説明

分光器、および回折格子切換え装置

【課題】波長分解能とともに空間分解能の高い分光器を提供すること。
【解決手段】入射スリット112と、入射スリット112を通った光を平行光とするコリメータ鏡114と、コリメータ鏡114からの平行光を受けて、波長に応じて異なる角度へ光を出力する回折格子118と、回折格子118からの出力光を平行光とする第一凹面鏡120と、第一凹面鏡120からの平行光を集光する第二凹面鏡122と、第二凹面鏡122で集光された光が結像される受光面124aを有する受光手段124とを備え、受光手段124の受光面124a上に入射スリット112の分散光像を結像させることでスペクトル測定を行うことを特徴とする分光器110。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリクロメータ方式の分光器、特にその空間分解能の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に従来のポリクロメータ型の分光器の概略構成図を示す。図1の分光器10は、入射スリット12と、入射スリット12を通過した光を平行光とするコリメータ鏡(球面鏡14)と、その平行光を受けて波長に応じた角度へ光を出力する回折格子18と、回折格子18からの出力光を集光するカメラ鏡20と、カメラ鏡20で集光された光を受光する二次元受光面22aを有する二次元検出器22と、を備える。
入射スリット12を通過した光は、球面鏡14により平行光とされ、該平行光は平面鏡16により反射されて回折格子18に向う。回折格子18へ入射した平行光は、波長に応じた角度で出射し、この出射光はカメラ鏡20により二次元検出器22の受光面22aに集光される。受光面22aに結像した波長分散された入射スリット像を二次元検出器22にて検出することで入射スリット12へ入射した光のスペクトル測定を行う。つまり、受光面22a上で入射スリット像のスリット幅方向(スリット長さ方向と直角方向)における位置が、光の波長に応じて変わるため、入射スリット像の結像位置を測定することにより入射光のスペクトルを測定することができる。
【0003】
しかしながら、カメラ鏡20として球面鏡を用いた場合、非点収差(スリット長さ方向の焦点(縦焦点)の位置と横方向スリット幅方向の焦点(横焦点)の位置との差)のため、受光面の中央部での結像性と周辺部での結像性とが異なるという問題点があった。つまり、受光面の中央部へ結像するスリット像に比較して、受光面の周辺部へ結像するスリット像(中央部へ結像する光の波長よりも長波長側および短波長側にはずれた波長の光の像)がスリット長さ方向へ広がり、受光面の周辺部では低い空間分解能(スリット長さ方向の分解能)しか得られなかった。この問題点を改良するため、特許文献1ではカメラ鏡20としてトロイダル鏡を使用し、非点収差の補正を行っている。
【特許文献1】特開2003−42846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成でも受光面周辺部でのスリット像の広がりを抑えるのに十分でなく、満足のいく空間分解能を有しているとは言えなかった。
また、広い波長域でスペクトル測定を行いたい場合、使用する回折格子を切換えて測定を行う必要がある。このため、複数の回折格子を備えた回折格子切換え装置を分光器に取り付け、測定ごとに使用する回折格子を切換えることが行われている。しかし、従来の回折格子切換え装置では、回折格子を取り換えたときに、回折格子の位置や姿勢(素子面の波長方向の角度等)などがずれてしまい、脱着再現性に乏しく、脱着時の回折格子の調整が煩雑になるという問題点があった。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の第1の目的は、波長分解能とともに空間分解能の高い分光器を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、測定に使用する回折格子の取り換えを容易に行うことのできる回折格子切換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明にかかる分光器は、入射スリットと、前記入射スリットを通った光を平行光とするコリメータ鏡と、前記コリメータ鏡からの平行光を受けて、波長に応じて異なる角度へ光を出力する回折格子と、前記回折格子からの出力光を受ける第一凹面鏡と、前記第一凹面鏡からの光を集光する第二凹面鏡と、前記第二凹面鏡で集光された光が結像される受光面を有する受光手段と、を備え、前記受光手段の受光面上に前記入射スリットの分散光像を結像させることでスペクトル測定を行うことを特徴とする。
上記の分光器において、前記コリメータ鏡をトロイダル鏡にて構成することが好適である。
上記の分光器において、前記第一凹面鏡、および第二凹面鏡を球面鏡にて構成したことが好適である。
【0006】
本発明にかかる回折格子切換え装置は、分光器に取り付けられ、測定に使用する回折格子の切換えを行う回折格子切換え装置であって、回折格子を保持する回折格子ホルダを、複数個載置するターンテーブルと、前記ターンテーブルの略中央を中心軸として、該ターンテーブルを水平方向に回転駆動し、使用する回折格子の切換えを行う駆動手段と、前記ターンテーブル上に設けられ、各回折格子ホルダをその素子面が前記中心軸を中心とした円の半径方向外側を向いた状態で、前記ターンテーブル上での前記回折格子ホルダの載置位置を固定する位置固定手段と、を備え、前記ターンテーブルに、あらかじめ調整した前記複数の回折格子ホルダを個別に着脱可能であることを特徴とする。
【0007】
上記の回折格子切換え装置において、前記各回折格子ホルダの下部は略直方体形状であり、前記位置固定手段は、前記各回折格子ホルダ下部側面の前記半径方向に略直角な面の両側を挟み込むように設置された一対の位置固定用押し当て部材として構成されることが好適である。該一対の位置固定用押し当て部材の一方を前記回折格子ホルダ下部側面の半径方向外側に向いた面、他方を内側に向いた面に押し当てることで、前記各回折格子ホルダのターンテーブル上での位置を固定する。
【0008】
上記の回折格子切換え装置において、前記ターンテーブル上に設けられ、前記各回折格子ホルダに保持された回折格子の波長方向の角度を微調整するための姿勢調整手段を、さらに備えることが好適である。
上記の回折格子切換え装置において、前記姿勢調整手段は、前記各回折格子ホルダの下部側面の前記半径方向に略直角な面以外の二面を両側から挟み込むように設置された一対の姿勢調整用押し当て部材として構成されることが好適である。該一対の姿勢調整用押し当て部材は、一方の押し当て部材の前記各回折格子ホルダ下部側面への当接点の前記中心軸からの距離と、他方の押し当て部材の記各回折格子ホルダ下部側面への当接点の前記中心軸からの距離とが互いに異なるように配置され、前記姿勢調整用押し当て部材の押し当て量を変えることで回折格子ホルダに保持された回折格子の波長方向の角度が調整可能である。
【0009】
上記の回折格子切換え装置において、前記駆動手段はステッピングモータで構成され、前記ステッピングモータは、前記ターンテーブルの下面の略中央部に設けられた回転軸と直結されていることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる分光器によれば、回折格子の後段に第一球面鏡と第二球面鏡とを設置し、第一球面鏡により回折格子からの出力光を擬似平行光としたのち、第二球面鏡にて集光して受光面にスリット像を結像させる構成としているため、中心波長から外れた波長でのスリット分散像の広がりを抑えることができ、波長分解能、空間分解能に優れたポリクロメータ方式の分光器とすることができる。
【0011】
また、本発明にかかる回折格子切換え装置によれば、回折格子ホルダを載置するターンテーブル上に各回折格子ホルダを固定する位置固定手段を設けたため、回折格子を装置から取り外した状態でホルダに取り付けた回折格子の調整を行うことができ、回折格子の取り換え、調整が容易となる。さらにターンテーブル上に載置した各回折格子ホルダの姿勢調整手段を設けることで、回折格子の脱着再現性がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を参照して本発明にかかる好適な実施形態について説明する。
図2に本発明の実施形態にかかる分光器の概略構成を示す。図2の分光器110は、入射スリット112、入射スリット112を通った光を平行光とするコリメータ鏡114と、平行光を受けて、波長に応じて異なる角度へ光を出力する平面回折格子118と、平面回折格子118からの出力光を擬似平行光とする第一凹面鏡120と、第一凹面鏡120からの擬似平行光を集光する第二凹面鏡122と、第二凹面鏡122で集光された光を検出する二次元受光面124aを有する受光手段124と、を備える。なお、受光手段124としてはCCD検出器等を用いればよい。また、本実施形態では、第一凹面鏡120、第二凹面鏡122として球面鏡を用いているが、これに限定されず、第一凹面鏡120、第二凹面鏡122を非球面鏡(例えば、トロイダル鏡)によって構成してもよい。
【0013】
入射スリット112から入射した光は、コリメータ鏡114により平行光とされ、平面鏡116にて折り返されたのち、平面回折格子118へと向う。平面回折格子118では波長に応じて異なる角度へ光を出力する。平面回折格子118からの出力光は第一凹面鏡120により擬似平行光とされ、第一凹面鏡からの擬似平行光は第二凹面鏡122により集光されて、受光手段124の受光面124a上に結像される。
【0014】
平面回折格子118から出力される光は、個々の単色光自体は平行光となっているが、波長の違いにより平面回折格子118から出力される光の角度が異なるため、測定する波長域全体の光をみると平行光とはならない。つまり、図3に示すように、中心波長(受光面の中央部に結像させる波長の光)より長波長また短波長の光は中心波長の光に対して±αの角度分異なる方向へ出力される。そこで、本実施形態の分光器においては平面回折格子118からの出力光を一つの発散光と考えて第一凹面鏡120で一度擬似平行光に変換した後、この擬似平行光を第二凹面鏡122により集光し、受光面に結像されるような構成とした。この結果、非点収差が改善され、中心波長からはずれた波長の光の像の広がりを抑えることができた。
なお、コマ収差の影響を少なくするため、第一凹面鏡120、第二凹面鏡122の軸はずし角β、γ(図2参照)はできるだけ小さい方が望ましい。
【0015】
また、受光手段124は、その受光面124aの法線が第二凹面鏡122の中心と受光面124aの中心とを結ぶ直線に対して、0でない角度δを持つように設置される。ここで、上記の角度はスリット長さ方向(図2中、紙面に垂直な方向)を回転軸としたときの角度(波長方向の角度)である。つまり、波長の違い(回折格子からの出光する角度の違い)に応じて結像位置が異なるため、それを考慮して受光面124aに傾きδを与えている。
【0016】
さらに、本実施形態の分光器では入射スリット112からの光を平行光とするためのコリメータ鏡114として、トロイダル鏡を用いている。コリメータ鏡としてトロイダル鏡を使用することによって、非点収差を補正し最適な平行光束を入射させることができる。
【0017】
以上のように、本発明の実施形態にかかる分光器では回折格子118の後段に、二つの凹面鏡(第一凹面鏡120、第二凹面鏡122)を設置し、回折格子118からの出力光を受光面124aに結像させているため、受光面の周辺部での入射スリット像の結像性を向上させることができ、波長分解能、空間分解能ともに良好な性能を達成することができた。
【0018】
さらに、コリメータ鏡、第一、第二凹面鏡としてトロイダル鏡を用いることで、さらに良好な性能を達成することができる。また、上記の第一凹面鏡120、第二凹面鏡として安価な球面鏡を用いた場合、コストを低く抑えつつ、十分な性能を有する分光器を提供することができる。
【0019】
分光器の性能試験
図1に示した従来の分光器と、図2に示した本発明の実施形態にかかる分光器との性能を比較する試験を行った。入射スリット(スリット幅:250μm)に光ファイバ(クラッド径:250μm、コア径:200μm)を10本隣接して並べ、これらの光ファイバを通して光源からの光を分光器に導光して、分散光像の測定を行った(ただし、光ファイバのうちの一本には光を通していない)。
図4、図5に従来の分光器で結像、図6、図7に本発明の実施形態にかかる分光器での結像を示す。図4、図6は離散スペクトルを有する光源として、低圧水銀ランプを用いたもの、図5、図7は連続スペクトルを有する光源として、ハロゲンランプを用いたものである。
【0020】
図4、5から分かるように、従来の分光器では中心波長からはずれた部分では空間分解能が低下し、個々の光ファイバからの像が広がり、互いに重なりあってしまっていた。一方、本発明の実施形態にかかる分光器では、図6、図7から分かるように、中心波長から外れた部分でも個々の光ファイバからの像が広がることなく、個々の光ファイバからの像が明瞭に観察できた。
【0021】
また、図8に従来の分光器にて測定したスペクトル(図4に対応、ただし、入射スリット幅:10μm)、図9に本発明の実施形態にかかる分光器によりスペクトル(図6に対応、ただし、スリット幅10μm)を示す。図8と図9から、本発明の実施形態にかかる分光器は、十分な波長分解能も有していることが分かる。これらの結果から、本発明の実施形態にかかる分光器では、波長分解能を犠牲にすることなく、従来のものと比べて優れた空間分解能を有することが確認された。
【0022】
回折格子切換え装置
次に図10〜13を参照して本発明の実施形態の回折格子切換え装置について説明する。図10は、回折格子切換え装置を分光器110に取り付けたときの概略構成図、図11は回折格子切り替え装置の斜視図、図12は上面図、図13は装置の一部の側面図である。
図10に示したように、回折格子切換え装置30は、分光器110に取り付けられ、測定に使用する回折格子(38a〜38c)を切換えるためのものである。測定に使用する回折格子を切換えることで、広い波長領域に渡ったスペクトル測定等が可能となる。ここでは分光器として図2に示した分光器を例として示しているが、本発明の実施形態にかかる回折格子切換え装置が適用可能な分光器はこれに限定されない。
【0023】
本実施形態にかかる回折格子切換え装置30は、複数の回折格子ホルダ32a〜32cが載置されて固定されるターンテーブル34と、ターンテーブル34の略中央を中心軸としてターンテーブル34を水平方向に回転駆動する駆動手段36と、を備えている。各回折格子38a〜38cはそれぞれ、素子面を鉛直にした状態で各回折格子ホルダ32a〜32cに保持されている。
【0024】
本実施形態では、円形のターンテーブル34上に、3つの回折格子ホルダ32a〜32bを、回折格子38a〜38cの素子面が、回転の中心軸を中心とした円の半径方向外側を向くように設置している。
駆動手段36はステッピングモータで構成され、ステッピングモータはターンテーブル34下面の中央に設けられた回転軸(図13の符号40)に直結されている。駆動手段36によりターンテーブル34を回転させることで、測定に使用する回折格子の素子面が測定光を受光できる方向に向くように、回折格子の位置を変更する。
【0025】
本実施形態ではターンテーブル34とステッピングモータ(駆動手段36)とを直結してターンテーブル34を駆動するため、構造が簡単で、かつ十分な精度を達成することができる。また、構造が簡単であるため回折格子ホルダの設置スペースを広くとることができる。さらに、各回折格子ホルダをターンテーブル34に載置した状態で固定するため、各回折格子ホルダを容易に着脱することができる。このため、各回折格子ホルダを切換え装置30からはずした状態で、回折格子ホルダに対する回折格子の位置や姿勢(素子面の波長方向の角度等の調整を行うことができ、作業が容易となる。
【0026】
駆動手段36として用いるステッピングモータは、基本ステップ角が所定の値に設定されている。しかし、回折格子の光軸に対する角度の設定は高い精度が必要とされるため、基本ステップ角以下での回折格子の角度設定ができなければならない。また、回折格子ホルダに対する回折格子の姿勢は、ホルダを切換え装置に取り付ける前に一度調整されているため、装置へのホルダの取り付け自体に高い精度が要求される。そこで、本発明の実施形態にかかる回折格子切換え装置では、次に説明するようなターンテーブル上への回折格子ホルダの取り付け機構を採用した。
【0027】
図12、13に示したように、回折格子ホルダ32の下部は略直方体の台座部分42となっており、台座部分42の底部をターンテーブル34面上に密着させて保持される。ターンテーブル34上には、回折格子ホルダ32の載置位置を固定する位置固定手段と、回折格子ホルダ32の保持された回折格子38の素子面の波長方向の角度を微調整するための姿勢調整手段と、が設けられている。
各回折格子ホルダの載置位置を固定する位置固定手段は、一対の位置固定用押し当て部材(位置決めストッパー44、固定用ツマミネジ46)として構成されている。位置決めストッパー44ターンテーブルの略中央に設けられ、固定用ツマミネジ46ターンテーブル34の周上に設けられている。固定用ツマミネジ46は、ターンテーブル34に載置する回折格子ホルダの個数分(本実施形態では3個)だけ設けられている。位置決めストッパー44と固定用ツマミネジ46とは、回折格子ホルダ32の台座部分42側面の半径方向に略直角な面の両側を挟み込むように設けられており、固定用ツマミネジの先端を台座部分42側面の半径方向外側に向いた面、位置決めストッパー44を台座部分42の内側に向いた面に押し当てることで、回折格子ホルダ32のターンテーブル34上での位置を固定している。
【0028】
図13に示すように、位置決めストッパー44は略円柱形状であり、その側面はターンテーブル34面に対し斜めに加工されており、位置決めストッパー44の側面とターンテーブル34面とにより溝部52が形成されている。回折格子ホルダ32の台座部分42背面(回折格子38の素子面が向いた側と反対側)の下部には上記の溝部52と対応する凸部54が形成されている。凸部54は、台座部分42の背面の斜めに加工された部分と、台座部分42の底面とて形成されている。回折格子ホルダ32は、この凸部54を位置決めストッパー44の溝部52に嵌め合わせた形で、固定用ツマミネジ46によって位置決めストッパー44に押し付けられて固定される。このような構成することで、回折格子ホルダ32の台座部分42をテーブル面に密着させることができ、回折格子38の高さ方向の位置決めを精度よく行うことができる。また、固定ツマミネジ46の先端部分(台座部分42に接触する部分)はトガリとなっており、固定した後に位置ズレしにくい。
【0029】
また、回折格子ホルダの波長方向の角度を微調整する姿勢調整手段は、各回折格子ホルダの載置位置に設けられた一対の姿勢調整用押し当て部材(位置決めピン48と、位置決めネジ50)として構成されている。つまり、ターンテーブル42の各回折格子ホルダの取り付け部分に、回折格子ホルダの姿勢調整用押し当て部材として、略円柱状の位置決めピン48と、位置決めネジ50とが設けられている。位置決めピン48、位置決めネジ50は台座部分42の左右側面(半径方向に略直角な面以外の二面)を挟みこむように設置されており、台座部分42の左右側面にそれぞれ当接させて、回折格子ホルダ32に保持された回折格子38の波長方向の角度を調整する。
位置決めピン48はテーブル面上に固定され、位置決めネジ50を調整することにより、半径方向に対する回折格子38の素子面の向き(回転軸を鉛直方向(紙面に垂直な方向)とした角度位置)の微調整を行う。つまり、図14に示すように、位置決めピン48の台座部分42側面への当接位置は位置決めネジ50が台座部分42のもう一方の側面へ当接する位置よりも半径方向外側(ターンテーブルの中心から測った距離が大きい)にあり、位置決めネジ50の台座部分42側面への押し当て量を変えることで回折格子の向きが調整可能である。このため、本実施形態の回折格子切換え装置によれば、各回折格子ホルダを取り換えたときも容易に調整ができ、良好な取り付け再現性が得られる。
【0030】
また、位置決めピン48は、回折格子の素子面とターンテーブル34面との交線上に設置することが好適である。このようにすることで、位置決めネジ50による回折格子の向きの微調整の際に、回折格子の回転の中心軸が回折格子の素子面中心付近を通るようにすることができ、精度よく調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来の分光器の概略光路図
【図2】本発明の実施形態にかかる分光器の概略光路図
【図3】図2の本実施形態にかかる分光器の説明図
【図4】従来の分光器における受光面への分散像(離散スペクトル)
【図5】従来の分光器における受光面への分散像(連続スペクトル)
【図6】本発明の実施形態にかかる分光器における受光面への分散像(離散スペクトル)
【図7】本発明の実施形態にかかる分光器における受光面への分散像(連続スペクトル)
【図8】従来の分光器で取得したスペクトルのグラフ
【図9】本発明の実施形態にかかる分光器で取得したスペクトルのグラフ
【図10】本発明の実施形態にかかる回折格子切換え装置を分光器に取り付けたときの説明図
【図11】本発明の実施形態にかかる回折格子切換え装置の斜視図
【図12】本発明の実施形態にかかる回折格子切換え装置の上面図
【図13】本発明の実施形態にかかる回折格子切換え装置の一部の側面図
【図14】回折格子の姿勢調整の説明図
【符号の説明】
【0032】
110 分光器
112 入射スリット
114 コリメータ鏡
116 平面鏡
118 平面回折格子
120 第一凹面鏡
122 第二凹面鏡
124 受光手段
124a 受光面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射スリットと、
前記入射スリットを通った光を平行光とするコリメータ鏡と、
前記コリメータ鏡からの平行光を受けて、波長に応じて異なる角度へ光を出力する回折格子と、
前記回折格子からの出力光を受ける第一凹面鏡と、
前記第一凹面鏡からの光を集光する第二凹面鏡と、
前記第二凹面鏡で集光された光が結像される受光面を有する受光手段と、を備え、前記受光手段の受光面上に前記入射スリットの分散光像を結像させることでスペクトル測定を行うことを特徴とする分光器。
【請求項2】
請求項1記載の分光器において、
前記コリメータ鏡をトロイダル鏡にて構成したことを特徴とする分光器。
【請求項3】
請求項1記載の分光器において、
前記第一凹面鏡、および第二凹面鏡を球面鏡にて構成したことを特徴とする分光器。
【請求項4】
分光器に取り付けられ、測定に使用する回折格子の切換えを行う回折格子切換え装置であって、
回折格子を保持する回折格子ホルダを、複数個載置するターンテーブルと、
前記ターンテーブルの略中央を中心軸として、該ターンテーブルを水平方向に回転駆動し、使用する回折格子の切換えを行う駆動手段と、
前記ターンテーブル上に設けられ、各回折格子ホルダをその素子面が前記中心軸を中心とした円の半径方向外側を向いた状態で、前記ターンテーブル上での前記回折格子ホルダの載置位置を固定する位置固定手段と、
を備え、
前記ターンテーブルに、あらかじめ調整した前記複数の回折格子ホルダを個別に着脱可能であることを特徴とする回折格子切換え装置。
【請求項5】
請求項4に記載の回折格子切換え装置において、
前記各回折格子ホルダの下部は略直方体形状であり、
前記位置固定手段は、前記各回折格子ホルダ下部側面の前記半径方向に略直角な面の両側を挟み込むように設置された一対の位置固定用押し当て部材として構成され、該一対の位置固定用押し当て部材の一方を前記回折格子ホルダ下部側面の半径方向外側に向いた面、他方を内側に向いた面に押し当てることで、前記各回折格子ホルダのターンテーブル上での位置を固定したことを特徴とする回折格子切換え装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の回折格子切換え装置において、
前記ターンテーブル上に設けられ、前記各回折格子ホルダに保持された回折格子の波長方向の角度を微調整するための姿勢調整手段を、さらに備えたことを特徴とする回折格子切換え装置。
【請求項7】
請求項6に記載の回折格子切換え装置において、
前記姿勢調整手段は、前記各回折格子ホルダの下部側面の前記半径方向に略直角な面以外の二面を両側から挟み込むように設置された一対の姿勢調整用押し当て部材として構成され、該一対の姿勢調整用押し当て部材は、一方の押し当て部材の前記各回折格子ホルダ下部側面への当接点の前記中心軸からの距離と、他方の押し当て部材の記各回折格子ホルダ下部側面への当接点の前記中心軸からの距離とが互いに異なるように配置され、前記姿勢調整用押し当て部材の押し当て量を変えることで回折格子ホルダに保持された回折格子の波長方向の角度が調整可能であることを特徴とする回折格子切換え装置。
【請求項8】
請求項4から7のいずれかに記載の回折格子切換え装置において、
前記駆動手段はステッピングモータで構成され、
前記ステッピングモータは、前記ターンテーブルの下面の略中央部に設けられた回転軸と直結されていることを特徴とする回折格子切換え装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−121087(P2007−121087A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313004(P2005−313004)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(501194123)分光計器株式会社 (6)
【Fターム(参考)】