説明

冗長構成システム及びそれに用いる位相差補正回路

【課題】 冗長構成における2つ基準クロックの位相差を正確に補正することが可能な位相差補正回路を提供する。
【解決手段】 装置(a)1及び装置(b)2内には位相差カウンタ11,21が設置されており、データ生成器13,23で生成されるデータパタンと、バッファゲート16,26を経由してループバックされるパタンとを比較可能な構成となっている。装置(a)1及び装置(b)2各々のCLK信号出力部には、不揮発性メモリ15,25と、位相シフト器12,22とが備えられており、位相差カウンタ11,21から出力された位相情報を不揮発性メモリ15,25に記録し、その記録情報を基に位相シフト器12,22でCLK信号を調整し、出力CLK102,202を出力する役割を果たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冗長構成システム及びそれに用いる位相差補正回路に関し、特に冗長構成を持つシステムの基準CLK(clock)の位相差を合わせるための位相差補正回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の位相差補正回路においては、冗長構成を持つシステムの基準CLKの位相差を合わせるために、バッファ経由後のCLK信号との位相を一致させて出力している。
【0003】
例えば、、装置aと装置bとの冗長構成を持つシステムでは、出力CLKaと出力CLKbとの位相を合わせる方法として、バッファゲートbを通過してきたアクティブ(ACTIVE)側のCLK信号に対して、位相シフト器bで位相を合わせている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−229020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の位相差補正回路では、バッファゲート分の遅延量が考慮されていないため、2つのCLK信号の位相が完全に一致しないという問題がある。つまり、従来のシステムでは、バッファゲートaの遅延量分だけ、スタンバイ(STAND BY)側の出力CLKbとの位相が一致しないという問題が生じている。
【0006】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、冗長構成における2つ基準クロックの位相差を正確に補正することができる冗長構成システム及びそれに用いる位相差補正回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による冗長構成システムは、現用系及び予備系の冗長構成を必要とし、前記現用系及び前記予備系にそれぞれ設定されかつ位相差が同一であることが必須な信号を出力する第1及び第2の装置からなる冗長構成システムであって、
前記第1及び第2の装置各々は、前記位相差の検出に用いるデータパタンを生成するデータ生成手段と、前記データ生成手段で生成されたデータパタンをループバックする手段と、そのループバックしたデータパンタと前記データ生成手段で生成されたデータパタンとの位相差を検出する位相差検出手段と、前記位相差検出手段で検出された位相差を基に前記信号の位相を調整する手段とを備えている。
【0008】
本発明による位相差補正回路は、現用系及び予備系の冗長構成を必要とし、前記現用系及び前記予備系にそれぞれ設定されかつ位相差が同一であることが必須な信号を出力する第1及び第2の装置からなる冗長構成システムに用いる位相差補正回路であって、
前記位相差の検出に用いるデータパタンを生成するデータ生成手段と、前記データ生成手段で生成されたデータパタンをループバックする手段と、そのループバックしたデータパンタと前記データ生成手段で生成されたデータパタンとの位相差を検出する位相差検出手段と、前記位相差検出手段で検出された位相差を基に前記信号の位相を調整する手段とを前記第1及び第2の装置各々に設けている。
【0009】
すなわち、本発明の位相差補正回路は、現用系及び予備系の冗長構成を必要とするシステムにおいて、位相差が同じことが必須な信号(以下、CLK(cloch)信号とする)の位相差を自動的に、かつ正確に補正可能な構成とすること特徴としている。
【0010】
より具体的に説明すると、本発明の位相差補正回路では、冗長構成システムAにおいて、アクティブ(ACTIVE:現用)状態から出力している第1の出力CLK信号とスタンバイ(STAND BY:予備)状態から出力している第2の出力CLK信号とを備えている。ここでは、第1の装置をアクティブ状態とし、第2の装置をスタンバイ状態として説明する。逆の場合に関しては、第1の装置と第2の装置とを入れ替えることで説明が可能となる。
【0011】
これらの二つの第1及び第2のCLK信号は冗長構成のため、アクティブ状態の装置がなんらかの状態で故障した際に、スタンバイ状態の装置へCLK信号が切り替わる構成をとっている。その際、それらの装置のCLK信号に位相差がないことが理想である。そのため、それらの装置内に、ある一定のデータパタンを作成する第1及び第2のデータ生成器と、位相差を測定可能な第1及び第2の位相差カウンタとを備えている。
【0012】
さらに、これらの装置には第1及び第2の位相差シフト器を備えることによって、第1及び第2の位相差カウンタからのデータを解析し、アクティブ側の第1の出力CLK信号とスタンバイ側の第2の出力CLK信号との位相差を合わせている。
【0013】
本発明の位相差補正回路では、ある一定のデータパタンを作成する生成器を備え、そのデータをループバックさせ、実際のバッファゲート遅延量を測定することによって、正確なバッファゲート遅延値を算出可能とし、これによって、アクティブ側の第1の出力CLK信号とスタンバイ側の第2の出力CLK信号との位相差を一致させることが可能となる。よって、本発明の位相差補正回路では、冗長構成における2つ基準クロックの位相差を正確に補正することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下に述べるような構成及び動作とすることで、冗長構成における2つ基準クロックの位相差を正確に補正することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例による冗長構成システムの構成を示すブロック図である。図1において、本発明の一実施例による冗長構成システムは冗長構成をとる装置(a)1と装置(b)2とから構成されている。
【0016】
装置(a)1及び装置(b)2には位相差補正回路が設けられ、この位相差補正回路は位相差カウンタ11,21と、位相シフト器12,22と、データ生成器13,23と、スイッチ14,24と、不揮発性メモリ15,25と、バッファゲート16,17,26,27とを備えている。
【0017】
本実施例による冗長構成システムでは、どちらかのアクティブ(ACTIVE)な装置(現用系の装置)が故障した際も、システムが停止することなく動作することを目的としている。そのため、装置(a)1と装置(b)2とが出力する出力CLK(clock)信号102,202の位相差が完全に一致している必要があり、そのために装置(b)2に位相シフト器22を備えている。
【0018】
また、装置(b)2はデータ生成器23と位相差カウンタ21とを備え、装置(a)1及び装置(b)2の出力CLK信号102,202が通過するバッファ遅延量を算出することで、2つの出力CLK信号102,202の位相差を一致させている。
【0019】
図1に示すように、装置(a)1及び装置(b)2は冗長構成をとっており、入力CLK信号101,201を入力し、2つの位相の一致した出力CLK信号102,202を出力している。装置(a)1と装置(b)2との間には、互いにCLK信号がバッファゲート16,26を介して接続されている。これら互いのCLK信号の位相を同期させるために、装置(a)1及び装置(b)2はCLK信号の位相を合わせる位相シフト器12,22を備えている。
【0020】
また、装置(a)1及び装置(b)2内にはデータ生成器13,23を備えており、ある一定のデータパタンを送信可能としている。データ生成器13,23とCLK信号とはスイッチ14,24にていずれかの生成データが自装置にループバック可能かどうかを選択可能な構成である。
【0021】
ここで、装置(a)1及び装置(b)2内には位相差カウンタ11,21が設置されており、データ生成器13,23で生成されるデータパタンと、バッファゲート16,26を経由してループバックされるパタンとを比較可能な構成となっている。
【0022】
また、装置(a)1及び装置(b)2各々のCLK信号出力部には、不揮発性メモリ15,25と、位相シフト器12,22とが備えられており、位相差カウンタ11,21から出力された位相情報を不揮発性メモリ15,25に記録し、その記録情報を基に位相シフト器12,22でCLK信号を調整し、出力CLK102,202を出力する役割を果たしている。
【0023】
図2は本発明の一実施例による位相差測定方法を示すタイムチャートであり、図3は本発明の一実施例によるCLK位相補正方法を示すタイムチャートであり、図4は本発明の一実施例によるCLK信号の位相補正処理を示すフローチャートである。これら図1〜図4を参照して本発明の一実施例によるCLK信号の位相補正処理について説明する。
【0024】
冗長構成を必要とするシステムにおいては、基準CLKの位相差のずれが動作の重要な鍵となる。図1に示すような冗長構成システムでは、装置(a)1から出力される出力CLK信号102と、装置(b)2から出力される出力CLK信号202とのいずれかのアクティブな装置側のCLKが基準CLKとして選択される。
【0025】
ここで、装置(a)1をアクティブ(現用)側、装置(b)2をスタンバイ(STAND BY:予備)側の装置とした時、装置(a)1がなんらかの障害にて故障した場合、スタンバイ側である装置(b)2がアクティブとなり、出力CLK信号202がシステム全体の基準CLKとなる。このアクティブ/スタンバイ切替えの際、基準CLKの精度が非常に重要であり、位相差も一致している必要がある。
【0026】
以下、装置(a)1がアクティブ、装置(b)2がスタンバイとして動作しているものとし、図4に示すフローチャートを参照して説明する。尚、逆の構成をとる場合には、装置(a)1と装置(b)2とを入れ替えて解釈することが可能である。
【0027】
まず、通常時には装置(a)1の出力CLK信号102が基準CLKとなってシステムが運用されている。ここで、装置(b)2はスタンバイ側の出力CLK信号202をバッファゲート26経由のCLK信号と位相シフト器22で位相を合わせる(図4ステップS1)。しかしながら、この状態では、実際の出力CLK信号202がバッファゲート26を経由する時間だけ位相がずれている。
【0028】
装置(b)2はこのバッファゲート26分の位相差を合わせようとし、位相補正モードに入る(図4ステップS2)。位相補正モードに入る条件として挙げられるのは、初期電源オン(ON)時、新たに装置(a)1または装置(b)2が交換された時である。装置(b)2は位相補正モードに入る条件が満たない場合(図4ステップS2)、不揮発性メモリ25の位相補正値にしたがって位相シフト器22で位相を補正し、通常運用モードとなる(図4ステップS7〜S9)。
【0029】
位相補正モードにおいて、装置(b)2は装置(a)1のスイッチ14の切替えを行うことによって(図4ステップS3)、データ生成器23から出力されるデータを装置(b)2にループバックするモードとなる。ここで、装置(b)2は、図2に示すように、データ生成器23から位相差測定用データパタンを送信する(図4ステップS4)。
【0030】
装置(b)2の位相カウンタ21は送信データパタンと受信データパタンとの遅延量から、装置(a)1のデータ生成器13の出力データとバッファゲート27,26経由のデータパタンとの位相差αを検出する(図4ステップS5)。検出された位相差αは、実際の経路の往復のものであるため、実際の位相差はその1/2であり、位相差はα/2である。
【0031】
装置(b)2はこの検出した位相差α/2を不揮発性メモリ25に記録し(図4ステップS6)、位相補正モードの度に不揮発性メモリ25にデータ(位相差)を蓄積する。不揮発性メモリ25に位相差を記録することによって、電源の瞬断のように通電が途切れた際も、再び位相補正モードを経由することなく、位相を合わせることが可能となる。
【0032】
次に、装置(b)2は、図3に示すように、位相シフト器22によって位相差α/2だけCLK信号の位相をシフトする(図4ステップS7)。このように、装置(b)2では位相差α/2分シフトした出力CLK信号202を出力CLK信号102の位相と完全に一致させ(図4ステップS8)、通常運用モードに戻る(図4ステップS9)。
【0033】
上述したバッファ経路差の算出及び不揮発性メモリへの格納に関しては、アクティブ側の装置[装置(a)1]でも、スタンバイ側の装置[装置(b)2]と同時に行うことが可能である。上記と同様に、装置(a)1がアクティブ、装置(b)2がスタンバイとして説明すると、装置(a)1は装置(b)2のスイッチ24を切替えてループバックモードに設定し(図4ステップS3)、図2に示すように、データ生成器13から位相差測定用データパタンを送信する(図4ステップS4)。
【0034】
この後に、装置(a)1の位相差カウンタ11にて位相差αを検出し(図4ステップS5)、検出した実際の位相差α/2を不揮発性メモリ15に記録する(図4ステップS6)。このように、アクティブ側でも位相差を不揮発性メモリに記録することによって、装置のアクティブ/スタンバイが切替わった際にも瞬時に位相差の補正が可能である。
【0035】
上記のように、本実施例では、冗長構成における2つ基準クロックの位相差を正確に補正することができるとともに、冗長構成における2つ基準クロックの位相差を自動的に補正することができる。
【0036】
図5は本発明の他の実施例による冗長構成システムの構成を示すブロック図である。図5において、本発明の他の実施例による冗長構成システムは冗長構成をとる装置(a)3と装置(b)4とから構成されている。
【0037】
装置(a)3及び装置(b)4は位相差カウンタ31,41と、位相シフト器32,42と、データ生成器33,43と、スイッチ34,44と、バッファゲート35,45とを備えている。
【0038】
図1に示す本発明の一実施例では、データをバッファゲートにてループバックさせ、実際のゲート遅延を二倍したものを測定しているが、本実施例では、データ生成器33,43を高出力高精度にすることによって、ループバックをなくし、バッファゲートがない経路と、バッファゲートがある経路との位相差を測定することが可能となる。
【0039】
これによって、本実施例では、実際のCLK信号が伝播する経路のバッファゲート35,45のみの遅延量を測定することが可能であるため、二つのCLK信号の位相の精度向上が見込める。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例による冗長構成システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例による位相差測定方法を示すタイムチャートである。
【図3】本発明の一実施例によるCLK位相補正方法を示すタイムチャートである。
【図4】本発明の一実施例によるCLK信号の位相補正処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施例による冗長構成システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
1,3 装置(a)
2,4 装置(b)
11,21,31,41 位相差カウンタ
12,22,32,42 位相シフト器
13,23,33,43 データ生成器
14,24,34,44 スイッチ
15,25 不揮発性メモリ
16,17,26,27,
35,45 バッファゲート
101,201 入力CLK信号
102,202 出力CLK信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現用系及び予備系の冗長構成を必要とし、前記現用系及び前記予備系にそれぞれ設定されかつ位相差が同一であることが必須な信号を出力する第1及び第2の装置からなる冗長構成システムであって、
前記第1及び第2の装置各々は、前記位相差の検出に用いるデータパタンを生成するデータ生成手段と、前記データ生成手段で生成されたデータパタンをループバックする手段と、そのループバックしたデータパンタと前記データ生成手段で生成されたデータパタンとの位相差を検出する位相差検出手段と、前記位相差検出手段で検出された位相差を基に前記信号の位相を調整する手段とを有することを特徴とする冗長構成システム。
【請求項2】
前記第1及び第2の装置各々は、前記位相差検出手段で検出された位相差を記録する不揮発性メモリを含み、装置構成に変更がない場合に前記不揮発性メモリに記録した前記位相差を基に前記信号の位相を調整することを特徴とする請求項1記載の冗長構成システム。
【請求項3】
前記第1及び第2の装置各々は、互いに前記信号が第1及び第2のバッファゲートを介して接続され、前記データ生成手段で生成されたデータパタンが第3及び第4のバッファゲートを介して接続されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の冗長構成システム。
【請求項4】
前記第1及び第2の装置各々は、互いに前記信号が第1及び第2のバッファゲートを介して接続され、前記データ生成手段で生成されたデータパタンを他装置側に直接出力することを特徴とする請求項1または請求項2記載の冗長構成システム。
【請求項5】
前記位相差検出手段は、前記信号が通過するバッファ遅延量を算出することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか記載の冗長構成システム。
【請求項6】
現用系及び予備系の冗長構成を必要とし、前記現用系及び前記予備系にそれぞれ設定されかつ位相差が同一であることが必須な信号を出力する第1及び第2の装置からなる冗長構成システムに用いる位相差補正回路であって、
前記位相差の検出に用いるデータパタンを生成するデータ生成手段と、前記データ生成手段で生成されたデータパタンをループバックする手段と、そのループバックしたデータパンタと前記データ生成手段で生成されたデータパタンとの位相差を検出する位相差検出手段と、前記位相差検出手段で検出された位相差を基に前記信号の位相を調整する手段とを前記第1及び第2の装置各々に設けたことを特徴とする位相差補正回路。
【請求項7】
前記第1及び第2の装置各々は、前記位相差検出手段で検出された位相差を記録する不揮発性メモリを含み、装置構成に変更がない場合に前記不揮発性メモリに記録した前記位相差を基に前記信号の位相を調整することを特徴とする請求項6記載の位相差補正回路。
【請求項8】
前記第1及び第2の装置各々は、互いに前記信号が第1及び第2のバッファゲートを介して接続され、前記データ生成手段で生成されたデータパタンが第3及び第4のバッファゲートを介して接続されることを特徴とする請求項6または請求項7記載の位相差補正回路。
【請求項9】
前記第1及び第2の装置各々は、互いに前記信号が第1及び第2のバッファゲートを介して接続され、前記データ生成手段で生成されたデータパタンを他装置側に直接出力することを特徴とする請求項6または請求項7記載の位相差補正回路。
【請求項10】
前記位相差検出手段は、前記信号が通過するバッファ遅延量を算出することを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか記載の位相差補正回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−60180(P2007−60180A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241936(P2005−241936)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】