説明

准撥水性の部材及びコーティング方法

【課題】特定の光触媒をコーティングすることによって部材の表面の水接触角を40°〜60°の准撥水性に制御する
【解決手段】光触媒機能を有する過酸化チタン−シリカ微粒子を含有するコーティング材(1)を用い、過酸化チタン−シリカ微粒子の単位面積あたりのコーティング量が5g/m2〜40g/m2となるようにコーティングすることにより、部材(2)表面の水接触角を40°〜60°の准撥水性に制御することができ、しかもこの准撥水性の状態を長期に亘って維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、准撥水性の部材及びコーティング方法に関し、特に、特定の光触媒をコーティングすることによって表面の水接触角が40°〜60°の准撥水性に制御された部材及びそのコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイディング基材とは、乾式工法用の外壁材(又は外装材)であり、その材料の種類によって金属系サイディング,窯業系サイディング,セラミック系サイディングなどに大別されている。
【0003】
サイディング基材の表面は、長期間汚れがない外観を維持するための対策として、汚れが付着するのを抑制するための表面処理が行われる。このような表面処理は、従来においては水弾きを良くするための撥水化処理が主流であったが、近年においては水はけを良くするための親水化処理を行うことが主流になってきている。特に、水接触角が120°以上の強撥水性としたり、反対に水接触角が10°以下の超親水性としたりするなど、極端な撥水性又は親水性にすることが多い。一般的な表面処理は、撥水性材料又は親水性材料で表面をコーティングすることである。撥水性材料としては、ワックスが周知である。また、親水性材料としては、親水化機能に加えて、汚れ分解機能を発現する光触媒が注目されている。
【0004】
光触媒は、紫外光を吸収して触媒作用が活性化する機能性物質であり、代表的なものとして酸化チタン(TiO)が知られている。酸化チタン(TiO)は、親水化機能に優れ、基材表面にコーティングすることによって水接触角が10°以下の超親水にすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
撥水性及び親水性の基準は、水接触角によって判断されるのが一般的である。本明細書では、水接触角が90°以上を撥水性と定義し、120°以上を強撥水性と定義する。また、水接触角が40°以下を親水性と定義し、10°以下を超親水性と定義する。さらに、撥水性と親水性との中間領域、すなわち水接触角が40°〜90°のときを疎水性と定義する。
【0006】
ところで、近年においては顧客満足度に変化が現れており、これまでの汚れ防止以上に、被膜感,艶,輝きなどの外観的な要求が強まってきている。しかしながら、撥水性の場合には、イオンデポジットやウォータースポット現象が起こり易く、親水性の場合には、均一な施工が難しく、油分系統の異物付着に弱い。また艶や輝きに劣ることがある為、顧客の要求に充分に応えることができないことがあった。そのため、近年においては、水接触角が40°〜90°の疎水性にすることが検討され、顧客満足度の確認が進められている。本発明者らは、疎水性領域の中でも特に水接触角を40°〜60°の撥水性に近い領域にすると顧客の満足度が高いと考えており、この領域を「准撥水性」と定義した。
【0007】
基材の表面を疎水性にすることのできるコーティング材料は既に公知であるかも知れないが、光触媒をコーティングして准撥水性に制御することを実現した例はない。すなわち、光触媒として代表的な酸化チタン(TiO)の場合、たとえコーティング初期において准撥水性に調整しても、紫外光を吸収すると親水化作用が活発となり、准撥水性の領域から親水性の領域まで親水化されてしまう(例えば、特許文献2〜4参照)。つまり、酸化チタン(TiO)は、表面を親水性、特に、特許文献1のような超親水性にすることを目的として使用されるものであり、本発明者らが考える准撥水性に維持することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2924902号公報
【特許文献2】特開2001−106972号公報
【特許文献3】国際公開WO99/63011号公報
【特許文献4】特開2000−303027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題としては、上述の問題点が一例として挙げられる。すなわち、本発明の目的は、特定の光触媒をコーティングすることによって、水接触角が40°〜60°の准撥水性となるように表面特性が制御された部材及びそのコーティング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による准撥水性の部材は、光触媒機能を備えた過酸化チタン−シリカ微粒子を含有するコーティング材によって、過酸化チタン−シリカ微粒子の単位面積あたりのコーティング量が5g/m〜40g/mとなるように表面がコーティングされたことにより、表面の水接触角が40°〜60°の准撥水性に制御されていることを特徴とする。
【0011】
なお、「過酸化チタン−シリカ」とは、過酸化結合によって過酸化チタンとシリカが結合している複合化合物を意味し、過酸化チタンとシリカを単純に混合したものとは区別されると理解される。
【0012】
本発明によるコーティング方法は、部材の表面特性を准撥水性に制御するコーティング方法であって、光触媒機能を有する過酸化チタン−シリカ微粒子を含有する光触媒溶液を、スプレーノズル径が0.3mm〜2.0mm,吐出圧が0.2MPa〜0.5MPaの塗布条件で前記部材の表面にスプレーコートし、過酸化チタン−シリカ微粒子の単位面積あたりのコーティング量が5g/m〜40g/mとなるようにコーティングすることによって、水接触角が40°〜60°の准撥水性にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光触媒機能を有する過酸化チタン−シリカ微粒子を含有するコーティング材を用い、過酸化チタン−シリカ微粒子の単位面積あたりのコーティング量が5g/m〜40g/mとなるようにコーティングすることにより、表面の水接触角が40°〜60°の准撥水性となるように制御することができ、しかもこの准撥水性の状態を長期に亘って維持することができる。特に、前記コーティング量を10g/m〜40g/mにすれば、この範囲では色差が略一定となり得るので、より意匠性に優れた部材を提供することが可能である。
【0014】
本発明によれば、光触媒機能を有する過酸化チタン−シリカ微粒子を含有する光触媒溶液をコーティング材の原料として用い、この光触媒溶液を、スプレーノズル径が0.3mm〜2.0mm,吐出圧が0.2MPa〜0.5MPaの塗布条件で部材の表面にスプレーコートし、過酸化チタン−シリカ微粒子の単位面積あたりのコーティング量が5g/m〜40g/mとなるようにコーティングすることによって、水接触角が40°〜60°の准撥水性にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態によるコーティング材をコートした部材の表面の様子を模式的に示した図である。
【図2】前記コーティング材の原料となる光触媒溶液の調製方法を示す工程図である。
【図3】前記光触媒溶液と混合する他の光触媒溶液の調製方法を示す工程図である。
【図4】本発明の効果を確認するために行った試験の結果を示す。
【図5】本発明の効果を確認するために行った試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施形態による准撥水性の部材及びコーティング方法について、以下に詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は、以下に説明する実施形態によって何ら限定されることはない。
【0017】
本実施形態による准撥水性の部材は、過酸化チタンとシリカの複合化合物の微粒子を含有するコーティング材が表面にコーティングされており、これにより水接触角が40°〜60°の准撥水性になっている。前記過酸化チタンとシリカの複合化合物とは、過酸化結合によって過酸化チタンとシリカが結合した複合化合物(以下、「過酸化チタン−シリカ」と称す)である。すなわち、「過酸化チタン−シリカ」は、過酸化チタンとシリカを単純に混合したものとは区別されると理解される。このような過酸化チタン−シリカは、例えば特許第2913257号公報によって報告されているように本発明者の一人によって開発された機能性材料であり、紫外光はもちろん可視光も含め広範囲に亘って光触媒作用を発現する。
【0018】
本発明は、前述の過酸化チタン−シリカが、水接触角を准撥水性に制御するのに適した光触媒であることを新たに見出し、鋭意研究によって具現化した発明である。
【0019】
本実施形態においては、前記過酸化チタン−シリカ微粒子の単位面積あたりのコーティング量が5g/m〜40g/mとなるように、部材の表面がコーティングされている。前記範囲よりもコーティング量が少ない場合、撥水性となり、反対に前記範囲よりもコーティング量が多い場合、親水性となってしまうため、本実施形態ではコーティング量を前記範囲に制限する。さらに好ましいコーティング量は、10g/m〜40g/mである。この範囲にすれば、色差が略一定となり得るので、より意匠性に優れた部材を提供することが可能である。
【0020】
また、前記コーティング材は、過酸化チタン−シリカ微粒子を含有していればよく、他の成分を含むことを制限するものではない。但し、過酸化チタン−シリカ微粒子以外に、積極的に水接触角に作用する他の成分を含有することは好ましくなく、成膜性や密着性等を向上させるためのバインダーである例えば樹脂系エマルジョン、コロイダルシリカであることが好ましい。その他、コーティング材に付加機能を持たせるための成分、例えば抗菌機能を付加するための抗菌剤(例えば、銀成分など)を含有していてもよい。
【0021】
さらに、前記コーティング材1は、ミクロな視野で観ると、図1に模式的に示すように部材2の表面(すなわち、下地表面)に対して島状に分散して塗着されている。各島のサイズ及び形状が揃っている必要はないが、サイズが10〜100μmの微小なものであることが好ましい。このような分散塗着をするために、前記コーティング材は、溶媒に過酸化チタン−シリカ微粒子を分散させた光触媒溶液を用い、スプレーコート法によって塗布する。
【0022】
前記光触媒溶液としては、例えば粒径が数ナノメートルから数十マイクロメーターの過酸化チタン−シリカ微粒子を分散させたゾルが一例として挙げられる。このとき、過酸化チタン−シリカ微粒子の濃度は、例えば0.05質量%〜3質量%に調整することができる。また、過酸化チタン−シリカ微粒子を分散させる媒体としては、例えば水,アルコール,過酸化水素水,硝酸,塩酸,硫酸などから選択することができる。
【0023】
前記光触媒溶液を塗布する部材の種類及び材質は、特に制限されることはなく、例えば建材や外壁等の外装材、内壁等の内装材の他にも、サイディング基材、自動車のボディなどを対象とすることができる。但し、これらに限定されることはなく、さらにその用途が制限されないことは言うまでもない。また、例えばサイディング基材の場合、金属系サイディング基材,窯業系サイディング基材,セラミック系サイディング基材など、公知のサイディング基材のいずれをも適用可能である。なお、より確実に水接触角が40°〜60°の准撥水性に制御するためには、コーティングする基材の下地面の水接触角が80°〜95°の撥水性であることが好ましい。但し、この範囲に制限されることはない。さらに、前記下地面には、例えばポリエステル,ポリウレタン,アクリルシリコン,フッ素(フル又はハーフ)などの塗料が塗布されていてもよい。
【0024】
ここで、好ましい光触媒溶液の調製方法について、図2を参照しながら説明しておく。図2に示すように、まず、酸化チタンの原料となるチタンテトライソプロポキシド(TIP)とイソプロパノール(IPA)の混合液と、IPAと水の混合液とを混合し、TIPを加水分解させて酸化チタンの微粒子を生成させる。配合モル比としては、例えばTIP:IPA:HO=1:10:4とすることができる。そしてこの酸化チタンの微粒子を濾過分離し、例えば100℃で乾燥させて酸化チタンの粉末を得る。このようにして得られた酸化チタンの粉末は、粒界を有しないアモルファス型の酸化チタンである。なお、酸化チタンの原料としては、TIPに限られず、例えばチタンテトラエトキシドなど、その他のチタンアルコキシド(アルコール分子のOH基のHがTiに置換された化合物)を用いてもよい。
【0025】
続いて前記アモルファス型の酸化チタンを、例えば35質量%の過酸化水素水に溶解せしめることにより、酸化チタンのゲル体を生成させる(これを「一次処理」と称する)。そしてこのゲル体に、シリカ前駆体であるオルトケイ酸テトラメチル(TEOS)とエタノールの混合物を添加する。
【0026】
続いて、シリカ前駆体を加えた酸化チタンのゲル体に、例えば35質量%の過酸化水素水をさらに加えてペルオキソ化することにより、過酸化結合によって過酸化チタンとシリカが結合した過酸化チタン−シリカ微粒子のゾル体を生成させる(これを「二次処理」と称する)。最後に、pH調整のためにアルカリ溶液として、例えば25質量%のアンモニア水を添加し、pHを例えば6〜8の中性領域に調整することにより、過酸化チタン−シリカ微粒子を含有する光触媒溶液を得る。
【0027】
上述のようにして調製した光触媒溶液を、スプレーコート法によって部材表面に塗布し、乾燥させてコーティングする。その際、スプレーノズル径が0.3mm〜2.0mm,吐出圧が0.2MPa〜0.5MPaの塗布条件でスプレーコートし、過酸化チタン−シリカ微粒子の単位面積あたりのコーティング量が5g/m〜40g/m、好ましくは10g/m〜40g/mとなるように塗布時間を調節するのが好ましい。乾燥方法は特に制限されることはなく、例えば常温〜60℃で溶媒を蒸発させるようにすることができる。そして、紫外光又は可視光を照射するか、これらの光に曝すことによって、親水化作用を促進させるようにしてもよい。或いは、太陽光を利用するようにしてもよい。なお、本実施形態においては、紫外光を照射しなくとも准撥水性の範囲内にできる利点がある。
【0028】
前記塗布条件は、実際に試験を行った結果に基づいて決定している。すなわち、スプレーノズル径が前記範囲よりも小さい場合、単位面積当たりの塗装回数が増え作業効率が悪くなる。反対に前記範囲よりも大きい場合、液滴サイズが大きく、外観を損なうことがある。また、吐出圧を前記範囲よりも低圧にした場合、液滴サイズのバラツキが大きく、外観を損なうことがある。反対に前記範囲よりも高圧にした場合、塗着効率が低下してしまう。
【0029】
上述の実施形態によれば、光触媒機能を有する過酸化チタン−シリカ微粒子を含有するコーティング材を用い、過酸化チタン−シリカ微粒子の単位面積あたりのコーティング量が5g/m〜40g/mとなるように部材の表面にコーティングすることにより、後述する実施例でも確認されているように、表面の水接触角を40°〜60°の准撥水性に制御することができ、しかもこの准撥水性の状態を長期に亘って維持することができる。その結果、汚れ防止のみならず、被膜感,艶,輝きなどの外観に対する顧客満足度を満たすことが可能となる。
【0030】
さらに、上述の実施形態においては、光触媒機能を有する過酸化チタン−シリカ微粒子を含有する光触媒溶液をコーティング材の原料として用い、スプレーコート法を利用して基材表面に分散塗着させる。このとき、スプレーノズル径が0.3mm〜2.0mm,吐出圧が0.2MPa〜0.5MPaの塗布条件でスプレーコートすれば、より確実に水接触角が40°〜60°の准撥水性にすることができる。
【0031】
他の実施形態として、コーティング材には、光触媒機能を有する物質として、アナタース型の酸化チタンを混合するようにしてもよい。アナタース型の酸化チタンは、一例として図3に示す手順で、アナタース型の酸化チタンを含有する光触媒溶液として調製することができる。かかる調製方法は、図2に示す手順と略同じであるので容易に調製を行うことができ、さらに図2と図3の手順で調製した各光触媒溶液を混合することによって過酸化チタン−シリカ微粒子とアナタース型酸化チタン微粒子を含有する光触媒溶液を調製することができる。但し、過酸化チタン−シリカ微粒子との配合比が、過酸化チタン−シリカ微粒子:アナタース型酸化チタン微粒子=7:3(質量比)を超えないようにする。アナタース型酸化チタンは強い光触媒作用があるので汚れ分解機能を向上させることができるが、併せて強い親水化作用があるため、前記配合比よりも多くすると目的とする水接触角を維持することができなくなるからである。
【0032】
以上、本発明の具体的な実施形態に関して説明したが、本発明の範囲を逸脱しない限り様々な変形が可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者にとって自明なことである。従って、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
【実施例】
【0033】
続いて、本発明の効果を確認するために行った試験例について説明する。
【0034】
(試験例1)
本例は、図2に示す手順で光触媒溶液を調製し、ポリエステル製(色:アイボリ)の部材にスプレーコート法で塗布し、乾燥させてコーティングした試験例1である。その際、コーティング量が、0g/m(ブランク)、3g/m(比較例1)、5g/m(実施例1)、10g/m(実施例2)、20g/m(実施例3)、30g/m(実施例4)、40g/m(実施例5)、45g/m(比較例2)となるようにした。コーティング後、紫外光を照射すると共に、表面の水接触角を測定した。その他の条件を以下に示す。
・過酸化チタン−シリカ微粒子濃度:1.0%
・基材の水接触角(コーティング前):91.3°
・スプレーノズル径:0.6mm
・吐出圧:0.4〜0.5MPa
・乾燥条件:常温24時間
・UV光源:1mW/cm
【0035】
試験例1の水接触角の測定結果を下記の表および図4のグラフに示す。これらの結果から明らかなように、コーティング量が5g/m(実施例1)〜40g/m(実施例5)のときは水接触角を目的とする40°〜60°の准撥水性に制御することができ、初期においては水接触角が時間と共に変化するが、その後は一定の値で安定している。一方、コーティング量が3g/m(比較例1)のときには、UVを照射しても水接触角が70°を超えており、水接触角が低下する傾向がみられない。反対にコーティング量が45g/m(比較例2)のときには、UVが照射されると目的とする准撥水性よりも撥水性の領域で水接触角が安定してしまう。
【0036】
【表1】

【0037】
(試験例2)
本例は、前述した試験例1において色差(ΔE)を測定した試験例2である。その結果を図5に示す。
【0038】
図5の結果から明らかなように、コーティング量が10g/m(実施例2)〜40g/m(実施例5)のときに色差(ΔE)が略一定の値となっている。背景技術の欄にも記載したように、本発明は、被膜感,艶,輝きなどの外観的な要求に応えることを目的の一つとしている。色差(ΔE)は、外観の意匠性に影響する要因の一つであるので、色差(ΔE)が略一定な値を示す10g/m〜40g/mの範囲でコーティングすることは非常に有効である。
【0039】
以上の結果から、光触媒機能を有する過酸化チタン−シリカ微粒子を含有するコーティング材を用い、過酸化チタン−シリカ微粒子の単位面積あたりのコーティング量が5g/m〜40g/mとなるように部材の表面にコーティングすることにより、表面の水接触角を40°〜60°の准撥水性に制御することができ、しかもこの准撥水性の状態を長期に亘って維持することができることが確認された。さらに好ましくは、コーティング量を10g/m〜40g/mの範囲にすれば、より確実に外観的な要求に応えることが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 コーティング材
2 部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒機能を備えた過酸化チタン−シリカ微粒子を含有するコーティング材によって、過酸化チタン−シリカ微粒子の単位面積あたりのコーティング量が5g/m〜40g/mとなるように表面がコーティングされたことにより、表面の水接触角が40°〜60°の准撥水性に制御されていることを特徴とする准撥水性の部材。
【請求項2】
前記コーティング材はさらに光触媒機能を備えたアナタース型酸化チタン微粒子を含むが、前記アナタース型酸化チタン微粒子の含有量は、過酸化チタン−シリカ微粒子:アナタース型酸化チタン微粒子=7:3(質量比)を超えないことを特徴とする請求項1に記載の准撥水性の部材。
【請求項3】
前記過酸化チタン−シリカ微粒子の単位面積あたりのコーティング量を10g/m〜40g/mにすることを特徴とする請求項1又は2に記載の准撥水性の部材。
【請求項4】
前記コーティング材がコーティングされる部材の下地面は、水接触角が80°〜95°の撥水性であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の准撥水性の部材。
【請求項5】
前記准撥水性の部材は、サイディング基材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の准撥水性の部材。
【請求項6】
部材の表面特性を准撥水性に制御するコーティング方法であって、
光触媒機能を有する過酸化チタン−シリカ微粒子を含有する光触媒溶液を、
スプレーノズル径が0.3mm〜2.0mm,吐出圧が0.2MPa〜0.5MPaの塗布条件で前記部材の表面にスプレーコートし、過酸化チタン−シリカ微粒子の単位面積あたりのコーティング量が5g/m〜40g/mとなるようにコーティングすることによって、水接触角が40°〜60°の准撥水性にすることを特徴とするコーティング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−172830(P2010−172830A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18828(P2009−18828)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(391023415)株式会社アサカ理研 (6)
【Fターム(参考)】