説明

冷却ファン装置

【課題】 複数個の冷却ファンからなる複合型の冷却ファン装置を用いることにより、その搭載機器等を小型化しつつ、冷却性能を向上させる。
【解決手段】 冷却ファン装置21を、冷却風通路22Aを有するダクト22と、外側ファン23、内側ファン24等とによって構成する。また、冷却ファン装置21を空気圧縮機1に搭載して回転軸4に取付ける。そして、圧縮運転時には、モータ20により回転軸4を介して圧縮部6と冷却ファン装置21とを駆動する。このとき、冷却ファン装置21は、外側ファン23によって圧縮部6を冷却しつつ、内側ファン24によって回転軸4を冷却する。これにより、回転軸4、圧縮部6等の冷却対象物を一つの冷却ファン装置21によって効率よく冷却することができるから、圧縮機全体を小型化しつつ、その耐熱性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば圧縮機、発電機、エンジン、プロジェクタ等の機器を冷却するのに好適に用いられる冷却ファン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば圧縮機、発電機、エンジン、プロジェクタ等の機器は、発熱し易い稼動部を備えているため、これらの機器には冷却ファン装置が設けられている。そして、このような冷却ファン装置を備えた機器としては、例えば圧縮機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−28470号公報
【0004】
この種の従来技術による圧縮機は、ケーシングと、該ケーシングに回転可能に設けられた回転軸と、前記ケーシングに設けられ、空気を吸込んで圧縮空気を吐出する往復動型の圧縮部と、前記回転軸を介して該圧縮部を駆動するモータとによって大略構成されている。
【0005】
また、圧縮部は、ケーシングに設けられたシリンダと、該シリンダ内に往復動可能に挿嵌されたピストンとを有している。そして、圧縮機の運転時には、モータにより回転軸等を介してピストンが駆動され、これによってピストンはシリンダ内で往復動する。
【0006】
また、回転軸には、モータによって圧縮部と一緒に駆動される冷却ファンが設けられている。そして、従来技術では、冷却ファンが作動すると、まず冷却ファンから発生する冷却風がダクト等を介してシリンダの外周側に導かれ、圧縮部が冷却される。さらに、圧縮部を冷却した後の冷却風はモータの内部に流入し、これによってモータも冷却される。このように、従来技術では、圧縮部とモータとからなる冷却対象物を冷却ファンによって直列に冷却する構成としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術では、圧縮機に冷却ファンを搭載し、その冷却風によって圧縮部とモータとを順次冷却する構成としている。この場合、圧縮機の運転時には、例えば圧縮部、回転軸、モータ等からなる複数個所の稼動部でそれぞれ熱が発生するから、従来技術では、これらの稼動部(冷却対象物)を冷却風によって効率よく冷却したいという要求がある。
【0008】
しかし、このような要求を満たすためには、例えば冷却ファンの外径を大きくして冷却風の風量を確保するか、または従来技術のように一つの冷却対象物(圧縮部)を冷却した後の暖かい冷却風を他の冷却対象物(モータ)に用いる必要がある。このため、従来技術では、大径な冷却ファンを用いることによって圧縮機が大型化したり、圧縮機全体で冷却効率の低下、ばらつき等が生じ易いという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、冷却ファンを大径化しなくても冷却風を十分に発生させることができ、複数の冷却対象物を効率よく冷却できると共に、装置自体やその搭載機器を小型化できるようにした冷却ファン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために請求項1の発明は、中空状をなし内部が冷却風が通る冷却風通路となったダクトと、冷却対象物から遠い位置となるように該ダクトの外周側に設けられた第1のファンと、前記冷却対象物に対して近い位置となるように前記ダクトの端部に設けられ前記冷却風通路を介して冷却風を取込む第2のファンとからなる構成を採用している。
【0011】
また、請求項2の発明によると、前記第1のファンは軸方向の冷却風を発生する軸流ファンにより構成している。
【0012】
また、請求項3の発明によると、前記第2のファンは、冷却風通路を流れる冷却風を内周側に吸込んで外周側から吹出す遠心ファンを含む構成としている。
【0013】
一方、請求項4の発明によると、前記冷却対象物は気体を圧縮する圧縮機により構成している。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、冷却ファン装置の作動時には、例えばダクトを回転駆動することにより、第1,第2のファンを構成する複数個のファンを一緒に作動させることができ、その駆動構造を簡略化することができる。そして、ダクトに沿って軸方向に並んだ複数個のファンによって冷却風をそれぞれ個別に発生することができ、冷却ファン装置を大径化しなくても、装置全体として冷却風の風量を十分に確保することができる。
【0015】
また、第2のファンは、第1のファンの背面側に重なり合うように配置されていても、ダクト内の冷却風通路を介して冷却風を円滑に取込むことができる。このため、複数個のファンを軸方向に並べた状態でも、複数個のファンによって冷却風を並列に発生することができ、各ファンの送風動作を安定的に行うことができる。そして、これらのファンで発生した冷却風を複数の冷却対象物に向けてそれぞれ個別に供給することができ、個々の冷却対象物をばらつきなく効率的に冷却することができる。従って、冷却ファン装置を搭載する機器等を小型化することができ、小型でも高い冷却性能をもつ装置を実現することができる。
【0016】
また、請求項2の発明によれば、冷却対象物から遠い位置にある第1のファンを軸流ファンによって構成することができ、この軸流ファンにより冷却対象物に向けて軸方向の冷却風を発生することができる。
【0017】
また、請求項3の発明によれば、第2のファン(第2のファンを複数個設けた場合はその一部または全部)を、遠心ファン(シロッコファン)によって構成することができる。この遠心ファンは、内周側に吸込んだ空気を外周側から吹出すことができるので、隣接する周囲のファンと冷却風の流れが干渉するのを防止でき、複数のファンを近接させてコンパクトに配置することができる。また、遠心ファンは、その内周側が軸方向に開口した筒状体となっているから、この内周側の空間をダクト内の冷却風通路に容易に接続することができる。
【0018】
一方、請求項4の発明によれば、冷却ファン装置を圧縮機に適用することができる。これにより、例えば圧縮機に搭載された圧縮部、回転軸、モータ等からなる複数の冷却対象物を、一つの冷却ファン装置によって効率よく冷却することができる。従って、簡単な冷却構造で高い耐熱性をもつ圧縮機を実現することができ、また圧縮機全体を小型化することができる。
【0019】
そして、例えば圧縮部をシールするシール部品や、回転軸を支持する軸受部品等を高温による劣化から保護することができ、これらの部品の寿命を延ばして耐久性を高めることができる。また、圧縮部の温度を低下させることにより圧縮効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による冷却ファン装置を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0021】
ここで、図1ないし図8は第1の実施の形態を示し、本実施の形態では、冷却ファン装置を往復動型の空気圧縮機に適用した場合を例に挙げて述べる。
【0022】
図中、1は空気圧縮機を示し、該空気圧縮機1は、後述のケーシング2、回転軸4、圧縮部6、モータ20によって大略構成されている。ここで、回転軸4と圧縮部6とは、冷却ファン装置21によって冷却される例えば2個の冷却対象物となるものである。
【0023】
2は空気圧縮機1の外郭をなすケーシングで、該ケーシング2は、例えば有底筒状の金属ケース等として形成され、軸方向一側が開口した筒部2Aと、該筒部2Aの軸方向他側を閉塞する底部2Bと、筒部2Aから径方向内向きに突出した環状の隔壁部2Cとによって構成されている。
【0024】
ここで、筒部2Aの軸方向一側(開口側)は後述の蓋体3によって閉塞されている。また、筒部2Aの側面部には、図2に示す如く、後述の吸込ポート17が設けられている。また、隔壁部2Cは、ケーシング2内の空間を圧縮部側空間2Dとモータ側空間2Eとに画成している。
【0025】
3はケーシング2の筒部2Aの開口側に取付けられた略円板状(環状)の蓋体で、該蓋体3は、後述する冷却ファン装置21の背面側に配置され、ケーシング2の圧縮部側空間2Dを閉塞している。
【0026】
また、蓋体3には、図7、図8に示す如く、その中央部に位置してケーシング2の外側に開口する有底筒状のファン収容部3Aと、該ファン収容部3Aの底部側に開口する軸挿通穴3Bと、ファン収容部3Aから蓋体3の外周側に向けて径方向に延びる冷却風ガイド部3Cとが設けられている。
【0027】
ここで、冷却風ガイド部3Cは、図3に示す如く、後述の内側ファン24からファン収容部3A内に吹出す冷却風をシリンダ7、シリンダヘッド8等の周囲に導く構成となっている。このように、蓋体3は、ケーシング2の一部として機能するだけでなく、内側ファン24の冷却風を圧縮部6に向けて案内するガイド部材としても機能するものである。
【0028】
4は軸受5,5を用いてケーシング2に回転可能に設けられた冷却対象物としての回転軸で、該回転軸4は、図1に示す如く、例えば段付状の金属ロッド等によって形成され、後述のモータ20により軸線O−Oを中心として回転駆動されるものである。
【0029】
ここで、回転軸4は、基端側がケーシング2のモータ側空間2E内に配置され、先端側が隔壁部2Cの内周側を介して圧縮部側空間2D内に延びている。そして、回転軸4の先端側には、後述の偏心ブッシュ13とバランスウエイト14とが回転を規制された状態で取付けられている。
【0030】
また、回転軸4の最先端部は、蓋体3の軸挿通穴3Bを通じてファン収容部3A内に突出している。この最先端部には、図3、図4に示す如く、例えば外周側に雄ねじ部等が形成された小径軸部4Aと、該小径軸部4Aの基端側が拡径した環状の段部4Bとが設けられている。この場合、小径軸部4Aは、内側ファン24の内周側に配置され、この位置で冷却風と接触する構成となっている。
【0031】
6はケーシング2に設けられた他の冷却対象物としての往復動型(揺動ピストン型)の圧縮部で、該圧縮部6は、外部から空気を吸込んで圧縮空気を吐出するものである。ここで、圧縮部6は、ケーシング2の筒部2A上に取付けられた円筒状のシリンダ7と、該シリンダ7の先端側に搭載されたシリンダヘッド8と、該シリンダヘッド8とシリンダ7との間に設けられ、後述の吐出弁16によって開,閉される例えば2個の吐出穴9Aが形成された弁座部材9と、後述のピストン10、吸込弁15、吐出弁16とによって大略構成されている。
【0032】
10はシリンダ7内に往復動可能に挿嵌されたピストンで、該ピストン10は、例えばロッキングピストン等からなり、シリンダ7内で揺動しつつ往復動するものである。ここで、ピストン10は、弁座部材9との間に圧縮室11を画成する略円板状のピストン本体10Aと、該ピストン本体10Aの背面側に一体的に設けられたロッド部10Bとによって大略構成されている。
【0033】
そして、ピストン本体10Aはロッド部10Bの先端側に取付けられ、これらの部位には、後述の吸込弁15によって開,閉される吸込穴10Cが設けられている。また、ロッド部10Bの基端側は、ケーシング2の圧縮部側空間2D内に配置され、軸受12と偏心ブッシュ13とを介して回転軸4に連結されている。
【0034】
この場合、偏心ブッシュ13は、例えばキー等を介して回転軸4の外周側に回転を規制した状態で嵌合され、その外周面は回転軸4の軸線O−Oに対して所定の寸法だけ径方向に偏心している。これにより、偏心ブッシュ13は、モータ20の回転出力をピストン10の往復動に変換するものである。また、偏心ブッシュ13の端面には、環状のバランスウエイト14が取付けられている。
【0035】
15はピストン10に設けられた吸込弁で、該吸込弁15は、ピストン10の吸込穴10Cを開,閉し、これによってケーシング2内の圧縮部側空間2Dと圧縮室11とを連通,遮断する。また、16は弁座部材9に設けられた例えば2個の吐出弁で、これらの吐出弁16は、弁座部材9の各吐出穴9Aを開,閉し、後述の吐出ポート19と圧縮室11とを連通,遮断するものである。
【0036】
17は例えばケーシング2の筒部2Aに設けられた吸込ポートで、該吸込ポート17は、図2に示す如く、後述するカバー27の内側となる位置で圧縮部側空間2Dに開口している。また、吸込ポート17には、防塵・防音機能等を有するフィルタ18が設けられている。
【0037】
そして、吸込ポート17は、空気圧縮機1が吸込行程となったときに、カバー27の内側を流れる空気(外気)を圧縮部側空間2D内に吸込むものである。このとき、圧縮部側空間2D内に吸込まれた空気は、吸込弁15が開弁することによりピストン10の吸込穴10Cを通じて圧縮室11内に流入する。
【0038】
19はシリンダヘッド8に設けられた例えば2個の吐出ポートで、これらの吐出ポート19は、空気圧縮機1が吐出行程となったときに、圧縮室11内の圧縮空気を外部の貯留タンク(図示せず)等に向けて吐出するものである。
【0039】
20はケーシング2のモータ側空間2E内に設けられた電動式のモータで、該モータ20は、圧縮部6と冷却ファン装置21とを駆動するものである。ここで、モータ20は、図1に示す如く、ケーシング2内に固着された筒状のステータ20Aと、該ステータ20Aの内周側で回転軸4の外周側に固着されたロータ20Bとによって大略構成されている。
【0040】
21は空気圧縮機1に搭載された複合型の冷却ファン装置を示し、この冷却ファン装置21は、図3ないし図6に示す如く、後述のダクト22、外側ファン23、内側ファン24、取付板25等によって構成され、後述のナット26を用いて回転軸4の小径軸部4Aに回転を規制した状態で取付けられている。
【0041】
ここで、冷却ファン装置21は、複数個のファン(本実施の形態では、外側ファン23と内側ファン24とからなる2個のファンを例示)をダクト22によって一体化することにより形成されている。これらのファン23,24は、回転軸4及び圧縮部6に対して遠い位置(離れた位置)から近い位置まで軸線O−Oに沿って直列に配置され、軸線O−Oを中心として互いに同軸となっている。
【0042】
この場合、外側ファン23は、回転軸4及び圧縮部6に対して離れた第1のファンを構成し、内側ファン24は、回転軸4及び圧縮部6に近い第2のファンを構成している。そして、外側ファン23と内側ファン24とは、回転軸4と圧縮部6とに向けてそれぞれ異なる方向(図3中の矢示A,D方向)の冷却風を発生し、これらの冷却対象物を並列に冷却するものである。
【0043】
22は冷却ファン装置21の中央部に配置された中空状のダクトで、該ダクト22は、軸線O−Oを中心として軸方向に延びた円筒状のスリーブ等によって形成され、その内周側は、冷却風が流れる冷却風通路22Aとなっている。
【0044】
また、ダクト22(冷却風通路22A)の一端側は、後述するカバー27の開口部27Aに向けて開口し、ダクト22の他端側には内側ファン24が取付けられている。そして、冷却風通路22Aは、内側ファン24の回転時に冷却風通路22A内に生じる負圧を利用して、後述するカバー27の開口部27Aから内側ファン24に向けて空気を吸込む構成となっている。
【0045】
23はダクト22の軸方向一側に設けられた第1のファンとしての外側ファンで、この外側ファン23は、例えば軸流ファン等によって構成され、圧縮部6からみて内側ファン24の外側位置、即ち圧縮部6から遠い位置に設けられている。また、外側ファン23は、ダクト22の外周側に放射状に突設された複数枚の羽根23Aによって構成されている。
【0046】
そして、外側ファン23はカバー27の開口部27Aから空気を吸込み、この空気を図3中の軸線O−Oに沿って矢示A方向に送風することにより、軸方向の冷却風を発生する。この冷却風は、矢示Bに示すように、ケーシング2の筒部2A、シリンダ7、シリンダヘッド8等の外面側に沿って流通することにより、圧縮部6を冷却する。また、冷却風の一部は、図2中の矢示Cに示す如く、吸込ポート17からケーシング2の圧縮部側空間2Dに吸込まれる構成となっている。
【0047】
24はダクト22の他端側に設けられた第2のファンとしての内側ファンで、この内側ファン24は、図3、図4に示す如く、例えば円筒状の遠心ファン(シロッコファン)等によって構成され、外側ファン23と比べて圧縮部6に近い位置、即ち圧縮部6からみて外側ファン23の内側位置に設けられている。また、内側ファン24は、その外周側に列設された複数枚の羽根24Aを有している。
【0048】
また、内側ファン24は蓋体3のファン収容部3A内に収容され、内側ファン24の外周側(吹出し側)と蓋体3の冷却風ガイド部3Cとは径方向で対面している。一方、内側ファン24の内周側(吸込み側)は、ダクト22の冷却風通路22Aと連通し、この内周側の空間には、冷却風通路22Aに面して回転軸4の小径軸部4Aが挿入されている。
【0049】
そして、内側ファン24は、図3中の矢示Dに示す如く、ダクト22の冷却風通路22Aを介して内周側に冷却風を吸込み、この冷却風によって回転軸4を冷却した後に、矢示Eに示すように外周側から蓋体3の冷却風ガイド部3C内に冷却風を吹出すものである。
【0050】
25はダクト22の他端側に固着して設けられた環状の取付板で、該取付板25は、冷却ファン装置21を回転軸4に取付ける部位である。この場合、取付板25は、後述のナット26と回転軸4の段部4Bとの間に強く挟持されることにより、回転軸4に廻止め状態で取付けられている。また、回転軸4の小径軸部4Aは、取付板25の内周側を介して内側ファン24の内部に挿入されている。
【0051】
26は回転軸4の小径軸部4Aに螺着されたナットで、このナット26は、回転軸4の段部4Bとの間に冷却ファン装置21の取付板25を挟持し、これによって冷却ファン装置21を回転軸4に廻止め状態で取付けるものである。
【0052】
また、図1等において、27はケーシング2に設けられたカバーで、このカバー27は、ケーシング2の軸方向一側、シリンダ7、シリンダヘッド8、冷却ファン装置21等の部位を覆っている。そして、カバー27は、これらの部位に沿ってファン23,24等の冷却風を流通させるものである。また、カバー27には、冷却ファン装置21と対面する位置に開口部27Aが設けられている。
【0053】
本実施の形態に適用される往復動型の空気圧縮機1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0054】
まず、モータ20が作動すると、このモータ20によって回転軸4が回転駆動され、ピストン10がシリンダ7内で揺動しつつ往復動することにより、吸込行程と吐出行程とが交互に繰返される。
【0055】
そして、吸込行程では、吸込弁15が開弁して吐出弁16が閉弁することにより、外部の空気がケーシング2の吸込ポート17からフィルタ18を介して圧縮部側空間2D内に吸込まれ、この空気は、ピストン10のロッド部10B、軸受12等を冷却した後に、吸込穴10Cを介して圧縮室11内に流入する。
【0056】
また、吐出行程では、吸込弁15が閉弁して吐出弁16が開弁することにより、圧縮室11内の圧縮空気が弁座部材9の吐出穴9Aを通じてシリンダヘッド8内に流出する。この圧縮空気は、吐出ポート19から外部に吐出された後に、貯留タンク等に貯えられる。
【0057】
また、圧縮運転時には、モータ20によって冷却ファン装置21が回転軸4と一緒に回転駆動される。これにより、外側ファン23と内側ファン24とが回転すると、まず外側ファン23によってカバー27の開口部27Aから空気が吸込まれ、図1中の矢示Aに示す如く、軸線O−Oに沿って冷却風が発生する。
【0058】
この冷却風は、矢示Bに示すように、ケーシング2の筒部2A、シリンダ7、シリンダヘッド8等に沿って流通し、これによって圧縮部6を外側から冷却する。また、冷却風の一部は、図2中の矢示Cに示す如く、吸込行程となったときに、ケーシング2の吸込ポート17から圧縮部側空間2D内に吸込まれる。
【0059】
一方、内側ファン24が作動すると、その内周側に生じる負圧がダクト22の冷却風通路22Aに作用するので、冷却風通路22A内には、図3中の矢示Dに示す如く、カバー27の開口部27Aから冷却風が流入する。この冷却風は、内側ファン24の内周側に吸込まれ、回転軸4と接触することによってこれを冷却した後に、矢示Eに示す如く、内側ファン24の外周側から蓋体3の冷却風ガイド部3C内に流出する。そして、冷却風ガイド部3Cから流出した冷却風は、外側ファン23による矢示B方向の冷却風と合流し、圧縮部6の冷却を行う。
【0060】
かくして、本実施の形態によれば、空気圧縮機1には、ダクト22、外側ファン23、内側ファン24、取付板25等からなる冷却ファン装置21を設ける構成としたので、その作動時には、ダクト22を回転駆動することにより、外側ファン23と内側ファン24とを一緒に回転させることができる。
【0061】
これにより、各ファン23,24を個別に駆動する必要がないから、複数個のファン23,24を駆動するための駆動構造を簡略化することができる。また、軸方向に並んだ複数個のファン23,24によって矢示A,D方向の冷却風をそれぞれ個別に発生することができ、冷却ファン装置21を大径化しなくても、ファン全体として冷却風の風量を十分に確保することができる。
【0062】
また、ダクト22の内部には冷却風通路22Aを設けているので、内側ファン24は、外側ファン23の背面側に重なり合うように配置されていても、冷却風通路22Aを介して冷却風を円滑に取込むことができる。このため、外側ファン23と内側ファン24とを軸方向に並べた状態でも、これらのファン23,24によって冷却風をそれぞれ異なる方向に向けて並列に発生することができ、各ファン23,24の送風動作を安定的に行うことができる。
【0063】
この場合、外側ファン23を軸流ファンによって構成したから、外側ファン23は、例えばカバー27等と協働することにより、軸方向に離れた圧縮部6を矢示A,B方向の冷却風によって円滑に冷却することができる。
【0064】
また、内側ファン24を遠心ファンによって構成したので、この内側ファン24は、隣接する周囲のファン(例えば、外側ファン23等)と冷却風の流れが干渉するのを防止でき、複数のファンを近接させてコンパクトに配置することができる。また、内側ファン24の内周側は軸方向に開口する空間となっているから、この空間をダクト22の冷却風通路22Aと容易に接続することができる。そして、内側ファン24は、例えば蓋体3の冷却風ガイド部3C等と協働することにより、矢示D,E方向に流れる冷却風を発生することができ、この冷却風によって回転軸4を円滑に冷却することができる。
【0065】
このように、空気圧縮機1に搭載された回転軸4、圧縮部6等からなる複数の冷却対象物を、一つの冷却ファン装置21によって効率よく冷却することができるから、空気圧縮機1の冷却構造を簡略化することができる。従って、圧縮機全体を小型化しつつ、その耐熱性を向上させることができる。
【0066】
そして、例えば圧縮部6をシールするシール部品や、回転軸4を支持する軸受部品等を高温による劣化から保護することができ、これらの部品の寿命を延ばして耐久性を高めることができる。また、圧縮部6の温度を低下させることにより圧縮効率を向上させることができる。
【0067】
次に、図9は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、内側ファンによって回転軸とモータとを冷却する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0068】
31は往復動型の空気圧縮機、32は該空気圧縮機31のケーシングを示し、該ケーシング32は、第1の実施の形態とほぼ同様に、筒部32A、底部(図示せず)、隔壁部32B、圧縮部側空間32C、モータ側空間32D等によって構成されている。
【0069】
しかし、隔壁部32Bには、圧縮部側空間32Cからモータ側空間32Dに向けて冷却風を流通させる通気穴32Eが設けられ、筒部32Aには、モータ側空間32D内の冷却風を外部に流出させる他の通気穴32Fが設けられている。
【0070】
33はケーシング32の開口側に設けられた蓋体で、該蓋体33は、第1の実施の形態とほぼ同様に、ファン収容部33A、軸挿通穴33B、冷却風ガイド部33C等を有している。
【0071】
また、冷却風ガイド部33Cの途中には、ケーシング32の圧縮部側空間32Cに開口する分岐口33Dが設けられている。このため、蓋体33は、内側ファン24から吹出す冷却風の一部を圧縮部6に向けて案内し、残りの冷却風をモータ20側に向けて案内する分岐型のガイド部材として構成されている。
【0072】
これにより、空気圧縮機31の運転時には、内側ファン24から蓋体33の冷却風ガイド部33C内に冷却風が吹出すと、この冷却風の一部は、矢示Eに示す如く、第1の実施の形態とほぼ同様に、冷却風ガイド部33Cを通って圧縮部6の外側近傍に流出する。
【0073】
また、残りの冷却風は、矢示Fに示す如く、蓋体33の分岐口33Dからケーシング32の圧縮部側空間32C内に流入する。さらに、この冷却風は、矢示Gに示す如く、ケーシング32の通気穴32E,32Fを介してモータ側空間32D内を流通することにより、モータ20を冷却する構成となっている。
【0074】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、蓋体33に分岐口33Dを設け、ケーシング32に通気穴32E,32Fを設けることにより、内側ファン24の冷却風を用いてモータ20も冷却するようにしている。
【0075】
このため、冷却ファン装置21は、外側ファン23によって圧縮部6を冷却できると共に、内側ファン24によって回転軸4とモータ20とを冷却することができる。従って、回転軸4、圧縮部6及びモータ20からなる3個の冷却対象物で高い冷却効率を得ることができ、圧縮機全体の耐熱性を高めることができる。
【0076】
次に、図10は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、例えば4個の冷却ファンによって冷却ファン装置を構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0077】
41は冷却ファン装置を示し、該冷却ファン装置41は、内部が冷却風通路42Aとなったダクト42と、回転軸4及び圧縮部6に対して遠い位置で該ダクト42の外周側に設けられた第1の冷却ファンとしての外側ファン43と、回転軸4及び圧縮部6に対して近い位置にある第2の冷却ファンとしての内側ファン44,45,46と、後述の取付板48とによって構成され、例えば4個のファンを一体化することにより形成されている。
【0078】
そして、外側ファン43は、例えば複数枚の羽根43Aを有する軸流ファンによって形成されている。また、内側ファン44,45,46は、それぞれ複数枚の羽根44A,45A,46Aを有する遠心ファンとして形成されている。この場合、各内側ファン44,45,46は、連結筒47を用いて互いに同軸に連結され、取付板48は端部側の内側ファン46に取付けられている。
【0079】
そして、内側ファン44,45,46は、外側ファン43と一緒に回転することにより、ダクト42の冷却風通路42Aから各ファン44〜46の内周側に冷却風を吸込み、この冷却風を互いに軸方向の異なる位置で外周側から吹出す構成となっている。
【0080】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、外側ファン43と、内側ファン44,45,46とからなる例えば4個のファンを一体化することにより、冷却ファン装置41を構成したので、多数の冷却対象物等に対しても冷却風を容易に送風することができる。従って、冷却ファン装置41の適用対象を広げることができ、その冷却性能を高めることができる。
【0081】
なお、前記各実施の形態では、冷却ファン装置21,41の第1のファンを1個の外側ファン23,43によって構成し、第2のファンを1個または3個の内側ファン24,44,45,46によって構成するものとした。しかし、本発明の冷却ファン装置はこれに限らず、第1のファンを2個以上のファンによって構成してもよく、一方、第2のファンも2個のファンまたは4個以上のファンによって構成してよいものである。
【0082】
また、実施の形態では、外側ファン23,43として軸流ファンを用い、内側ファン24,44,45,46として遠心ファンを用いる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば外側ファンを遠心ファンによって構成してもよく、また少なくとも一部の内側ファンを軸流ファンによって構成してもよい。即ち、本発明では、冷却ファン装置を構成する軸流ファンと遠心ファンの個数の比率、及びこれらのファンの軸方向の並び順を自由に設定してもよいものである。
【0083】
一方、実施の形態では、冷却ファン装置21,41を適用する冷却対象物として、往復動型の空気圧縮機1,31の回転軸4、圧縮部6及びモータ20を例に挙げて説明した。しかし、本発明の冷却ファン装置はこれに限らず、例えばスクロール式の圧縮機、空気以外の流体を圧縮する圧縮機、真空ポンプ、冷媒圧縮機等にも適用することができ、さらには発電機、エンジン、プロジェクタ等のように、冷却対象物を有する各種の機器に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施の形態に適用される往復動型の空気圧縮機を示す縦断面図である。
【図2】空気圧縮機を図1中の矢示II−II方向からみた横断面図である。
【図3】図1中の冷却ファン装置等を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図4】モータの回転軸、冷却ファン装置、蓋体等を組立てる前の状態で示す拡大断面図である。
【図5】冷却ファン装置を正面側からみた斜視図である。
【図6】冷却ファン装置を背面側からみた斜視図である。
【図7】蓋体を示す正面図である。
【図8】蓋体を背面側からみた斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に適用される往復動型の空気圧縮機を示す部分拡大断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態による冷却ファン装置を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1,31 空気圧縮機
2,32 ケーシング
3,33 蓋体
3A,33A ファン収容部
3B,33B 軸挿通穴
3C,33C 冷却風ガイド部
4 回転軸(冷却対象物)
6 圧縮部(冷却対象物)
7 シリンダ
8 シリンダヘッド
10 ピストン
13 偏心ブッシュ
17 吸込ポート
18 フィルタ
19 吐出ポート
20 モータ(冷却対象物)
21,41 冷却ファン装置
22,42 ダクト
22A,42A 冷却風通路
23,43 外側ファン(第1のファン)
23A,43A 羽根
24,44,45,46 内側ファン(第2のファン)
24A,44A,45A,46A 羽根
25,48 取付板
26 ナット
27 カバー
32E,32F 通気穴
33D 分岐口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状をなし内部が冷却風が通る冷却風通路となったダクトと、
冷却対象物から遠い位置となるように該ダクトの外周側に設けられた第1のファンと、
前記冷却対象物に対して近い位置となるように前記ダクトの端部に設けられ前記冷却風通路を介して冷却風を取込む第2のファンとにより構成してなる冷却ファン装置。
【請求項2】
前記第1のファンは軸方向の冷却風を発生する軸流ファンである請求項1に記載の冷却ファン装置。
【請求項3】
前記第2のファンは、前記冷却風通路を流れる冷却風を内周側に吸込んで外周側から吹出す遠心ファンを含む構成としてなる請求項1または2に記載の冷却ファン装置。
【請求項4】
前記冷却対象物は気体を圧縮する圧縮機である請求項1,2または3に記載の冷却ファン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−177722(P2007−177722A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378089(P2005−378089)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】