説明

処理装置

【課題】導電性、生産性に優れた透明導電膜の製造するための処理装置およびその処理装置を用いて形成された透明導電膜を提供すること。
【解決手段】対向電極の間に長尺フィルム状支持体を連続的に搬送してプラズマに曝し透明導電膜を形成する処理室を有する処理装置において、長尺フィルム状支持体が通過する入口側に隣接して処理室内の気圧よりも低い気圧に設定される第1予備室が設けられ、
長尺フィルム状支持体は、第1予備室を経て処理室に導入され、処理室にて透明導電膜が形成された後に処理室から排出されるようになされており、第1予備室の長尺フィルム状支持体が通過する入口側、第1予備室と処理室の間、処理室の長尺フィルム状支持体が通過する出口側のそれぞれに長尺フィルム状支持体が通過する通過口が設けられ、長尺フィルム状支持体が通過する通過口のそれぞれは、ニップロールにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ重合により透明導電膜を被処理体上に形成する処理装置およびその処理装置を用いて形成された透明導電膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、可視光域(400〜700nm)に於いて吸収を殆ど持たずに透明で、且つ、導電性を有する材料「透明導電膜」が、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)の電極として、また光学材料や感光材料の帯電防止の用途で多く用いられている。
【0003】
透明導電膜の製造方法としては、酸化錫・酸化インジウム等をターゲット材として真空中でスパッタリングにより製膜する手法や微粒子化して分散液とし塗布乾燥後UV照射等でゾルゲル反応を促進させ製膜する方法が採られている。
【0004】
しかし前者の方法は、スパッタリングに伴う被処理体の高温化のため被処理体が限定されてしまう欠点の他、スパッタリングの収率が低いためにランニングコストが高くなるというデメリットがある。
【0005】
一方後者の方法は、微粒化・分散調液・塗布・乾燥といった多くのプロセスが必要となるばかりでなく、微粒子を被処理体に直接固定化定着させ、且つ、強力な接着性を得る為には、バインダー樹脂が必要になり、導電性が悪くなって性能劣化につながる。
【0006】
こうした中で、導電性を劣化させることなく、生産性にも優れ、簡易に透明導電膜を製造出来る方法が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、導電性、生産性に優れた透明導電膜の製造するための処理装置およびその処理装置を用いて形成された透明導電膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、下記の構成により達成された。
1.反応性ガスの存在下で電界を印加することによりプラズマを発生させる一対の対向電極が配設され、前記対向電極の間に長尺フィルム状支持体を連続的に搬送して前記プラズマに曝し透明導電膜を形成する処理室を有する処理装置において、
前記長尺フィルム状支持体が通過する入口側に隣接して前記処理室内の気圧よりも低い気圧に設定される第1予備室が設けられ、
前記長尺フィルム状支持体は、前記第1予備室を経て前記処理室に導入され、該処理室にて透明導電膜が形成された後に該処理室から排出されるようになされており、
前記第1予備室の前記長尺フィルム状支持体が通過する入口側、該第1予備室と前記処理室の間、該処理室の該長尺フィルム状支持体が通過する出口側のそれぞれに該長尺フィルム状支持体が通過する通過口が設けられ、
前記長尺フィルム状支持体が通過する通過口のそれぞれは、ニップロールにより形成されていることを特徴とする処理装置。
2.反応性ガスの存在下で電界を印加することによりプラズマを発生させる一対の対向電極が配設され、前記対向電極の間に長尺フィルム状支持体を連続的に搬送して前記プラズマに曝し透明導電膜を形成する処理室を有する処理装置において、
前記長尺フィルム状支持体が通過する入口側に隣接して前記処理室内の気圧よりも低い気圧に設定される第1予備室が設けられ、且つ、
前記長尺フィルム状支持体が通過する出口側に隣接して前記処理室内の気圧よりも低い気圧に設定される第2予備室が設けられるとともに、
前記長尺フィルム状支持体は、前記第1予備室を経て前記処理室に導入され、該処理室にて透明導電膜が形成された後に、前記第2予備室を経て排出されるようになされており、
前記第1予備室の前記長尺フィルム状支持体が通過する入口側、該第1予備室と前記処理室の間、該処理室と前記第2予備室の間及び該第2予備室の該長尺フィルム状支持体が通過する出口側のそれぞれに該長尺フィルム状支持体が通過する通過口が設けられ、
前記長尺フィルム状支持体が通過する通過口のそれぞれは、ニップロールにより形成されていることを特徴とする処理装置。
3.前記第1予備室の前記長尺フィルム状支持体が通過する入口側に隣接して該第1予備室の気圧よりも低い気圧に設定される第3予備室が設けられるとともに、
前記長尺フィルム状支持体は、前記第3予備室を経て前記第1予備室に導入されるようになされており、
前記第3予備室の前記長尺フィルム状支持体が通過する入口側、該第3予備室と前記第1予備室の間のそれぞれに該長尺フィルム状支持体が通過する通過口が設けられ、
前記長尺フィルム状支持体が通過する通過口のそれぞれは、ニップロールにより形成されていることを特徴とする上記2に記載の処理装置。
4.前記反応性ガスを、インジウム、亜鉛、錫またはチタンを含有する有機ガスおよび酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素またはオゾンから選ばれる少なくとも一つの無機ガスを含有する処理ガスとすることを特徴とする上記1または2に記載の処理装置。
5.前記有機ガスを、ジンクアセチルアセテート、トリエチルインジウム、ジエチル亜鉛、ジメチルジンク、テトラエチルスズまたはテトラメチルスズの溶液に気体を通しバブリングすることにより得られる有機ガスとすることを特徴とする上記4に記載の処理装置。
6.前記処理室内の気圧が、大気圧と同じまたは大気圧近傍に設定されることを特徴とする上記1乃至5のいずれか1項に記載の処理装置。
7.前記処理室内の気圧が、前記第1予備室の気圧より0.03mmAq以上高く設定されることを特徴とする上記6に記載の処理装置。
8.前記処理室内の気圧が、前記第2予備室の気圧より0.03mmAq以上高く設定されることを特徴とする上記7に記載の処理装置。
9.前記第1予備室の気圧が、前記第3予備室の気圧より0.03mmAq以上高く設定されることを特徴とする上記8に記載の処理装置。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明によって、導電性、生産性に優れた透明導電膜を製造することができる処理装置およびその処理装置を用いて形成された透明導電膜を提供することが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳述する。
【0011】
本発明は、透明導電膜の形成方法として、反応性ガスの存在下プラズマ放電を行う処理系に、被処理体をさらす方法を用いたものである。
【0012】
本発明において透明導電膜とは、一般に工業材料としてよく知られているものであり、可視光(400nm〜700nm)を殆ど吸収せず、透明で、しかも良導体の膜のことである。電気を運ぶ自由荷電体の透過特性が可視光域で高く透明であり、しかも電気伝導性が高いため、透明電極や帯電防止膜として用いられる。尚、「膜」と称しているが、用途によってその機能を有する程度に被処理体上に形成出来ればよく、必ずしも被処理体の全部または一部を覆う連続的な膜である必要はない。透明導電膜の組成としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン等の酸化金属がその代表的なものである。
【0013】
本発明において透明導電膜を形成するための反応性ガスとは、プラズマ放電により被処理体上に透明導電膜を形成可能な気体のことである。具体的には、インジウム、亜鉛、錫、チタン等を含有する有機ガスおよび酸素または二酸化炭素の無機ガスの処理ガスのことである。
【0014】
有機ガスは、前記インジウム、亜鉛、錫、チタン等を含有する有機化合物であるジンクアセチルアセテート、トリエチルインジウム、ジエチル亜鉛、ジメチルジンク、テトラエチルスズ、テトラメチルスズ等の溶液に気体を通し、バブリングして発生させることが出来る。バブリングするための気体を前記酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素またはオゾン等の無機ガスとすると効率よく反応性ガスを調製することが出来る。バブリングする溶液がトリエチルインジウム、ジエチル亜鉛、ジメチルジンクにおいては、発火性の問題から二酸化炭素を用いるのが安全である。
【0015】
本発明においてプラズマ放電とは、放電によりプラズマ状態を発生させることである。好ましくは、少なくとも2つの対向する電極に電圧を印加することによって行う。
【0016】
本発明において処理系とは、前記反応性ガス存在下プラズマ放電を行う処理空間のことであり、具体的には壁等で仕切を設けて隔離した処理室のことである。
【0017】
前記処理室内の気圧を、真空に近い0.005Torr〜20Torrで行う真空プラズマ放電処理の場合には、反応性ガスの処理室への導入を調整する必要がある。処理速度を増加させるためには、電極に印加する電圧を高くすることが必要であるが、電界強度を上げすぎると被処理体にダメージを与える場合があるので注意が必要である。
【0018】
また別の態様として、前記処理室の気圧を、大気圧若しくは大気圧近傍で行う大気圧プラズマ処理の場合には、処理室に導入する気体として、前記反応性ガス以外に不活性ガスを導入することが、安定な放電を発生させる上で好ましい。大気圧もしくは大気圧近傍とは、100〜800Torrの圧力下のことであり、好ましくは700〜780Torrの範囲である。
【0019】
不活性ガスはプラズマ放電により反応を起こさない気体のことであり、アルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス、クリプトンガスがある。この中で好ましいものはアルゴンガスとヘリウムガスである。大気圧プラズマ処理時に処理室に導入する不活性ガスは60圧力%以上と、反応性ガスよりも割合を多くすることが放電を安定に発生させることが出来て好ましい。印加する電圧を高くすると処理速度を上げることが出来るが、電界強度を上げすぎると被処理体にダメージを与えることになるので注意が必要である。
【0020】
しかし、前記大気圧プラズマ処理であっても、パルス化された電界でプラズマを発生させる場合には、不活性ガスは必ずしも必要なく、処理系における反応性ガス濃度を増加させることができる。これにより反応速度は大きく増加させることが可能になり、生産効率を上げることが出来る。
【0021】
この時のパルス波形は例えば図1に示す例が挙げられるが、これに限定されず、特開平10−130851号公報の図1(a)〜(d)のパルス波形であってもよい。
【0022】
本発明の図1において、縦軸はパルス電圧、横軸は時間である。
【0023】
パルス電界の立ち上がりまたは立ち下がり時間が、共に40ns〜100μsの範囲であることが好ましい。ここで立ち上がり(立ち下がり)時間とは、図1のパルス波形において、電圧がベースラインから上昇(下降)を始めてから最高点(最低点)に達するまでの時間のことを指す。
【0024】
パルス電界の周波数は、1kHz〜100kHzの範囲が好ましい。
【0025】
1つのパルス電界が印加される時間は1μ〜1000μsであることが好ましい。1つのパルス電界が印加される時間というのは、図1に於ける1つのパルス波形のパルスが印加される時間である。
【0026】
電極に印加する電圧の大きさは、電界強度が1〜100kV/cmとなる範囲が好ましく、大きい程処理速度は増加するが上げ過ぎると被処理体にダメージを与えるのは同様である。
【0027】
パルス電界を、2つの対向する電極のそれぞれに同時に異極の電圧を印加することにより発生させることが好ましい。
【0028】
大気圧プラズマ処理に用いる少なくとも2つの対向する電極は、固体誘電体をその対向面側に設けることが好ましい。固体誘電体としては、焼結セラミックスを用いることが好ましく、その体積固有抵抗値は108Ω・cm以上が好ましい。
【0029】
本発明において被処理体は、透明導電膜を形成させうるものであれば特に限定はないが、透明導電膜の用途の観点からフィルム状支持体であることが好ましい。さらに生産性を考慮すると、長尺のフィルム状支持体であって、前記処理室に連続的に搬入して、透明導電膜の形成を行えるものが好ましい。また、PDPやLCDの透明電極等に用いる場合には、当然ながら透明のフィルム状支持体であることが好ましい。
【0030】
フィルム状支持体の素材としては、セルローストリアセテート等のセルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスチレン(シンジオタクティック)、ポリオレフィン、紙に溶融被覆してあるポリオレフィン樹脂被覆印画紙、あるいはポリエステル樹脂被覆印画紙等を挙げることが出来る。
【0031】
尚、被処理体は、上述の処理室内の少なくとも2つの対向する電極間に載置することにより効率的に透明導電膜の形成が出来る。長尺フィルム状支持体を連続搬送しながら行う場合には、対向する電極をライン状に長さを持って設置し、その間隙を移送するように配置することが好ましい。
【0032】
透明導電膜を形成するにあたり、付与する導電性質の度合いについては、処理系のガス条件(ガス種、ガス濃度、ガス封入条件、圧力等)、電界強度、放電条件等を変化させることにより、適宜コントロールすることができる。このように調整して形成された本発明の透明導電膜の表面比抵抗値は、1011Ω・cm(JIS−K−6911)以下であることが好ましい。
【0033】
以下、本発明に係る処理装置の実施形態について説明するが、本発明はこの形態に限られるものではない。
【0034】
図2は、処理系の気圧を0.005Torr以上20Torr以下として真空プラズマ放電処理を行うための装置の一形態を示す概略構成図である。
【0035】
図2において、連続搬送される長尺フィルム状支持体1を真空下、連続的にプラズマ処理するための処理部が前記支持体1の入口2A(長尺フィルム状支持体が通過する通過口)と出口2B(長尺フィルム状支持体が通過する通過口)を有する間仕切らされた処理室によって構成されている。以下処理部を処理室として説明する。
【0036】
処理室2には、対向する平板電極3、4が設けられている。
【0037】
この一対の電極3、4のうち一方の電極3に高周波電源5が接続され、他方の電極はアース6により設置されており、一対の電極3、4間に電界を印加できるように構成されている。
【0038】
また16より処理ガスを導入し、17より排気ポンプで処理室内を真空に排気する。
【0039】
図示の例では、処理室2に隣接して支持体の入り口側に予備減圧室(第1予備室)10および予備減圧室(第3予備室)11が設けられている。支持体の出口側にも処理室2に隣接して予備減圧室(第2予備室)12が設けられている。またこれらの間仕切りは、ニップロール7、8により行われるが、これに限定されるものではない。
【0040】
予備減圧室を設ける場合、図示のように、支持体1の入口側に二つ、出口側に1つを設ける態様であっても良いが、これに限定されず、支持体1の出入口側に1つづつ設ける態様、あるいは入口側に2つ以上、出口側に2つ以上設ける態様であっても良い。
【0041】
いずれの態様であても、反応性ガス導入時に処理室内の気圧が0.005〜20Torrの範囲にあればよい。
【0042】
減圧下の処理室2に導入する反応性ガスとしては、前述の通りである。
【0043】
図3は、処理系の気圧を大気圧と同じもしくは大気圧近傍として大気圧プラズマ放電処理を行うための装置の一形態を示す概略構成図である。
【0044】
図3において、連続搬送される長尺フィルム状支持体1を大気圧もしくはその近傍の圧力下、連続的にプラズマ処理するための処理室2が前記支持体1の入口2A(長尺フィルム状支持体が通過する通過口)を有する間仕切られた処理室によって構成されている。また出口側も同様である。
【0045】
処理室2には、複数の円筒の電極3を支持体1の両面側に併設している。併設の方法は図示のようにチドリ状に配置してもよいが、対向させて配置することもできる。電極間隔Lは支持体1の上側の電極の最下端と下側電極の最上端との距離で表される。電極間の間隔は均等でもよいし、そうでなくてもよい。
【0046】
円筒電極は内部に導電性金属が配置され、外部に誘電体が配置された二重管構造であり、導電性金属としては銀、金、銅、ステンレス、アルミニウム等の通電可能な材料に誘電体を溶射、蒸着、コーティング等で設けるのが一般的であるが、固体誘電体に導電層をメッキ、蒸着、コーティング、溶射等で設けることも可能である。
【0047】
固体誘電体としては、気密性の高い高耐熱性のセラミックスを焼結した焼結型セラミックスを用いることも好ましい。焼結型セラミックスの材質としては例えば、アルミナ系、ジルコニア系、窒化珪素系、炭化珪素系のセラミックスである。焼結型セラミックスの厚みは0.5mm以上5mm以下が好ましい。また体積固有抵抗は108Ω・cm以上が好ましい。
【0048】
焼結型セラミックスとして、アルミナ系焼結型セラミックスを用いる場合、純度99.6%以上のアルミナ系焼結型セラミックスを用いることが、電極の耐久性を上げる点で好ましい。純度99.6%以上のアルミナ系焼結型セラミックスに関しては、本出願人が先に提案した発明(特願平9−367413号(特開平11−191500号公報))を参考にできる。
【0049】
この焼結型セラミックスを用いた電極の製造方法は、耐久性の高いセラミックスを焼結させ焼結型セラミックスを作り、その焼結型セラミックスにメッキ、蒸着、溶射またはコーティング等して金属導電部を付着させる。
【0050】
また固体誘電体としては、特願平10−300984号(特開2000−133493号公報)に記載の低温ガラスライニングを用いることもできる。
【0051】
またセラミックパイプの中に金属管や棒を挿入することもできる。
【0052】
金属電極は固体誘電体により全部が被覆されていてもよいし、一部が被覆されるだけでもよい。
【0053】
電極間の間隙Lは、0.3〜10mmの範囲が好ましく、より好ましくは3〜7mmの範囲である。
【0054】
この上側電極全体に高周波電源5が接続され、下側電極全体はアース6により設置されており、それぞれの電極群の間に電界を印加できるように構成されている。
【0055】
なお、20、21、22は搬送ロールである。
【0056】
図示の例では、処理室2に隣接して支持体の入り口側に予備室(第1予備室)10が設けられている。支持体の出口側にも表示はしていないが、処理室2に隣接して予備室(第2予備室)が設けられている。またこれらの間仕切りは、ニップロール7により行われるが、これに限定されるものではない。
【0057】
予備室を設ける場合、支持体1の出入口側に1つづつ設ける態様であってもよいが、これに限定されず、あるいは入口側に2つ以上、出口側に2つ以上設ける態様であっても良い。
【0058】
いずれの態様であても、処理室内の気圧が該処理室と隣接する予備室の気圧より高いことが必要であり、好ましくは0.03mmAq以上高いことである。このように、処理室と予備室の間でも圧力差を設けることによって、外部空気の混入を防止し、反応性ガスの有効使用が可能となり、処理効果も更に向上する。また処理室に隣接して入口側に二つ以上、出口側に二つ以上予備室を設けた場合、その予備室と隣り合う予備室の間の差圧は、処理室に近い側の予備室の気圧が高く設定されることが好ましく、0.03mmAq以上高く設定されることが好ましい。このように複数の予備室同士の間でも圧力差を設けることによって、外部空気の混入をより効果的に防止し、反応性ガスの有効使用がより可能となり、処理効果も更に向上する。
【0059】
予備室には、処理ガスの少なくとも1成分を有していることが反応性ガスの効率的な使用と表面処理効果の向上の観点から好ましい。
【0060】
処理室と予備室、予備室同士の部屋には間仕切りされていることが必要であり、かかる間仕切り手段としては、図示のように、ニップロールを設ける態様も好ましい。
【0061】
かかるニップロールは、支持体に対して接触しながら閉鎖ないし間仕切りする機能を有するが、部屋同士を完全に間仕切りできないので、本発明のような差圧を設ける手段が有効に機能するのである。
【0062】
また間仕切り手段としては、支持体に対して所定の間隙を保ち、且つ非接触である態様であってもよい。かかる態様としては図示しないエアーカーテン方式等を採用できる。
【0063】
図3において、図2と同一の符号の部位は同一の構成であるので、その説明を省略する。図3に示す装置を用いて処理するには、先ず搬送される支持体1が処理室2内に入り、その処理室2内で電界が印加される。かかる印加によって支持体の表面がプラズマ処理され、反応が促進される。かかる処理の際に、処理室2に封入する処理ガス中には60%以上の不活性ガスが必要である。しかし、上述のパルス状の電界を印加する場合には、反応性ガスの割合がこれよりも多くなってよい。
【0064】
更に処理室2内の気圧が外圧より高いことが好ましい。
【0065】
処理室2内の気圧を外圧より高くすることによって、外部からの気体が処理室2内に進入しないために、安定した処理ができる。
【0066】
本発明では、処理室2の気圧が外圧より0.03mmAq以上高い態様によって、更に安定した均一な処理ができる。
【0067】
処理室2に封入する不活性ガスとしては、アルゴン(Ar)ガス、ネオン(Ne)ガス、ヘリウム(He)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスなどがある。より安定な処理を行う為には、ヘリウムガスおよびアルゴンガスが好ましい。
【0068】
また残る40%以下を占める反応性ガスとしては、上述の通りである。
【0069】
本発明において、処理室2内に導入するに先立ち、予め不活性ガスと反応性ガスとを混合した処理ガスを使用することが好ましいが、各ガスを独立して導入しても、処理室2内の電極間の雰囲気が、上述した反応性ガスの割合になっていればよい。
【0070】
かかる円筒電極を用いることにより、電極間にガスを導入し易くなることによって、反応性ガスと電極との接触効率が上昇し、その結果処理効果も向上する。また構造的にも簡便で、互換性に優れ、低コストでの処理が可能となる。また支持体の高速搬送においても優れた効果を発揮する。
【0071】
以上説明した態様に用いた電極は円筒型電極であるが、ロール型電極、ガスフロー型曲面電極とすることも好ましい。
【実施例】
【0072】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0073】
プラズマ放電処理装置として以下を用意した。
【0074】
装置1:連続型真空プラズマ放電処理装置(図2に示すもの)
電源周波数:13.56MHz
放電面積 :0.08m2
装置2:連続型大気圧プラズマ放電処理装置(図3に示すもの)
電極 :セラミックスパイプに内面Ni/Cuメッキ(10φ、1mm厚)
放電面積 :0.08m2
電源 :神鋼電機社製高周波電源SPG05−4500
電源周波数:5kHz(サイン波式)
装置3:連続型大気圧プラズマ放電処理装置(図3に示すもの)
装置2とほぼ同じ構成にて電源のみをインパルス式に変更
電源 :ハイデン研究所社製PHF−4K
電源周波数:10kHz
(実施例1)
装置1を使用し、長尺のポリエチレンテレフタレート支持体を連続搬送して、以下の条件でプラズマ放電処理を行った。
【0075】
電源出力 :8000W/m2
真空度 :0.1Torr
処理ガス :トリエチルインジウムと酸素を使用
処理時間 :1min
(実施例2)
装置2を使用し、実施例1と同様にポリエチレンテレフタレート支持体に対し、以下の条件でプラズマ放電処理を行った。
【0076】
電源出力 :8000W/m2
処理ガス :不活性ガス:反応性ガス=8:2(圧力比)の割合となるようにマスフ ローコントローラで流量を制御し、ミキサーで混合したものを処理室へ 導入
不活性ガスとしてヘリウムガスを、反応性ガスとして二酸化炭素をテト ラエチルスズ液中をバブリングしたものを使用(液温は25℃に保った )
処理時間 :1min
(実施例3)
装置3を使用し、実施例1と同様にポリエチレンテレフタレート支持体に対し、以下の条件でプラズマ放電処理を行った。
【0077】
電源出力 :8000W/m2
処理ガス :不活性ガス:反応性ガス=2:8(圧力比)の割合となるようにマスフ ローコントローラで流量を制御し、ミキサーで混合したものを処理室へ 導入
不活性ガスとしてヘリウムガスを、反応性ガスとして二酸化炭素をテト ラエチルスズ液中をバブリングしたものを使用(液温は25℃に保った )
処理時間 :1min
〈評価法〉
上記実施例1ないし3にて処理を行ったポリエチレンテレフタレート支持体表面比抵抗を測定した。結果を下記表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
※JIS規格JIS−K−6911準拠の3端子法により測定した。
(実施例4)
実施例3において処理速度を変化させて処理を行った結果を図4に示す。
【0080】
尚、上記同様に、表面比抵抗については、JIS規格JIS−K−6911準拠の3端子法により測定した。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明において、大気圧プラズマ放電処理に適用出来る電極に印加する電圧のパルス波形を示すものである。
【図2】本発明において、処理系の気圧を0.005Torr以上20Torr以下として真空プラズマ放電処理を行うための装置の一形態を示す概略構成図である。
【図3】本発明において、処理系の気圧を大気圧と同じもしくは大気圧近傍として大気圧プラズマ放電処理を行うための装置の一形態を示す概略構成図である。
【図4】図3のプラズマ放電処理装置を用いて、処理速度を変化させてプラズマ放電処理を行った結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0082】
1 支持体(被処理体)
2 処理室
3、4 電極
5 電源
6 アース
7、8 ニップロール
10、11、12 予備減圧室
20、21、22 搬送ロール
L 電極間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性ガスの存在下で電界を印加することによりプラズマを発生させる一対の対向電極が配設され、前記対向電極の間に長尺フィルム状支持体を連続的に搬送して前記プラズマに曝し透明導電膜を形成する処理室を有する処理装置において、
前記長尺フィルム状支持体が通過する入口側に隣接して前記処理室内の気圧よりも低い気圧に設定される第1予備室が設けられ、
前記長尺フィルム状支持体は、前記第1予備室を経て前記処理室に導入され、該処理室にて透明導電膜が形成された後に該処理室から排出されるようになされており、
前記第1予備室の前記長尺フィルム状支持体が通過する入口側、該第1予備室と前記処理室の間、該処理室の該長尺フィルム状支持体が通過する出口側のそれぞれに該長尺フィルム状支持体が通過する通過口が設けられ、
前記長尺フィルム状支持体が通過する通過口のそれぞれは、ニップロールにより形成されていることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
反応性ガスの存在下で電界を印加することによりプラズマを発生させる一対の対向電極が配設され、前記対向電極の間に長尺フィルム状支持体を連続的に搬送して前記プラズマに曝し透明導電膜を形成する処理室を有する処理装置において、
前記長尺フィルム状支持体が通過する入口側に隣接して前記処理室内の気圧よりも低い気圧に設定される第1予備室が設けられ、且つ、
前記長尺フィルム状支持体が通過する出口側に隣接して前記処理室内の気圧よりも低い気圧に設定される第2予備室が設けられるとともに、
前記長尺フィルム状支持体は、前記第1予備室を経て前記処理室に導入され、該処理室にて透明導電膜が形成された後に、前記第2予備室を経て排出されるようになされており、
前記第1予備室の前記長尺フィルム状支持体が通過する入口側、該第1予備室と前記処理室の間、該処理室と前記第2予備室の間及び該第2予備室の該長尺フィルム状支持体が通過する出口側のそれぞれに該長尺フィルム状支持体が通過する通過口が設けられ、
前記長尺フィルム状支持体が通過する通過口のそれぞれは、ニップロールにより形成されていることを特徴とする処理装置。
【請求項3】
前記第1予備室の前記長尺フィルム状支持体が通過する入口側に隣接して該第1予備室の気圧よりも低い気圧に設定される第3予備室が設けられるとともに、
前記長尺フィルム状支持体は、前記第3予備室を経て前記第1予備室に導入されるようになされており、
前記第3予備室の前記長尺フィルム状支持体が通過する入口側、該第3予備室と前記第1予備室の間のそれぞれに該長尺フィルム状支持体が通過する通過口が設けられ、
前記長尺フィルム状支持体が通過する通過口のそれぞれは、ニップロールにより形成されていることを特徴とする請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記反応性ガスを、インジウム、亜鉛、錫またはチタンを含有する有機ガスおよび酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素またはオゾンから選ばれる少なくとも一つの無機ガスを含有する処理ガスとすることを特徴とする請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項5】
前記有機ガスを、ジンクアセチルアセテート、トリエチルインジウム、ジエチル亜鉛、ジメチルジンク、テトラエチルスズまたはテトラメチルスズの溶液に気体を通しバブリングすることにより得られる有機ガスとすることを特徴とする請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記処理室内の気圧が、大気圧と同じまたは大気圧近傍に設定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記処理室内の気圧が、前記第1予備室の気圧より0.03mmAq以上高く設定されることを特徴とする請求項6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記処理室内の気圧が、前記第2予備室の気圧より0.03mmAq以上高く設定されることを特徴とする請求項7に記載の処理装置。
【請求項9】
前記第1予備室の気圧が、前記第3予備室の気圧より0.03mmAq以上高く設定されることを特徴とする請求項8に記載の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−25033(P2008−25033A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220802(P2007−220802)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【分割の表示】特願平11−110800の分割
【原出願日】平成11年4月19日(1999.4.19)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】