刃物
【課題】製造が容易であり、良好な切れ味を得ることができ、その切れ味を長く維持することができ、切ったものが刃に張り付かない刃物を提供すること。
【解決手段】刃物1cは、金属、金属の化合物、及びセラミックスのうちの1つの粉末または複数を混合した粉末から成形した成形体、もしくは前記成形体を加熱処理した後の成形体を電極として、加工液中あるいは気体中において前記電極との間にパルス放電を行うことにより、溶融した電極材料あるいは前記電極材料の反応生成物からなる皮膜7が形成された切刃部24を有する。
【解決手段】刃物1cは、金属、金属の化合物、及びセラミックスのうちの1つの粉末または複数を混合した粉末から成形した成形体、もしくは前記成形体を加熱処理した後の成形体を電極として、加工液中あるいは気体中において前記電極との間にパルス放電を行うことにより、溶融した電極材料あるいは前記電極材料の反応生成物からなる皮膜7が形成された切刃部24を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃物に関し、特に、切刃部に放電エネルギーにより反応した物質からなる皮膜を形成した刃物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックス製の包丁(特許文献1)、溶射によって刃先に硬度の高い皮膜を形成した包丁、PVD(物理気相成長法)、CVD(化学気相成長法)によって刃先に硬度の高い皮膜を形成した包丁、ステンレス鋼製で刃先を焼き入れした包丁が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−159982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラミックス製の包丁は靭性がないので、硬いものにぶつかったときに割れやすい。また、溶射によって刃先に硬度の高い皮膜を形成した包丁は台金(たとえば、フェライト系ステンレス鋼で構成された台金)に対する皮膜の密着性が劣るため、長期間の使用によって皮膜が剥がれることがある。
【0005】
また、PVDやCVDによって刃先に硬度の高い皮膜を形成した包丁は皮膜の表面が滑らかなので、切れ味に劣り、切ったものが刃物に貼りつく。さらに、皮膜が薄いので、研削して(研ぎなおして)切れ味を再生することが困難である。
【0006】
ステンレス鋼製で刃先を焼き入れした包丁は刃先を高い硬度にするための熱管理が難しく、歩留まりが悪い。また、刃先を構成する硬質な薄い板状の材料(たとえば、焼き入れ可能な、もしくは焼き入れされたステンレス鋼)を軟質な薄い板状の材料(たとえば、フェライト系ステンレス鋼)で挟み込んで一体化した包丁は構成が複雑になので、製造に手間がかかる。
【0007】
また、上記のいずれの包丁も、切れ味を向上させるために必要な刃先を非常に細かい鋸状に研磨することが難しく、専門家に委ねることが多い。
【0008】
このように、上記した従来の包丁は、製造が困難であるか、良好な切れ味を得ることが困難であるか、または、良好な切れ味を長く維持することが困難であるといった課題を抱えている。なお、このような課題は、包丁以外の刃物においても同様に発生する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、製造が容易であり、良好な切れ味を得ることができ、良好な切れ味を長く維持することができる刃物を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の一実施の形態に係る刃物は、台金に切刃部を備え、第1および第2の刃面を有する両刃の刃物であって、前記切刃部は、前記第1の刃面に形成された第1の切刃部と前記第2の刃面に形成された第2の切刃部とから成り、前記皮膜は、前記1および第2の切刃部のうちの一方の刃先を含む一部に形成され、前記皮膜は、セラミック粉末から成形した成形体、セラミックス粉末と金属あるいはセラミックス粉末と金属の化合物を混合した粉末から成形した成形体、前記成形体を加熱処理した後の成形体、およびSiの固体のうちの1つを電極として、加工油中で前記電極と前記切刃部との間にパルス放電を行うことにより、溶融した電極材料または前記電極材料の反応生成物から形成され、前記皮膜と前記台金との境界には、5μm〜30μmの深さを有する傾斜合金層が形成されていることを特徴とする。
本発明の他の実施の形態に係る刃物は、台金に切刃部を備え、第1および第2の刃面を有する両刃の刃物であって、前記切刃部は、前記第1の刃面に形成された第1の切刃部と前記第2の刃面に形成された第2の切刃部とから成り、前記皮膜は、前記第1および第2の切刃部のうちの少なくとも一方を被覆するように形成され、前記皮膜は、セラミック粉末から成形した成形体、セラミックス粉末と金属あるいはセラミックス粉末と金属の化合物を混合した粉末から成形した成形体、前記成形体を加熱処理した後の成形体、およびSiの固体のうちの1つを電極として、加工油中で前記電極と前記切刃部との間にパルス放電を行うことにより、溶融した電極材料または前記電極材料の反応生成物から形成され、前記皮膜と前記台金との境界には、5μm〜30μmの深さを有する傾斜合金層が形成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る包丁の概略構成を示す図である。
【図2】図1におけるII―II断面を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る包丁の概略構成を示す断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る包丁の第1の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態の包丁の第2の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態の包丁の第3の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図7】第2の実施形態の包丁の第4の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図8】第2の実施形態の包丁の第5の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図9】包丁に被切断物の貼り付きを防止するための凹部を設けた状態を示す図である。
【図10】包丁の長手方向における皮膜の形状の変更例を示す図であり、図10(a)は、正弦波形を示し、図10(b)は、矩形状波形を示している。
【図11】電極材料が放電エネルギーにより反応した物質等からなる皮膜を切刃部に形成するときの状態を示す模式図である。
【図12】図11における電極と被加工物(台金)の間の電圧と電流との関係を示す図であり、図12(a)は、電圧と放電時間との関係を示し、図12(b)は、電流と放電時間との関係を示す。
【図13】ピーク電流ie、パルス幅te、無負荷電圧uiを変えて皮膜を生成したときの皮膜の粗さRaを示す図である。
【図14】本願発明に係る包丁と従来の包丁との切れ味とその持続性を比較したCATRAカッティングテストの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る包丁1の概略構成を示す図であり、図2は、図1におけるII―II断面を示す断面図である。
【0013】
包丁1は、柄3と、台金(たとえば、フェライト系ステンレス鋼製)5に切刃部13を設けた本体部9とによって構成されている。本実施形態では、切刃部13は、包丁1の刃裏15側にのみ設けられている。そして、切刃部13の先端には刃先(刃線)11が設けられている。また、本体部9の刃先11と反対側には峰部12が設けられている。さらに、刃先11を含む切刃部13の少なくとも一部には、皮膜7が包丁1の長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。
【0014】
なお、皮膜7は、刃裏15の切刃部13以外の部位(たとえば、台金5の刃裏15の全面)に形成してもよい。すなわち、包丁1においては、少なくとも刃裏15の切刃部13に皮膜7が形成されていればよい。
【0015】
皮膜7は、金属粉末あるいは金属の化合物またはセラミックスの中の1種または複数種を混合した粉末から成形した成形体、もしくは前記成形体を加熱処理した成形体、またはSi(珪素)の固体を電極(図示せず)として、加工液油あるいは気中において前記電極と切刃部13との間にパルス状に放電を発生させ、このとき発生する放電エネルギーにより溶融した電極材料、あるいは当該電極材料の当該放電エネルギーによる反応生成物質が切刃部13に僅かずつ堆積したことにより形成され、台金の材料との混合組織となっている。
【0016】
なお、台金5と皮膜7との境界には、傾斜合金層50が形成されている。この傾斜合金層は5μm〜30μmの深さに形成されている。なお、以降の実施形態においても同じく、台金5と皮膜7との境界には傾斜合金層50が形成されている。
【0017】
放電は、切刃部13と前記電極とをたとえば0.05mm程度離した状態でなされる。また、図1において、たとえば、切刃部13の面積に比べて前記電極の面積が小さい場合には、前記電極を包丁1の長手方向に移動させつつ放電を行なう。
【0018】
前記電極としては、たとえば、cBN(立方窒化硼素)、TiC(チタンカーバイド;炭化チタン)、WC(タングステンカーバイド;炭化タングステン)、SiC(シリコンカーバイド;炭化珪素)、Cr3C2(炭化クロム)、Al2O3(酸化アルミニウム;アルミナ)、ZrO2−Y(安定化酸化ジルコニウム;安定化ジルコニウム)、TiN(チタンナイトライド;窒化チタン)、TiB(ホウ化チタン)等の硬質のセラミックス(金属の化合物)の一種または複数種を含むセラミックス粉末をたとえば圧縮して成形したポーラスな成形体が使用される。または、前記成形体を、たとえば、真空炉で加熱処理することによって製造された成形体が使用される。皮膜7は、前記電極と同じ材料または放電雰囲気で化合した化合物からなる材料で形成される。
【0019】
なお、前記電極が導電性を具備しない場合には、微粉末状の金属と微粉末状のセラミックスとを混合して結合して形成されたものを堆積用電極として使用してもよい。または、表面を通電性の材料でコーティングされた微粉末状のセラミックスを圧縮成形した堆積用電極を使用してもよい。
【0020】
また、前記電極に代えて、SiやTi(チタン)等の炭化物を作りやすい金属粉末を圧縮成形し、必要に応じて、前記圧縮成形した金属粉末を加熱処理して形成された粉圧体で電極を形成してもよい。すなわち、SiやTi等の炭化物を作りやすい微小な金属の粉末を結合して形成されたポーラスな電極を用いてもよい。この場合、前記電極と切刃部13とが灯油等の炭化水素を含む加工用油中に存在している状態で放電を発生させ、このとき発生する放電エネルギーにより反応した物質(たとえば、SiCやTiCからなる物質)が皮膜7として切刃部13の表面に形成される。
【0021】
さらに、前記電極を、圧縮成形する代わりに、泥漿鋳込み、MIM(Metal Injection Molding)、スプレー成形(溶射で成形)等によって成形してもよい。
【0022】
また、Siの微小な金属の粉末を結合して形成されたポーラスな電極の代わりに、金属状のSi(内部に空洞を有さないSiの結晶)で形成された電極を用いてもよい。
【0023】
皮膜7の表面は、適度の粗さになっていて微細な鋸状の刃先を形成している。粗さは、皮膜7を形成するときに調整する。皮膜7の形成後に皮膜7のついていない刃表または刃裏を研削して(たとえば、刃裏側の面17)刃先の粗さを調整し、また刃先をエッジ状にしてもよい。なお、さらなる切れ味の向上のため、切断対象である被切断物の種類(たとえば、魚であるか肉であるか野菜であるか)に応じて皮膜7の表面の粗さを調整してもよい。
【0024】
ここで、皮膜7を形成するときにその表面の粗さを調整する方法について説明する。
【0025】
図11は、電極材料が放電エネルギーにより反応した物質等からなる皮膜を切刃部に形成するときの状態を示す模式図である。
【0026】
図12は、図11における電極と被加工物(台金5)の間の電圧と電流との関係を示す図であり、図12(a)の縦軸は電圧(電源装置で電極に印加する電圧)を示し、図12(b)の縦軸は電流(電極と被加工物との間に流れる電流を示し、図12(a)、12(b)の横軸は時間を示す。
【0027】
皮膜7の表面の粗さは、電極から降り注ぐ単位微粉末あたりのエネルギーにより左右され、このエネルギーが大きいほど、皮膜7の表面は粗くなる。
【0028】
より詳しく説明すると、単発放電(電極からの1回に放電)あたりのエネルギーは、図12(a)、12(b)の放電電圧ueとピーク電流ieとパルス幅teとの積に比例する。ここで、放電を発生させる電源装置の性能上、放電電圧ueは電流にほとんど依存しないので一定と考えてもよい。
【0029】
電極から降り注ぐ微粉末の量は、放電開始のエネルギー(無負荷電圧ui)に依存し、他の影響は少ない。電極から降り注ぐ微粉末の量は、無負荷電圧uiの約0.7乗に比例する。
【0030】
よって、単位微粉末あたりのエネルギーは、ピーク電流ieとパルス幅teとの積を、無負荷電圧uiの約0.7乗で除したものに比例する。
【0031】
したがって、ピーク電流ie、パルス幅teを大きくし、無負荷電圧uiを小さくすれば、電極から降り注ぐ単位微粉末あたりのエネルギーが大きくなり、粗いコーティングを得る(皮膜7の表面の粗さを粗くする)ことができる。一方、ピーク電流ie、パルス幅teを小さくし、無負荷電圧uiを大きくすれば、電極から降り注ぐ単位微粉末あたりのエネルギーが小さくなり、細かいコーティングを得る(皮膜7の表面の粗さを細かくする)ことができる。
【0032】
図13は、ピーク電流ie、パルス幅te、無負荷電圧uiを変えて皮膜7を生成したときの皮膜7の粗さRaを示す図である。
【0033】
図13から、ピーク電流ieとパルス幅teとの積を、無負荷電圧uiの0.7乗で除した値が大きいほど、皮膜7の表面の粗さが粗くなっていることがわかる。
【0034】
このように、包丁1は、台金5がフェライト系ステンレス鋼で構成されており、切刃部13に硬度の高い皮膜(ほとんど磨耗しない皮膜)7が形成されているので、良好な切れ味を得ることができる。また、台金5が靭性を備えているので、包丁全体の靭性が高くなっており、ぶつけた場合や落下した場合においても割れが発生しにくくなっている。また、皮膜7の台金5への密着度が高いので、長期間の使用によって皮膜7が剥がれることがなく、良好な切れ味を長く維持させることができる。
【0035】
また、皮膜7の表面を適度の粗さにすることも容易であり、刃先11を細かい凹凸を備えた鋸刃状に形成することができるので、切れ味が良くなると共に、切ったものが包丁1に貼りつくことを抑制することができる。また、皮膜7のついていない刃裏または刃表を研ぎなおして、皮膜7の表面の粗さに相当する凹凸を備えた鋸刃状の切れ味の良い刃先を再生することもできる。
【0036】
さらに、台金5に皮膜7を設けた構成であるので、構成が簡素になっており、面倒な焼き入れ工程を無くすことができ歩留まりを向上させることができ、製造が容易になっている。
【0037】
また、包丁1は、皮膜7が刃裏15にのみ形成されているので、研ぎなおしをする際、切刃部13の斜めになっている刃表側の面(皮膜が形成されていない面;フェライト系ステンレス鋼の面)17のみを研削することで、皮膜7の表面の粗さに相当する凹凸を備えた鋸刃状の切れ味の良い刃先を再生すること(切れ味を良好な状態に戻すこと)ができる。
【0038】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る包丁1aの概略構成を示す断面図である。
【0039】
第2の実施形態に係る包丁1aは、両刃になっている点、両刃の両面(第1の刃面19及び第2の刃面21)に皮膜7が形成されている点が、第1の実施形態に係る包丁1とは異なる。包丁1aの第1及び第2の刃面19,21には、それぞれ、包丁1aの長手方向と直交する台金5の断面の中心線Lに対して対称なテーパ形状の切刃部24及び23が設けられている。皮膜7は、切刃部24を含む第1の刃面19及び切刃部23を含む第2の刃面21に、包丁1aの長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。その他の構成は、包丁1と同様なので、包丁1とほぼ同様の効果を奏する。
【0040】
このように、両刃の包丁1aにおいて、第1及び第2の刃面19,21の両面に皮膜7を形成すれば、磨耗し難いので良好な切れ味を一層長期間にわたって維持することができる。さらに、万一、切先が欠けたりして研ぎなおしをする際には、片面の皮膜を犠牲にして皮膜を除去すれば第1又は第2の刃面19,21にのみ皮膜7を形成した場合と同様の効果を奏する。
【0041】
図4は、包丁1aの第1の変形例である包丁1bの概略構成を示す断面図である。包丁1bの第1及び第2の刃面19,21には、それぞれ、包丁1bの長手方向と直交する台金5の断面の中心線Lに対して対称なテーパ形状の切刃部24及び23が設けられている。皮膜7は、切刃部24を含む第1の刃面19にのみ、包丁1bの長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。なお、図示はしないが、第2の刃面21にのみ、切刃部23を含むように薄く帯状皮膜7を設けてもよい。すなわち、皮膜7が第1及び第2の刃面19,21のうちの少なくとも一方の刃面に設けられていてもよい。
【0042】
このように、包丁1bにおいて、第1又は第2の刃面19,21にのみ皮膜7を形成すれば、片刃の包丁1で刃裏15にのみ皮膜7を形成した場合と同様に、容易に切れ味を再生することができる。
【0043】
ただし、包丁1bの場合、皮膜7の形成された第1の刃面19の切刃部24の摩擦係数と第2の刃面21の切刃部23との摩擦係数の差から、野菜等の食物を切った場合に、切り口が曲がってしまうことがある。以下に示す第2乃至第5の変形例は、これを解消するために提供される。
【0044】
図5は、包丁1aの第2の変形例である包丁1cの概略構成を示す断面図である。包丁1cの第1及び第2の刃面19,21には、それぞれ、包丁1cの長手方向と直交する台金5の断面の中心線Lに対して対称なテーパ形状の切刃部24及び23が設けられている。皮膜7は、第1の刃面19の切刃部24の先端部にのみ、包丁1cの長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。
【0045】
図6は、包丁1aの第3の変形例である包丁1dの概略構成を示す断面図である。包丁1dにおいては、包丁1dの長手方向と直交する台金5の断面の中心線Lから第1の刃面19側にずらした線L1上に刃先11が設けられており、かつ、線L1と第1の刃面19の切刃部24との成す角度(第1の刃面19側の先端角)θRと、線L1と第2の刃面21の切刃部23との成す角度(第2の刃面21側の先端角)θLとが異なるように構成されている。この場合、θR<θLである。包丁1dでは、皮膜7は、第1の刃面19の切刃部24にのみ、包丁1dの長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。なお、図示はしないが、線L1は、台金5の中心線Lから第2の刃面21側にずらした位置に設けてもよい。その場合には、θR>θLとなる。
【0046】
図7は、包丁1aの第4の変形例である包丁1eの概略構成を示す断面図である。包丁1eでは、包丁1eの長手方向と直交する台金5の断面の中心線Lから第1の刃面19側にずれた線L1上に刃先11が設けられており、かつ、線L1と第1の刃面19の切刃部24との成す角度(第1の刃面19側の先端角)θRと、線L1と第2の刃面21の切刃部23との成す角度(第2の刃面21側の先端角)θLが同じになるように構成されている。つまり、θR=θLである。包丁1eでは、皮膜7は、第1の刃面19の切刃部24の先端部にのみ、包丁1eの長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。なお、図示はしないが、線L1は、台金5の中心線Lから第2の刃面21側にずらした位置に設けてもよい。
【0047】
図8は、包丁1aの台5の変形例である包丁1fの概略構成を示す断面図である。包丁1fにおいては、第1の刃面19に2段テーパ形状の切刃部23及び33、第2の刃面21に2段テーパ形状の切刃部24及び34がそれぞれ形成されている。そして、包丁1fでは、皮膜7は、第1の刃面19の切刃部34にのみ、包丁1fの長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。なお、図示はしないが、皮膜7は、第2の刃面21の切刃部33にのみ設けてもよい。
【0048】
また、図9は、図4に示した包丁1bに被切断物Fの貼り付きを防止するための凹部25を設けた状態を示す図である。これに限らず、上記のその他の実施形態に係る包丁において、第1の刃面19、第2の刃面21、刃裏15のうちの少なくとも一方の側(台金5)に、被切断物Fの貼り付きを防止するための凹部25を設けてもよい。この場合、包丁を研ぎなおしても、切れ味が落ちないので研ぎ直し回数は極めて少なく、凹部25まで研磨されることはないので、張り付きを防止する効果は保持される。
【0049】
さらに、図10(a)、10(b)は、包丁の長手方向における皮膜7の形状の変更例を示す図である。このように、上記の各実施形態に係る包丁において、皮膜7の峰部12側の端部の形状を、包丁の長手方向に対して凹凸を繰り返しように形成してもよい。
【0050】
より具体的には、皮膜7の峰部12側の端部が、たとえば、図10(a)に示すように、正弦波状に形成されていてもよいし、また、図10(a)に示すように矩形な波形に形成されていてもよい。
【0051】
図10(a)、10(b)に示す形態の包丁によれば、包丁の長手方向における皮膜7の峰部12側の端部が凹凸を繰り返しているので、被切断物の貼り付きを防止することができると共に、模様が日本刀の刃文のように見え、切れ味が良いという印象を包丁の使用者に与えることができる。
【0052】
最後に、本願発明に係る包丁と従来の包丁との切れ味とその持続性を比較したCATRAカッティングテストの結果を図14に示す。CATRAカッティングテストとは、所定のテスト用紙の上に刃先を当てがい、一定の荷重をかけ一定の距離を往復させて、切り込みの深さを各回毎に調べるテストのことである。今回、ISO8442.5に基づき、テスト用紙として5%silica紙、荷重50N、切る速度50mm/s、往復幅40mm、往復回数60回でテストを行った。使用した包丁は、セラミック製の両刃包丁(比較例1)、ステンレス鋼製の両刃包丁(比較例2)、粉末ハイス鋼製の両刃包丁(比較例3)、本発明の1実施例に係る両刃包丁(実施例1)の4本である。
【0053】
実施例1に係る包丁は、図5に示したような、第1の刃面19の切刃部24の先端部に皮膜7を形成したものである。皮膜7は、フェライト系ステンレス鋼製の台金5に、セラミック粉末の成形体を電極として、第1の実施形態において説明した方法により、当該電極と切刃部24の先端部との間にパルス状の放電を発生させ、この放電エネルギーにより、電極材料であるセラミック粉末を切刃部24の先端部(刃先11からおよそ3mmの高さの帯領域)に薄く堆積させることで形成した。
【0054】
図14において、縦軸は、1往復あたりの切れ込みの深さ(mm)を表し、横軸は、累積された切れ込みの深さ(mm)を表している。つまり、縦軸の数値は、1回の使用における切れ味の指標となり、この数値が大きいほど、1回の使用における切れ味が良いことになる。また、横軸の数値は、切れ味の永続性の指標となり、この数値が大きいほど、切れ味の永続性が良いことになる。このことから、左端近傍の値が大きく、勾配がよりゆるやかな右下がりの曲線を示す包丁ほど使用者にとってより良い包丁ということになる。このような観点からすると、実施例1に係る包丁の示す曲線は、その他3本の包丁の示す曲線と比較して、上記の条件を満たしていることがわかる。なお、比較例1の包丁(セラミック製の包丁)は、実施例1の包丁の示す曲線と似た形状を示してはいるが、実験初期における立下りの落差が実施例1の包丁と比較して大きく、ある程度の使用回数までの永続性は実施例1の包丁が切れ味及びその永続性ともに良好であることがわかる。
【0055】
なお、上記の各実施形態では、食物、食品等を切断するための包丁を例に掲げて説明したが、食物、食品の他に、糸、布、革、木、竹、草、ゴム、樹脂等を切断するためのナイフや、木、竹、草等を切断するための鎌や、木、竹等を切断するためのノコギリや、木を削るためのカンナ(鉋)、ノミ(鑿)等のように、はさみ(せん断力で物を切る刃物)を除く刃物(切る対象である被切物(被切断物)を刃先で押圧しまた被切断物に対して刃先を相対的に移動して前記被切断物を切断する刃物)にも、上記の各実施形態を適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 包丁
3 柄
5 台金
7 皮膜
9 本体部
11 刃先
13,23,24,33,34 切刃部
15 刃裏
17 刃裏の表側の面
19 第1の刃面
21 第2の刃面
25 凹部
50 傾斜合金層
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃物に関し、特に、切刃部に放電エネルギーにより反応した物質からなる皮膜を形成した刃物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックス製の包丁(特許文献1)、溶射によって刃先に硬度の高い皮膜を形成した包丁、PVD(物理気相成長法)、CVD(化学気相成長法)によって刃先に硬度の高い皮膜を形成した包丁、ステンレス鋼製で刃先を焼き入れした包丁が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−159982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラミックス製の包丁は靭性がないので、硬いものにぶつかったときに割れやすい。また、溶射によって刃先に硬度の高い皮膜を形成した包丁は台金(たとえば、フェライト系ステンレス鋼で構成された台金)に対する皮膜の密着性が劣るため、長期間の使用によって皮膜が剥がれることがある。
【0005】
また、PVDやCVDによって刃先に硬度の高い皮膜を形成した包丁は皮膜の表面が滑らかなので、切れ味に劣り、切ったものが刃物に貼りつく。さらに、皮膜が薄いので、研削して(研ぎなおして)切れ味を再生することが困難である。
【0006】
ステンレス鋼製で刃先を焼き入れした包丁は刃先を高い硬度にするための熱管理が難しく、歩留まりが悪い。また、刃先を構成する硬質な薄い板状の材料(たとえば、焼き入れ可能な、もしくは焼き入れされたステンレス鋼)を軟質な薄い板状の材料(たとえば、フェライト系ステンレス鋼)で挟み込んで一体化した包丁は構成が複雑になので、製造に手間がかかる。
【0007】
また、上記のいずれの包丁も、切れ味を向上させるために必要な刃先を非常に細かい鋸状に研磨することが難しく、専門家に委ねることが多い。
【0008】
このように、上記した従来の包丁は、製造が困難であるか、良好な切れ味を得ることが困難であるか、または、良好な切れ味を長く維持することが困難であるといった課題を抱えている。なお、このような課題は、包丁以外の刃物においても同様に発生する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、製造が容易であり、良好な切れ味を得ることができ、良好な切れ味を長く維持することができる刃物を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の一実施の形態に係る刃物は、台金に切刃部を備え、第1および第2の刃面を有する両刃の刃物であって、前記切刃部は、前記第1の刃面に形成された第1の切刃部と前記第2の刃面に形成された第2の切刃部とから成り、前記皮膜は、前記1および第2の切刃部のうちの一方の刃先を含む一部に形成され、前記皮膜は、セラミック粉末から成形した成形体、セラミックス粉末と金属あるいはセラミックス粉末と金属の化合物を混合した粉末から成形した成形体、前記成形体を加熱処理した後の成形体、およびSiの固体のうちの1つを電極として、加工油中で前記電極と前記切刃部との間にパルス放電を行うことにより、溶融した電極材料または前記電極材料の反応生成物から形成され、前記皮膜と前記台金との境界には、5μm〜30μmの深さを有する傾斜合金層が形成されていることを特徴とする。
本発明の他の実施の形態に係る刃物は、台金に切刃部を備え、第1および第2の刃面を有する両刃の刃物であって、前記切刃部は、前記第1の刃面に形成された第1の切刃部と前記第2の刃面に形成された第2の切刃部とから成り、前記皮膜は、前記第1および第2の切刃部のうちの少なくとも一方を被覆するように形成され、前記皮膜は、セラミック粉末から成形した成形体、セラミックス粉末と金属あるいはセラミックス粉末と金属の化合物を混合した粉末から成形した成形体、前記成形体を加熱処理した後の成形体、およびSiの固体のうちの1つを電極として、加工油中で前記電極と前記切刃部との間にパルス放電を行うことにより、溶融した電極材料または前記電極材料の反応生成物から形成され、前記皮膜と前記台金との境界には、5μm〜30μmの深さを有する傾斜合金層が形成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る包丁の概略構成を示す図である。
【図2】図1におけるII―II断面を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る包丁の概略構成を示す断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る包丁の第1の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態の包丁の第2の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態の包丁の第3の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図7】第2の実施形態の包丁の第4の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図8】第2の実施形態の包丁の第5の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図9】包丁に被切断物の貼り付きを防止するための凹部を設けた状態を示す図である。
【図10】包丁の長手方向における皮膜の形状の変更例を示す図であり、図10(a)は、正弦波形を示し、図10(b)は、矩形状波形を示している。
【図11】電極材料が放電エネルギーにより反応した物質等からなる皮膜を切刃部に形成するときの状態を示す模式図である。
【図12】図11における電極と被加工物(台金)の間の電圧と電流との関係を示す図であり、図12(a)は、電圧と放電時間との関係を示し、図12(b)は、電流と放電時間との関係を示す。
【図13】ピーク電流ie、パルス幅te、無負荷電圧uiを変えて皮膜を生成したときの皮膜の粗さRaを示す図である。
【図14】本願発明に係る包丁と従来の包丁との切れ味とその持続性を比較したCATRAカッティングテストの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る包丁1の概略構成を示す図であり、図2は、図1におけるII―II断面を示す断面図である。
【0013】
包丁1は、柄3と、台金(たとえば、フェライト系ステンレス鋼製)5に切刃部13を設けた本体部9とによって構成されている。本実施形態では、切刃部13は、包丁1の刃裏15側にのみ設けられている。そして、切刃部13の先端には刃先(刃線)11が設けられている。また、本体部9の刃先11と反対側には峰部12が設けられている。さらに、刃先11を含む切刃部13の少なくとも一部には、皮膜7が包丁1の長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。
【0014】
なお、皮膜7は、刃裏15の切刃部13以外の部位(たとえば、台金5の刃裏15の全面)に形成してもよい。すなわち、包丁1においては、少なくとも刃裏15の切刃部13に皮膜7が形成されていればよい。
【0015】
皮膜7は、金属粉末あるいは金属の化合物またはセラミックスの中の1種または複数種を混合した粉末から成形した成形体、もしくは前記成形体を加熱処理した成形体、またはSi(珪素)の固体を電極(図示せず)として、加工液油あるいは気中において前記電極と切刃部13との間にパルス状に放電を発生させ、このとき発生する放電エネルギーにより溶融した電極材料、あるいは当該電極材料の当該放電エネルギーによる反応生成物質が切刃部13に僅かずつ堆積したことにより形成され、台金の材料との混合組織となっている。
【0016】
なお、台金5と皮膜7との境界には、傾斜合金層50が形成されている。この傾斜合金層は5μm〜30μmの深さに形成されている。なお、以降の実施形態においても同じく、台金5と皮膜7との境界には傾斜合金層50が形成されている。
【0017】
放電は、切刃部13と前記電極とをたとえば0.05mm程度離した状態でなされる。また、図1において、たとえば、切刃部13の面積に比べて前記電極の面積が小さい場合には、前記電極を包丁1の長手方向に移動させつつ放電を行なう。
【0018】
前記電極としては、たとえば、cBN(立方窒化硼素)、TiC(チタンカーバイド;炭化チタン)、WC(タングステンカーバイド;炭化タングステン)、SiC(シリコンカーバイド;炭化珪素)、Cr3C2(炭化クロム)、Al2O3(酸化アルミニウム;アルミナ)、ZrO2−Y(安定化酸化ジルコニウム;安定化ジルコニウム)、TiN(チタンナイトライド;窒化チタン)、TiB(ホウ化チタン)等の硬質のセラミックス(金属の化合物)の一種または複数種を含むセラミックス粉末をたとえば圧縮して成形したポーラスな成形体が使用される。または、前記成形体を、たとえば、真空炉で加熱処理することによって製造された成形体が使用される。皮膜7は、前記電極と同じ材料または放電雰囲気で化合した化合物からなる材料で形成される。
【0019】
なお、前記電極が導電性を具備しない場合には、微粉末状の金属と微粉末状のセラミックスとを混合して結合して形成されたものを堆積用電極として使用してもよい。または、表面を通電性の材料でコーティングされた微粉末状のセラミックスを圧縮成形した堆積用電極を使用してもよい。
【0020】
また、前記電極に代えて、SiやTi(チタン)等の炭化物を作りやすい金属粉末を圧縮成形し、必要に応じて、前記圧縮成形した金属粉末を加熱処理して形成された粉圧体で電極を形成してもよい。すなわち、SiやTi等の炭化物を作りやすい微小な金属の粉末を結合して形成されたポーラスな電極を用いてもよい。この場合、前記電極と切刃部13とが灯油等の炭化水素を含む加工用油中に存在している状態で放電を発生させ、このとき発生する放電エネルギーにより反応した物質(たとえば、SiCやTiCからなる物質)が皮膜7として切刃部13の表面に形成される。
【0021】
さらに、前記電極を、圧縮成形する代わりに、泥漿鋳込み、MIM(Metal Injection Molding)、スプレー成形(溶射で成形)等によって成形してもよい。
【0022】
また、Siの微小な金属の粉末を結合して形成されたポーラスな電極の代わりに、金属状のSi(内部に空洞を有さないSiの結晶)で形成された電極を用いてもよい。
【0023】
皮膜7の表面は、適度の粗さになっていて微細な鋸状の刃先を形成している。粗さは、皮膜7を形成するときに調整する。皮膜7の形成後に皮膜7のついていない刃表または刃裏を研削して(たとえば、刃裏側の面17)刃先の粗さを調整し、また刃先をエッジ状にしてもよい。なお、さらなる切れ味の向上のため、切断対象である被切断物の種類(たとえば、魚であるか肉であるか野菜であるか)に応じて皮膜7の表面の粗さを調整してもよい。
【0024】
ここで、皮膜7を形成するときにその表面の粗さを調整する方法について説明する。
【0025】
図11は、電極材料が放電エネルギーにより反応した物質等からなる皮膜を切刃部に形成するときの状態を示す模式図である。
【0026】
図12は、図11における電極と被加工物(台金5)の間の電圧と電流との関係を示す図であり、図12(a)の縦軸は電圧(電源装置で電極に印加する電圧)を示し、図12(b)の縦軸は電流(電極と被加工物との間に流れる電流を示し、図12(a)、12(b)の横軸は時間を示す。
【0027】
皮膜7の表面の粗さは、電極から降り注ぐ単位微粉末あたりのエネルギーにより左右され、このエネルギーが大きいほど、皮膜7の表面は粗くなる。
【0028】
より詳しく説明すると、単発放電(電極からの1回に放電)あたりのエネルギーは、図12(a)、12(b)の放電電圧ueとピーク電流ieとパルス幅teとの積に比例する。ここで、放電を発生させる電源装置の性能上、放電電圧ueは電流にほとんど依存しないので一定と考えてもよい。
【0029】
電極から降り注ぐ微粉末の量は、放電開始のエネルギー(無負荷電圧ui)に依存し、他の影響は少ない。電極から降り注ぐ微粉末の量は、無負荷電圧uiの約0.7乗に比例する。
【0030】
よって、単位微粉末あたりのエネルギーは、ピーク電流ieとパルス幅teとの積を、無負荷電圧uiの約0.7乗で除したものに比例する。
【0031】
したがって、ピーク電流ie、パルス幅teを大きくし、無負荷電圧uiを小さくすれば、電極から降り注ぐ単位微粉末あたりのエネルギーが大きくなり、粗いコーティングを得る(皮膜7の表面の粗さを粗くする)ことができる。一方、ピーク電流ie、パルス幅teを小さくし、無負荷電圧uiを大きくすれば、電極から降り注ぐ単位微粉末あたりのエネルギーが小さくなり、細かいコーティングを得る(皮膜7の表面の粗さを細かくする)ことができる。
【0032】
図13は、ピーク電流ie、パルス幅te、無負荷電圧uiを変えて皮膜7を生成したときの皮膜7の粗さRaを示す図である。
【0033】
図13から、ピーク電流ieとパルス幅teとの積を、無負荷電圧uiの0.7乗で除した値が大きいほど、皮膜7の表面の粗さが粗くなっていることがわかる。
【0034】
このように、包丁1は、台金5がフェライト系ステンレス鋼で構成されており、切刃部13に硬度の高い皮膜(ほとんど磨耗しない皮膜)7が形成されているので、良好な切れ味を得ることができる。また、台金5が靭性を備えているので、包丁全体の靭性が高くなっており、ぶつけた場合や落下した場合においても割れが発生しにくくなっている。また、皮膜7の台金5への密着度が高いので、長期間の使用によって皮膜7が剥がれることがなく、良好な切れ味を長く維持させることができる。
【0035】
また、皮膜7の表面を適度の粗さにすることも容易であり、刃先11を細かい凹凸を備えた鋸刃状に形成することができるので、切れ味が良くなると共に、切ったものが包丁1に貼りつくことを抑制することができる。また、皮膜7のついていない刃裏または刃表を研ぎなおして、皮膜7の表面の粗さに相当する凹凸を備えた鋸刃状の切れ味の良い刃先を再生することもできる。
【0036】
さらに、台金5に皮膜7を設けた構成であるので、構成が簡素になっており、面倒な焼き入れ工程を無くすことができ歩留まりを向上させることができ、製造が容易になっている。
【0037】
また、包丁1は、皮膜7が刃裏15にのみ形成されているので、研ぎなおしをする際、切刃部13の斜めになっている刃表側の面(皮膜が形成されていない面;フェライト系ステンレス鋼の面)17のみを研削することで、皮膜7の表面の粗さに相当する凹凸を備えた鋸刃状の切れ味の良い刃先を再生すること(切れ味を良好な状態に戻すこと)ができる。
【0038】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る包丁1aの概略構成を示す断面図である。
【0039】
第2の実施形態に係る包丁1aは、両刃になっている点、両刃の両面(第1の刃面19及び第2の刃面21)に皮膜7が形成されている点が、第1の実施形態に係る包丁1とは異なる。包丁1aの第1及び第2の刃面19,21には、それぞれ、包丁1aの長手方向と直交する台金5の断面の中心線Lに対して対称なテーパ形状の切刃部24及び23が設けられている。皮膜7は、切刃部24を含む第1の刃面19及び切刃部23を含む第2の刃面21に、包丁1aの長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。その他の構成は、包丁1と同様なので、包丁1とほぼ同様の効果を奏する。
【0040】
このように、両刃の包丁1aにおいて、第1及び第2の刃面19,21の両面に皮膜7を形成すれば、磨耗し難いので良好な切れ味を一層長期間にわたって維持することができる。さらに、万一、切先が欠けたりして研ぎなおしをする際には、片面の皮膜を犠牲にして皮膜を除去すれば第1又は第2の刃面19,21にのみ皮膜7を形成した場合と同様の効果を奏する。
【0041】
図4は、包丁1aの第1の変形例である包丁1bの概略構成を示す断面図である。包丁1bの第1及び第2の刃面19,21には、それぞれ、包丁1bの長手方向と直交する台金5の断面の中心線Lに対して対称なテーパ形状の切刃部24及び23が設けられている。皮膜7は、切刃部24を含む第1の刃面19にのみ、包丁1bの長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。なお、図示はしないが、第2の刃面21にのみ、切刃部23を含むように薄く帯状皮膜7を設けてもよい。すなわち、皮膜7が第1及び第2の刃面19,21のうちの少なくとも一方の刃面に設けられていてもよい。
【0042】
このように、包丁1bにおいて、第1又は第2の刃面19,21にのみ皮膜7を形成すれば、片刃の包丁1で刃裏15にのみ皮膜7を形成した場合と同様に、容易に切れ味を再生することができる。
【0043】
ただし、包丁1bの場合、皮膜7の形成された第1の刃面19の切刃部24の摩擦係数と第2の刃面21の切刃部23との摩擦係数の差から、野菜等の食物を切った場合に、切り口が曲がってしまうことがある。以下に示す第2乃至第5の変形例は、これを解消するために提供される。
【0044】
図5は、包丁1aの第2の変形例である包丁1cの概略構成を示す断面図である。包丁1cの第1及び第2の刃面19,21には、それぞれ、包丁1cの長手方向と直交する台金5の断面の中心線Lに対して対称なテーパ形状の切刃部24及び23が設けられている。皮膜7は、第1の刃面19の切刃部24の先端部にのみ、包丁1cの長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。
【0045】
図6は、包丁1aの第3の変形例である包丁1dの概略構成を示す断面図である。包丁1dにおいては、包丁1dの長手方向と直交する台金5の断面の中心線Lから第1の刃面19側にずらした線L1上に刃先11が設けられており、かつ、線L1と第1の刃面19の切刃部24との成す角度(第1の刃面19側の先端角)θRと、線L1と第2の刃面21の切刃部23との成す角度(第2の刃面21側の先端角)θLとが異なるように構成されている。この場合、θR<θLである。包丁1dでは、皮膜7は、第1の刃面19の切刃部24にのみ、包丁1dの長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。なお、図示はしないが、線L1は、台金5の中心線Lから第2の刃面21側にずらした位置に設けてもよい。その場合には、θR>θLとなる。
【0046】
図7は、包丁1aの第4の変形例である包丁1eの概略構成を示す断面図である。包丁1eでは、包丁1eの長手方向と直交する台金5の断面の中心線Lから第1の刃面19側にずれた線L1上に刃先11が設けられており、かつ、線L1と第1の刃面19の切刃部24との成す角度(第1の刃面19側の先端角)θRと、線L1と第2の刃面21の切刃部23との成す角度(第2の刃面21側の先端角)θLが同じになるように構成されている。つまり、θR=θLである。包丁1eでは、皮膜7は、第1の刃面19の切刃部24の先端部にのみ、包丁1eの長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。なお、図示はしないが、線L1は、台金5の中心線Lから第2の刃面21側にずらした位置に設けてもよい。
【0047】
図8は、包丁1aの台5の変形例である包丁1fの概略構成を示す断面図である。包丁1fにおいては、第1の刃面19に2段テーパ形状の切刃部23及び33、第2の刃面21に2段テーパ形状の切刃部24及び34がそれぞれ形成されている。そして、包丁1fでは、皮膜7は、第1の刃面19の切刃部34にのみ、包丁1fの長手方向に沿って薄く帯状に形成されている。なお、図示はしないが、皮膜7は、第2の刃面21の切刃部33にのみ設けてもよい。
【0048】
また、図9は、図4に示した包丁1bに被切断物Fの貼り付きを防止するための凹部25を設けた状態を示す図である。これに限らず、上記のその他の実施形態に係る包丁において、第1の刃面19、第2の刃面21、刃裏15のうちの少なくとも一方の側(台金5)に、被切断物Fの貼り付きを防止するための凹部25を設けてもよい。この場合、包丁を研ぎなおしても、切れ味が落ちないので研ぎ直し回数は極めて少なく、凹部25まで研磨されることはないので、張り付きを防止する効果は保持される。
【0049】
さらに、図10(a)、10(b)は、包丁の長手方向における皮膜7の形状の変更例を示す図である。このように、上記の各実施形態に係る包丁において、皮膜7の峰部12側の端部の形状を、包丁の長手方向に対して凹凸を繰り返しように形成してもよい。
【0050】
より具体的には、皮膜7の峰部12側の端部が、たとえば、図10(a)に示すように、正弦波状に形成されていてもよいし、また、図10(a)に示すように矩形な波形に形成されていてもよい。
【0051】
図10(a)、10(b)に示す形態の包丁によれば、包丁の長手方向における皮膜7の峰部12側の端部が凹凸を繰り返しているので、被切断物の貼り付きを防止することができると共に、模様が日本刀の刃文のように見え、切れ味が良いという印象を包丁の使用者に与えることができる。
【0052】
最後に、本願発明に係る包丁と従来の包丁との切れ味とその持続性を比較したCATRAカッティングテストの結果を図14に示す。CATRAカッティングテストとは、所定のテスト用紙の上に刃先を当てがい、一定の荷重をかけ一定の距離を往復させて、切り込みの深さを各回毎に調べるテストのことである。今回、ISO8442.5に基づき、テスト用紙として5%silica紙、荷重50N、切る速度50mm/s、往復幅40mm、往復回数60回でテストを行った。使用した包丁は、セラミック製の両刃包丁(比較例1)、ステンレス鋼製の両刃包丁(比較例2)、粉末ハイス鋼製の両刃包丁(比較例3)、本発明の1実施例に係る両刃包丁(実施例1)の4本である。
【0053】
実施例1に係る包丁は、図5に示したような、第1の刃面19の切刃部24の先端部に皮膜7を形成したものである。皮膜7は、フェライト系ステンレス鋼製の台金5に、セラミック粉末の成形体を電極として、第1の実施形態において説明した方法により、当該電極と切刃部24の先端部との間にパルス状の放電を発生させ、この放電エネルギーにより、電極材料であるセラミック粉末を切刃部24の先端部(刃先11からおよそ3mmの高さの帯領域)に薄く堆積させることで形成した。
【0054】
図14において、縦軸は、1往復あたりの切れ込みの深さ(mm)を表し、横軸は、累積された切れ込みの深さ(mm)を表している。つまり、縦軸の数値は、1回の使用における切れ味の指標となり、この数値が大きいほど、1回の使用における切れ味が良いことになる。また、横軸の数値は、切れ味の永続性の指標となり、この数値が大きいほど、切れ味の永続性が良いことになる。このことから、左端近傍の値が大きく、勾配がよりゆるやかな右下がりの曲線を示す包丁ほど使用者にとってより良い包丁ということになる。このような観点からすると、実施例1に係る包丁の示す曲線は、その他3本の包丁の示す曲線と比較して、上記の条件を満たしていることがわかる。なお、比較例1の包丁(セラミック製の包丁)は、実施例1の包丁の示す曲線と似た形状を示してはいるが、実験初期における立下りの落差が実施例1の包丁と比較して大きく、ある程度の使用回数までの永続性は実施例1の包丁が切れ味及びその永続性ともに良好であることがわかる。
【0055】
なお、上記の各実施形態では、食物、食品等を切断するための包丁を例に掲げて説明したが、食物、食品の他に、糸、布、革、木、竹、草、ゴム、樹脂等を切断するためのナイフや、木、竹、草等を切断するための鎌や、木、竹等を切断するためのノコギリや、木を削るためのカンナ(鉋)、ノミ(鑿)等のように、はさみ(せん断力で物を切る刃物)を除く刃物(切る対象である被切物(被切断物)を刃先で押圧しまた被切断物に対して刃先を相対的に移動して前記被切断物を切断する刃物)にも、上記の各実施形態を適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 包丁
3 柄
5 台金
7 皮膜
9 本体部
11 刃先
13,23,24,33,34 切刃部
15 刃裏
17 刃裏の表側の面
19 第1の刃面
21 第2の刃面
25 凹部
50 傾斜合金層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台金に切刃部を備え、第1および第2の刃面を有する両刃の刃物であって、
前記切刃部は、前記第1の刃面に形成された第1の切刃部と前記第2の刃面に形成された第2の切刃部とから成り、
前記皮膜は、前記1および第2の切刃部のうちの一方の刃先を含む一部に形成され、
前記皮膜は、セラミック粉末から成形した成形体、セラミックス粉末と金属あるいはセラミックス粉末と金属の化合物を混合した粉末から成形した成形体、前記成形体を加熱処理した後の成形体、およびSiの固体のうちの1つを電極として、加工油中で前記電極と前記切刃部との間にパルス放電を行うことにより、溶融した電極材料または前記電極材料の反応生成物から形成され、
前記皮膜と前記台金との境界には、5μm〜30μmの深さを有する傾斜合金層が形成されていることを特徴とする刃物。
【請求項2】
請求項1に記載の刃物であって、
前記刃物は、第1および第2の刃面を有する両刃の刃物であり、
前記切刃部は、前記第1の刃面に形成された第1の切刃部と前記第2の刃面に形成された第2の切刃部とから成り、
前記第1および第2の切刃部は、それぞれ、前記刃先に向かって2段テーパ形状に形成され、
前記皮膜は、前記第1および第2の切刃部のうちの一方の前記刃先の側のテーパ部を被覆するように形成されていることを特徴とする刃物。
【請求項3】
台金に切刃部を備え、第1および第2の刃面を有する両刃の刃物であって、
前記切刃部は、前記第1の刃面に形成された第1の切刃部と前記第2の刃面に形成された第2の切刃部とから成り、
前記皮膜は、前記第1および第2の切刃部のうちの少なくとも一方を被覆するように形成され、
前記皮膜は、セラミック粉末から成形した成形体、セラミックス粉末と金属あるいはセラミックス粉末と金属の化合物を混合した粉末から成形した成形体、前記成形体を加熱処理した後の成形体、およびSiの固体のうちの1つを電極として、加工油中で前記電極と前記切刃部との間にパルス放電を行うことにより、溶融した電極材料または前記電極材料の反応生成物から形成され、
前記皮膜と前記台金との境界には、5μm〜30μmの深さを有する傾斜合金層が形成されていることを特徴とする刃物。
【請求項4】
請求項3に記載の刃物であって、
前記切刃部の刃先は、前記刃物の長手方向と直交する方向の前記台金の断面の中心線から、前記第1及び第2の刃面のうちの一方の側にずれた線上に設けられ、
前記第1の切刃部の先端角が前記第2の切刃部の先端角とは異なるように形成されていることを特徴とする刃物。
【請求項5】
請求項3に記載の刃物であって、
前記切刃部の刃先は、前記刃物の長手方向と直交する方向の前記台金の断面の中心線から、前記第1および第2の刃面のうちの一方の側にずれた線上に設けられ、
前記第1の切刃部の先端角が前記第2の切刃部の先端角と同じになるように形成されていることを特徴とする刃物。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の刃物であって、
前記成形体は、Ti,Si,cBN,TiC,WC,SiC,Cr3C2,Al2O3,ZrO2−Y,TiN,およびTiBのうちの少なくとも1つの材料から成ることを特徴とする刃物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の刃物であって、
前記台金の前記切刃部以外の少なくとも一部に、被切断物の貼り付きを防止するための凹部が設けられていることを特徴とする刃物。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の刃物であって、
前記皮膜の前記刃先と反対側の端部は、凹凸の周期的な形状を有することを特徴とする刃物。
【請求項1】
台金に切刃部を備え、第1および第2の刃面を有する両刃の刃物であって、
前記切刃部は、前記第1の刃面に形成された第1の切刃部と前記第2の刃面に形成された第2の切刃部とから成り、
前記皮膜は、前記1および第2の切刃部のうちの一方の刃先を含む一部に形成され、
前記皮膜は、セラミック粉末から成形した成形体、セラミックス粉末と金属あるいはセラミックス粉末と金属の化合物を混合した粉末から成形した成形体、前記成形体を加熱処理した後の成形体、およびSiの固体のうちの1つを電極として、加工油中で前記電極と前記切刃部との間にパルス放電を行うことにより、溶融した電極材料または前記電極材料の反応生成物から形成され、
前記皮膜と前記台金との境界には、5μm〜30μmの深さを有する傾斜合金層が形成されていることを特徴とする刃物。
【請求項2】
請求項1に記載の刃物であって、
前記刃物は、第1および第2の刃面を有する両刃の刃物であり、
前記切刃部は、前記第1の刃面に形成された第1の切刃部と前記第2の刃面に形成された第2の切刃部とから成り、
前記第1および第2の切刃部は、それぞれ、前記刃先に向かって2段テーパ形状に形成され、
前記皮膜は、前記第1および第2の切刃部のうちの一方の前記刃先の側のテーパ部を被覆するように形成されていることを特徴とする刃物。
【請求項3】
台金に切刃部を備え、第1および第2の刃面を有する両刃の刃物であって、
前記切刃部は、前記第1の刃面に形成された第1の切刃部と前記第2の刃面に形成された第2の切刃部とから成り、
前記皮膜は、前記第1および第2の切刃部のうちの少なくとも一方を被覆するように形成され、
前記皮膜は、セラミック粉末から成形した成形体、セラミックス粉末と金属あるいはセラミックス粉末と金属の化合物を混合した粉末から成形した成形体、前記成形体を加熱処理した後の成形体、およびSiの固体のうちの1つを電極として、加工油中で前記電極と前記切刃部との間にパルス放電を行うことにより、溶融した電極材料または前記電極材料の反応生成物から形成され、
前記皮膜と前記台金との境界には、5μm〜30μmの深さを有する傾斜合金層が形成されていることを特徴とする刃物。
【請求項4】
請求項3に記載の刃物であって、
前記切刃部の刃先は、前記刃物の長手方向と直交する方向の前記台金の断面の中心線から、前記第1及び第2の刃面のうちの一方の側にずれた線上に設けられ、
前記第1の切刃部の先端角が前記第2の切刃部の先端角とは異なるように形成されていることを特徴とする刃物。
【請求項5】
請求項3に記載の刃物であって、
前記切刃部の刃先は、前記刃物の長手方向と直交する方向の前記台金の断面の中心線から、前記第1および第2の刃面のうちの一方の側にずれた線上に設けられ、
前記第1の切刃部の先端角が前記第2の切刃部の先端角と同じになるように形成されていることを特徴とする刃物。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の刃物であって、
前記成形体は、Ti,Si,cBN,TiC,WC,SiC,Cr3C2,Al2O3,ZrO2−Y,TiN,およびTiBのうちの少なくとも1つの材料から成ることを特徴とする刃物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の刃物であって、
前記台金の前記切刃部以外の少なくとも一部に、被切断物の貼り付きを防止するための凹部が設けられていることを特徴とする刃物。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の刃物であって、
前記皮膜の前記刃先と反対側の端部は、凹凸の周期的な形状を有することを特徴とする刃物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−120856(P2012−120856A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17026(P2012−17026)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【分割の表示】特願2009−537426(P2009−537426)の分割
【原出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(397070439)財団法人高知県産業振興センター (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【分割の表示】特願2009−537426(P2009−537426)の分割
【原出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(397070439)財団法人高知県産業振興センター (47)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]