3−3−1の動作について、図12を用いて説明する。SOC管理制御部3−3−1は、各蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mの充電率を目標充電率に近づけるような充放電電力指令を作成する。具体的には、SOC管理制御部3−3−1−1に示したように、蓄電装置の充電率の測定値SOC1を充電率の目標値SOCTと比較する。この際SOC1がSOCT+不感帯(例えば2%)より大きければ、充放電電力指令PBSOCT1として、風力発電システム定格の10%の放電電力指令を作成する。同様に、SOC1がSOCT−不感帯(例えば2%)より小さければ、充放電電力指令PBSOCT1として、風力発電システム定格の10%の充電電力指令を作成する。SOC1がSOCT±不感帯内に収まっていれば、PBSOCT1として0[kW]を作成する。SOC管理制御部3−3−1は、この演算をすべての蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mに対して実施し、得られた充放電電力指令PBSOCT1,PBSOCT2,・,・,・,PBSOCTmを加算することにより、蓄電システムの充放電電力指令PBCSOCを作成する。このような制御動作を行うことで、蓄電池の不必要な充放電を防止することができる。
【0039】
次に、電力制限指令演算部3−4の動作について、図13を用いて説明する。電力制限指令演算部3−4は、充電可能電力演算部3−4−1において、蓄電システム2の充電率SOCから、蓄電システムが充電可能な電力値PBChargeMaxを演算する。電力制限指令演算部3−4は、過去19分間における風力発電システムの出力電力の最小値PSMinとPBChargeMax、P2(例えば風力発電システム定格の10%)を加算した値を、風力発電装置群の電力制限指令PLCとする。このようにPLCを決定することで、風力発電装置群1の発電電力PSが急増した場合でも、可能な限り蓄電池が充電し、充電しきれなかった電力のみを電力制限機能で抑制する。同時に、任意の20分間断面において、風力発電システムの出力電力PSの変動を10%以下に抑制することができる。
【0040】
次に、充電可能電力演算部3−4−1の動作について、図14を用いて説明する。充電可能電力演算部3−4−1は、各蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mの充電可能電力値から、蓄電システム2の充電可能電力PBChargeMaxを演算する。具体的には、充電可能電力演算部3−4−1−1において、蓄電装置2−1−1の充電率測定値SOC1から、蓄電装置2−1−1の充電可能電力PBChargeMax1を演算する。二次電池などの蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mは、SOCにより充放電可能な範囲が変化する。充電可能電力演算部3−4−1−1は、蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mの特性に応じた充放電可能領域をメモリ内に蓄えており、充電池の測定値SOCに応じて、対応する充電可能電力値PBChargeMax1をメモリから読み出す。充電可能電力演算部3−4−1は、この演算を全ての蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mに対して実施し、得られた充電可能電力PBChargeMax1,PBChargeMax2,・,・,・,PBChargeMaxmを加算することで、蓄電システム2の充電可能電力PBChargeMaxを演算する。なお、図14ではPBChargeMaxを蓄電装置の充電率SOCのみから決定しているが、蓄電装置の温度や、蓄電装置の使用年数,総充放電電力量などを考慮して、PBChargeMaxを補正しても良い。
【0041】
次に、本発明の風力発電システムの動作例について、以下で説明する。図15は、本発明の蓄電システム2による変動緩和動作を、シミュレーションにより求めた結果である。図15の上段のグラフは、風力発電装置群1の発電電力PW,風力発電システムの出力電力PS,PSの出力可能範囲Rを示している。図15において出力可能範囲Rは20分間の変動が、風力発電システムの10%以下になるように設定されており、この範囲内であれば、任意の時刻から始まる20分間において、風力発電システムの変動を10%以下に抑制していることになる。図15に示す風力発電システムの出力電力PSは、常時この出力可能範囲Rに収まっており、出力変動20分間10%以内を実現している。図15の下段のグラフは、蓄電システム2の充放電電力PBと、蓄電システム2の充電率SOCを示している。なお、図15のシミュレーションにおいては、蓄電システム2の充電率目標値範囲を(50%±2%=48%〜52%)に設定している。図15の時刻3[hour]より前の時刻では、20分間の変動幅が10%以下であり、かつSOCが充電率目標範囲に収まっていることから、蓄電システム2が充放電を行わない。よって、蓄電池の充放電を可能な限り行わない、本発明の課題が達成できている。また時刻4.5[hour]前後では、風力発電装置群1の発電電力PWが出力可能範囲R内に収まっているにも関わらず、蓄電池が充電動作を行っている。これは、蓄電システム2の充電率SOCを充電率目標範囲内に収めるための動作であり、この充電動作により、SOCを充電率目標範囲内に収めることができている。また、このSOC管理のための充電操作の際も、PSは20分間の変動幅が10%以内になるように動作している。
【0042】
次に図16を用いて、本発明の電力制限制御による、風力発電システムの動作例について説明する。図16は、本発明の電力制限制御による変動緩和動作を、シミュレーションにより求めた結果である。図16の上段のグラフは、風力発電装置群の発電電力PW,風力発電システムの出力電力PS,風力発電装置群1の電力制限指令PLC,風車得制限を行わなかったときの風力発電装置群1の発電電力PW0を示している。風力発電装置群1の発電電力は、時刻1.0[hour]前後から上昇を始めており、上昇直後は蓄電システムの充電動作により、20分間の変動幅を10%以内に抑制している。時刻2.0[hour]前後で、蓄電システム2の充電率が100[%]に達する。蓄電システム2は充電率が100[%]以上では充電動作ができないため、時刻2.0[hour]では風力発電装置群1の電力制限機能により、発電電力PWを抑制する。この蓄電システム2のSOCに依存する電力制限機能により、蓄電システム2の充電動作を優先的に行うことで電力制限機能を可能な限り使用せず、自然エネルギーを有効利用するという、本発明の課題を満足している。
【0043】
次に、本発明の効果について、図17を用いて説明する。図17は本発明を、実存する風力発電システムに適用した場合の効果を、シミュレーションによって求めたものである。具体的には、蓄電システムが併設されていない実存する風力発電システムの発電出力データ約1年分を元に、蓄電システムを併設した際の動作を、数値シミュレーションで求めた結果である。シミュレーションでは、蓄電システムのMW容量を、風力発電システムの定格容量の90%とし、MWh容量は無限大としている。つまり、蓄電システムは、常時90%の放電、90%の充電が可能である。シミュレーションでは、比較対象のため、本発明の蓄電池制御の他に、公知技術である風力発電システムの出力電力PSが、風力発電装置群1の発電電力PWの一次遅れに追従するように蓄電池の充放電を行う制御方式と、PWの一次遅れ追従+固定幅を逸脱する場合のみ蓄電池を充放電する制御についても、評価を行った。
【0044】
図17はシミュレーション結果についてまとめたものであり、逸脱頻度,蓄電池の総充電電力量,総放電電力量,蓄電池充放電による損失を示している。なお、逸脱頻度とは、任意の時刻から始まる20分間において、風力発電システムの出力電力PSが10%より大きく変動している事象の発生頻度である。また、損失は、蓄電池の総放電電力量から、蓄電池の充放電効率が70%一定であると仮定して、求めた値である。一次遅れ追従、および一次遅れ追従+固定幅制御では、一次遅れの時定数が180分以上で逸脱率0.0[%]を達成しているケースがある。これら逸脱率0.0[%]を達成するケースのうち、充放電損失が最も少ない場合でも、損失が5.8[%]発生している。一方、本発明を実施した場合、逸脱頻度が0.0[%]であり、かつ損失が2.1[%]と非常に少ない。よって、本発明の課題であった、蓄電システムの充放電電力量を少なくし、蓄電システムの充放電による損失を減少させるという課題を、満足することを確認できる。
【0045】
なお、本発明の風力発電システムの構成は、図1に限定されるわけではなく、上位コントローラ3が蓄電システムの制御装置の機能を兼ねても、本発明の効果はおなじである。同様に、上位コントローラ3が風力発電装置群1のSCADA1−1の機能を兼ねても、本発明の効果は失われない。また風力発電装置群がSCADA1−1を持たず、上位コントローラ3が、個々の風力発電装置1−1−1,1−1−2,・・・,1−1−nに、直接電力制限指令を与える形態であっても、本発明の効果は失われない。
【0046】
また、本発明の風力発電装置は、個々の風車全てが電力制限機能を持つ必要は無く、電力制限機能の代わりに、個々の風車の運転・停止状態を切り替えることにより、風力発電装置群全体として、発電電力を所定値以下に制限する機能がある構成をとれば、本発明は実施可能である。
【0047】
また、本実施例では、変動緩和対象の電力変動を、数分〜20分程度の周波数帯に限定したが、変動緩和すべき周波数帯は電力系統ごとに異なるため、電力系統に応じて制御定数を変えることにより、本発明の効果は同様に実現可能である。
【0048】
本実施例では、発電電力PWが出力可能範囲R内に収まっており、かつ充電率SOCが充電率目標範囲に収まっている間は、蓄電システム2が充放電を行わない。蓄電システムが充放電を行わない間は、蓄電システム2を構成する変換器2−1−1−2の補記電源を停止しても良い。具体的には、変換器2−1−1−2を構成する空冷用のファンの停止,制御電源の供給停止,半導体素子のスイッチング動作の停止を行う。この補機電源の停止動作により、蓄電システム2が定常的に発生する損失を低減させることが可能となり、自然エネルギーをより有効に利用できる。
【0049】
以上で説明したように、本発明を用いることにより、風力発電システムの出力変動を抑制しながら、蓄電システム2の充放電による損失を低減させることができる。また、本発明を用いることにより、電力制限による損失を低減させることができる。また、本発明の効果により、蓄電システム2の充放電電力量が低減できることから、蓄電システム2に必要とされる蓄電池容量を低減させることが可能であり、本発明の形態である蓄電システム併設型風力発電システムの導入を容易にする。また、本発明の効果により、蓄電システム2の充放電電力量が低減できることから、蓄電装置の寿命を従来より延ばすことができる。よって、本発明を用いることで、従来技術より有効に自然エネルギーを利用できる。
【実施例2】
【0050】
本発明の第二の実施例について、図18,図19,図20を用いて説明する。
【0051】
本発明の実施例1との違いは、風力発電システムが所定の出力電力上限指令PMaxCをもち、風力発電システムの出力値が常時、出力電力上限指令PMaxC以下になるよう、風力発電装置群の電力制限と蓄電システムの充電を組み合わせて動作することである。本発明の実施例1と構成が異なる部分を、図18,図19を用いて説明する。
【0052】
図18を用いて、本実施例における充放電指令演算部3a−3について説明する。本実施例の充放電指令演算部3a−3が、実施例1の充放電指令演算部3−3と異なる部分は、リミッター3a−3−3の上限値を、風力発電システムの定格ではなく、風力発電システムの定格以下の値である出力電力上限指令PMaxC(本実施例では風力発電システム定格の70%)にする点である。本実施例の充放電指令演算部3a−3のその他の部分は、実施例1の充放電指令演算部3−3と同じであるため、説明を省略する。
【0053】
図19を用いて、本実施例における電力制限指令演算部3a−4について説明する。本実施例の電力制限指令演算部3a−4が、実施例1の電力制限指令演算部3−4と異なる部分は、最小値選択演算部3a−4−2が新たに加わった点である。最小値選択演算部3a−4−2は、(PSMin+10%)とPMaxCを比較し、いずれか小さいほうを選択する。本実施例の電力制限指令演算部3a−4のその他の部分は、実施例1の電力制限指令演算部3−4と同じであるため、説明を省略する。
【0054】
図18、および図19の制御構成をとることにより、実施例2の風力発電システムは、その出力電力値が常にPMaxC以下に抑制される。
【0055】
本発明の実施例2の構成における制御動作と効果について、図20を用いて説明する。蓄電システムを併設する風力発電装置群においては、風力発電システム全体のコストに占める、蓄電システム2のコストの割合が、一般的に高い。この蓄電池システム2のコストが、蓄電システム併設型風力発電装置群の導入を妨げている虞がある。
【0056】
蓄電システム併設型風力発電装置群の導入を容易にするには、蓄電システム2の容量を可能な限り減らすことが望ましい。しかしながら、蓄電システム2の容量を減らすと、風力発電システムの出力電力PSの変動が拡大する傾向にある。例えば、蓄電システムの定格充放電電力値(最大充放電電力値)を、風力発電システム定格値の60%にした場合の動作例を、図20に示す。なお、蓄電システムの定格充放電電力値は、一般的に、蓄電システムの変換器容量に等しい。
【0057】
図20(a),図20(b)では、風力発電システム付近の風速が緩やかに増加し、その後、時間的に急峻に減少した場合を想定している。図20(a)は、実施例1で説明した方法によって電力を制御した場合の、電力と充電率SOCの時間変化を示した図である。風力発電装置群1の発電電力PWは、風速に応じて緩やかに増加し、その後、時間的に急峻に減少する。発電電力PWの増加時は、蓄電システム2の充電動作と、風力発電装置群1の電力制限動作により、変動率を一定値以下(本実施例では20分間のPSの変動幅を10%以下)に抑制することが可能である。しかしながら、風車出力PWの急減時には、蓄電システム2の放電動作により、PSの変動を緩和することが必要であるが、蓄電システムの定格容量が風力発電システムの60%しかないため、PSの変動率を一定値以下に抑制できず、大きな変動が発生する。
【0058】
図20(b)は、本実施例の制御動作を行った場合の、電力と充電率SOCの時間変化を示した図である。本実施例では、風力発電システムの出力電力上限指令PMaxCを、蓄電システムの定格電力値(60%)+10%と設定している。風力発電システムの出力電力PSは、風力発電装置群1の電力制限動作と、蓄電システム2の充電動作により、常にPMaxC以下に抑制される。このため、風速が急激に減少し、風力発電装置群1の発電電力PWが急激に減少した場合においても、蓄電システム2の放電動作により、最大変動幅を10%(=PMaxC−蓄電システム定格値)以下に抑制できる。これにより、風力発電システムの出力電力の変動を、一定値以下(本実施例では20分間のPSの変動幅を10%以下)に抑制することができる。
【0059】
本実施例に示したように、風力発電システムの出力電力PSを、風力発電装置群1の電力制限機能、および蓄電システム2の充電機能で、常に所定値以下にすることにより、蓄電システム2の定格容量が、風力発電装置群1の定格容量よりも小さい場合においても、変動率を一定値以下に抑制することが可能である。この効果により、蓄電システム2の容量を減らすことができ、蓄電池併設型風力発電システムの導入を容易にでき、自然エネルギーを有効利用することができる。
【実施例3】
【0060】
本発明の第3の実施例について、図21〜図27を用いて説明する。
【0061】
本実施例の、第一の実施例および第二の実施例との違いは、風力発電システムが、風力発電装置群1の電力制限制御、および蓄電システム2の充放電制御に、気象予測に基づく風力発電装置群1の発電電力予測値を利用する点である。
【0062】
本発明の風力発電システムの構成について、図21を用いて説明する。図21に示した本実施例の風力発電システムの構成要素のうち、図1と番号が同じものは、同じ構成要素であるため、説明は省略する。本実施例の風力発電システムにおいては、上位コントローラ3bが、信号線8を介して、発電電力予測事業者9から風力発電システムの発電電力予測値PPを受信する。発電電力予測事業者9は、過去の気象データ,地形データ,風力発電システムの現在の運転状況,風力発電システムの過去の運転データから、未来における発電電力PPを予測する。
【0063】
上位コントローラ3bの構成について、図22,図23,図24,図25を用いて説明する。本実施例の上位コントローラ3bの構成の中で、実施例1の上位コントローラ3(図8)と異なる点は、蓄電システムSOC目標値演算部3b−1,蓄電システム充放電電力指令演算部3b−3,風力発電装置群電力制限指令演算部3b−4のみである。上位コントローラ3bの構成要素のうち、その他の部分については実施例1と同じであるため、説明は省略する。
【0064】
本実施例のSOC目標値演算部3b−1の動作について、図22を用いて説明する。図22の内、3b−1−1の動作は、実施例1のSOC目標値演算部3−1と同様の動作をするので、説明は省略する。SOC目標値演算部3b−1は、内部の電力予測値変動率演算部3b−1−2において、近い将来において、発電電力予測値PPが大きく変動する事象を探す。発電電力予測値PPが近い将来において急増する場合は、SOC目標値を小さく設定する。また、発電電力予測値PPが近い将来において急減する場合は、SOC目標値を大きく設定する。近い将来において発電電力予測値PPの急変が無ければ、SOC目標値は、実施例1と同様に、風力発電装置群の発電電力PWから決定する。本実施例では、風力発電システムは、このように蓄電システム2のSOC目標値演算部3b−1の動作に従って、SOCの目標値SOCTを発電電力予測値PPに基づいて変化させる手段を持つ。
【0065】
次に、本実施例の充放電電力指令演算部3b−3の動作について、図23を用いて説明する。図23に示した充放電電力指令演算部3b−3の中で、図11に示した充放電電力指令演算部3−3と番号が同じ構成要素は、実施例1と同様の動作をするため、説明は省略する。本実施例の充放電電力指令演算部3b−3は、リミッター3b−3−3において、上限値を風力発電システム定格値ではなく、出力電力上限指令PMaxCに設定する。PMaxCは、発電システム上限値演算部3b−3−4において、風力発電装置群出力電力予測値PPから演算される。
【0066】
次に、本実施例の電力制限指令演算部3b−4の動作について、図24を用いて説明する。図24に示した風力発電装置群電力制限指令演算部3b−4の中で、図13に示した風力発電装置群電力制限指令演算部3−4と番号が同じ構成要素は、実施例1と同様の動作をするため、説明は省略する。本実施例の風力発電装置群電力制限指令演算部3b−4は、最小値選択演算部3b−4−2において、(PSMin+10%)とPMaxCを比較し、いずれか小さいほうを選択する。PMaxCは、出力電力上限値指令演算部3b−4−3において、風力発電装置群出力電力予測値PPから演算される。
【0067】
発電システム上限値演算部3b−3−4および発電システム上限値演算部3b−4−3の動作について、図25を用いて説明する。発電システム上限値演算部3b−3−4(3b−4−3)は、発電電力予測値PPから、未来において発電電力予測値PPが急激に減少する事象を探し、これに応じて出力電力上限指令PMaxCを作成する。具体的には、PPが急激に減少する時刻まで、緩やかにPMaxCを減少させる。なお、PMaxCの減少の早さは、例えば10[%]/20[分]の一定の割合で減少させ、かつPPが急激に減少する時刻において、PMaxCが蓄電システム2の定格容量になるようにPMaxCを設定する。なお、PPの急変が無い時間帯においては、PMaxCは風力発電システム定格値に設定する。
【0068】
本実施例では、風力発電装置群は、充放電電力指令演算部3b−3,電力制限指令演算部3b−4および上限値演算部3b−3−4の動作により、風力発電装置群の出力電力上限指令PMaxCを、気象予測に基づく風車発電電力予測値PPによって変化させる手段と、風力発電システムの出力電力を、風力発電装置群1の電力制限機能と、蓄電システム2の充電動作により、前記PMaxC以下に抑える手段をもつ。
【0069】
本発明の本実施例を行った場合の制御動作例と、効果について図26,図27を用いて説明する。図26(a),図26(b)は風力発電システム近傍の風速が急速に増大した現象、図27(a),図27(b)は風速が急速に減少した現象における動作例を示している。
【0070】
図26(a),図26(b)を用いて、風速が急速に増大した場合の動作について説明する。なお、本実施例では、蓄電システム2として、二次電池である鉛電池や、ナトリウム硫黄電池,リチウム電池を用いた場合を想定する。一般的に二次電池は、充電率SOCが高い状態においては、充電可能電力の大きさが減少する性質を持つ。このため、変動緩和のために蓄電システム2が充電動作を行う場合は、蓄電システム2の充電率SOCを低く制御することにより、充電可能電力の振幅値を大きな値にしておくことが望ましい。
【0071】
図26(a)は、本発明の実施例1に示した制御を行った場合の動作例である。図26(a)では、風力発電システムは、SOC目標値を、風力発電装置群の発電電力PWに応じて変化させる。このため、発電電力PWの増加に伴って、充電率SOCも増大する。充電率SOCが高い値になると、充電可能電力の振幅が小さくなるため、蓄電システム2の充電動作のみでは変動率を緩和できなくなる。風力発電システム出力電力PSの変動率を一定値以下に抑制するため、風力発電システムは蓄電システム2で充電しきれない電力を、風力発電装置群1の電力制限機能により抑制する。このため、電力制限による自然エネルギーの損失が発生する。
【0072】
図26(b)は、本発明の実施例3に示した制御を行った場合の動作例である。図26(b)は、図22に示したSOC目標値演算部3b−1の動作に従って、発電電力PWが急増する前に、SOCの目標値SOCTを0[%]に設定する。この効果により、PWが急増する直前において、SOCが0[%]付近まで減少しており、PWが急増後の期間においても、SOCを比較的低い値に保つことが可能となる。SOCが低く保たれることにより、蓄電システムの充電可能電力の振幅が増大し、電力制限をすることなく、蓄電システム2の充電動作のみで、PSの変動率を一定値以下に抑制することが可能となる。蓄電システム2に充電された電力は、大部分を系統に放電することが可能であり、電力制限により変動を抑制する図26(a)の場合に比べ、自然エネルギーを有効に活用できる。
【0073】
次に、図27を用いて、風速が急速に減少した場合の動作について説明する。図27(a),図27(b)では、蓄電システム2の変換器定格が、風力発電装置群1の50[%]である場合を想定している。図27(a)は、本発明の実施例1に示した制御を行った場合の動作例である。風速の急減に伴い、風力発電装置群1の発電電力PWも急減する。PW急減の際、風力発電システムは出力電力PSの変動を緩和するため、蓄電システム2より放電動作を行うが、蓄電システム2の定格容量が50%しかないため、変動を緩和しきれず、大きな変動が発生する。
【0074】
一方、図27(b)は、本発明の実施例3に示した制御を行った場合の動作例である。図27(b)では、風力発電システムは、図22に示したように気象予測に基づく発電電力予測値PPに応じてSOC目標値を変化させるとともに、図23に示したようにPPに応じて風力発電システムの出力電力PSの出力電力上限指令PMaxCを変化させる。風力発電装置群の発電電力PWの急減直前において、SOC目標値を100[%]に設定することで、発電電力PWの急減後において、変動緩和に必要な放電電力エネルギーを、蓄電システム2に事前に確保しておくことが可能となる。また、PWの急減までに、出力電力上限指令PMaxCを蓄電システム2の変換器容量程度まで減少させておく動作により、発電電力PWの急減直後において、蓄電システム2の放電動作により、出力電力PSの変動率を一定値以下(本実施例では20分間の変動幅を10%以下)に緩和することが可能となる。この効果により、蓄電池併設型風力発電装置群の導入が容易になり、自然エネルギーを有効利用できる。
【0075】
なお図21に示した信号線8としては、LAN,WAN等のネットワークや、専用線などで構成される。また、本発明の効果は、信号線8を用いず、無線信号などにより発電電力予測値PPを受信する形態であっても、本発明の効果は同じである。
【0076】
以上で説明したように、本発明の風力発電システムは、風力発電装置群1の発電電力予測値PPに基づいて、蓄電システム2の充電率目標値SOCTを変化させる手段と、前記SOCTに基づいて蓄電システム2の充電率SOCを変化させる手段を持つ。また、本発明の風力発電システムは、風力発電装置群1の発電電力予測値PPに基づいて、風力発電システムの出力電力上限指令PMaxCを変化させる手段と、前記PMaxCに基づいて、出力電力PSをPMaxC以下に抑制する手段を持つ。本発明の効果により、風速が急増する条件においても、電力制限によるエネルギーの損失を回避でき、自然エネルギーを有効に利用できる。また、風速が急減する条件において、蓄電システム2の定格容量が小さい場合であっても、出力電力PSの変動を緩和することが可能となる。これにより、蓄電池併設型風力発電システムの導入が容易となり、自然エネルギーを有効に利用することが可能となる。
【実施例4】
【0077】
本発明の第4の実施例について、図28,図29を用いて説明する。本実施例の風力発電システムの基本的な構成は、実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。本実施例の最も大きな特徴は、風力発電装置群1の発電電力PWの変動が比較的小さいときは、風力発電システムの出力電力PSが発電電力PWの一次遅れ指令に追従するように蓄電池が充放電を行い、風力発電装置群1の発電電力PWの変動が、基準となる幅を超えるときは、一次遅れ指令に追従せず、PSが基準となる幅の中に収まるように、蓄電池が充放電することである。
【0078】
本実施例の制御系について、図28を用いて説明する。図28は、本実施例における上位コントローラ3の、充放電電力指令演算部3−3cの制御系を示した図である。本実施例における、上位コントローラ3の他の制御系は、実施例1と同じであるため、説明は省略する。
【0079】
充放電電力指令演算部3−3cは、一次遅れ演算部3−3c−5において、風力発電装置群1の発電電力PWに一次遅れ演算を施した中間値PWLPFを作成する。充放電電力指令演算部3−3cは、SOC管理制御部3−3−1において、SOC管理のための充放電電力指令の中間値PBSOCを作成する。充放電電力指令演算部3−3は、PBSOCにPWLPFを加えた値PBC1を作成し、これにリミッター3−3−2とリミッター3−3−3を作用させることにより、充放電電力指令の中間値PBC3を求める。充放電電力指令演算部3−3は、中間値PBC3からPWを減算することにより、充放電電力指令PBCを求める。一つ目のリミッター3−3−2は、上限値をPSMinに風力発電システム定格の10%を加算した値、下限値をPSMaxから風力発電システム定格の10%を減算した値に設定する。このリミッター3−3−2の効果により、任意の20分間断面において、風力発電システムの出力電力PSの変動を10%以下に抑制することができる。
【0080】
本発明の効果について、図29を用いて説明する。図29は、本実施例に示した風力発電システムの動作例を示した図である。本実施例の風力発電システムは、風力発電システムの出力電力PSの変動が、20分間で10%以内になるような出力可能範囲Rを作成する。PWLPFが、前記出力可能範囲R内に収まる場合は、風力発電システムの発電電力PSがPWLPFに追従するように、蓄電システム2の充放電電力を制御する。PWLPFが、前記出力可能範囲Rを逸脱する場合は、PSが出力可能範囲Rの上限、あるいは下限に一致するように、蓄電システム2の充放電電力を制御する。
【0081】
本実施例に示した制御を風力発電システムが行うことにより、一次遅れ追従の時定数が小さな値であっても、風力発電システムの発電電力PSの変動を所定値以下に抑制することができる。この効果により、一次遅れ追従の動作のみを行った場合に比べて、蓄電システム2の充放電電力量を減少させることが可能となる。蓄電システム2の充放電電力量が減少するので、蓄電システム2で発生する損失を減少させることができ、自然エネルギーの有効に繋がる。
【実施例5】
【0082】
本発明の第5の実施例について、図30,図31,図32,図33,図34を用いて説明する。本発明の実施例2との違いは、風力発電システムの出力電力上限指令PMaxCを、蓄電システム2の蓄積エネルギーから決定することである。
【0083】
本発明の実施例2と構成が異なる部分を、図30,図31,図32,図33を用いて説明する。図30を用いて、本実施例における充放電指令演算部3d−3について説明する。本実施例の充放電指令演算部3d−3が、実施例1の充放電指令演算部3a−3と異なる部分は、リミッター3d−3−3の上限値PMaxCを、所定値ではなく、蓄電システム2の充電率SOCから決定する点である。本実施例の充放電指令演算部3d−3のその他の部分は、実施例2の充放電指令演算部3a−3と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0084】
次に図31を用いて、本実施例における電力制限指令演算部3d−4について説明する。本実施例の電力制限指令演算部3d−4が、実施例1の電力制限指令演算部3a−4と異なる部分は、出力電力上限値PMaxCを、所定値ではなく、蓄電システム2の充電率SOCから決定する点である。本実施例の電力制限指令演算部3d−4のその他の部分は、実施例2の充放電指令演算部3d−4と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0085】
次に図32を用いて、出力電力上限指令演算部3d−3−4(3d−4−3)の動作について説明する。出力電力上限指令演算部3d−3−4(3d−4−3)は、まず蓄積エネルギー演算部3d−3−4−1において、蓄電システム2が放電可能な蓄積エネルギーEを、蓄電システム2の充電率SOCから演算する。出力電力上限指令演算部3d−3−4(3d−4−3)は、蓄積エネルギーEに対応する出力電力上限指令PMaxCを内部に予め記憶しており、出力電力上限指令選択部3d−3−4−2において、PMaxCを選択する。
【0086】
図33は、蓄積エネルギーEと出力電力上限指令PMaxCの関係を示したものである。蓄電システムが、電力PMaxCから、変動緩和の制約(10%/20分)の変化率によって放電を行った場合、必要になる総放電エネルギーをEPMaxCとする。このとき、EPMaxCと、Eの間には、数3に示す関係を持たせる。
【0087】
(数3) 総放電エネルギーEPMaxC<蓄積エネルギーE
数3のような関係をもたせることにより、風力発電装置群1の発電電力が急減した場合においても、蓄電システム2の放電により、出力電力の変動を規定値(10%/20分)以下に抑制することが可能となる。
【0088】
本発明の効果について、図34を用いて説明する。図34は、時刻t0において、風力発電装置群の発電電力PWが急減する事象を表している。図34(a)は、実施例1に示した出力電力上限が無い場合の動作について示した図である。図34(a)では、時刻t0まで期間において、発電電力が増加するのに応じて、SOC目標範囲も増加する。図34(a)に示したように、SOCがSOC目標範囲に追従するには、時間的な遅れが発生する場合がある。このため、放電に必要な蓄積エネルギーが不足する事象が発生する場合がある。図34(a)では、時刻t0において風車出力が急減し、その後電力変動緩和のため、蓄電システム2が放電動作を行う。しかしながら時刻t1において、SOCが0%に達する(蓄積エネルギーが不足する)ため、放電動作ができず、大きな電力変動が発生する。
【0089】
一方、図34(b)に示した本実施例の制御方式では、蓄電システムの蓄積エネルギー(あるいはSOC)に応じて出力電力上限PMaxCを変化させる。このPMaxCの効果により、時刻t0においても出力電力PSは小さな値であり、時刻t0において風車出力が急減しても、蓄電システム2が放電するのに十分な蓄積エネルギーを確保しており、放電動作により電力変動を規定値以下に抑制できる。
【0090】
なお、本実施例に示した風力発電システムの出力電力PSの制限方法は、実施例1に示した蓄電池の充放電制御に限定されるものではなく、蓄電池の制御方式として、発電電力PWの一次遅れ信号に追従するなどの、別の制御方法を用いてもよい。
【0091】
本実施例に示したように、風力発電システムの出力電力PSを、蓄電システム2の蓄積エネルギーに応じて制限することにより、風力発電装置群1の発電電力が急減する事象が発生しても、より確実に、電力の変動率を規定値以下に抑制することが可能である。この効果により、発電所の導入を容易にでき、自然エネルギーを有効利用することができる。
【実施例6】
【0092】
本発明の第6の実施例について、図35,図36を用いて説明する。本実施例の風力発電システムの構成を図30に示す。図35中の構成要素について、番号が実施例1と同じものは、同じ構成用を表す。本実施例の最も大きな特徴は、蓄電システム2を構成する、各蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mの充電率SOCを、それぞれ異なる値に制御することである。
【0093】
本実施例では、蓄電装置を構成する蓄電池として二次電池である鉛電池や、ナトリウム硫黄電池,リチウム電池を用いた場合を想定している。二次電池は、その特性により、SOCに依存して充放電可能電力値が変化する。一般的に蓄電池のSOCが高いときは、充電可能電力の振幅が減少し、逆にSOCが低いときは、放電可能電力の振幅が減少する傾向がある。図36は、図35を構成する蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mの充電率SOCと、充放電可能電力について示した図である。蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mの充電率SOCが、図36のような特性を持つ場合、各蓄電装置の充電率を異なる値に制御することで、充放電可能電力の範囲を増大させることができる。
【0094】
図37(a)と図37(b)を用いて、本実施例の効果について説明する。本実施例では、蓄電システム2が、計10個の蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−10で構成されるものとする。また、各蓄電装置の容量は、定格で600[kWh]であるとする。図37(a)は、蓄電装置のSOCを全て同じ値(=40%)に制御した場合を示す。この場合、各蓄電装置のSOCと充放電可能電力の関係(図36)より、蓄電システム全体での充電可能電力は40%、放電可能電力は40%となる。一方、図37(b)は、蓄電装置のSOCを蓄電装置ごとに変化させた場合である。具体的には、蓄電装置2−1−1〜2−1−6の6つの蓄電装置について、SOCを60%に制御し、残りの4つをSOC10%に制御した場合である。蓄電システム2が全体で蓄積しているエネルギー量は、2400[kWh]であり、SOCを統一した場合と同じである。この場合、蓄電システム全体での充電可能電力は40%であるが、放電可能電力は64%に拡大している。放電可能電力の増大により、蓄電システム2の充放電動作により、変動緩和できる範囲が拡大される。
【0095】
図35に示した上位コントローラ3dは、蓄電システム2の平均的なSOCが一定である条件、あるいは蓄積エネルギーが一定である条件を満たしたまま、蓄電システム2全体での充放電可能電力が、最大になるように、各蓄電池2−1−1,・,・,2−1−10のSOC目標値を決定する。
【0096】
本実施例の効果により、蓄電システム2の充放電可能電力範囲が拡大され、充放電動作により変動緩和できる範囲が拡大される。このため、変動緩和のために、風力発電システムに必要な蓄電システム2の容量を削減することができる。蓄電システムの容量削減により、蓄電池併設型風力発電システムの導入が容易になり、自然エネルギーの有効利用に繋がる。
【0097】
上述の説明に基づき、風力発電システムの特徴を纏めると以下の構成を有する。
(1)1台以上の風力発電装置によって構成される風力発電装置群と、1台以上の蓄電装置によって構成される蓄電システムとを有する風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは前記風力発電装置群の発電電力と前記蓄電システムの充放電電力の和である出力電力を記録する出力電力記録手段と、
前記風力発電装置群の発電電力を検出する発電電力検出部と、を備え、
過去から現在までの所定期間を第一の期間、現在から未来までの他の所定期間を第二の期間とすると、
前記出力電力記録手段に記録された前記第一の期間における前記出力電力の情報および現在の前記発電電力検出部の検出値の情報を用いて、前記第二の期間における前記蓄電システムの充放電電力指令を演算する充放電電力指令演算手段と、
前記蓄電システムが前記充放電電力指令に従って充放電電力を制御する充放電電力制御手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(2)(1)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記第一の期間における前記出力電力の最大値と最小値を求める手段と、
前記最大値と前記最小値から前記第二の期間における前記出力電力の出力範囲を求める手段と、
前記第二の期間において前記風力発電装置群の発電電力が前記出力範囲を逸脱する場合には、前記出力範囲から逸脱した電力から前記蓄電システムの前記充放電電力指令を演算する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(3)(2)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記蓄電システムの充電率の充電率目標範囲を演算する手段と、
前記風力発電装置群の発電電力が前記出力範囲を逸脱している場合か、あるいは前記蓄電システムの前記充電率が前記充電率目標範囲を逸脱している場合に、前記蓄電システムが充放電する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(4)(2)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の発電電力に一次遅れ演算を施した第一の値を演算する手段と、
前記第一の値が前記出力範囲の中にある場合は、前記風力発電システムの出力電力を前記第一の値に追従するように前記蓄電システムの充放電制御を行う手段と、
前記第一の値が前記出力範囲を逸脱した場合は、前記風力発電システムの出力電力を前記出力範囲の上限、あるいは下限に追従するように前記蓄電システムの充放電指令を作成する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(5)(3)または(4)に記載の風力発電システムにおいて、
前記蓄電システムの充電率目標範囲を、前記風力発電装置群の発電電力から決定する手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(6)(1)または(2)に記載の風力発電システムにおいて、
前記第一の期間は20分以下の一定値であり、前記第二の期間は1分以下の一定値であることを特徴とする風力発電システム。
(7)(2)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力範囲の上限値は、前記最小値に第一の所定値を加算した値であり、前記出力範囲の下限値は、前記最大値から前記第一の所定値を減算した値であることを特徴とする風力発電システム。
(8)(1)から(7)のいずれかに記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の未来の発電電力を予測する発電電力予測値を受信する手段と、
前記発電電力予測値に応じて充電率目標範囲を調節する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(9)(8)に記載の風力発電システムにおいて、
前記発電電力予測値が減少する場合に、前記充電率目標範囲を高くする方向に調節する手段と、
前記発電電力予測値が増大する場合に、前記充電率目標範囲を低くする方向に調節する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(10)(9)に記載の風力発電システムにおいて、
前記発電電力予測値が、任意の時刻から始まる20分間の間に、前記蓄電システムの変換器容量より大きく変化する場合に、前記充電率目標範囲を変化させる手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(11)(1)から(10)のいずれかに記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の電力制限指令を作成する手段と、
前記風力発電装置群は、前記電力制限指令以下に発電電力を制限する発電制限手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(12)(11)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記蓄電システムの充電可能電力を演算する手段と、
前記電力制限指令を前記第一の期間における前記出力電力の最小値と前記充電可能電力と第二の所定値の和にする前記風力発電システム。
(13)(11)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の発電電力予測値を受信する手段と、前記発電電力予測値に応じて前記電力制限指令を調節する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(14)(13)に記載の風力発電システムにおいて、
前記発電電力予測値が減少する場合は、前記電力制限指令を時間的に緩やかに減少させる手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(15)(14)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記発電電力予測値が、任意の時刻から始まる20分間の間に前記蓄電システムの変換器容量より減少する場合に、前記電力制限指令を調節する手段と、
前記発電電力予測値が前記蓄電システムの変換器容量と一致する時刻において、前記電力制限指令が前記蓄電システムの変換器容量と一致するように、前記電力制限指令を一定のレートで減少させる手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(16)(1)から(15)のいずれかに記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記出力電力の出力電力上限指令を演算する手段と、
前記蓄電システムの充電動作と前記風力発電装置群の電力制限動作により、前記出力電力を前記出力電力上限指令以下に制限する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(17)(16)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力電力上限指令は、一定値であり、かつ風力発電装置群の発電電力定格値以下であり、かつ前記蓄電システムを構成する変換器の定格容量以上であることを特徴とする風力発電システム。
(18)(16)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力電力上限指令を発電電力予測値に応じて調節することを特徴とする風力発電システム。
(19)(16)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力電力上限指令を前記蓄電システムの充電率、あるいは前記蓄電システムの蓄積エネルギーに応じて調節することを特徴とする風力発電システム。
(20)1台以上の風力発電装置によって構成される風力発電装置群と、1台以上の蓄電装置によって構成される蓄電システムとを有する前記風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の電力制限指令を作成する手段と、
前記風力発電装置群は、前記電力制限指令以下に前記風力発電装置群の発電電力を制限する手段と、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の発電電力と前記蓄電システムの充放電電力の和である出力電力を記録する出力電力記録手段と、を備え、
過去から現在までの所定期間を第一の期間、現在から未来までの他の所定期間を第二の期間とすると、
前記風力発電システムは、第一の期間における前記出力電力の最小値を求める手段と、 前記蓄電システムの充電可能電力を演算する手段と、
前記電力制限指令を前記最小値と前記充電可能電力と第一の所定値の和とすることを特徴とする風力発電システム。
(21)1台以上の風力発電装置によって構成される風力発電装置群と、1台以上の蓄電装置によって構成される蓄電システムとを有する前記風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の電力制限指令を演算する手段と、
前記風力発電装置群は、前記電力制限指令以下に前記風力発電装置群の発電電力を制限する手段と、
前記風力発電システムは、前記風力発電システムの発電電力予測値を受信する手段と、 前記発電電力予測値に応じて前記電力制限指令を変化させる手段をもつ風力発電システム。
(22)(21)に記載の風力発電システムにおいて、
前記発電電力予測値が減少する場合は、前記電力制限指令を時間的に緩やかに減少させる手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(23)(20)から(22)のいずれかに記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記出力電力の出力電力上限指令を演算する手段と、
前記蓄電システムの充電動作と前記風力発電装置群の電力制限動作により、前記出力電力を前記出力電力上限指令以下に制限する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(24)(23)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力電力上限指令は、一定値であり、かつ風力発電装置群の発電電力定格値以下であり、かつ前記蓄電システムを構成する変換器の定格容量以上であることを特徴とする風力発電システム。
(25)(23)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力電力上限指令を前記発電電力予測値に応じて調節することを特徴とする風力発電システム。
(26)(23)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力電力上限指令を前記蓄電システムの充電率、あるいは前記蓄電システムの蓄積エネルギーに応じて調節することを特徴とする風力発電システム。
(27)1台以上の風力発電装置によって構成される風力発電装置群と、2台以上の蓄電装置によって構成される蓄電システムとを有する風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、個々の蓄電装置の充電率を、それぞれ異なる値に制御する手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(28)1台以上の風力発電装置によって構成される風力発電装置群と、3台以上の蓄電装置によって構成される蓄電システムとを有する前記風力発電システムにおいて、
前記複数の蓄電装置を複数のグループに分け、同じグループに属する蓄電装置の充電率を同じ値に制御し、各グループの蓄電装置の充電率を異なる値に制御する手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(29)(27)または(28)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記蓄電システムを構成する各蓄電装置の平均充電率が、前記風力発電システム全体の充電率目標値に一致するように、あるいは前記蓄電システムの総蓄積エネルギーを、前記風力発電システム全体の充電率目標値から演算される総蓄積エネルギー目標値に一致するように、前記各蓄電装置あるいは前記各蓄電装置グループの充電率を制御する手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(30)(29)に記載の風力発電システムにおいて、
前記蓄電システムの一部の蓄電装置あるいは一部の蓄電装置グループの充電率を、前記風力発電システム全体の充電率目標値より低く設定する制御手段と、
同時に前記蓄電システムの一部の蓄電装置あるいは一部の蓄電装置グループの充電率を、前記風力発電システム全体の充電率目標値より高く設定する制御手段とを備えることを特徴とする風力発電システム。
(31)(7)または(20)に記載の風力発電システムにおいて、
前記第一の所定値は、前記風力発電システムの定格出力電力の10%以下である風力発電システム。
(32)(12)に記載の風力発電システムにおいて、
前記第二の所定値は、前記風力発電システムの定格出力電力の10%以下である風力発電システム。
(33)(1)〜(32)に記載の風力発電システムにおいて、
前記蓄電システムは、鉛蓄電池,ナトリウム硫黄電池,レドックスフロー電池,リチウムイオン電池,ニッケル水素電池,リチウムイオンキャパシタ,電気二重層キャパシタ,コンデンサ,フライホイールのいずれか一つ、あるいはこれらの組み合わせにより構成される風力発電システム。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、風力発電装置群の代わりに、出力電力の変動が大きな他の発電システムにも適用可能である。具体的には、風力発電装置群の代わりに、太陽光発電システム,波力発電システム、あるいはこれらを組み合わせた発電システムなどに適用が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 風力発電装置群
1−1 SCADA
1−1−1,1−1−2,・,・,・,1−1−n 風力発電装置
1−1−1−1,1−1−1a−1,1−1−1b−1,1−1−1c−1 ブレード
1−1−1−2,1−1−1a−2,1−1−1b−2,1−1−1c−2 風速計
1−1−1−3,1−1−1a−3,1−1−1b−3,1−1−1c−3 変速ギア
1−1−1−4 直流励磁同期発電機
1−1−1a−4 交流励磁同期発電機
1−1−1b−4 永久磁石発電機あるいは誘導発電機
1−1−1c−4 誘導発電機
1−1−1−5,1−1−1−6,1−1−1a−6,1−1−1b−6,2−1−1−2 電力変換器
1−1−1−7,1−1−1a−7,1−1−1b−7,1−1−1c−7 連系トランス
1−1−1−8,1−1−1a−8,1−1−1b−8,1−1−1c−8,2−1−1−4 遮断器
1−1−1−9 励磁装置
2 蓄電システム
2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−2−m 蓄電装置
2−1−1−1 二次電池
2−1−1−3,4 連系トランス
3,3a,3b,3d 上位コントローラ
3−1 SOC目標値演算部
3b−1−1 SOC目標値演算部
3b−1−2 電力予測値変動率演算部
3b−1−3 切り替え器
3−2 最大値・最小値演算部
3−3,3a−3,3b−3,3c−3,3d−3 充放電電力指令演算部
3−3−1 SOC管理制御部
3−3−1−1,3−3−1−2,・,・,・,3−3−1−m 充放電電力指令演算部3−3−2,3−3−3,3a−3−3,3d−3−3 リミッター
3b−3−4,3d−3−4 出力電力上限指令演算部
3d−3−4−1 蓄積エネルギー演算部
3d−3−4−2 出力電力上限指令選択部
3−3c−5 一次遅れ演算部
3−4,3a−4,3b−4,3d−4 電力制限指令演算部
3−4−1 充電可能電力演算部
3a−4−2,3b−4−2,3d−4−2 最小値選択演算部
3b−4−3,3d−4−3 出力電力上限指令演算部
3−4−1−1,3−4−1−2,・,・,・,3−4−1−m 充電可能電力演算部
3−5 充放電電力指令分配部
5 電力系統
6 電力計
7 電力系
8 信号線
9 発電電力予測業者
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システムと風車発電装置などの再生可能エネルギー利用発電装置とを備える再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界に存在する再生可能なエネルギーを電力エネルギーに変換する手段として、風力発電装置群が利用されている。
【0003】
風力発電装置群のエネルギー源は、時間的に変動する風のエネルギーであるため、風力発電装置群の発電電力も時間的に変動する。
【0004】
電力系統は、電力需要の大きさに応じて大型発電機の発電電力を調整することで、電力の需給のバランスを保っている。このため、非特許文献1にあるように、変動の大きな電源である風力発電装置群が大量に電力系統に連系した場合、調整力不足や、周波数変動の拡大が懸念される。
【0005】
これを防止するため、例えば特許文献1に示されるように、風力発電装置群に蓄電システムを併設し、風力発電装置群の変動する発電電力を、蓄電システムが充放電することで、電力系統に流出する電力変動を緩和するなどの手段が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−124780号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「東北系統への風力発電の連系可能量の検討結果」東北電力株式会社 平成16年9月3日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に示されているように、緩和対象となる電力変動はその変動周期によりいくつかの領域に分けられる。特に中周期領域と呼ばれる数分〜20分程度の変動は、調整力不足による需給不均衡の拡大、周波数変動の拡大などに繋がる虞がある。このような中周期領域の電力変動による悪影響を回避するには、この周波数帯にある電力変動を緩和する必要がある。具体的には、任意の時間から始まる一定の期間(例えば20分以内)、出力電力の出力変動幅を、所定の一定値(例えば風力発電システム定格値の10%)以内に抑制することが望ましい。
【0009】
中周期領域の電力変動を緩和する手段として、例えば特許文献1に示されるように、風力発電装置群の発電電力の平均値に対して所定の範囲を設け、この範囲を逸脱するときのみ蓄電池の充放電を行う手段がある。
【0010】
しかしながら、特許文献1に示された制御方式を用いた場合、対象とすべき中周期領域の変動を緩和するために、発電電力の平均値という簡易な出力目標値を用いるため、中周期領域の変動緩和には寄与しない不必要な蓄電池の充放電が発生する虞がある。
【0011】
蓄電池の充放電操作には、蓄電池内部での損失が必ず伴う。このため、変動緩和に寄与しない蓄電池の充放電は、損失を増大させることになり、自然エネルギーを最大限有効に利用できない虞がある。
【0012】
また、風力発電システムの電力変動を緩和について、風速が急激に増加している期間は、風力発電装置の電力制限が行われる。しかしながら、電力制限機能は、本来利用可能であった風のエネルギーを、ピッチ角を調整し逃がすことで実現される。これでは、自然エネルギーを有効に利用していない。
【0013】
本発明は、蓄電池を備える風力発電などの再生可能エネルギー利用発電システムにおいて、電力変動の緩和に際して、自然エネルギーの有効利用を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、電力変動の緩和に際して、蓄電池の充電機能により、可能な限り蓄電し、蓄電しきれなかった電力のみを、電力制限機能により抑制するものであり、具体的には、風力発電装置群と蓄電システムとを有する再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法であって、風力発電装置群の発電電力と蓄電システムの充放電電力の和である再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を設定し、蓄電システムの充電率に基づき充電可能な電力を演算し、設定された出力電力の上限値と演算された充電可能な電力との和に基づき風力発電装置群の電力制限指令を演算し、電力制限指令に基づき風力発電装置群の発電電力を制限し、風力発電装置群の発電電力が再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を超える場合において、蓄電システムに充電可能な場合には、蓄電システムに再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を超える風力発電装置の発電電力を充電することを特徴とする。
【0015】
再生可能エネルギー利用発電装置として、風力発電装置群の代わりに、太陽光発電システムまたは波力発電システムを用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力変動の緩和に際して、自然エネルギーの有効利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一の実施形態における風力発電システムの構成を示した図。
【図2】本発明の第一の実施形態における風力発電装置の一例を示した図。
【図3】本発明の第一の実施形態における風力発電装置の一例を示した図。
【図4】本発明の第一の実施形態における風力発電装置の一例を示した図。
【図5】本発明の第一の実施形態における風力発電装置の一例を示した図。
【図6】本発明の第一の実施形態における蓄電装置の一例を示した図。
【図7】本発明の第一の実施形態における風力発電システムの出力電力を示した図。
【図8】本発明の第一の実施形態における上位コントローラの制御系を説明する図。
【図9】本発明の第一の実施形態における充電率目標値作成手段を示した図。
【図10】本発明の第一の実施形態における最大値・最小値演算手段を示した図。
【図11】本発明の第一の実施形態における充放電電力指令作成手段を示した図。
【図12】本発明の第一の実施形態における充電率管理手段を示した図。
【図13】本発明の第一の実施形態における電力制限指令作成手段を示した図。
【図14】本発明の第一の実施形態における充電可能電力演算手段を示した図。
【図15】本発明の第一の実施形態における風力発電システムの動作例を示した図。
【図16】本発明の第一の実施形態における風力発電システムの動作例を示した図。
【図17】本発明の第一の実施形態における本発明の効果を表した図。
【図18】本発明の第二の実施形態における充放電電力指令作成手段を示した図。
【図19】本発明の第二の実施形態における電力制限指令作成手段を示した図。
【図20(a)】本発明の第二の実施形態におけるシステム出力上限を設定しなかった場合の風力発電システムの動作例を示した図。
【図20(b)】本発明の第二の実施形態におけるシステム出力上限を設定した場合の風力発電システムの動作例を示した図。
【図21】本発明の第三の実施形態における風力発電システムの構成を示した図。
【図22】本発明の第三の実施形態における充電率目標値作成手段を示した図。
【図23】本発明の第三の実施形態における充放電電力指令作成手段を示した図。
【図24】本発明の第三の実施形態における電力制限指令作成手段を示した図。
【図25】本発明の第三の実施形態における出力電力上限値演算手段を示した図。
【図26(a)】本発明の第三の実施形態における風力発電システムの、発電電力予測値を用いなかった場合の動作例を示した図。
【図26(b)】本発明の第三の実施形態における風力発電システムの、発電電力予測値を用いた場合の動作例を示した図。
【図27(a)】本発明の第三の実施形態における風力発電システムの、発電電力予測値を用いなかった場合の動作例を示した図。
【図27(b)】本発明の第三の実施形態における風力発電システムの、発電電力予測値を用いた場合の動作例を示した図。
【図28】本発明の第四の実施形態における充放電電力指令作成手段を示した図。
【図29】本発明の第四の実施形態における風力発電システムの動作例を示した図。
【図30】本発明の第五の実施形態における充放電電力指令作成手段を示した図。
【図31】本発明の第五の実施形態における電力制限指令作成手段を示した図。
【図32】本発明の第五の実施形態における電力制限指令作成手段を示した図。
【図33】本発明の第五の実施形態における、蓄積エネルギーと電力制限指令の関係を説明する図。
【図34(a)】本発明の実施形態における、実施例一の制御動作を示した図。
【図34(b)】本発明の実施形態における、実施例五の制御動作を示した図。
【図35】本発明の第六の実施形態における風力発電システムの構成を示した図。
【図36】本発明の第六の実施形態における蓄電装置の充放電可能範囲を示した図。
【図37(a)】本発明の第六の実施形態における、従来の充電率制御を示した図。
【図37(b)】本発明の第六の実施形態における、本発明の充電率制御を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の風力発電システムは、所定期間T1の過去における風力発電装置群と蓄電システムの出力電力の和の最大値と最小値から、次の制御周期T2の未来における出力可能範囲Rを設定する。蓄電システムは、風力発電装置群の発電電力が、前記出力可能範囲Rを逸脱する場合、あるいは蓄電池の充電率が充電率の目標範囲から逸脱している場合のみ、充放電動作を行う。風力発電システムは、この制御周期T2ごとに前記出力可能範囲を更新する。
【0019】
また本発明の風力発電システムは、所定期間T1の過去における風力発電装置群と蓄電システムの出力電力の最小値と蓄電池の充電可能電力から、次の所定時間T3の未来における電力制限指令を演算し、一台以上の風力発電装置で構成される風力発電装置群は、所定時間の未来において、風力発電装置群の発電電力を前記制限指令以下に制限する。
【実施例1】
【0020】
本発明の第一の実施例について、図1から図17を用いて説明する。
【0021】
本発明の対象となる風力発電システムの構成について、図1を用いて説明する。本発明の風力発電システムは風力発電装置群1,蓄電システム2,上位コントローラ3,連系変圧器4で構成される。風力発電システムは、電力系統5に連系し、発電電力を電力系統5に送電する。風力発電装置群の連系点には、風力発電装置群の発電電力PWを計測する電力計6が設置される。また、蓄電システムの連系点には、蓄電システムの充放電電力PBを計測する電力計7が設置される。なお、風力発電システムの出力電力PSと、PW,PBには、数1の関係が成り立つ。
【0022】
(数1) PS=PW+PB
風力発電システムを構成物する風力発電装置群1について、以下に説明する。風力発電装置群1は、1台以上の風力発電装置1−1−1,1−1−2,・・・,1−1−nと、SCADA1−1によって構成される。SCADA1−1は、風力発電装置群の運転状況や、発電電力等の運転情報を収集する役割を担う。同時に、SCADA1−1は、上位コントローラから、風力発電装置群1の発電電力の制限指令PLCを受信し、個々の風力発電装置1−1−1,・,・,・,1−1−nの発電電力の和が、PLC以下になるように、個々の風力発電装置1−1−1,・,・,・,1−1−nに、それぞれ電力制限指令PLC1,PLC2,・,・,・,PLCnを与える。
【0023】
風力発電装置1−1−1,・,・,・,1−1−nについて、図2,図3,図4,図5を用いて説明する。図2は、風力発電装置の一形態を示した図である。風力発電装置は、ブレード1−1−1−1により風を受け、風のエネルギーを回転エネルギーに変換する。
回転エネルギーは、発電機1−1−1−4に伝達される。図1では発電機1−1−1−4として、直流励磁型同期発電機1−1−1−4を示している。直流励磁型同期発電機1−1−1−4のステータは、交直変換器1−1−1−5,変換器1−1−1−6を介して、系統に連系される。また、直流励磁型同期発電機1−1−1−4の回転子も、励磁装置1−1−1−9を介して系統に接続されており、励磁装置1−1−1−9を制御し直流励磁電流の強弱を調節することにより、可変速運転を実現している。図3は、発電機として、交流励磁型同期発電機1−1−1a−4を用いた風力発電装置の例である。また、図4は、発電機として、永久磁石型同期発電機1−1−1b−3を用いた風力発電装置の例である。図2,図3,図4の風力発電装置群は、いずれも電力変換器とブレードのピッチ角を調整することにより、可変速運転を可能としている。またこれらの風力発電装置は、ピッチ角の制御と、電力変換器の制御を組み合わせることにより、その発電電力を所定値以下に制限することが可能である。また、図5は、発電機として、誘導発電機1−1−1c−4を用いた風力発電装置の例である。図5に示した風力発電装置は、誘導発電機1−1−1c−4の固定子が、電力変換器を介さず、直接電力系統に連系する。この、誘導発電機1−1−1c−4を用いた風力発電装置も、ピッチ角を制御することにより、その発電電力を所定値以下に制限することが可能である。風力発電装置群1は、図2,図3,図4,図5に示した風力発電装置のいずれか一種類、あるいはこれらの組み合わせにより構成される。
【0024】
次に風力発電システムを構成する蓄電システム2について説明する。蓄電システム2は、一台以上の蓄電装置2−2−1,2−2−2,・,・,・,2−2−mによって構成される。個々の蓄電装置について、図6を用いて説明する。蓄電装置2−1−1は、複数の二次電池2−1−1−1と、変換器2−1−1−2,連系変圧器2−1−1−3,遮断器2−1−1−4等で構成される。二次電池は、鉛蓄電池,ナトリウム硫黄電池,レドックスフロー電池,リチウムイオン電池,ニッケル水素電池,リチウムイオンキャパシタのいずれか一種類、あるいはこれらの組み合わせにより構成される。なお図6は、蓄電装置として、二次電池を使用した例を示したが、二次電池の代わりにキャパシタとして、電気二重層キャパシタや、コンデンサを用いる形態、あるいは、二次電池とキャパシタの組み合わせ、あるいは他の蓄電要素の組み合わせで構成しても、本発明の効果は同じである。また、蓄電装置として、フライホイールなどの電気エネルギーを運動エネルギーとして蓄積可能なシステムを用いても、本発明の効果は失われない。蓄電装置2−2−1,2−2−2,・,・,・,2−2−mは、それぞれ上位コントローラ3からの充放電電力指令に従って、風力発電装置群の発電電力を充電、あるいは蓄えた電力を放電することができる。また、蓄電装置2−2−1,2−2−2,・,・,・,・2−2−mは、それぞれ蓄電池の充電率SOCを計測しており、SOCの値を上位コントローラ3に伝達する。
【0025】
風力発電装置群1に蓄電システム2を併設した風力発電システムは、蓄電システムの充放電動作により、変動の大きな風力発電装置群の発電電力変動を緩和することが可能であり、系統に悪影響を与えにくい風力発電システムであると言える。
【0026】
一方、蓄電池の充放電動作には、電力変換器による損失,蓄電池内部での損失などにより、必ず損失が伴う。自然エネルギーを最大限に活用するためには、蓄電池が充放電する電力量を、可能な限り少なくすることが望ましい。
【0027】
よって、電力変動の緩和と自然エネルギーの有効利用を両立させるためには、変動緩和に寄与しない不必要な充放電動作を、可能な限り少なくする必要がある。
【0028】
風力発電装置群が出力する発電電力変動は、広い周波数域に渡り存在する。中でも、中周期領域と呼ばれる数分〜20分程度の変動は、電力系統の調整力不足による需給不均衡の拡大,周波数変動の拡大などに繋がる虞がある。このような中周期領域の電力変動による悪影響を回避するには、この周波数帯にある電力変動を緩和する必要がある。具体的には、任意の時間から始まる一定の期間(例えば20分以内)の間の、発電電力の出力変動を、常に一定値(例えば風力発電システム定格の10%以下)以内に収めることが有効である。風力発電システムの電力変動が定格値の10%以下程度であれば、風力発電装置群が多く連系した場合でも、系統に与える影響を小さくすることが可能である。以下では、任意の時刻から始まる20分間の電力変動を、風力発電システム定格の10%以下に収める制御方式について説明する。
【0029】
20分間の電力変動を、風力発電システム定格の10%以下に抑制しつつ、かつ蓄電池の充放電電力量を可能な限り少なくするためには、図7に示す制御を実現すれば良い。つまり、所定の期間(図7では19分間)前から、現在の時刻tまでの、風力発電システムの出力電力PSの出力変動幅から、次の制御期間(図7では1分間)におけるPSの出力可能範囲Rを設定する。具体的には、所定の期間の過去(図7では19分間)におけるPSの最小値PSminに10%を加えたものを、範囲Rの上限に設定し、所定の期間の過去におけるPSの最大値PSmaxから10%を減算した値を、範囲Rの下限に設定する。
【0030】
次の制御期間(図7では1分間)は、PSがこの範囲内に収まるように、蓄電システムの充放電電力PBを調整する。蓄電システム2が充放電を行うのは、風力発電装置群1の発電電力が、前記範囲を逸脱した場合か、あるいは蓄電システム2のSOCが、充電率目標範囲を外れている場合のみである。このように蓄電システム2の充放電制御を行うことで、風力発電システムの出力電力PSの20分間における電力変動を、常時10%以下に抑えつつ、かつ蓄電池の充放電電力量を少なくすることが可能となる。
【0031】
なお、風力発電システムの電力変動を緩和する他の手段として、風力発電装置群の電力制限を利用することができる。つまり、風速が急激に増加している期間において、風力発電装置の電力制限機能を用いることで、風力発電装置群1の発電電力PWの上昇を制限し、緩和することが可能である。しかしながら、電力制限機能は、本来利用可能であった風のエネルギーを、ピッチ角を調整し逃がすことで実現される。このため、自然エネルギーを有効に利用するには、可能な限り電力制限機能を使用しないことが望ましい。
【0032】
このように、風力発電システムの出力電力PSの急増を抑制する手段としては、できる限り蓄電システム2の充電を利用することが望ましい。蓄電システム2に充電された電力は、損失で一部が失われるものの、放電することで有効利用することができるためである。よって、自然エネルギーを有効に利用するには、蓄電池の充電機能により、可能な限り蓄電し、蓄電しきれなかった電力のみを、電力制限機能により抑制することが必要である。
【0033】
以降では、蓄電池の充放電電力量を最小限に抑える制御方式、及び、蓄電システム2の充電機能を利用し、電力制限機能を可能な限り用いない制御方式を実現する風力発電システムについて、詳細に説明する。
【0034】
図8は、本発明の風力発電システムを構成する上位コントローラ3の制御構成を示した図である。上位コントローラ3は、風力発電装置群の発電電力PW,蓄電システムの充放電電力PB,蓄電装置の充電率SOC1,SOC2,・,・,・,SOCmから、蓄電池装置の充放電電力指令PBC1,PBC2,・,・,・,PBCmと風力発電装置群1の電力制限指令PLCを決定する。上位コントローラ3は、SOC目標値演算部3−1において、蓄電システム2の充電率目標値SOCTを演算する。また、上位コントローラ3は、PWとPBを加算することにより、風力発電システムの出力電力PSを演算する。上位コントローラ3は、最大値・最小値演算部3−2において、過去19分間におけるPSの最大値PSMaxと最小値PSMinを演算する。また上位コントローラ3は、充放電電力指令演算部3−3において、蓄電システムの充放電電力指令PBCを演算する。充放電電力指令PBCは、充放電電力指令分配部3−5において、個々の蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mへの充放電電力指令PBC1,PBC2,・,・,・,PBCmに分配され、個々の蓄電装置へ伝達される。なお蓄電システムの充放電電力指令PBCと、個々の蓄電装置への充放電電力指令PBC1,PBC2,・,・,・,PBCmには、数2に示される関係が成り立つ。
(数2) PBC=PBC1+PBC2+PBC3+・・・・・・+PBCm
上位コントローラ3は、電力制限指令演算部3−4において、風力発電装置群の電力制限指令PLCを演算する。
【0035】
次に、SOC目標値演算部3−1の動作について、図9を用いて詳細に説明する。SOC目標値演算部3−1は、風力発電装置群1の発電電力PWから、蓄電システム2の充電率目標値SOCTを演算する。蓄電システム2の充電率目標値としては、図9に示したように、PWとSOCTが一対一に対応する値を内部に保持しており、この内部値を参照することで、SOCTを決定する。なおSOCTの決定の仕方は、図9に示したように、必ずしもPWに依存する必要は無く、例えばPWに依存せず、一定値であっても本発明の効果は失われない。
【0036】
次に最大値・最小値演算部3−2の動作について、図10を用いて詳細に説明する。最大値・最小値演算部3−2は、現在の時刻から一定期間の過去のPSを内部メモリに保存する。また、最大値・最小値演算部3−2は、現在の時刻から一定期間の過去の間におけるPSの最大値PSMaxとPSMinを演算する。
【0037】
次に、充放電電力指令演算部3−3の動作について、図11を用いて詳細に説明する。充放電電力指令演算部3−3は、SOC管理制御部3−3−1において、SOC管理のための充放電電力指令の中間値PBSOCを作成する。充放電電力指令演算部3−3は、PBSOCにPWを加えた値PBC1を作成し、これにリミッター3−3−2とリミッター3−3−3を作用させることにより、充放電電力指令の中間値PBC3を求める。充放電電力指令演算部3−3は、中間値PBC3からPWを減算することにより、充放電電力指令PBCを求める。一つ目のリミッター3−3−2は、上限値をPSMinに風力発電システム定格の10%を加算した値、下限値をPSMaxから風力発電システム定格の10%を減算した値に設定する。このリミッター3−3−2の効果により、任意の20分間断面において、風力発電システムの出力電力PSの変動を10%以下に抑制することができる。また、風力発電装置群の発電電力PWが、リミッターの範囲内に収まっているときは、蓄電システムは充放電せず、不必要な充放電を避けることができる。2つ目のリミッター3−3−3は、上限値を風力発電システム定格100%、下限値を0%に設定する。リミッター3−3−3の効果により、風力発電システムの出力電力PSが、風力発電システムの定格を越える、あるいはPSが負値になり、風力発電システムが充電状態になることを防止できる。
【0038】
次に、SOC管理制御部3−3−1の動作について、図12を用いて説明する。SOC管理制御部3−3−1は、各蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mの充電率を目標充電率に近づけるような充放電電力指令を作成する。具体的には、SOC管理制御部3−3−1−1に示したように、蓄電装置の充電率の測定値SOC1を充電率の目標値SOCTと比較する。この際SOC1がSOCT+不感帯(例えば2%)より大きければ、充放電電力指令PBSOCT1として、風力発電システム定格の10%の放電電力指令を作成する。同様に、SOC1がSOCT−不感帯(例えば2%)より小さければ、充放電電力指令PBSOCT1として、風力発電システム定格の10%の充電電力指令を作成する。SOC1がSOCT±不感帯内に収まっていれば、PBSOCT1として0[kW]を作成する。SOC管理制御部3−3−1は、この演算をすべての蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mに対して実施し、得られた充放電電力指令PBSOCT1,PBSOCT2,・,・,・,PBSOCTmを加算することにより、蓄電システムの充放電電力指令PBCSOCを作成する。このような制御動作を行うことで、蓄電池の不必要な充放電を防止することができる。
【0039】
次に、電力制限指令演算部3−4の動作について、図13を用いて説明する。電力制限指令演算部3−4は、充電可能電力演算部3−4−1において、蓄電システム2の充電率SOCから、蓄電システムが充電可能な電力値PBChargeMaxを演算する。電力制限指令演算部3−4は、過去19分間における風力発電システムの出力電力の最小値PSMinとPBChargeMax、P2(例えば風力発電システム定格の10%)を加算した値を、風力発電装置群の電力制限指令PLCとする。このようにPLCを決定することで、風力発電装置群1の発電電力PSが急増した場合でも、可能な限り蓄電池が充電し、充電しきれなかった電力のみを電力制限機能で抑制する。同時に、任意の20分間断面において、風力発電システムの出力電力PSの変動を10%以下に抑制することができる。
【0040】
次に、充電可能電力演算部3−4−1の動作について、図14を用いて説明する。充電可能電力演算部3−4−1は、各蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mの充電可能電力値から、蓄電システム2の充電可能電力PBChargeMaxを演算する。具体的には、充電可能電力演算部3−4−1−1において、蓄電装置2−1−1の充電率測定値SOC1から、蓄電装置2−1−1の充電可能電力PBChargeMax1を演算する。二次電池などの蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mは、SOCにより充放電可能な範囲が変化する。充電可能電力演算部3−4−1−1は、蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mの特性に応じた充放電可能領域をメモリ内に蓄えており、充電池の測定値SOCに応じて、対応する充電可能電力値PBChargeMax1をメモリから読み出す。充電可能電力演算部3−4−1は、この演算を全ての蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mに対して実施し、得られた充電可能電力PBChargeMax1,PBChargeMax2,・,・,・,PBChargeMaxmを加算することで、蓄電システム2の充電可能電力PBChargeMaxを演算する。なお、図14ではPBChargeMaxを蓄電装置の充電率SOCのみから決定しているが、蓄電装置の温度や、蓄電装置の使用年数,総充放電電力量などを考慮して、PBChargeMaxを補正しても良い。
【0041】
次に、本発明の風力発電システムの動作例について、以下で説明する。図15は、本発明の蓄電システム2による変動緩和動作を、シミュレーションにより求めた結果である。図15の上段のグラフは、風力発電装置群1の発電電力PW,風力発電システムの出力電力PS,PSの出力可能範囲Rを示している。図15において出力可能範囲Rは20分間の変動が、風力発電システムの10%以下になるように設定されており、この範囲内であれば、任意の時刻から始まる20分間において、風力発電システムの変動を10%以下に抑制していることになる。図15に示す風力発電システムの出力電力PSは、常時この出力可能範囲Rに収まっており、出力変動20分間10%以内を実現している。図15の下段のグラフは、蓄電システム2の充放電電力PBと、蓄電システム2の充電率SOCを示している。なお、図15のシミュレーションにおいては、蓄電システム2の充電率目標値範囲を(50%±2%=48%〜52%)に設定している。図15の時刻3[hour]より前の時刻では、20分間の変動幅が10%以下であり、かつSOCが充電率目標範囲に収まっていることから、蓄電システム2が充放電を行わない。よって、蓄電池の充放電を可能な限り行わない、本発明の課題が達成できている。また時刻4.5[hour]前後では、風力発電装置群1の発電電力PWが出力可能範囲R内に収まっているにも関わらず、蓄電池が充電動作を行っている。これは、蓄電システム2の充電率SOCを充電率目標範囲内に収めるための動作であり、この充電動作により、SOCを充電率目標範囲内に収めることができている。また、このSOC管理のための充電操作の際も、PSは20分間の変動幅が10%以内になるように動作している。
【0042】
次に図16を用いて、本発明の電力制限制御による、風力発電システムの動作例について説明する。図16は、本発明の電力制限制御による変動緩和動作を、シミュレーションにより求めた結果である。図16の上段のグラフは、風力発電装置群の発電電力PW,風力発電システムの出力電力PS,風力発電装置群1の電力制限指令PLC,風車得制限を行わなかったときの風力発電装置群1の発電電力PW0を示している。風力発電装置群1の発電電力は、時刻1.0[hour]前後から上昇を始めており、上昇直後は蓄電システムの充電動作により、20分間の変動幅を10%以内に抑制している。時刻2.0[hour]前後で、蓄電システム2の充電率が100[%]に達する。蓄電システム2は充電率が100[%]以上では充電動作ができないため、時刻2.0[hour]では風力発電装置群1の電力制限機能により、発電電力PWを抑制する。この蓄電システム2のSOCに依存する電力制限機能により、蓄電システム2の充電動作を優先的に行うことで電力制限機能を可能な限り使用せず、自然エネルギーを有効利用するという、本発明の課題を満足している。
【0043】
次に、本発明の効果について、図17を用いて説明する。図17は本発明を、実存する風力発電システムに適用した場合の効果を、シミュレーションによって求めたものである。具体的には、蓄電システムが併設されていない実存する風力発電システムの発電出力データ約1年分を元に、蓄電システムを併設した際の動作を、数値シミュレーションで求めた結果である。シミュレーションでは、蓄電システムのMW容量を、風力発電システムの定格容量の90%とし、MWh容量は無限大としている。つまり、蓄電システムは、常時90%の放電、90%の充電が可能である。シミュレーションでは、比較対象のため、本発明の蓄電池制御の他に、公知技術である風力発電システムの出力電力PSが、風力発電装置群1の発電電力PWの一次遅れに追従するように蓄電池の充放電を行う制御方式と、PWの一次遅れ追従+固定幅を逸脱する場合のみ蓄電池を充放電する制御についても、評価を行った。
【0044】
図17はシミュレーション結果についてまとめたものであり、逸脱頻度,蓄電池の総充電電力量,総放電電力量,蓄電池充放電による損失を示している。なお、逸脱頻度とは、任意の時刻から始まる20分間において、風力発電システムの出力電力PSが10%より大きく変動している事象の発生頻度である。また、損失は、蓄電池の総放電電力量から、蓄電池の充放電効率が70%一定であると仮定して、求めた値である。一次遅れ追従、および一次遅れ追従+固定幅制御では、一次遅れの時定数が180分以上で逸脱率0.0[%]を達成しているケースがある。これら逸脱率0.0[%]を達成するケースのうち、充放電損失が最も少ない場合でも、損失が5.8[%]発生している。一方、本発明を実施した場合、逸脱頻度が0.0[%]であり、かつ損失が2.1[%]と非常に少ない。よって、本発明の課題であった、蓄電システムの充放電電力量を少なくし、蓄電システムの充放電による損失を減少させるという課題を、満足することを確認できる。
【0045】
なお、本発明の風力発電システムの構成は、図1に限定されるわけではなく、上位コントローラ3が蓄電システムの制御装置の機能を兼ねても、本発明の効果はおなじである。同様に、上位コントローラ3が風力発電装置群1のSCADA1−1の機能を兼ねても、本発明の効果は失われない。また風力発電装置群がSCADA1−1を持たず、上位コントローラ3が、個々の風力発電装置1−1−1,1−1−2,・・・,1−1−nに、直接電力制限指令を与える形態であっても、本発明の効果は失われない。
【0046】
また、本発明の風力発電装置は、個々の風車全てが電力制限機能を持つ必要は無く、電力制限機能の代わりに、個々の風車の運転・停止状態を切り替えることにより、風力発電装置群全体として、発電電力を所定値以下に制限する機能がある構成をとれば、本発明は実施可能である。
【0047】
また、本実施例では、変動緩和対象の電力変動を、数分〜20分程度の周波数帯に限定したが、変動緩和すべき周波数帯は電力系統ごとに異なるため、電力系統に応じて制御定数を変えることにより、本発明の効果は同様に実現可能である。
【0048】
本実施例では、発電電力PWが出力可能範囲R内に収まっており、かつ充電率SOCが充電率目標範囲に収まっている間は、蓄電システム2が充放電を行わない。蓄電システムが充放電を行わない間は、蓄電システム2を構成する変換器2−1−1−2の補記電源を停止しても良い。具体的には、変換器2−1−1−2を構成する空冷用のファンの停止,制御電源の供給停止,半導体素子のスイッチング動作の停止を行う。この補機電源の停止動作により、蓄電システム2が定常的に発生する損失を低減させることが可能となり、自然エネルギーをより有効に利用できる。
【0049】
以上で説明したように、本発明を用いることにより、風力発電システムの出力変動を抑制しながら、蓄電システム2の充放電による損失を低減させることができる。また、本発明を用いることにより、電力制限による損失を低減させることができる。また、本発明の効果により、蓄電システム2の充放電電力量が低減できることから、蓄電システム2に必要とされる蓄電池容量を低減させることが可能であり、本発明の形態である蓄電システム併設型風力発電システムの導入を容易にする。また、本発明の効果により、蓄電システム2の充放電電力量が低減できることから、蓄電装置の寿命を従来より延ばすことができる。よって、本発明を用いることで、従来技術より有効に自然エネルギーを利用できる。
【実施例2】
【0050】
本発明の第二の実施例について、図18,図19,図20を用いて説明する。
【0051】
本発明の実施例1との違いは、風力発電システムが所定の出力電力上限指令PMaxCをもち、風力発電システムの出力値が常時、出力電力上限指令PMaxC以下になるよう、風力発電装置群の電力制限と蓄電システムの充電を組み合わせて動作することである。本発明の実施例1と構成が異なる部分を、図18,図19を用いて説明する。
【0052】
図18を用いて、本実施例における充放電指令演算部3a−3について説明する。本実施例の充放電指令演算部3a−3が、実施例1の充放電指令演算部3−3と異なる部分は、リミッター3a−3−3の上限値を、風力発電システムの定格ではなく、風力発電システムの定格以下の値である出力電力上限指令PMaxC(本実施例では風力発電システム定格の70%)にする点である。本実施例の充放電指令演算部3a−3のその他の部分は、実施例1の充放電指令演算部3−3と同じであるため、説明を省略する。
【0053】
図19を用いて、本実施例における電力制限指令演算部3a−4について説明する。本実施例の電力制限指令演算部3a−4が、実施例1の電力制限指令演算部3−4と異なる部分は、最小値選択演算部3a−4−2が新たに加わった点である。最小値選択演算部3a−4−2は、(PSMin+10%)とPMaxCを比較し、いずれか小さいほうを選択する。本実施例の電力制限指令演算部3a−4のその他の部分は、実施例1の電力制限指令演算部3−4と同じであるため、説明を省略する。
【0054】
図18、および図19の制御構成をとることにより、実施例2の風力発電システムは、その出力電力値が常にPMaxC以下に抑制される。
【0055】
本発明の実施例2の構成における制御動作と効果について、図20を用いて説明する。蓄電システムを併設する風力発電装置群においては、風力発電システム全体のコストに占める、蓄電システム2のコストの割合が、一般的に高い。この蓄電池システム2のコストが、蓄電システム併設型風力発電装置群の導入を妨げている虞がある。
【0056】
蓄電システム併設型風力発電装置群の導入を容易にするには、蓄電システム2の容量を可能な限り減らすことが望ましい。しかしながら、蓄電システム2の容量を減らすと、風力発電システムの出力電力PSの変動が拡大する傾向にある。例えば、蓄電システムの定格充放電電力値(最大充放電電力値)を、風力発電システム定格値の60%にした場合の動作例を、図20に示す。なお、蓄電システムの定格充放電電力値は、一般的に、蓄電システムの変換器容量に等しい。
【0057】
図20(a),図20(b)では、風力発電システム付近の風速が緩やかに増加し、その後、時間的に急峻に減少した場合を想定している。図20(a)は、実施例1で説明した方法によって電力を制御した場合の、電力と充電率SOCの時間変化を示した図である。風力発電装置群1の発電電力PWは、風速に応じて緩やかに増加し、その後、時間的に急峻に減少する。発電電力PWの増加時は、蓄電システム2の充電動作と、風力発電装置群1の電力制限動作により、変動率を一定値以下(本実施例では20分間のPSの変動幅を10%以下)に抑制することが可能である。しかしながら、風車出力PWの急減時には、蓄電システム2の放電動作により、PSの変動を緩和することが必要であるが、蓄電システムの定格容量が風力発電システムの60%しかないため、PSの変動率を一定値以下に抑制できず、大きな変動が発生する。
【0058】
図20(b)は、本実施例の制御動作を行った場合の、電力と充電率SOCの時間変化を示した図である。本実施例では、風力発電システムの出力電力上限指令PMaxCを、蓄電システムの定格電力値(60%)+10%と設定している。風力発電システムの出力電力PSは、風力発電装置群1の電力制限動作と、蓄電システム2の充電動作により、常にPMaxC以下に抑制される。このため、風速が急激に減少し、風力発電装置群1の発電電力PWが急激に減少した場合においても、蓄電システム2の放電動作により、最大変動幅を10%(=PMaxC−蓄電システム定格値)以下に抑制できる。これにより、風力発電システムの出力電力の変動を、一定値以下(本実施例では20分間のPSの変動幅を10%以下)に抑制することができる。
【0059】
本実施例に示したように、風力発電システムの出力電力PSを、風力発電装置群1の電力制限機能、および蓄電システム2の充電機能で、常に所定値以下にすることにより、蓄電システム2の定格容量が、風力発電装置群1の定格容量よりも小さい場合においても、変動率を一定値以下に抑制することが可能である。この効果により、蓄電システム2の容量を減らすことができ、蓄電池併設型風力発電システムの導入を容易にでき、自然エネルギーを有効利用することができる。
【実施例3】
【0060】
本発明の第3の実施例について、図21〜図27を用いて説明する。
【0061】
本実施例の、第一の実施例および第二の実施例との違いは、風力発電システムが、風力発電装置群1の電力制限制御、および蓄電システム2の充放電制御に、気象予測に基づく風力発電装置群1の発電電力予測値を利用する点である。
【0062】
本発明の風力発電システムの構成について、図21を用いて説明する。図21に示した本実施例の風力発電システムの構成要素のうち、図1と番号が同じものは、同じ構成要素であるため、説明は省略する。本実施例の風力発電システムにおいては、上位コントローラ3bが、信号線8を介して、発電電力予測事業者9から風力発電システムの発電電力予測値PPを受信する。発電電力予測事業者9は、過去の気象データ,地形データ,風力発電システムの現在の運転状況,風力発電システムの過去の運転データから、未来における発電電力PPを予測する。
【0063】
上位コントローラ3bの構成について、図22,図23,図24,図25を用いて説明する。本実施例の上位コントローラ3bの構成の中で、実施例1の上位コントローラ3(図8)と異なる点は、蓄電システムSOC目標値演算部3b−1,蓄電システム充放電電力指令演算部3b−3,風力発電装置群電力制限指令演算部3b−4のみである。上位コントローラ3bの構成要素のうち、その他の部分については実施例1と同じであるため、説明は省略する。
【0064】
本実施例のSOC目標値演算部3b−1の動作について、図22を用いて説明する。図22の内、3b−1−1の動作は、実施例1のSOC目標値演算部3−1と同様の動作をするので、説明は省略する。SOC目標値演算部3b−1は、内部の電力予測値変動率演算部3b−1−2において、近い将来において、発電電力予測値PPが大きく変動する事象を探す。発電電力予測値PPが近い将来において急増する場合は、SOC目標値を小さく設定する。また、発電電力予測値PPが近い将来において急減する場合は、SOC目標値を大きく設定する。近い将来において発電電力予測値PPの急変が無ければ、SOC目標値は、実施例1と同様に、風力発電装置群の発電電力PWから決定する。本実施例では、風力発電システムは、このように蓄電システム2のSOC目標値演算部3b−1の動作に従って、SOCの目標値SOCTを発電電力予測値PPに基づいて変化させる手段を持つ。
【0065】
次に、本実施例の充放電電力指令演算部3b−3の動作について、図23を用いて説明する。図23に示した充放電電力指令演算部3b−3の中で、図11に示した充放電電力指令演算部3−3と番号が同じ構成要素は、実施例1と同様の動作をするため、説明は省略する。本実施例の充放電電力指令演算部3b−3は、リミッター3b−3−3において、上限値を風力発電システム定格値ではなく、出力電力上限指令PMaxCに設定する。PMaxCは、発電システム上限値演算部3b−3−4において、風力発電装置群出力電力予測値PPから演算される。
【0066】
次に、本実施例の電力制限指令演算部3b−4の動作について、図24を用いて説明する。図24に示した風力発電装置群電力制限指令演算部3b−4の中で、図13に示した風力発電装置群電力制限指令演算部3−4と番号が同じ構成要素は、実施例1と同様の動作をするため、説明は省略する。本実施例の風力発電装置群電力制限指令演算部3b−4は、最小値選択演算部3b−4−2において、(PSMin+10%)とPMaxCを比較し、いずれか小さいほうを選択する。PMaxCは、出力電力上限値指令演算部3b−4−3において、風力発電装置群出力電力予測値PPから演算される。
【0067】
発電システム上限値演算部3b−3−4および発電システム上限値演算部3b−4−3の動作について、図25を用いて説明する。発電システム上限値演算部3b−3−4(3b−4−3)は、発電電力予測値PPから、未来において発電電力予測値PPが急激に減少する事象を探し、これに応じて出力電力上限指令PMaxCを作成する。具体的には、PPが急激に減少する時刻まで、緩やかにPMaxCを減少させる。なお、PMaxCの減少の早さは、例えば10[%]/20[分]の一定の割合で減少させ、かつPPが急激に減少する時刻において、PMaxCが蓄電システム2の定格容量になるようにPMaxCを設定する。なお、PPの急変が無い時間帯においては、PMaxCは風力発電システム定格値に設定する。
【0068】
本実施例では、風力発電装置群は、充放電電力指令演算部3b−3,電力制限指令演算部3b−4および上限値演算部3b−3−4の動作により、風力発電装置群の出力電力上限指令PMaxCを、気象予測に基づく風車発電電力予測値PPによって変化させる手段と、風力発電システムの出力電力を、風力発電装置群1の電力制限機能と、蓄電システム2の充電動作により、前記PMaxC以下に抑える手段をもつ。
【0069】
本発明の本実施例を行った場合の制御動作例と、効果について図26,図27を用いて説明する。図26(a),図26(b)は風力発電システム近傍の風速が急速に増大した現象、図27(a),図27(b)は風速が急速に減少した現象における動作例を示している。
【0070】
図26(a),図26(b)を用いて、風速が急速に増大した場合の動作について説明する。なお、本実施例では、蓄電システム2として、二次電池である鉛電池や、ナトリウム硫黄電池,リチウム電池を用いた場合を想定する。一般的に二次電池は、充電率SOCが高い状態においては、充電可能電力の大きさが減少する性質を持つ。このため、変動緩和のために蓄電システム2が充電動作を行う場合は、蓄電システム2の充電率SOCを低く制御することにより、充電可能電力の振幅値を大きな値にしておくことが望ましい。
【0071】
図26(a)は、本発明の実施例1に示した制御を行った場合の動作例である。図26(a)では、風力発電システムは、SOC目標値を、風力発電装置群の発電電力PWに応じて変化させる。このため、発電電力PWの増加に伴って、充電率SOCも増大する。充電率SOCが高い値になると、充電可能電力の振幅が小さくなるため、蓄電システム2の充電動作のみでは変動率を緩和できなくなる。風力発電システム出力電力PSの変動率を一定値以下に抑制するため、風力発電システムは蓄電システム2で充電しきれない電力を、風力発電装置群1の電力制限機能により抑制する。このため、電力制限による自然エネルギーの損失が発生する。
【0072】
図26(b)は、本発明の実施例3に示した制御を行った場合の動作例である。図26(b)は、図22に示したSOC目標値演算部3b−1の動作に従って、発電電力PWが急増する前に、SOCの目標値SOCTを0[%]に設定する。この効果により、PWが急増する直前において、SOCが0[%]付近まで減少しており、PWが急増後の期間においても、SOCを比較的低い値に保つことが可能となる。SOCが低く保たれることにより、蓄電システムの充電可能電力の振幅が増大し、電力制限をすることなく、蓄電システム2の充電動作のみで、PSの変動率を一定値以下に抑制することが可能となる。蓄電システム2に充電された電力は、大部分を系統に放電することが可能であり、電力制限により変動を抑制する図26(a)の場合に比べ、自然エネルギーを有効に活用できる。
【0073】
次に、図27を用いて、風速が急速に減少した場合の動作について説明する。図27(a),図27(b)では、蓄電システム2の変換器定格が、風力発電装置群1の50[%]である場合を想定している。図27(a)は、本発明の実施例1に示した制御を行った場合の動作例である。風速の急減に伴い、風力発電装置群1の発電電力PWも急減する。PW急減の際、風力発電システムは出力電力PSの変動を緩和するため、蓄電システム2より放電動作を行うが、蓄電システム2の定格容量が50%しかないため、変動を緩和しきれず、大きな変動が発生する。
【0074】
一方、図27(b)は、本発明の実施例3に示した制御を行った場合の動作例である。図27(b)では、風力発電システムは、図22に示したように気象予測に基づく発電電力予測値PPに応じてSOC目標値を変化させるとともに、図23に示したようにPPに応じて風力発電システムの出力電力PSの出力電力上限指令PMaxCを変化させる。風力発電装置群の発電電力PWの急減直前において、SOC目標値を100[%]に設定することで、発電電力PWの急減後において、変動緩和に必要な放電電力エネルギーを、蓄電システム2に事前に確保しておくことが可能となる。また、PWの急減までに、出力電力上限指令PMaxCを蓄電システム2の変換器容量程度まで減少させておく動作により、発電電力PWの急減直後において、蓄電システム2の放電動作により、出力電力PSの変動率を一定値以下(本実施例では20分間の変動幅を10%以下)に緩和することが可能となる。この効果により、蓄電池併設型風力発電装置群の導入が容易になり、自然エネルギーを有効利用できる。
【0075】
なお図21に示した信号線8としては、LAN,WAN等のネットワークや、専用線などで構成される。また、本発明の効果は、信号線8を用いず、無線信号などにより発電電力予測値PPを受信する形態であっても、本発明の効果は同じである。
【0076】
以上で説明したように、本発明の風力発電システムは、風力発電装置群1の発電電力予測値PPに基づいて、蓄電システム2の充電率目標値SOCTを変化させる手段と、前記SOCTに基づいて蓄電システム2の充電率SOCを変化させる手段を持つ。また、本発明の風力発電システムは、風力発電装置群1の発電電力予測値PPに基づいて、風力発電システムの出力電力上限指令PMaxCを変化させる手段と、前記PMaxCに基づいて、出力電力PSをPMaxC以下に抑制する手段を持つ。本発明の効果により、風速が急増する条件においても、電力制限によるエネルギーの損失を回避でき、自然エネルギーを有効に利用できる。また、風速が急減する条件において、蓄電システム2の定格容量が小さい場合であっても、出力電力PSの変動を緩和することが可能となる。これにより、蓄電池併設型風力発電システムの導入が容易となり、自然エネルギーを有効に利用することが可能となる。
【実施例4】
【0077】
本発明の第4の実施例について、図28,図29を用いて説明する。本実施例の風力発電システムの基本的な構成は、実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。本実施例の最も大きな特徴は、風力発電装置群1の発電電力PWの変動が比較的小さいときは、風力発電システムの出力電力PSが発電電力PWの一次遅れ指令に追従するように蓄電池が充放電を行い、風力発電装置群1の発電電力PWの変動が、基準となる幅を超えるときは、一次遅れ指令に追従せず、PSが基準となる幅の中に収まるように、蓄電池が充放電することである。
【0078】
本実施例の制御系について、図28を用いて説明する。図28は、本実施例における上位コントローラ3の、充放電電力指令演算部3−3cの制御系を示した図である。本実施例における、上位コントローラ3の他の制御系は、実施例1と同じであるため、説明は省略する。
【0079】
充放電電力指令演算部3−3cは、一次遅れ演算部3−3c−5において、風力発電装置群1の発電電力PWに一次遅れ演算を施した中間値PWLPFを作成する。充放電電力指令演算部3−3cは、SOC管理制御部3−3−1において、SOC管理のための充放電電力指令の中間値PBSOCを作成する。充放電電力指令演算部3−3は、PBSOCにPWLPFを加えた値PBC1を作成し、これにリミッター3−3−2とリミッター3−3−3を作用させることにより、充放電電力指令の中間値PBC3を求める。充放電電力指令演算部3−3は、中間値PBC3からPWを減算することにより、充放電電力指令PBCを求める。一つ目のリミッター3−3−2は、上限値をPSMinに風力発電システム定格の10%を加算した値、下限値をPSMaxから風力発電システム定格の10%を減算した値に設定する。このリミッター3−3−2の効果により、任意の20分間断面において、風力発電システムの出力電力PSの変動を10%以下に抑制することができる。
【0080】
本発明の効果について、図29を用いて説明する。図29は、本実施例に示した風力発電システムの動作例を示した図である。本実施例の風力発電システムは、風力発電システムの出力電力PSの変動が、20分間で10%以内になるような出力可能範囲Rを作成する。PWLPFが、前記出力可能範囲R内に収まる場合は、風力発電システムの発電電力PSがPWLPFに追従するように、蓄電システム2の充放電電力を制御する。PWLPFが、前記出力可能範囲Rを逸脱する場合は、PSが出力可能範囲Rの上限、あるいは下限に一致するように、蓄電システム2の充放電電力を制御する。
【0081】
本実施例に示した制御を風力発電システムが行うことにより、一次遅れ追従の時定数が小さな値であっても、風力発電システムの発電電力PSの変動を所定値以下に抑制することができる。この効果により、一次遅れ追従の動作のみを行った場合に比べて、蓄電システム2の充放電電力量を減少させることが可能となる。蓄電システム2の充放電電力量が減少するので、蓄電システム2で発生する損失を減少させることができ、自然エネルギーの有効に繋がる。
【実施例5】
【0082】
本発明の第5の実施例について、図30,図31,図32,図33,図34を用いて説明する。本発明の実施例2との違いは、風力発電システムの出力電力上限指令PMaxCを、蓄電システム2の蓄積エネルギーから決定することである。
【0083】
本発明の実施例2と構成が異なる部分を、図30,図31,図32,図33を用いて説明する。図30を用いて、本実施例における充放電指令演算部3d−3について説明する。本実施例の充放電指令演算部3d−3が、実施例1の充放電指令演算部3a−3と異なる部分は、リミッター3d−3−3の上限値PMaxCを、所定値ではなく、蓄電システム2の充電率SOCから決定する点である。本実施例の充放電指令演算部3d−3のその他の部分は、実施例2の充放電指令演算部3a−3と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0084】
次に図31を用いて、本実施例における電力制限指令演算部3d−4について説明する。本実施例の電力制限指令演算部3d−4が、実施例1の電力制限指令演算部3a−4と異なる部分は、出力電力上限値PMaxCを、所定値ではなく、蓄電システム2の充電率SOCから決定する点である。本実施例の電力制限指令演算部3d−4のその他の部分は、実施例2の充放電指令演算部3d−4と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0085】
次に図32を用いて、出力電力上限指令演算部3d−3−4(3d−4−3)の動作について説明する。出力電力上限指令演算部3d−3−4(3d−4−3)は、まず蓄積エネルギー演算部3d−3−4−1において、蓄電システム2が放電可能な蓄積エネルギーEを、蓄電システム2の充電率SOCから演算する。出力電力上限指令演算部3d−3−4(3d−4−3)は、蓄積エネルギーEに対応する出力電力上限指令PMaxCを内部に予め記憶しており、出力電力上限指令選択部3d−3−4−2において、PMaxCを選択する。
【0086】
図33は、蓄積エネルギーEと出力電力上限指令PMaxCの関係を示したものである。蓄電システムが、電力PMaxCから、変動緩和の制約(10%/20分)の変化率によって放電を行った場合、必要になる総放電エネルギーをEPMaxCとする。このとき、EPMaxCと、Eの間には、数3に示す関係を持たせる。
【0087】
(数3) 総放電エネルギーEPMaxC<蓄積エネルギーE
数3のような関係をもたせることにより、風力発電装置群1の発電電力が急減した場合においても、蓄電システム2の放電により、出力電力の変動を規定値(10%/20分)以下に抑制することが可能となる。
【0088】
本発明の効果について、図34を用いて説明する。図34は、時刻t0において、風力発電装置群の発電電力PWが急減する事象を表している。図34(a)は、実施例1に示した出力電力上限が無い場合の動作について示した図である。図34(a)では、時刻t0まで期間において、発電電力が増加するのに応じて、SOC目標範囲も増加する。図34(a)に示したように、SOCがSOC目標範囲に追従するには、時間的な遅れが発生する場合がある。このため、放電に必要な蓄積エネルギーが不足する事象が発生する場合がある。図34(a)では、時刻t0において風車出力が急減し、その後電力変動緩和のため、蓄電システム2が放電動作を行う。しかしながら時刻t1において、SOCが0%に達する(蓄積エネルギーが不足する)ため、放電動作ができず、大きな電力変動が発生する。
【0089】
一方、図34(b)に示した本実施例の制御方式では、蓄電システムの蓄積エネルギー(あるいはSOC)に応じて出力電力上限PMaxCを変化させる。このPMaxCの効果により、時刻t0においても出力電力PSは小さな値であり、時刻t0において風車出力が急減しても、蓄電システム2が放電するのに十分な蓄積エネルギーを確保しており、放電動作により電力変動を規定値以下に抑制できる。
【0090】
なお、本実施例に示した風力発電システムの出力電力PSの制限方法は、実施例1に示した蓄電池の充放電制御に限定されるものではなく、蓄電池の制御方式として、発電電力PWの一次遅れ信号に追従するなどの、別の制御方法を用いてもよい。
【0091】
本実施例に示したように、風力発電システムの出力電力PSを、蓄電システム2の蓄積エネルギーに応じて制限することにより、風力発電装置群1の発電電力が急減する事象が発生しても、より確実に、電力の変動率を規定値以下に抑制することが可能である。この効果により、発電所の導入を容易にでき、自然エネルギーを有効利用することができる。
【実施例6】
【0092】
本発明の第6の実施例について、図35,図36を用いて説明する。本実施例の風力発電システムの構成を図30に示す。図35中の構成要素について、番号が実施例1と同じものは、同じ構成用を表す。本実施例の最も大きな特徴は、蓄電システム2を構成する、各蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mの充電率SOCを、それぞれ異なる値に制御することである。
【0093】
本実施例では、蓄電装置を構成する蓄電池として二次電池である鉛電池や、ナトリウム硫黄電池,リチウム電池を用いた場合を想定している。二次電池は、その特性により、SOCに依存して充放電可能電力値が変化する。一般的に蓄電池のSOCが高いときは、充電可能電力の振幅が減少し、逆にSOCが低いときは、放電可能電力の振幅が減少する傾向がある。図36は、図35を構成する蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mの充電率SOCと、充放電可能電力について示した図である。蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−mの充電率SOCが、図36のような特性を持つ場合、各蓄電装置の充電率を異なる値に制御することで、充放電可能電力の範囲を増大させることができる。
【0094】
図37(a)と図37(b)を用いて、本実施例の効果について説明する。本実施例では、蓄電システム2が、計10個の蓄電装置2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−1−10で構成されるものとする。また、各蓄電装置の容量は、定格で600[kWh]であるとする。図37(a)は、蓄電装置のSOCを全て同じ値(=40%)に制御した場合を示す。この場合、各蓄電装置のSOCと充放電可能電力の関係(図36)より、蓄電システム全体での充電可能電力は40%、放電可能電力は40%となる。一方、図37(b)は、蓄電装置のSOCを蓄電装置ごとに変化させた場合である。具体的には、蓄電装置2−1−1〜2−1−6の6つの蓄電装置について、SOCを60%に制御し、残りの4つをSOC10%に制御した場合である。蓄電システム2が全体で蓄積しているエネルギー量は、2400[kWh]であり、SOCを統一した場合と同じである。この場合、蓄電システム全体での充電可能電力は40%であるが、放電可能電力は64%に拡大している。放電可能電力の増大により、蓄電システム2の充放電動作により、変動緩和できる範囲が拡大される。
【0095】
図35に示した上位コントローラ3dは、蓄電システム2の平均的なSOCが一定である条件、あるいは蓄積エネルギーが一定である条件を満たしたまま、蓄電システム2全体での充放電可能電力が、最大になるように、各蓄電池2−1−1,・,・,2−1−10のSOC目標値を決定する。
【0096】
本実施例の効果により、蓄電システム2の充放電可能電力範囲が拡大され、充放電動作により変動緩和できる範囲が拡大される。このため、変動緩和のために、風力発電システムに必要な蓄電システム2の容量を削減することができる。蓄電システムの容量削減により、蓄電池併設型風力発電システムの導入が容易になり、自然エネルギーの有効利用に繋がる。
【0097】
上述の説明に基づき、風力発電システムの特徴を纏めると以下の構成を有する。
(1)1台以上の風力発電装置によって構成される風力発電装置群と、1台以上の蓄電装置によって構成される蓄電システムとを有する風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは前記風力発電装置群の発電電力と前記蓄電システムの充放電電力の和である出力電力を記録する出力電力記録手段と、
前記風力発電装置群の発電電力を検出する発電電力検出部と、を備え、
過去から現在までの所定期間を第一の期間、現在から未来までの他の所定期間を第二の期間とすると、
前記出力電力記録手段に記録された前記第一の期間における前記出力電力の情報および現在の前記発電電力検出部の検出値の情報を用いて、前記第二の期間における前記蓄電システムの充放電電力指令を演算する充放電電力指令演算手段と、
前記蓄電システムが前記充放電電力指令に従って充放電電力を制御する充放電電力制御手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(2)(1)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記第一の期間における前記出力電力の最大値と最小値を求める手段と、
前記最大値と前記最小値から前記第二の期間における前記出力電力の出力範囲を求める手段と、
前記第二の期間において前記風力発電装置群の発電電力が前記出力範囲を逸脱する場合には、前記出力範囲から逸脱した電力から前記蓄電システムの前記充放電電力指令を演算する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(3)(2)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記蓄電システムの充電率の充電率目標範囲を演算する手段と、
前記風力発電装置群の発電電力が前記出力範囲を逸脱している場合か、あるいは前記蓄電システムの前記充電率が前記充電率目標範囲を逸脱している場合に、前記蓄電システムが充放電する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(4)(2)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の発電電力に一次遅れ演算を施した第一の値を演算する手段と、
前記第一の値が前記出力範囲の中にある場合は、前記風力発電システムの出力電力を前記第一の値に追従するように前記蓄電システムの充放電制御を行う手段と、
前記第一の値が前記出力範囲を逸脱した場合は、前記風力発電システムの出力電力を前記出力範囲の上限、あるいは下限に追従するように前記蓄電システムの充放電指令を作成する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(5)(3)または(4)に記載の風力発電システムにおいて、
前記蓄電システムの充電率目標範囲を、前記風力発電装置群の発電電力から決定する手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(6)(1)または(2)に記載の風力発電システムにおいて、
前記第一の期間は20分以下の一定値であり、前記第二の期間は1分以下の一定値であることを特徴とする風力発電システム。
(7)(2)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力範囲の上限値は、前記最小値に第一の所定値を加算した値であり、前記出力範囲の下限値は、前記最大値から前記第一の所定値を減算した値であることを特徴とする風力発電システム。
(8)(1)から(7)のいずれかに記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の未来の発電電力を予測する発電電力予測値を受信する手段と、
前記発電電力予測値に応じて充電率目標範囲を調節する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(9)(8)に記載の風力発電システムにおいて、
前記発電電力予測値が減少する場合に、前記充電率目標範囲を高くする方向に調節する手段と、
前記発電電力予測値が増大する場合に、前記充電率目標範囲を低くする方向に調節する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(10)(9)に記載の風力発電システムにおいて、
前記発電電力予測値が、任意の時刻から始まる20分間の間に、前記蓄電システムの変換器容量より大きく変化する場合に、前記充電率目標範囲を変化させる手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(11)(1)から(10)のいずれかに記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の電力制限指令を作成する手段と、
前記風力発電装置群は、前記電力制限指令以下に発電電力を制限する発電制限手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(12)(11)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記蓄電システムの充電可能電力を演算する手段と、
前記電力制限指令を前記第一の期間における前記出力電力の最小値と前記充電可能電力と第二の所定値の和にする前記風力発電システム。
(13)(11)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の発電電力予測値を受信する手段と、前記発電電力予測値に応じて前記電力制限指令を調節する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(14)(13)に記載の風力発電システムにおいて、
前記発電電力予測値が減少する場合は、前記電力制限指令を時間的に緩やかに減少させる手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(15)(14)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記発電電力予測値が、任意の時刻から始まる20分間の間に前記蓄電システムの変換器容量より減少する場合に、前記電力制限指令を調節する手段と、
前記発電電力予測値が前記蓄電システムの変換器容量と一致する時刻において、前記電力制限指令が前記蓄電システムの変換器容量と一致するように、前記電力制限指令を一定のレートで減少させる手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(16)(1)から(15)のいずれかに記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記出力電力の出力電力上限指令を演算する手段と、
前記蓄電システムの充電動作と前記風力発電装置群の電力制限動作により、前記出力電力を前記出力電力上限指令以下に制限する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(17)(16)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力電力上限指令は、一定値であり、かつ風力発電装置群の発電電力定格値以下であり、かつ前記蓄電システムを構成する変換器の定格容量以上であることを特徴とする風力発電システム。
(18)(16)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力電力上限指令を発電電力予測値に応じて調節することを特徴とする風力発電システム。
(19)(16)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力電力上限指令を前記蓄電システムの充電率、あるいは前記蓄電システムの蓄積エネルギーに応じて調節することを特徴とする風力発電システム。
(20)1台以上の風力発電装置によって構成される風力発電装置群と、1台以上の蓄電装置によって構成される蓄電システムとを有する前記風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の電力制限指令を作成する手段と、
前記風力発電装置群は、前記電力制限指令以下に前記風力発電装置群の発電電力を制限する手段と、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の発電電力と前記蓄電システムの充放電電力の和である出力電力を記録する出力電力記録手段と、を備え、
過去から現在までの所定期間を第一の期間、現在から未来までの他の所定期間を第二の期間とすると、
前記風力発電システムは、第一の期間における前記出力電力の最小値を求める手段と、 前記蓄電システムの充電可能電力を演算する手段と、
前記電力制限指令を前記最小値と前記充電可能電力と第一の所定値の和とすることを特徴とする風力発電システム。
(21)1台以上の風力発電装置によって構成される風力発電装置群と、1台以上の蓄電装置によって構成される蓄電システムとを有する前記風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記風力発電装置群の電力制限指令を演算する手段と、
前記風力発電装置群は、前記電力制限指令以下に前記風力発電装置群の発電電力を制限する手段と、
前記風力発電システムは、前記風力発電システムの発電電力予測値を受信する手段と、 前記発電電力予測値に応じて前記電力制限指令を変化させる手段をもつ風力発電システム。
(22)(21)に記載の風力発電システムにおいて、
前記発電電力予測値が減少する場合は、前記電力制限指令を時間的に緩やかに減少させる手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(23)(20)から(22)のいずれかに記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記出力電力の出力電力上限指令を演算する手段と、
前記蓄電システムの充電動作と前記風力発電装置群の電力制限動作により、前記出力電力を前記出力電力上限指令以下に制限する手段と、を備えることを特徴とする風力発電システム。
(24)(23)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力電力上限指令は、一定値であり、かつ風力発電装置群の発電電力定格値以下であり、かつ前記蓄電システムを構成する変換器の定格容量以上であることを特徴とする風力発電システム。
(25)(23)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力電力上限指令を前記発電電力予測値に応じて調節することを特徴とする風力発電システム。
(26)(23)に記載の風力発電システムにおいて、
前記出力電力上限指令を前記蓄電システムの充電率、あるいは前記蓄電システムの蓄積エネルギーに応じて調節することを特徴とする風力発電システム。
(27)1台以上の風力発電装置によって構成される風力発電装置群と、2台以上の蓄電装置によって構成される蓄電システムとを有する風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、個々の蓄電装置の充電率を、それぞれ異なる値に制御する手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(28)1台以上の風力発電装置によって構成される風力発電装置群と、3台以上の蓄電装置によって構成される蓄電システムとを有する前記風力発電システムにおいて、
前記複数の蓄電装置を複数のグループに分け、同じグループに属する蓄電装置の充電率を同じ値に制御し、各グループの蓄電装置の充電率を異なる値に制御する手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(29)(27)または(28)に記載の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムは、前記蓄電システムを構成する各蓄電装置の平均充電率が、前記風力発電システム全体の充電率目標値に一致するように、あるいは前記蓄電システムの総蓄積エネルギーを、前記風力発電システム全体の充電率目標値から演算される総蓄積エネルギー目標値に一致するように、前記各蓄電装置あるいは前記各蓄電装置グループの充電率を制御する手段を備えることを特徴とする風力発電システム。
(30)(29)に記載の風力発電システムにおいて、
前記蓄電システムの一部の蓄電装置あるいは一部の蓄電装置グループの充電率を、前記風力発電システム全体の充電率目標値より低く設定する制御手段と、
同時に前記蓄電システムの一部の蓄電装置あるいは一部の蓄電装置グループの充電率を、前記風力発電システム全体の充電率目標値より高く設定する制御手段とを備えることを特徴とする風力発電システム。
(31)(7)または(20)に記載の風力発電システムにおいて、
前記第一の所定値は、前記風力発電システムの定格出力電力の10%以下である風力発電システム。
(32)(12)に記載の風力発電システムにおいて、
前記第二の所定値は、前記風力発電システムの定格出力電力の10%以下である風力発電システム。
(33)(1)〜(32)に記載の風力発電システムにおいて、
前記蓄電システムは、鉛蓄電池,ナトリウム硫黄電池,レドックスフロー電池,リチウムイオン電池,ニッケル水素電池,リチウムイオンキャパシタ,電気二重層キャパシタ,コンデンサ,フライホイールのいずれか一つ、あるいはこれらの組み合わせにより構成される風力発電システム。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、風力発電装置群の代わりに、出力電力の変動が大きな他の発電システムにも適用可能である。具体的には、風力発電装置群の代わりに、太陽光発電システム,波力発電システム、あるいはこれらを組み合わせた発電システムなどに適用が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 風力発電装置群
1−1 SCADA
1−1−1,1−1−2,・,・,・,1−1−n 風力発電装置
1−1−1−1,1−1−1a−1,1−1−1b−1,1−1−1c−1 ブレード
1−1−1−2,1−1−1a−2,1−1−1b−2,1−1−1c−2 風速計
1−1−1−3,1−1−1a−3,1−1−1b−3,1−1−1c−3 変速ギア
1−1−1−4 直流励磁同期発電機
1−1−1a−4 交流励磁同期発電機
1−1−1b−4 永久磁石発電機あるいは誘導発電機
1−1−1c−4 誘導発電機
1−1−1−5,1−1−1−6,1−1−1a−6,1−1−1b−6,2−1−1−2 電力変換器
1−1−1−7,1−1−1a−7,1−1−1b−7,1−1−1c−7 連系トランス
1−1−1−8,1−1−1a−8,1−1−1b−8,1−1−1c−8,2−1−1−4 遮断器
1−1−1−9 励磁装置
2 蓄電システム
2−1−1,2−1−2,・,・,・,2−2−m 蓄電装置
2−1−1−1 二次電池
2−1−1−3,4 連系トランス
3,3a,3b,3d 上位コントローラ
3−1 SOC目標値演算部
3b−1−1 SOC目標値演算部
3b−1−2 電力予測値変動率演算部
3b−1−3 切り替え器
3−2 最大値・最小値演算部
3−3,3a−3,3b−3,3c−3,3d−3 充放電電力指令演算部
3−3−1 SOC管理制御部
3−3−1−1,3−3−1−2,・,・,・,3−3−1−m 充放電電力指令演算部3−3−2,3−3−3,3a−3−3,3d−3−3 リミッター
3b−3−4,3d−3−4 出力電力上限指令演算部
3d−3−4−1 蓄積エネルギー演算部
3d−3−4−2 出力電力上限指令選択部
3−3c−5 一次遅れ演算部
3−4,3a−4,3b−4,3d−4 電力制限指令演算部
3−4−1 充電可能電力演算部
3a−4−2,3b−4−2,3d−4−2 最小値選択演算部
3b−4−3,3d−4−3 出力電力上限指令演算部
3−4−1−1,3−4−1−2,・,・,・,3−4−1−m 充電可能電力演算部
3−5 充放電電力指令分配部
5 電力系統
6 電力計
7 電力系
8 信号線
9 発電電力予測業者
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台以上の風力発電装置によって構成される風力発電装置群と、1台以上の蓄電装置によって構成される蓄電システムとを有する再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法であって、
前記風力発電装置群の発電電力と前記蓄電システムの充放電電力の和である前記再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を設定し、
前記蓄電システムの充電率に基づき充電可能な電力を演算し、
前記設定された出力電力の上限値と前記演算された充電可能な電力との和に基づき前記風力発電装置群の電力制限指令を演算し、
前記電力制限指令に基づき前記風力発電装置群の発電電力を制限し、
前記風力発電装置群の発電電力が前記再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を超える場合において、前記蓄電システムに充電可能な場合には、前記蓄電システムに前記再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を超える前記風力発電装置の発電電力を充電することを特徴とする再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法。
【請求項2】
請求項1において、前記風力発電装置群の代わりに、太陽光発電システムまたは波力発電システムを用いた再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法。
【請求項3】
請求項1において、前記蓄電システムの充電可能な電力の演算において、前記蓄電装置の温度や、前記蓄電装置の使用年数,総充放電電力量の何れかを考慮して、充電可能な電力を補正することを特徴とする再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法。
【請求項4】
請求項1において、前記電力制限指令に基づく前記風力発電装置群の発電電力の制限は、前記風力発電装置の個々に電力制限機能を設けることにより行うことを特徴とする再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法。
【請求項5】
請求項1において、前記電力制限指令に基づく前記風力発電装置群の発電電力の制限は、前記風力発電装置の個々の運転と停止の状態を切り替え、前記風力発電装置群全体として発電電力を制限することにより行うことを特徴とする再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法。
【請求項1】
1台以上の風力発電装置によって構成される風力発電装置群と、1台以上の蓄電装置によって構成される蓄電システムとを有する再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法であって、
前記風力発電装置群の発電電力と前記蓄電システムの充放電電力の和である前記再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を設定し、
前記蓄電システムの充電率に基づき充電可能な電力を演算し、
前記設定された出力電力の上限値と前記演算された充電可能な電力との和に基づき前記風力発電装置群の電力制限指令を演算し、
前記電力制限指令に基づき前記風力発電装置群の発電電力を制限し、
前記風力発電装置群の発電電力が前記再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を超える場合において、前記蓄電システムに充電可能な場合には、前記蓄電システムに前記再生可能エネルギー利用発電システムの出力電力の上限値を超える前記風力発電装置の発電電力を充電することを特徴とする再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法。
【請求項2】
請求項1において、前記風力発電装置群の代わりに、太陽光発電システムまたは波力発電システムを用いた再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法。
【請求項3】
請求項1において、前記蓄電システムの充電可能な電力の演算において、前記蓄電装置の温度や、前記蓄電装置の使用年数,総充放電電力量の何れかを考慮して、充電可能な電力を補正することを特徴とする再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法。
【請求項4】
請求項1において、前記電力制限指令に基づく前記風力発電装置群の発電電力の制限は、前記風力発電装置の個々に電力制限機能を設けることにより行うことを特徴とする再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法。
【請求項5】
請求項1において、前記電力制限指令に基づく前記風力発電装置群の発電電力の制限は、前記風力発電装置の個々の運転と停止の状態を切り替え、前記風力発電装置群全体として発電電力を制限することにより行うことを特徴とする再生可能エネルギー利用発電システムの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20(a)】
【図20(b)】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26(a)】
【図26(b)】
【図27(a)】
【図27(b)】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34(a)】
【図34(b)】
【図35】
【図36】
【図37(a)】
【図37(b)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20(a)】
【図20(b)】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26(a)】
【図26(b)】
【図27(a)】
【図27(b)】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34(a)】
【図34(b)】
【図35】
【図36】
【図37(a)】
【図37(b)】
【公開番号】特開2010−270758(P2010−270758A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157426(P2010−157426)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2007−250396(P2007−250396)の分割
【原出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2007−250396(P2007−250396)の分割
【原出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】
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