説明

凹部付き発熱ロール

【課題】
本発明は、発熱機構を備えたロール本体の表面に多数の微小凹部を形成してなる凹部付き発熱ロールを提供し、さらに当該凹部付き発熱ロールを用いたマイクロレンズ、壁紙、電磁波シールドシート、カラーフィルター、偏光板、コンデンサー、電子ペーパー、グラビア印刷物等を提供する。
【解決手段】
ロール本体と、該ロール本体の表面に設けられたゴム層又は合成樹脂層と、該ゴム層又は合成樹脂層の表面に形成されかつ光重合性を有するとともに少なくとも光重合後において耐刷力を有する感光性版材層と、該感光性版材層の表面に形成された微小凹部と、該微小凹部を形成した該感光性版材層の表面に形成された強化被覆層と、を含み、前記ロール本体に発熱機構を設けたことを特徴とする凹部付き発熱ロールとするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱機構を備えたロール本体の表面に多数の微小凹部を形成してなる凹部付き発熱ロールに関し、さらに当該凹部付き発熱ロールを用いて製造されるマイクロレンズ、壁紙、電磁波シールドシート、カラーフィルター、偏光板、コンデンサー、電子ペーパー、グラビア印刷物等に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷では、ロール本体(版母材)に対し、製版情報に応じた微小な凹部(グラビアセル)を形成して版面を製作し当該グラビアセルにインキを充填して被印刷物に転写するものである。一般的なグラビア製版ロール(グラビアシリンダー)においては、アルミニウムや鉄などの金属製中空ロール(版母材)又はCFRP(炭素繊維強化プラスチックス)等のプラスチック製中空ロール(版母材)の表面に版面形成用の銅メッキ層(版材)を設け、該銅メッキ層にエッチング法又は電子彫刻法によって製版情報に応じ多数の微小な凹部(グラビアセル)を形成し、次いでグラビア製版ロールの耐刷力を増すためのクロムメッキ層、DLC層等によって硬質の層を形成して表面強化被覆層とし、製版(版面の製作)が完了する(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、本願出願人は、ゴム又はクッション性を有する樹脂からなるクッション層と、該クッション層の表面に形成されかつ光重合性を有し、少なくとも光重合反応後においてクッション性と耐刷力を有する感光性版材層と、該感光性版材層の表面に形成されたグラビアセルと、該グラビアセルを形成した該感光性版材層の表面に形成された二酸化珪素被膜と、を含み、ペルヒドロポリシラザン溶液を用いて前記二酸化珪素被膜を形成するように構成したクッション性を有するグラビア版についての提案を行っている(PCT/JP2008/057330)。
【0004】
一方、製紙用カレンダー工程等において用いられ、ロールの温度を所定の温度に保持することを可能とした発熱機構を備えた発熱ロールも種々提案されている(特許文献2〜14)。さらに、流体を熱媒体として樹脂フィルムなどの処理物を加熱又は奪熱処理するように構成された発熱ロールも知られている(特許文献15〜21)。
【0005】
上記したグラビア印刷においては、工場環境の温度変化の影響を避けるためにインキ容器に収容されたグラビアインキを所定の温度に維持した状態で印刷作業を行う方法が行われるが、グラビアシリンダーに発熱機構を設けてグラビアシリンダーの温度を所定の温度に維持して印刷作業を行うことは従来試みられていなかった。
【0006】
また、マイクロレンズ、壁紙、電磁波シールドシート、カラーフィルター、偏光板、セラミックコンデンサ、電子ペーパー等の製造工程においても表面に凹部を形成したグラビアシリンダー又はパターンロール等を用いて所定の原料インキ又は塗布材料の印刷又は塗布処理を行う手法が近年開発されているが、これらのグラビアシリンダーやパターンロール等として発熱機構を備える凹部付きロールを適用することについての提案はいまだなされていない。
【特許文献1】WO2006/132085
【特許文献2】特公平06−78767
【特許文献3】特開2005−11561
【特許文献4】特開2005−108474
【特許文献5】特開2005−108475
【特許文献6】特開2005−129371
【特許文献7】特開2005−243402
【特許文献8】特開2005−251678
【特許文献9】特開2006−207827
【特許文献10】特開2006−351208
【特許文献11】特開2007−16973
【特許文献12】特開2007−168222
【特許文献13】特開2007−321792
【特許文献14】特開2007−321793
【特許文献15】特開2006−112475
【特許文献16】特開2006−207826
【特許文献17】特開2007−107676
【特許文献18】特開2007−128751
【特許文献19】特開2007−168223
【特許文献20】特開2007−276412
【特許文献21】特開2008−2562
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した問題点に鑑みなされたもので、発熱機構を備えたロール本体の表面に多数の微小凹部を形成してなる凹部付き発熱ロールを提供することを目的とし、さらに当該凹部付き発熱ロールを用いたマイクロレンズ、壁紙、電磁波シールドシート、カラーフィルター、偏光板、コンデンサー、電子ペーパー、グラビア印刷物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の凹部付き発熱ロールの第1の態様は、ロール本体と、該ロール本体の表面に設けられたゴム層又は合成樹脂層と、該ゴム層又は合成樹脂層の表面に形成されかつ光重合性を有するとともに少なくとも光重合反応後において耐刷力を有する感光性版材層と、該感光性版材層の表面に形成された微小凹部と、該微小凹部を形成した該感光性版材層の表面に形成された強化被覆層と、を含み、前記ロール本体に発熱機構を設けたことを特徴とする。
【0009】
前記強化被覆層としては、クロムメッキ層、DLC層、二酸化珪素被膜等が用いられるが、二酸化珪素被膜が好ましく、ペルヒドロポリシラザン溶液を用いて前記二酸化珪素被膜を形成するのが好適である。
【0010】
本発明の凹部付き発熱ロールの第2の態様は、金属ロール本体と、該金属ロール本体に形成された微小凹部と、を含み、前記金属ロール本体に発熱機構を設けたことを特徴とする。
【0011】
前記凹部については、ネガ型感光性組成物を用いるフォトリソグラフィ法によって形成するのが好適である。
【0012】
本発明の凹部付き発熱ロールの第3の態様は、ロール本体と、該ロール本体の表面に設けられかつ表面に多数の微小凹部が形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆する被覆強化層と、を含み、前記ロール本体に発熱機構を設けたことを特徴とする。
【0013】
前記銅メッキ層の厚さが50〜200μm、前記微小凹部の深度が1〜100μm、及び前記被覆強化層の厚さが0.1〜15μmであることが好ましい。
【0014】
本発明のマイクロレンズは、シート状基材の表面にマイクロレンズ形成用インキを印刷により所定間隔を保って突条状に配置することによって製造されるマイクロレンズであって、本発明の凹部付き発熱ロールを用いて前記マイクロレンズ形成用インキの印刷を行うようにしたことを特徴とする。
【0015】
本発明の壁紙は、壁紙基材の表面に壁紙用インキを印刷により所定のパターンを形成するように配置することによって製造される壁紙であって、本発明の凹部付き発熱ロールを用いて前記壁紙用インキの印刷を行うようにしたことを特徴とする。
【0016】
本発明の電磁波シールドシートは、電磁波シールド基材の表面に導電性ペーストを印刷により所定パターンの電磁波シールド層を形成するように配置することによって製造される電磁波シールドシートであって、本発明の凹部付き発熱ロールを用いて前記導電性ペーストの印刷を行うようにしたことを特徴とする。
【0017】
本発明のカラーフィルターは、カラーフィルター基材の表面にカラーフィルターインキを印刷により所定パターンのカラーフィルター層を形成するように配置することによって製造されるカラーフィルターであって、本発明の凹部付き発熱ロールを用いて前記カラーフィルターインキの印刷を行うようにしたことを特徴とする。
【0018】
本発明の偏光板は、偏光板基材の表面に偏光インキを印刷により所定パターンの偏光層を形成するように配置することによって製造される偏光板であって、本発明の凹部付き発熱ロールを用いて前記偏光インキの印刷を行うようにしたことを特徴とする。
【0019】
本発明のセラミックコンデンサは、セラミック基材上に導電性ペーストを印刷により内部電極を形成するように配置することによって製造されたセラミックコンデンサであって、本発明の凹部付き発熱ロールを用いて前記導電性ペーストの印刷を行うようにしたことを特徴とする。
【0020】
本発明の電子ペーパーは、基材フィルム上に磁性粉を含有するマイクロカプセル化セルをバインダーを介して塗布することにより所定のパターンを形成するように配置することによって製造される電子ペーパーであって、本発明の凹部付き発熱ロールを用いて前記マイクロカプセル化セルを塗布するようにしたことを特徴とする。
【0021】
本発明の印刷物は、被印刷物シートの表面に水性インキ、油性インキ又は相変化インキからなるグラビアインキを印刷により所定のパターンを形成するように配置することによってグラビア印刷される印刷物であって、本発明の凹部付き発熱ロールを用いて前記グラビアインキの印刷を行うようにしたことを特徴とする。なお、本明細書においては、グラビア印刷はダイレクトグラビア印刷の他、グラビアオフセット印刷及びロールツーロール(Roll to Roll)式のグラビア印刷を包含する用語として使用される。グラビアオフセット印刷とは、グラビア版(凹版)に供給されたインキを版と接触しているゴムロールに転移させ、更にワークに付着させる印刷方式をいう。ロールツーロール式印刷とはロールに巻かれたフィルム等のワークに印刷した後、又ロールに巻き取る印刷方式をいう。
【発明の効果】
【0022】
本発明の凹部付き発熱ロールによれば、印刷又は塗布処理において、ロールの温度制御が容易となるため、インキ材料や塗布材料の微細転写や微細転移が容易となり、転写や転移における寸法安定性が向上する効果がある。また、本発明の凹部付き発熱ロールを用いてグラビア印刷を行う場合にはVOC(揮発性有機化合物)の低減を図ることができ、さらに相変化インキを用いるグラビア印刷を効果的に行うことができる利点がある。さらに、本発明の凹部付き発熱ロールを用いることによって、マイクロレンズ、壁紙、電磁波シールドシート、カラーフィルター、偏光板、コンデンサー、電子ペーパー、印刷物等の製造において、インキ材料や塗布材料の微細転写や微細転移が容易となり、性能に優れた最終製品を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0024】
本発明の第1態様の凹部付き発熱ロールについて図1及び図2によって説明する。図1は、本発明の第1態様の凹部付き発熱ロールの製造工程を模式的に示す説明図で、(a)はゴム層又は合成樹脂層を表面に形成しかつ発熱機構を備えたロール本体の全体断面図、(b)はゴム層又は合成樹脂層の表面に感光性版材層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(c)は感光性版材層の表面にマスクを設けた状態を示す部分拡大断面図、(d)は感光性版材層の表面に微小凹部を形成した状態を示す部分拡大断面図、(e)は感光性版材層の表面にペルヒドロポリシラザン塗布膜を形成した状態を示す部分拡大断面図、(f)はペルヒドロポリシラザン塗布膜を過熱水蒸気による熱処理によって二酸化珪素被膜とした状態を示す部分拡大断面図である。図2は、本発明の第1態様の凹部付き発熱ロールの製造方法を示すフローチャートである。
【0025】
図1において、符号10は発熱機構を備えたロール本体で、アルミニウム、鉄等の金属製又は炭素繊維強化樹脂(CFRP)製のロール本体部分11aの表面にゴム層又は合成樹脂層11bを設けたものが用いられる(図2のステップ100)。該ゴム層又は合成樹脂層11bは、1mm〜10cm程度の均一な厚さで表面の平滑度が高いシート状のものを、継ぎ目に隙間が開かないようにロール本体部分11aに巻付け強固に接着し、その後、精密円筒研削、鏡面研磨される。このロール本体10の内部には後述するように発熱機構が設けられている。
【0026】
次に、前記ゴム層又は合成樹脂層11bの表面に感光性版材層12を形成する(図2のステップ102)。感光性版材層12は、光重合性を有し、少なくとも光重合反応後において耐刷力を有する感光性版材により形成される。前記感光性版材としては、感光剤又は感光性シート状物を用いることができ、前記ゴム層又は合成樹脂層11bに感光剤を塗布又は感光性シートを積層し、感光性版材層が形成される。感光性版材の材料として用いられる感光性組成物としては、公知のネガ型感光性組成物及びポジ型感光性組成物が挙げられるが、ネガ型感光性組成物が好適であり、ネガ型感光性組成物を用いてネガ型感光性版材層を形成することが好ましい。前記感光性組成物としては、例えば、感光性エラストマー組成物(ジエン系ポリマー、エチレン性不飽和化合物、及び光重合開始剤を主成分とするもので、例えば特開平5−249695号公報に開示されるものが使用可能である)が挙げられる。
【0027】
前記形成された感光性版材層(即ち、微小凹部を形成する工程前の感光性版材層)の膜厚については特別の限定はなく、版の使用目的と関連して微小凹部の深さや、感光性版材層12の形成の容易性、コスト、現像との関連で適宜に決定できる。
感光性版材層12の膜厚を微小凹部の深さと同じとすることにより、ゴム層又は合成樹脂層11bが露出するように微小凹部が形成されるが(図示せず)、後述するように感光性版材層12の膜厚を微小凹部の深さよりも厚くすることにより、ゴム層又は合成樹脂層11bが露出せず、感光性版材層12の表面に微小凹部が形成される[後記する図1(d)参照]。微小凹部の深さが深い(例えば、深度1mm以上)場合、感光性版材として感光性シート状物を用いることが好ましく、微小凹部の深さが浅い(例えば、深度1mm未満)場合、感光性版材として感光剤を用いることが好ましい。例えば、微小凹部の深度が2〜20μmの場合、感光剤を用いて2〜30μmの感光性版材層を形成することが好適である。
【0028】
続いて、フォトリソグラフィによって、感光性版材層12の表面に微小凹部14を形成する(図2のステップ104)。
フォトリソグラフィの手順について、感光性版材層12としてネガ型感光性版材層を用
いた場合を例として、以下に説明する。
【0029】
図1(c)に示すように、感光性版材層12の表面にグラビア画像であるマスク画像を有するマスク13を積層し又は密着して重ね、光線(紫外線等)を必要な時間だけ照射し、感光性版材層12の必要な部分に光重合反応を生じさせ、現像液に対して非画線部を不溶化する。
前記マスク13の形成方法は特に制限はないが、例えば、カーボン含有ポリマーよりなる黒色コート剤又はネガ型のフォトクロミック剤をコーティングにより成膜し、YAGレーザ或いは半導体レーザを照射することにより、グラビア画像の非画線部に対応させて感光性版材層14を飛ばして露出するか透過するように形成する方法や、画像の非画線部が透明であるネガ型のマスクフィルムを用いる方法、感光剤を前記感光性版材層にコートし電磁波照射により光重合反応を起こし現像することにより形成するネガ型のレジスト画像とする方法等が挙げられる。
【0030】
前記カーボン含有ポリマーよりなる黒色コート剤としては、ニトロセルロース又はパラヒドロキシスチレンと、ブラックカーボンを混ぜ合わせてなるものを選択すると、半導体レーザによる焼付けが良好にでき省エネルギーが図れる為、好適である。
前記ネガ型のフォトクロミック剤としては、有色のときに紫外線遮蔽性を有しレーザ照射により透明になる有機フォトクロミック分子単独、又は有機フォトクロミック分子と高分子との相溶体を用いることが、半導体レーザによる焼付けが良好にでき省エネルギーが図れる為、好ましい。
【0031】
続いて、図1(d)に示すように、マスク13を除いて現像して感光性版材層12の光重合した部分を残し未露光部分をゴム層又は合成樹脂層11bが露出しない限度に現像液に溶解して微小凹部14を形成し続いて光線(紫外線等)を全面照射して感光性版材層12の光重合しなかった部分も光重合させて安定化処理する。
感光性版材層12に対する現像液は、例えば、特開平4−18564号公報、特開平4−285967号公報、特開平5−249695号公報、特開平6−258847号公報、特開平7−234523号公報、特開平8−95257号公報等に示される現像剤を使用できる。
【0032】
感光性版材層12としてネガ型感光性版材層を用いた場合、感光性版材層は、光(紫外線等)照射により光重合反応を起こし現像液に対して溶性になる感光剤又は感光性シート状物を前記ゴム層又は合成樹脂層にコーティングにより薄膜形成し又は積層してなり、これに対して、マスクは、カーボン含有ポリマーよりなる黒色コート剤、又は、ポジ型のフォトクロミック剤を前記感光性版材層にコートして、レーザ照射により、前記グラビア画像の画線部に対応させて前記感光性版材層を露出又は透過するように形成してなるか、又は、前記画像の画線部が透明であるポジ型のマスクフィルムであるか、又は、感光剤を前記感光性版材層にコートし電磁波照射により光重合反応を起こし現像することにより形成するポジ型のレジスト画像が挙げられる。
【0033】
従って、マスクした感光性版材層を光(紫外線等)照射すると画像の画線部が光重合反応を起こし現像液に対して溶性になり、マスクを除いて現像を行うと、グラビアセルを形成できる。感光性版材層12がネガ型とポジ型のいずれであっても上記の現像液が使用できる。
【0034】
この実施の形態では、感光性版材層12にゴム層又は合成樹脂層11bが露出しないように微小凹部14を形成するが、ゴム層又は合成樹脂層11bが露出するように感光性版材層12の表面に微小凹部14を形成することも可能である。
【0035】
ついで、感光性版材層12の微小凹部14が形成された表面に強化被覆層を形成する。この表面強化被膜としては、クロムメッキ層、DLC層、二酸化珪素被膜等が適用されるが、以下の説明では好ましい例として二酸化珪素被膜を形成する場合について説明する。
【0036】
図1(e)に示すように、感光性版材層12の微小凹部14が形成された表面にペルヒドロポリシラザン溶液を塗布し、ペルヒドロポリシラザン塗布膜16を形成する(図2のステップ106)。
ペルヒドロポリシラザン塗布膜16の形成方法としては、ペルヒドロポリシラザン溶液を、スプレーコート、インクジェット塗布、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布等の公知の塗布方法を用いて塗布すればよい。
【0037】
上記ペルヒドロポリシラザンを溶解する溶剤としては公知のものを用いればよいが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エーテル、THF、塩化メチレン、四塩化炭素、アニソール、デカリン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ソルベッソ、デカヒドロナフタリン、メチルターシャリーブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、リモネン、ヘキサン、オクタン、ノナン,デカン、C8−C11アルカン混合物、C18−C11芳香族炭化水素混合物、C8以上の芳香族炭化水素を5重量%以上25重量%以下含有する脂肪族/脂環式炭化水素混合物、及びジブチルエーテルなどを用いることができる。
これらの溶剤は単独で用いられてもよいし、二種以上を併用してもよい。溶剤の使用量は特に制限はなく、溶液の塗布方法により適宜選択すればよいが、例えば、スプレーコート法やファウンティンコート法により塗布する場合、溶液中にペルヒドロポリシラザンを0.5質量%〜10質量%含むように溶剤を用いることが好ましい。
【0038】
上記した各種溶剤に溶解されて作製されるペルヒドロポリシラザン溶液は、そのままでも過熱水蒸気による加熱処理によって二酸化珪素へ転化するが、反応速度の増加、反応時間の短縮、反応温度の低下、形成される二酸化珪素被膜の密着性の向上等を図る目的で触媒を用いるのが好ましい。これらの触媒も公知であり、例えばアミンやパラジウムが用いられるが、具体的には、有機アミン、例えばC1−5のアルキル基が1−3個配置された第1−第3級の直鎖状脂肪族アミン、フェニル基が1−3個配置された第1−第3級の芳香族アミン、ピリジン又はこれにメチル、エチル基等のアルキル基が核置換された環状脂肪族アミン等が挙げられ、さらに好ましいものとして、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノブチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン等を挙げることができる。これらの触媒はペルヒドロポリシラザン溶液に予め添加しておいてもよく、また過熱水蒸気による加熱処理の際の処理雰囲気中に気化状態で含有させることもできる。
【0039】
続いて、前記ペルヒドロポリシラザン塗布膜16に対して加熱処理、好ましくは過熱水蒸気による加熱処理を行う(図2のステップ108)ことにより二酸化珪素被膜18とする(図2のステップ110)。
前記二酸化珪素被膜の厚さは0.1〜5μm、好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.1〜1μmであることが好適である。
【0040】
前記ペルヒドロポリシラザン塗布膜の加熱処理としては過熱水蒸気によって所定の条件で加熱処理するのが好適である。過熱水蒸気の温度としては、一般的には100℃〜300℃が用いられるが、本発明においては、100℃〜200℃、好ましくは105℃〜200℃が好適に用いられる。
前記加熱処理としては、第1次及び第2次加熱処理を含む複数段の加熱処理とするのがより好ましく、第1次加熱処理の条件を100℃〜170℃、1分〜30分、及び第2次加熱処理の条件を140℃〜200℃、1分〜30分とし、第2次加熱処理の温度を第1
次加熱処理の温度よりも高く設定するようにした構成を採用するのが好適である。さらに、上記第2次加熱処理の温度を第1次加熱処理の温度よりも5℃以上、好ましくは10℃以上高く設定するのがよい。
【0041】
前記加熱処理によって形成された二酸化珪素被膜の表面を冷水又は温水で洗浄する工程をさらに設けることによって、得られた二酸化珪素被膜の硬度をさらに向上させることが可能である。
【0042】
上記した二酸化珪素被膜18を被覆し、この二酸化珪素被膜18を表面強化被覆層として作用させることによって、毒性がなくかつ公害発生の心配も皆無となるとともに耐刷力に優れた凹部付き発熱ロール10aを得ることができる。
【0043】
次に、本発明の第2態様の凹部付き発熱ロールの実施の形態を図3を用いて説明する。図3は本発明の第2態様の凹部付き発熱ロールの製造工程を示すフローチャートである。
【0044】
本発明の凹部付き発熱ロールの第2態様は、金属ロール本体と、該金属ロール本体に形成された微小凹部と、を含み、前記金属ロール本体に発熱機構を設けたものである。前記凹部については、ネガ型感光性組成物を用いるフォトリソグラフィ法によって形成するのが好適である。前記ネガ型感光性組成物は特に制限はなく、公知のネガ型感光性組成物を用いることができるが、後述する第1及び第2の態様のネガ型感光性組成物を用いることが好適である。
【0045】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様としては、(A)カルボキシル基を有し且つエチレン性不飽和結合を有するポリマーと、(B)近赤外線吸収色素と、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーと、(D)アミノアルコール、アミノアルコールの誘導体及び環状アミンからなる群から選択される1種以上のアミン類と、(E)有機ホウ素化合物と、(F)下記式(1)で示されるスルホニル化合物と、を含有する組成を採用することができる。
【0046】
【化1】

【0047】
[式(1)中、Qはアリール基又はヘテロ環基を示し、X〜Xは各々独立してハロゲン原子を示す]
【0048】
前記ポリマー(A)としては、カルボキシル基及びエチレン性不飽和結合を有するポリマーであれば特に限定されないが、例えば、カルボキシル基を有する不飽和化合物を単量体単位として有する(共)重合体を、エチレン性不飽和結合を有する化合物と反応させることにより得られるポリマーが好適に用いられる。前記ポリマー(A)は、カルボキシル基を酸価が30〜500、特に、200〜250になるように含むことが好ましい。重量平均分子量としては1,500〜100,000が好適で好ましく、6,000〜50,000前後のものが更に好ましい。
【0049】
前記カルボキシル基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、及びそれらの誘導体等が好ましく、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
カルボキシル基を有する不飽和化合物を単量体単位として有する(共)重合体は、単量体単位として、前記カルボキシル基を有する不飽和化合物以外の他の不飽和化合物を併用してもよい。該他の不飽和化合物としては、不飽和二重結合を有する化合物が好ましく、スチレン、α−メチルスチレン、m又はp−メトキシスチレン、p−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシメチル−4−ヒドロキシ−スチレン等のスチレン系単量体や、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。これらを単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0051】
前記エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、不飽和アルコール(例えば、アリルアルコール、2−ブテン−1−2−オール、フルフリルアルコール、オレイルアルコール、シンナミルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド等),アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート等),オキシラン環及びエチレン性不飽和結合をそれぞれ1個有するエポキシ化合物(例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、α−エチルグリシジルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、イタコン酸モノアルキルモノグリシジルエステル等)等が好適な例として挙げられる。
【0052】
また、上記ポリマー(A)として、不飽和アルコールによりエチレン性不飽和結合を導入されたものに、さらにエチレン性不飽和結合濃度を大きくするために、前記したオキシラン環及びエチレン性不飽和結合をそれぞれ1個有するエポキシ化合物を反応させ、さらにエチレン性不飽和結合濃度を大きくしたものを用いてもよい。
【0053】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様における前記ポリマー(A)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、45〜65重量%であるのが好ましく、50〜60重量%であるのが更に好ましい。前記ポリマー(A)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0054】
前記(B)近赤外線吸収色素としては、波長700〜1,100nmの赤外線領域の一部又は全部に吸収帯を有する有機又は無機の色素が挙げられ、前記波長域の光を効率良く吸収し、且つ紫外線領域の光は殆ど吸収しないか又は吸収しても実質的に感応しない光吸収色素が好ましく、下記一般式(4)で示される化合物及びその誘導体、下記式(5)で示されるポリメチン系化合物(例えば、特開2001−64255号及びWO2005/049736号等参照)等がより好適に用いられる。
【0055】
【化2】

【0056】
[前記一般式(4)において、R〜Rは各々独立して、水素原子、アルコキシル基、又は3級アミノ基であり、メトキシ基、−N(CH、又は−N(Cが好ましい。Xは対アニオンを示し、XとしてはC−B(C、p−CHSO、又はCFSO等が好ましい。]
【0057】
【化3】

【0058】
[前記一般式(5)において、Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を示し、水素原子又は炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を示し、炭素数1〜8のアルキル基、総炭素数2〜8のアルコキシアルキル基、炭素数1〜8のスルホアルキル基、又は総炭素数2〜9のカルボキシアルキル基が好ましい。R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示し、メチル基が好ましく、またRとRは互いに連結して環状構造を形成してもよく、シクロペンタン環又はシクロヘキサン環を形成していることが好ましい。Yは水素原子、置換基を有してもよいアルコキシ基又は置換基を有してもよいアルキル基を示し、水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。Yは水素原子、ハロゲン原子又は置換アルキル基を示し、H、Cl、Br又はジフェニルアミノ基が好ましい。Zは電荷中和イオンを示し、Cl、Br、I、ClO、BF、CFCO、PF、SbF、CHSO又はp−トルエンスルホネート、Na、K、トリエチルアンモニウムイオンが好ましい。]
【0059】
また、他の光吸収色素としては、例えば、特開平11−231515号公報に記載されているような窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子等を含む複素環等がポリメチン(−CH=)nで結合された、広義の所謂シアニン系色素が代表的なものとして挙げられ、具体的には、例えば、キノリン系(所謂、シアニン系)、インドール系(所謂、インドシアニン系)、ベンゾチアゾール系(所謂、チオシアニン系)、イミノシクロヘキサジエン系(所謂、ポリメチン系)、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、アズレニウム系等が挙げられ、中で、キノリン系、インドール系、ベンゾチアゾール系、イミノシクロヘキサジエン系、ピリリウム系、又はチアピリリウム系が好ましい。特に、フタロシアニンやシアニンが好ましい。
【0060】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様における近赤外線吸収色素(B)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.2〜4.0重量%であるのが好ましく、0.4〜3.0重量%であるのが更に好ましい。前記近赤外線吸収色素(B)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0061】
前記(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、エチレン性不飽和結合を分子中に1個以上有する化合物であれば特に制限はないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフ
ルフリル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のイミド基又はマレイミド基を有する(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、レゾルシノールジ(メタ)アクリレート、p,p’−ジヒドロキシジフェニルジ(メタ)アクリレート、スピログリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ウレタン系ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様におけるモノマー(C)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、25〜46重量%であるのが好ましく、30〜40重量%であるのが更に好ましい。前記モノマー(C)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0063】
前記(D)アミン類における前記アミノアルコールとしては、1分子中にアミノ基とアルコール性の水酸基とを有する有機化合物が使用可能であり、例えば、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等が好適な例として挙げられる。
【0064】
前記(D)アミン類における前記アミノアルコールの誘導体としては、アミノアルコールのエステルや塩が好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルがより好ましい。
【0065】
前記(D)アミン類における前記環状アミンとしては、環の内外にアミン性窒素を有する化合物であれば特に制限はないが、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン及びモルホリノエチルメタクリレート等のモルホリノ基含有化化合物や、ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン及び2−メチルピペラジン等のピペラジン環を有する化合物(ピペラジン系化合物)が好ましい。
【0066】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様における前記アミン類(D)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.3〜5.0重量%であるのが好ましく、0.5〜4.0重量%であるのが更に好ましい。前記アミン類(D)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0067】
前記(E)有機ホウ素化合物としては、例えば、4級ホウ素アニオンのアンモニウム塩の構造を有するものが好ましく、具体的には、下記一般式(6)で示される構造を有する化合物が好適である。
【0068】
【化4】

【0069】
[前記一般式(6)において、R10は、1価の有機基であり、アルキル基が好ましく、n−ブチル基がより好ましい。R11〜R13は各々独立して1価の有機基であり、アリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基、アルキルフェニル基がより好ましい。R14〜R17は各々独立して1価の有機基であり、アルキル基が好ましい。]
【0070】
また、前記一般式(6)で示される化合物として、下記式(7)で示される化合物が好適に用いられる。
【0071】
【化5】

【0072】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様における有機ホウ素化合物(E)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.3〜4.0重量%であるのが好ましく、0.5〜3.0重量%であるのが更に好ましい。前記有機ホウ素化合物(E)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0073】
(F)前記式(1)で示されるスルホニル化合物において、Qはアリール基又はヘテロ環基であり、アリール基は単環のアリール基及び多環のアリール基のいずれでもよく、また置換されていてもよい。前記アリール基としては、例えば、置換又は非置換のベンゼン環、置換又は非置換のナフタレン環が挙げられ、フェニレン基が好ましい。
前記ヘテロ環基は単環又は多環のヘテロ環基であり、芳香族のヘテロ環基が好ましく、他のアリール基と縮環していてもよい。前記ヘテロ環基としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ベンズイミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環等が挙げられ、ピリジン環がより好ましい。
前記スルホニル化合物(F)としては、具体的には、トリブロモメチルフェニルスルホン又は2−[(トリブロモメチル)スルホニル]ピリジンがより好ましい。
【0074】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様におけるスルホニル化合物(F)の含有割合は、
特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.1〜5.0重量%であるのが好ましく、0.3〜4.0重量%であるのが更に好ましい。前記スルホニル化合物(F)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0075】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様は、(J)シランカップリング剤をさらに含有することが好ましい。前記(J)シランカップリング剤を添加することにより、密着性を向上させることができる。前記(J)シランカップリング剤としては、反応性官能基を有するアルコキシシラン化合物が好ましく、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するアルコキシシラン化合物、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を含有するアルコキシシラン化合物、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を有するアルコキシシラン化合物、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノ基を有するアルコキシシラン化合物、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するアルコキシシラン化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル基を有するアルコキシシラン化合物、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するアルコキシシラン化合物、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物、イミダゾールシラン等のイミダゾール基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられ、特に、イミダゾール基を有するアルコキシシラン化合部が、ニッケルやステンレス等の鏡面基材に対する密着性をより向上させることができ好ましい。
【0076】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様におけるシランカップリング剤(J)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0〜3.0重量%であるのが好ましく、0.3〜2.0重量%であるのが更に好ましい。前記シランカップリング剤(J)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0077】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様は、(K)重合禁止剤をさらに含むことが好適である。重合禁止剤としては、エチレン性不飽和結合含有基の重合を抑制しうる化合物であればよいが、例えば、ハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン等のハイドロキノン系化合物;4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール類;フェノチアジン及びフェノチアジン誘導体等のフェノチアジン系化合物;ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸塩;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等のニトロソ系化合物;2
−メルカプトベンゾチアゾール、2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2(4−モルフォリニルジチオ)ベンゾチアゾール等のチアゾール系化合物が挙げられ、チアゾール系化合物がより好ましい。
【0078】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様における重合禁止剤(K)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.1〜7重量%であるのが好ましく、0.1〜5重量%であるのが更に好ましい。前記重合禁止剤(K)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0079】
本発明において用いられるネガ型感光性組成物としては、上記した第1の態様のネガ型感光性組成物の他に下記する第2の態様のネガ型感光性組成物を適用することも可能である。
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様としては、(A)カルボキシル基を有し且つエチレン性不飽和結合を有するポリマーと、(B)近赤外線吸収色素と、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーと、(G)2−メルカプトベンゾオキサゾール及び/又は2−メルカプトオキサゾールと、(H)下記式(2)で示されるジフェニルヨードニウム塩と、を含有する構成を採用することができる。
【0080】
【化6】

【0081】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様における、(A)カルボキシル基を有し且つエチレン性不飽和結合を有するポリマー、(B)近赤外線吸収色素、及び(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーは、前記第1の態様のネガ型感光性組成物と同様の成分であり、これら成分の具体例や含有割合については前述した内容と同様であるので再度の説明は省略する。
【0082】
前記成分(G)は、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトオキサゾール、又は両者の併用であり、連鎖移動剤として用いられる。前記ネガ型感光性組成物の第2の態様における成分(G)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.5〜20重量%であるのが好ましく、3〜15重量%であるのが更に好ましい。
【0083】
前記成分(H)は、前記式(2)で示されるジフェニルヨードニウム塩であり、光開始剤として用いられる。前記ネガ型感光性組成物の第2の態様における成分(H)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.5〜20.0重量%であるのが好ましく、4.0〜15.0重量%であるのが更に好ましい。
【0084】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様は、(I)下記一般式(3)で示されるトリアジン化合物をさらに含有することが好ましい。
【化7】

【0085】
前記一般式(3)において、Rはビニル基又はビニル基を含む1価の有機基であり、ビニル基又は(メタ)アクリロイルオキシアルキル基が好ましい。前記(I)トリアジン化合物としては、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン及び/又は2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン等が好適な例として挙げられる。
【0086】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様における成分(I)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.1〜5.0重量%であるのが好ましく、0.2〜4.0重量%であるのが更に好ましい。前記(I)トリアジン化合物は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0087】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様において、前記ネガ型感光性組成物の第1の態様における成分である(D)アミノアルコール、アミノアルコールの誘導体及び環状アミンからなる群から選択される1種以上のアミン類をさらに含有することが好適である。このアミン類の具体例や含有割合については前述した内容と同様であるので再度の説明は省略する。
【0088】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様において、前記ネガ型感光性組成物の第1の態様の場合と同様に(J)シランカップリング剤をさらに含有するのが好ましい。このシランカップリング剤の具体例や含有割合については前述した内容と同様であるので再度の説明は省略する。
【0089】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様において、前記ネガ型感光性組成物の第1の態様の場合と同様に(K)重合禁止剤をさらに含有するのが好ましい。この重合禁止剤の具体例や含有割合については前述した内容と同様であるので再度の説明は省略する。
【0090】
前記ネガ型感光性組成物(第1及び第2の態様を含めて)は、上記した成分に加えて、必要に応じて、顔料又は染料等の着色剤、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤、表面調整剤等の各種添加剤を配合してもよい。現像促進剤は、例えば、ジカルボン酸又はアミン類又はグリコール類を微量添加することが好ましい。
【0091】
前記着色剤は特に限定されないが、トリアリールメタン系染料が好ましい。該トリアリールメタン系染料としては、従来公知のトリアリールメタン系の着色染料を広く使用できるが、具体的には、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ビクトリアブルーB、オイルブルー613(オリエント化学工業(株)製の商品名)及びこれらの誘導体が好ましい。これらトリアリールメタン系色素は単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0092】
着色染料を用いることにより、現像によりパターンができた際に感光膜の表面のピンホ
ール、ゴミ等がはっきり認識でき修正液(オペーク)で塗込み作業がし易いという効果がある。染料の濃度が高いほど見やすく好ましい。
【0093】
前記ネガ型感光性組成物は、通常、溶媒に溶解した溶液として使用される。溶媒の使用割合は、感光性組成物の固形分総量に対して、通常、重量比で1〜20倍程度の範囲である。
【0094】
溶媒としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はなく、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒を使用できる。セロソルブ系溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等が挙げられる。プロピレングリコール系溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。エステル系溶媒としては、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等が挙げられる。高極性溶媒としては、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶媒やジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。その他、酢酸、あるいはこれらの混合溶媒、更にはこれらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。
【0095】
前記ネガ型感光性組成物は、通常、前記各成分をセロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒等の溶媒に溶解した溶液として金属ロール表面に塗布し自然乾燥した後、高速回転して金属ロール表面で風を切り感光膜内における遠心力による質量作用と表面近傍が若干の負圧状態になることで溶剤残留濃度を6%以下に低減することにより、金属ロール表面に感光性組成物層が形成されたネガ型感光膜とされる。前述した第1及び第2の態様のネガ型感光性組成物により形成されるネガ型感光膜は、露光前のバーニング処理(加熱処理)を行なわなくても十分な密着性を発揮するという効果を奏する。
【0096】
塗布方法として、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等を用いることができる。塗布膜の厚さは1〜10μmの範囲とすることが好ましく、さらに3〜7μmとするのが好ましい。
【0097】
ネガ型感光性組成物層を画像露光する光源としては、波長700〜1,100nmの赤外レーザー光線を発生する半導体レーザーやYAGレーザーが好ましい。他に、ルビーレーザー、LED等の固体レーザーを用いることが出来る。レーザー光源の光強度としては、2.0×10mJ/s・cm以上とすることが好ましく、1.0×10mJ/s・cm以上とすることが特に好ましい。
【0098】
上記露光後の感光膜に対して、現像前にバーニング処理(加熱処理)を行なっても良い。バーニング処理を行なうことにより、より密着性を高めることができる。バーニング処理を行なう場合、処理条件は特に制限はないが、過熱水蒸気を用いて所定時間加熱処理することが好ましい。過熱水蒸気の温度は100℃以上、好ましくは100℃を越え300℃以下、より好ましくは105℃以上200℃以下が好適である。加熱時間は過熱水蒸気の温度によって変動するが、5分から1時間程度で十分である。また、複数回バーニング
処理を行なってもよい。
【0099】
前記ネガ型感光性組成物を用いて形成した感光膜に対して用いる現像液としては、無機アルカリ(例えば、Na、Kの塩等)、又は有機アルカリ(例えば、TMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)、又はコリン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等)などの無機又は有機のアルカリからなる現像剤が好ましい。
【0100】
現像は、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等により、通常、15〜45℃程度の温度、好ましくは22〜32℃で行なう。
【0101】
前記金属ロールとしては、特別の限定はなく、種々の鋼ロールが用いられるが、硬質鋼ロールが好ましく、例えば、ステンレス鋼ロール又はダイス鋼ロールを挙げることができる。ダイス鋼としてはSKD−11を例示できる。
【0102】
前記したネガ型感光性組成物を感光液として用いることによる本発明の第2態様の凹部付き発熱ロールの製造工程を図3によって以下に説明する。
まず、発熱機構を備えた金属ロール本体表面に感光液を塗布する(図3のステップ200)。なお、発熱機構については後述する。この感光液の膜厚はドライ膜厚で2−7μmが好ましい。ピンホールを無くすため膜は厚い方が良いが、薄い方が感光液の使用量が少ない分コストは安くなる利点がある。
次に、塗布した感光液を乾燥する(図3のステップ202)。この乾燥に要する時間は膜厚にもよるが、タッチドライまで15分程度であり、乾燥終了までは15〜20分程度である。
続いて、乾燥した感光液膜を露光する(図3のステップ204)。露光用の光源としては、例えば、半導体レーザーを用いて、波長830nm、強度220mJ/cmのレーザーを照射する。
この露光した感光液膜を現像する(図3のステップ206)。この現像はトリエタノールアミン0.8%液等の現像液を用いて、20℃〜30℃の温度で60〜90秒程度行う。この現像処理により、未露光部分が溶解除去され、露光部分(レジスト)のみを残した状態となる。この現像処理された金属ロール表面をスプレー水洗等で20秒〜1分程度水洗し未露光部分を完全に除去する(図3のステップ208)。
【0103】
さらに、この露光部分にレジストが残存した金属ロール表面をエッチングする(図3のステップ210)。このエッチングによる微小凹部の深度としては、凹部付き発熱ロールの使用目的に応じて適宜設定すればよいが、通常は1〜100μm程度とすればよい。このエッチングに用いられるエッチング液としては、例えば、塩化第二鉄(30ボーメ溶液)(使用温度は35℃程度)の他に硝酸20wt%水溶液や過酸化水素20wt%水溶液(使用温度は常温でよいが、これらは酸化剤であるので温度は反応で直ぐに上昇する)等を使用することができる。
エッチング終了後、露光した感光液膜(レジスト)をNaOH水溶液等のアルカリ水溶液を用いて剥離する(図3のステップ212)。最後に、レジストを除去した金属ロールの表面を水洗する(図3のステップ214)。
上記した工程によって、金属ロール表面に多数の微小凹部を形成することができ、凹部付き発熱ロールを得ることができる。
【0104】
本発明の第3態様の凹部付き発熱ロールの製造方法について図4〜図5を用いて説明する。図4は本発明の第3態様の凹部付き発熱ロールの製造工程を模式的に示す説明図で、(a)は発熱機構を備えたロール本体の全体断面図、(b)はロール本体の表面に銅メッキ層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(c)はロール本体の銅メッキ層にグラビアセ
ルを形成した状態を示す部分拡大断面図、及び(d)はロール本体の銅メッキ層表面に強化被覆層を形成した状態を示す部分拡大断面図である。図5は本発明の第3態様の凹部付き発熱ロールの製造方法を示すフローチャートである。
【0105】
図4(a)において、符号10は発熱機構を備えたロール本体で、アルミニウムや鉄などの金属製ロール又はCFRP(炭素繊維強化プラスチックス)等のプラスチック製ロールに発熱機構を設置した構造とされている(図5のステップ300)。この発熱機構の設置態様については後述する。該ロール本体10の表面には銅メッキ処理によって銅メッキ層22が形成される(図4(b)及び図5のステップ302)。
【0106】
該銅メッキ層22の表面には多数の微小な凹部(グラビアシリンダーの場合にはグラビアセルと称される)24が形成される(図4(c)及び図5のステップ304)。凹部14の形成方法としては、エッチング法(ロール面に感光液を塗布して直接焼き付けた後、エッチングして微小凹部24を形成する)や電子彫刻法(デジタル信号によりダイヤモンド彫刻針を機械的に作動させ銅表面に微小凹部24を彫刻する)等の公知の方法を用いることができるが、エッチング法が好適である。
【0107】
次に、前記微小凹部24を形成した銅メッキ層22(微小凹部24を含む)の表面に強化被覆層26を形成する(図4(d)及び図5のステップ306)。この強化被覆層としては、例えばクロムメッキ液から得られるクロムメッキ層を形成し、またはDLC層を形成すればよいが、クロムメッキ層の上にDLC層を積層することもできる。このような表面強化被覆層26を設けることによって耐刷力に優れた凹部付き発熱ロール10aを得ることができる。
【0108】
前記銅メッキ層の厚さが50〜200μm、前記微小凹部の深度が1〜100μm、前記強化被覆層の厚さが0.1〜15μmであることが好適である。
【0109】
次に、凹部付き発熱ロール10aに適用される発熱機構について説明する。この発熱ロール10aの発熱機構としては、前述した特許文献2〜21等に記載された従来公知の発熱ロールを用いればよいが、図6によって発熱ロールの発熱機構の一例(特許文献2の記載例)を説明し、図7及び図8によって発熱ロールの他の例(特許文献21の記載例)を説明する。
【0110】
図6は本発明において用いられる発熱ロールの一つの構造例、特に発熱機構の一例を示す断面説明図である。図6において、31は磁性材料からなるローラ、32,33はローラ31の両端に一体的に締結されてあるジャーナルで、これはその外周と架台34との間に配置されてある軸受35,36によって両持式に回転自在に支持されてある。37は誘導発熱機構で、具体的には柱状の鉄心とその周囲に巻装されてある誘導コイルとによって構成されている。
【0111】
誘導発熱機構37はその両端が支持ロッド38,39によってローラ31の内部に静止して支持されている。40はジャーナル32の端部に取り付けられてある駆動継手、41は駆動継手40を介してジャーナル32に回転駆動力を与える駆動用のモータ、42は支持ロッド38をジャーナル32に対して支持する軸受、43は支持ロッド39を固定支持するための支持アーム、44は誘導コイルへの通電用のリード線である。
【0112】
以上の構成において、モータ41を回転させると、ジャーナル32を介してローラ31は回転する。またリード線44を介して誘導発熱機構37の誘導コイルを交流電流を供給すれば、ローラ31には交流電流が誘導されて発熱するようになる。一方支持ロッド38,39は静止状態がそのまま維持されるようになる。
この構成ではローラ31に加わる外圧荷重は、軸受35,36を介して架台34が受けるようになり、誘導発熱機構37にはその影響をなんら受けることがないといった利点がある。
【0113】
図7は本発明において用いられる発熱ロールの他の構造例、特に発熱機構の他の例を示す断面説明図、及び図8は図7の発熱機構に用いられる熱媒通流ローラの一例を示す断面説明図である。
【0114】
図7において、51はロールシェル、52は回転駆動軸、52aは側部材、53は中子
、54はロータリジョイント、55は貯油タンク、56は油(熱媒流体)、57は加熱又は冷却用熱交換器、58は温度センサ、59はポンプ、60は樹脂フィルムなどの処理物である。ロールシェル51は円筒状をなし、その中空内部に中子53が配置され、中子53の中央部を貫通して熱媒通流路53aが形成されている。熱媒通流路53aは回転駆動軸52内を経てロータリジョイント54の流入口に連結され、ロールシェル51の内周壁と中子53の外周壁との間で形成された熱媒通流路51aは回転駆動軸52内を経てロータリジョイント54の出口に連結されている。
【0115】
すなわち、貯油タンク55の油56は加熱又は冷却用熱交換器57を通り、所定の温度にされ、ポンプ59によってロールシェル51内に送られ、熱媒通流路53aおよび51aを通流した油56は貯油タンク55へ排出される。主として熱媒通流路51aを通流する間にロールシェル51は所定の温度に維持され、ロールシェル51の表面に当接した処理物60を加熱又は奪熱する。
【0116】
このような加熱又は奪熱するローラとして、図8に示す熱媒通流ローラが開発されている。すなわち、図8において、61はロールシェル、62は回転駆動軸、63は密閉室、64は熱媒通流管、65は気液二相を形成する熱媒体である。ロールシェル61は円筒状を成し、長手方向の両側の端部は回転駆動軸62のフランジ62aに連結固定されている。密閉室63はロールシェル61の肉厚内に、たとえばロールシェル61の長手方向の端縁からその長手方向にドリルで孔を形成し、その孔に気液二相の熱媒体となる適量の水65などを注入して開口部を閉塞することにより形成され、適宜間隔を隔ててローラの外周方向に複数個設けられている。
【0117】
熱媒通流管64は密閉室63の内部を長手方向に沿って貫通し、ロールシェル61の長手方向の両側の端縁に伸びている。回転駆動軸62およびそのフランジ62aには熱媒通流孔が形成され熱媒通流管64はこの熱媒通流孔と連通している。すなわち、図7に示す加熱又は冷却用熱交換器57、ポンプ59およびロータリジョイント54を経て送り込まれたロールシェル61を加熱し、または奪熱するための油などの熱媒流体56は、一方の回転駆動軸62およびそのフランジ62aの熱媒通流孔を経て熱媒通流管64を通り、他方のフランジ62aおよび回転駆動軸62の熱媒通流孔およびロータリジョイントを経て貯油タンクへ排出される。
【0118】
ロールシェル61が熱媒流体または処理物により加熱されると、密閉室63内の熱媒体65が加熱気化し、その気体は低温度部に移動し、その気体は熱を放出して液化し、この動作が繰り返され、この潜熱移動により熱媒流体の出入り口の間で温度差があってもロールシェル61の軸心に沿う長手方向に対してほぼ均一な温度となる。その結果、熱媒流体の流量を大幅に低減することができ、小さい配管およびポンプの採用によって設備費を削減することが可能となり、配管の放熱量の低減とポンプ容量の低下によって、省エネルギーを達成することができる。
【0119】
続いて、凹部付き発熱ロール10aをグラビア版胴72としてグラビア印刷を行うグラ
ビア印刷装置の構成の一例を図9に示す。図9において、70はグラビア印刷装置を示す。該グラビア印刷装置70を用いるグラビア印刷は、グラビア版胴72をインキ槽74に浸漬し、グラビアセル76にインキ78を入れるとともにグラビア版胴72の表面についた余分なインキ78をドクターブレード80で掻き取りながら、グラビアセル76に入ったインキ78を紙等の被印刷材料82に転写させていくものである。なお、符号84は圧胴、86はバックアップローラ、88は乾燥オーブンである。
【0120】
図9に示したように、グラビア版胴72として凹部付き発熱ロール10aを使用することによって、水性インキ及び油性インキを使用する場合には、インキ槽74内のインキの温度設定とともにグラビア版胴72の温度制御が可能となるので、グラビア版胴72自体の寸法安定性を実現するとともに、一日の温度変動や季節の温度変化に対する対処が容易化し、精細印刷の実現が容易となり、特に相変化インキのように温度によって相変化(例えば、常温では固相で、50℃では液相に変化)する場合にはグラビア版胴72の温度制御を行うことによって効果的なグラビア印刷を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の第1態様の凹部付き発熱ロールの製造工程を模式的に示す説明図で、(a)はゴム層又は合成樹脂層を表面に形成しかつ発熱機構を備えたロール本体の全体断面図、(b)はゴム層又は合成樹脂層の表面に感光性版材層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(c)は感光性版材層の表面にマスクを設けた状態を示す部分拡大断面図、(d)は感光性版材層の表面に微小凹部を形成した状態を示す部分拡大断面図、(e)は感光性版材層の表面にペルヒドロポリシラザン塗布膜を形成した状態を示す部分拡大断面図、(f)はペルヒドロポリシラザン塗布膜を過熱水蒸気による熱処理によって二酸化珪素被膜とした状態を示す部分拡大断面図である。
【図2】本発明の第1態様の凹部付き発熱ロールの製造工程を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2態様の凹部付き発熱ロールの製造工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第3態様の凹部付き発熱ロールの製造工程を模式的に示す説明図で、(a)は発熱機構を備えたロール本体の全体断面図、(b)はロール本体の表面に銅メッキ層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(c)はロール本体の銅メッキ層にグラビアセルを形成した状態を示す部分拡大断面図、及び(d)はロール本体の銅メッキ層表面に強化被覆層を形成した状態を示す部分拡大断面図である。
【図5】本発明の第3態様の凹部付き発熱ロールの製造方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明において用いられる発熱ロールの一つ構造例、特に発熱機構の一例を示す断面説明図である。
【図7】本発明において用いられる発熱ロールの他の構造例、特に発熱機構の他の例を示す断面説明図である。
【図8】図7の発熱機構に用いられる熱媒通流ローラの一例を示す断面説明図である。
【図9】本発明の凹部付き発熱ロールをグラビア版胴として用いた場合のグラビア印刷装置の構造例を示す断面的説明図である。
【符号の説明】
【0122】
10:発熱機構を備えたロール本体、10a:凹部付き発熱ロール、11a:ロール本体部分、11b:ゴム層又は合成樹脂層、12:感光性版材層、12a,22:銅メッキ層、13:マスク、14,24:微小凹部、16:ペルヒドロポリシラザン塗布膜、18:二酸化珪素被膜、26:強化被覆層、31:ローラ、32,33:ジャーナル、34:架台、35,36, 42:軸受、37:誘導発熱機構、38,39:支持ロッド、40:駆動継手、41:モータ、43:支持アーム、44:リード線、51,61:ロールシェル、52,62:回転駆動軸、52a:側部材、53:中子、51a,53a:熱媒通流路、54:ロータリジョイント、55:貯油タンク、56:油、57:熱交換器、58:温度センサ、59:ポンプ、60:処理物、62a:フランジ、63:密閉室、64:熱媒通流菅、65:熱媒体、70:グラビア印刷装置、72:グラビア版胴、74:インキ槽、76:グラビアセル、78:インキ、80:ドクターブレード、82:被印刷材料、84:圧胴、86バックアップローラ、88:乾燥オーブン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール本体と、該ロール本体の表面に設けられたゴム層又は合成樹脂層と、該ゴム層又は合成樹脂層の表面に形成されかつ光重合性を有するとともに少なくとも光重合後において耐刷力を有する感光性版材層と、該感光性版材層の表面に形成された微小凹部と、該微小凹部を形成した該感光性版材層の表面に形成された強化被覆層と、を含み、前記ロール本体に発熱機構を設けたことを特徴とする凹部付き発熱ロール。
【請求項2】
前記強化被覆層が二酸化珪素被膜であり、ペルヒドロポリシラザン溶液を用いて前記二酸化珪素被膜を形成することを特徴とする請求項1記載の凹部付き発熱ロール。
【請求項3】
金属ロール本体と、該金属ロール本体に形成された微小凹部と、を含み、前記金属ロール本体に発熱機構を設けたことを特徴とする凹部付き発熱ロール。
【請求項4】
ネガ型感光性組成物を用いるフォトリソグラフィ法によって前記凹部を形成することを特徴とする請求項3記載の凹部付き発熱ロール。
【請求項5】
ロール本体と、該ロール本体の表面に設けられかつ表面に多数の微小凹部が形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆する強化被覆層と、を含み、前記ロール本体に発熱機構を設けたことを特徴とする凹部付き発熱ロール。
【請求項6】
前記銅メッキ層の厚さが50〜200μm、前記微小凹部の深度が1〜100μm、及び前記強化被覆層の厚さが0.1〜15μmであることを特徴とする請求項5記載の凹部付き発熱ロール。
【請求項7】
シート状基材の表面にマイクロレンズ形成用インキを印刷により所定間隔を保って突条状に配置することによって製造されるマイクロレンズであって、請求項1〜6のいずれか1項記載の凹部付き発熱ロールを用いて前記マイクロレンズ形成用インキの印刷を行うようにしたことを特徴とするマイクロレンズ。
【請求項8】
壁紙基材の表面に壁紙用インキを印刷により所定のパターンを形成するように配置することによって製造される壁紙であって、請求項1〜6のいずれか1項記載の凹部付き発熱ロールを用いて前記壁紙用インキの印刷を行うようにしたことを特徴とする壁紙。
【請求項9】
電磁波シールド基材の表面に導電性ペーストを印刷により所定パターンの電磁波シールド層を形成するように配置することによって製造される電磁波シールドシートであって、請求項1〜6のいずれか1項記載の凹部付き発熱ロールを用いて前記導電性ペーストの印刷を行うようにしたことを特徴とする電磁波シールドシート。
【請求項10】
カラーフィルター基材の表面にカラーフィルターインキを印刷により所定パターンのカラーフィルター層を形成するように配置することによって製造されるカラーフィルターであって、請求項1〜6のいずれか1項記載の凹部付き発熱ロールを用いて前記カラーフィルターインキの印刷を行うようにしたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項11】
偏光板基材の表面に偏光インキを印刷により所定パターンの偏光層を形成するように配置することによって製造される偏光板であって、請求項1〜6のいずれか1項記載の凹部付き発熱ロールを用いて前記偏光インキの印刷を行うようにしたことを特徴とする偏光板。
【請求項12】
セラミック基材上に導電性ペーストを印刷により内部電極を形成するように配置するこ
とによって製造されるセラミックコンデンサであって、請求項1〜6のいずれか1項記載の凹部付き発熱ロールを用いて前記導電性ペーストの印刷を行うようにしたことを特徴とするセラミックコンデンサ。
【請求項13】
基材フィルム上に磁性粉を含有するマイクロカプセル化セルをバインダーを介して塗布することにより所定のパターンを形成するように配置することによって製造される電子ペーパーであって、請求項1〜6のいずれか1項記載の凹部付き発熱ロールを用いて前記マイクロカプセル化セルを塗布するようにしたことを特徴とする電子ペーパー。
【請求項14】
被印刷物シートの表面に水性インキ、油性インキ又は相変化インキからなるグラビアインキを印刷により所定のパターンを形成するように配置することによってグラビア印刷される印刷物であって、請求項1〜6のいずれか1項記載の凹部付き発熱ロールを用いて前記グラビアインキの印刷を行うようにしたことを特徴とする印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−94807(P2010−94807A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242803(P2008−242803)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000131625)株式会社シンク・ラボラトリー (52)
【Fターム(参考)】