説明

凹凸付き透明板及びそのような板の製造方法

本発明は、一体の透明板(1)であって、その表面(3)の少なくとも一方に、表面(3)の一般平面(π)に対して持ち上がった幾何学的な複数のパターン(5)によって凹凸が付けられた少なくとも1つの部分を含み、各パターンが、一般平面に対して平行な断面を有し、その断面が、パターンのベースから頂点に向けて、表面(3)からの距離を次第に減少させる、一体の透明板に関する。本発明によれば、一般平面(π)に対する領域の傾斜角(α8)が30度よりも小さい凹凸部の領域(8)の面積(S8)が、凹凸部の全面積(Si)の35%よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その少なくとも一方の面上に、前記面の一般平面に対して浮き彫り状態にある複数の形体を有する透明板に関する。本発明はまた、そのような透明板と、放射を収集又は放出できる要素とを有する組立体に関する。さらに、本発明は、そのような透明板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射を集めることができる要素は、特に、放射を起源とするエネルギを集め、例えば太陽電池などのように電気エネルギへと変換できる要素である。放射を放つことができる要素は、特に、例えばOLED(有機発光ダイオード)のように電気エネルギを放射光へと変換できる要素である。
【0003】
従来から、太陽光電池モジュールやOLED装置は、前面基板(又は、ガラス機能を持つ基板)として、エネルギ変換要素、すなわち太陽電池やOLED構造体を機械的に保護する一方で、これらエネルギ変換要素に対して良好な放射の伝達を可能にするような透明板を有している。この透明板は、特に、透明なガラスから作られ、好ましくは、例えばサンゴバン社製ガラスとして市販されている“ディアマント(DIAMANT)”や“アルバリノ(ALBARINO)”ガラスのように、酸化鉄含有量が極めて低いクリアガラス又はエクストラ・クリアガラスから作られる場合がある。
【0004】
太陽光電池モジュールやOLED装置のエネルギ変換効率を高めるための1つの方法としては、板に入射する放射であって、太陽光電池モジュールの場合には空中から生じるような放射であったり、OLED装置の場合には装置内部から生じるような放射であるような、これら放射の反射を制限することによって、前面基板を成す板の透過特性を改善することがある。この目的のために、少なくともエネルギ変換要素から離れるように方向付けられた板の面に、この面の一般平面に対して、浮き彫り状態にある凹状又は凸状の形体を設けることにより凹凸を付けることが知られている。本発明の意味の範囲内で、凹凸が付いた面の一般平面は、形体の部分を形成しないこの面の地点を含む平面か、或いは隣接し合う形体同士の場合にはそれら形体間の接合部にある地点を含む平面となる。形体自体は、特にピラミッド型又は円錐形であってもよいし、例えば溝やリブなどの優先長手方向を有する形体であってもよい。しかしながら、エネルギ変換装置の前面基板として従来技術による凹凸付き板の使用による効率の増加は依然として制限されたままである。これが、特に圧延による従来の凹凸付け技術が、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3で説明されたように、現時点では完全な幾何学形状を有する形体を形成させない理由である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第03/046617号
【特許文献2】国際公開第2005/111670号
【特許文献3】国際公開第2007/015019号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
板に入射する放射の透過特性を最適化する透明板であって、例えば太陽光電池モジュールやOLED装置のようなエネルギ変換装置に前面基板として一体化した場合、特に、装置のエネルギ変換要素に対して又はこの要素から入射する放射の透過を最適化でき、以て従来装置に比して本装置の効率を増加できる透明板を提供することが、本発明が特に模索する課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の1つの対象は、
一体構造の透明板であって、
少なくともその一方の面上に、前記面の一般平面に対して浮き彫り状態にある幾何学的な複数の形体によって凹凸が付けられた少なくとも1つの部分を備え、
各形体は、前記一般平面に平行な断面を有し、
前記断面が、前記形体のベースから頂点に向けて、前記板の前記面からの距離に伴って徐々に減少していく、
一体構造の透明板において、
前記一般平面に対する傾斜角が30度よりも小さい凹凸部の領域の面積が、前記凹凸部の全面積の35%よりも小さく、
‐(i) 前記板の厚さに対する各形体の厚さの割合ρが0.2以上の所定値を有し、かつ前記板の厚さが4.5mmから8mmまでの範囲内にある、又は、
‐(ii) 前記板の厚さが3mmから8mmまでの範囲内にある所定値であり、かつ前記板の厚さに対する各形体の厚さの割合ρが0.3以上である、
一体構造の透明板である。
【0008】
本発明の意味の範囲内で、透明板は、少なくとも、その板が前面基板として一体化される目的の装置のエネルギ変換要素として利用される波長域又は同要素によって放出される波長域において透明となる板を指している。一例として、多結晶シリコンに基づく太陽電池からなる太陽光電池モジュールの場合、その板は400nm〜1200nmの波長域において透明であることが好ましい。更に発明の枠組みの中で、板は、形体と板が単一の物体を形成するという意味では一体構造であり、形体は、例えば板の成形の際に、又は板を圧延することによって、板の局所的に表面が変形することによって形成される。従って、板の形体は板と同じ化学組成を有する。更に本発明の意味の範囲内で平面に対し浮き彫り状態にある形体は、この平面に対し突出又は陥凹した形体のことである。
【0009】
本発明による板の他の有利な特徴に従って、これらの特徴を、個々に又は技術的に可能な任意の組み合わせで導入することができる。
− 前記形体の頂点を通る少なくとも1つの平面に沿うと共に前記一般平面に垂直である断面において、各形体が、前記一般平面に対しゼロでない平均傾斜角でそれぞれ傾斜した2つの側部によって境界付けられ、前記一般平面に対する前記領域の傾斜角が30度よりも小さい凹凸部の領域が、或る形体の一方の側部と、その形体の他方の側部又は隣接する形体の側部との間の接続領域を形成する。
− 前記板が3〜8mmの厚さを有する。
− 各形体が0.5mm以上の厚さを有する。
− 前記一般平面に対する1つの形体の各側部の前記平均傾斜角が、40度と65度との間、好ましくは45度と60度の間にある。
− 前記板の厚さに対する各形体の厚さの所定の割合ρに対して、前記板の厚さが、前記板の前記面における、入射する放射の、前記板を通る最大透過率に対応する最適な値を有する。
− 条件(i)が満たされているときに、前記板の厚さに対する各形体の厚さの割合ρが0.25以上である。
− 条件(ii)が満たされているときに、前記板の厚さに対する各形体の厚さの割合ρが0.3以上である。
− 前記板が、ガラス、好ましくはクリア又はエクストラ・クリアな透明ガラスから作られている。
− 前記板が透明ポリマーから作られている。
− 前記形体同士が互いに隣接している。
− 前記形体が互いに独立している。
− 前記形体が前記面にわたってランダムに分布している。
− 前記形体はゼロでない頂点半角を有するピラミッド型又は円錐形である。
− 各形体のベースが、5mm以下の直径を有する円の内部に内接される。
− 前記形体が溝又はリブである。
− 前記板が圧延によって形成される。
− 前記板が成形することによって形成される。
【0010】
本発明の別の対象は、
上述の透明板と、放射を収集又は放出できる要素とを具備する組立体であって、
前記要素が、前記板を通過する放射を収集できるように、又は前記板を介して放射を放出できるように、前記板に対して位置決めされ、
前記板の凹凸面が、前記要素から離れるように方向付けられる、
組立体である。
【0011】
最後に、本発明の別の対象は、
上述の板を製造する方法であって、
透明材から作成される板の少なくとも1つの面上に、前記面の一般平面に対し浮き彫り状態にある幾何学的な形体を形成する一方で、各形体の厚さを最大化する段階を含む、
方法である。
【0012】
有利には、前記形体は前記板を圧延することによって形成される。
【0013】
変形例として、前記板を成形することによって前記形体を形成してもよい。
【0014】
本製造方法の第1変形例によれば、一定周期の形体に対し、各形体の深さは、その面の一般平面に対し形体の各辺の平均傾斜角を最大化することで最大となる。
【0015】
本製造方法の第2変形例によれば、その面の一般平面に対する各形体の各辺の一定平均傾斜角に対し、各形体の深さは各形体の周期を最大化することによって最大となる。
【0016】
本発明の特徴及び利点は、単なる一例として添付図面を参照し、本発明による板と組立体の3つの実施形態に関する以下の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態による凹凸の付いた透明板の斜視図である。
【図2】前面基板として、図1の板を有する太陽光電池モジュールの部分的概略断面図である。
【図3】前面基板として、本発明の第2実施形態による凹凸付き透明板を有する太陽光電池モジュールの、図2に示すものと類似した断面図である。
【図4】前面基板として、本発明の第3実施形態による凹凸付き透明板を有する太陽光電池モジュールの、図2に示すものと類似した断面図である。
【図5】前面基板として、図2〜4の板と同じガラス母材を有する、従来技術の凹凸付き透明板を有する太陽光電池モジュールの、図2に示すものと類似した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2に示された本発明の第1実施形態において、本発明の透明板1は圧延パターン化されたエクストラ・クリアな透明ガラス板であって、その面3の一方に、隣接するピラミッド型の形体5の列からなる凸状組織を有するものである。
【0019】
図1に明確に示すように、面3のピラミッド型形体5は、波線Lに沿って整列される。本発明の意味の範囲内において、形体5の整列ラインLは、列をなして互いに隣接して配置されたピラミッド型形体の連続する同一辺によって形成されたラインである。図1に示す実施形態では、各整列ラインLに沿う、連続するピラミッド型形体5の各辺からなる長手方向は次第に修正される。即ち、整列ラインLの一般的方向又は全体方向に重畳されるものは、個々のピラミッド型形体の各辺からなる方向における変化であって、それが整列ラインLの起伏となる。国際公開2006/134301号の出願で教示されているように、そのような面3上のピラミッド型形体5からなるランダム分布は、個々の反射角当たりの板1上反射の平均絶対強度を軽減することができ、反射方向と非反射方向との間の顕著な移行を回避することができる。この結果、板1は一層均一な外観を有し、ギラツキのリスクは最小となる。
【0020】
図2は、前面基板としての板1を有する、本発明による太陽光電池モジュール10を部分的かつ概略的に示したものである。この図が示すように、凹凸5が設けられる板1の面3はモジュール10への放射の入射側となっている。この実施形態では、前面3とは反対側にある板1の面4は全体が平坦であり、1個以上の太陽電池9に対面している。
【0021】
電池に入射する放射のエネルギの電気エネルギへの変換を確実にする各太陽電池9の吸収層は、特に、アモルファスや微結晶シリコンをベースとするに薄膜やテルル化カドミウムをベースとする薄膜であってもよい。この場合には、知られているように各薄膜電池9は、板1の面4側から順に、以下の連続的な多層スタックから構成されている:
‐導電透明層、特に透明導電酸化物(TCO)をベースとし、電池の前面電極を形成するもの;
‐吸収体層;
‐電池の背後電極を成す導電層。
【0022】
実際には、各電池9はモジュール10の前面基板1と、図示しない背後基板との間に保持される。
【0023】
変形例として各電池9の吸収層は、CIS吸収層の名称を持ちかつオプションとしてガリウム(CIS吸収層)、アルミニウム又はイオウを添加することもできる、銅・インジウム・セレンからなるカルコパイライト化合物の薄膜であるかもしれない。この場合、各薄膜電池9は、上述したものと同様の多層スタックを有するが、組立の際、モジュール10の良好な結合性を保証するべく、さらに電池9の前面電極と板1の面4との間に図示しないポリマー積層中間層を備える。積層中間層は、特にポリビニルブチラール(PVB)やエチレン酢酸ビニル(EVA)から作られるかもしれない。
【0024】
更に別の実施形態によれば、各電池9はp−n結合を成す多結晶又は単結晶シリコンウエハから形成されるかもしれない。
【0025】
図3乃至図5は、前面基板として本発明の第2実施形態による透明板101、本発明の第3実施形態による透明板201、従来技術の透明板302を夫々有する太陽光電池モジュール110、210、310を示している。各板101、201、301は、板1のガラスと同じ成分のエクストラ・クリアな透明ガラスからなり、モジュール10の太陽電池9と同様な、1個又は複数の太陽電池109、209、又は309の上部に置かれる。板101、201、301の夫々は、モジュールへの放射入射側を向く前面103、203又は303を有し、各前面には板1に設けたものと同様なピラミッド型の凹凸が設けられ、それは隣接し合う複数のピラミッド型形体105、205又は305から構成され、そのベースは平行四辺形、その頂点半角はゼロ以外となる。
【0026】
従来技術による板301のピラミッド型形体305の夫々は、ベースとして一辺が2mm長の平行四辺形、約45度の頂点半角を有する。従って、各ピラミッド型形体305は、各々が凹凸面303の一般平面πに対して約45度の傾斜角α307で傾斜した4つの側部307によって境界付けられる。各形体305は、凹凸を備えた板301の全厚e301が4mmになるように、一般平面πに対し1mm突き出た厚さe305を有する。
【0027】
本発明の第1実施形態による板1のピラミッド型形体5の夫々は、4つの側部7によって境界付けられ、各側部7が凹凸面3の一般平面πに対して傾斜角α7で傾斜される。第1実施形態の板1と従来技術の板301の違いは、従来が4mmの厚さe301に対し、本願の凹凸を含む全厚さe1は6mmであり、他方、各ピラミッド型形体5は、従来が1mmの厚さe305であるのに対し、面3の一般平面πに対して1.5mm突き出た厚さe5を有している。従って、板1、301は、各板厚e1、e301に対する形体の厚さe5、e305の割合ρが共に0.25となる。図2及び図5を比較すると、板1の各形体5のベースは、板301の形体305のベースと同じ寸法、すなわち一辺長さ2mmの平行四辺形ベースを有するも、各形体5の頂点半角は、従来技術の板301の形体305が45度であるのに対し、約33度であることがわかる。換言すれば、形体の同一周期p5、p305に付き、形体305の側部307の傾斜角α307に対して形体5の側部7の傾斜角α7を増加させることで、第1実施形態の板1の各形体5の厚さe5は従来技術の板301の各形体305の厚さe305よりも増加したということである。
【0028】
同様に、本発明の第2実施形態による板101のピラミッド型形体105の各々は、それぞれが凹凸面103の一般平面πに対して傾斜角α107で傾斜した4つの側部107によって境界付けられている。第1実施形態のように、板101は、従来技術による板301の板厚e301が4mmであるの対し凹凸を含む全厚e1が6mmとなり、板101の各ピラミッド型形体105は、従来技術による板301の形体305厚さe305が1mmであるのに対し、面103の一般平面πに対して1.5mm突き出た厚さe105を有している。従って、板101、301は、各板厚e101、e301に対する形体の厚さe105、e305の割合ρが共に0.25となる。図3及び図5を比較すると、各形体105の頂点半角は、板301の形体305と頂点半角と同じ約45度であるが、各形体105のベースは、板301の形体305に関しては2mmではなく、一辺の長さが3mmになる。換言すれば、浮き彫り状態にある形体の側部107、307の同じ傾斜角α5、α305に当たり、形体305の周期p305よりも形体105の周期p105を増加させることにより、第2実施形態による板101の各形体5の厚さe105は、従来技術による板301の各形体305の厚さe305よりも増加したということである。
【0029】
図4に示した第3実施形態の板201と従来技術の板301の違いは、各ピラミッド型形体205は、従来技術の厚さe205が1mmであるのに対し、面203の一般平面πに対し1.2mm突き出た厚さe205を有しており、その形体を含む板201の全厚e201は板301の厚さe301と等しい4mmであるということである。従って、板については同じ厚さe201、e301であるために、板201の厚さe201に対する板201の形体205の厚さe205の割合ρは、従来技術による板301の0.25に対し0.3に等しくなる。板201の各ピラミッド型形体205は、それぞれが凹凸面203の一般平面πに対して傾斜角α207で傾斜した4つの側部207によって境界付けられる。図4及び図5を比較すると、板201の各形体205のベースは、板301の形体305のベースと同じ寸法、すなわち一辺の長さが2mmの平行四辺形ベースであるが、各形体205の頂点半角は、プレート301の形体305に関しては45度ではなく約40度であることが示される。換言すれば、形体の同一周期p205、p305に当たり、第3実施形態による板201の各形体205の厚さe205は、形体305の側部307の傾斜角α307に対して形体205の側部207の傾斜角α207を増加させることで、従来技術による板301の各形体305の厚さe305に対して増加したということである。
【0030】
好ましくは、本発明による板の凹凸は、元は平坦であったガラス板の表面を圧延することにより造られる。その際ガラスは、その表面に、形成対象となる凹凸の逆の形状を持つ、例えば金属ローラのような固体を使用することでその表面を変形できる温度に加熱される。変形例としては形体を成形によって獲得するようにしても良い。
【0031】
圧延及び成形であるこれら2つの凹凸形成技術を以て、所望の凹凸が今回のように平坦な側部及び鋭角を有する形体からなる場合、例として、ピラミッド型や円錐形の形体だったり、三角形や台形の断面からなる溝やリブの形体の場合、形成される形体は完全な幾何学的形状にはならない。即ち、これら様々なタイプの形体に関しては、図2乃至図5のピラミッド型形体に対しては曲率半径R、rによって概略的に示すように、各形体の頂点と各形体の側部とから構成される谷は丸みを帯びたものとなる。凹凸の頂点の曲率半径Rや谷の曲率半径rは、圧延や成形の特定製造条件により、浮き彫りの形体の厚みと共に大きく異なるものではない。圧延の製造条件によっては、凹凸の頂点の曲率半径Rは凹凸の谷の曲率半径rよりも大きくなる。
【0032】
板1、101、201又は301の形体5、105、205、305の一方の側部7、107、207、307と、その形体の他方の側部又は隣接する形体の側部との接続域であって、その領域の各地点での一般平面πに対する傾斜角α8、α108、α208、α308が30度以下となるような接続域を番号8、108、208、308で示す。これら接続域8、108、208、308は、板のピラミッド型の凹凸5、105、205又は305の丸みを帯びた頂点と谷に対応している。凹凸付き面303の一般平面πに対する傾斜角α308が同じように30度以下となるような従来技術による板301の接続域308において、前記接続域の面積S308の、同板301の全凹凸面積S301に対する割合は約36%となる。比較として、凹凸面3、103、203の一般平面πに対する傾斜角α8、α108、α208が30度以下となるような本発明の各板1、101又は201の接続域8、108、208において、その前記接続域の面積S8、S108、S208の、同板の全凹凸面積S1、S101、S201に対する割合は30%以下となる。前記割合のこの減少は、従来技術の板301の形体305の厚さe305に対して各形体5、105、205の厚さe5、e105、e205を増加させることで、本発明の板1、101、201に対して得られものである。図2乃至図5において、面積S8、S108、S208、S308及びS1、S101、S201、S301は、点線で非常に概略的に示されている。
【0033】
変形例によっては、接続域8、108、208、308は、板の形体の一方の側部7、107、207、307を、同形体の他方の側部又は隣接する形体の側部に接続する領域であって、その領域の各地点における一般平面πに対する傾斜角α8、α108、α208、α308が40度以下となるような各領域として定義される場合もある。この定義の場合、従来技術による板301の接続域308に関し、その凹凸面303の一般平面πに対する傾斜角α308が40度以下となるような前記接続域の面積S308の、同板301の全凹凸面積S301に対する割合は約60%であるのに対し、本発明による各板1、101、201の接続域8、108、208に関し、凹凸面3、103、203の一般平面πに対する傾斜角α8、α108、α208が40度以下となるような前記接続域の面積S8、S108、S208の、同板の全凹凸面積S1、S101、S201に対する割合は45%以下となる。
【0034】
以下の表1は、標準的な太陽光電池モジュールの効率に対して、板1、101、201及び301の面構造の光学的シミュレーションによって決定された、モジュール10、モジュール110、モジュール210及びモジュール310夫々に対する、0度の傾斜角の効率ε10(0°)、ε110(0°)、ε210(0°)、ε310(0°)の増加、及び全傾斜角の年間全効率ε10、ε110、ε210、ε310の増加を示している。標準的モジュールと各モジュール10、110、210、310の違いは、その前面基板が凹凸付き板1、101、201及び301と同じガラス成分を有するも凹凸がない透明板であるということだけである。年間全効率ε10、ε110、ε210、ε310の結果は、南向きで、かつ水平に対し約35度傾斜するように位置決めされたモジュールに対応し、ドイツのケルンでの直接照明のデータを用いて得られたものである。表1に示された効率の値は、実際の効率がより大きくなる可能性があるため、放射の拡散性を考慮することなくシミュレーションによって決定されている。
【0035】
【表1】

【0036】
シミュレーションを構築する前提条件は以下の通りである:
‐板1、101、201、301と標準モジュールの板は、サンゴバングラス社によって市販されている“アリバリノ”の成分と同じ成分のガラスから作られている;
‐モジュール10、110、210、310と標準モジュールに入射する放射は、標準的な太陽スペクトラムに対応するエネルギ分布を持つ;
‐電池に到達する光子数に対する収集電子数の割合に対応する、入射放射の波長の関数として太陽電池9、109、209、309及び標準モジュールの効率の見積もりに関しては、多結晶シリコンベースの太陽電池を参照するものであるが、その結果は他のタイプの太陽電池に適用できるものである。何故ならば、この板に凹凸を付けることによってもたらされる透過特性の改善度は板に入射する放射の波長に著しく依存するものではないからである。
【0037】
表1のデータは、本発明によるモジュール10、110、210夫々の年間全効率の増加度合ε10は、従来技術によるモジュール310の年間全効率の増加度合ε310よりも約1%大きいことを示している。
【0038】
凹凸が無い板に対し凹凸を付けた板の透過率の増加を可能にする基本機構を分析すると、凹凸付き板の形体の厚さを増加したり最大化したりすることで、何故エネルギ変換装置の効率が最大化されるかを理論的に説明することができる。
【0039】
凹凸が付いた板の透過率を増加させる第1の基本機構は、浮き彫り状態にある板の形体の上で多重反射させることで入射放射を捕捉することにある。図2乃至図5から分かるように、小さな入射角で板1,101、201、301に入射する放射光線Eiに対しては、凹凸付き面3、103、203、303の浮き彫り状態にある形体5、105、205、305上で多重反射が起こり、それにより板に入ることのより多い回数の可能性Et1、Et2を提供することになり、しかるに凹凸が付いていない平坦面に対して、板1、101、201、301の凹凸面3、103、203、303上での反射を減少させることになる。
【0040】
しかしながら、形体5、105、205、305は完全なピラミッド型ではなく、それどころか丸みを帯びているため、この多重反射現象は凹凸面3、103、203、303のあらゆる部分で起こるというわけではない。特に、ピラミッド型形体5、105、205、305の丸みを帯びた頂点及び谷に対応する接続領域8、108、208、308においては、図2乃至図5の左側に位置する矢印Er1に示すように入射放射を捕捉する現象は発生しない。この結果として板を通る入射放射の透過率を高めるためには、これら接続領域8、108、208、308の面積が板の凹凸付き全面積に対して減じられるべきである。本発明による板1、101及び201の上記例では、この接続領域の面積減少は、従来技術による板の形体に対する板の形体厚さを増加し、以て隣接する2接続領域間の各形体の面積、即ち多重反射に関与する形体の表面積がより大きくなるようにすることで達成される。
【0041】
更に、放射は板1、101、201、301に入った後、板と電池9、109、209、309や光学積層中間層との間の界面で反射し、さらにもう一度、形体5、105、205、305の面上での反射によって捕えられることで放射の大部分が板を介して透過される。従って、凹凸付き板の反射による損失は、この2番目の放射捕捉によって、凹凸のない板に対して更に減じられる。繰り返して述べるが、板の全凹凸面積に対する接続領域8、108、208、308の面積を減少すること、換言すれば、形体上での多重反射に関与する各形体の面積を増加することは、板を介した放射の第2の捕捉と透過とを増大させることになる。
【0042】
凹凸付き板の透過率を増加させる第2の基本機構は、45度以上の大きい入射角で入射する放射Fiの場合、形体5、105、205、305の面に入射する放射の入射角は平坦面のそれよりも小さいということである。例えば、45度の頂点半角のピラミッド型形体を以て、丸みを帯びた場合でさえも平坦面上、0〜90度で変化する角度で入射する放射Fiは、−45度〜+45度の入射角で形体5、105の表面に入射する。90度に近い大きな入射角は、空気とガラスとの界面での反射に有利に働くため、0度〜90度範囲の入射角を−45度〜+45度の範囲の入射角で置き換えることは反射を実質的に減じることにもなる。従って、板の全凹凸面積に対して接続領域8、108、208、308の面積を減じること、即ち面πに対して最も小さな傾斜を持った板の領域を減じることもまた、この第2機構により板の透過率を増加させることになる。
【0043】
表1と上記論理的説明により、板の全凹凸面積S1、S101、S201に対する接続領域の面積S8、S108、S208の割合が従来技術による板のそれよりも減少した、本発明による板は、同板に入射する放射の透過特性を最適化したことが明白である。この結果、そのような板は前面基板として太陽光電池モジュールに一体化された際には、従来技術によるモジュールの効率に対して本モジュールの効率を実質的に改善する。
【0044】
本発明によれば、凹凸付き板を通る透過率の向上は、多重反射の有無に関係なく、板の形体の有効表面積、換言すれば放射を受けたり透過させたりするのに有効な形体の面積を増加するか、或いは形体表面で観察される入射角を減少させることにより達成されるものである。そうすることで、丸みを帯びた接続領域に対応する板の全凹凸面積の割合は減少し、凹凸付き板の形体の外形は完全な幾何学的形状に近づくことになる。
【0045】
形体の有効面積を増加するため、本発明は第1、第2実施形態に示すように、従来技術の凹凸付き板に対して本発明の凹凸付き板の厚さを、板の厚さに対する各形体の厚さの割合ρの所定値に向けて増加させることを提案する。これらの実施形態から、本発明の凹凸付き板を通る放射の透過率は、仮に本発明の板の厚さと、板の放射の吸収がより大きくても、従来技術の凹凸付き板を通る放射の透過率に対し向上することが明らかである。事実、本発明者らは、形体厚さとこれら形体の有効面積とを増加することで引き起こされる、本発明による凹凸付き板を介する透過率の増加は、ある板厚に関しては、特に低い放射吸収率を伴う板組成に対しては、板の厚さを増加させることによって引き起こされる板内部での放射吸収の増加よりも大きくなる可能性があるということを明らかにした。
【0046】
割合ρの所定値のため、本発明による凹凸付き板の厚さは、その板を介する透過率が形体厚さを増加させることで、板厚を増加させることによる板内部の増加した吸収率と出来る限り上手に対抗させる最適な厚さ値であって、換言すれば板の凹凸面に入射する放射の板通過の際の透過率が最大になる板厚値に等しくなるように選択されることが好ましい。特に、従来技術による凹凸付き板の割合ρの従来の値であるような0.2以上の割合ρの所定値のため、本発明による凹凸付き板の厚さは4.5mm以上となるように選択されることが好ましい。太陽光電池モジュールやOLED装置のようなエネルギ変換装置の前面基板としての用途の範囲で、本発明による凹凸付き板の厚さは又、装置重量を中程度に留めるために8mm以下に保持することが好ましい。
【0047】
形体の有効面積を増加させる別の方法は、第3実施形態に示したように、所定板厚に対する従来技術による凹凸付き板の割合ρに対し、板厚に対する各形体の厚さの割合ρを増加させることにある。その際、放射を受け、透過させる形体の有効面積は、夫々の形体の厚さを増すことで増加する。この場合、例えば3mm〜4mmの従来の板厚に対して本発明による凹凸付き板の割合ρは、0.3ρになるように選択されることが好ましい。加えて、圧延によって凹凸が付けられたガラス板の場合、圧延工程故に、ガラスが圧延工程で使用されるローラに貼り付いてしまう問題を回避するためにρ=0.5の最大値が課せられる。
【0048】
本発明は、従来からの製造方法、即ち圧延と成形では、浮き彫り状態にある形体の頂点及び谷の曲率半径は形体の厚さや板厚に関わらず変化しないという、発明者らの開示に基づくものである。これら曲率半径は形体の厚さや板厚に比例して増加するだろうと思われてきた。しかしながら驚いたことには、特に圧延の場合、曲率半径r、Rに対しては数百ミクロン程度といったように、平均曲率半径は圧延や成形などの既定の製造方法に対しては常に同じ状態のままである。発明者らは、これら不変の半径や曲率に基づき、板の透過率が増加するような、より効果的な凹凸構成を得るに至った。この目的を達成するために発明者らは、特に割合ρの所定値のために板厚を増加することを選んでいる。変形例として、発明者らは板厚の所定値のために割合ρを増加することも構想した。
【0049】
本発明は説明・図示した例に限定されるものではない。特に、本発明による板の凹凸構造は、ピラミッド型形体以外の形体からなる組立体から形成されるようにしても良い。特に、本発明による板の形体は円錐形や、溝やリブのような細長い形体でも良い。板の凹凸がピラミッド型や円錐形の形体によって形成される場合、これらの形体は多角形のベース、特に三角形、正方形、長方形、平行四辺形、六角形又は八角形のベースを有することが好ましい。より一般的には、本発明による板の形体は、それらが形体を含む板の面の一般平面πに対し傾斜した少なくとも2つの側部を有するようになっている。加えて、形体の各側部は必ずしも平坦ではないため、一般平面πに対する側部の傾斜角は平均傾斜角として定義され、側部の平均面と平面πとの間で定義される。
【0050】
本発明による板の組織も又、凸構造ではなく、各形体が板の凹凸面の一般平面に対して陥凹形成された凹構造であってもよい。更に、本発明による板の形体も又、互いに隣接することが好ましいが、隣接しなくてもよい。同様に、板の凹凸面上のランダム分布の形体に関しても、それ自体は好ましくも強制的なものではない。本発明による凹凸付き板の形体は上述した実施形態のように互いに同一であってもよく、或いは互いに異なるものでも良い。更に、本発明による板の形体は、板の当該面の全表面上に亘って形成されたものでも良く、或いは変形例としてこの面の1つ以上の異なる領域だけに形成されるものでも良い。
【0051】
更に、本発明による凹凸付き板は、如何なる組成のエクストラ・クリアな透明ガラスから形成されても良く、特にサンゴバン社製ガラスとして市販されている“アルバリノ”ガラスであっても、或いは“ディアマント”ガラスのようにエクストラ・クリアな透明ガラスであっても良い。特に、圧延による凹凸付けは、ガラスフロート装置に一体化された型押しローラによって実行されるものでもよい。本発明による凹凸付き板は又、例えばポリカーボネートやポリメチル・メタクリル樹脂のような透明熱可塑性ポリマーといったように、ガラス以外の透明材料から形成されるものでも良い。
【0052】
本発明の変形例としては図示しないが、本発明による板は、説明・図示した例のように、その面の一方だけでなく、その両面に凹凸を付けるようにしても良い。最後に、本発明による凹凸付き板の1つの有利な用途は、板に入射する放射の透過には最適化特性を有し、例えば太陽光電池モジュール、熱モジュール又はOLED装置のようなエネルギ変換装置の前面基板として使用することにある。しかしながら、本発明による凹凸付き板は又、装飾的な透明要素として使用することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体構造の透明板(1;101;201)であって、
少なくともその一方の面(3;103;203)上に、前記面(3;103;203)の一般平面(π)に対して浮き彫り状態にある幾何学的な複数の形体(5;105;205)によって凹凸が付けられた少なくとも1つの部分を備え、
各形体は、前記一般平面(π)に平行な断面を有し、
前記断面が、前記形体のベースから頂点に向けて、前記面(3;103;203)からの距離に伴って徐々に減少していく、
一体構造の透明板において、
前記一般平面(π)に対する傾斜角(α8;α108;α208)が30度よりも小さい凹凸部の領域(8;108;208)の面積(S8;S108;S208)が、前記凹凸部の全面積(S1;S101;S201)の35%よりも小さく、
‐(i) 前記板(1;101)の厚さ(e1;e101)に対する各形体(5;105)の厚さ(e5;e105)の割合ρが0.2以上の所定値を有し、かつ前記板(1;101)の厚さ(e1;e101)が4.5mmから8mmまでの範囲内にある、又は、
‐(ii) 前記板(201)の厚さ(e201)が3mmから8mmまでの範囲内にある所定値であり、かつ前記板(201)の厚さ(e201)に対する各形体(205)の厚さ(e205)の割合ρが0.3以上である、
一体構造の透明板。
【請求項2】
前記形体の頂点を通る少なくとも1つの平面に沿うと共に前記一般平面(π)に垂直である断面において、各形体(5;105;205)が、前記一般平面(π)に対しゼロでない平均傾斜角(α7;α107;α207)でそれぞれ傾斜した2つの側部(7;107;207)によって境界付けられ、
前記一般平面(π)に対する前記領域の傾斜角(α8;α108;α208)が30度よりも小さい凹凸部の領域(8;108;208)が、或る形体の一方の側部(7;107;207)と、その形体の他方の側部又は隣接する形体の側部との間の接続領域(8;108;208)を形成する、
請求項1に記載の板。
【請求項3】
前記一般平面(π)に対する1つの形体(5;105;205)の各側部(7;107;207)の前記平均傾斜角(α7;α107;α207)が、40度と65度との間、好ましくは45度と60度の間にある、
請求項2に記載の板。
【請求項4】
各形体(5;105;205)が、0.5mm以上の厚さ(e5;e105;e205)を有する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の板。
【請求項5】
前記板(1;101;201)の厚さ(e1;e101;e201)に対する各形体(5;105;205)の厚さ(e5;e105;e205)の割合ρの所定値に対して、前記板(1;101;201)の厚さ(e1;e101;e201)が、前記板の前記面(3;103;203)における、入射する放射の、前記板を通る最大透過率に対応する最適な値を有する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の板。
【請求項6】
前記形体(5;105;205)が互いに隣接し合う、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の板。
【請求項7】
前記形体(5;105;205)はゼロでない頂点半角を有するピラミッド型又は円錐形である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の板。
【請求項8】
前記形体は溝又はリブである、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の板。
【請求項9】
前記凹凸部は圧延によって得られる、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の板。
【請求項10】
前記凹凸部は成形によって得られる、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の板。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の透明板(1;101;201)と、放射を収集又は放出できる要素(9;109;209)とを具備する組立体(10;110;210)であって、
前記要素(9;109;209)が、前記板を通過する放射を収集できるように、又は前記板を介して放射を放出できるように、前記板(1;101;201)に対して位置決めされ、
前記板の凹凸面(3;103;203)が、前記要素(9;109;209)から離れるように方向付けられる、
組立体(10;110;210)。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の透明板(1;101;201)を製造する方法であって、
透明材から作成される板の少なくとも1つの面(3;103;203)上に、前記面(3;103;203)の一般平面(π)に対し浮き彫り状態にある幾何学的な形体(5;105;205)を形成する一方で、浮き彫り状態にある各形体(5;105;205)の厚さ(e5;e105;e205)を最大化する段階を含む、
製造する方法。
【請求項13】
浮き彫り状態にある形体(5;105;205)が、前記板を圧延することにより形成される、
請求項12に記載の製造する方法。
【請求項14】
浮き彫り状態にある形体(5;105;205)が、前記板を成形することにより形成される、
請求項12に記載の製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−533096(P2012−533096A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520036(P2012−520036)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060199
【国際公開番号】WO2011/006957
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】