説明

冷却晶析装置

当初温度Tを有するブラインから、少なくとも1部分を個体として分離するためのシステムと方法であり、前記のブラインを受け取る晶析装置インレット、前記のブラインの少なくとも一部から発生した第一の圧力P1を有する蒸気を排出する晶析装置第一アウトレット、および、前記の当初温度Tよりも低い最終温度T2を有するスラリーを排出する晶析装置第二アウトレットから成る晶析装置と、前記スラリーを受け取る分離器インレット、前記スラリーから分離した個体の一部分を排出する分離器第一アウトレット、および、実質的にTと等しい温度を有する残余液体を排出する分離器第二アウトレットから成る分離器と、前記の蒸気を受け取るコンプレッサーインレットと、前記の圧力P1より高い第二圧力P2を有する圧縮蒸気を排出するコンプレッサーアウトレットから成るコンプレッサーと、前記圧縮蒸気を受け取るコンデンサー第一インレット、前記分離器から排出された残余液体を受け取り、前記圧縮蒸気から放出された潜熱を吸収し、圧縮蒸気を濃縮するコンデンサー第二インレット、T1に実質的に等しい温度を有するアウトレット液体を排出するコンデンサーアウトレットとから成るコンデンサーから構成されるシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、蒸気圧縮冷却により、ブラインから個体を生産するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
商業ベースでの価値ある塩とミネラルを、天然に産生される塩水(ブライン)から太陽蒸発により生産する方法は何千年に亘って全世界で行われている。太陽蒸発を使用する例として、最も知られているのは、海水から通常の塩(NaCl 塩化ナトリウム)を生産する場合がある。即ち、海水を大きい浅い池に入れて、その水分を天然蒸発により取り除いて塩を析出させて収穫する場合である。最近では、別の例として、例えば、死海において、太陽蒸発により結晶化されたミネラルからカリウム塩を生産する場合がある。
【0003】
浅い池での太陽蒸発は、時々、池での冬冷却と併用されて使用されるものでもあり、極めて経済的な方法であるが、気候条件が適切であることに加えて、不透水土を含む大きくて平らな表面が使えることが必要である。適切な気候条件としては、年間の少なくとも1部分の期間において乾燥した暑い気候が必要であり、年間を通して雨などが少ししか降らないことである。これらの条件が整わない場合には、可燃性の燃料(例えば、泥炭、木材など)を使う必要があるが、これらの燃料資源は不経済であり、高価であり、しかも、容易には、再生できないものである。
【0004】
死海でのオペレーションの場合、死海の海水から太陽池を使ってカーナライト(KClMgCl26・(H2O))を生産する。カーナライトを析出させた後の、池に残っている母液を「エンドブライン(EB, End Brine)」として収穫している。このエンドブラインは、死海に含まれるミネラルの飽和溶液であり、そのために、濃度は比較的高い。このエンドブライン(または母液)の実際の濃度は、水源ごとに異なるが、通常の場合、22%乃至35%である。このエンドブラインには貴重なミネラルが含まれているが、ブラインの蒸気圧が低いために、通常の太陽蒸発の方法では、それ以上の抽出は不可能である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、当初温度T1を有するブラインから、少なくとも1部分を個体として分離するためのシステムが提供され、このシステムは、
前記のブラインを受け取る晶析装置インレット、前記のブラインの少なくとも一部から発生した第一の圧力P1を有する蒸気を排出する晶析装置第一アウトレット、および、前記の当初温度T1よりも低い最終温度T2を有するスラリーを排出する晶析装置第二アウトレットから成る晶析装置と、
前記スラリーを受け取る分離器インレット、前記スラリーから分離した個体の一部分を排出する分離器第一アウトレット、および、実質的にT2と等しい温度を有する残余液体を排出する分離器第二アウトレットから成る分離器と、
前記の蒸気を受け取るコンプレッサーインレット、前記の圧力P1よりも高い第二の圧力P2を有する圧縮蒸気を排出するコンプレッサーアウトレットから成るコンプレッサーと、
前記圧縮蒸気を受け取るコンデンサー第一インレット、前記分離器から排出された残余液体を受け取り、前記圧縮蒸気から放出された潜熱を吸収し、圧縮蒸気を濃縮するコンデンサー第二インレット、T1と実質的に等しい温度を有するアウトレット液体を排出するコンデンサーアウトレットから成る。
【0006】
各晶析装置を、晶析装置インレットと晶析装置第二アウトレットとの間に直列に配置した複数の晶析装置ユニットで構成してもよい。各晶析装置ユニットは、それぞれが受け取ったブラインの温度を、温度△Tずつ下げていく構成になっており、第一の晶析ユニット以外の晶析装置ユニットは、温度がユニット列内の先行する晶析装置ユニットで受け取ったブラインの温度よりも低い温度のブラインを受け取り、列内の先行する晶析装置ユニットから排出された蒸気の圧力よりも低い圧力の蒸気を排出するような構成となっている。オプションとして、1つ以上の晶析装置ユニットが、直列に配置された複数の個別晶析装置で構成されていてもよい。
【0007】
コンプレッサーを複数のコンプレッサーユニットで構成してもよい。1つ以上のコンプレッサーユニットが、各コンプレッサーユニットがそれぞれに対応する晶析装置ユニットと流体連通されている、直列に配置された複数の個別コンプレッサーで構成されていてもよい。
【0008】
コンデンサーを直列に配置された複数のコンデンサーユニットで構成してもよい。各コンデンサーユニットをコンデンサー第一インレットとコンデンサーアウトレットとの間で直列に配置された複数の個別コンデンサーで構成して、各コンデンサーがそれぞれに対応するコンプレッサーと流体連通されていてもよく、各コンデンサーユニットが受け取った液体の温度を、温度△Tずつ上げるような構成として、最後のコンデンサーユニット以外のユニット列内の先行するそれぞれのコンデンサーユニットが受け取る液体の温度より高い温度を有する液体と、列内の先行するコンデンサーユニットが受け取る蒸気圧よりも高い圧力を有する圧縮蒸気を受け取り、前記の圧縮蒸気は、対応するコンプレッサーユニットから排出されるように構成されているようにしてもよい。コンデンサーのサイズは、対応するコンプレッサーと晶析装置ユニットに適合するように決定してよい。
【0009】
この温度差は、全部の複数晶析装置ユニットを通して同じであってもよいし、前記の複数晶析装置ユニットのそれぞれの間で異なっていてもよい。
【0010】
前記の圧縮蒸気の圧力と、各コンプレッサーユニットで受け取った蒸気の圧力との圧縮比が、前記の複数のコンプレッサーユニット間において実質的に等しくなるように構成してもよい。
【0011】
前記システム内に真空を発生させて、その状態を維持するための手段を設けてもよい。
【0012】
前記システムを、第二の可溶性の個体を前記コンデンサーに追加する手段を設け、前記の追加がない時の個体の値を基準にして、必要とされる圧縮比P2/P1を低減させるようにしてもよい。
【0013】
本発明の第二の態様によれば、当初温度T1を有するブラインから少なくとも1部分を個体として分離するための方法が提供され、前記方法は、
第一の圧力P1を有する蒸気流れを発生する前記ブラインの少なくとも1部分と、前記第一温度T1よりも低い第二温度T2を有するスラリーとを蒸発させることと、
実質的にT2と等しい温度を有する残余液体を発生させる前記スラリーからの前記個体の一部を分離することと、
前記蒸気を圧縮して、それにより、その圧力をP1からP2に上昇させることと、
前記の残存液体に前記の圧縮蒸気から放出された潜熱を吸収させることで、前記圧縮蒸気を濃縮し、T1に実質的に等しい温度を有するアウトレット液体を排出することから成る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
発明を理解し、実際に、どのように実施されるかを示すために、非限定的な例として、以下において、添付図面を参照しながら、実施形態を記載する。
【図1】図1は、当該発明によるシステムの模式図である。
【図2】図2は、図1に示されたシステムの第一段の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1と図2は、ブラインから、少なくとも一部を個体として分離するためのシステム10を示している。上記システム10は、4個のサブシステム、すなわち、晶析装置サブシステム20、コンプレッサーサブシステム30、コンデンサーサブシステム40、分離器サブシステム50から成る。
【0016】
前記の晶析装置サブシステム20は、直列に配置されたN個の晶析装置ユニット20a、20b、…20nから成り、その晶析装置ユニット20a乃至20nは、互いに隣接する晶析装置ユニットのそれぞれと流体連通している。第一晶析装置ユニット20aは、ソースブラインBを受け取るソースインレット21a、最初の蒸気流Vaを排出する第一の蒸気アウトレット23a、最初のスラリー流Saを排出する第一スラリーアウトレット25aから成る。前記晶析装置ユニット20b乃至20nは、スラリーSa乃至Sn−1のそれぞれを受け取るスラリーインレット21b乃至21n、水蒸気Vb乃至Vnのそれぞれを排出するための蒸気アウトレット23b乃至23n、スラリーSb乃至Snのそれぞれを排出するスラリーアウトレット25b乃至25nから成る。
【0017】
各晶析装置ユニット20a乃至20nは、受け取ったスラリー溶液の温度を△Tずつ下げて、その下げた温度で固定されるようになっており、その場合の温度は、数度に達してもよい。しかし、このシステム10では、各晶析装置ユニットが、受け取った溶液に対して異なった温度勾配を示すように設計されており、その場合には、温度の低下幅は、△Ta乃至△Tnとなる。
【0018】
各晶析装置ユニット20a乃至20nは、一定の圧力P1a乃至P1nを維持するように構成されており、この晶析装置ユニット20a乃至20n内の蒸気Va乃至Vnの圧力によって定まる。各ユニットごとに起こるスラリーの温度低下のために、蒸気圧は、晶析装置ユニット20aから20nに進むにつれて次第に低下していき、その結果、第一ユニット20a内の圧力P1aが最も高くなり、最後のユニット20nの圧力P1nが最も低くなる。
【0019】
分離器サブシステム50は、排出されているスラリーSaを受け入れるための最後の晶析装置ユニット20nと流体連通した構造になっているスラリーインレット51から成る。このサブシステム50は、さらに、スラリーSnから分離された、ある一定量の個体Sを排出するための個体アウトレット53と、残存液体Lを排出する液体アウトレット55から成る。
【0020】
コンプレッサーサブシステム30は、N個のコンプレッサーユニット30a乃至30nと、上記の晶析装置ユニット20aと20nのそれぞれに対応する蒸気アウトレット23a乃至23nから排出された水蒸気Va乃至Vnを受け入れる蒸気インレット31a乃至31nから成る。コンプレッサーユニット30a乃至30nは、さらに、圧縮蒸気流れV’a乃至V’nのそれぞれを排出するための圧縮蒸気アウトレット33a乃至33aから成る。
【0021】
各コンプレッサーユニット30a乃至30nは、異なった条件下で要求される温度や圧力などの特定の作動条件に従って動作するように設計されている。このコンプレッサーユニットは、さらに、比較的高い体積流量の蒸気を受け取るように設計されている。例えば、100m3/s以上、さらには、150m3/sから320m3/sの範囲の流量の蒸気を受け取る能力を有する種類のユニットである。その点について、本件のコンプレッサー30a乃至30nについては、本申請者がすでに出願している特許出願(PCT/IL2006/000248)に記載されている種類のものであり、この特許出願の内容は、本出願においても一体的に参照されるものである。
【0022】
上記コンプレッサーユニット30a乃至30nは、受け取った蒸気を、比較的低い圧縮圧力比で(この圧力比が、コンプレッサーユニット間で同じの場合もあり、異なる場合もある)圧縮する構成となっている。圧縮比は、例えば、2以下、特に、1.3<R<1.5の範囲である。
【0023】
上記コンデンサーサブユニット40は、直列に配置されたN個のコンデンサーユニット40a乃至40nから成り、各コンデンサーユニット40a乃至40nは、互いに隣接するコンデンサーと流体連通され、さらに、最後のコンデンサーユニットは、分離器ユニット50と流体連通されている。コンデンサーユニット40a乃至40nは、液体Lb乃至Lを受け取る液体インレット41a乃至41nと、液体La乃至Lnを排出する液体アウトレット43a乃至43nと、コンプレッサーユニット30a乃至30aのそれぞれから排出された圧縮蒸気V’a乃至V’nを受け取る蒸気インレット45a乃至45nから成る。
【0024】
各コンデンサー40a乃至40nは、各晶析装置ユニット20a乃至20nにより引き起こされた温度低下分の△Tに対応させて、受け取った液体溶液の温度を△T度だけ上昇させるように構成されている。各コンデンサーユニットでは、晶析装置ユニット20a乃至20nのそれぞれの温度を低下させた場合と同様に、受け取った溶液の温度を上昇させてもよい。但し、この差異は、それぞれ対応する晶析装置ユニット間での温度低下の差異と実質的に等しいものであることが必要である。
【0025】
各コンデンサーユニット40a乃至40nは、それぞれのユニット内の圧力P1a乃至P1nが一定に保たれるように構成されている。この圧力は蒸気V’a乃至V’nの圧力により決定され、その圧力は、コンデンサーユニット40nから40aに進むにつれて増加していき、その結果、最後のユニット40nの圧力P2nが最も低い圧力となり、最初のユニット40a内の圧力P2aが最も高い圧力となるが、これは、あるコンデンサーユニットから次のコンデンサーユニットに液体が移動する時の温度上昇が原因である。
【0026】
このように、前記システム10は、事実上、各ステージが、3個のユニット、つまり、1個の晶析装置ユニット、1個のコンプレッサーユニット、1個のコンデンサーユニットで構成されるように配置されたN個のステージ1乃至N(独立な部品である分離器ユニットは除外)から成るマルチステージ・システムなのである。例えば、第一ステージは、第一晶析装置ユニット20a、第一コンプレッサーユニット30a、第一コンデンサーユニット40aで構成される。但し、各ステージが、1個以上の晶析装置、1個以上のコンプレッサー、1個以上のコンデンサーで構成されていてもかまわない。
【0027】
前記システム10は、さらに、晶析装置サブシステム20、コンプレッサーサブシステム30、コンデンサーサブシステム40内に真空を設けて維持する手段から構成されていてもよい。特に、このシステム10を、内部からの濃縮不能ガスを連続的に除去するために、適当な種類の外部真空ポンプ(未表示)を装着した構成にしてもよい。
【0028】
このシステム10では、第二の可溶性個体をコンデンサーユニット40a乃至40nの全部または部分に追加した構成でもよい。この個体を追加することでコンデンサーユニット内の溶液の濃度を上昇させ(さらに、沸点上昇を起こさせる)、その結果、ユニット内の蒸気圧を下げることになる。上記の蒸気圧の低下は必要な圧縮作業負担(これは、対応するコンプレッサーユニットが行うものであるが)を軽減させる。
【0029】
稼働中において、溶質濃度がC1であり温度T1のブラインBを第一の晶析装置ユニット20aのソースインレット21aに導入する。以下に述べるように、ユニット内においては、溶液が温度T1aにまで冷やされ、ブラインBの溶質が部分的に析出されて、スラリーSaが排出されることになる。冷却中に発生した蒸気Vaは、蒸気圧P1aを有し、蒸気アウトレット23aから排出され、第一コンプレッサーユニット30aに入る。このコンプレッサーユニット30a内において、この蒸気Vaは、条件式P2a=P1a・Rを満たすユニット30aの圧縮圧力比により定まる蒸気圧P2aを有するV’aに圧縮される。圧縮された蒸気V’aは、コンデンサーユニット40aの蒸気インレット45aに入る。このコンデンサーにおいて、圧縮された蒸気V’aが濃縮(吸収)されている間に、その潜熱は、液体Lbに吸収されて、その結果、その温度T2aを、それよりも実質的に等しいか、わずかに高い温度T1の値まで引き上げることになる。
【0030】
スラリーSaのほうは、温度T1a、ブラインBの濃度C1よりも高い全塩濃度C1aで、第一晶析ユニット20aから排出される。そのあと、このスラリーSaは、隣接する晶析装置ユニット20bに入る。最後の晶析装置ユニット20nから排出されたスラリーSnの温度T1nは第一の晶析装置20aに供給されたブラインBの温度T1よりもかなり低い。この温度差は、晶析装置ユニットのカスケード20a乃至20nを流れるスラリーの緩慢な温度低下により起こる。この温度T1nの下限温度はスラリー溶液の沸点上昇(BPE)により定義され、水蒸気圧が純水の氷点に対応する蒸気圧に達することを防止する必要性により定まる。温度がT1nになることで、溶質の少なくとも1部が析出されることが可能となり、分離器サブシステム50によりさらなる分離が進むことになる。
【0031】
上記の記述と同様のことを、前記システム10のステージ2乃至Nのそれぞれに適用することができ、その過程が、対応する晶析装置ユニット、コンプレッサーユニット、コンデンサーユニット内で起こることになる。
【0032】
最後の晶析装置ユニット20nから排出されたスラリーSnは、分離器ユニット50のスラリーインレット51に入る。分離器ユニット50では、析出個体がスラリーSnから分離され、そして、実質的に温度T1nに等しい温度T2を有する残存液体Lフェーズは、濃縮蒸気V’nより放出される潜熱の吸収体として使用されて、上記で述べたように、最後のコンデンサーユニット40nに導入される。
【0033】
すでに説明したように、液体L乃至Laがコンデンサーユニット40nに進むにつれて、その液体の温度は徐々に上昇し温度T2からT2aになる。上記液体の濃度は、液体がコンデンサー40nから40aに進むにつれて、そこで起こっている凝結作用のために、低下する。従って、排出された液体Laは、分離器50により分離された個体を除いて、ブラインBと同様のパラメーターを有する。分離された個体量は、スラリー内の溶質の全量に比べて少ない。そのために、液体Laの濃度は、システムに供給されたブラインBの濃度よりほんのわずかに低い。
【0034】
上記で述べたシステム10は、例えば、死海のエンドブライン溶液からカーナライトを回収するために使用してもよい。温度T1が35℃、全溶質濃度C1が35%であるエンドブラインを6ステージのシステム10(N=6)に入れる。エンドブラインが晶析装置サブシステム20を進むにつれて、エンドブライン温度は徐々に下がり、その結果、最後の6番目の晶析装置ユニット20nから排出されるスラリーSnの温度T1nは、およそ14℃となる。従って、各晶析ユニットごとにEB温度を△T(3.5℃)だけ降下させる。スラリーSnは分離器サブユニット50に入り、その中で、少量の個体が分離され、残った液体がコンデンサーサブシステム40に移される。この第一コンデンサーユニット40aから排出された液体Laは、実質的に35℃である温度T2aを有している。
【0035】
表1は、上記で記載した例の場合について、システムのパラメーターを非限定例として要約したものである。
【0036】
【表1】

1000トンのエンドブラインからの全カーナライト量は、上記例にリストされているように18.2トンである。カーナライトは、最終販売可能製品である塩化カリウム(KCl)を生産する際の中間材料であるので、ここでは、さらにKClに加工する。カーナライト1トンがカリウム0.21トンに加工される(80%の全体回収の工程を仮定)。従って、1000トンのエンドブラインから生産される全販売可能な塩化カリウムは、3.9トンに達する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
当初温度T1を有するブラインから少なくとも1部分を個体として分離するためのシステムであって、
前記のブラインを受け取る晶析装置インレット、前記のブラインの少なくとも一部から発生した第一の圧力P1を有する蒸気を排出する晶析装置第一アウトレット、および、前記の当初温度T1よりも低い最終温度Tを有するスラリーを排出する晶析装置第二アウトレットから成る晶析装置と、
前記スラリーを受け取る分離器インレット、前記スラリーから分離した個体の一部分を排出する分離器第一アウトレット、および、実質的にT2と等しい温度を有する残余液体を排出する分離器第二アウトレットから成る分離器と、
前記の蒸気を受け取るコンプレッサーインレット、前記の圧力P1よりも高い第二の圧力P2を有する圧縮蒸気を排出するコンプレッサーアウトレットから成るコンプレッサーと、
前記圧縮蒸気を受け取るコンデンサー第一インレット、前記分離器から排出された残余液体を受け取り、前記圧縮蒸気から放出された潜熱を吸収し、圧縮蒸気を濃縮するコンデンサー第二インレット、T1に実質的に等しい温度を有するアウトレット液体を排出するコンデンサーウトレットから成るコンデンサーにより構成されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記晶析装置は、前記晶析装置インレットと前記晶析装置第二アウトレットとの間に直列に配置された複数の晶析装置ユニットから成り、各晶析装置ユニットが受け取ったブラインの温度を、温度△Tずつ下げるような構成となっており、第一の晶析装置ユニット以外の前記晶析装置ユニットは、温度が列内の先行する前記晶析装置ユニットで受け取ったブラインの温度よりも低い温度のブラインを受け取り、列内の先行する前記晶析装置ユニットから排出された蒸気の圧力よりも低い圧力の蒸気を排出するような構成となっていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コンプレッサーが、複数のコンプレッサーユニットから成り、各コンプレッサーユニットが、それぞれ対応する前記晶析装置ユニットと流体連通していることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コンデンサーは、前記コンデンサー第一インレットと前記コンデンサーアウトレットとの間に直列に配置された複数のコンデンサーユニットから成り、各コンデンサーは、それぞれ対応する前記コンデンサーユニットと流体連通しており、各コンデンサーユニットは、受け取った前記液体の温度を△Tずつ上昇させ、最後のコンデンサーユニット以外の列内の先行するそれぞれのコンデンサーユニットが受け取る液体の温度より高い温度を有する液体と、列内の先行する前記コンデンサーユニットが受け取る蒸気圧よりも高い圧力を有する圧縮蒸気を受け取り、前記の圧縮蒸気は、対応する前記コンプレッサーユニットから排出されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記の温度差△Tが、全部の前記複数晶析装置ユニットを通して同じであることを特徴とする請求項2乃至4に記載のシステム。
【請求項6】
前記の温度差△Tは、前記の複数晶析装置ユニットのそれぞれの間で異なっていることを特徴とする請求項2乃至5に記載のシステム。
【請求項7】
各コンプレッサーユニットから排出された前記の圧縮蒸気の圧力と各コンプレッサーユニットで受け取った蒸気の圧力との圧縮比が前記の複数のコンプレッサーユニット間において実質的に等しいことを特徴とする請求項3乃至6に記載のシステム。
【請求項8】
さらに、前記システム内に真空を発生させ、その状態を維持するための手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
さらに、第二の可溶性の個体を前記コンデンサーに追加する手段が設けられ、前記の追加がない場合の値を基準にして、必要とされる圧縮比P2/P1を低減させる手段からなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
当初温度T1を有するブラインから少なくとも1部分を個体として分離するための方法であって、
第一の圧力P1を有する蒸気流れを発生する前記ブラインの少なくとも1部分と、前記第一温度T1よりも低い第二温度T2を有するスラリーとを蒸発させること、
実質的にT2と等しい温度を有する残余液体を発生させる前記スラリーからの前記個体の一部を分離すること、
前記蒸気を圧縮して、その圧力をP1からP2に上昇させること、
前記の残存液体に前記の圧縮蒸気から放出された潜熱を吸収させることで、前記圧縮蒸気を濃縮し、T1に実質的に等しい温度を有するアウトレット液体を排出することから成ることを特徴とする方法。
【請求項11】
さらに、各晶析装置ユニットは、受け取ったブラインの温度を、温度△Tずつ下げるような構成となっており、前記第一晶析晶析ユニット以外の前記晶析装置ユニットは、温度が列内の先行する前記晶析装置ユニットで受け取ったブラインの温度よりも低い温度のブラインを受け取り、列内の先行する前記晶析装置ユニットから排出された蒸気の圧力よりも低い圧力の蒸気を排出するような構成となっている、直列に配置された複数の前記晶析装置ユニットにより前記ブラインを蒸発させることから成ることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記方法は、各コンプレッサーユニットがそれぞれ対応する前記晶析装置ユニットと流体連通している前記の複数のコンプレッサーユニットにより前記蒸気を圧縮することから成ることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに、各コンデンサーは、それぞれ対応する前記コンデンサーユニットと流体連通しており、各コンデンサーユニットは、受け取った前記液体の温度を△Tずつ上昇させ、最後のコンデンサーユニット以外の列内の先行するそれぞれの前記コンデンサーユニットが受け取る液体の温度より高い温度を有する液体と、列内の先行する前記コンデンサーユニットが受け取る蒸気圧よりも高い圧力を有する圧縮蒸気を受け取り、前記の圧縮蒸気は、対応する前記コンプレッサーユニットから排出されるように構成されている、直列に配置された前記の複数のコンデンサーユニットにより、前記の圧縮蒸気を濃縮することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記の温度差△Tは、前記の全部の複数晶析ユニットを通して同じであることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記の温度差△Tは、前記の複数晶析ユニットのそれぞれの間で異なっていることを特徴とする請求項11乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
各コンプレッサーユニットから排出された前記の圧縮蒸気の圧力と各コンプレッサーユニットで受け取った蒸気の圧力との圧縮比が前記の複数のコンプレッサーユニット間において実質的に等しいことを特徴とする請求項12乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
さらに、前記システム内に真空を発生させ、その状態を維持するための手段が設けていることを特徴とする請求項10乃至16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
第二の可溶性の個体を前記コンデンサーに追加する手段を設け、前記の追加がない時の個体の値を基準にして、必要とされる圧縮比P2/P1を低減させることを特徴とする請求項10乃至17のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−515646(P2012−515646A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547050(P2011−547050)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/IL2009/001174
【国際公開番号】WO2010/084484
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(507283023)アイ・ディ・イー・テクノロジーズ・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】