説明

冷却ユニット

【課題】圧縮機自体から生じる振動、および車体からの振動をクッション体で吸収するとともに、圧縮機の底板への固定部における振動を抑制して増幅を減衰し、車載用であっても冷凍サイクルの配管などが折損することを防止できる冷却ユニットを提供する。
【解決手段】圧縮機7や凝縮器を配設した機械室と、機械室の底面を形成する底板4と、底板上に固着した圧縮機固定用の固定軸35と、固定軸の周囲に嵌挿され上部に小径部15aを形成することで水平段部15bを設けた筒状のクッション体15と、小径部の外周に嵌合して水平段部上に保持される圧縮機のベース片36と、ベース片の上部におけるクッション体の小径部の外周に嵌合したクッションスペーサ37と、クッション体およびクッションスペーサの上面を覆って固定軸に固定されたストップワッシャ38とからなり、ベース片は、クッションスペーサによって上下方向の移動を抑制されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却対象物に冷気を供給してこれを冷却するようにした冷却ユニットの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用冷蔵庫やトラックなどに搭載して冷却空気を供給し車内を冷却する冷却ユニットにおいては、冷媒を冷凍サイクル内に供給する圧縮機を機械室内にクッション体を介して配置し、圧縮機から発生する振動を吸収するように構成していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
その具体的な構造は、図7に示すごとく、冷却ユニット(51)の機械室(55)の底面を形成する底板(54)上に固着した固定軸(75)の周囲に上部に小径部(65a)を形成した筒状のクッション体(65)を嵌挿し、このクッション体(65)の前記小径部(65a)の外周に前記圧縮機(57)のベース片(77)を嵌合し、前記クッション体(65)の上面を覆って前記固定軸(75)にストップワッシャ(78)をねじ(80)で固定することで、圧縮機(57)を保持固定するものであった。
【0004】
また、図8に示すように、クッション体をコイルバネ(65´)にして、その上下に支持体上(66)と支持体下(67)を設ける構成とし、支持体上(66)の小径部(66a)により前記同様の圧縮機(57´)のベース片(77´)を嵌合保持し、支持体下(67)を底板(54´)で受け、固定軸(75´)とストップワッシャ(78´)とをねじ(80´)固定するものがあった。
【特許文献1】特開2002−227922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の底板(54)(54´)上に圧縮機(57)(57´)を保持固定する各構成は、双方ともベース片(77)(77´)とストップワッシャ(78)(78´)との間に「遊び空間」(S)(S´)を形成し、圧縮機(57)(57´)の上下振動をクッション体(65)(65´)で緩和するとともに前記「遊び空間」(S)(S´)で吸収するものであったが、車載用として搭載する場合、冷却ユニット(51)(51´)は、車体から生じる振動も大きく受けることになる。
【0006】
この車体からの振動がクッション体(65)(65´)に伝達された際には、「遊び空間」(S)(S´)内でベース片(77)(77´)が上下に移動することで圧縮機(57)(57´)の振動が増幅されるだけでなく、ベース片(77)(77´)の上下移動により、クッション体(65)や支持体上(66)の小径部(65a)(66a)が削られてさらに振幅が大きくなり、その結果、圧縮機(57)(57´)に接続されている冷凍サイクルの吸込み管は、その一端が冷却器側に接続固定されていることから前記振幅を吸収し切れず、圧縮機(57)(57´)に近接している曲成部が折損するに至る可能性があった。
【0007】
本発明は上記の事情を考慮してなされたものであり、圧縮機自体から生じる振動、および車体からの振動をクッション体で吸収するとともに、圧縮機の底板への固定部における振動を抑制して増幅を減衰し、車載用であっても冷凍サイクルの配管などが折損することを防止できる冷却ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の冷却ユニットは、冷凍サイクルにおける圧縮機や凝縮器を配設した機械室と、この機械室の底面を形成する底板と、この底板上に固着した前記圧縮機固定用の固定軸と、この固定軸の周囲に嵌挿され上部に小径部を形成することで水平段部を設けた筒状のクッション体と、このクッション体の前記小径部の外周に嵌合して前記水平段部上に保持される圧縮機のベース片と、このベース片の上部における前記クッション体の小径部の外周に嵌合したクッションスペーサと、前記クッション体およびクッションスペーサの上面を覆って前記固定軸に固定された剛体からなるストップワッシャとからなり、前記ベース片は、前記クッションスペーサによって上下方向の移動を抑制されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷却ユニットが車載用であっても圧縮機自体から生じる振動、および車体からの振動を有効に吸収してユニット本体と圧縮機との位置関係を保持し、冷凍サイクル配管などの折損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。冷却ユニット(1)の正面からの断面図である図1、および図1の側断面図である図2に示すように、薄鋼板製の外板(2)で箱体状の外郭を形成し、高さ方向のほぼ中央部を断熱仕切壁(3)で上下の空間に区分している。
【0011】
前記外板(2)の底部を形成する剛体の底板(4)上には、冷凍サイクル(6)の一環をなす冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(7)と、吐出された高温高圧の冷媒を受けて放熱し凝縮する凝縮器(8)およびこれら凝縮器(8)などの高温部品を冷却する放熱ファン(9)を設置し、機械室(5)としている。
【0012】
前記冷凍サイクル(6)は、図3に示すように、前記圧縮機(7)、凝縮器(8)、減圧器である毛細管(10)、蒸発器(11)、吸込み管(12)やリキッドタンク(18)などを環状に連結して、圧縮機(7)の駆動により冷媒を循環し蒸発器(11)で蒸発させることによって冷気を生成するものであり、前記機械室(5)内の横断面図である図4に示すように、重量物である圧縮機(7)は、前記底板(4)上の幅方向の一側に偏倚して振動吸収用のクッション体(15)を介して固着されている。
【0013】
蛇行曲げした冷媒管を多数のフィンに嵌入させて形成した直方体状の凝縮器(8)は、面積の大きなその前面を外板(2)の前面に形成した吸込み開口(13)に沿わせて立設させ、この吸込み開口(13)と凝縮器(8)との間には埃などを遮蔽するためにフィルター(14)を設けている。
【0014】
凝縮器(8)の背面には、前記圧縮機(7)の運転に同期して駆動する放熱ファン(9)を配置しており、駆動時には、外気を開口(13)から内部に吸引して凝縮器(8)を冷却し、熱交換した空気を外板(2)背部の排気口(16)からユニット外部に放出するようにしている。
【0015】
そして、前記断熱仕切壁(3)から上部の空間は、上面を含む全周壁を発泡スチロールなどの断熱壁(17)で覆い断熱空間とした冷却室(19)としており、そのほぼ中央部には、冷凍サイクルの一部であって前記凝縮器(8)からの冷媒を受けてこれを蒸発させることで低温化し冷気を生成する前記凝縮器(8)と同様の構成とした蒸発器(11)を立設状態で配置しており、その背部には冷却ファン(20)およびケーシング(21)を断熱仕切壁(3)の平面部位に前記蒸発器(11)に併置して立設している。
【0016】
蒸発器(11)の載置部に対応する前記断熱仕切壁(3)の上面は、一側に向かって下方傾斜させた樋部(22)を形成しており、蒸発器(11)に付着する霜の融解水を集めて下方の機械室(5)内の圧縮機(7)の上部に設けた蒸発皿(24)に導くように排水口(23)を設けている。
【0017】
冷却室(19)における蒸発器(11)の立設位置のやや前方に位置する側壁上部には、冷却対象物、例えば、断熱側壁(17)に相対向して配置した低温貯蔵庫(25)内からの戻りダクト(26)に連結される冷気の戻り口(27)を開口させ、戻り風路(28)を介して蒸発器(11)から冷却ファン(20)のケーシング(21)に向かうようにしている。冷却ファン(20)のケーシング(21)からは吹き出し風路(30)と冷気吹き出し口(31)およびこれに繋がる吐出ダクト(29)を介して前記低温貯蔵庫(25)内に冷気を供給し、これを冷却するようにしている。
【0018】
なお、前記冷却対象物としての低温貯蔵庫(25)は、断熱箱体の内部を冷蔵食品の収納室とし、その前面開口に設けた扉を開閉することで室内の冷却貯蔵品を取り出し、あるいは収納貯蔵して使用する業務用あるいは家庭用の貯蔵庫であるが、冷却対象物はこれに限るものではなく、その形態や設置スペースから、冷却ユニットと冷却対象物とが一体化できない構成のものであればよく、床に敷いて使用する冷却マットや、小部屋や室内の一部の空気冷却に用いることを目的としたスポットクーラーでもよい。また、これらの冷却対象物を戸外で使用する場合を考慮すれば、電源は、交流電源に限らず電池を使用するようにしてもよい。
【0019】
前記冷却室(19)の上面の断熱壁(17)の上部は、基板など電気部品の収納部(32)とするとともに前面には操作パネル(33)を配置して冷却ユニット(1)の運転を制御操作するようにしている。
【0020】
以上の構成により、冷却ユニット(1)における圧縮機(7)を運転した場合には、凝縮器(8)からの冷媒が蒸発器(11)で蒸発することで冷気を生成し、この冷気を冷却ファン(20)によって冷気吹き出し口(31)から低温貯蔵庫(25)などの冷却対象物に送流して冷却し、貯蔵室内などを循環後は冷気の戻り口(27)から冷却室(19)内の蒸発器(11)に流入させるものであり、再び冷却して吹き出す冷気循環をおこなう。
【0021】
しかして、前記機械室(5)における圧縮機(7)部分の側面図である図5、および圧縮機(7)の固定部の拡大図である図6に示すように、圧縮機(7)は、鋼板製の剛体である底板(4)上に固着した固定軸(35)部に取り付けられている。固定軸(35)は、金属などの剛体からなり下端の鍔部を底板(4)にスポット溶接などで固着し、上方にはねじ部を形成したボルト形状をなしており、この固定軸(35)の周囲には、円筒状をなし厚肉の内部に適宜の中空部を形成して弾力性を持たせるようにした塩素化ブチルゴムなどの弾性体からなる前記クッション体(15)を嵌挿している。
【0022】
クッション体(15)は、その上部に所定厚み寸法の小径部(15a)を形成することで、この小径部(15a)と外径部との間に水平段部(15b)を設けており、前記圧縮機(7)の下方周縁の三方から外方に延びるそれぞれのベース片(36)に形成した透孔(36a)を小径部(15a)の外周に嵌合させ、各透孔(36a)の外周縁を前記水平段部(15b)上に載置させることで、圧縮機(7)の振動を吸収するように保持している。
【0023】
クッション体(15)の水平段部(15b)上に載置したベース片(38)の上部には、クッション体(15)と同材質の弾性体からなり、その外径をクッション体(15)とほぼ同等にして、且つ前記小径部(15a)とほぼ同等の内径を有し、設置の際にはクッション体(15)の上面とほぼ同位置になる厚みを有する円環状のクッションスペーサ(37)を前記小径部(15a)の外周部に嵌合して設置する。
【0024】
前記クッション体(15)およびクッションスペーサ(37)の上面には、これらを覆うように金属などの剛体からなる円盤状のストップワッシャ(38)を配置し、このストップワッシャ(38)をスプリングワッシャ(39)を介して固定軸(35)にナット(40)でねじ固定する。
【0025】
この固着により、圧縮機(7)の前記ベース片(36)は、前記クッション体(15)の水平段部(15b)とクッションスペーサ(37)との間に挟着されることになり、従来存在していた「遊び空間」(S)がなくなるので振動による上下方向の移動が規制され、クッション体(15)の小径部(15a)を削り取る不具合を軽減する。
【0026】
同時に、クッション体(15)やクッションスペーサ(37)の弾性によって、冷凍サイクル運転時の圧縮機(7)の振動を吸収するとともに、運転時におけるトラックなどの車体から冷却ユニット(1)の底板(4)に伝達される振動についても、底板(4)に対する圧縮機(7)は、その上下の位置変動が抑制されるので、蒸発器(11)など他の冷凍サイクル部材とを連結している吸込み管(12)など配管の接続部間の距離を変動しないように保持することができる。
【0027】
したがって、圧縮機(7)近傍の吸込み管(15)などの配管に振幅による応力が掛かることを大幅に抑制でき、その破損を防ぐことができるものである。
【0028】
なお、前記実施例においては、冷却室(19)を機械室(5)の上部に配設したが、これに限らず、機械室(5)を断熱仕切壁(3)を介して冷却室(19)の上部に配設するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の1実施形態を示す冷却ユニットの正面からの断面図である。
【図2】図1の側断面図である。
【図3】図1に配設した冷凍サイクルの概略構成図である。
【図4】図1における下部機械室部分の横断面図である。
【図5】図2の機械室における圧縮機部分の側面図である。
【図6】図5の圧縮機固定部の拡大図である。
【図7】従来の圧縮機固定部の構造を示す拡大図である。
【図8】他の従来の圧縮機固定部の構造を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0030】
1 冷却ユニット 2 外板 3 断熱仕切壁
4 底板 5 機械室 6 冷凍サイクル
7 圧縮機 8 凝縮器 9 放熱ファン
11 蒸発器 12 吸込み管 15 クッション体
15a 小径部 15b 水平段部 17 断熱壁
19 冷却室 20 冷却ファン 25 低温貯蔵庫
35 固定軸 36 ベース片 37 クッションスペーサ
38 ストップワッシャ 40 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルにおける圧縮機や凝縮器を配設した機械室と、この機械室の底面を形成する底板と、この底板上に固着した前記圧縮機固定用の固定軸と、この固定軸の周囲に嵌挿され上部に小径部を形成することで水平段部を設けた筒状のクッション体と、このクッション体の前記小径部の外周に嵌合して前記水平段部上に保持される圧縮機のベース片と、このベース片の上部における前記クッション体の小径部の外周に嵌合したクッションスペーサと、前記クッション体およびクッションスペーサの上面を覆って前記固定軸に固定された剛体からなるストップワッシャとからなり、前記ベース片は、前記クッションスペーサによって上下方向の移動を抑制されることを特徴とする冷却ユニット。
【請求項2】
断熱壁体で形成され冷凍サイクルの蒸発器を収納した冷却室を機械室の下部に配置したことを特徴とする請求項1記載の冷却ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−185775(P2009−185775A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29124(P2008−29124)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】