説明

出隅部材およびそれを用いた出隅部施工構造、出隅部施工方法

【課題】シーリング材を使用することなく、突き付け接合部の隙間が目立ちにくく、作業性の良い、建物の出隅部に施工する出隅部材およびそれを用いた出隅部施工構造、出隅部施工方法を提供する。
【解決手段】2つの板材が略直角状に配置され、左右に隣接される外壁板と互いの傾斜端面を突き付けてなる突き付け接合部を有すると共に、該突き付け接合部の後方に切り欠き部を有する出隅部用外壁材と、外壁板取り付け位置ガイドを有するベースジョイナー、及び、該出隅部用外壁材と該ベースジョイナーを用いた出隅部施工構造と出隅部施工方法であり、該出隅部用外壁材と外壁板とが突き付けられて接合しており、該外壁板取り付け位置ガイドが該出隅部用外壁材の端部の切り欠き部に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材を使用することなく、建物の出隅部に外壁材を施工するための出隅部材およびそれを用いた出隅部施工構造、並びに出隅部施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、サイディングなどの外壁板を建物の出隅部に施工する場合、出隅用外壁材が使用され、その左右側方に外壁板が施工される。そして、該出隅用外壁材と該外壁板との左右接続部には、シーリング材が打設され、これにより、該接続部から建物内部へ水が侵入するのを防いでいる。このシーリング材には、シリコーン等の樹脂を施工現場で打設、乾燥させてなる湿式シーリング材と、予め成形した防水材を嵌め込んでなる乾式シーリング材が知られている。
【0003】
図8に湿式シーリング材を使用した従来の出隅部施工構造の一例を示す。図8に示すように、建物の外装は、柱Fの外装側に防水紙G、胴縁Hが順に取り付けられ、出隅用外壁材J及び外壁板Kを留付金具Iによって胴縁Hを介して柱Fに取り付けられている。なお、出隅用外壁材Jと外壁板Kの間にシーリング材Mを打設するために、出隅用外壁材Jと外壁板Kとの接続部の内装側にハットジョイナーLが取り付けられ、ハットジョイナーLのハット形の突起部により、シーリング材Mを打設するための空間(幅、深さ)が確保される。そして、シーリング材Mは、このハットジョイナーLの突起部の表面と、出隅用外壁材Jと外壁板Kの接続部とからなる空間に塗布、打設され、出隅用外壁材Jと外壁板Kの側面部を互いに接着すると共に、水が屋内に侵入するのを防止する。同様にして、次順の出隅用外壁材Jと外壁板Kを、施工した出隅用外壁材Jと外壁板Kの上に接続してゆくことで外壁を完成する。
【0004】
一方、シーリング材を使用することなく、建物の出隅部に外壁材を施工する出隅部施工構造もある(特許文献1を参照)。
図9にシーリングを使用しない出隅部施工構造の一例を示す。図9に示すように、特許文献1の出隅部施工構造では、出隅を構成するコーナー材Nの両側の側縁に対し、サイディングOが合じゃくりで接合されている。
【0005】
また、シーリング材を使用しない、別の出隅部施工構造もある(特許文献2を参照)。
図10にシーリングを使用しない出隅部施工構造の一例を示す。図10に示すように、出隅材Pと外壁パネルQは突き付け接合されており、出隅材Pと外壁パネルQの縦接続部の内装側には、防水材Rが取り付けられたハットジョイナーSとパッキンEとが使用されている。
【特許文献1】特開2000−345682号公報
【特許文献2】特開2003−328529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、シーリング材の打設を必須とする出隅部施工構造では、(1)露出したシーリング材が経年劣化し、その耐久性、防水性などの性能が低下すると共に、変色などにより外観が悪化する、(2)シーリング材の使用が必須なので、施工コストが上昇する、(3)シーリング材を施工する時間と手間がかかるという作業面での問題がある。
【0007】
また、特許文献1に開示された出隅部施工構造では、コーナー材NとサイディングOとの接合部にシーリング材を打設しないので、上述した(1)〜(3)の問題は発生しないが、(4)施工現場での合じゃくり加工が必要となり、手間がかかり、施工費が上昇してしまうという新たな問題が発生する。
【0008】
また、特許文献2に開示された出隅部施工構造では、出隅材Pと外壁パネルQとの接合部にシーリング材を打設しないので、上述した(1)〜(3)の問題は発生せず、しかも出隅材Pと外壁パネルQは突き付け接合なので、上述した(4)の問題も発生しないが、突き付け接合を行う為に、施工現場で外壁パネルQを切断する必要があり、(5)突き付け接合部に隙間ができやすく、隙間が目立ちやすくなり、更に、(6)外壁パネルQの切断口を施工現場で塗装する必要もあるが、外壁パネルQの位置を決めるために先に出隅材Pを取り付けなければならないので、施工後では外壁パネルQの切断口を塗装することができず、作業性が悪いという新たな問題が発生する。
【0009】
本発明は、上述した(1)〜(6)の問題を解決するためになされたものであり、シーリング材を使用することなく、突き付け接合部の隙間が目立ちにくくし、作業性が良く、建物の出隅部に施工することができる、出隅部材およびそれを用いた出隅部施工構造、出隅部施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本請求項1に記載の発明は、左右に外壁板を隣接配置することにより出隅部を形成する出隅部用外壁材であって、2つの板材が略直角状に配置され、左右に隣接される外壁板と互いの傾斜端面を突き付けてなる突き付け接合部を有し、上記突き付け接合部の後方に切り欠き部を有することを特徴とする出隅部用外壁材である。
出隅部用外壁材としては、サイディングなどの窯業系建材や、FRP成型材などを使用することができる。
上記出隅部用外壁材の突き付け接合部の傾斜角度は任意であるが、裏面に対して110°〜160°とすることが望ましい。また、出隅部用外壁材の表面側から突き付け接合部にかけて、突き付け接合部とは別に表面に対して110°〜160°の傾斜面を設け、接合部端部の破損を防ぐことが好ましい。
本発明において、出隅部用外壁材は左右に隣接される外壁板と互いの傾斜端面を突き付けてなる突き付け接合部を有するので、左右に隣接する外壁板と突き付け接合した際に、出隅部用外壁材と外壁板との間に多少の隙間が発生しても目立ちにくくなり、外観が悪くなることを防ぐことができる。
【0011】
本請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の出隅部用外壁材と外壁板とが取り付けられるベースジョイナーであって、上記ベースジョイナーは、略直角状に折り曲げられた一体の板からなり、表面側に突出した外壁板取り付け位置ガイドを有し、上記外壁板取り付け位置ガイドは、前記出隅部用外壁材の端部の後方に設けられた切り欠き部に配置可能なように形成されていることを特徴とするベースジョイナーである。
ベースジョイナーは、ガルバリウム鋼板、ガルタイト鋼板、アルミ鋼板、ステンレス鋼板、合金めっき鋼板、トタン、銅板などの金属板を使用することができる。強度、コスト面を考慮し、1枚の金属板の折曲加工によりなることがより好ましく、端部が折り返してあることがより好ましい。
ベースジョイナーの外壁材取り付け位置ガイドは、出隅部用外壁材の突き付け接合部の裏面側に設けられた切り欠き部よりも幅が小さくなるよう、折曲加工により形成されていることが好ましいが、長方形状、棒状、円柱状の部材を接合して用いることも可能である。
本発明において、ベースジョイナーは、略直角状に折り曲げられた一体の板からなるので、建物の出隅部に施工しやすいと共に施工後は位置がズレにくい。また、上記外壁板取り付け位置ガイドを有するので、施工後は出隅部用外壁材と出隅部用外壁材の左右に隣接する外壁板の位置決めを容易に行うことができると共に、外壁板を先に施工することが可能となる。
【0012】
本請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のベースジョイナーであって、前記外壁材取り付け位置ガイドとその端部との間に、高さ方向に沿って形成した止水材を有することを特徴とするベースジョイナーである。止水材としては、EPDMに代表されるエチレンプロピレンゴム系や塩化ビニール系の発泡樹脂材などの弾性樹脂材を用いることが好ましい。
本発明において、止水材がベースジョイナーに予め固定してあるので、施工の際に止水材を固定する作業が省略できる。
【0013】
本請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の出隅部用外壁材と、請求項2に記載のベースジョイナーを使用する建物の出隅部施工構造であって、前記ベースジョイナーは、柱の2辺に沿うように胴縁を介して取り付けられており、前記ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドと端部との間には、止水材が配されており、前記出隅部用外壁材と外壁板が、突き付けられ接合しており、前記ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドが、前記突き付け接合部の後方に形成された切り欠き部に配置されており、パッキンが、上記外壁板の上下接合部に配されると共に、上記止水材の表面と該外壁板の裏面に当接されていることを特徴とする出隅部施工構造である。上記止水材、及び上記パッキンとしては、EPDMに代表されるエチレンプロピレンゴム系や塩化ビニール系の発泡樹脂材などの弾性樹脂材を用いることが好ましい。
本発明において、請求項2に記載のベースジョイナーと請求項1に記載の出隅部用外壁材を使用しているので、ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドが、出隅部用外壁材の突き付け接合部の後方に形成された切り欠き部に配置することができる。また、出隅部用外壁材と左右に隣接する外壁板とは、互いの傾斜端面を突き付け接合してなるので、突き付け接合部が斜め傾斜であり、左右に隣接する外壁板と突き付け接合した際に、出隅部用外壁材と外壁板との間に多少の隙間が発生しても目立ちにくくなり、外観が悪くなることを防ぐことができる。更に、出隅部用外壁材と外壁板の接合部から侵入した雨水が該接続部を流下する際に、外壁板の上下接合部との交点で水平方向に移動することが有るが、パッキンと止水材とを外壁板の上下接合部に配することにより、該雨水が外壁板側に水平移動することを防ぐことができる。
【0014】
本請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の出隅部用外壁材と、請求項3に記載のベースジョイナーを使用する建物の出隅部施工構造であって、前記ベースジョイナーは、柱の2辺に沿うように胴縁を介して取り付けられており、前記出隅部用外壁材と外壁板が、突き付けられ接合しており、前記ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドが、前記突き付け接合部の後方に形成された切り欠き部に配置されており、パッキンが、上記外壁板の上下接合部に配されると共に、上記止水材の表面と該外壁板の裏面に当接されていることを特徴とする出隅部施工構造である。
本発明においても、請求項5に記載の発明と同様の作用効果が得られる。
【0015】
本請求項6に記載の発明は、建物の出隅部に外壁材を施工する出隅部施工方法であって、柱の2辺に沿うように、胴縁を介して請求項2に記載のベースジョイナーを取り付ける工程と、上記ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドと端部との間に止水材を取り付ける工程と、出隅部用外壁材に隣接する外壁板の出隅部用外壁材に隣接する側の端部を、上記ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドより出隅部用外壁材側にならないように、上記胴縁に取り付ける工程と、請求項1に記載の出隅部用外壁材を、ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドを介して隣接する外壁板と突き付け接合する工程と、パッキンを、上記外壁板の実部に係合させると共に、上記止水材の表面及び該外壁板の裏面に当接するように取り付ける工程とを有することを特徴とする出隅部施工方法である。
本発明において、外壁板取り付け位置ガイドを有する請求項2に記載のベースジョイナーを建物の出隅部の胴縁に固定することにより、出隅部用外壁材に隣接する外壁板の出隅部用外壁材に隣接する側の端部の施工位置を定位置とすることができる。また、該外壁板取り付け位置ガイドは、出隅部用外壁材の突き付け接合部の裏面側に設けられた窪みに配置可能な形状、大きさ、位置であるので、出隅部用外壁材と外壁板を突き付け接合しても出隅部用外壁材の突き付け接合部の裏面側に設けられた切り欠き部に配され、不具合は生じず、むしろ外壁板のズレを防ぐという効果も奏する。更に、外壁板を先に施工することが可能となると共に、外壁板の切断口を施工現場で塗装する作業は、外壁板施工後であっても出隅部用外壁材を施工する前であれば行うことができるので、作業性が良い。
【0016】
本請求項7に記載の発明は、建物の出隅部に外壁材を施工する出隅部施工方法であって、柱の2辺に沿うように、胴縁を介して請求項3に記載のベースジョイナーを取り付ける工程と、出隅部用外壁材に隣接する外壁板の出隅部用外壁材に隣接する側の端部を、上記ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドより出隅部用外壁材側にならないように、上記胴縁に取り付ける工程と、請求項1に記載の出隅部用外壁材を、ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドを介して隣接する外壁板と突き付け接合する工程と、パッキンを、上記外壁板の実部に係合させると共に、上記止水材の表面及び該外壁板の裏面に当接するように取り付ける工程とを有することを特徴とする出隅部施工方法である。
本発明においても請求項7に記載の発明と同様の作用効果が得られると共に、止水材が予め固定してある請求項3に記載のベースジョイナーを使用するので、止水材を固定する作業が省略できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の出隅部材およびそれを用いた出隅部施工構造、出隅部施工方法によれば、シーリング材を使用しないので、露出したシーリング材が経年劣化し、その耐久性、防水性などの性能が低下すると共に、変色などにより外観が悪化する、施工コストが上昇する、シーリング材を施工する時間と手間がかかるという問題が一切発生しない。また、出隅部用外壁材と左右に隣接配置される外壁板とは突き付け接合であるので、合じゃくり加工が不要となり、施工費を低下できる。更に、突き付け接合部が傾斜面に形成されているので、突き付け接合部の隙間が目立ちにくく、外壁材を先に施工することが可能となる。更に、外壁板施工後でも外壁板の切断口を塗装できるので、外観性を著しく向上させるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図6に従って具体的に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、出隅部用外壁材の一例を示した図である。(a)は正面斜め上方から見た図であり、(b)は真上から見た図である。
出隅部用外壁材Aは、セメントと、砂と、ガラス繊維を原料とした、厚さ約18mm、2つの板材が略直角状に配置された、幅方向に左右対称な形状の建材であり、出隅部用外壁材Aの左右の面端部には、傾斜面A1と、傾斜面A2と、切り欠き部A3が設けられている。傾斜面A2は左右に隣接する外壁板との突き付け接合部となる部分であり、傾斜面A2の角度は出隅部用外壁材Aの裏面A6に対して約120°である。また、端部の破損を防ぐために、出隅部用外壁材Aの表面A5から突き付け接合部となる傾斜面A2にかけて、傾斜面A2とは別の傾斜面A1が設けてあり、傾斜面A1の角度は出隅部用外壁材Aの表面A5に対して約120°である。更に、傾斜面A2よりも裏面A6側には、施工した際にベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイド(後述する)に対応するため、切り欠き部A3が設けてある。なお、出隅部用外壁材Aの端部では、厚さ約18mmの内、表面側から約2mmまでが傾斜面A1であり、傾斜面A1から裏面A6側に向かって約8mmまでが傾斜面A2であり、傾斜面A2から裏面までの残り約8mmが切り欠き部A3である。更に、該出隅部用外壁材Aの裏面側の幅寸法は、裏面A6の幅が約85mm、切り欠き部A3の幅が約2mm、傾斜面A2の幅が約5mmである。
また、出隅部用外壁材Aの上下の端部には、留付金具を係止するための別の切り欠き部A4が設けてある。
【0020】
図2は、ベースジョイナーの一例を示した図である。(a)は正面斜め上方から見た図であり、(b)は真上から見た図である。
ベースジョイナーCは、約0.35mm厚のガルバニウム鋼板1枚を折曲加工したものであり、端部C3は強度補強及び安全性のため折り返してある。
ベースジョイナーCは、外壁板取り付け位置ガイドC1と、ベース部C2とからなる。外壁板取り付け位置ガイドC1は、ベースジョイナーCの2辺の交点(中央)から約84mmの位置にあり、前記出隅部用外壁材Aの裏面A6の幅よりも小さい。また、外壁板取り付け位置ガイドC1は、上記ガルバニウム鋼板を表面側に折曲加工して形成されているので、強度が確保されている。更に、外壁板取り付け位置ガイドC1の幅は約1mmであり、出隅部用外壁材Aの切り欠き部A3の幅よりも小さいので、出隅部用外壁材Aの切り欠き部A3に配置することが可能である。
【0021】
図3は、ベースジョイナーの別の一例を示した図であり、(a)は正面斜め上方から見た図であり、(b)は真上から見た図である。
ベースジョイナーC’は、図2に示したベースジョイナーCに止水材Dを配したものである。止水材Dは幅10mm、高さ8mmのEPDMからなる角材であり、外壁材取り付け位置ガイドC’1と端部C’3との間のベース部C’2に貼り付けられている。
【0022】
図4は、図1に示した出隅部用外壁材Aと、図2に示したベースジョイナーCとを施工した出隅部施工構造の一例を示した図であり、(a)は正面斜め上方から見た図であり、(b)は真上から見た図である。そして、図5は図4の(b)に示した出隅部用外壁材Aと上記外壁板Bの突き付け接合部Zの拡大図である。
上記出隅部施工構造は、柱Fと、防水紙Gと、胴縁Hと、上記ベースジョイナーCと、止水材Dと、パッキンEと、上記出隅部用外壁材Aと、外壁板Bとからなる。
胴縁Hは防水紙Gを押さえつける状態で柱Fの2辺に釘(図示せず)にて取り付けられており、建物内に雨水が侵入するのを防ぐ。
ベースジョイナーCは、胴縁Hに、柱Fの直交する前面に沿うように取り付けられており、施工後は位置がズレない。
止水材Dは幅10mm、高さ8mmのEPDMからなる角材であり、ベースジョイナーCの外壁板取り付け位置ガイドC1と端部C3との間に貼り付けられている。そして、外壁板Bは出隅部用外壁材Aと突き付け接合する端部に傾斜面B1を有しており、出隅部用外壁材Aと外壁板Bは、傾斜面A2と傾斜面B1とを突き付けると共に、ベースジョイナーCより外側となるよう、留付金具Iにより胴縁Hに取り付けられている。このように、出隅部用外壁材Aと外壁板Bの突き付け接合部(傾斜面A2と傾斜面B1との突き付け接合部)は傾斜接合面とされ、出隅部用外壁材Aと外壁板Bとの間(傾斜面A2と傾斜面B1との突き付け接合部の間)に多少の隙間が発生しても目立ちにくく、施工外観が悪くなることを防ぐことができる。そして、ベースジョイナーCの外壁板取り付け位置ガイドC1は、出隅部用外壁材Aの突き付け接合部の後方に形成された切り欠き部A3に配置されており、不具合は生じない。また、外壁板Bは裏面が止水材Dの表面に接するよう取り付けられており、出隅部用外壁材Aと外壁板Bとの接合部から雨水が浸入し流下する際に、止水材Dにより外壁板B側に水平移動するのを防ぐことができる。
パッキンEはEPDMからなり、幅は10mmと止水材Dと同じ幅であり、外壁板Bの上側実部に形成された切り欠き部B2に係合されると共に、止水材Dの表面と外壁板Bの裏面に接している。なお、図4では図示していないが、出隅部用外壁材Aの上下には別の出隅部用外壁材Aが、外壁板Bの上下にも別の外壁板Bが施工されて建物の出隅部が完成する。外壁板Bの上に別の外壁板Bを施工する際には、パッキンEが上側に配される外壁板Bの下側実部に形成された切り欠き部B2に係合されると共に、止水材Dの表面と上側に配される外壁板Bの裏面に接するように配する。このように、パッキンEが上側に配される外壁板Bの下側実部に形成された切り欠き部B2と、下側に配された外壁板Bの上側実部に形成された切り欠き部B2とに係合するので、パッキンEが固定されると共に、2枚の外壁板Bを上下に接合することにより上下接合部に形成される水平方向の空間は塞がれる。また、外壁板の裏面B3と止水材Dの表面との間に形成される空間を塞ぐことができるので、出隅部用外壁材Aと外壁板Bとの接合部から雨水が浸入し、流下する途中で、外壁板Bの上下接合部との交点において、外壁板B側に水平移動するのを防ぐことができる。
なお、図3に示したベースジョイナーC’を用いても、図4及び図5に示した出隅部施工構造となる。
【0023】
図4及び図5に示した出隅部施工構造の施工方法としては、最初に、柱Fの直交する2表面に防水紙Gを押さえつける状態で胴縁Hを釘打固定し、更に、柱Fの2辺に沿うように図2に示したベースジョイナーCを釘打固定する。
次に、ベースジョイナーCの外壁板取り付け位置ガイドC1と端部C3の間に止水材Dを貼り付ける。
更に、出隅部用外壁材Aに隣接する外壁板Bの出隅部用外壁材Aに隣接する側の端部に傾斜面B1を形成しておき、該端部をベースジョイナーCの外壁板取り付け位置ガイドC1より出隅部用外壁材A側にならないよう、留付金具Iにより胴縁Hに取り付ける。なお、傾斜面B1は切削して形成した為、耐水性が悪いが、本施工方法では、胴縁Hに外壁板Bを取り付けた後でも出隅部用外壁材Aを突き付け接合する前であれば傾斜面B1は塗装が可能であるので、傾斜面B1に塗装を行うことで耐水性を確保する。また、外壁板Bは裏面B3が止水材Dの表面に接するよう取り付ける。
更に、出隅部用外壁材Aを、傾斜面A2が隣接する外壁板Bの傾斜面B1と接合するよう突き付けると共に、切り欠き部A3がベースジョイナーCの外壁板取り付け位置ガイドC1に対応するよう配置し、留付金具Iにより胴縁Hに取り付ける。
そして、パッキンEが止水材Dの表面及び外壁板Bの裏面B3に接すると共に、外壁板Bの上側実部に形成された切り欠き部B2に係合するよう取り付ける。なお、外壁板Bの上に別の外壁板Bを施工する際には、パッキンEが上側に配される外壁板Bの下側実部に形成された切り欠き部B2に係合すると共に、止水材Dの表面と上側に配される外壁板Bの裏面に接するよう取り付ける。
上記施工方法を行うことで、外壁材を先に施工することが可能となり、外壁板の切削木口を施工現場で塗装する作業は、外壁板施工後に行うことができ、作業性が良くなる。また、図3に示したベースジョイナーC’を用いても良く、その場合には止水材Dを取り付ける作業が省略される。
【0024】
図6は、図1に示した出隅部用外壁材Aと、図2に示したベースジョイナーCとを施工した出隅部施工構造の別の一例を示した図であり、(a)は正面斜め上方から見た図であり、(b)は真上から見た図である。そして、図7は図6の(b)に示した出隅部用外壁材Aと外壁板Bの突き付け接合部Z’の拡大図である。
図6及び図7に示した出隅部施工構造も、図4及び図5に示した出隅部施工構造と同様に、柱Fと、防水紙Gと、胴縁Hと、ベースジョイナーCと、止水材Dと、パッキンEと、出隅部用外壁材Aと、外壁板Bとからなるが、止水材DとパッキンEが出隅部用外壁材A側にも設けられている点が図4及び図5に示した出隅部施工構造と異なる。すなわち、図4及び図5に示した出隅部施工構造に加えて、別の止水材Dが表面を出隅部用外壁材Aの裏面A6に接するように取り付けられており、かつ、止水材Dと同じ幅であるパッキンEが出隅部用外壁材Aの上側実部に形成された切り欠き部A4に係合されると共に、止水材Dの表面と出隅部用外壁材Aの裏面A6に接するよう取り付けられており、出隅部用外壁材Aと外壁板Bとの接合部Zから雨水が浸入したとしても、流下する途中で、出隅部用外壁材A側に水平移動することを防ぐことができる。なお、他は図4及び図5に示した出隅部施工構造と同じであるので、前述した図4及び図5に示した出隅部施工構造の効果を得ることができるし、図3に示したベースジョイナーC’を用いても、図6及び図7に示した出隅部施工構造となる。
【0025】
図6と図7に示した出隅部施工構造の施工方法としては、図4及び図5に示した出隅部施工構造の施工方法と類似しているが、止水材DとパッキンEの取り付け方法のみが異なる。すなわち、ベースジョイナーCの外壁板取り付け位置ガイドC1と端部C3の間に止水材Dを貼り付けると共に、別の止水材DをベースジョイナーCの中央と外壁板取り付け位置ガイドC1の間にも貼り付ける。それに伴い、パッキンEを止水材Dの表面及び外壁板Bの裏面B3に接し、外壁板Bの上側実部に形成された切り欠き部B2に係合するよう取り付けると共に、別のパッキンEを止水材Dの表面及び出隅部用外壁材Aの裏面A6に接し、出隅部用外壁材Aの上側実部に形成された切り欠き部A4に係合するよう取り付ける。
上記施工方法を行うことで、図4及び図5に示した出隅部施工構造の施工方法と同様の効果を得ることができる。
【0026】
以上に本発明の一実施態様について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲内において種々の変形態様を取り得る。例えば、出隅部用外壁材は他の原料からなる外壁板や、様々な厚みの外壁板を用いても良い。また、外壁板の実部は様々な形状があるので、パッキンの上実部打設部と下実部打設部の形状は外壁板の実部の形状にあわせて変更すれば良く、留付金具も様々な形状の物を使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明したように、本発明の出隅部材およびそれを用いた出隅部施工構造、出隅部施工方法によれば、シーリング材を使用しないので、露出したシーリング材が経年劣化し、その耐久性、防水性などの性能が低下すると共に、変色などにより外観が悪化する、施工コストが上昇する、シーリング材を施工する時間と手間がかかるという問題が一切発生しない。また、出隅部用外壁材と左右に隣接配置される外壁板とは突き付け接合であるので、合じゃくり加工が不要となり、施工費を低下できる。更に、突き付け接合部が傾斜面に形成されているので、突き付け接合部の隙間が目立ちにくく、外壁材を先に施工することが可能となる。更に、外壁板施工後でも外壁板の切断口を塗装できるので、外観性を著しく向上させるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】出隅部用外壁材の一例を示した図である。
【図2】ベースジョイナーの一例を示した図である。
【図3】ベースジョイナーの別の一例を示した図である。
【図4】図1に示した出隅部用外壁材Aと、図2に示したベースジョイナーCとを施工した出隅部施工構造の一例を示した図である。
【図5】図4の(b)に示した出隅部用外壁材と外壁板の突き付け接合部の拡大図である。
【図6】図1に示した出隅部用外壁材Aと、図2に示したベースジョイナーCとを施工した出隅部施工構造の別の一例を示した図である。
【図7】図6の(b)に示した出隅部用外壁材と外壁板の突き付け接合部の拡大図である。
【図8】湿式シーリング材を使用した出隅部施工構造の一例を示した図である。
【図9】シーリング材を使用しない従来の出隅部施工構造の一例を示した図である。
【図10】シーリング材を使用しない従来の出隅部施工構造の別の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0029】
A 出隅部用外壁材
A1 傾斜面
A2 傾斜面
A3 切り欠き部
A4 切り欠き部
A5 表面
A6 裏面
B 外壁板
B1 傾斜面
B2 切り欠き部
B3 裏面
C ベースジョイナー
C1 外壁材取り付け位置ガイド
C2 ベース部
C3 端部
D 止水材
E パッキン
F 柱
G 防水紙
H 胴縁
I 留付金具
J 出隅用外壁材
K 外壁板
L ハットジョイナー
M シーリング材
N コーナー材
O サイディング
P 出隅材
Q 外壁パネル
R 防水材
S ハットジョイナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に外壁板を隣接配置することにより出隅部を形成する出隅部用外壁材であって、
2つの板材が略直角状に配置され、左右に隣接される外壁板と互いの傾斜端面を突き付けてなる突き付け接合部を有し、
上記突き付け接合部の後方に切り欠き部を有する
ことを特徴とする出隅部用外壁材。
【請求項2】
請求項1に記載の出隅部用外壁材と外壁板とが取り付けられるベースジョイナーであって、
上記ベースジョイナーは、略直角状に折り曲げられた一体の板からなり、
表面側に突出した外壁板取り付け位置ガイドを有し、
上記外壁板取り付け位置ガイドは、前記出隅部用外壁材の端部の後方に設けられた切り欠き部に配置可能なように形成されている
ことを特徴とするベースジョイナー。
【請求項3】
請求項2に記載のベースジョイナーであって、
前記外壁材取り付け位置ガイドとその端部との間に、高さ方向に沿って形成した止水材を有する
ことを特徴とするベースジョイナー。
【請求項4】
請求項1に記載の出隅部用外壁材と、請求項2に記載のベースジョイナーを使用する建物の出隅部施工構造であって、
前記ベースジョイナーは、柱の2辺に沿うように胴縁を介して取り付けられており、
前記ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドと端部との間には、止水材が配されており、
前記出隅部用外壁材と外壁板が、突き付けられ接合しており、
前記ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドが、前記突き付け接合部の後方に形成された切り欠き部に配置されており、
パッキンが、上記外壁板の上下接合部に配されると共に、上記止水材の表面と該外壁板の裏面に当接されている
ことを特徴とする出隅部施工構造。
【請求項5】
請求項1に記載の出隅部用外壁材と、請求項3に記載のベースジョイナーを使用する建物の出隅部施工構造であって、
前記ベースジョイナーは、柱の2辺に沿うように胴縁を介して取り付けられており、
前記出隅部用外壁材と外壁板が、突き付けられ接合しており、
前記ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドが、前記突き付け接合部の後方に形成された切り欠き部に配置されており、
パッキンが、上記外壁板の上下接合部に配されると共に、上記止水材の表面と該外壁板の裏面に当接されている
ことを特徴とする出隅部施工構造。
【請求項6】
建物の出隅部に外壁材を施工する出隅部施工方法であって、
柱の2辺に沿うように、胴縁を介して請求項2に記載のベースジョイナーを取り付ける工程と、
上記ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドと端部との間に止水材を取り付ける工程と、
出隅部用外壁材に隣接する外壁板の出隅部用外壁材に隣接する側の端部を、上記ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドより出隅部用外壁材側にならないように、上記胴縁に取り付ける工程と、
請求項1に記載の出隅部用外壁材を、ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドを介して隣接する外壁板と突き付け接合する工程と、
パッキンを、上記外壁板の実部に係合させると共に、上記止水材の表面及び該外壁板の裏面に当接するように取り付ける工程と
を有することを特徴とする出隅部施工方法。
【請求項7】
建物の出隅部に外壁材を施工する出隅部施工方法であって、
柱の2辺に沿うように、胴縁を介して請求項3に記載のベースジョイナーを取り付ける工程と、
出隅部用外壁材に隣接する外壁板の出隅部用外壁材に隣接する側の端部を、上記ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドより出隅部用外壁材側にならないように、上記胴縁に取り付ける工程と、
請求項1に記載の出隅部用外壁材を、ベースジョイナーの外壁板取り付け位置ガイドを介して隣接する外壁板と突き付け接合する工程と、
パッキンを、上記外壁板の実部に係合させると共に、上記止水材の表面及び該外壁板の裏面に当接するように取り付ける工程と
を有することを特徴とする出隅部施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−84886(P2009−84886A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256525(P2007−256525)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】