説明

冷却装置

【課題】冷却前に密閉容器への移し替えを要することなく、通常の被冷却物製造過程で用いられる容器をそのまま使用して冷却することができる冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却水が貯留された冷却槽14と、冷却槽14の上側に設けられて、容器60の両側端部60aを支持する一対の長手方向に配設された搬送部材34と、搬送部材34を駆動する駆動手段30と、を備え、容器60の一部を冷却槽14に浸しながら、駆動手段30による該搬送部材34の駆動により容器60を変動させることにより、冷却を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に収容された被冷却物を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の被冷却物を冷却する冷却装置として、例えば特許文献1ないし特許文献3に記載されたものが知られている。かかる冷却装置では、被冷却物を収容する瓶状や円筒状の密閉容器をコンベアで搬送しながら且つ、密閉容器を揺動等させながら冷却媒体に浸して、冷却している。
【0003】
また、特許文献4に記載された冷却装置では、流動状をした調理済み食品などの被冷却物が投入され底壁部と周壁部がウオータージャケットに形成される鍋状の被冷却物容器と、この被冷却物容器を振動させるための加振手段を備えており、被冷却物容器を振動することで、該被冷却物容器内に投入された被冷却物を撹拌してウオータージャケットに接するようにして、冷却している。
【特許文献1】特開昭62−268977号公報
【特許文献2】特開平9−14809号公報
【特許文献3】特許第3286561号公報
【特許文献4】特開2002−233346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1ないし特許文献3で示される冷却装置は密閉容器に充填された被冷却物を冷却対象としているために、冷却媒体へ浸す場合に冷却媒体内において密閉容器を比較的自由に揺動等させながら搬送させていくことが可能であるが、密閉容器に充填する必要があるため、冷却前に容器への移し替え、容器の密閉作業といった作業が必要になる。
【0005】
同様に、特許文献4で示されるものも、冷却装置に備え付けられた被冷却物容器への移し替えといった余分な作業が必要となる。さらには、冷却終了後の被冷却物容器の洗浄といった作業も必要になる。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、冷却前に密閉容器への移し替えを要することなく、通常の被冷却物製造過程で用いられる容器をそのまま使用して冷却することができる冷却装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、容器に収容される被冷却物を冷却する冷却装置において、
冷却媒体が貯留された冷却槽と、
前記冷却媒体の上側に設けられて、前記容器の両側端部を支持する一対の長手方向に配設された支持手段と、
前記支持手段を駆動する駆動手段と、
を備え、容器の一部を冷却槽内で冷却媒体に浸しながら、前記駆動手段による該支持手段の駆動により容器を変動させることにより、冷却を行なうことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記駆動手段が、前記支持手段の長手方向に直交する水平な軸の回りで支持手段を揺動させる揺動運動と、前記支持手段の長手方向に平行な軸の回りで支持手段を揺動させる揺動運動と、支持手段の上下運動と、支持手段の長手方向に沿った長手運動と、の内の少なくとも1つの運動を発生させることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2の前記駆動手段が、前記揺動運動、上下運動及び長手運動の少なくとも2つの運動を同時に組み合わせて発生させることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2または3の前記駆動手段が、前記揺動運動、上下運動及び長手運動の少なくとも単独運動または2つ以上の組み合わせ運動のいずれかの運動を時間的に替えて発生させることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかのものにおいて、前記冷却槽の上方に配設されて、エアを流出されるエアノズルをさらに備え、該エアノズルからのエアによって容器内の被冷却物からの蒸気を吹き飛ばすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長手方向に配設された支持手段によって容器の両側端部を支持することによって、上方が開放した開放容器をも冷却槽内の冷却媒体に浸すことが可能になり、容器を介して冷却媒体と被冷却物との間の熱交換により、被冷却物を冷却することができる。同時に、上記支持手段を駆動手段によって駆動して、容器を変動させることにより、容器内部の熱を均一化させると共に、被冷却物の濃度も均一化して攪拌効果を図り、効率的に短時間に冷却を行なわせることができるようになる。
【0013】
駆動手段による支持手段の駆動は、支持手段の長手方向に直交する水平軸の回りで支持手段を揺動させる揺動運動と、前記支持手段の長手方向に平行な軸の回りで支持手段を揺動させる揺動運動と、支持手段の上下運動と、支持手段の長手方向に沿った長手運動といった運動とすることにより、支持手段の構成を複雑にせずに、容器を変動させることができる。
【0014】
また、前記揺動運動、上下運動、長手運動といった運動の中で任意の2つの運動を組み合わせた運動としたり、または、単独または組み合わせた運動を時間的に替えていくことにより、より効果的に容器内の被冷却物の攪拌効果を得ることができる。
【0015】
また、エアノズルからのエアによって、容器内の被冷却物からの蒸気を吹き飛ばすことにより、被冷却物からの蒸気が装置内で結露することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1ないし図3は本発明による冷却装置の全体を表す図である。この例では、冷却装置10は、上下2段を構成するフレーム12が設けられており、各段において、2個の容器60であるバットを同時に冷却することができるようになっている。しかしながら、かかる段及び同時に冷却することができる容器の数は、任意であり、1以上の任意の数とすることができる。
【0018】
冷却装置10の上下各段には、それぞれ冷却水等の冷却媒体が貯留された冷却槽14が配置される。
【0019】
そして、各冷却槽14に貯留された冷却水の上側には、容器60の両側端部のフランジ60aを支持する一対の長尺状のレール22,22が設けられる。さらに、各レール22内に無端状ベルトといった前後動可能に往復された支持手段となる搬送部材24が長手方向に配設される。搬送部材24は、前後に離間されて配設された駆動プーリ26と従動プーリ28との間を掛け渡されており、また、搬送部材24には、所定間隔おきに、容器60のフランジ60aが載置されるための爪25が設けられている。
【0020】
レール22の上方には、搬送部材24を駆動する駆動手段30が設けられる。駆動手段30は、搬送部材24を前後動させるために、前記駆動プーリ26に出力軸が連結される前後動駆動モータ32と、各レール22の前後端に取り付けられた取付ブラケット22a、22aにそれぞれ一端が枢着される第1リンクアーム34、35と、第1リンクアーム34、35の他端にそれぞれ枢着される第2リンクアーム36、37と、第2リンクアーム36、37の他端にそれぞれ出力軸38a、39aが連結される上下動駆動モータ38、39と、各モータ作動のためのモータドライバと、コントローラとを備える。一対のレール22にそれぞれ対応付けられて設けられた第2リンクアーム36,37の他端は、各上下動駆動モータ38,39の出力軸38a、39aに共通に軸支されている。
【0021】
また、冷却装置10の入口側と出口側には、それぞれ、容器60を冷却装置10に搬入するための、及び、冷却装置10から搬出するための搬入部40及び搬出部42が設けられる。
【0022】
搬入部40は、容器60を受ける容器受台44と、容器受台44に載置された容器60を中立位置から、冷却装置10の上段または下段のレール22に整列した位置に移動させるために容器受台44を上方または下方へと回動させるための移動機構46と、を有している。移動機構46は、フレーム12に固定されるサブフレーム13に一端が枢着され、他端が容器受台44に枢着された平行リンク48と、容器受台44とサブフレーム13に連結されたガスシリンダ50とからなる。
【0023】
同様に、搬出部42も、容器60を受ける容器受台45と、冷却装置10の上段または下段のレール22に整列した位置にある容器60を、中立位置まで移動させるために容器受台45を上方または下方へと回動させるための移動機構47と、を有している。移動機構47は、フレーム12に固定されるサブフレーム13に一端が枢着され、他端が容器受台45に枢着された平行リンク49と、容器受台45とサブフレーム13に連結されたガスシリンダ51とからなる。
【0024】
また、冷却槽14の上方には、エアノズル16が配設される。エアノズル16は、装置の上部に配置されたファン18及びフィルタ19を介してクリーンエアまたは冷却エアが噴射されるようになっている。
【0025】
また、冷却槽14内の冷却水は冷却槽14の給水部14a及び排出部14bを介して循環することができるように循環路が形成されており、該循環路には、冷却水の冷却を行なう冷却水冷却装置、フィルタ及び電解水生成装置を設けることができる。フィルタは、冷却中に容器60から冷却槽14内へと落下した被冷却物を除去するためのものである。また、電解水生成装置により細菌などを除去・抑制して、抗菌・除菌効果を持たせることができる。
【0026】
以上のように構成される冷却装置10において、冷却される被冷却物は、調理後に調理鍋から容器60に移し変えられる。この容器60は、通常の調理過程において使用されるステンレス製のバット等であって、特別な専用容器である必要はない。よって、容器60は、密閉される必要はなく、平坦な皿状の上方が開放した開放容器となっており、上部の少なくとも両側にフランジ60aが形成されている。
【0027】
この容器60は、搬入部40の中立位置にある容器受台44に載置された後、容器受台44が回動されて、容器60のフランジ60aが上段または下段のレール22と整列するように位置づけられる。その後に、装置10の内部へと押し出されると、容器60のフランジ60aがレール22内の搬送部材24の爪25によって受け止められて、支持される。ある程度容器60が押し出された後は、前後動駆動モータ32が作動して、搬送部材24を駆動することで、容器60が所定の位置に位置づけられる。
【0028】
こうして、各段において2つの容器60が搬送部材24によってその前後方向において所定位置に位置づけられると、上下動駆動モータ38,39が作動して、第2リンクアーム36,37、第1リンクアームレール34、35を駆動してレール22を下動させる。これにより、容器60の少なくとも下部が冷却槽14の冷却水内へと浸される。
【0029】
こうして、容器60を介して冷却水と容器60内の被冷却物との間の熱交換を行い、被冷却物の冷却が行われる。さらに、容器60を冷却水内で変動させることにより、容器60内の被冷却物の攪拌を行う。
【0030】
具体的にこの実施形態では、容器60を、レール22の長手方向に直交する水平な軸の周りでレール22及び搬送部材24を揺動させる運動と、レール22の長手方向に沿った長手運動と、レール22を上下方向に沿った上下運動と、の3つの運動のいずれかの運動を、単独または組み合わせて行うことができる。
【0031】
上記揺動運動は、上下動駆動モータ38、39を同期してそれぞれの出力軸38a、39aが反対方向に回動するように作動させる。これにより、レール22の前後端のうちのいずれか一方が上昇すると他方が下降し、いずれか一方が下降すると他方が上昇し、これらの上下動を繰り返すことにより、レール22の長手方向に直交する水平な軸の周りでレール22及び搬送部材24を揺動させることができる(図5参照)。また、長手運動は、前後動駆動モータ32、32を作動させることにより、搬送部材24を前後に移動させることができる。上下運動は、上下動駆動モータ38,39を同期してそれぞれの出力軸38a、39aが同方向に回動させるように作動させることにより、レール22及び搬送部材24を上下に移動させることができる。
【0032】
例えば、これらの運動を単独または組み合わせて、コントローラによる制御により、例えば周期的に、時間的に切り替えることにより、より効果的に非接触で容器60内の被冷却物の攪拌を行なうことができる。また、被冷却物が例えばカレーのように、具材のような密度の高い成分と汁のような密度の低い成分、及び/または油分成分と水分成分といった密度の異なる成分が混在した物である場合に、揺動運動による遠心力の作用により具材のような高密度成分が容器60の端部に偏ることが起こるが、長手運動を組み合わせて、側面から見て8の字を描くように変動させることにより、このような偏りを解消させることができる(図6参照)。また、各運動のストロークも、被冷却物に合わせて適宜調整することができる。
【0033】
尚、この実施形態の駆動手段30の構成に限らず、駆動手段の構成を変更することにより、他の運動をさせることができる。例えば、図示した例では、左右のレール22に対して、上下動駆動モータ38,39は共通に駆動可能となっているが、これに限るものではない。
【0034】
すなわち、各レール22に対してそれぞれ上下動駆動モータを配設し、各レール22を独立して上下動できるように構成することにより、図7の(a)に示すように、図中右側のレール22を図中左側のレール22より高くすれば、容器60を右肩上がりに傾けることができ、又、図7の(b)に示すように、図中左側のレール22を図中右側のレール22より高くすれば、容器60を左肩上がりに傾けることができる。
【0035】
してみれば、左右のレール22に対して平行な軸を中心として、レール22を揺動させることができる。かかる揺動運動を、前述の揺動運動、上下運動、長手運動等と適宜組み合わせることにより、被冷却物の攪拌をより効果的に行うことも可能である。
【0036】
冷却動作中には、エアノズル16からエアが噴射される。エアノズル16の噴射方向は、容器60の上方をほぼ水平方向に向いており、容器60からの蒸気を吹き飛して、結露を防止する。また、エアノズル16から冷却エアを噴射する場合には、容器60内の被冷却材の冷却効果を併せ持たせることができる。この場合、噴射方向は容器60の方を向いていてもよい。
【0037】
容器60を冷却水に浸しながら以上の運動をさせて、所定の温度になるまで、または所定時間、冷却させた後、冷却装置10から容器60を取り出して、搬出部42の容器受台45に載置し、容器受台45を中立位置にまで回動して、容器60を取り出して、一連の作業は終了する。
【実施例】
【0038】
以下の冷却条件で冷却を行った。
【0039】
冷却条件:冷却水 温度3〜4℃
:揺動運動+長手運動 5分
:揺動運動 3分
:ノズルからの送風 外気温約26℃
【0040】
80℃のカレー15kgの入ったバットを上記冷却条件で冷却した結果、約30分で20度の温度まで冷却することができた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】 本発明の冷却装置の側面図である。
【図2】 本発明の冷却装置の平面図である。
【図3】 本発明の冷却装置の前方から見た断面図である。
【図4】 本発明の冷却装置の側面図であり、容器を冷却槽に浸した状態を表す。
【図5】 本発明の冷却装置における支持手段の揺動運動を表す図である。
【図6】 図5の揺動運動と長手運動とを組み合わせた状態を表す図である。
【図7】 本発明の冷却装置における支持手段の他の揺動運動を表す図である。
【符号の説明】
【0042】
10 冷却装置
14 冷却槽
16 エアノズル
22 搬送部材(支持手段)
30 駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容される被冷却物を冷却する冷却装置において、
冷却媒体が貯留された冷却槽と、
前記冷却媒体の上側に設けられて、前記容器の両側端部を支持する一対の長手方向に配設された支持手段と、
前記支持手段を駆動する駆動手段と、
を備え、容器の一部を冷却槽内で冷却媒体に浸しながら、前記駆動手段による該支持手段の駆動により容器を変動させることにより、冷却を行なうことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記支持手段の長手方向に直交する水平な軸の回りで前記支持手段を揺動させる揺動運動と、前記支持手段の長手方向に平行な軸の回りで前記支持手段を揺動させる揺動運動と、前記支持手段の上下運動と、前記支持手段の長手方向に沿った長手運動と、の内の少なくとも1つの運動を発生させることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記揺動運動、上下運動及び長手運動の少なくとも2つの運動を同時に組み合わせて発生させることを特徴とする請求項2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記揺動運動、上下運動及び長手運動の少なくとも単独運動または2つ以上の組み合わせ運動のいずれかの運動を時間的に替えて発生させることを特徴とする請求項2または3記載の冷却装置。
【請求項5】
前記冷却槽の上方に配設されて、エアを流出されるエアノズルをさらに備え、該エアノズルからのエアによって容器内の被冷却物からの蒸気を吹き飛ばすことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−93183(P2007−93183A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309054(P2005−309054)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(593118933)フジフーズ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】