説明

処理剤残留物のモニタ及び水処理プロセスにおける処理剤投与量の制御方法

【課題】
【解決手段】
処理水中の残留処理剤のモニタ方法であって、フルオレセイントレーサで標識又は追跡した少なくとも2つの異なる投与量の処理剤で、水の蛍光強度が処理剤の残留濃度(concentratio)と相関している方法。また、異なる処理剤投与量での蛍光応答を用いて、継続的に最適な処理剤投与量を自動で決定し、それによって処理剤投与量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、水処理に関する。より具体的には、本発明は、蛍光トレーサを用いて、処理水中の処理剤の残留濃度をモニタし、最適な水処理剤投与量を決定して、必要に応じて最適な処理剤投与量を自動的に再設定し、処理水の特徴の変動を計数する方法に関する。
【0002】
本発明の背景
工業、自治体、及び農業における用途の使用の過程では、水は、例えば、固−液分離を促進する化学物質、膜分離プロセス性能エンハンサ、腐食又はスケール形成及び処理水に接触する表面上への析出を抑制又は防止する防スケール剤及び防食剤、生物分散剤(biodispersants)、膜汚染を抑制又は防止する防汚剤、殺生物剤等や微生物増殖抑制剤(microbial−growth inhibiting agents)、及び処理水と接触する表面から析出物を取り除く洗浄薬品を含むクリーニング剤の驚くべきアレイで処理される。
【0003】
処理剤投与量の制御は、全ての水処理プロセスで実質的に最重要である。処理が所望の効果を得るには、明らかに、最小有効量の処理剤が、水中に維持されなければならない。逆に、処理剤の過剰投与は、良くても無駄であり、特にここで記載されているような膜の使用を含むプロセスの場合では、悪ければ、プロセス又は処理装置に損害を与えるであろう。従って、処理水中の水処理剤の濃度を監視して、制御する改善された方法開発する必要性がある。
【0004】
本発明の概要
本発明は、残留処理剤をモニタし、処理剤で処理した処理水中の最適処理剤投与量を決定する方法であって、順次、
i) 蛍光トレーサで追跡又は標識した第1の投与量の処理剤を、処理水に添加するステップと、
ii) 処理水の蛍光強度を測定するステップと、
iii)蛍光トレーサで追跡又は標識した第2の投与量の処理剤を、処理水に添加するステップと;
iv) 前記処理水の蛍光強度を測定するステップと;
v−a)処理剤の残留濃度に対する、前記第1及び第2の投与量の処理剤における前記処理水の測定された蛍光強度の変化を関連付けるステップと;又は、
v−b)処理剤の残留濃度に対する、前記第1及び第2の投与量の処理剤における前記処理水の測定された蛍光強度の変化を、測定した蛍光強度の非比例的変化と関連付けるステップであって、前記処理水の測定した蛍光強度の非比例的変化を用いて、最適な処理剤投与量に相当する設定値を決定するステップと;
を具える。
【0005】
本発明の詳細な説明
本発明は、蛍光分子を用いることによって、処理剤残留物をモニタすることを可能にする。これらの分子は、この処理剤やあらゆる望ましくないコロイドと相互作用する、或いは関連するように選択される。異なるミクロ環境間で蛍光発色団集団を分離するのは、この相互作用である。この分離は、蛍光特性を変え、これによって、蛍光強度が著しく異なる。この3つのミクロ環境は、発色団がない(即ち、水に溶解されている)、処理剤と関連した発色団(即ち、「結合」発色団)、及び望ましくないコロイドと関連した発色団である。処理水が自由に溶解された発色団を含む場合、蛍光強度は、期待値である。処理水が処理剤残留物、及び/又はコロイドを含む場合、蛍光強度は期待値とは著しく異なっている。これは「結合」/関連発色団が様々な特性を示すからである。蛍光強度の変化は、処理水、及び標識又は追跡処理剤の特性に依存して、非比例の増加又は減少によって明らかにすることができる。
【0006】
ポリマ過剰投与シナリオにおいては、ろ過水は、より多くのコロイドと、過剰ポリマと、過剰トレーサを有する;また、トレーサ蛍光強度は、劇的に異なっている。投与不足シナリオにおいては、コロイドは存在するが、ポリマやトレーサが存在しない;従って、蛍光強度は低い。従って、処理剤の投与不足から過剰投与シナリオ間で移り変わる際に、蛍光強度は著しく変化する。最適な処理剤投与量を決定することを可能にするのは蛍光強度のこの変化である。
【0007】
この期待値と実際の蛍光の差を用いて、処理剤残留物は定量的に推測される。2つの時点で蛍光応答と処理剤投与量とを用いることによって、処理剤残留物を、較正曲線から推測することができる。
【0008】
一の実施例では、処理剤残留物は、水に加えられた蛍光分子と指標Iによってこの水中で検出された蛍光分子との間の差の関数として推測される。
【0009】



ここで、x1及びx2は、第1及び第2の産物投与量であり、F1及びF2は、任意の単位の第1及び第2の蛍光測定値である。実施例では、産物投与量はppmである。
【0010】
一の実施例では、処理剤残留物は、消光期待値と、指標IIによって検出した消光値との間の差の関数として推測することができる。
【0011】



ここで、x1、x2、F1、及びF2は上記に定義されている。蛍光は、任意の単位であるが、トレーサ分子のppbとして表すこともできる。
【0012】
本発明の目的について、総体的な消光は、測定した蛍光を変えて以下に記載されているようなStern−Volmerプロットが実質的に直線になるようにするあらゆるプロセスを意味する。言い換えれば、Stern−Volmerプロットが直線である場合に、「消光」が存在する。
【0013】
一の実施例では、この処理剤の残留濃度は、処理剤投与量に関連する。
【0014】
一の実施例では、処理剤の残留濃度を用いて、処理剤投与量の上限を決定する。
【0015】
一の実施例では、処理剤投与量は、前記上限以下に自動的に維持される。
【0016】
一の実施例では、最適な処理剤投与量は、処理剤投与量に対する蛍光応答の逆数の導関数を用いて計算され、システムパフォーマンスを反映したあらゆる水質パラメータに経験的に対応する。好適な水質パラメータは濁度に限ることなく、シルト密度指数(SDI)、粒子数等が挙げられる。一の実施例では、この相関は、標準ジャーテスト法を用いて、蛍光と濁度等の水質パラメータを測定し、次いで、処理剤投与量に対する蛍光反応の逆数の導関数を計算して達成される。次いで、許容できる水質パラメータ投与点では、蛍光の逆数の導関数が初期設定値である。一度フルスケールで実施されると、設定値は最適なフルスケール水処理プロセス用に微調整される。
【0017】
蛍光の逆数は、Stern−Volmerプロットを介して消光に関連する。Stern−Volmer則は:1/I=(1+K[Q])/Iであり、ここで:K=消光速度定数、[Q]=消光剤濃度、I=蛍光w/o消光、I=測定された蛍光である。上記のように、本発明の目的のために、消光は、Stern−Volmerプロットが実質的に直線である場合に起こるものとして定義される。
【0018】
本発明の目的のために、Iは、加えられた製品のppm(=k*ppm)に比例すると仮定され、1/I=(1/k+K[Q]/k)*(1/ppm)+0である。ここで「k」は、投与される産物(即ち、処理剤)の蛍光分子(即ち、トレーサ)の濃度を示す製品要因である。従って、蛍光消光が起こると、1/I vs.1/ppmのプロットは、(1/k+K[Q]/k)とY切片のゼロに等しい傾きを持つ線形である。
【0019】
一の実施例では、処理剤投与量に対する、蛍光応答の逆数の導関数の設定値を用いて、処理剤投与量を自動的に制御する。
【0020】
一の実施例では、アルゴリズムが投与反復を制御し、上記に規定したように傾きと残留関数を計算する。投与反復とは、投与において微調整をし、系を平衡にして、いくつかの応答を測定する方法をいう。
【0021】
より具体的には、特定の処理剤投与量(投与量)で、処理水の蛍光(F)を測定する。次いで、処理剤投与量は、僅かに異なる投与量(投与量)に増加して、この系を平衡にする。この新しい投与量で、蛍光(F)を測定する。一の実施例では、系が平衡になるのに必要な時間は、系の維持時間、即ち、蛍光を処理剤投与量の変化に調整するのに必要な時間である。ろ過系の平衡時間は、一般的に約5から約10分であるが、特定の系に依存してより長くなることがある。
【0022】
この時点で、蛍光の逆数vs.投与量曲線の傾きは、代数的な関係:傾き=(1/F−1/F)/(投与量−投与量)で計算される。この傾きは、上述の通りに決められた設定値と比較され、設定値よりも大きい場合には、投与量は徐々に減少し、設定値よりも小さい場合には、投与量は徐々に増加する。これを、我々は傾きコントロールと名付けた。次いで、測定した蛍光と投与情報を用いて、理想の傾きを計算して、これが初期設定値である。一度フルスケールで系が動き出すと、この設定値は最適なシステム能力を求めて微調整される。前記のものは、「手動設定値決定」という。
【0023】
ポリマ残留物は、上記の指標I又はIIを用いて、蛍光関数によって推定され、残留物が高すぎる場合には、投与量が自動的に減少する。一の実施例では、残留物蛍光関数を用いて、系をモニタして、過剰の残留物が処理システムに確実に送り込まれないようにする。別の一の実施例では、前記傾きを用いて、処理剤の送りを自動化する。従って、このアルゴリズムは、投与量制御を維持する役割を果たし、処理剤残留物が、アプリケーション特有の設定値を上回らないことを保証する。
【0024】
例えば、逆浸透(Reverse osmosis:RO)前処理システムでは、反復制御を用いて、投与量調節により流入水を変更して蛍光設定値とは異なるようにすることができる。これは、設定流入値のみに有効である。この技術の主な利点は、処理剤残留物をモニタし、RO前処理用の処理剤(別名−高分子電解質)を使用して、RO流入水のシルト密度インデックス(SDI)を低減させ、清掃費、清掃労力、及び損失水量生産を最小にする。
【0025】
加えて、この処理ストリームの蛍光強度は、この処理ストリーム中の標識化した又は追跡した処理剤の追跡量の存在を示す。この蛍光は、最適な投与量の直後の突然の急速な変化を示す。蛍光のこの急速な非比例的変化は、最適なポリマ投与量の指標として用いることができる(ポリマ投与量設定値)。図2及び4、以下の詳細な議論を参照。この設定値は、例えば処理水の質又は操作上の不調の変動によって時間変動するので、蛍光の非比例的変化を用いて、設定値を自動的に変更し、これによって、手動介入を取り除くことができる。
【0026】
従って、別の一の実施例では、第1及び第2の処理剤投与量における処理水の測定した蛍光強度の変化は、測定した蛍光の非比例的変化と相関し、処理水の測定した蛍光の非比例的変化を用いて、最適な処理剤投与量に相当する設定値を決定する。
【0027】
この実施例によって、最適以下の投与量(0ppmであってもよい)の標識化又は追跡処理剤を用いてシステムを開始し、蛍光の初期平均値F1と、相当するポリマ投与量P1とを測定してデータをロギングすることによって、この設定値を自動的に決定することができる。次いで、このポリマ投与量を、例えば、値P2まで約0.1ppmずつに徐々に増やしていき、この系は上記のように平衡になる。新しい平均蛍光値(F2)と、相当する追跡ポリマ投与量P2はデータをロギングする。オペレータが信頼水準を決定しなくてはならない蛍光値に関連して、このデータは真の変化(例えば、蛍光の変化がこのシステムパラメータに基づく真の変化を表す95%の信頼)として認識されることを満足しなくてはならない。
【0028】
次いで、処理剤投与量P2は、最適な処理剤投与量に相当する蛍光(屈折点)の非比例的変化点が生じるまで、徐々に増加する。例えば、この非比例的変化の点は、追跡又は標識化処理剤における段階的増加のための蛍光の大きな変化が、最適な投与量範囲外にあると考えられないので、F2が、F1の約50パーセント以上である場合に生じる。
【0029】
好適な時間、例えば30分後に、新しい平均蛍光値(F3)と相当する追跡ポリマ投与量(P3)をデータロギングする。F3が、F2よりも著しく大きい場合は、ポリマ投与量を減らすべきである。F3が、F2よりも著しく小さい場合は、ポリマ投与量屈曲点に戻るように増やすべきである。
【0030】
好適なデータロギングプロトコルは、対象の変量(例えば、蛍光)を測定し、100−300のデータポイントを蓄積し;この測定値についての平均偏差及び標準偏差を計算し;この標準偏差が小さいことを確実にし(例えば、平均値の約10パーセント以上小さい);測定した平均偏差(F)、標準偏差(S)データポイント数(N)を蓄積して上記の計算をする。
【0031】
一の実施例では、この設定値は自動的に変更されて、処理水の質の変動の主な原因となる。
【0032】
一の実施例では、処理剤投与量がこの設定値に自動的に維持される。
【0033】
一の実施例では、処理剤は、一又はそれ以上の蛍光トレーサで追跡される。これらの蛍光トレーサは、水処理プロセスにおけるなんらかの別の化学的性質によって、又はpH、温度、イオン強度、酸化還元電位、微生物学的活性、又は殺生物剤濃度等のその他のシステムパラメータによって感知できるほどに、又は著しく影響を受けても受けなくてもよい。水処理プロセスの化学的性質が、保持時間中に著しく変化しない限り(通常約10分)、制御アルゴリズムが自動的に占める蛍光の著しい変化の主な原因となる。
【0034】
蛍光トレーサは、水処理プロセスの水と共に移動可能でなければならず、従って完全でない場合は水処理プロセスに特異的で特有の温度及び圧力条件下で、使用濃度で水処理プロセスの水に実質的に水溶性である。
【0035】
代表的な蛍光トレーサには、限定はされないが、米国特許第6,730,227号に記載されているトレーサが挙げられる。この特許は、ここに参照されている。
【0036】
一の実施例では、このトレーサは、フルオレセインナトリウム塩(fluorescein,sodium salt)(CAS登録番号518−47−8、別名アシッドイエロー73、ウラニン);1,5−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム塩(水和物)(CAS登録番号1655−29−4、別名1,5−NDSA水和物);ローダミンWTとしても知られている9−(2,4−ジカルボキシフェニル)−3,6−ビス(ジエチルアミノ)−キサンチリウムクロリド二ナトリウム塩(CAS登録番号37299−86−8);リボフラビン又はビタミンB2としても知られている1−デオキシ−1−(3,4−ジヒドロ−7,8−ジメチル−2,4−ジオキソベンゾ[g]プテリジン−10(2H)−イル)−D−リビトール(CAS登録番号83−88−5);フルオレセイン(CAS登録番号2321−07−5);2−アントラセンスルホン酸ナトリウム塩(CAS登録番号16106−40−4);1,5−アントラセンジスルホン酸(CAS登録番号61736−91−2)及びこれらの塩;2,6−アントラセンジスルホン酸(CAS登録番号61736−95−6)及びこれらの塩;1,8−アントラセンジスルホン酸(CAS登録番号61736−92−3)及びこれらの塩;及びこれらの混合物から選択される。上記の蛍光トレーサは、種々の異なる薬品供給会社から市販で入手することができる。
【0037】
一の実施例では、処理剤は、例えば、高分子処理ポリマ自体に蛍光成分を組み込むことによって、又は、この処理ポリマと共有結合を形成することができる蛍光成分で、この処理ポリマを後修飾することによって、蛍光成分で標識される。蛍光成分を含有するポリマの調製及び使用は、例えば、米国特許第6,312,644号;米国特許第6,077,461号;米国特許第5,986,030号;米国特許第5,998,632号;米国特許第5,808,103号;米国特許第5,772,894号;米国特許第5,958,788号、及び国際特許出願番号第PCT US01/81654号に記載されており、参照によってここに援用する。
【0038】
蛍光トレーサの投与量は、少なくとも処理水中の測定可能な濃度を提供するのに十分な量である。一般的な投与量は、蛍光剤濃度に基づいて、約50ppt(1兆分の1)から約100ppb(10億分の1)、好ましくは約0.1ppbから約10ppbの範囲である。留意すべきは、50pptが、およそ現在入手できる工業用光学光度計の検出限界であることである。光学光度計技術の改良は、この検出限界を下げそうであり、そのように想定されている。
【0039】
蛍光トレーサは、種々の異なる好適な技術を用いることによって、検出することができる。例えば、少なくとも与えられた時間に宜って、実質的に継続したベースでの蛍光発光分光法は、本発明の実施例による好ましい分析技術の1つである。蛍光発光分光法及びその他の分析方法による化学的トレーサの継続運転中の測定の方法の1つは、米国特許第4,992,380号に記載されており、参照によってここに援用される。
【0040】
本発明の実施に際して用いられる光学光度計の例には、Xe II及びTRASAR(登録商標) 8000 フルオロメータ(イリノイ州Naperville所在のNalco Company社から入手可能);Hitachi F−4500 光学光度計(カルフォルニア州San Jose所在のHitachi Instruments Inc.,社を介してHitachi社から入手可能);JOBIN YVON FluoroMax−3“SPEX”フルオロメータ(ニュージャージー州Edison所在のJOBIN YVON Inc.,社から入手可能);Gilford Fluoro−TVスペクトロフォトメータ、又はSFM 25(カリフォルニア州San Diego所在のResearch Instruments International社を介したBio−tech Kontron社から入手可能)が挙げられる。当然のことながら、上記のリストは包括的ではなく、代表的な光学光度計を例示することのみを意図している。その他の市販で入手できる光学光度計及びこれらの改良品も本発明に用いることができる。
【0041】
当然のことながら、種々のその他の好適な分析技術を用いて、蛍光トレーサの量を測定してもよい。このような技術の例には、HPLC−蛍光分析(combined HPLC−fluorescence analysis)、比色分析(colorimetry analysis)、イオン選択電極分析、遷移金属分析、化学発光、パルス蛍光測定等が挙げられる。
【0042】
一の実施例では、本発明は、上記のアルゴリズムでプログラムされ、継続的に(即ち、保持時間内で、通常数分毎に)処理剤投与量を段階的に変化させ、上記の計算を実施して、処理剤残留物を所望の設定値に維持するコントローラを具える。
【0043】
このコントローラは、種々の異なる好適な方法で構成され、及び/又は調節することができる。代替の方法は、3つ又はそれ以上の点を用いて蛍光応答を測定し、次いで分析曲線適合法を用いて最適な投与量を決定するステップを含む。
【0044】
このコントローラは、配線(例えば、電気通信用ケーブル)で接続されるか、無線通信(例えば、ワイアレスRFインターフェース)、空気圧インターフェース等によって、ここに記載されているその他の構成部品と通信することができる。
【0045】
上記のように、本発明は、処理剤残留物のモニタ方法及び水処理プロセスにおける処理剤投与量の制御方法である。「処理剤」は、限定はされないが、ここでは、固−液分離、膜分離プロセス性能を強化する処理薬品、処理水と接触する表面上のスケール形成や析出を抑制/防止する防スケール剤、膜汚染を抑制/防止する防汚剤、生物分散剤(biodispersants)、殺生物剤等の微生物増殖抑制剤(microbial−growth inhibiting agents)、及び処理水と接触する表面から析出を取り除く洗浄薬品を含むことが意味される。
【0046】
本発明は、水処理プロセスを用いることができる全ての産業に適用することができる。例えば、本発明の方法を適用することができる様々なタイプの工業プロセスには、一般的に原水処理、廃水処理、工業用水処理、都市用水処理、食品飲料処理、医薬品処理、電子装置製造、事業(utility operations)、パルプ及び紙処理、鉱業及び鉱物処理、輸送関連処理、繊維処理、めっき及び金属加工処理、洗濯及びクリーニング処理、皮及びなめしプロセス、及び塗装処理が挙げられる。
【0047】
具体的には、食品飲料プロセスには、例えば、クリーム、低脂肪乳、チーズ、特殊な乳製品、タンパク質分離物、乳糖製造、乳清、カゼイン、脂肪分離、及び加塩チーズからの塩水回収の製造に関する乳製品加工を挙げることができる。例えば、フルーツジュースの浄化、濃縮、又は脱酸、アルコール飲料の浄化、低アルコール含有飲料のアルコール除去、処理水を含む飲料産業に関する使用;及び砂糖精製、植物性タンパク質処理、植物性油製造/処理、穀物の湿式粉砕、動物の処理(例えば、赤身の肉、卵、ゼラチン、魚及び家禽)、洗浄水の再利用、食品加工廃棄物等に関する使用。
【0048】
本発明に適用するときに用いる工業用水の例には、例えば、ボイラー水製造、処理水精製及び再利用/再使用、原水の軟水化、冷却水ブローダウンの処理、製紙プロセス由来の水の再利用、工業的局地的使用のための海水及び汽水の脱塩、例えば、飲料水、軟水の研磨、膜バイオリアクタ、鉱業及び鉱物処理水から、有害な微生物を排除するための膜の使用を含む飲料水/原水/表面水精製を含む。
【0049】
本発明の方法に関連する廃水処理適用の例には、例えば、工業廃水処理、生物水処理システム、重金属汚染物質の除去、第三次廃水の研磨、油性廃水、輸送関連プロセス(例えば、タンク車洗浄水)、繊維排水(例えば、染料、接着剤、サイズ、洗毛用油、繊維仕上げ油)、めっき及び金属加工排水、洗濯、印刷、レザァ及びなめし、パルプ及び紙(例えば、色度除去、希釈亜硫酸パルプ廃液の濃縮、リグニン回収、紙加工の回収、化学物質(例えば、エマルジョン、ラテックス、顔料、塗料、化学反応副生成物)、及び局地廃水処理(例えば、汚水、工業廃水)が挙げられる。
【0050】
本発明の工業的用途のその他の例には、例えば、半導体洗浄水処理、注射用蒸留水の生成、酵素生成/回収及び製品形成に用いられる水を含む製薬純水、及び電着印刷処理が挙げられる。
【0051】
一の実施例では、ろ液が、逆浸透ユニット用の給水として用いられる原水又は処理水用途に適用される。本発明は、前処理を行ったポリマが必要とされるあらゆる用途が想定されているが、ポリマ残留物がRO膜を汚染しないことが重要であり、処理剤投与量の制御から得られる利点の用途と同様に、過剰のポリマ残留物がないことが、特に重要である。いくつかの例は、表面水の浄化、地下水の浄化、廃水の3次処理、及び海水の浄化であろう。このような浄化プロセスの産物は、限定はされないが、工業処理水、ボイラー水又は冷水調製水、又は住宅用水に用いられる。
【0052】
一の実施例では、水処理プロセスが、固−液分離プロセスである。
【0053】
一の実施例では、固−液分離プロセスは、一又はそれ以上の凝固剤又は凝集剤、又はこれらの組み合わせを用いた水の処理を具え、水と、凝固固体及び凝集固体の混合物を形成し、水からこの凝固固体及び凝集固体を分離するステップを具える。
【0054】
好適な凝集剤は、高分子量カチオン性、アニオン性、非イオン性、双性又は両性イオン性ポリマを具える。好適な凝集剤は、一般的に、1,000,000以上の、しばしば5,000,000以上の分子量を有する。高分子凝集剤は、一般的に、一又はそれ以上のカチオン性、アニオン性、又は非イオン性モノマのビニル添加重合によって、一又はそれ以上の非イオン性モノマと、一又はそれ以上のカチオン性モノマの共重合によって、一又はそれ以上の非イオン性モノマと、一又はそれ以上のアニオン性モノマの共重合によって、両性ポリマを製造するための、一又はそれ以上のアニオン性モノマ及び選択的に一又はそれ以上の非イオン性モノマと、一又はそれ以上のカチオン性モノマの共重合によって、又は双性ポリマを製造するための、一又はそれ以上の双性モノマと、選択的に一又はそれ以上の非イオン性モノマの重合によって調製される。また、一又はそれ以上の双性モノマと、選択的に一又はそれ以上の非イオン性モノマは一又はそれ以上のアニオン性又はカチオン性モノマと共重合して、カチオン電荷又はアニオン電荷を双性ポリマに与える。
【0055】
カチオン性ポリマ凝集剤は、カチオン性モノマを用いて形成できる一方で、ある種の非イオン性ビニル添加ポリマを反応させて、カチオン荷電ポリマを製造することも可能である。このタイプのポリマは、マンニッヒ誘導体を製造するためにジメチルアミン及びホルムアルデヒドとポリアクリルアミドの反応によって調製されたポリマを含む。
【0056】
同様に、アニオン性ポリマ凝集剤は、アニオン性モノマを用いて形成できる一方で、ある種の非イオン性ビニル添加ポリマを修飾してアニオン荷電ポリマを形成することも可能である。このタイプのポリマは、例えば、ポリアクリルアミドの加水分解によって調製されるポリマを含む。
【0057】
凝集剤は、水溶液として、油中水型エマルジョンとして、又は水中の分散として、固体形状で用いられる。代表的なカチオン性ポリマは、ジメチルアミノエチルメタクリル酸(DMAEM)、ジメチルアミノエチルアクリル酸(DMAEM)、ジエチルアミノエチルアクリル酸(DEAEA)、ジエチルアミノエチルメタクリル酸(DEAEM)、又は硫酸ジメチル、塩化メチル、又は塩化ベンジルで作られたこれらの第4級アンモニウム形を伴う、(メタ)アクリルアミドのコポリマ及びターポリマを含む。
【0058】
水溶性凝集剤は公知であり、市販で入手できる。好適な凝集剤は、無機物又は有機物であってよい。代表的な無機凝集剤は、ミョウバン、アルミン酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム、又はPACls(これらは、塩化水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、、塩基性塩化アルミニウム、及びポリ水酸化塩化アルミニウム等とも呼ばれる)、硫酸ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸珪素アルミニウム、硫酸第2鉄、塩化第2鉄等、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
多くの水溶性有機凝集剤は、縮重合によって形成される。このタイプのポリマの例には、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン、及びエピクロルヒドリン−ジメチルアミン−アンモニアポリマが挙げられる。
【0060】
更なる凝集剤には、二塩化エチレンとアンモニア、又はアンモニアを添加した、又はしていない二塩化エチレンとジメチルアミンのポリマと、二塩化エチレンとジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン等の多官能アミンとの縮重合ポリマと、メラミンホルムアルデヒド樹脂等の縮重合反応によって作られたポリマを含む。
【0061】
更なる凝集剤には、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアミノエチルメタクリル酸、ジメチルアミノエチルメタクリル酸メチルクロリド第4級塩、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタクリルオキシルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルメチル(ベータ−プロピオンアミド)アンモニウムクロリド、メチル硫酸(ベータ−メタクリルオキシルオキシエチル)トリメチル−アンモニウム、4級化ポリビニルラクタム、ジメチルアミノ−エチルアクリル酸及びその第4級アンモニウム塩、反応してマンニッヒ又は第4級マンニッヒ誘導体を製造ビニルアミンとアクリルアミド又はメタクリルアミドのポリマ及びコポリマ等のカチオン荷電ビニル添加ポリマを含む。これらのカチオン性ポリマとビニル添加物と縮重合物の双方の分子量は、数百から百万の範囲である。好ましくは、分子量範囲は、約20,000から約1,000,000であるべきである。
【0062】
特定の用途用の適切な凝集剤及び凝固剤の選択と有効投与量は、処理される特定の水の特性に基づいた水処理の当業者によって実験的に決定することができる。
【0063】
次いで、凝固固体及び凝集固体は、浄化装置を含む固−液分離技術で入手できる多数の手段のいずれかによって、即ち、遠心分離、気泡浮上分離法、ベルトプレス又はプレート及びフレームプレス等の機械的手段、及び膜ろ過又はメディアろ過によって水から分離される。膜ろ過は、一般的に、柔軟な膜、セラミック膜等を含む精密ろ過又は限外ろ過と考えられる。メディアろ過は、一般的に、水の汚染に対するバリアとして含まれるなんらかの粒状メディアであると考えられ、これらは、一般的に、砂、無煙炭、及びざくろ石である。バリアとして機能するあらゆるメディアが想定されており、これには、限定はされないが、マイクロブレッド及びマクロブレッド(micro and macro breads)、粉末、活性炭、セラミックス等が挙げられる。
【0064】
一の実施例では、固−液分離プロセスは、膜分離プロセスであり、凝固固体及び凝集固体は、膜を通るろ過によって水から分離される。本発明による残留物のモニタ、及び投与量制御を用いて、以下に記載されているように膜ろ過システムの操作効率を強化することができる。
【0065】
水の精製又はその他の液体処理に一般的に用いられる膜分離には、精密ろ過(MF)、限外ろ過(UF)、ナノろ過(NF)、逆浸透(RO)、電気透析、電気脱イオン、浸透気化法、膜抽出、膜蒸留、膜除去、膜通気、及びその他のプロセスが挙げられる。分離の駆動力は、膜分離のタイプに依存する。膜ろ過としても知られる圧力駆動膜分離には、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、及び逆浸透が挙げられ、これには、駆動力として圧力が用いられ、一方、電気透析及び電気脱イオンには電気駆動力が用いられる。
【0066】
一の実施例では、この膜分離プロセスは、一又はそれ以上の前処理ステップであって、凝固した固体及び凝集した固体の一部を、ナノろ過及び/又は逆浸透膜による水のろ過に先立って、水から分離するステップを具える。
【0067】
一の実施例では、膜分離システムが逆浸透システムである。
【0068】
逆浸透では、一般的に給水流が、クロスフロー条件下で処理される。その際、給水流は、実質的に膜表面に平行に流れ、浸透時に給水流の一部のみが膜を通って拡散する。クロスフロー速度は、膜表面の汚れを減らす洗浄作用を提供するために定期的に高くなる。これは、また、濃度分極効果を低減する(例えば、膜で浸透圧を増加し、浸透フローを低減することができる膜表面の低減した乱流境界層における溶質濃度)。濃度分極効果は、給水流が浸透時に膜を通ることを阻害することができ、従って、回収率、例えば、適用した給水流に対する浸透率を低減する。リサイクルループを用いて、膜表面を通る高い流量を維持することができる。
【0069】
逆浸透プロセスでは、種々の異なるタイプの膜を用いることができる。このような市販の膜成分タイプには、限定はされないが、中空ファイバ膜エレメント、管状膜エレメント、螺旋状にねじれた膜エレメント、プレート及びフレーム膜エレメント等が挙げられ、これらのいくつかは、1988年にニューヨーク州New York所在のMcGraw−Hill Book Company社が出版した「The Nalco Water Handbook」Second Edition,Frank N.Kemmer著に、より詳細に記載されている。特に、「膜分離」と題された第15章を本明細書に援用する。当然のことながら、単一膜エレメントは、所定の膜ろ過システムで用いられることができるが、複数の膜エレメントも、工業用途によって用いることができる。
【0070】
一般的な逆浸透膜システムが、膜ろ過、及びより一般的な膜分離の例として記載されている。逆浸透は、主に渦巻き型のエレメント又はモジュールを用いる。これらは、フィードスペーサ(feed spacers)を有する半多孔性膜の渦巻き層によって構成され、中央穿孔性浸透収水管の周りに水担体を浸透させる。一般的に、このモジュールは、テープ及び/又はグラスファイバオーバーラップで密封入されている。できた構成は、一のチャネルを有し、これが、流入フローを受ける。流入流は、膜モジュールに沿って縦方向に流れ、凝集流として他端から出て行く。モジュール内で、水は半多孔性膜を通り、中央収水管に流れる浸透チャネルで捕捉される。この管から、水が指定されたチャネルの外側を流れ、収集される。
【0071】
実際には、第1モジュールの浸透管を第2モジュールの浸透管等に連結する相互連結器を伴う膜モジュールは、端から端へ互いに重ねられている。これらの膜モジュールスタックは、圧力容器内に収容されている。圧力容器内で、給水はスタックの第1モジュール内を通り、これが水の一部を浸透水として除去する。第1の膜からの凝集流は、第2の膜の給水流になり、スタックの下方に流れて行く。スタックの全ての膜からの浸透流が、連結した浸透管に収水される。
【0072】
ほとんどの逆浸透システム内で、圧力容器が、「ステージ」か「パス」のいずれかに配置されている。多段膜システムでは、圧力容器のバンクからの結合した凝集流が、圧力容器の第2バンクへ向けられ、ここで第2ステージの給水流になる。一般的なシステムは、各ステージに連続したより少ない圧力容器を有する2乃至3のステージを有する。例えば、あるシステムは、第1ステージに4つの圧力容器を具え、この凝集流が、第2ステージにおいて2つの圧力容器に給水し、次いで、この凝集流が、第3ステージにおける1つの圧力容器に給水する。これは、「4:2:1」アレイとして構成されている。多段膜構成では、全ステージにおける全圧力容器からの結合した浸透流が、更なる膜処理を行うことなく収水されて使用される。多段システムは、多量の精製水が必要な場合に用いられる。膜システムからの浸透流を、イオン交換又はその他の手段によって、更に精製するようにしてもよい。
【0073】
マルチパスシステムでは、圧力容器の各バンクからの浸透流が集められ、次の圧力容器のバンクへの給水として用いられる。全圧力容器からの凝集流が、各個々の流れを更に膜処理することなく合わされる。例えば、マイクロエレクトロニクスや製薬工業といった非常に高純度の水が必要な場合に、マルチパスシステムが用いられる。
【0074】
固−液分離の効率を最大にするためには、種々の凝固剤が必要であることは、当業者には公知である。上記のように、好適な凝固剤は、アルミニウム及び鉄化合物、及び合成高分子電解質である。残念ながら、ミョウバン等のアルミニウムを用いると、膜上に扱いにくいスケールを形成する残留物が生成される。高分子電解質は、一般的な浄化でよく用いられるが、RO膜がアニオン性ポリアミドフィルムであり、高分子電解質凝固剤がカチオン性であるので、ポリマが静電気引力を介して膜上に沈着し、浸透汚染を引き起こすことが、広く懸念されている。この状況は、高価で非効率な膜交換を必要とするであろう。従って、逆浸透ろ過システムでは、前処理が、効果的な作業に不可欠である。
【0075】
逆浸透前処理スキームは、水のタイプによって異なる。例えば、約10NTUよりも大きい水は、通常沈殿してろ過する。約10NTUよりもきれいな水には、直接ろ過技術を用いることができる。
【0076】
ろ過は、一般的にメディアろ過、又は膜マイクロろ過、又は膜ウルトラろ過から成る。メディアフィルタは、直径1mmのオーダの粒子固体でできている。様々な材料を用いることができるが、最も一般的な材料は、砂、ザクロ石、及び無煙炭、又はこれらの組み合わせである。マイクロフィルタ及びウルトラフィルタは、セラミック又は膜構造でできており、メディアフィルタと比較して著しく小さい孔サイズを有する。これら3つのタイプ全てが、RO前処理に用いられる。
【0077】
種々の凝集剤を、RO前処理のフィルタ助剤として用いることができる。フィルタ助剤は、流入粒径及び表面特性を変更することによって機能し、フィルタによる粒子捕捉を強化する。どのタイプのフィルタ助剤を用いるかは水によって異なり、最適なろ過、適切な化学的性質、或いは化学的性質の混合のために重要である。
【0078】
一の実施例では、本発明は、逆浸透前処理システムであり、このシステムでは、凝固固体及び凝集固体の一部が、メディアフィルタを通るろ過によって水から除去される。
【0079】
一の実施例では、本発明は、逆浸透前処理システムであり、このシステムでは、フィルタ助剤が、ミョウバン、ポリアルミニウムクロリド、塩化第2鉄、硫酸第2鉄、ポリ(ジアリルメチルアンモニウムクロリド)、及びEpi−DMAから選択された一又はそれ以上の凝固剤である。
【0080】
一の実施例では、本発明は、逆浸透前処理システムであり、このシステムでは、蛍光トレーサが、フルオレセイン、ローダミンB、ローダミンWT、及び1,3,6,8−ピレンテトラスルホン酸四ナトリウム塩から選択される。
【0081】
一の実施例では、本発明は、逆浸透前処理システムであり、このシステムでは、蛍光トレーサが、ルミノール、ローダミン、又はフルオレセインで標識したポリ(ジアリルメチルアンモニウムクロリド)である。
【0082】
上記は、以下の例を参照することによって、よりよく理解される。これらの例は、例示の目的で示されており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0083】
例1
上記のように、最適な処理剤投与量は、処理剤投与量に対する蛍光応答の導関数の逆数を用いて計算され、この場合の濁度の水質パラメータに相関し、標準ジャーテスト法を用いて、蛍光及び濁度を測定する。
【0084】
本例の目的のために、ジャーテストは、次のプロトコルに従って、オハイオ州Berea所在のA&F Machine Products Co.,社製(モデル番号“JAR MIXER”)の4つのユニットジャー試験装置を用いて行われる。
【0085】
1)250−1,000mLの試験サンプルをサンプルジャーに入れ、200rpmで撹拌を開始する。
【0086】
2)シリンジを介して撹拌したサンプルの渦に処理剤を加え、30秒間撹拌を続ける。
【0087】
3)15から60rpmに撹拌を緩め、5分間撹拌を続ける。
【0088】
4)撹拌を止め、サンプルからパドルを取り外し、サンプルを5分間静置する。
【0089】
5)サンプル表面下約1cmのレベルからピペット又はシリンジを介してサンプルの上澄みを除去し、適切な特性の測定を行うために濁度及び蛍光サンプル細胞中に直接入る5μmシリンジフィルタによって、サンプルをろ過する。
【0090】
処理剤は、より大きな粒子、又はフロックへのより小さな粒子の凝集を促進する。この凝集は、例えば、沈殿又はろ過によって、水からより容易に分離することができる。目に見えるフロックが形成される場合、形成された平均粒子のフロックサイズは、対ベンチマークでランク付けできる。また、フロック粒子間の水透明度、フロック形状、水密等のその他の要因は、比較用に書き留めておく。
【0091】
全てのジャーテストは、プラントの現在の凝固プログラムを用いて評価されるべきである。これによって、試験パラメータの調整して、フルスケールパフォーマンスと関連付けることが可能となる。このテスト時に、プラントで用いる実際の投与量は、一連のテストについての投与量ベンチマークとして設定され、浄化器オーバーフロー濁度(又は、色等)は、性能ベンチマークである。
【0092】
ジャーテストのパラメータは、試験を行うサンプルの処理用途及び特性に基づいて変更できる。従って、代替の方法は、沈殿段階がある又はないより長い1から5分間の速い混合と、2−10分間の緩やかな混合を用いてもよい。例えば、ミョウバンが取水口で添加され、長い距離を移動する場合、速い混合は、ミョウバンが浄化器の前20フィートで添加される場合よりも長く続くであろう。水文学的に過剰であるプラントは、より短い緩やかな混合を必要とする。これらの因子は、処理を行う者の経験に基づいて変更される。
【0093】
この例1について、50重量パーセント硫酸第2鉄溶液30ppmを用いて、フルオレセイン追跡ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(「ポリDADMAC」)凝集剤で、硫酸第2鉄凝集剤を増強してミシシッピ川の水をジャーテストする。ポリDADMACは、約20重量パーセントのポリマと、0.19重量パーセントのフルオレセインであり、このバランスは、約1重量パーセントの生理食塩水溶液である。ポリDADMAC溶液濃度は、重量/重量(「w/w」)ベースでppmの単位で表1に挙げられている。性能測定基準は、NTUの濁度であり、ろ液中のフルオレセインのppb(w/w)中の検出したフルオレセイン蛍光である。光学光度計は、Hitachi Model F−4500であり、較正は、脱イオン水中のフルオレセインを用いて行われる。Hach社製携帯濁度計Model2100PをNTU測定に用いる。この結果を表1に要約する。
【0094】
表1

【0095】
表1において、最後の行は、蛍光の逆数として解析的に計算された消光である。従って、この消光は、ppb−1という単位を有する。ここで、留意すべきは、蛍光の単位は任意であってよく、本発明の目的には、相対的蛍光強度のみを必要とする。
【0096】
例2
また、実験は、予め処理して濁度を除去し、約1NTUの濁度にしたミシシッピ川の水について、Hach社製2100P濁度計を用いて、例1の方法に従って野外で行われる。蛍光データは、イリノイ州Naperville所在のNalco Company社製TRASAR 8000蛍光光度計を用いて得られる。TRASAR 8000は、加えたフルオレセインをゼロに補正する必要があり、この補正は、0.06ppbのフルオレセインの減算である。この補正は、正確性の低い光学素子研究グレードのHitachiに起因する。ポリDADMACは、処理剤である。高速混合は30秒であり、3分間緩やかに混合し、5分間沈殿させる。蛍光強度、ppbは、0.06ppbのフルオレセインのバックグラウンド補正を伴わないが、補正消光は、補正蛍光強度の逆数であり、従ってppb−1という単位を有する。この結果を表2に示す。
【0097】
表2

【0098】
留意すべきは、表2では、0.06ppbを引いて蛍光を補正していることである。
【0099】
例3
米国モンタナ州の湖から採取した天然表面水を、表3に要約されるように硫酸第2鉄溶液及びポリDADMACを用いて、二重フィルタ支援プログラムで処理する。高速混合を2分間行い、10分間緩やかに混合し、沈殿時間を取らず、0.057ppbのフルオレセイン補正を、測定された蛍光強度から引く。結果を表3に要約する。
【0100】
表3

【0101】
留意すべきは、表3では、0.057ppbを引いて、蛍光を補正していることである。
【0102】
表4に示すように、上記のデータについてのStern−Volmerプロットの非加重回帰分析は、野外ではほぼ90%、実験室データについては99%の「適合度」(r)を有する。Hitachi研究グレード蛍光光度計を用いるデータは、より正確な蛍光測定に起因するより高い適合性を有し、著しく低いバックグラウンド光が検出される。
【0103】
表4

【0104】
これらのデータは、消光剤濃度を乗じた消光速度定数が処理を行う水によって変化することを示唆している。試験した水に対するこの変動は、消光が水処理能力に関連し、その結果、消光は水処理パラメータとして有利に用いられることができることを示している。
【0105】
例4
この例について、ミシシッピ川の水を、例1の方法によって、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(「ポリDADMAC」)凝固剤を用いてジャーテストする。このポリDADMACは、約20重量パーセントのポリマであり、このバランスは、約1重量%の生理食塩水溶液である。ポリDADMAC溶液濃度は、重量/重量(「w/w」)ベースでppmの単位で表5に記載されている。性能測定基準は、NTU単位の濁度であり、ろ液のフルオレセインのppb(w/w)中の検出されたフルオレセイン蛍光である。蛍光光度計は、Hitachi Model F−4500であり、較正は、脱イオン水中のフルオレセインを用いて行われる。HACH社製携帯濁度計Model 2100Pを、NTU測定に用いる。結果を表5に要約する。
【0106】
表5

【0107】
これらの低解像度のジャーテストを用いて、最適ポリマ投与量が、約1.0ppmのポリDADMAC(最も低い濁度を有する最もきれいな水、表5)であることが分かる。ポリマ投与量が最適値(この特定の場合で1ppm)を越えて増加されると、ろ液の濁度は再び増加する。即ち、ろ過水の質は低下する(表5)。同時に、ろ過水の蛍光強度は、急速に不均一に増加する(図1参照)。これは、過度に投与したポリマが、蛍光強度を強化するフィルタ側に流れることから起こる。ろ液内のポリマが多いほど、蛍光強度が強くなる。少量のポリマ(例えば、20%の活性産物としての0.5ppmのポリDADMAC)は、フルオレセイン蛍光強度を著しく強める(図1)。この強化した蛍光を用いて、過剰の残留ポリマの存在を表示すことができる。
【0108】
例5
野外試験を、米国南部の石油化学プラントで実施する。このプラントは、ミシシッピ川の水を取水して、ろ過に石灰軟化を用いている。次いで、水をpH7に調整し、漂白剤で塩素化する。次に、給水を、プレート熱交換機の中で78°Fに加熱する。0.4−0.6ppmの給水残留酸化剤が、通常、この熱交換機から下流で観測される。
【0109】
微量のポリマを、多重媒体の前にフィルタ助剤として加える。99.77重量%のポリDADMACと、0.23重量%のフルオレセインを混合することによってこれを調製する。熱交換機からの水は、微量のポリDADMACで処理され、静的ミキサを通って、3つのダウンフロー多重媒体フィルタ内に送り込まれる。ポリマフィルタ助剤は、4−20mAコントロールを有する24−gpd Series E+Pulsafeeder(model LPB4MA−VTC1−XXX)ポンプを用いて送り込まれる。25分の遅延後、ろ液蛍光はTrasar 340 fiuorometer(Nalco Company社製,part#TSR341)及びVersaTrak PLC controller(ニューヨーク州Clifton Park所在のSixnet社製,part#VT−A3−422−44P)を用いて測定される。多重媒体フィルタの滞留時間は、約25分であり、これは、非常に小さな変化がシステムを通って伝わる時間である。
【0110】
Chemtrac Systems Inc.社の「粒子モニタ(Particle Monitor)」(Nalco Company社製part#041−PM25011.88)は、ろ液中の微粒子/汚染物質含有量の指標として「粒子インデックス」を測定する。このシステムを用いて、固体の少ない、低濁度系の質をモニタすることができる。粒子インデックスが高くなるほど、ろ液中の微粒子/汚染物質含有量が多くなる。
【0111】
検出精度は以下の通りである。粒子モニタ(Particle Monitor):読み取り値の標準偏差は、平均約15%である。ポリマ投与量を変化すると、粒子インデックスデータ中のトレンドが、非常に明らかである。野外試験:読み取り値の標準偏差は、平均約10%である。この精度は、産物中のフルオレセインの濃度を増加することによって更に向上させることができる。
【0112】
多重媒体フィルタ流入水への最適ポリDADMACポリマ投与量は、0.5−0.7ppmである。この範囲で、粒子モニタは、最も低い読み取り値を有し(図2参照)、最小量の微粒子/汚染物質がろ液中に存在することを示す。このポリマ投与量以下では、より多くのコロイドがろ液に流れ、この投与量以上のポリマでは、漏出が起こり、これらの双方の場合で粒子モニタの読み取り値が大きくなる。表1の結果と同様に、図2は最適な投与量を越えたところで、ろ液の蛍光強度の非比例的増加が起こることを示している。この増加は、ジャーテスト結果で観察されたように、ろ液中の過剰な微量ポリマに起因する。フルオレセインのこの急激な増加は、統計的に97%よりも大幅に大きく、最適な微量ポリマ投与量レベルの強力な指標である。
【0113】
図3は、図2の蛍光曲線の傾きのプロットである。最適な微量ポリマ投与量の周辺では、蛍光傾きは、投与条件の上下周辺より7倍大きい。このことは、最適なポリマ投与量を決定するマーカとして用いるのに特に魅力的である。
【0114】
従って、流入する水の質が変化するにつれて、最適なポリマ投与量設定値を、自動的に変更することができる(図4参照)。ろ液蛍光が、その屈折点になるように微量ポリマを投与すると、水質の変化によって、蛍光が飛躍的に変化する。これらの変化は、容易に観測することができ、設定値の調節に容易に利用できる。この方法は、手動介入の必要性をなくし、最適量の微量ポリマを自動的に追跡して投与する。
【0115】
本明細書に記載されている好ましい実施例についての、種々の変形例及び変更例は、当業者に明らかであることが理解されるべきである。このような変形例や変更例は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、その付随する利点を損なうことなく、行うことができる。従って、このような変形例や変更例は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1は、例4に記載されている、濁度(5ミクロンフィルタ処理されたNTU)及び蛍光強度(5ミクロンフィルタ処理された)対ポリ(ジアリルメチルアンモニウムクロリド)で処理したミシシッピ川の水についての最適なポリマ投与量周辺のポリマ投与量のプロットである。
【図2】図2は、例5に記載されている、粒子インデックスデータ及び蛍光強度対米国南部の石油化学プラントでポリ(ジアリルメチルアンモニウムクロリド)で処理された水についてのポリマ投与量のプロットである。このデータは、最適なポリマ投与量を示し、この野外について、約0.5−0.7ppmである。
【図3】図3は、図2の蛍光曲線の傾き対ポリマ投与量のプロットである。このデータは、蛍光変化の速度が、投与条件の上下よりも、最適ポリマ投与量の周辺で約7倍大きいことを示している。
【図4】図4は、例5に記載されている米国南部の石油化学プラントの最適微量ポリマ投与量周辺での蛍光変化のプロットであり、これは、最適な微量ポリマ投与量周辺の劇的な蛍光変化を用いて、流入する水の質が変動するときに、いかに投与量設定値を自動的に変更することができるかを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残留処理剤をモニタし、前記処理剤で処理された処理水中の最適な処理剤投与量を決定する方法において、逐次的に、
i) 蛍光トレーサで追跡又は標識した第1の投与量の前記処理剤を、前記処理水に添加するステップと、
ii) 前記処理水の蛍光強度を測定するステップと、
iii)前記蛍光トレーサで追跡又は標識した第2の投与量の前記処理剤を、前記処理水に添加するステップと;
iv) 前記処理水の蛍光強度を測定するステップと;
v−a)第1及び第2の処理剤投与量での前記処理水の測定された蛍光強度の変化を前記処理剤の残留濃度に関連付けるステップ;又は、
v−b)前記処理剤の残留濃度に前記第1及び第2の処理剤投与量での前記処理水の測定された蛍光強度の変化を、測定した蛍光強度の非比例的変化と関連付けるステップであって、前記処理水の測定した蛍光強度の非比例的変化を用いて、前記最適な処理剤投与量に相当する設定値を決定するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記処理剤の残留濃度が、前記処理水に添加した蛍光トレーサの分子と、前記処理水中で検出された蛍光トレーサの分子との間の差の関数を用いて、前記それぞれの処理剤投与量で、前記処理水の測定した蛍光強度の変化と関連付けられることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記処理剤の残留濃度が、期待された蛍光消光と、検出された蛍光消光との間の差の関数を用いて、前記それぞれの処理剤投与量で、前記処理水の測定した蛍光強度の変化と関連付けられることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記処理剤の残留濃度が、処理剤投与量と関連付けられることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記処理剤の残留濃度を用いて、処理剤投与量の上限を決定することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記処理剤投与量が、前記上限以下に自動的に維持されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記設定値が自動的に変更されて、処理水の質の変化の主な原因となることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法において、前記処理剤投与量が、前記設定値に自動的に維持されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記処理剤が、蛍光トレーサで標識されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記処理剤が、蛍光トレーサで追跡されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記水処理プロセスが、固−液分離プロセスであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記固−液分離プロセスが、一又はそれ以上の凝固剤又は凝集剤、又はこれらの組み合わせを用いて、前記水を処理して、水と、凝固固体及び凝集固体の混合物を形成し、水から前記凝固固体及び凝集固体を分離するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記固−液分離プロセスが、膜分離プロセスであり、前記凝固固体及び凝集固体が、膜を通るろ過によって水から分離されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記膜分離プロセスが、逆浸透前処理プログラムであり、前記水が、一又はそれ以上のろ過助剤で処理されて、凝固固体及び凝集固体の混合物を形成し、前記凝固固体及び凝集固体の少なくとも一部が、逆浸透膜を通る水のろ過に先立って、前記水から取り除かれることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記凝固固体及び凝集固体の一部が、メディアフィルタを通るろ過によって、前記水から取り除かれることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法において、前記フィルタ助剤が、ミョウバン、ポリ塩化アルミニウム、塩化第2鉄、硫酸第2鉄、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、及びEpi−DMAから選択された一又はそれ以上の凝固剤であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法において、前記蛍光トレーサが、フルオレセイン、ローダミンB、及びローダミンWTから選択されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法において、前記蛍光トレーサで標識したフィルタ助剤が、ルミノール、ローダミン、又はフルオレセインで標識したポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)であることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−533438(P2008−533438A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552273(P2007−552273)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/001948
【国際公開番号】WO2006/078847
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】