説明

処理装置

【課題】 ヒートポンプ装置によって殺菌対象の流体を加熱し、更に冷却まで行うことにより、加熱後に温度を低下させる必要のある加熱対象を効果的に加熱可能な処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 ヒートポンプ式殺菌装置1は、圧縮機11、加熱用熱交換器31、減圧装置としての膨張弁13及び冷却用熱交換器33等から構成される冷凍サイクルを備えたヒートポンプ1Bにより、流路部1Aを流れる殺菌対象を加熱殺菌可能に構成される。流路部1Aでは、殺菌対象の加熱殺菌及び客が行われ、その後当該殺菌対象の利用媒体に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、放熱部、減圧装置及び吸熱部等で構成される冷凍サイクルを備えたヒートポンプ装置を用いて、各種の細菌やカビなどを含む流体を加熱する処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば水耕栽培や食品加工業や養殖業、病院などにおいて使用される各種の病原細菌やカビなどを含む牛乳、水、空気などの流体の殺菌を行う殺菌装置として、圧縮機、放熱部、減圧装置及び吸熱部等を順次接続することにより構成される冷凍サイクルを備えたヒートポンプ装置を用いた殺菌装置が提案されている。このヒートポンプ式殺菌装置は、ヒートポンプ内に冷媒が充填されており、圧縮機で高温高圧に圧縮された冷媒ガスが放熱部で放熱するときの熱を利用して殺菌対象である流体を加熱殺菌するものであった。
【0003】
また、加熱殺菌された後の殺菌対象としての流体は、吸熱部の吸熱作用を利用して加熱前の温度まで冷却されていた。これにより、加熱殺菌された高温の流体を当該吸熱部の冷媒により効果的に冷却して、所定温度まで低下した後、使用することが可能となっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2760377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のヒートポンプ式殺菌装置では殺菌処理が終了し、殺菌装置が停止されると、殺菌装置内で殺菌対象である流体が流れる流路内が常温となり、特に夏場などの外気温が高い場合には、前記流路中の各所、例えば、中温部や冷却部などに残留している流体中に僅かな菌が残留しているだけで、前記流路内に大量の菌が増殖する場合がある。
【0005】
そして、次回運転時には、特に運転開始初期において、上記の如き大量の菌を含む流体が殺菌装置から送り出される恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、加熱殺菌装置を起動する前に、装置内の前記流路内を加熱殺菌する手段を備えた熱処理装置及び殺菌装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の処理装置は、加熱対象である流体が循環する流路と、この流路の流体を加熱する加熱手段と、この加熱手段により加熱された前記流体を利用する利用手段と、を備え、 前記加熱手段により前記流体を加熱した後、この加熱された流体を前記利手段に供給する処理を所定の休止期間をはさんで実行する第1の加熱モードと、前記休止期間において、前記流体の前記利用手段への供給を停止した状態で前記流体を加熱する第2の加熱モードとを実行することを特徴とする熱処理装置において、前記第2の加熱モードは、前記休止期間の前半に実施することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の処理装置は、請求項1に記載の発明に加えて、前記加熱手段により加熱された前記流体を前記利用手段に供給する前に冷却する冷却手段を備え、前記冷却手段による前記流体の冷却を停止した状態で前記第2の加熱モードを実行することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の処理装置は、圧縮機と、放熱部と、吸熱部と、膨張手段と、を含む冷凍回路と、前記放熱部に接続され前記冷凍回路からの放熱を利用して加熱対象を加熱する加熱手段と、前記吸熱部に接続され前記冷凍回路の吸熱を利用して前記加熱手段により加熱された加熱対象を冷却する冷却手段と、を含む加熱対象流路と、を備え、前記加熱対象を前記加熱手段にて加熱処理した後、この加熱対象を前記冷却手段に搬送して冷却する処理を所定の休止期間をはさんで実行する通常加熱運転と、前記休止期間において、前記吸熱部による吸熱を減少又は停止させた状態で前記加熱対象を加熱する流路加熱運転と、を実行することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の処理装置は、請求項3に記載の発明に加えて、前記流路加熱運転は、前記休止期間の前半に実施することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の処理装置は、請求項3に記載の発明に加えて、前記加熱手段と前記冷却手段との間の前記加熱対象の温度を測定する温度センサと、外気温を測定する外気温センサと、を備え、前記流路加熱運転は、前記休止期間において前記温度センサにより測定される前記加熱対象の温度が前記外気温センサにより測定される外気温まで低下する前に実行されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の処理装置は、圧縮機と、放熱部と、吸熱部と、膨張手段と、を含む冷凍回路と、前記放熱部に接続され前記冷凍回路からの放熱を利用して加熱対象を加熱する加熱手段と、前記吸熱部に接続され前記冷凍回路の吸熱を利用して前記加熱手段により加熱された加熱対象を冷却する冷却手段と、を含む加熱対象流路と、外気温センサと、を備え、前記加熱対象を前記加熱手段にて加熱処理した後、この加熱対象を前記冷却手段に搬送して冷却する処理を所定の休止期間をはさんで実行する通常加熱運転を行う熱処理装置において、前記休止期間に前記外気温センサにより外気温を測定し、前記外気温が所定値以上の場合には前記吸熱部による吸熱を減少又は停止させた状態で前記加熱対象を加熱する流路加熱運転を実行した後、前記通常加熱運転を実行する第1の運転モードを実行し、前記外気温が所定値未満の場合には、前記流路加熱運転を行うことなく前記通常加熱運転を実行する第2の運転モードを実行することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の処理装置は、請求項6に記載の発明に加えて、前記外気温センサによる外気温の測定は、前記休止期間の後半に行うことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の処理装置は、請求項2乃至請求項7に記載の発明に加えて、前記加熱手段と前記冷却手段との間に、前記加熱対象を貯留可能とする貯留部を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の処理装置は、圧縮機と、放熱部と、吸熱部と、膨張手段と、を含む冷凍回路と、前記放熱部に接続され前記冷凍回路からの放熱を利用して加熱対象を加熱する加熱手段と、前記吸熱部に接続され前記冷凍回路の吸熱を利用して前記加熱手段により加熱された加熱対象を冷却する冷却手段と、を含む加熱対象流路と、前記加熱手段と前記冷却手段との間に配設された前記加熱対象を貯留可能とする貯留部と、を備え、前記加熱対象は、前記加熱手段で加熱後、前記貯留部にて貯留された後、前記冷却手段に搬送されて冷却されることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の処理装置は、請求項1乃至請求項9に記載の発明に加えて、前記加熱対象には菌を含み、前記加熱手段により前記菌を殺菌することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヒートポンプ装置によって流体を加熱し、更に冷却までできるので、特に加熱後に温度を低下させる必要のある加熱対象、例えば水耕栽培システムに使用される養液やジュース、牛乳等の飲料の加熱処理を効果的に実行可能な処理装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本実施例におけるヒートポンプ式熱処理装置を用いたヒートポンプ式殺菌装置は、殺菌対象として、イチゴやトマトなどの水耕栽培に使われる水耕栽培システムに使用される養液の加熱殺菌を行うものである。
【実施例1】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態を詳述する。図1は、本発明の一実施例としてのヒートポンプ式殺菌装置1の概略構成図を示している。
【0020】
図1のヒートポンプ式殺菌装置1は、養液の流路としての流路部1Aと、冷凍サイクルを備えたヒートポンプ装置であるヒートポンプ1Bと、流路の殺菌を行う場合の殺菌モードを決定及び制御する手段としての制御部80と、を備える。
【0021】
図1中の2は養液の利用側であり、養液タンク2Aと、養液タンク2Bと、養液調整タンク2Cと、肥料成分添加装置2D、2E、2Fと、未使用の養液を貯留する貯留タンク2Gと、イチゴやトマトなどの作物が植えられる栽培床2Hと、を含む。
【0022】
養液タンク2Aには栽培床2Hで植物等に吸収されずに流出した細菌類を含む殺菌前の養液が貯留され、養液タンク2Bには前記細菌類を含む養液を加熱殺菌し、冷却した後の養液が貯留される。尚、前記植物等に吸収されずに養液タンク2Aに流出する養液、即ち本ヒートポンプ式殺菌装置1でリサイクル可能な養液量は、栽培床2Hにて使用される全養液量の3割程度であり、残り7割の不足分は、前記貯留タンク2Gに貯留される未使用養液により補充される。また、養液調整タンク2Cは、前記栽培床2Hで使用され作物に養分(肥料成分)を吸収された後、ヒートポンプ式殺菌装置1で殺菌されることにより養分が不足した養液に、肥料成分である窒素、リン、鉄などを添加して養液中の養分量の調整を行う装置であり、上記肥料成分がそれぞれ添加装置2D、2E、2F内に収納されており、養液の状態に応じて添加が必要な肥料成分が養液調整タンク2C内に投入される。
【0023】
養液タンク2Aには、ポンプ3が介設された流路4を介して熱回収用熱交換器32の吸熱側32Aと、加熱用熱交換器31の加熱部5と、バッファタンク6と、熱回収用熱交換器32の放熱側32Bと、冷却用熱交換器33の冷却部9と、モード切換手段としての三方弁42と、が接続される。更に、三方弁42の一方の出口が流路43を介して養液タンク2Bに接続され、養液の循環サイクルが構成される。尚、三方弁42の他方の出口は、流路44を介して直接ポンプ3が介設された流路4に接続される。また、前記熱回収用熱交換器32は、吸熱側32Aを通る殺菌処理前の養液と放熱側32Bを通る殺菌処理した後の養液との熱交換を行うものである。尚、バッファタンク6は、加熱用熱交換器31で加熱され所定の温度(本実施例では90℃)となった養液が一定温度以上を一定時間維持できるように、加熱用熱交換器31の加熱部5と熱回収用熱交換器32の放熱部32Bとの間に配設されるものである。
【0024】
ヒートポンプ1Bには、冷媒配管15を介して圧縮機11と、加熱用熱交換器31の放熱部12と、空気放熱器46と、減圧装置としての電動式膨張弁13と、冷却用熱交換器33の吸熱部14と、空気熱交換器60と、冷却用熱交換器33をバイパスして冷媒を空気熱交換器60に流すバイパス回路70と、該バイパス回路70への冷媒流通を制御する冷媒流路制御装置としての電磁弁72と、が接続される。また、冷却用熱交換器33から圧縮機11の吸込側に至る冷媒回路中に設けられる空気熱交換器60は、冷媒と空気とを熱交換させるための熱交換器であり、この空気熱交換器60の近傍には当該空気熱交換器60に空気を通風するための熱交換用の送風機60Fが設置されている。尚、前記空気放熱器46は加熱用熱交換器31の出口側に設けられ、冷媒と空気とを熱交換させるための補助放熱部であり、近傍には冷却用送風機46Fが設置されている。
【0025】
ここで、加熱用熱交換器31において、放熱部12を流れる冷媒は、養液が循環する加熱部5を流れる養液と対向流となるように設けられる。また、冷却用熱交換器33においても、吸熱部14を流れる冷媒は、養液が循環する冷却部9と交熱的に設けられている。尚、圧縮機11は密閉容器内に電動要素(モータ)とそれにより駆動される回転圧縮要素とを収納して成るロータリコンプレッサである。尚、本実施例においてヒートポンプ1Bには、冷媒として可燃性及び毒性等を考慮して自然冷媒である二酸化炭素(CO2)が充填されている。また、二酸化炭素を冷媒として用いた場合には、従来のフロン等の冷媒に比べてより高温が得易く、特に、前記加熱用熱交換器31における養液の殺菌に必要な高温、例えば+90℃を容易に得ることができる。
【0026】
図1中、50は加熱用熱交換器31から流出した養液の温度(温度B)を検出する温度センサであり、当該温度センサ50にて検出される養液の温度に基づき、ポンプ3が制御されている。また、51は冷却用熱交換器33から流出した養液の温度(温度A)を検出する温度センサであり、当該温度センサ51の検出する温度に基づき、空気放熱器46の送風機46Fの運転制御が行われている。
【0027】
また、52は加熱用熱交換器31に流入する養液の温度を検出する温度センサであり、当該温度センサ52の検出温度に基づき、圧縮機11の運転が制御されている。53は圧縮機11から出た冷媒の温度を検出する冷媒温度センサで、当該冷媒温度センサ53の検出する温度に基づき膨張弁13の開度制御が行われている。更に55は空気熱交換器60に流入する冷媒の温度を検出する。
【0028】
尚、54は外気温センサであり、当該外気温センサ54の検出温度(外気温)に基づき、制御部80は、後に詳述する経路の殺菌における殺菌モードの決定と制御のために、電磁弁72及び三方弁42を制御する。
【0029】
以上の構成により、本実施例におけるヒートポンプ式殺菌装置1の動作について、図1及び図2を参照して説明する。
【0030】
通常殺菌運転
まず、通常殺菌運転について説明する。この通常殺菌運転とは、ヒートポンプ式殺菌装置で、殺菌対象としての養液を加熱殺菌した後、冷却し、利用側(利用媒体)に供給する運転である。
【0031】
ヒートポンプ1Bの圧縮機11に設けられた図示しないターミナルから、圧縮機11の密閉容器内に設けられた前記電動要素のステータコイルに通電されると、電動要素が起動して図示しないロータが回転する。この回転により図示しない回転軸と一体に設けられた偏芯部に嵌合されたローラが前記回転圧縮要素のシリンダ内を偏芯回転する。これにより、前記シリンダの低圧室側に吸入された低圧の冷媒ガスは、ローラとベーンの動作により圧縮されて例えば+120℃の高温高圧の冷媒ガスとなり、シリンダの高圧室側から吐出される。また、このとき、冷媒は超臨界圧力まで圧縮されている。
【0032】
ここで、係る圧縮機11の起動時において、空気熱交換器60の近傍に設置された送風機60Fの回転数を通常の運転時より所定時間上昇させるように制御されている。即ち、通常の運転を行った後に圧縮機11が停止されると、冷媒回路中で最も温度が低い冷却用熱交換器33や空気熱交換器60に冷媒が集まり易く、この状態で圧縮機11を再起動した場合、冷却用熱交換器33や空気熱交換器60内に溜まった液冷媒が気化して通常の冷媒回路の状態となるまでに著しく時間を要する。また、再起動時に液のまま冷媒が戻って圧縮機11が液圧縮してしまい破損する恐れもあった。
【0033】
しかしながら、圧縮機11の起動時に空気熱交換器60の送風機60Fの回転数を上昇させることで、空気熱交換器60に溜まった冷媒を早期に蒸発させることができる。これにより、冷媒回路内の状態を迅速に安定な状態へと導くことができるようになる。また、冷却用熱交換器33からの液冷媒も空気熱交換器60にて蒸発させることができるようになる。従って、圧縮機11の起動時に圧縮機11に液冷媒が吸い込まれる不都合を回避することができるようになる。
【0034】
一方、圧縮機11から吐出された冷媒は加熱用熱交換器31に流入し、そこで殺菌対象である養液と熱交換することにより熱を奪われて冷却される。尚、このヒートポンプ1Bは、高圧側が超臨界圧力となるので、加熱用熱交換器31において冷媒(CO2)は液化することなく超臨界の状態を維持したままで温度が低下する。
【0035】
そして、加熱用熱交換器31の放熱部12で冷却された冷媒は、空気放熱器46にて更に冷却された後、膨張弁13に至る。尚、膨張弁13の入口では冷媒は未だ超臨界の状態である。そして、この冷媒は膨張弁13における圧力低下により、気体/液体の二相混合状態とされ、その状態で冷却用熱交換器33に流入する。そして、冷却用熱交換器33にて冷媒は蒸発し、冷却用熱交換器33の冷却部9を流れる養液から吸熱(熱の汲み上げ)し、殺菌対象としての養液を冷却した後、空気熱交換器60に流入する。
【0036】
これにより、冷却用熱交換器33から出た冷媒を確実にガス化させることができるようになるので、圧縮機11に液冷媒が吸い込まれる液バックを防止し、圧縮機11が液圧縮にて損傷を受ける不都合を回避することができるようになる。
【0037】
また、冷却用熱交換器33の冷却部9を流れる養液の温度が非常に高い場合、冷媒がこの養液から吸熱することにより過熱されて、温度センサ55の測定温度が高温となる場合もある。この場合には、空気熱交換器60において空気と熱交換させることで、冷媒は空気に熱を奪われて当該空気温度である+20℃程度まで冷却される。
【0038】
これにより、冷却用熱交換器33から出た冷媒の温度を当該空気熱交換器60にて空気温度(+20℃程度)まで冷却することができるようになり、圧縮機11に吸い込まれる冷媒の温度が高すぎて、圧縮機11が過熱されたり、当該圧縮機11の電動要素が過熱されて、モータ薪線などの劣化や損傷等が起きるという不都合を未然に回避することができるようなる。
【0039】
尚、空気熱交換器60を出た冷媒は再び圧縮機11内に吸い込まれ、圧縮されるサイクルを繰り返す。
【0040】
一方、養液タンク2Aの養液は、前述の如く温度センサ50にて検出される養液の温度(温度B)が+90℃となるように、例えば2L/minの割合で、養液の循環サイクルである流路部1A内を養液が流れるようにポンプ3が運転されている。即ち、養液の温度(温度B)が+90℃より高い場合には流路部1B内を流れる養液の流速が2L/minより速くなるようにポンプ3の回転数を上昇させる。また、養液の温度(温度B)が+90℃より低い場合には流路部1A内を流れる養液の流速が2L/minより遅くなるようにポンプ3の回転数を低下させる。このように、温度センサ50の出力に基づき、ポンプ3の運転を制御することで、養液の温度(温度B)を予め設定した所定の温度(本実施例では、+90℃)に維持することができるようになり、養液の加熱殺菌を確実に行うことができるようになる。
【0041】
そして、貯留槽2の養液タンク2Aの殺菌前の養液はポンプ3により熱回収用熱交換器32の吸熱側32Aに流入し、ここでこの殺菌前の養液は、加熱用熱交換器31で加熱殺菌された後の熱回収用熱交換器32の放熱側32Bを流れる養液から熱を奪い、加熱される。そして、熱回収用熱交換器32の吸熱部32Aから流出した養液は、加熱用熱交換器31に搬送される。この加熱用熱交換器31では、上述した如くヒートポンプ1Bの冷媒と熱交換することにより、養液は+90℃まで昇温される。
【0042】
尚、加熱用熱交換器31に流入する養液の温度を検出する温度センサ52により圧縮機11の運転が制御されている。即ち、温度センサ52にて検出される養液温度が低いときには圧縮機11の回転数を上昇させる。これにより、圧縮機11から吐出される冷媒の温度が上昇するため、加熱用熱交換器31において冷媒と熱交換する養液の温度を前述の所定温度(+90℃)まで上昇させることができるようになる。
【0043】
また、温度センサ52にて検出される養液温度が高いときには圧縮機11の回転数を低下させて、圧縮機11から吐出される冷媒の温度を抑える。これにより、加熱用熱交換器31を通過する養液が+90℃より高温に過熱される不都合を回避することができる。
【0044】
更に、加熱用熱交換器31において冷媒から養液に与えられる熱は超臨界圧力にまで圧縮され、凝縮することのない高温冷媒によるものであるため、加熱用熱交換器31の入口から出口まで略均一の割合で養液を昇温させることができる。そのため、冷媒と養液との温度差が加熱用熱交換器31の入口から出口に渡って略均一化され、熱交換時のエネルギーロスが少なくなり、効率的な加熱殺菌を実現することができるようになる。
【0045】
そして、前記加熱用熱交換器31で加熱された養液は、熱回収用熱交換器32の放熱側32Bを通り、ここで殺菌前の養液と熱交換することにより熱を奪われて、冷却される。
【0046】
尚、上述の如く、養液は加熱用熱交換器31で高温(+90℃)に加熱され殺菌されるわけであるが、この加熱された養液が短時間のうちに熱回収用熱交換器32の放熱側32Bに達した場合には、養液の高温での保持時間が足りず、殺菌が十分に行われない恐れがある。そこで、本実施例の流路部1Aには、加熱用熱交換器31の加熱部5と熱交換用熱交換器32の放熱側32Bとの間に養液の貯留部としてのバッファタンク6が配設される。このバッファタンク6は、加熱用熱交換器31で加熱され高温(+90℃)となった養液が所定温度(例えば+85℃)以上を一定時間維持できるように備えられるものであり、本実施例では、流路部1Aを流れる養液の流速が2L/minの場合に、バッファタンク6の容量を6Lとすることで、養液を所定温度(+85℃)以上で3分間保持することができ、養液の高温での殺菌時間を十分確保できるようになっている。
【0047】
これにより、養液の殺菌が十分行われる前に、熱交換用熱交換器32の放熱側32Bに到達して当該養液の温度が低下してしまい、殺菌処理が不完全になるなどの不都合を回避することができる。尚、養液の高温保持時間(殺菌時間)は殺菌対象により異なるが、その殺菌時間の調整は、バッファタンク6の容量を殺菌対象の種類に合わせた必要な殺菌時間に最適容量に選定するか、ポンプ3の送り量を変更することなどで実現できる。
【0048】
熱回収用熱交換器32の放熱側32Bにて放熱した養液は、その後、冷却用熱交換器33に流入し、上述した如くヒートポンプ1Bの冷媒と熱交換することにより、更に冷却され、所定の温度、例えば+20℃にまで冷却される。
【0049】
ここで、冷却用熱交換器33における養液の冷却温度は、この冷却用熱交換器33から流出した養液の温度を検出する温度センサ51に基づき空気放熱器46の送風機46Fの運転を制御することにより、精度良く制御される。即ち、温度センサ51にて検出される養液の温度(温度A)が例えば+20℃となるように送風機46Fの運転が制御されている。そして、養液の温度(温度A)が+20℃より高い場合には送風機46Fの回転数を上昇させて、空気放熱器46において冷媒をより放熱させると共に、+20℃より低い場合には送風機46Fの回転数を下げて空気放熱器46における冷媒の放熱が少なくなるように制御されている。
【0050】
これにより、養液の温度(温度A)を+20℃に維持することができるようになる。特に、本実施例の水耕栽培システムにおいては、高温の養液(殺菌対象)をそのまま利用側である作物の植えられた栽培床に返送することができないため、本発明のヒートポンプ式殺菌装置を適用した場合に特に有効となる。
【0051】
また、膨張弁13の開度は冷媒温度センサ53にて検出される冷媒温度が+120℃となるように制御されている。
【0052】
尚、上述した如くバイパス回路70は冷却用熱交換器33をバイパスして冷媒を空気熱交換器60に流すバイパス回路であり、電磁弁72にて制御されている。即ち、この電磁弁72は膨張弁13にて減圧された冷媒を冷却用熱交換器33に流すか、又はバイパス回路70に流すかを制御している。そして、温度センサ51にて検出される養液(吸熱対象)の温度が所定の凍結危惧温度、例えば+5℃以下となった場合に、電磁弁72が開放されバイパス回路70に冷媒が流れる。一方、温度センサ51にて検出される養液の温度が+5℃より高い場合には電磁弁72によりバイパス回路70が閉塞されるため、膨張弁13にて減圧された冷媒は冷却用熱交換器33に流れる。
【0053】
このように、温度センサ51にて検出される養液の温度が+5℃以下の場合には膨張弁13にて減圧された冷媒を冷却用熱交換器33に流さずに、バイパス回路70を通過させることで、冷却用熱交換器33において養液は冷却されないようになる。即ち、冷却用熱交換器33にて養液が過度に冷却され、養液の温度が凍結危惧温度である+5℃以下に低下する不都合を回避することができる。これにより、養液が凍結する不都合を未然に回避することができる。
【0054】
尚、バイパス回路70を通過した冷媒は、上述した如く空気熱交換器60に流入し、そこで送風機60Fにて送風される空気から吸熱することにより冷却作用を発揮して蒸発した後、再び圧縮機11に吸い込まれるサイクルを繰り返す。
【0055】
このように、膨張弁13にて減圧された冷媒をバイパス回路70から空気熱交換器60に流すことで、冷却用熱交換器33を通過させること無く、冷媒を蒸発させて、所定の温度(+20℃)で且つ気体の状態とすることができるので、この場合であっても、圧縮機11に吸い込まれる冷媒の状態を最適なものとすることができる。
【0056】
また、本実施例においてバイパス回路70は冷却用熱交換器33のみをバイパスするものとしたが、これに限らず、図1中破線で示す如く膨張弁13も同時にバイパスさせるものとした場合であっても構わない。
【0057】
そして、養液タンク2A及び養液タンク2B内の養液の殺菌処理(通常殺菌運転)が終了すると、作業者は、ポンプ3の運転を停止すると共に、ヒートポンプ1Bの運転を停止する。このとき、流路4、熱回収用熱交換器32、加熱用熱交換器31、冷却用熱交換器33などの流路部1A内の養液は、ポンプ3の運転停止により、内部に残留する。そして次回、ポンプ3が運転され、殺菌処理が再開されるまでは、通常は常温に維持されることとなる。そのため、これら流路部1B内に残留した養液は、運転終了時に僅かな菌が残留しているだけでも、次回の殺菌処理開始時までの休止時間中に、大量の菌が増殖してしまう。そして、大量の菌が混入した養液は、次回の殺菌運転時に養液タンク2B内に流入することとなるため、当該養液の殺菌処理の有効性が失われる恐れがある。
【0058】
前殺菌(第1の経路殺菌モード)
そこで、次に第1の経路殺菌モードとしての前殺菌について説明する。この前殺菌は、常温で長時間放置された流路部1A内を殺菌するための経路殺菌モードであり、上述した通常殺菌運転の運転開始直前に、流路部1A内の加熱殺菌を実行する方法である。ヒートポンプ10は上記通常殺菌運転の場合と同様に、運転を開始して、冷媒を適切な超臨界圧力まで圧縮した後、加熱用熱交換器31に吐出させる。この加熱用熱交換器31において冷媒は養液と熱交換することにより熱を奪われて冷却される。
【0059】
加熱用熱交換器31にて冷却された高圧側の冷媒は空気放熱器46に流入した後、膨張弁13、冷却用熱交換器33若しくはバイパス回路70に流入する。ここでこの前殺菌では、電磁弁72を開放するか又は前記膨張弁13を全開とするものとする。これにより、冷却用熱交換器33において吸熱作用が発生せず、冷媒と養液との熱交換はほとんど行われないため養液は冷却されない状態となる。
【0060】
そして、冷却用熱交換器33を出た冷媒は空気熱交換器60に入り、ここで、周囲の空気と熱交換することにより放熱して、圧縮機に吸い込まれるサイクルを繰り返す。
【0061】
一方、流路4や熱回収用熱交換器32、加熱用熱交換器31、冷却用熱交換器33により構成される流路部1A内の養液は、当該前殺菌では、三方弁42が流路44側に切り換えられていることから、例えば2L/minの割合でポンプ3より熱回収用熱交換器32の吸熱側32Aに流入し、ここで養液は加熱用熱交換器31にて加熱された後の養液から熱を奪い、加熱作用を受ける。そして、熱回収用熱交換器32の吸熱側32Aから流出した養液は、加熱用熱交換器31に搬送される。この加熱用熱交換器31では、上述した如くヒートポンプ1Bの高温の冷媒と熱交換することにより、養液は所定の温度にまで昇温される。
【0062】
係る前殺菌においても、加熱用熱交換器31において冷媒から養液に与えられる熱は、超臨界圧力にまで圧縮された高温冷媒による熱であるため、加熱用熱交換器31の入口から出口まで略均一の割合で養液を昇温させることができる。これにより、冷媒と養液との温度差が加熱用熱交換器31の入口から出口に渡って略均一化され、熱交換時のエネルギーロスが少なくなると共に、バッファタンク6による高温状態の保持により、効率的な加熱殺菌を実現することができるようになる。
【0063】
そして、このように加熱された養液は、熱回収用熱交換器32の放熱側32Bを通り、ここで前記加熱殺菌処理前の養液と熱交換することにより熱を奪われて若干冷却される。その後、養液は上述した如く熱交換が行われない冷却用熱交換器33に流入し、再び三方弁42を介してポンプ3により熱回収用熱交換器32に送出される。これにより、流路部1A内の養液は上述の如く循環しながら昇温され、本実施例では、温度センサ51により検出される温度が+60℃となるまで当該流路部1A内の養液の循環加熱が行われる。尚、このとき、流路部1A内は内部の養液が昇温されることから圧力が上昇するが、ポンプ3と、三方弁42に接続された流路44との間において、養液タンク2Aの流路4が開放して接続されていることから、過度の圧力上昇を防止することができる。
【0064】
このように、前殺菌において、冷却用熱交換器33において養液の冷却を停止させた状態として、更にこの冷却用熱交換器33を出た養液を養液タンク2A、2Bに戻すことなく直接、熱回収用熱交換器32及び加熱用熱交換器31等に循環するため、流路部1A内に残留した養液を効果的に加熱殺菌することができるようになる。
【0065】
そのため上述した通常殺菌運転の運転停止後に、流路部1A内の残留養液が放置され、菌の増殖が生じた場合であっても、前殺菌で流路部1A内の残留養液の加熱殺菌を実行した後に、流路部1A内の残留液を養液タンク2Bに送ることにより、該養液タンク2Bや2Aへの菌の混入を回避することができるようになる。
【0066】
その後、上述した如く温度センサ51により検出される温度が+60℃となった時点で、電磁弁72を閉じることで、冷却用熱交換器33での養液の冷却が再開される。係る養液の冷却では、冷却用熱交換器33を経た養液を養液タンク2A、2Bに戻すことなく直接熱回収用熱交換器32、加熱用熱交換器31に循環しながら、冷却用熱交換器33において冷却を行うため、本前殺菌で加熱された流路部1A内の養液を、通常殺菌運転における温度に近づけることができる。
【0067】
尚、後に詳述するが、本前殺菌を実施する場合には、外気温センサ54により測定した外気温を制御部80により判定し、外気温が所定温度以上で前殺菌が必要と判断された時に、電磁弁72又は膨張弁13、及び三方弁42を上述の如く制御し、前殺菌を実施する。
【0068】
後殺菌(第2の経路殺菌モード)
次に、第2の経路殺菌モードとしての後殺菌について説明する。この後殺菌は、常温で長時間放置された流路部1A内を殺菌するための上記前殺菌とは異なり、通常殺菌運転直後、養液が常温で長時間放置される前に流路部1B内の殺菌を実施する方法である。即ち、後殺菌は上述した通常殺菌運転の終了後直ぐに流路部1A内の殺菌を行う殺菌方法であり、特に通常殺菌運転の終了後、次の通常殺菌運転までの間の外気温が低く、流路部1A内の菌の増殖が少ない冬季に好適に用いられる経路の殺菌モードである。
【0069】
後殺菌では、上述の如き通常殺菌運転が終了した後、ポンプ3及びヒートポンプ1Bの運転を停止する前に、まず、上記前殺菌と同様に三方弁42を流路44側に切り換えると共に、ヒートポンプ1Bの電磁弁72を開放するか又は前記膨張弁13を全開とする。これにより、上記前処理と略同様な殺菌処理が養液に対して行われる。
【0070】
尚、当該後殺菌は、上述した如く通常殺菌運転終了直後に実施されるため、後殺菌開始時には、流路部1A内の養液、特に加熱用熱交換器31と熱回収用熱交換器32の放熱側32Bとの間の養液は高温となっている。このため、通常殺菌運転において養液に加えられた熱(余熱)を有効に利用して経路殺菌を行うことができるため、前殺菌に比べて消費電力を抑制でき、より効率的な殺菌が可能となると共に、経路殺菌の時間を大幅に短縮することができるようになる。
【0071】
以上の3種の殺菌運転、即ち通常殺菌運転と前殺菌と後殺菌とを備えた本実施形態のヒートポンプ式殺菌装置1の運転フローについて、以下で詳述する。
【0072】
図2は、本実施例のヒートポンプ式殺菌装置1の運転フローを示したものであり、このヒートポンプ式殺菌装置1の運転は、前殺菌101と、通常殺菌運転102と、後殺菌103と、外気温測定110による運転判断と、により構成される。尚、本実施例では、まず前殺菌101を行う場合から説明するが、本発明のヒートポンプ式殺菌装置1は、必ずしも前殺菌101から動作を開始する必要は無い。
【0073】
まず、前殺菌101により流路部1A内が殺菌処理された後、養液を加熱殺菌し、冷却してから利用媒体に供給する運転、即ち通常殺菌運転102が実施される。そして、通常殺菌運転が終了すると、例えば夜間など、次の通常殺菌運転102が開始されるまでの間はヒートポンプ式殺菌装置1は停止状態で放置される。
【0074】
その後、外気温センサ54により、外気温測定110が行われる。そして、外気温が15℃以上の場合(例えば夏季など)には、上述した如く夜間にヒートポンプ式殺菌装置1が停止中、流路部1A内で菌が増殖した可能性が高い。そこでこのような場合には、再び前殺菌101を行い、流路部1A内の養液を殺菌処理した後、通常殺菌運転102を実行する。そして、通常殺菌運転102の終了後は、再び外気温測定110を行う(手順A)という順番でヒートポンプ式殺菌装置1による養液の殺菌処理が行われる。
【0075】
他方、前記外気温測定110において外気温が15℃未満である場合(例えば冬季など)には、夜間などのヒートポンプ式殺菌装置1の停止中でも菌が増殖していない可能性が高いと判断し、前殺菌102は実施せずに通常殺菌運転102を行う。そして、このように外気温が低く、夜間などのヒートポンプ式殺菌装置1の停止中にも菌の増殖が少ないと判断される場合においても、通常殺菌運転102中に、冷却用熱交換器33などの比較的養液温度が低い流路で菌が増殖している可能性があることから、通常殺菌運転102の終了後には必ず後殺菌103を行い、その後再び外気温測定110を行う(手順B)という順番でヒートポンプ式殺菌装置1による養液の殺菌処理が行われる。
【0076】
尚、手順A及び手順Bにおける外気温測定110の結果によって、手順Aから手順Bへ、又は手順Bから手順Aへと動作を繰り返す場合と、常に手順Aのみ若しくは手順Bのみ実施しつづける場合と、が起こることとなる。
【実施例2】
【0077】
次に、図3を参照して、本発明のヒートポンプ式殺菌装置の第2の実施例を説明する。図3は、この場合のヒートポンプ式殺菌装置の運転フローを示したものであり、本実施例において、上記実施例1と同一の符号が付されているものは同一若しくは同様の機能、効果を有するものであるとする。
【0078】
図3において、停止状態判定120は、上記実施例1における、夜間などにヒートポンプ式殺菌装置1が停止している時の各種状態を勘案して次の運転動作を判定する判定手段である
次にこの場合のヒートポンプ式殺菌装置1の動作について説明する。
【0079】
まず、上記実施例1と同様に、前殺菌101により流路部1A内が殺菌処理された後、養液を加熱殺菌し、冷却してから利用媒体に供給する運転、即ち通常殺菌運転102が実施される。そして、通常殺菌運転が終了すると、例えば夜間など、次の通常殺菌運転102が開始されるまでの間はヒートポンプ式殺菌装置1は停止状態で放置される。
【0080】
その後、停止状態判定120が行われる。上記実施例1においては、ヒートポンプ式殺菌装置1の停止後、次回の通常殺菌運転102又は前殺菌101の前の外気温測定により、次の運転動作を決定したが、本実施例では、例えば停止中の積算外気温や平均外気温などを測定及び算出し、この結果が、所定値以上の時は、夜間などのヒートポンプ式殺菌装置1が停止中に流路部1A内で菌が増殖した可能性が高いと判断する。そこでこのような場合には、再び前殺菌101を行い、流路部1A内の養液を殺菌処理した後、通常殺菌運転102を実施する。そして、通常殺菌運転102の終了後は、再び外気温測定110を行う(手順A)という順番でヒートポンプ式殺菌装置1による養液の殺菌処理が行われる。
【0081】
他方、停止中の積算外気温や平均外気温の測定及び算出の結果が所定値未満である時は、夜間などのヒートポンプ式殺菌装置1の停止中でも菌が増殖していない可能性が高いと判断し、前殺菌102は実施せずに通常殺菌運転102を行う。そして、このような場合、即ち夜間などのヒートポンプ式殺菌装置1の停止中にも菌の増殖が少ないと判断される場合においても、通常殺菌運転102中に、冷却用熱交換器33などの比較的養液温度が低い流路で菌が増殖する可能性があることから、通常殺菌運転102の終了後には、必ず後殺菌103を行い、その後再び外気温測定110を行う(手順B)という順番でヒートポンプ式殺菌装置1による養液の殺菌処理が行われる。
【0082】
尚、本実施例においても上記実施例1と同様に、手順A及び手順Bにおける外気温測定110の結果によって、手順Aから手順Bへ、又は手順Bから手順Aへと動作を繰り返す場合と、常に手順Aのみ若しくは手順Bのみ実施しつづける場合と、が起こることとなる。
【0083】
これにより、本実施例では、通常殺菌運転102の後の、次の動作判断を夜間などにヒートポンプ式殺菌装置1が停止している時の積算温度又は平均温度により判断するため、より正確な殺菌処理が可能となる。
【実施例3】
【0084】
次に、図4を参照して、本発明のヒートポンプ式殺菌装置の第3の実施例を説明する。図4は、この場合のヒートポンプ式殺菌装置1の概略構成図を示したものであり、本実施例において、上記実施例1及び2と同一の符号が付されているものは同一若しくは同様の機能、効果を有するものであるとする。
【0085】
図4において、34はヒータであり流路部1A内の養液を加熱可能に配設される。このヒータ34は流路部1A内の養液を加熱可能な場所ならどこにでも配設可能であるが、好適には冷却部9付近に設けられる。
【0086】
ヒータ34は、上記各実施例における第1及び第2の経路殺菌モードとしての前殺菌及び後殺菌における養液の加熱殺菌手段としてのヒートポンプ1Bの代わりに、流路部1A内の養液の加熱手段として用いられるが、好ましくは後殺菌において使用される。これにより、後殺菌において、通常殺菌運転が終了した後、ポンプ3は駆動したままとし、ヒートポンプ1Bの運転を停止しても当該ヒータ34により、通常殺菌運転において養液に加えられた熱(余熱)を利用して、特に通常殺菌運転後温度の低い、冷却用熱交換器33の近辺を有効に加熱して殺菌を行うことができる。
【0087】
尚、ヒータ34は、前殺菌及び後殺菌においてヒートポンプ1Bと同時に使用してもよいものとする。この場合には、当該ヒータ34により、特に冷却用熱交換器33付近が効果的に加熱されるため、前殺菌及び後殺菌の運転時間を短縮することができるようになる。
【0088】
以上詳述した如く、本発明の上記各実施例によれば、養液を加熱殺菌した後、すぐにヒートポンプの吸熱部を利用してこの養液を冷却することができるようになるので、殺菌後、養液が高温で返送することができない、上記各実施例の如き再循環式の水耕栽培システムにおいて非常に有効である。
【0089】
また、本発明のヒートポンプ式熱処理装置は、上記各実施例の如き水耕栽培システム用の養液の殺菌のみに用いられるわけではなく、例えばジュースや牛乳等の飲料についても適用可能である。特に、ジュースや牛乳等の飲料では、風味を損なうことのない殺菌が必要となるため、本発明のヒートポンプ式熱処理装置を用いた殺菌装置を適用することにより加熱直後に冷却が可能となるため、飲料の風味が損なわれることなく加熱殺菌処理を行うことができるようになる。
【0090】
また、上記各実施例では、加熱殺菌温度を90℃としたが、これに限らず、上記の如きジュースや牛乳等の飲料において、より低温での殺菌が必要な場合には、ヒートポンプ1Bにおいて、膨張弁13の調整や冷媒の封入圧力等の変更により、容易に必要な加熱殺菌温度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の処理装置の一実施形態を示した構成概略図である。
【図2】本発明の処理装置の第1の実施形態の動作フローを示す、フローチャートである。
【図3】本発明の処理装置の第2の実施形態の動作フローを示す、フローチャートである。
【図4】本発明の処理装置の第3の実施形態を示した構成概略図である。
【符号の説明】
【0092】
1 ヒートポンプ式殺菌装置
1A 流路部
1B ヒートポンプ
2 貯留槽
2A、2B 養液タンク
3 ポンプ
4 流路
5 加熱部
6 バッファタンク
9 冷却部
11 圧縮機
12 放熱部
13 膨張弁
14 吸熱部
15 冷媒配管
31 加熱用熱交換器
32 熱回収用熱交換器
33 冷却用熱交換器
34 ヒータ
42 三方弁
43、44 流路
46 空気放熱器
50、51、52、53、55 温度センサ
54 外気温センサ
60 空気熱交換器
80 制御部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象である流体が循環する流路と、この流路の流体を加熱する加熱手段と、この加熱手段により加熱された前記流体を利用する利用手段と、を備え、
前記加熱手段により前記流体を加熱した後、この加熱された流体を前記利手段に供給する処理を所定の休止期間をはさんで実行する第1の加熱モードと、
前記休止期間において、前記流体の前記利用手段への供給を停止した状態で前記流体を加熱する第2の加熱モードとを実行することを特徴とする熱処理装置において、
前記第2の加熱モードは、前記休止期間の前半に実施することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記加熱手段により加熱された前記流体を前記利用手段に供給する前に冷却する冷却手段を備え、
前記冷却手段による前記流体の冷却を停止した状態で前記第2の加熱モードを実行することを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
圧縮機と、放熱部と、吸熱部と、膨張手段と、を含む冷凍回路と、
前記放熱部に接続され前記冷凍回路からの放熱を利用して加熱対象を加熱する加熱手段と、前記吸熱部に接続され前記冷凍回路の吸熱を利用して前記加熱手段により加熱された加熱対象を冷却する冷却手段と、を含む加熱対象流路と、を備え、
前記加熱対象を前記加熱手段にて加熱処理した後、この加熱対象を前記冷却手段に搬送して冷却する処理を所定の休止期間をはさんで実行する通常加熱運転と、
前記休止期間において、前記吸熱部による吸熱を減少又は停止させた状態で前記加熱対象を加熱する流路加熱運転と、を実行することを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
前記流路加熱運転は、前記休止期間の前半に実施することを特徴とする請求項3に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記加熱手段と前記冷却手段との間の前記加熱対象の温度を測定する温度センサと、外気温を測定する外気温センサと、を備え、
前記流路加熱運転は、前記休止期間において前記温度センサにより測定される前記加熱対象の温度が前記外気温センサにより測定される外気温まで低下する前に実行されることを特徴とする請求項3に記載の熱処理装置。
【請求項6】
圧縮機と、放熱部と、吸熱部と、膨張手段と、を含む冷凍回路と、
前記放熱部に接続され前記冷凍回路からの放熱を利用して加熱対象を加熱する加熱手段と、前記吸熱部に接続され前記冷凍回路の吸熱を利用して前記加熱手段により加熱された加熱対象を冷却する冷却手段と、を含む加熱対象流路と、
外気温センサと、を備え、
前記加熱対象を前記加熱手段にて加熱処理した後、この加熱対象を前記冷却手段に搬送して冷却する処理を所定の休止期間をはさんで実行する通常加熱運転を行う熱処理装置において、
前記休止期間に前記外気温センサにより外気温を測定し、
前記外気温が所定値以上の場合には前記吸熱部による吸熱を減少又は停止させた状態で前記加熱対象を加熱する流路加熱運転を実行した後、前記通常加熱運転を実行する第1の運転モードを実行し、
前記外気温が所定値未満の場合には、前記流路加熱運転を行うことなく前記通常加熱運転を実行する第2の運転モードを実行することを特徴とする熱処理装置。
【請求項7】
前記外気温センサによる外気温の測定は、前記休止期間の後半に行うことを特徴とする請求項6に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記加熱手段と前記冷却手段との間に、前記加熱対象を貯留可能とする貯留部を備えたことを特徴とする請求項2乃至請求項7に記載の熱処理装置。
【請求項9】
圧縮機と、放熱部と、吸熱部と、膨張手段と、を含む冷凍回路と、
前記放熱部に接続され前記冷凍回路からの放熱を利用して加熱対象を加熱する加熱手段と、前記吸熱部に接続され前記冷凍回路の吸熱を利用して前記加熱手段により加熱された加熱対象を冷却する冷却手段と、を含む加熱対象流路と、
前記加熱手段と前記冷却手段との間に配設された前記加熱対象を貯留可能とする貯留部と、を備え、
前記加熱対象は、前記加熱手段で加熱後、前記貯留部にて貯留された後、前記冷却手段に搬送されて冷却されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項10】
前記加熱対象には菌を含み、前記加熱手段により前記菌を殺菌することを特徴とする請求項1乃至請求項9に記載の熱処理装置を用いた殺菌装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−327(P2006−327A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178934(P2004−178934)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】