説明

出入管理システム

【課題】一般に広く使用される通電時施錠型や通電時解錠型の錠及び非接触ICカードを用いた出入管理システムにおいても、省電力の効果が大きい出入管理システムを提供する。
【解決手段】通電時に施錠し又は解錠する電気錠30と、この電気錠30を制御する制御装置10と、非接触ICカードリーダを有する端末装置20とを備え、非接触ICカードから信号を受信した端末装置20は、制御装置10に施錠又は解錠する信号を発信する出入管理システム1であって、この制御装置10は、電気錠30を制御するための異なる少なくとも2つの電圧を発生させ、一の電圧により電気錠を施錠又は解錠し、一の電圧よりも低い他の電圧により電気錠の施錠状態又は解錠状態を保持することを特徴とする出入管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電算機室や事務室などの特定の領域の出入を管理するための出入管理システムに関し、特に、電気錠を用いた省電力の出入管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に出入管理システムは、建物や敷地の物理セキュリティを実現することを目的に導入される。そして、出入管理システムは、電源設備の点検などの日を除き、通常24時間365日連続稼動するもので、その信頼性もさることながら、昨今、全世界的にCO2の削減を叫ばれる中、出入管理システムを稼動させるための消費電力の低減も重要になってきている。
【0003】
このような先行技術として、特許文献1と特許文献2がある。
特許文献1には、電気錠における不要な電力の消費を抑制して省電力化を図るとともに、正常な解錠動作を確保させることを目的として、電気錠制御装置の操作部にて行われた解錠操作を検出した制御回路の制御により、通電制御部からの電源が一定時間内、電気錠の駆動回路へと通電され、この通電により当該電気錠が駆動されるか否かをもとに、サムターン信号出力部はサムターン信号を生成/非生成し、電気錠制御装置の制御回路は、電気錠のサムターン信号出力部からのサムターン信号がサムターン信号入力検出部にて受信できた場合、又は受信できなかった場合に応じて、電気錠の種別を自動的に判別し、判別された種別に対応して通電制御部からの当該電気錠に対する解錠通電時間を最適に制御する構成が開示されている。
また、特許文献2にも、省電力化を図り、操作の煩わしさもなく非接触でカードの識別及びカード情報の読み取りを行うことを目的として、非接触式カード錠は、待機状態において電池からカード検知手段のみに周期的に駆動電源を供給し、カード検知手段が間欠的な電磁波の出力によって非接触ICカードの存在を識別すると、カード検知手段への駆動電源の供給が断たれ、データ通信用RF回路、カードロック制御回路、電気錠に電池から駆動電源が供給され、データ通信用RF回路が非接触ICカードとデータ通信して読み取ったカード情報と登録情報とを照合比較し、カード情報と登録情報が一致すると、カードロック制御回路が電気錠を解錠制御する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−125097号公報
【特許文献2】特開2005−23734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に係る発明は、基本的に、瞬時に通電されて駆動する瞬時通電施解錠型の電気錠とモータ錠を使用したシステムに対するものであり、これらの錠は、通電時に施錠状態となる通電時施錠型の錠や、通電時に解錠状態となる通電時解錠型の錠に比べると、駆動時のみに電力を使用するにすぎないので、このような錠に対して省電力化を図っても、その効果は大きくないという問題があった。
また、特許文献2に係る発明は、間欠的な電磁波の出力によって非接触ICカードの存在を識別するが、非接触ICカードが近くになくとも電磁波を出力するので、やはり省電力化の効果は大きくないという問題があった。また、間欠的に電磁波の出力を行うことからユーザ接近時の反応が遅くなるという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、一般に広く使用される通電時施錠型や通電時解錠型の錠及び非接触ICカードを用いた出入管理システムにおいても、省電力の効果が大きい出入管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、通電時に施錠し又は解錠する電気錠と、前記電気錠を制御する制御装置と、非接触ICカードリーダを有する端末装置とを備え、非接触ICカードから信号を受信した前記端末装置は、前記制御装置に施錠又は解錠する信号を発信する出入管理システムであって、前記制御装置は、前記電気錠を制御するための異なる少なくとも2つの電圧を発生させ、一の電圧により前記電気錠を施錠又は解錠し、前記一の電圧よりも低い他の電圧により前記電気錠の施錠状態又は解錠状態を保持することを特徴とする出入管理システムが提供される。
この構成によれば、通電時施錠型や通電時解錠型の錠を用いた省電力の効果が大きい出入管理システムを提供することが可能となる。また、出入管理システムの消費電力は、ゲート数(扉)に比例して増大するため、消費電力の低減を考える場合、数の多い端末装置や電気錠の消費電力を低減させることが、省電力効果の増大に寄与する。
【0007】
また、前記制御装置は、1つの電源と該1つの電源から前記少なくとも2つの電圧を発生させる回路とを備えることを特徴としてもよい。
この構成によれば、安価な制御装置を提供できる。
【0008】
また、前記制御装置は、前記少なくとも2つの電圧を発生させる少なくとも2つの電源を備えることを特徴としてもよい。
この構成によれば、より省電力の効果が大きい出入管理システムを提供することが可能となる。
【0009】
また、前記制御装置は、解錠する信号を発信していない前記電気錠から解錠状態を示す信号を受信した場合に、前記解錠する信号を発信していない前記電気錠に施錠する信号を発信する施錠回復手段を有することを特徴としてもよい。
この構成によれば、比較的低い電圧により電気錠の施錠状態又は解錠状態を保持する場合(以下、この保持する状態を省電力保持状態と呼ぶ)、省電力保持状態にある電気錠に対し何らかの外的要因(地震、人的接触など)により衝撃や振動が加わると電気錠が誤作動することがあるが、このような意図しない解錠状態になった時に、直ちに施錠状態に戻すことができる。
【0010】
また、前記制御装置は、前記施錠回復手段による施錠する信号を発信する場合に、前記施錠回復手段による施錠する信号を発信する時の前記他の電圧を所定電圧分高くする調整手段を備えることを特徴としてもよい。
この構成によれば、省電力保持状態において意図しない解錠状態になった場合に、自動的に出力電圧を調整し、次回から意図しない解錠状態になることを防止することできる。
【0011】
また、前記制御装置は、前記他の電圧を所定の基準電圧から始めて段階的に高い電圧にしていく過程において、各段階の電圧において前記調整手段による前記他の電圧を所定電圧分高くする調整を行い、前記調整が行われなくなった場合に、前記調整が行われなくなった時の電圧を前記他の電圧とすることを特徴としてもよい。
この構成によれば、省電力保持状態において意図しない解錠状態になることを自動的に防止することができる。
【0012】
また、人が前記端末装置に接近したことを感知するセンサーをさらに備え、前記端末装置の前記非接触ICカードリーダは、人が接近したことを前記センサーが感知した時に、電磁波を発生することを特徴としてもよい。
この構成によれば、通電時施錠型や通電時解錠型の錠を用いた省電力の効果が大きい出入管理システムを提供することが可能となると共に、非接触ICカードリーダは、入室する人がいない場合には電磁波を発生することがないので、無駄な電磁波を発生させることによる電力の消費を防止することができ、非接触ICカードを用いた省電力の効果が大きい出入管理システムを提供することが可能となる。また、ユーザが非接触ICカードの照合操作を行った時の反応も良くなる。
【0013】
また、前記端末装置は、前記センサーを含むことを特徴としてもよい。
この構成によれば、センサーを端末装置に組み込むことにより、コンパクトに、より安価にすることができる。
【0014】
また、前記端末装置は、前記制御装置を含むことを特徴としてもよい。
通常、制御装置と端末装置、制御装置と電気錠の間に配線が必要であるところ、この構成によれば、制御装置と電気錠の間に配線が不要となり、コストや施工上の手間を削減できる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、通電時に施錠し又は解錠する電気錠と、前記電気錠を制御する制御装置と、非接触ICカードリーダを有する端末装置とを備え、非接触ICカードから信号を受信した前記端末装置は、前記制御装置に施錠又は解錠する信号を発信する出入管理システムであって、人が前記端末装置に接近したことを感知するセンサーをさらに備え、前記端末装置の前記非接触ICカードリーダは、人が接近したことを前記センサーが感知した時に、電磁波を発生することを特徴とする出入管理システムが提供される。
この構成によれば、非接触ICカードリーダは、入室する人がいない場合には電磁波を発生することがないので、無駄な電磁波を発生させることによる電力の消費を防止することができ、非接触ICカードを用いた省電力の効果が大きい出入管理システムを提供することが可能となる。また、ユーザが非接触ICカードの照合操作を行った時の反応も良くなる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、通電時施錠型や通電時解錠型の錠及び非接触ICカードを用いた出入管理システムにおいても、省電力の効果が大きい出入管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態を示したシステム構成図。
【図2】本発明の第1の実施形態における端末装置の構成図。
【図3】本発明の第1の実施形態における制御装置の構成図。
【図4】本発明の第1の実施形態における電気錠駆動電圧切替回路図。
【図5】本発明の第1の実施形態における電気錠の内部構成図。
【図6】本発明の一実施形態における電気錠(通電時施錠型)制御の説明図。
【図7】本発明の第2の実施形態における電気錠駆動電圧切替回路図。
【図8】本発明の第3の実施形態における電気錠駆動回路内の電流測定回路の構成図。
【図9】本発明の第4の実施形態を示したシステム構成図(部分)。
【図10】本発明の第5の実施形態における端末装置の構成図。
【図11】本発明の第6の実施形態における端末装置の構成図。
【図12】本発明の第7の実施形態における端末装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら、本発明の各実施形態に係るシステム等について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態を示した出入管理システムのシステム構成図である。
出入管理システム1は、主に、中央処理装置40(例えば、コンピュータ)、制御装置10、端末装置20、電気錠30の4要素で構成される。中央処理装置40は、通常出入管理システム1に1つあり、ユーザのIDや通行許可情報の登録、制御装置10から転送されるカード操作や照合結果及び施錠/解錠などの履歴データの表示、保存、検索などを行う。
【0019】
制御装置10は、中央処理装置40と各端末装置20や各電気錠30の間に位置し、その数は出入管理システム1の規模に依存する。例えば、図1では、一つの制御装置10が16のゲート(扉)を制御しているが、全部で64ゲートある場合には、この制御装置10は4つあることになる(もちろん、制御装置の制御可能なゲート数は16ゲートに限定したものでなく、1〜Nの範囲であってもよい)。制御装置10は、Ethernetを通じて中央処理装置40から配信されるユーザのIDや通行許可情報を保存すると共に、専用LANを介して端末装置20で読み込まれたカード情報(ID情報)を得て、照合を行い、許可・不許可の結果を端末装置20に返信する。また、これらの一連の操作で発生する履歴情報を中央処理装置40へ送信する機能を有する。さらに、照合結果と連動し、専用線を介してゲートに設置されている電気錠30に開錠又は施錠の信号を発信し、又は電気錠30から施錠状態又は解錠状態の信号を受信することにより、電気錠30の制御を行う。
【0020】
端末装置20と電気錠30は、各ゲートの近傍に配置される。したがって、例えば、全部で64ゲートある場合には少なくとも64の端末装置20と電気錠30がある。ユーザがゲートの端末装置20に対し所持する非接触ICカードの照合操作を行うと、端末装置20が内蔵する非接触ICカードリーダが感知する。非接触ICカードの種類は、特に限定されず、Type−A、Type−B、FeliCaなどいずれであってもよいし、電池を内蔵するアクティブ型、リーダからの電磁波をエネルギー源として動作するパッシブ型、両者を組み合わせたセミアクティブ型のいずれであってもよい。
【0021】
電気錠30は、通電時に施錠状態となる通電時施錠型又は通電時に解錠状態となる通電時解錠型の電気錠であり、ソレノイドを備え、制御装置から電気信号を受けると施錠又は解錠の動作を行うことができる。なお、通電時施錠型の電気錠とは、通電中は施錠状態となり、通電を止めると解錠状態となるものであり、例えば停電すると解錠状態となるので、非常口などによく使用される。また、通電時解錠型の電気錠とは、通電中は解錠状態となり、通電を止めると施錠状態となるので、セキュリティ重視のゲートなどによく使用される。電気錠30は、制御装置10から適宜制御を受けると共に、施錠状態、解錠状態などの情報を制御装置10に送信する。
【0022】
図2は、端末装置20が、端末装置全体の制御をつかさどる主制御部21と、非接触ICカードとの通信を行う非接触ICカードリーダ・ライタ22を備えることを示しており、さらにタッチパネル付液晶表示部24及び液晶/タッチパネル制御部23を備えてもよいことも示している。
非接触ICカードリーダ・ライタ22は、上述の非接触ICカードに対応した機能を有する。上述のように、ユーザが所持する非接触ICカード25の照合操作を行うと、非接触ICカードリーダ・ライタ22と非接触ICカード25とが、主にID情報について通信を行い、受信したID情報は、照合のため、主制御部21により専用LANを通じて制御装置10に送信される。
【0023】
図3は、制御装置10の構成を示す。MPU(Micro Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備え、MPUは、ROMに蓄えられた制御装置10に関するファームウェアなどを読み出し、ID情報などをRAMに記憶し、IDの照合のための演算などを行う。中央処理装置40と通信を行うためにEthernet、端末装置20と通信を行うためにSIO(Serial I/O),電気錠30と通信するために電気錠制御部14、他の設備や各種センサーと通信するためにDI/DO(Digital Input/Output)のそれぞれのインターフェースを有する。
また、ID情報などを記憶するRAMは、装置の電源OFF時に情報が消えないようリチウム電池などで、バックアップされている。場合によっては、FLASH−ROMなどで代替することも可能である。
【0024】
制御装置10は、AC100Vを取り入れ、UPSを経由して起動電源11と保持電源12にAC電源を供給する。また、建物の設備電源そのものがCVCF等でバックアップしているような場合には、UPSは無くてもよい。起動電源11と保持電源12はAC/DC変換すると共に、DC側を切替器13に接続され、後述するように、切替器13は適宜起動電源11からのDCと保持電源12からのDCとを切り替えて、電気錠制御部14に電気錠30の駆動電圧を送る。
出入管理システムは、通常、商用電源の停電や設備電源の障害にそなえ、自身で一定時間(30分程度)バックアップ動作が可能なように、UPSを搭載している。省電力のシステムが実現できれば、UPSに実装される鉛蓄電池の容量も小さくできる可能性がある。また、鉛蓄電池は寿命があるため定期的に交換する必要がある。鉛蓄電池の小型化により、システム導入時のコストを抑えることができるだけでなく、保守費用も大幅に削減できることから、省電力のシステムは省資源の相乗効果を生み出し、CO2低減に大いに貢献する。
【0025】
図4は、電気錠の駆動電圧を切り替える回路を示す図であり、起動電源11、保持電源12、切替器13及び電気錠制御部14が詳細に記載されている。起動電源11と保持電源12は、制御部経由でAC100Vの入力を受け、AC/DC変換を行う。起動電源11のDC出力電圧は例えば24V、保持電源12のDC出力電圧は例えば12Vである。切替器13は、起動電源11と保持電源12の両方からこのDC出力電圧を入力として受け、内部には例えばリレーとダイオード等を備え、起動電源11のDC出力電圧と保持電源12のDC出力電圧をダイオードの突合せで駆動電源を得る。保持電源12のDC出力電圧より起動電源11のDC出力電圧の方が高いので、ダイオードの出力は起動電源11のDC出力電圧となり、保持電源12からの電流は流れない。一方、その状態で、リレーをオフするために起動電圧OFF信号をリレーに与えることにより起動電源11からの出力をカットすれば、おのずと駆動電圧は保持電源12のDC出力電圧に切り替わることとなる。なお、ここでは、起動電源11のDC出力電圧を24V、保持電源12のDC出力電圧を12Vとしたが、これらに限定されるものではない。また、たとえば、図に示すように、保持電源12は、出力電圧を変えることができる機能(例えば、出力可変用のロータリースイッチ)を有してもよく、これによれば、手動などにより、状況に合わせて保持電源12のDC出力電圧を変更できる。
さらに、制御装置(図3)は、16ゲート制御用としたが、切替器は各ゲート毎に実装しても、装置全体で1つとして実装してもよい。商品のコスト見合いで決定することになる。しかし、省電力効果が高いのは、言うまでもなく各ゲート毎に実装する場合である。
【0026】
電気錠制御部14は、切替器13からの駆動電圧を受け、電気錠30のソレノイドにその駆動電圧を印加する。また、電気錠制御部14は、電気錠30が施錠状態になったことを示す信号である施錠信号、電気錠30が解錠状態になったことを示す信号である解錠信号、ゲートの扉が完全に閉まっている状態を示す信号である扉閉信号を受信できる。なお、図中のCOMはコモン、即ちグランドを意味し、基準電圧(0V)を示す。
電気錠制御部14は、各電気錠のソレノイドを駆動する駆動回路と、電気錠からの各種状態信号を受信する受信回路(DI)で構成される。もちろん、この構成に限定されるものではない。
【0027】
図5は、電気錠30の内部構造を示す。上述のように、電気錠30は、ソレノイドを有し、その両端に印加する駆動電圧を受けるとともに、施錠状態にある場合には施錠信号を、その反対に解錠状態にある場合には解錠信号を、また、ゲートの扉が完全に閉まっている状態にある場合には扉閉信号を、電気錠制御部14に発信する構造となっている。即ち、電気錠30は、施錠状態又は解錠状態にあること、及び扉が完全に閉まっている状態であることを感知するセンサーを有し、それに基づき信号を発信する。
【0028】
図6は、制御装置10が通電時施錠型の電気錠に対して行う制御について説明をした図である。最上段は「カード操作」の有無を示し、「カード操作」の無は、ユーザが所持する非接触ICカードの照合操作を行っていない状態を示し、「カード操作」の有(OK)は、照合操作を行い、照合の確認を受けた時を示す。
【0029】
第2段は、従来の電気錠の動作を示す。
この場合、通電時施錠型電気錠を施錠するため連続的に電気を通電し続けなければならないから、施錠状態の時に大きな電力を使用する。一方、解錠状態のときには電力は使用しない。したがって、照合の結果、大きな電力を使用する施錠状態から解錠状態になると電力を使用しない状態となるが、それはユーザがゲートを通過する数秒の間だけであり、その後は再び施錠状態となるために、大きな電力を使用する状態となる。即ち、この出入管理システムにおいては、施錠状態は解錠状態に比べ圧倒的に時間が長く、このため大量な電力が必要となる。
【0030】
それに対し、本発明の一実施形態を示す第3段の電気錠の動作は以下のようになる。なお、第4段は扉の開閉状態を示す。カード操作で照合の確認を受けたら解錠し、扉は閉じていた状態から開いた状態になるが、ユーザがゲートを通過し扉を開いた状態から閉じた状態にした後に施錠する必要がある。このときには電気錠30のソレノイドを起動する必要があるので高い電圧が必要である。しかし、一旦ソレノイドを起動し施錠状態にした後はその状態を保持するだけでよく、その保持するために必要な電圧は、通常ソレノイドを起動するための電圧よりかなり低くてよい。したがって、一旦ソレノイドを起動し施錠状態にした後はその状態を保持するためだけに必要な、起動するための電圧より低い電圧をかけることにより、第2段の通常の電気錠動作で必要となる電力と比べ、第3段の電気錠の動作のところで表わした斜線で示した領域に相当する電力が、低減可能な電力となるということができる。
【0031】
一般に重要室は常時施錠運用であり、重要室に対する出入管理システムは、24時間365日連続稼動する必要があるので、また、ゲート数が大きいほど、この電力低減効果は大きい。例えば、64ゲート程度の中規模な出入管理システムの場合、消費電力を全体で50%程度削減できる。
【0032】
本図は、通電時施錠型の電気錠を基に説明したが、通電時解錠型の場合も同様である。即ち、事務室などにおいては、営業時間帯は電気錠を連続解錠状態として通行の利便性を図る場合がよく見かけられるが、この場合は解錠状態が長時間に亘るため、従来の電気錠制御では同様の問題を生ずる。したがって、このような場合に、本発明に係る電気錠制御を行えば、同様に消費電力を大きく削減できることになる。
【0033】
また、省電力保持状態、即ち本図では施錠状態にある時に、地震や人の扉への接触などの外因による振動や衝撃が電気錠30に与えられた時、電気錠30が誤動作を起こし、解錠状態となることがある。そのような場合に、電気錠30は、解錠状態にあることを感知するセンサーを有し、それに基づき信号を発信することを上述したが、制御装置10から見た場合、施錠状態にあるにも拘わらず、即ち、解錠動作を行っていないにも拘わらず、制御装置10が電気錠30から解錠状態を示す信号を受信した場合には、それは解錠を意図しない外的要因などによる誤動作であると判断し、制御装置10はその信号を発信した電気錠30に対して施錠動作(ソレノイドの起動)を行うことにより、当該電気錠30を施錠状態に回復することができる。このような施錠回復手段により、出入管理のセキュリティを確実にすることができる。
【0034】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態における、電子錠の駆動電圧を切り替える回路を示す図である。本実施形態では、第1実施形態に比べ、電圧可変制御部15Aをさらに備える。電圧可変制御部15Aは、制御装置10の判断により発生させる電圧制御信号を受け、保持電源12Aの入力となる出力電圧可変信号を生成する。この電圧制御信号は、具体的には、電圧のアップ又はダウン信号であり、かかるアップ又はダウン信号を受けた電圧可変制御部15Aは、その信号から設定したい電圧値(ビットパターン)に変換し、保持電源12Aに渡す。その結果、保持電源12Aは、その出力電圧を所定の電圧に変更することができ、出力電圧の制御が可能となる。なお、この方式は一例であり、保持電源の出力を電気的に再設定可能な方式であればこれに限らない。また、図示しないが、さまざまな電気錠の駆動電圧の違いを考慮し、起動電源11Aに対しても電圧可変制御部15Aから入力を与えてもよい。なお、図中の駆動信号は、制御装置内のMPUより電気錠制御部内のリレーに対して発信される。
【0035】
本実施形態においてかかる構成を有することは、上述した施錠回復手段により、制御装置10が特定の電気錠30に対して施錠信号を発信する場合に、その時の保持電源12Aの出力電圧を予め定めた電圧分高くする調整を行うことができる。したがって、このような調整手段は、省電力保持状態において意図しない解錠状態になることがある場合に、自動的に出力電圧を調整し、次回から意図しない解錠状態になることを防止することが可能となる。ここで、予め定めた電圧分高くする調整とは、例えば、保持電源12Aの出力電圧を0.5V高めることを言う。もちろん、これに限定されるものではない。
【0036】
さらに、保持電源12Aの適切な出力電圧は、保持電源12Aから電気錠30に至る通線の長さ等に依存する場合があるので、出入管理システムの初期導入時などに、制御装置10は、保持電源12Aの出力電圧を所定の基準電圧(例えば、12V)から始めて段階的に高い電圧にしていく過程において、各段階の電圧において上述の調整手段により保持電源12Aの出力電圧を予め定めた電圧分(例えば、0.5Vずつ)高くする調整を行い、このような調整が行われなくなった段階の電圧を適切な出力電圧とすることができる。したがって、この構成によれば、省電力保持状態において意図しない解錠状態になることを自動的に防止することが可能となる。
【0037】
<第3実施形態>
図8は、電気錠駆動回路内の電流測定回路の構成を示す図である。上述の実施形態では、保持電圧の出力電圧の設定を施錠回復手段により行っているが、本実施形態では、電気錠毎に省電力保持状態の駆動電流を測定し、不足の場合は所定の電流(I=起動電圧×0.5÷ソレノイドの内部抵抗)まで電圧を変化させる。図8は、そのために必要な電流測定回路16Bを示している。電流測定回路16Bは、測定した電流が不足する場合には電圧可変制御部15Bに対して電流不足信号を発信し、駆動電流(Ir)が、所定電流(I)より常に大きな電流となるよう、保持電源12Bの出力電圧を制御する。これは、配線長や電気錠の個体差も含め最適化が可能となることから最も省電力の効果が期待できる。
【0038】
<第4実施形態>
図9は、本実施形態におけるシステム構成図(部分)を示す。例えば、上記の実施形態1においては、制御装置10と端末装置20及び制御装置10と電気錠30の間に配線が必要となる。しかし、本実施形態では、端末装置20Aは、制御装置の一部の機能(電気錠制御部など)を含むので(詳細は後述する。)、制御装置と電気錠30Aの間の配線が不要となり、コストや施工上の手間を削減できる。
【0039】
<第5実施形態>
図10は、本実施形態における、端末装置を示す。この端末装置20Bは、上記実施形態における端末装置に比べ、人感センサーとの接続を有している点で異なる。人感センサー26、27は、赤外線、可視光、接触などにより、人の所在を検知するためのセンサーである。したがって、人が端末装置20Bに接近したことを感知するセンサー、即ち人感センサー26又は27を備え、このセンサーには常に電力を供給し、人の接近を監視し続け、人の接近を感知した時に、非接触ICカードリーダ/ライタ22から電磁波を発生させる。消費電力は非接触ICカードリーダ/ライタ22よりかなり小さく、通常数十ミリワット以下なので、非接触ICカードリーダ/ライタ22の代わりに常に電力を供給しても、使用電力量は大きくならない。したがって、この構成によれば、非接触ICカードリーダ/ライタ22は、入室する人がいない場合には電磁波を発生することがないので、無駄な電磁波を発生させることによる電力の消費を防止することができ、非接触ICカード25を用いた省電力の効果が大きい出入管理システムを提供することが可能となる。また、ユーザが非接触ICカード25の照合操作を行った時の反応も良くなる。
【0040】
本実施形態では、人感センサー26、27を監視する主制御部21Bは、常に通電状態にあり1ワット程度の電力を消費している。一方、内蔵の非接触ICカードリーダ/ライタ22は、使用する非接触ICカード25の種類によって消費電力は異なり、1ワットから5ワット程度の範囲と考えられる。従って、センサー監視による省電力効果は、50%から80%以上の低減が可能となる。
さらに、主制御部21BのMPU自体のスリープ機能を用い、省電力効果を高めることも可能である。
【0041】
人感センサー26は、扉の前に人が存在するか否かを検知するように備えられたセンサーであり、例えば、天井位置から扉前の下方を監視するセンサーや、扉の前に置かれ、人が踏んだことにより検知するフロアマット型のセンサーであってもよい。また、人感センサー27は、端末装置20Bに含まれており、端末装置20Bに所持する非接触ICカードの照合操作を行うために接近した時に感知する。典型的には、赤外線センサーであるが、これに限定されるものではない。このように人感センサー27を端末装置20Bに組み込むことにより、コンパクトに、より安価にすることができる。
また、中央処理装置40は、遠隔操作やスケジュール機能により、夜間、休祭日、特定日などに強制的に端末装置を使用中止として、センサー機能を停止させることが可能で、より無駄な電力の削減を図ることができる。
【0042】
<第6実施形態>
なお、端末装置が人感センサーとの接続を有する第5実施形態と、その他の実施形態とは、同時に実施することも可能であるし、個別に実施することも可能である。
図11は、第5実施形態と第4実施形態とを同時に実施した場合の構成を示す。本実施形態における端末装置20Cは、第5実施形態での人感センサー27に加え、さらに、制御装置の機能の一部である電気錠制御部14Aを備える。したがって、電気錠30Aは、直接端末装置20Cと繋ぐことができるので、制御装置との間の配線が不要となる。端末装置20Cは、さらにDC−DCの電源回路17を有し、電気錠制御部14Aを通じて、電気錠30Aに電圧を供給する。なお、この電源回路17へのDC供給は、制御装置10(図示せず)により供給される。
【0043】
<第7実施形態>
図12は、本実施形態における端末装置の構成図である。上記の実施形態においては、起動電源と保持電源の2つの電源を備える出入管理システムであったが、本実施形態では、電源としては、1つの起動電源11Cのみを備える。また、図4に示す第1実施形態における切替器13は、内部には例えばリレーとダイオード等を備えることを述べたが、本実施形態における切替器13Cでは、ダイオードに代わり、内部に抵抗器18Cを備える。この抵抗器18Cと、起動電圧OFF信号の入力を受けるリレーを並列に接続することにより、異なる少なくとも2つの電圧を発生させることができる。また、抵抗器18Cを可変型とすることにより、出力する駆動電圧を柔軟に制御することができる。なお、異なる少なくとも2つの電圧を発生させる抵抗器とリレーなどを備えた回路は、図12に示す回路に限定されないことは言うまでもない。
【0044】
本発明は、上述した実施形態に限定されないし、また、その技術的範囲は、特許請求の範囲に記載された範囲から逸脱しない範囲で、様々な実施形態を含むものである。
【符号の説明】
【0045】
1 出入管理システム
10 制御装置
11 起動電源
11A 起動電源
11B 起動電源
11C 起動電源
12 保持電源
12A 保持電源
12B 保持電源
13 切替器
13A 切替器
13B 切替器
13C 切替器
14 電気錠制御部
14A 電気錠制御部
15A 電圧可変制御部
15B 電圧可変制御部
16B 電流測定回路
17 電源回路(DC−DC)
18C 抵抗器
20 端末装置
20A 端末装置
20B 端末装置
20C 端末装置
21 主制御部
21B 主制御部
21C 主制御部
22 非接触ICカードリーダ/ライタ(R/W)
23 液晶/タッチパネル制御部
24 タッチパネル付液晶表示部
25 非接触ICカード
26 人感センサー(端末装置内)
27 人感センサー
30 電気錠
30A 電気錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時に施錠し又は解錠する電気錠と、前記電気錠を制御する制御装置と、非接触ICカードリーダを有する端末装置とを備え、非接触ICカードから信号を受信した前記端末装置は、前記制御装置に施錠又は解錠する信号を発信する出入管理システムであって、
前記制御装置は、前記電気錠を制御するための異なる少なくとも2つの電圧を発生させ、
一の電圧により前記電気錠を施錠又は解錠し、前記一の電圧よりも低い他の電圧により前記電気錠の施錠状態又は解錠状態を保持することを特徴とする出入管理システム。
【請求項2】
前記制御装置は、1つの電源と該1つの電源から前記少なくとも2つの電圧を発生させる回路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の出入管理システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記少なくとも2つの電圧を発生させる少なくとも2つの電源を備えることを特徴とする請求項1に記載の出入管理システム。
【請求項4】
前記制御装置は、解錠する信号を発信していない前記電気錠から解錠状態を示す信号を受信した場合に、前記解錠する信号を発信していない前記電気錠に施錠する信号を発信する施錠回復手段を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の出入管理システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記施錠回復手段による施錠する信号を発信する場合に、前記施錠回復手段による施錠する信号を発信する時の前記他の電圧を所定電圧分高くする調整手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の出入管理システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記他の電圧を所定の基準電圧から始めて段階的に高い電圧にしていく過程において、各段階の電圧において前記調整手段による前記他の電圧を所定電圧分高くする調整を行い、前記調整が行われなくなった場合に、前記調整が行われなくなった時の電圧を前記他の電圧とすることを特徴とする請求項5に記載の出入管理システム。
【請求項7】
人が前記端末装置に接近したことを感知するセンサーをさらに備え、前記端末装置の前記非接触ICカードリーダは、人が接近したことを前記センサーが感知した時に、電磁波を発生することを特徴とする請求項1に記載の出入管理システム。
【請求項8】
前記端末装置は、前記センサーを含むことを特徴とする請求項7に記載の出入管理システム。
【請求項9】
前記端末装置は、前記制御装置を含むことを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の出入管理システム。
【請求項10】
通電時に施錠し又は解錠する電気錠と、前記電気錠を制御する制御装置と、非接触ICカードリーダを有する端末装置とを備え、非接触ICカードから信号を受信した前記端末装置は、前記制御装置に施錠又は解錠する信号を発信する出入管理システムであって、
人が前記端末装置に接近したことを感知するセンサーをさらに備え、前記端末装置の前記非接触ICカードリーダは、人が接近したことを前記センサーが感知した時に、電磁波を発生することを特徴とする出入管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−179259(P2011−179259A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45742(P2010−45742)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【Fターム(参考)】