説明

分岐重合体、並びにその合成方法及び使用方法

多分岐重合体、官能化した分岐重合体、星形に枝分れした重合体、及び樹枝状にグラフトした重合体を含む分岐重合体である。また、分岐重合体の合成方法とタイヤ部品への分岐重合体の使用方法が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2006年10月6日に出願された米国仮特許出願第60/850,043号の利益を得るものであり、該米国仮特許出願は、参照することにより本願に組み込まれる。
【0002】
本発明の一つ又はそれ以上の実施態様は、分岐重合体、その合成方法、及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
空気入りタイヤは、天然重合体及び合成重合体の双方を用いることで製造できる。天然ゴム等の天然重合体は、生強度、粘着性等の有利な特性を持つゴム組成物を提供する。それらの特性は、生タイヤの構築に特に有用である。また、天然ゴムは、有利に、多くの接着剤組成物に使用される。ミクロ構造及び枝分れを含めた、天然ゴムの化学構造は、有利に接着性を提供し、その接着性は、合成重合体では実現されないことが多い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つ又はそれ以上の実施態様は、(a)骨格と、少なくとも二つの分岐点と、該分岐点のそれぞれから伸びる少なくとも二つの枝とを含む重合体であって、前記骨格が該骨格の絡み合い分子量の少なくとも4倍の長さであり、前記枝がそれぞれ該枝の絡み合い長さの少なくとも2倍の長さであり、前記骨格のガラス転移温度が0℃未満であり、前記骨格及び前記枝が互いに混和できる重合体、及び(b)対向した末端を有する骨格と、一方の対向末端に位置する少なくとも一つの分岐点と、該少なくとも一つの分岐点から伸びる少なくとも二つの枝と、他方の対向末端にて充填剤と相互作用する官能基とを含む重合体であって、前記骨格が該骨格の絡み合い長さの少なくとも4倍の長さであり、前記枝がそれぞれ該枝の絡み合い長さの少なくとも2倍の長さであり、前記骨格のガラス転移温度が0℃未満であり、前記骨格及び前記枝が互いに混和できる重合体よりなる群から選択される重合体の加硫物を含むタイヤ部品を提供する。
【0005】
また、本発明の一つ又はそれ以上の実施態様は、重合体を製造する方法であって、(a)モノ-リビング重合体であって、該モノ-リビング重合体の絡み合い長さの少なくとも2倍の長さである重合体を用意する工程と、(b)前記モノ-リビング重合体を分岐剤と反応させる工程であって、前記分岐剤が少なくとも三つの反応部位を含み、前記反応部位の当量がモノ-リビング重合体のモルを超え、それにより、分岐停止剤を形成する工程と、(c)前記分岐停止剤をジ-リビング重合体と反応させる工程であって、前記ジ-リビング重合体が該ジ-リビング重合体の絡み合い長さの少なくとも4倍の長さである工程とを含む方法を提供する。
【0006】
更に、本発明の一つ又はそれ以上の実施態様は、重合体を製造する方法であって、(a)単量体を、官能基を有するアニオン重合開始剤と接触させ、重合媒体を形成し、官能化リビング重合体を合成する工程と、(b)前記官能化リビング重合体の合成を、該官能化リビング重合体が該官能化リビング重合体の絡み合い分子量の少なくとも4倍の長さとなるまで進めさせる工程と、(c)前記工程(b)の後、前記重合媒体に、追加の単量体と、非官能性のアニオン重合開始剤とを加えて、非官能化リビング重合体を合成する工程と、(d)前記非官能化リビング重合体の合成を、該非官能化リビング重合体が該非官能化リビング重合体の絡み合い分子量の少なくとも2倍の長さとなるまで進めさせる工程と、(e)前記工程(d)の後、前記重合媒体に、カップリング剤を加える工程であって、前記カップリング剤が少なくとも三つの反応部位を含む工程とを含む方法を提供する。
【0007】
また、本発明の一つ又はそれ以上の実施態様は、重合体を製造する方法であって、(a)複数の重合体分子を用意する工程であって、前記重合体分子が、少なくとも一つの分岐点を有する枝分れ分子を含み、少なくとも三つの枝が前記少なくとも一つの分岐点から伸び、前記枝が該枝の絡み合い分子量の少なくとも2倍の長さである工程と、(b)重合媒体にフリーラジカル開始剤を加える工程とを含む方法を提供する。
【0008】
更に、本発明の一つ又はそれ以上の実施態様は、重合体を製造する方法であって、(a)単量体を、アニオン重合開始剤と接触させ、重合媒体を形成し、リビング重合体を合成する工程と、(b)前記リビング重合体の合成を、該リビング重合体が該リビング重合体の絡み合い分子量の少なくとも2倍の長さとなるまで進めさせる工程と、(c)前記重合媒体に、グラフト化剤と、連鎖移動剤と、任意に追加の単量体とを加える工程であって、グラフト化剤対アニオン重合開始剤の比が約0.1対1〜約2対1であり、連鎖移動剤対グラフト化剤の比が約0.25対1〜約2対1である工程とを含む方法を提供する。
【0009】
更に、本発明の一つ又はそれ以上の実施態様は、(a)共役ジエン単量体を、(i)ランタニド化合物、(ii)アルキル化剤、(iii)ニッケル含有化合物及び(iv)ハロゲン源の組み合わせ又は反応生成物である触媒系で重合させて、高シスポリジエンを形成させる工程と、(b)前記高シスポリジエンをフリーラジカル源でカップリングする工程とを含む分岐重合体の製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一つ又はそれ以上の実施態様は、分岐重合体に向けられる。他の実施態様は、分岐重合体の製造方法に向けられる。更に他の実施態様は、タイヤ部品の製造への分岐重合体の使用と、その分岐重合体を含有するタイヤ部品とに向けられる。これらの実施態様又は他の実施態様は、分岐重合体を含む重合体ブレンドと、タイヤ部品への該重合体ブレンドの使用とに向けられる。
【0011】
(多分岐重合体)
一つ又はそれ以上の実施態様において、分岐重合体には、複数枝分れした重合体が含まれる。多分岐重合体は、骨格と、少なくとも二つの分岐点と、該少なくとも二つの分岐点から伸びる少なくとも二つの枝とを含む。例えば、一つ又はそれ以上の実施態様の多分岐重合体を、下記式:
(β)n−φ−π−φ−(β)n
で表すことができる。
【0012】
ここで、πは重合体の骨格であり、φはそれぞれ分岐点であり、βはそれぞれ独立して重合体の枝であり、nはそれぞれ独立して2以上の整数である。一つ又はそれ以上の実施態様においては、nが約2〜約6の整数であり、他の実施態様においては約3〜約5の整数で、他の実施態様においては約3〜約4の整数である。
【0013】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、多分岐重合体の重合体骨格が、該骨格の絡み合い分子量の少なくとも2.5倍、他の実施態様においては少なくとも約3倍、他の実施態様においては少なくとも4倍、他の実施態様においては少なくとも5倍、他の実施態様においては少なくとも6倍の長さを特徴とし得る。
【0014】
上記絡み合い分子量とは、希釈されていない重合体の分子間で絡み合いが起こるのに十分な大きさの重合体鎖長に関係し又は対応する分子量を指す。この分子量は、log(粘度)とlog(分子量)との関係を示す図表の傾きが1.0から3.4に変わる場所を決定することで、実験的に導出できる。この変化は、分子間の絡み合いと関係している。一つ又はそれ以上の実施態様において、絡み合い分子量は、約80〜約20の単量体単位、他の実施態様においては約90〜約150の単量体単位に関係する分子量を指す。重合体の絡み合い分子量を決定する追加の実験技術が、ADV.POLYM.SCI.,Vol.16,1974においてW.W.Graessleyによって纏められており、当業者に知られている。
【0015】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、多分岐重合体の重合体骨格が、ゴム状重合体として特徴付けられる。ゴム状重合体には、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満、他の実施態様においては-20℃未満、他の実施態様においては-30℃未満であることを特徴とする重合体が含まれ得る。一つ又はそれ以上の実施態様においては、ゴム状重合体の鎖が、単一のガラス転移温度を示す。特定の実施態様においては、重合体骨格が不飽和である。それらの実施態様又は他の実施態様において、重合体骨格は、弾性加硫物を形成するため、加硫できる。他の実施態様においては、重合体骨格が、飽和し又は実質的に飽和しており、分岐重合体の水素化によってもたらすことができる。
【0016】
一つ又はそれ以上の実施態様において、重合体鎖としては、ジエン由来の一つ又はそれ以上の単量体単位を含む重合体及び共重合体を挙げることができる。一つ又はそれ以上の実施態様において、重合体鎖には、アニオン重合によって調製した重合体が含まれる。該重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(スチレン-co-ブタジエン-co-イソプレン)、ポリ(イソプレン-co-スチレン)及びポリ(ブタジエン-co-イソプレン)が挙げられる。
【0017】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、多分岐重合体の重合体枝が、該枝の絡み合い分子量の少なくとも1倍、他の実施態様においては少なくとも1.5倍、他の実施態様においては少なくとも2倍、他の実施態様においては少なくとも3倍、他の実施態様においては少なくとも4倍の長さを特徴とし得る。
【0018】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、多分岐重合体の枝が、ゴム状重合体として特徴付けられる。ゴム状重合体には、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満、他の実施態様においては-20℃未満、他の実施態様においては-30℃未満であることを特徴とする重合体が含まれ得る。一つ又はそれ以上の実施態様においては、ゴム状重合体の鎖が、単一のガラス転移温度を示す。特定の実施態様においては、重合体の枝が不飽和である。それらの実施態様又は他の実施態様において、重合体枝は、弾性加硫物を形成するため、加硫できる。他の実施態様においては、重合体枝が、飽和し又は実質的に飽和しており、分岐重合体の水素化によってもたらすことができる。
【0019】
一つ又はそれ以上の実施態様において、上記枝としては、ジエン由来の一つ又はそれ以上の単量体単位を含む重合体及び共重合体を挙げることができる。一つ又はそれ以上の実施態様において、上記枝には、アニオン重合によって調製した重合体が含まれる。該重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(スチレン-co-ブタジエン-co-イソプレン)、ポリ(イソプレン-co-スチレン)及びポリ(ブタジエン-co-イソプレン)が挙げられる。
【0020】
一つ又はそれ以上の実施態様において、上記分岐点には、多価原子(例えば、炭素、ケイ素、リン)又は炭化水素基等の多価化学的部分が含まれ得る。一つ又はそれ以上の実施態様において、上記分岐点には、約1〜約50個、他の実施態様においては約2〜約20個、他の実施態様においては約3〜約6個の炭素原子を含む炭素鎖等の短い炭化水素鎖が含まれ得る。
【0021】
(官能化分岐重合体)
一つ又はそれ以上の実施態様において、分岐重合体には、官能化された枝分れ重合体が含まれる。官能化分岐重合体は、骨格と、該骨格の一方の末端に官能基と、該骨格の他方の末端に位置する分岐点と、該分岐点から伸びる少なくとも二つの枝とを含む。
【0022】
例えば、一つ又はそれ以上の実施態様の官能化分岐重合体を、下記式:
(β)n−φ−π−α
で表すことができる。
【0023】
ここで、πは重合体の骨格であり、φは分岐点であり、βはそれぞれ独立して重合体の枝であり、nはそれぞれ独立して2以上の整数であり、αは官能基である。
【0024】
一つ又はそれ以上の実施態様において、官能化分岐重合体の重合体骨格は、多分岐重合体に関して先に説明したものと同様である。
【0025】
一つ又はそれ以上の実施態様において、官能化分岐重合体の重合体枝は、多分岐重合体に関して先に説明したものと同様である。
【0026】
一つ又はそれ以上の実施態様において、官能化分岐重合体の分岐点は、多分岐重合体に関して先に説明したものと同様である。
【0027】
上記官能基には、ゴム若しくはゴム用充填剤と反応し若しくは相互作用するか又は充填剤入りゴム組成物若しくは加硫ゴムに望ましい影響を与える基又は置換基が含まれ得る。ヒステリシスロスを低減し、摩耗を改良し、又は弾性率を増大させることが知られる基が含まれる。一つ又はそれ以上の実施態様において、官能基には、官能基を含む線状重合体から調製されるカーボンブラックが充填された加硫ゴムの50℃でのヒステリシスロスを、官能基を含まない線状重合体から調製される同様なカーボンブラックが充填された加硫ゴムと比べて低減する置換基が含まれる。一つ又はそれ以上の実施態様において、このヒステリシスロスの低下は少なくとも5%、他の実施態様においては少なくとも10%、他の実施態様においては少なくとも15%である。一つ又はそれ以上の実施態様においては、官能基がヘテロ原子を含む。ヘテロ原子を持つ置換基には、一般に、電子が豊富な種又は金属含有種として特徴付けられるものが挙げられる。
【0028】
例示的な基としては、トリアルキルスズ置換基、環状アミン基、又はアリール若しくはアルキルチオアセタールが挙げられる。例示的なトリアルキルスズ置換基は、米国特許第5,268,439号に開示されており、参照することにより本願に組み込まれる。例示的な環状アミン基は、米国特許第6,080,853号、第5,786,448号、第6,025,450号及び第6,046,288号に開示されており、参照することにより本願に組み込まれる。例示的なアリール又はアルキルチオアセタール(例えば、ジチアン類)は、国際公開(WO)第2004/041870号に開示されており、参照することにより本願に組み込まれる。
【0029】
(星形に枝分れしたランダム重合体)
一つ又はそれ以上の実施態様において、分岐重合体には、星型に枝分れしたランダム重合体が含まれる。星形に枝分れしたランダム重合体は、超分岐重合体と称されることがある。一つ又はそれ以上の実施態様において、星形に枝分れしたランダム重合体を単一の式で表すことは容易でないが、分子量及び分子構造の統計的分布である場合がある。一つ又はそれ以上の実施態様において、星形に枝分れしたランダム重合体は、一つ又はそれ以上の骨格と、二つ以上の枝と、二つ以上の分岐点と、一つ又はそれ以上の官能基とを含むことができる。
【0030】
一つ又はそれ以上の実施態様において、星形に枝分れした重合体の骨格は、多分岐重合体に関して先に説明したものと同様である。
【0031】
一つ又はそれ以上の実施態様において、星形に枝分れした重合体の枝は、多分岐重合体に関して先に説明したものと同様である。
【0032】
一つ又はそれ以上の実施態様において、星形に枝分れした重合体の分岐点は、多分岐重合体に関して先に説明したものと同様である。
【0033】
一つ又はそれ以上の実施態様において、星形に枝分れした重合体の官能基は、官能化分岐重合体に関して先に説明したものと同様である。
【0034】
(樹枝状にグラフトした分岐重合体)
一つ又はそれ以上の実施態様において、分岐重合体には、樹枝状にグラフトした(dendrigraft)重合体が含まれる。一般に、樹枝状にグラフトした重合体は、星形に枝分れしたランダム重合体に比べてより規則正しい構造を示すことができるが、それにもかかわらず、樹枝状にグラフトした重合体を単一の式で表すことは容易でない。
【0035】
一つ又はそれ以上の実施態様において、樹枝状にグラフトした重合体は、一つ又はそれ以上のグラフト部分により、一つ又はそれ以上のグラフト点にて接続された二つ以上の重合体鎖を含むことができる。更に、樹枝状にグラフトした重合体は、一つ又はそれ以上の官能基を含んでもよい。
【0036】
一つ又はそれ以上の実施態様において、樹枝状にグラフトした重合体の重合体鎖は、多分岐重合体に関して先に説明した骨格と同様である。
【0037】
一つ又はそれ以上の実施態様において、樹枝状にグラフトした重合体のグラフト部分は、多分岐重合体に関して先に説明した分岐点と同様である。
【0038】
一つ又はそれ以上の実施態様において、樹枝状にグラフトした重合体のグラフト点は、多分岐重合体に関して先に説明した分岐点と同様である。
【0039】
一つ又はそれ以上の実施態様において、樹枝状にグラフトした重合体の官能基は、官能化分岐重合体に関して先に説明したものと同様である。
【0040】
(多分岐重合体の調製)
一つ又はそれ以上の実施態様において、多分岐重合体は、モノ-リビング重合体を分岐剤と反応させ、分岐停止剤を形成し、次いで、多分岐重合体を形成させるために該分岐停止剤をジ-リビング重合体と反応させることで調製できる。
【0041】
一つ又はそれ以上の実施態様において、モノ-リビング重合体には、単一の炭素アニオンを含む反応性重合体が含まれる。モノ-リビング重合体は、アニオン重合技術によって調製できる。該技術は、重合体の末端に反応性炭素アニオンを有する重合体構造を生長させるため、モノ-官能性アニオン開始剤と特定の不飽和単量体との使用を採用することができる。重合体の形成又は生長を通じて、重合体の構造は、アニオン又はリビングと称されることがある。後で追加の単量体をその反応に加えると、該単量体はリビング末端に付加することができ、重合度が増大する。更に、アニオン重合は、George Odian,Principles of Polymerization,ch.5(3rd Ed.1991)又はPanek,94 J.Am.Chem.Soc.,8768(1972)に説明されており、参照することにより本願に組み込まれる。アニオン重合した重合体又はアニオン重合したリビング重合体は、アニオン重合技術によって調製された重合体を指すことを言及する。
【0042】
アニオン重合したリビング重合体を調製するのに使用できる単量体には、アニオン重合技術に従って重合することが可能な単量体がいずれも含まれる。それら単量体には、エラストマー単独重合体又は共重合体の形成に導くものが含まれる。適切な単量体としては、限定されないが、共役C4-C12ジエン、C8-C18モノビニル芳香族単量体、及びC6-C20トリエンが挙げられる。共役ジエン単量体の例としては、限定されないが、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン及び1,3-ヘキサジエンが挙げられる。トリエンの非制限的な例としては、ミルセンが挙げられる。芳香族ビニル単量体としては、特に限定されないが、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、及びビニルナフタレンが挙げられる。共役ジエン単量体及び芳香族ビニル単量体を含有するもの等のエラストマー共重合体を調製する場合、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とを95:5〜50:50、好ましくは95:5〜65:35の比で使用できる。
【0043】
モノ-官能性開始剤のいずれかを用いて、モノ-リビング重合体の形成及び生長を開始させることができる。例示的なモノ-官能性開始剤としては、特に限定されないが、n-ブチルリチウム等のアルキルリチウム開始剤、アレーニルリチウム開始剤、及びアレーニルナトリウム開始剤が挙げられる。一つ又はそれ以上の実施態様においては、官能性開始剤を用いる。一つ又はそれ以上の実施態様において、官能性開始剤には、有機配位子が一つ又はそれ以上のヘテロ原子を含む有機金属化合物が含まれる。例えば、官能性開始剤の一の分類としては、N-リチオヘキサメチレンイミド、N-リチオピロリジニド、N-リチオドデカメチレンイミド等のアミノアルキルリチウム化合物、及び米国特許第5,332,810号、第5,329,005号、第5,578,542号、第5,393,721号、第5,698,646号、第5,491,230号、第5,521,309号、第5,496,940号、第5,574,109号、及び第5,786,441号に開示のものが挙げられ、これら米国特許は参照することにより本願に組み込まれる。他の例としては、米国特許第3,426,006号及び第5,268,439号に開示のものを含めた、アルキルスズリチウム等のスズ含有開始剤が挙げられ、これら米国特許は、参照することにより本願に組み込まれる。更に他のものとしては、アルキルチオアセタール(例えば、ジチアン類)と、米国出願公開第2006/0030657号、第2006/0264590号及び第2006/0264589号に開示のものを含めた関連化合物とが挙げられ、これら米国出願公開は、参照することにより本願に組み込まれる。更に他のものとしては、米国出願公開第2006/0241241号に開示のもの等のシリカ含有開始剤が挙げられ、該米国出願公開は、参照することにより本願に組み込まれる。
【0044】
一つ又はそれ以上の実施態様において、使用する開始剤は、重合体鎖の頭に官能基を与える。官能基は、ゴム若しくはゴム用充填剤と反応し若しくは相互作用し又は充填剤入りゴム組成物若しくは加硫ゴムに望ましい影響を与えることができる。有用な官能基及び加硫ゴムへの望ましい影響については、先に記載されている。
【0045】
モノ-リビング重合体を調製するのに用いる開始剤の量は、所望の重合体の特徴に基づいて変わる。一の実施態様においては、単量体100g当たり約0.1〜約100mmol、他の実施態様においては約0.33〜約10mmolのリチウムを使用する。
【0046】
アニオン重合は、テトラヒドロフラン(THF)等の極性溶媒中で、又は各種環式及び非環式ヘキサン類、ヘプタン類、オクタン類、ペンタン類、それらのアルキル化誘導体及びそれらの混合物、並びにベンゼン等の非極性炭化水素中で行うことができる。
【0047】
共重合のランダム化を促進し及び/又はビニル含有量を制御するため、極性調整剤を重合成分に加えてもよい。それらランダマイザーは、リチウム1当量当たり0〜90の間か又はそれ以上の当量で使用できる。該量は、所望のビニル量、使用するスチレンのレベル、重合の温度、及び使用する特定の極性調整剤(重合調整剤)の性質によって決まることがある。適切な重合調整剤には、例えば、コモノマー単位の所望のミクロ構造及びランダム化を提供するエーテル又はアミンが含まれる。
【0048】
極性調整剤として有用な化合物には、酸素又は窒素のヘテロ原子と非結合電子対とを有するものが含まれる。例としては、モノアルキレングリコール及びオリゴアルキレングリコールのジアルキルエーテル;「クラウン」エーテル;テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)等の第三級アミン;線状THFオリゴマー類等が挙げられる。極性調整剤として有用な化合物の具体例としては、テトラヒドロフラン(THF)、2,2-ビス(2'-テトラヒドロフリル)プロパン等の線状及び環式のオリゴマー状オキソラニルアルカン、ジ-ピペリジルエタン、ジピペリジルメタン、ヘキサメチルホスホラミド、N-N'-ジメチルピペラジン、ジアザビシクロオクタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、トリブチルアミン等が挙げられる。線状及び環式のオリゴマー状オキソラニルアルカン重合調整剤は、米国特許第4,429,091号に記載されており、参照することにより本願に組み込まれる。
【0049】
モノ-リビング重合体は、回分法又は連続法によって調製できる。バッチ重合は、適切な反応容器に一種又は複数種の単量体と直鎖アルカン溶媒とのブレンドを投入し、次いで、極性調整剤(使用する場合)と開始剤化合物とを加えることにより、開始できる。反応物質を約20〜約130℃の温度に加熱することができ、約0.1〜約24時間重合を進めさせることができる。
【0050】
一つ又はそれ以上の実施態様において、モノ-リビング重合体は、該モノ-リビング重合体の絡み合い分子量の少なくとも1倍、他の実施態様においては少なくとも1.5倍、他の実施態様においては少なくとも2倍、他の実施態様においては少なくとも約3倍、他の実施態様においては少なくとも約4倍、他の実施態様においては少なくとも約5倍の長さによって特徴付けられる。
【0051】
一つ又はそれ以上の実施態様において、有用な分岐剤には、リビング重合体と反応できる(即ち、リビング重合体のカルバニオンと反応する)三つ以上の置換基又は部分を含む化合物が含まれる。一つ又はそれ以上の実施態様においては、それら置換基又は部分が、脱離基又は付加基を含むことができる。
【0052】
例えば、一つ又はそれ以上の実施態様の分岐剤は、下記式:
(ρ)m−χ−(γ)n
によって定義されることができる。
【0053】
ここで、ρはリビング重合体に対して非反応性の基又は部分を含み、χは多価の原子又は多価の部分であり、γはそれぞれ独立してリビング重合体と反応することができる基であり、nは少なくとも3の整数であり、mは0又は0より大きな整数である。一つ又はそれ以上の実施態様においては、nが3〜約6の整数であり、他の実施態様においては約3〜約4である。一つ又はそれ以上の実施態様において、リビング重合体と反応することができる基には、脱離基又は脱離基を含む部分が含まれる。
【0054】
脱離基は、求核性化合物によって置き換えることのできる置換基が含まれ得る。一つ又はそれ以上の実施態様において、脱離基には、リビング重合体の対カチオン(例えば、Li)と反応し又は会合し、安定な又は中性の化合物を形成することになる置換基が含まれる。例示的な脱離基又は脱離基を含む基としては、ハロゲン化物、チオアルコキシド、アルコキシド、ジアルキルアミン、及びそれらの混合物が挙げられる。アルコキシド基の例としては、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。脱離基には、環式脱離基が含まれ、自己完結することができる(例えば、基が開く)。
【0055】
一つ又はそれ以上の実施態様において、付加基には、求核性化合物によって付加反応を受けることになる置換基が含まれ得る。一つ又はそれ以上の実施態様において、付加基は、リビング重合体のリビングアニオン部分(例えば、−C)と反応し又は会合することになる。一つ又はそれ以上の実施態様において、付加基には、シアノ基、アルキル若しくはアルケニルニトリル等のニトリル類、シッフ塩基(例えば、RR'C=NR'')、ケトン基、アルデヒド基、又はエステル基が含まれる。
【0056】
一つ又はそれ以上の実施態様において、多価の原子としては、13族原子、14族原子、又は15族原子を挙げることができる。一つ又はそれ以上の実施態様において、多価の原子としては、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ又は鉛が挙げられる。一つ又はそれ以上の実施態様において、多価の部分には、特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、アルキニル基等のヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基等のヒドロカルビル基が挙げられ、各基は、1個の炭素原子又は該基を形成するのに妥当な最小数の炭素原子から20個までの炭素原子を含有することが好ましい。
【0057】
一つ又はそれ以上の実施態様において、リビング重合体に対して非反応性の基又は置換基には、限定されるものではないが、アルキル基に限定されず、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、アルキニル基等のヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基等のヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基が含まれ得、各基は、1個の炭素原子又は該基を形成するのに妥当な最小数の炭素原子から20個までの炭素原子を含有することが好ましい。
【0058】
有用な分岐剤の例としては、四塩化スズ及び四塩化ケイ素が挙げられる。
【0059】
一つ又はそれ以上の実施態様において、ジ-リビング重合体には、二つの炭素アニオンを含む反応性重合体が含まれる。ジ-リビング重合体は、アニオン重合技術によって調製できる。該技術は、重合体の異なる二つの末端に反応性炭素アニオンを有する重合体構造を生長させるため、ジ-官能性アニオン開始剤と特定の不飽和単量体との使用を採用することができる。アニオン重合における多官能性の開始剤の使用は、米国特許第3,652,516号に記載されており、参照することにより本願に組み込まれる。例示的なジ-リチオ開始剤には、1,3-ジイソプロペニルベンゼンをsec-ブチルリチウムで反応させることによって調製したものが含まれる。他の実施態様において、ジ-リビング重合体は、ラジカル-アニオン開始剤を用いることで調製されることができる。該開始剤の使用は、米国特許第5,552,483号に記載されており、参照することにより本願に組み込まれる。一の実施態様において、ラジカルアニオン重合技術は、スチレン等の単量体に電子を移動し、スチリルラジカル-アニオンを形成すると考えられるナフタレンアニオン-ラジカルを使用する。ナフタレンアニオン-ラジカルは、ナトリウム等のアルカリ金属をナフタレンと反応させることで形成できる。一つ又はそれ以上の実施態様において、スチリルラジカル-アニオンは、二量体になり、ジカルバニオンを形成する。追加の単量体の添加によってジカルバニオンをジ-リビング重合体に変えるものと思われる。モノ-リビング重合体と同様に、重合体の構造は、重合体の形成又は生長を通じて、アニオン又はリビングと称されることがある。後で追加の単量体をその反応に加えると、該単量体はリビング末端に付加することができ、重合度が増大する。
【0060】
ジ-リビング重合体を調製するのに用いる開始剤の量は、所望の重合体の特性に基づいて変わる。一の実施態様においては、単量体100g当たり約0.2〜約200mmol、他の実施態様においては約0.66〜約20mmolのリチウムを用いる。
【0061】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、分岐剤と反応させるモノ-リビング重合体の量を、モノ-リビング重合体のモル(例えば、リビング重合体と会合するリチウムの当量)及び分岐剤の反応部位の当量(例えば、四塩化スズの塩素の当量)の点から見て、表すことができる。例えば、一の実施態様においては、分岐剤の反応部位の数が変数nで定義できる場合、分岐剤と反応させるモノ-リビング重合体のモル数は、nから0.5を引いた数からおよそnから1.5を引いた数、他の実施態様においてはおよそnから0.7を引いた数からおよそnから1.4を引いた数、他の実施態様においてはおよそnから1.1を引いた数からおよそnから1.3を引いた数とすることができる。
【0062】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、ジ-リビング重合体と反応させる分岐停止剤の量を、ジ-リビング重合体のモル数に対する分岐停止剤のモル数の点から見て、表すことができる。例えば、一の実施態様においては、分岐停止剤約1.5〜約2.5モルをジ-リビング重合体1モルと反応させることができ、他の実施態様においては、分岐停止剤約1.5〜約10モルをジ-リビング重合体1モルと反応させることができ、他の実施態様においては、分岐停止剤約1.6〜約2.5モルをジ-リビング重合体1モルと反応させることができる。
【0063】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、モノ-リビング重合体と分岐剤間の反応を、溶媒中標準的な条件にて行うことができる。それらの実施態様又は他の実施態様においては、その溶液を不活性雰囲気下にしてもよい。
【0064】
一つ又はそれ以上の実施態様において、分岐停止剤を形成することができる溶液は、溶媒を含むことができる。有用な溶媒には、モノ-リビング重合体、分岐剤及び/又は分岐停止剤を少なくとも部分的に溶解できる溶媒が含まれ得る。例示的な溶媒としては、テトラヒドロフラン等の極性溶媒、又は環式及び非環式のヘキサン類、ヘプタン類、オクタン類、ペンタン類、それらのアルキル化誘導体、及びそれらの混合物等の非極性炭化水素溶媒が挙げられる。使用することのできる他の非極性炭化水素溶媒には、ベンゼン等の芳香族溶媒が含まれる。
【0065】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、モノ-リビング重合体と分岐剤間での反応が、モノ-リビング重合体を調製したものと同一の溶液中で行われる。言い換えれば、モノ-リビング重合体を調製した媒体に分岐剤を加える。一つ又はそれ以上の実施態様においては、モノ-リビング重合体の合成についてのピーク重合温度に達した後、重合媒体に分岐剤を加えてもよい。
【0066】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、モノ-リビング重合体と分岐剤間での反応を約-70℃〜約100℃の温度、他の実施態様においては約0℃〜約50℃の温度にて行うことができる。一つ又はそれ以上の実施態様においては、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気下で反応媒体を維持してもよい。
【0067】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、モノ-リビング重合体と分岐剤とを化合させるのに用いたものと同様な条件下で、分岐停止剤とジ-リビング重合体を化合させてもよい。一つ又はそれらの実施態様においては、ジ-リビング重合体を含有する溶液に、分岐停止剤を加える。分岐停止剤が加えられた溶液は、ジ-リビング重合体が合成された溶液であってもよい。
【0068】
(官能化分岐重合体の調製)
一つ又はそれ以上の実施態様において、官能化分岐重合体は、上記したもの等の分岐剤をリビング重合体の混合物と反応させることにより調製でき、ここで、該混合物には、複数のリビング重合体と複数の非官能性リビング重合体(即ち、官能基のないリビング重合体)とが含まれる。官能基を含む複数のリビング重合体は、複数の第一重合体と称される場合があり、官能基のない複数の重合体は、複数の第二リビング重合体と称される場合がある。
【0069】
一つ又はそれ以上の実施態様において、複数の第一リビング重合体は、該重合体の絡み合い分子量の少なくとも2.5倍、他の実施態様においては少なくとも3倍、他の実施態様においては少なくとも約4倍、他の実施態様においては少なくとも5倍、他の実施態様においては少なくとも約6倍の長さを特徴とすることができる。
【0070】
それらの実施態様又は他の実施態様において、複数の第一リビング重合体は、官能基を含む。一つ又はそれ以上の実施態様において、該官能基には、官能化開始剤の残基が含まれ得る。その結果として、一つ又はそれ以上の実施態様の官能基は、リビング重合体鎖の頭に位置することができる。官能基には、ゴム若しくはゴム用充填剤と反応し若しくは相互作用し又は充填剤入りゴム組成物若しくは加硫ゴムに望ましい影響を与える基又は置換基が含まれる。それらの基には、官能化分岐重合体に関して先に説明したものが含まれる。
【0071】
一つ又はそれ以上の実施態様において、複数の第二リビング重合体は、該リビング重合体の絡み合い分子量の少なくとも1倍、他の実施態様においては少なくとも1.5倍、他の実施態様においては少なくとも2倍、他の実施態様においては少なくとも3倍、他の実施態様においては少なくとも4倍、他の実施態様においては少なくとも5倍の長さを特徴とすることができる。
【0072】
一つ又はそれ以上の実施態様において、複数の第二リビング重合体は、非官能性である。言い換えれば、該リビング重合体は、ここで定義される官能基を欠いている。
【0073】
一つ又はそれ以上の実施態様において、リビング重合体の混合物は、最初に官能化開始剤を用いてアニオン重合性の単量体の重合を開始して調製できる。該重合は、官能化リビング重合体が所望の長さ(例えば、絡み合い分子量の少なくとも4倍の長さ)を特徴とする程度まで進行させることができ、それにより、所望の重合度を有する官能化重合体を含むリビング重合体セメント(即ち、重合体溶液)をもたらす。所望の重合度が達成された時点で、上記重合体セメントに非官能性のアニオン重合開始剤を加え、非官能性の重合体鎖を開始することができる。一つ又はそれ以上の実施態様においては、上記重合体セメントにアニオン重合性の追加の単量体を加えることができる。
【0074】
一つ又はそれ以上の実施態様において、官能化アニオン重合開始剤には、アレーニルリチウム開始剤、アレーニルナトリウム開始剤、N-リチウムジヒドロ-カーボンアミド、アミノアルキルリチウム、アルキルスズリチウム、環状アミン及び硫黄含有へテロ環式化合物が含まれる。官能化開始剤の例としては、N-リチオヘキサメチレンイミド、N-リチオピロリジニド及びN-リチオドデカメチレンイミドの他、置換アルジミン及び置換ケチミンのトリアルキルリチウム付加化合物等の有機リチウム化合物、2-リチオ-2-メチル-1,3-ジチアン、並びに置換第二級アミンのN-リチオ塩が挙げられる。また、例示的な開始剤は、米国特許第5,332,810号、第5,329,005号、第5,578,542号、第5,393,721号、第5,698,646号、第5,491,230号、第5,521,309号、第5,496,940号、第5,574,109号、及び第5,786,441号、米国仮特許出願第60/683,152号、並びに国際公開第2004/020475号に記載されており、参照することにより本願に組み込まれる。
【0075】
(星形に枝分れしたランダム重合体の調製)
一つ又はそれ以上の実施態様においては、星形に枝分れしたランダム重合体は、分岐重合体を含む組成物にフリーラジカル源を与えることにより調製できる。
【0076】
一つ又はそれ以上の実施態様において、星形重合体とも称されることがある分岐重合体は、少なくとも一つの分岐点と、該少なくとも一つの分岐点から伸びる少なくとも三つの枝とを含む。
【0077】
上記分岐点は、多価の原子(例えば、炭素、ケイ素、リン)又は炭化水素基等の多価の化学的部分を含むことができる。一つ又はそれ以上の実施態様において、分岐点には、約1〜約50個、他の実施態様においては約2〜約20個、他の実施態様においては約3〜約6個の炭素原子を含む炭素鎖等の短い炭化水素鎖を含むことができる。
【0078】
一つ又はそれ以上の実施態様において、星形重合体の枝は、該枝の絡み合い分子量を少なくとも約1倍、他の実施態様においては少なくとも1.5倍、他の実施態様においては少なくとも2倍、他の実施態様においては少なくとも約3倍、他の実施態様においては少なくとも約4倍、更に他の実施態様においては少なくとも約5倍の長さを特徴とすることができる。
【0079】
一つ又はそれ以上の実施態様において、星形重合体の枝は、ゴム状重合体として特徴付けることができる。ゴム状重合体には、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満、他の実施態様においては-20℃未満、他の実施態様においては-30℃未満であることを特徴とする重合体が含まれ得る。一つ又はそれ以上の実施態様においては、ゴム状重合体鎖が、単一のガラス転移温度を示す。
【0080】
一つ又はそれ以上の実施態様において、星形重合体の枝には、ジエン由来の一つ又はそれ以上の単量体単位を含む重合体及び共重合体が含まれる。一つ又はそれ以上の実施態様において、星型重合体の枝は、アニオン重合によって調製される。それら重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(スチレン-co-ブタジエン-co-イソプレン)、ポリ(イソプレン-co-スチレン)及びポリ(ブタジエン-co-イソプレン)が挙げられる。
【0081】
本発明の実施は、特定のフリーラジカル源の選択によって必ずしも制限されない。一つ又はそれ以上の実施態様において、フリーラジカル源としては、電子ビームを挙げることができる。他の実施態様において、フリーラジカル源としては、活性化してフリーラジカルを提供できる化学的化合物を挙げることができる。フリーラジカル開始剤と称されることもあるそれらの化合物には、過酸化物、アゾ化合物等のフリーラジカル開始剤が含まれ得、これらは、ビニル芳香族単量体の重合を加速するものと思われる。例示的な開始剤としては、限定されないが、ペルオキシ酢酸第三ブチル、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジターシャリーブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(第三ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、t-ブチルペルオキシベンゾアート、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、ベンゾイルペルオキシド、スクシノイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバラート、及びアゾビスイソブチロ-ニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボ-ニトリル、アゾビスメチルイソラクタート、アゾビスシアノバレレート等のアゾ化合物が挙げられる。典型的な量は、当該技術分野において広く知られており、本発明の過程で使用できる。一つ又はそれ以上の実施態様において、添加量は重合体がゲル化する量より少ない。一つ又はそれ以上の実施態様において、該量は、重合体の少なくとも10重量パーセントから重合体の約90重量パーセントまでをカップリングするのに十分である。一つ又はそれ以上の実施態様において、添加量は、重合体の約20重量パーセントから約30重量パーセントをカップリングするのに十分である。
【0082】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、溶媒中に、星形重合体とフリーラジカル源とを導入する。例えば、溶媒中に星形重合体を溶解し又は懸濁させて、重合体溶液又はセメントを形成することができ、該重合体溶液にフリーラジカル源を導入することができる。有用な溶媒には、炭化水素溶媒等の極性及び非極性の有機溶媒が含まれる。
【0083】
混合し又はブレンドすることで、星形重合体とフリーラジカル源とを接触させることができる。これは、連続攪拌式タンク型反応器等の従来の装置及び/又は従来の技術を用いて行うことができる。
【0084】
(樹枝状にグラフトした分岐重合体の調製)
一つ又はそれ以上の実施態様において、複数枝分れして樹枝状にグラフトした重合体は、リビング重合体をグラフト化剤及び連鎖移動剤と反応させることで調製できる。
【0085】
リビング重合体は、多分岐重合体について先に説明されたアニオン重合技術のいずれかによって調製できる。一つ又はそれ以上の実施態様において、リビング重合体は、該リビング重合体の絡み合い分子量の少なくとも2倍の長さを特徴とすることができる。
【0086】
一つ又はそれ以上の実施態様において、リビング重合体は、グラフト化剤及び連鎖移動剤と逐次的に又は同時に化合する。特定の実施態様においては、グラフト化剤を増加的に加える。それらの実施態様又は他の実施態様においては、連鎖移動剤を増加的に加える。一つ又はそれ以上の実施態様においては、重合媒体に追加の単量体を任意に加えることができる。
【0087】
一つ又はそれ以上の実施態様において、グラフト化剤には多官能性単量体が含まれる。一つ又はそれ以上の実施態様においては、多官能性単量体が、リビング重合体鎖と反応することが可能な二つ以上の官能基を含む。一の実施態様において、多官能性単量体は、リビング重合体の二重結合を有する部位での付加反応によって、リビング重合体鎖と反応することができる。他の実施態様において、多官能性単量体は、置換反応によってリビング重合体と反応することができる。多官能性単量体の例としては、クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、アリールメタクリレート及び1,3-ブチレングリコールジアクリレートが挙げられる。
【0088】
連鎖移動剤の例としては、2,4,4-トリメチルペンタン-2-チオール、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン-4-チオール、2,2,4,6,6,8,8-ヘプタメチルノナン-4-チオール、t-ドデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド、四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素、ペンタフェニルエタン等の炭化水素;テルピノレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、ジペンテン、α-メチルスチレン二量体、及び2,5-ジヒドロフランが挙げられる。一つ又はそれ以上の実施態様においては、第二級アミン等のアミンを使用する。それらの連鎖移動剤は、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0089】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、グラフト化剤の量を、リビング重合体の量に対して表すことができる。一の実施態様においては、グラフト化剤対リビング重合体の比が0.1対1〜約2対1である。
【0090】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、連鎖移動剤の量を、グラフト化剤の量に対して表すことができる。一の実施態様においては、連鎖移動剤対グラフト化剤の比が約0.25対1〜約2対1である。
【0091】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、リビング重合体とグラフト化剤間での反応を溶液中標準的な条件で行うことができる。それらの実施態様又は他の実施態様においては、その溶液が不活性雰囲気下の場合がある。
【0092】
一つ又はそれ以上の実施態様において、樹枝状にグラフトした重合体を形成できる溶液は、溶媒を含むことができる。有用な溶媒には、リビング重合体、グラフト化剤及び/又は連鎖移動剤を少なくとも部分的に溶解できる溶媒が含まれ得る。例示的な溶媒としては、テトラヒドロフラン等の極性溶媒、又は環式及び非環式のヘキサン類、ヘプタン類、オクタン類、ペンタン類、それらのアルキル化誘導体、それらの混合物等の非極性炭化水素溶媒が挙げられる。他の使用できる非極性炭化水素溶媒には、ベンゼン等の芳香族溶媒が含まれる。
【0093】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、リビング重合体、連鎖移動剤及びグラフト化剤の間での反応が、リビング重合体を調製したのと同一の溶液中で行われる。言い換えれば、リビング重合体を調製した媒体に、グラフト化剤と連鎖移動剤とを加える。連鎖移動剤とグラフト化剤とを同時に加えてもよいし、逐次的に加えてもよい。連鎖移動剤及びグラフト化剤の一方又は双方を増加的に加えてもよい。一つ又はそれ以上の実施態様においては、モノ-リビング重合体の合成に関してピーク重合温度に達した後、重合媒体にグラフト化剤及び/又は連鎖移動剤を加えることができる。
【0094】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、リビング重合体、連鎖移動剤及びグラフト化剤の間での反応を、約-70℃〜約100℃、他の実施態様においては約0℃〜約50℃の温度で行うことができる。一つ又はそれ以上の実施態様においては、反応媒体を窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気下で維持してもよい。
【0095】
(高シス-ポリジエンのカップリングによる分岐重合体)
更に他の実施態様においては、特定の分岐重合体を合成し、追加的なカップリング又は枝分れを誘起するフリーラジカル源で該分岐重合体を処理することによって、有用な分岐重合体を調製することができる。一つ又はそれ以上の実施態様においては、ランタニド系の触媒系を用いることで、特定の分岐重合体を調製することができ、該重合体のフリーラジカル源での処理は、重合体に導入される過酸化物によって行われる。特定の実施態様においては、溶液中にて重合体を過酸化物で処理する。
【0096】
過酸化物で処理されるべき重合体を調製するのに使用されるランタニド系の触媒系は、米国特許第6,699,813号に記載されるニッケル助触媒を含み、ここで、該米国特許は、参照することにより本願に組み込まれる。
【0097】
一の実施態様においては、(a)ランタニド化合物、(b)アルキル化剤、(c)ニッケル含有化合物、及び(d)ハロゲン含有化合物を組み合わせることで、触媒組成物を形成する。ランタニド化合物、アルキル化剤又はニッケル含有化合物が不安定なハロゲン原子を含有する場合、不安定なハロゲン原子を含有する追加の化合物の必要性は任意的である。従って、(a)ランタニド化合物、(b)アルキル化剤及び(c)ニッケル含有化合物を組み合わせることで、触媒系を形成することができるが、但し、ランタニド化合物、アルキル化剤又はニッケル含有化合物の少なくとも一つが、不安定なハロゲン原子を含む。また、触媒成分(a)、(b)、(c)及び(d)の他、必要に応じて、有機金属化合物又はルイス塩基を用いることもできる。
【0098】
上記触媒系は、共役ジエン単量体と組み合わせ、通常の手順によって高シスポリジエンを調製することができる。共役ジエン単量体の例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、及び2,4-ヘキサジエンが挙げられる。また、共重合においては、二種以上の共役ジエンの混合物を利用することができる。
【0099】
種々のランタニド化合物又はそれらの混合物を、触媒組成物の成分(a)として用いることができる。該化合物は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素等の炭化水素溶媒で溶解できるものが好ましい。しかしながら、炭化水素に不溶性のランタニド化合物を重合媒体に懸濁させて、触媒的に活性な種を形成することができ、炭化水素不溶性ランタニド化合物もまた有用である。
【0100】
上記ランタニド化合物は、ランタン、ネオジム、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム及びジジムの内の少なくとも一つの原子を含む。該化合物は、ネオジム、ランタン、サマリウム又はジジムを含むことが好ましい。ジジムは、モナズ砂から得られる希土類元素の商業用混合物である。
【0101】
ランタニド化合物中のランタニド原子は、限定されないが、0、+2、+3、+4の酸化状態を含む様々な酸化状態で存在していてもよい。三価のランタニド化合物が好適であるが、ここで、該ランタニド原子は+3の酸化状態が好ましい。適したランタニド化合物には、限定されないが、ランタニドカルボン酸塩、ランタニド有機リン酸塩、ランタニド有機ホスホン酸塩、ランタニド有機ホスフィン酸塩、ランタニドカルバミン酸塩、ランタニドジチオカルバミン酸塩、ランタニドキサントゲン酸塩、ランタニドβ-ジケトナート、ランタニドアルコキシド又はランタニドアリールオキシド、ランタニドハロゲン化物、ランタニド擬似ハロゲン化物、ランタニドオキシハライド、及び有機ランタニド化合物が挙げられる。
【0102】
ネオジム化合物が最も有利に使用されるので、更なる議論はネオジム化合物に焦点を合わせることになるが、当業者であれば、他のランタニド金属に基づく類似の化合物を選択することができるであろう。
【0103】
適切なネオジムカルボン酸塩としては、ネオジム蟻酸塩、ネオジム酢酸塩、ネオジム酢酸塩、ネオジムアクリル酸塩、ネオジムメタクリル酸塩、ネオジム吉草酸塩、ネオジムグルコン酸塩、ネオジムクエン酸塩、ネオジムフマル酸塩、ネオジム乳酸塩、ネオジムマレイン酸塩、ネオジムシュウ酸塩、ネオジム2-エチルへキサン酸塩、ネオジムネオデカン酸塩、ネオジムナフテン酸塩、ネオジムステアリン酸塩、ネオジムオレイン酸塩、ネオジム安息香酸塩、及びネオジムピコリン酸塩が挙げられる。
【0104】
適切なネオジム有機リン酸塩としては、ネオジムジブチルリン酸塩、ネオジムジペンチルリン酸塩、ネオジムジヘキシルリン酸塩、ネオジムジヘプチルリン酸塩、ネオジムジオクチルリン酸塩、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)リン酸塩、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)リン酸塩、ネオジムジデシルリン酸塩、ネオジムジドデシルリン酸塩、ネオジムジオクタデシルリン酸塩、ネオジムジオレイルリン酸塩、ネオジムジフェニルリン酸塩、ネオジムビス(p-ノニルフェニル)リン酸塩、ネオジムブチル(2-エチルヘキシル)リン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)リン酸塩、及びネオジム(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)リン酸塩が挙げられる。
【0105】
適切なネオジム有機ホスホン酸塩としては、ネオジムブチルホスホン酸塩、ネオジムペンチルホスホン酸塩、ネオジムヘキシルホスホン酸塩、ネオジムヘプチルホスホン酸塩、ネオジムオクチルホスホン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジムデシルホスホン酸塩、ネオジムドデシルホスホン酸塩、ネオジムオクタデシルホスホン酸塩、ネオジムオレイルホスホン酸塩、ネオジムフェニルホスホン酸塩、ネオジム(p-ノニルフェニル)ホスホン酸塩、ネオジムブチルブチルホスホン酸塩、ネオジムペンチルペンチルホスホン酸塩、ネオジムヘキシルヘキシルホスホン酸塩、ネオジムヘプチルヘプチルホスホン酸塩、ネオジムオクチルオクチルホスホン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)(1-メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ネオジム(2-エチルヘキシル)(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジムデシルデシルホスホン酸塩、ネオジムドデシルドデシルホスホン酸塩、ネオジムオクタデシルオクタデシルホスホン酸塩、ネオジムオレイルオレイルホスホン酸塩、ネオジムフェニルフェニルホスホン酸塩、ネオジム(p-ノニルフェニル)(p-ノニルフェニル)ホスホン酸塩、ネオジムブチル(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジム(2-エチルヘキシル)ブチルホスホン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジム(2-エチルヘキシル)(1-メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ネオジム(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスホン酸塩、及びネオジム(p-ノニルフェニル)(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩が挙げられる。
【0106】
適切なネオジム有機ホスフィン酸塩としては、ネオジムブチルホスフィン酸塩、ネオジムペンチルホスフィン酸塩、ネオジムへキシルホスフィン酸塩、ネオジムヘプチルホスフィン酸塩、ネオジムオクチルホスフィン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸塩、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、ネオジムデシルホスフィン酸塩、ネオジムドデシルホスフィン酸塩、ネオジムオクタデシルホスフィン酸塩、ネオジムオレイルホスフィン酸塩、ネオジムフェニルホスフィン酸塩、ネオジム(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸塩、ネオジムジブチルホスフィン酸塩、ネオジムジペンチルホスフィン酸塩、ネオジムジヘキシルホスフィン酸塩、ネオジムジヘプチルホスフィン酸塩、ネオジムジオクチルホスフィン酸塩、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸塩、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、ネオジムジデシルホスフィン酸塩、ネオジムジドデシルホスフィン酸塩、ネオジムジオクタデシルホスフィン酸塩、ネオジムジオレイルホスフィン酸塩、ネオジムジフェニルホスフィン酸塩、ネオジムビス(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸塩、ネオジムブチル(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、及びネオジム(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸塩が挙げられる。
【0107】
適切なネオジムカルバミン酸塩としては、ネオジムジメチルカルバミン酸塩、ネオジムジエチルカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルカルバミン酸塩、ネオジムジブチルカルバミン酸塩、及びネオジムジベンジルカルバミン酸塩が挙げられる。
【0108】
適切なネオジムジチオカルバミン酸塩としては、ネオジムジメチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジエチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジブチルジチオカルバミン酸塩、及びネオジムジベンジルジチオカルバミン酸塩が挙げられる。
【0109】
適切なネオジムキサントゲン酸塩としては、ネオジムメチルキサントゲン酸塩、ネオジムエチルキサントゲン酸塩、ネオジムイソプロピルキサントゲン酸塩、ネオジムブチルキサントゲン酸塩、及びネオジムベンジルキサントゲン酸塩が挙げられる。
【0110】
適切なネオジムβ-ジケトナートとしては、ネオジムアセチルアセトナート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトナート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトナート、ネオジムベンゾイルアセトナート、及びネオジム2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナートが挙げられる。
【0111】
適切なネオジムアルコキシド又はネオジムアリールオキシドとしては、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジム2-エチルヘキソキシド、ネオジムフェノキシド、ネオジムノニルフェノキシド、及びネオジムナフトキシドが挙げられる。
【0112】
適切なネオジムハロゲン化物としては、フッ化ネオジム、塩化ネオジム、臭化ネオジム及びヨウ化ネオジムが挙げられる。適切なネオジム擬似ハロゲン化物としては、シアン化ネオジム、ネオジムシアン酸塩、ネオジムチオシアン酸塩、ネオジムアジド、及びネオジムフェロシアン酸塩が挙げられる。適切なネオジムオキシハライドとしては、ネオジムオキシフルオリド、ネオジムオキシクロリド及びネオジムオキシブロミドが挙げられる。ネオジムハロゲン化物、ネオジムオキシハライド又は不安定なハロゲン原子を含む他のネオジム化合物を使用する場合、ネオジム含有化合物は、ランタニド化合物とハロゲン含有化合物の両方として機能することができる。この分類のネオジム化合物を不活性有機溶媒中で可溶化するための助剤として、テトラヒドロフラン(THF)等のルイス塩基を使用してもよい。
【0113】
有機ランタニド化合物の語は、少なくとも一つのランタニド−炭素結合を含有するランタニド化合物を指す。該化合物は、限定されないが、主にシクロペンタジエニル(Cp)配位子、置換シクロペンタジエニル配位子、アリル配位子、及び置換アリル配位子を含有するものである。適切な有機ランタニド化合物としては、Cp3Ln、Cp2LnR、Cp2LnCl、CpLnCl2、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(C5Me5)2LnR、LnR3、Ln(アリル)3、及びLn(アリル)2Clが挙げられ、ここで、Lnはランタニド原子を表し、Rはヒドロカルビル基を表す。
【0114】
各種アルキル化剤又はそれらの混合物を触媒組成物の成分(b)として使用することができる。ヒドロカルビル化剤とも称される場合のあるアルキル化剤は、ヒドロカルビル基を他の金属に転移できる有機金属化合物である。典型的に、それらの試薬は、1族、2族、3族の金属(IA族、IIA族及びIIIA族の金属)等の陽性金属の有機金属化合物である。好適なアルキル化剤としては、有機アルミニウム化合物及び有機マグネシウム化合物が挙げられる。アルキル化剤が不安定なハロゲン原子を含む場合、該アルキル化剤は、ハロゲン含有化合物としても機能することができる。
【0115】
「有機アルミニウム化合物」の語は、少なくとも一つのアルミニウム−炭素結合を含有するアルミニウム化合物を指す。炭化水素溶媒で溶解できる有機アルミニウム化合物が好適である。アルキル化剤が不安定なハロゲン原子を含む有機アルミニウム化合物である場合、該有機アルミニウム化合物は、アルキル化剤とハロゲン含有化合物の両方として機能することができる。
【0116】
利用することのできる好適な分類の有機アルミニウム化合物は、一般式AlRn3-nで表され、ここで、各Rは炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する一価の有機基で、同一でも異なっていてもよく、各Xは水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基又はアリールオキシド基で、同一でも異なっていてもよく、nは1〜3の整数である。各Rは、限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、アリル基、アルキニル基等のヒドロカルビル基であることが好ましく、ここで、それぞれの基は、1個の炭素原子又は該基を形成するのに適切な最小数の炭素原子から約20個の炭素原子までを含有するのが好ましい。それらヒドロカルビル基は、限定されないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子を含有してもよい。
【0117】
適切な有機アルミニウム化合物としては、限定されないが、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムカルボキシレート化合物、ヒドロカルビルアルミニウムビス(カルボキシレート)化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジハライド化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムアリールオキシド化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジアリールオキシド化合物が挙げられる。トリヒドロカルビルアルミニウム化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド化合物、及びヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド化合物が好適である。
【0118】
適切なトリヒドロカルビルアルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリ-n-ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリス(2-エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1-メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、トリス(2,6-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル-p-トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ-p-トリルアルミニウム及びエチルジベンジルアルミニウムが挙げられる。
【0119】
適切なジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド化合物としては、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド及びベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドが挙げられる。
【0120】
適切なヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドとしては、エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド及びn-オクチルアルミニウムジヒドリドが挙げられる。
【0121】
適切なジヒドロカルビルアルミニウムクロリド化合物としては、ジエチルアルミニウムクロリド、ジ-n-プロピルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジ-n-ブチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジ-n-オクチルアルミニウムクロリド、ジフェニルアルミニウムクロリド、ジ-p-トリルアルミニウムクロリド、ジベンジルアルミニウムクロリド、フェニルエチルアルミニウムクロリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムクロリド、フェニルイソプロピルアルミニウムクロリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムクロリド、フェニルイソブチルアルミニウムクロリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムクロリド、p-トリルエチルアルミニウムクロリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムクロリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムクロリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムクロリド、p-トリルイソブチルアルミニウムクロリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムクロリド、ベンジルエチルアルミニウムクロリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムクロリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムクロリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムクロリド、ベンジルイソブチルアルミニウムクロリド及びベンジル-n-オクチルアルミニウムクロリドが挙げられる。
【0122】
適切なヒドロカルビルアルミニウムジクロリドとしては、エチルアルミニウムジクロリド、n-プロピルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、n-ブチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド及びn-オクチルアルミニウムジクロリドが挙げられる。
【0123】
他の有機アルミニウム化合物としては、ジメチルアルミニウムヘキサノアート、ジエチルアルミニウムオクトアート、ジイソブチルアルミニウム2-エチルヘキサノアート、ジメチルアルミニウムネオデカノアート、ジエチルアルミニウムステアラート、ジイソブチルアルミニウムオレアート、メチルアルミニウムビス(ヘキサノアート)、エチルアルミニウムビス(オクトアート)、イソブチルアルミニウムビス(2-エチルヘキサノアート)、メチルアルミニウムビス(ネオデカノアート)、エチルアルミニウムビス(ステアラート)、イソブチルアルミニウムビス(オレアート)、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシド、イソブチルアルミニウムジフェノキシド等、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0124】
適切な有機アルミニウム化合物の他の分類は、アルミノキサンである。アルミノキサンは、一般式:
【化1】


で表されるオリゴマー状の線状アルミノキサン、及び一般式:
【化2】


で表されるオリゴマー状の環状アルミノキサンを含む。ここで、xは1〜約100、好ましくは約10〜約50の整数であり;yは2〜約100、好ましくは約3〜約20の整数であり;各R1は、同一でも異なってもよいが、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する一価の有機基である。好ましくは、各R1は、限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、アリル基、アルキニル基等のヒドロカルビル基であり、ここで、各基は、1個の炭素原子又は該基を形成するのに妥当な最小数の炭素原子から約20個までの炭素原子を含有することが好ましい。これらヒドロカルビル基は、限定されないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子を含んでもよい。本願で使用されるアルミノキサンのモル数は、オリゴマー状のアルミノキサン分子のモル数というよりもアルミニウム原子のモル数を指すことに注意すべきである。この慣行は、アルミノキサンを利用する触媒の技術分野において一般に採用されている。
【0125】
アルミノキサンは、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物に水を反応させることによって調製できる。この反応は、(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒に溶解し、その後に水と接触させる方法、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、例えば金属塩中に含まれる結晶水、又は無機化合物もしくは有機化合物に吸着した水と反応させる方法、(3)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、重合させる単量体又は単量体溶液の存在下で水と反応させる方法、等の公知の方法に従い実行できる。
【0126】
適切なアルミノキサン化合物としては、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、2,6-ジメチルフェニルアルミノキサン等、及びこれらの混合物が挙げられる。イソブチルアルミノキサンは、その入手可能性と脂肪族及び脂環式炭化水素溶媒中での溶解性との理由から、特に有用である。変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンのメチル基の約20〜80%を、当業者に既知の技術を用いて、C2〜C12のヒドロカルビル基、好ましくはイソブチル基で置換することによって形成できる。
【0127】
アルミノキサンは、単独で使用してもよいし、他の有機アルミニウム化合物と組み合わせて使用することもできる。一の好適な実施態様においては、メチルアルミノキサンとジイソブチルアルミニウムヒドリドとを組み合わせて用いる。
【0128】
有機マグネシウム化合物の語は、少なくとも一つのマグネシウム−炭素結合を含有するマグネシウム化合物を指す。炭化水素溶媒で溶解できる有機マグネシウム化合物が好適である。利用できる好適な分類の有機マグネシウム化合物は、一般式:MgR22で表され、ここで、各R2は、同一でも異なってもよいが、一価の有機基であり、但し、該基は、炭素原子を介してマグネシウム原子に結合している。好ましくは、各R2は、限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、及びアルキニル基等のヒドロカルビル基であり、ここで、各基は、1個の炭素原子又は該基を形成するのに妥当な最小数の炭素原子から約20個の炭素原子までを含有することが好ましい。それらヒドロカルビル基は、限定されないが、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子を含有してもよい。
【0129】
利用できる適切なジヒドロカルビルマグネシウム化合物の一部の具体例としては、ジエチルマグネシウム、ジ-n-プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、及びそれらの混合物が挙げられる。ジブチルマグネシウムは、その入手可能性と脂肪族及び脂環式炭化水素溶媒中での溶解性との理由から、特に有用である。
【0130】
成分(b)として利用できる他の分類の有機マグネシウム化合物は、一般式:R3MgXによって表され、ここで、R3は一価の有機基であるが、但し、該基は炭素原子を介してマグネシウム原子に結合しており、Xは水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基又はアリールオキシド基である。アルキル化剤が不安定なハロゲン原子を含む有機マグネシウム化合物である場合、有機マグネシウム化合物は、アルキル化剤とハロゲン含有化合物の両方として機能することができる。好ましくは、R3は、限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、及びアルキニル基等のヒドロカルビル基であり、ここで、各基は、1個の炭素原子又は該基を形成するのに妥当な最小数の炭素原子から約20個の炭素原子までを含有することが好ましい。それらヒドロカルビル基は、限定されないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子を含有してもよい。好ましくは、Xがカルボキシレート基、アルコキシド基又はアリールオキシド基であり、ここで、該基は、1〜20個の炭素原子を含有することが好ましい。
【0131】
上記一般式:R3MgXによって表される有機マグネシウム化合物のうち適切な種類の一部には、限定されないが、ヒドロカルビルマグネシウムヒドリド、ヒドロカルビルマグネシウムハライド、ヒドロカルビルマグネシウムカルボキシレート、ヒドロカルビルマグネシウムアルコキシド、ヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシド、及びそれらの混合物が含まれる。
【0132】
上記一般式:R3MgXによって表される適切な有機マグネシウム化合物の一部の具体例としては、メチルマグネシウムヒドリド、エチルマグネシウムヒドリド、ブチルマグネシウムヒドリド、ヘキシルマグネシウムヒドリド、フェニルマグネシウムヒドリド、ベンジルマグネシウムヒドリド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリド、ヘキシルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヘキサノアート、エチルマグネシウムヘキサノアート、ブチルマグネシウムヘキサノアート、ヘキシルマグネシウムヘキサノアート、フェニルマグネシウムヘキサノアート、ベンジルマグネシウムヘキサノアート、メチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド、ベンジルマグネシウムエトキシド、メチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシド、ベンジルマグネシウムフェノキシド等、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0133】
触媒組成物の成分(c)としては、各種ニッケル含有化合物又はそれらの混合物を使用することができる。好ましくは、それらニッケル含有化合物は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、又は脂環式炭化水素等の炭化水素溶媒中で溶解できる。しかしながら、炭化水素に不溶性のニッケル含有化合物を重合媒体に懸濁させて、触媒的に活性な種を形成することができ、炭化水素不溶性のニッケル含有化合物もまた有用である。
【0134】
ニッケル含有化合物中のニッケル原子は、限定されないが、0、+2、+3、+4の酸化状態を含む様々な酸化状態で存在することができる。二価のニッケル化合物が好適であるが、ここで、該ニッケル原子は+2の酸化状態にある。適切なニッケル含有化合物には、限定されないが、ニッケルカルボン酸塩、ニッケル有機リン酸塩、ニッケル有機ホスホン酸塩、ニッケル有機ホスフィン酸塩、ニッケルカルバミン酸塩、ニッケルジチオカルバミン酸塩、ニッケルキサントゲン酸塩、ニッケルβ-ジケトナート、ニッケルアルコキシド又はニッケルアリールオキシド、ニッケルハロゲン化物、ニッケル擬似ハロゲン化物、ニッケルオキシハライド、及び有機ニッケル化合物が挙げられる。
【0135】
適切なニッケルカルボン酸塩としては、ニッケルオクトアート、ニッケル蟻酸塩、ニッケル酢酸塩、ニッケル酢酸塩、ニッケルアクリル酸塩、ニッケルメタクリル酸塩、ニッケル吉草酸塩、ニッケルグルコン酸塩、ニッケルクエン酸塩、ニッケルフマル酸塩、ニッケル乳酸塩、ニッケルマレイン酸塩、ニッケルシュウ酸塩、ニッケル2-エチルへキサン酸塩、ニッケルネオデカン酸塩、ニッケルナフテン酸塩、ニッケルステアリン酸塩、ニッケルオレイン酸塩、ニッケル安息香酸塩、及びニッケルピコリン酸塩が挙げられる。
【0136】
適切なニッケル有機リン酸塩としては、ニッケルジブチルリン酸塩、ニッケルジペンチルリン酸塩、ニッケルジヘキシルリン酸塩、ニッケルジヘプチルリン酸塩、ニッケルジオクチルリン酸塩、ニッケルビス(1-メチルヘプチル)リン酸塩、ニッケルビス(2-エチルヘキシル)リン酸塩、ニッケルジデシルリン酸塩、ニッケルジドデシルリン酸塩、ニッケルジオクタデシルリン酸塩、ニッケルジオレイルリン酸塩、ニッケルジフェニルリン酸塩、ニッケルビス(p-ノニルフェニル)リン酸塩、ニッケルブチル(2-エチルヘキシル)リン酸塩、ニッケル(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)リン酸塩、及びニッケル(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)リン酸塩が挙げられる。
【0137】
適切なニッケル有機ホスホン酸塩としては、ニッケルブチルホスホン酸塩、ニッケルペンチルホスホン酸塩、ニッケルヘキシルホスホン酸塩、ニッケルヘプチルホスホン酸塩、ニッケルオクチルホスホン酸塩、ニッケル(1-メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ニッケル(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ニッケルデシルホスホン酸塩、ニッケルドデシルホスホン酸塩、ニッケルオクタデシルホスホン酸塩、ニッケルオレイルホスホン酸塩、ニッケルフェニルホスホン酸塩、ニッケル(p-ノニルフェニル)ホスホン酸塩、ニッケルブチルブチルホスホン酸塩、ニッケルペンチルペンチルホスホン酸塩、ニッケルヘキシルヘキシルホスホン酸塩、ニッケルヘプチルヘプチルホスホン酸塩、ニッケルオクチルオクチルホスホン酸塩、ニッケル(1-メチルヘプチル)(1-メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ニッケル(2-エチルヘキシル)(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ニッケルデシルデシルホスホン酸塩、ニッケルドデシルドデシルホスホン酸塩、ニッケルオクタデシルオクタデシルホスホン酸塩、ニッケルオレイルオレイルホスホン酸塩、ニッケルフェニルフェニルホスホン酸塩、ニッケル(p-ノニルフェニル)(p-ノニルフェニル)ホスホン酸塩、ニッケルブチル(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ニッケル(2-エチルヘキシル)ブチルホスホン酸塩、ニッケル(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ニッケル(2-エチルヘキシル)(1-メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ニッケル(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスホン酸塩、及びニッケル(p-ノニルフェニル)(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩が挙げられる。
【0138】
適切なニッケル有機ホスフィン酸塩としては、ニッケルブチルホスフィン酸塩、ニッケルペンチルホスフィン酸塩、ニッケルへキシルホスフィン酸塩、ニッケルヘプチルホスフィン酸塩、ニッケルオクチルホスフィン酸塩、ニッケル(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸塩、ニッケル(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、ニッケルデシルホスフィン酸塩、ニッケルドデシルホスフィン酸塩、ニッケルオクタデシルホスフィン酸塩、ニッケルオレイルホスフィン酸塩、ニッケルフェニルホスフィン酸塩、ニッケル(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸塩、ニッケルジブチルホスフィン酸塩、ニッケルジペンチルホスフィン酸塩、ニッケルジヘキシルホスフィン酸塩、ニッケルジヘプチルホスフィン酸塩、ニッケルジオクチルホスフィン酸塩、ニッケルビス(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸塩、ニッケルビス(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、ニッケルジデシルホスフィン酸塩、ニッケルジドデシルホスフィン酸塩、ニッケルジオクタデシルホスフィン酸塩、ニッケルジオレイルホスフィン酸塩、ニッケルジフェニルホスフィン酸塩、ニッケルビス(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸塩、ニッケルブチル(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、ニッケル(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、及びニッケル(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸塩が挙げられる。
【0139】
適切なニッケルカルバミン酸塩としては、ニッケルジメチルカルバミン酸塩、ニッケルジエチルカルバミン酸塩、ニッケルジイソプロピルカルバミン酸塩、ニッケルジブチルカルバミン酸塩、及びニッケルジベンジルカルバミン酸塩が挙げられる。
【0140】
適切なニッケルジチオカルバミン酸塩としては、ニッケルジメチルジチオカルバミン酸塩、ニッケルジエチルジチオカルバミン酸塩、ニッケルジイソプロピルジチオカルバミン酸塩、ニッケルジブチルジチオカルバミン酸塩、及びニッケルジベンジルジチオカルバミン酸塩が挙げられる。
【0141】
適切なニッケルキサントゲン酸塩としては、ニッケルメチルキサントゲン酸塩、ニッケルエチルキサントゲン酸塩、ニッケルイソプロピルキサントゲン酸塩、ニッケルブチルキサントゲン酸塩、及びニッケルベンジルキサントゲン酸塩が挙げられる。
【0142】
適切なニッケルβ-ジケトナートとしては、ニッケルアセチルアセトナート、ニッケルトリフルオロアセチルアセトナート、ニッケルヘキサフルオロアセチルアセトナート、ニッケルベンゾイルアセトナート、及びニッケル2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナートが挙げられる。
【0143】
適切なニッケルアルコキシド又はニッケルアリールオキシドとしては、ニッケルメトキシド、ニッケルエトキシド、ニッケルイソプロポキシド、ニッケル2-エチルヘキソキシド、ニッケルフェノキシド、ニッケルノニルフェノキシド、及びニッケルナフトキシドが挙げられる。
【0144】
適切なニッケルハロゲン化物としては、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル及びヨウ化ニッケルが挙げられる。適切なニッケル擬似ハロゲン化物としては、シアン化ニッケル、ニッケルシアン酸塩、ニッケルチオシアン酸塩、ニッケルアジド、及びニッケルフェロシアン酸塩が挙げられる。適切なニッケルオキシハライドとしては、ニッケルオキシフルオリド、ニッケルオキシクロリド及びニッケルオキシブロミドが挙げられる。ニッケルハロゲン化物、ニッケルオキシハライド又は不安定なハロゲン原子を含む他のニッケル化合物を使用する場合、ニッケル含有化合物は、分子量調整剤とハロゲン含有化合物の両方として機能することができる。この分類の化合物用の溶解助剤として、ルイス塩基を使用することができる。
【0145】
有機ニッケル化合物の語は、少なくとも一つのニッケル−炭素結合を含有するニッケル化合物を指す。適切な有機ニッケル化合物としては、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(ニッケロセンとも呼ばれる)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ニッケル(デカメチルニッケロセンとも呼ばれる)、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(ペンタジエニル)ニッケル、ビス(2,4-ジメチルペンタジエニル)ニッケル、(シクロペンタジエニル)(ペンタジエニル)ニッケル、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(アリル)ニッケル、ビス(メタリル)ニッケル、及びビス(クロチル)ニッケルが挙げられる。
【0146】
触媒組成物の成分(d)としては、一つ又はそれ以上の不安定なハロゲン原子を含有する各種化合物又はそれらの混合物を用いることができる。それら化合物は、単純に、ハロゲン含有化合物と称されることがある。ハロゲン原子の例としては、限定されないが、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。また、二種以上のハロゲン原子の組み合わせを利用することもできる。炭化水素溶媒中で溶解できるハロゲン含有化合物が好適である。しかしながら、炭化水素に不溶性のハロゲン含有化合物を重合媒体に懸濁させて、触媒的に活性な種を形成することができるため、炭化水素不溶性のハロゲン含有化合物も有用である。
【0147】
ハロゲン含有化合物の有用な種類としては、限定されないが、元素のハロゲン、混合ハロゲン、ハロゲン化水素、有機ハロゲン化物、無機ハロゲン化物、金属ハロゲン化物、有機金属ハロゲン化物及びそれらの混合物が挙げられる。
【0148】
適切な元素のハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。適切な混合ハロゲンの一部の具体例としては、一塩化ヨウ素、一臭化ヨウ素、三塩化ヨウ素、及び五フッ化ヨウ素が挙げられる。
【0149】
適切なハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素及びヨウ化水素が挙げられる。
【0150】
適切な有機ハロゲン化物としては、t-ブチルクロリド、t-ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ-ジ-フェニルメタン、ブロモ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルマート、及びメチルブロモホルマートが挙げられる。
【0151】
適切な無機ハロゲン化物としては、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、三塩化ヒ素、三臭化ヒ素、三ヨウ化ヒ素、四塩化セレン、四臭化セレン、四塩化テルル、四臭化テルル、及び四ヨウ化テルルが挙げられる。
【0152】
適切な金属ハロゲン化物としては、四塩化スズ、四臭化スズ、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三ヨウ化アルミニウム、三フッ化アルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三ヨウ化ガリウム、三フッ化ガリウム、三塩化インジウム、三臭化インジウム、三ヨウ化インジウム、三フッ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛、及び二フッ化亜鉛が挙げられる。
【0153】
適切な有機金属ハロゲン化物としては、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ-t-ブチルスズジクロリド、ジ-t-ブチルスズジブロミド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジブロミド、トリブチルスズクロリド、及びトリブチルスズブロミドが挙げられる。
【0154】
本発明の触媒組成物は、広範囲の触媒濃度及び触媒成分比に亘って、共役ジエンを立体特異性のポリジエンに重合する非常に高い触媒活性を有する。しかしながら、最も望ましい特性を有する重合体は、より狭い範囲の触媒濃度及び触媒成分比の中で得られる。更に、触媒成分(a)、(b)、(c)及び(d)は、相互作用して活性な触媒種を形成することがあると思われる。従って、いずれか一つの触媒成分の最適濃度は、他の触媒成分の濃度に依存している。ニッケル含有化合物のランタニド化合物に対するモル比(Ni/Ln)は、約0.001:1〜約1:1、更に好ましくは約0.005:1〜約0.5:1、一層好ましくは約0.01:1〜約0.2:1の範囲で変えることができる。アルキル化剤のランタニド化合物に対するモル比(アルキル化剤/Ln)は、約1:1〜約200:1、更に好ましくは約2:1〜約100:1、一層好ましくは約5:1〜約50:1の範囲で変えることができる。ハロゲン含有化合物のランタニド化合物に対するモル比(ハロゲン原子/Ln)は、約0.5:1〜約20:1、更に好ましくは約1:1〜約10:1、一層好ましくは約2:1〜約6:1の範囲で変えることができる。ここで使用されるモル比の語は、触媒成分のうち関係のある要素の当量比、例えば、ハロゲン含有化合物にあるハロゲン原子の、ランタニド化合物にあるランタニド原子に対する当量比を指す。
【0155】
他の実施態様において、触媒組成物は、(a)ランタニド化合物、(b)アルミノキサン及び(c)ニッケル含有化合物を含むが、但し、アルミノキサンのランタニド化合物に対するモル比(Al/Ln)は、約50:1〜約50,000:1、好ましくは約75:1〜約30,000:1、更に好ましくは約100:1〜約1,000:1であり、ここで、モル比は、ランタニド化合物中のランタニド原子の当量に対するアルミノキサンにあるアルミニウム原子の当量を指す。有用なランタニド化合物、アルミノキサン、及びニッケル含有化合物は、上述の通りである。
【0156】
更に他の実施態様において、本発明の触媒組成物は、(a)ランタニド化合物、(b)アルキル化剤、(c)ニッケル含有化合物及び(d)非配位性アニオン又は非配位性アニオン先駆体を含む。有用なランタニド化合物、アルキル化剤、及びニッケル含有化合物は、上述の通りである。非配位性アニオン又は非配位性アニオン先駆体のランタニド化合物に対する有用なモル比(An/Ln)には、約0.5:1〜約20:1、好ましくは約0.75:1〜約10:1、更に好ましくは約1:1〜約6:1の範囲が含まれる。
【0157】
非配位性アニオンを含有する化合物は、当該技術分野において知られている。一般に、非配位性アニオンは、例えば、立体障害のために触媒系の活性中心と配位結合を形成しない立体的に嵩高いアニオンである。例示的な非配位性アニオンとしては、テトラアリールボラートアニオン及びフッ素化テトラアリールボラートアニオンが挙げられる。また、非配位性アニオンを含有する化合物は、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオン又はホスホニウムカチオン等の対カチオンも含有する。例示的な対カチオンとしては、トリアリールカルボニウムカチオン及びN,N-ジアルキルアニリニウムカチオンが挙げられる。非配位性アニオン及び対カチオンを含有する化合物の例としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボラート、及びN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボラートが挙げられる。
【0158】
非配位性アニオン先駆体には、反応条件下で非配位性アニオンを形成することができる化合物が含まれる。例示的な非配位性アニオン先駆体としては、トリアリールボラン化合物,BR3が挙げられ、ここで、Rはペンタフルオロフェニル基又は3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等の強い電子求引性のアリール基である。
【0159】
上記触媒組成物は、触媒成分(a)、(b)、(c)及び(d)を化合させるか又は混合することで形成される。活性な触媒種はこの組み合わせに起因すると思われるが、各種成分又は要素間での相互作用又は反応の程度についてはあまり知られていない。それゆえ、「触媒組成物」の用語は、成分の単なる混合物、物理的又は化学的な引力により生じる各種成分の複合体、成分の化学反応生成物、又はこれらの組み合わせを包含するために使用されている。
【0160】
本発明の触媒組成物は、下記に示す方法の一つを用いることによって形成できる。
【0161】
第一に、上記触媒組成物は、インサイチューで、単量体と溶媒とを含む溶液又は単にバルク単量体に、触媒成分を段階的に又は同時に加えることで形成されることができる。触媒成分を段階的に加える場合、触媒成分を添加する順番は重要ではない。しかしながら、最初にアルキル化剤を加え、次いでランタニド化合物、次にニッケル含有化合物、それから、使用する場合はハロゲン含有化合物又は非配位性アニオン若しくは非配位性アニオン先駆体を加えることが好ましい。
【0162】
第二に、一般に約-20℃〜約80℃の適切な温度の重合系外で、触媒成分を予備混合することができ、その後、得られる触媒組成物を単量体溶液に加える。
【0163】
第三に、少なくとも一種の共役ジエン単量体の存在下で、触媒組成物を予備形成してもよい。即ち、少量の共役ジエン単量体の存在下で、一般に約-20℃〜約80℃の適切な温度にて触媒成分を予備混合する。触媒を予備形成するために用いる共役ジエン単量体の量は、ランタニド化合物1モル当たり約1〜約500モル、更に好ましくは約5〜約250モル、一層好ましくは約10〜約100モルの範囲とすることができる。その後、重合される共役ジエン単量体の残りに、得られる触媒組成物を加える。
【0164】
第四に,触媒組成物を二段階の手順によって形成することができる。第一段階は、共役ジエン単量体の不在下で又は少量の共役ジエン単量体の存在下で、一般に約-20℃〜約80℃の適切な温度にてアルキル化剤をランタニド化合物と組み合わせる工程を含む。第二段階では、重合される共役ジエン単量体の残りに、先の反応混合物と残っている触媒成分とを段階的に又は同時に投入する。
【0165】
第五に、触媒組成物を異なる二段階の手順によって形成することができる。第一段階は、共役ジエン単量体の不在下で又は少量の共役ジエン単量体の存在下で、一般に約-20℃〜約80℃の適切な温度にてアルキル化剤をランタニド化合物及びニッケル含有化合物と組み合わせる工程を含む。第二段階では、重合される共役ジエン単量体の残りに、先の反応混合物と、ハロゲン含有化合物、非配位性アニオン又は非配位性アニオン先駆体とを段階的に又は同時に投入する。
【0166】
先の方法で説明したように、触媒組成物又は一つ若しくはそれ以上の触媒成分の溶液を重合系外で調製する場合、有機溶媒又はキャリヤーを用いることが好ましい。有機溶媒は、触媒組成物又は成分を溶解するために機能することができ、又は該有機溶媒は、単に触媒組成物又は成分を懸濁し得るキャリヤーとして機能することができる。有機溶媒は、触媒組成物に対し不活性であることが好ましい。有用な溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素等の炭化水素溶媒が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン類、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メシチレン等が挙げられる。脂肪族炭化水素溶媒の非限定的な例としては、n-ペンタン、n-へキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、イソペンタン、イソへキサン類、イソペンタン類、イソオクタン類、2,2-ジメチルブタン、石油エーテル、灯油、ペトロリウムスピリット等が挙げられる。そして、脂環式炭化水素溶媒の非制限的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロへキサン等が挙げられる。また、上記炭化水素の商業用混合物を用いてもよい。環境に関する理由から、脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素が非常に好適である。
【0167】
本発明の触媒組成物は、共役ジエンをシス-1,4-ポリジエンに重合させるための非常に高い触媒活性を示す。一の好適な実施態様が1,3-ブタジエンをシス-1,4-ポリブタジエンに重合させるために行われているが、他の共役ジエンを重合させることもできる。重合させることができる他の共役ジエンの一部の具体例としては、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサンジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン及び2,4-ヘキサジエンが挙げられる。また、二種以上の共役ジエンの混合物を共重合に利用することもできる。
【0168】
シス-1,4-ポリジエンの生成は、触媒的に効果的な量の上記触媒組成物の存在下で共役ジエン単量体を重合させることで達成される。重合塊に使用される全触媒濃度は、成分の純度、重合温度、所望の重合速度及び転化率、所望の分子量、その他多くの要因等、様々な要因の相互作用によって決まる。従って、それぞれの触媒成分を触媒的に効果的な量で使用すべきであるという以外、具体的な全触媒濃度を明確に説明することができない。一般に、ランタニド化合物の使用量は、共役ジエン単量体100g当たり約0.01〜約2mmol、更に好ましくは約0.02〜約1mmol、一層好ましくは約0.05〜約0.5mmolの範囲で変えることができる。
【0169】
重合は、希釈剤としての有機溶媒中で行われることが好ましい。一の実施態様においては、溶液重合系を使用しており、これは、重合される単量体と形成される重合体とが重合媒体中で溶解できる系である。或いは、沈殿重合系が、形成される重合体の不溶な溶媒を選択することによって使用できる。いずれの場合でも、重合される単量体は、凝縮相にある。また、触媒成分は、有機溶媒内で可溶化されるか又は懸濁されることが好ましい。言い換えれば、触媒成分は、担体に含浸されることが好ましくない。
【0170】
上記重合を行う場合、触媒組成物を調製するのに使用できる有機溶媒の量に加えて、ある量の有機溶媒を、重合系に加えることが好ましい。追加の有機溶媒は、触媒組成物を調製するのに用いる有機溶媒と同一であってもよいし、異なっていてもよい。重合を触媒するのに用いる触媒組成物に対して不活性な有機溶媒を選択することが好ましい。例示的な炭化水素溶媒は、先に説明したとおりである。溶媒を使用する場合、重合される単量体の濃度は、特定の範囲に限定されない。しかしながら、重合開始時での重合媒体中に存在する単量体の濃度は、好ましくは約3重量%〜約80重量%、更に好ましくは約5重量%〜約50重量%、一層好ましくは約10重量%〜約30重量%の範囲とするべきである。一つ又はそれ以上の実施態様においては、触媒、溶媒及び単量体の組み合わせが、重合系又は重合媒体を形成する。
【0171】
また、共役ジエンの重合を、塊状重合によって行うこともでき、ここで、塊状重合とは、溶媒を使用しない重合環境を指す。塊状重合は、凝縮液相又は気相のいずれかによって行うことができる。
【0172】
共役ジエンの重合を、回分法、連続法、又は半連続法として行うことができる。半連続法では、既に重合した単量体を置換するために必要とされる単量体が、間欠的に投入される。いずれの場合においても、重合は、窒素、アルゴン又はヘリウム等の不活性保護ガスを用いて、中程度から激しい攪拌にて、嫌気条件下で行われることが好ましい。重合温度は、-10℃以下等の低い温度から100℃以上等の高い温度まで広範に変えることができ、好適な温度は、約20℃〜約90℃の範囲である。重合熱は、外部冷却、単量体若しくは溶媒の蒸発による冷却、又はそれら二つの方法の組み合わせによって取り除くことができる。使用する重合圧力は、広範に変えることができ、好適な圧力は、約1気圧から約10気圧の範囲である。
【0173】
所望の転化率が達成された時点で、触媒を不活性化させる重合停止剤を加えることにより、重合を停止することができる。典型的には、使用する停止剤は、プロトン性化合物であり、該化合物としては、限定されないが、アルコール、カルボン酸、無機酸、水、又はそれらの混合物が挙げられる。重合体の触媒又は反応性を非活性化するのに有用なプロトン性化合物又は他の化合物の添加は、失活と称されることがある。一つ又はそれ以上の実施態様においては、重合媒体の失活を検討する。
【0174】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、失活する前に、高シス重合体を官能化してもよい。本願に記載のランタニド系触媒組成物を用いることで調製される重合体は、有利に、ある程度の擬似リビング特性を有することができる。結果として、該重合体は、重合体を停止(失活)する前に又はその代わりに、それらを適切な官能化剤と反応させることによって、官能化させることができる。例示的な官能化剤としては、限定されないが、アルコキシシラン、イミン含有化合物、エステル、エステル−カルボキシレート金属錯体、アルキルエステルカルボキシレート金属錯体、アルデヒド又はケトン、アミド、イソシアナート、イソチオシアナート、イミン、及びエポキシドが挙げられる。これら官能化剤の種類は、数ある中でも、国際出願第PCT/US00/30743号、第PCT/US00/30875号及び第PCT/US00/30743号;米国特許第4,906,706号、第4,990,573号、第5,064,910号、第5,567,784号、第4,736,001号、第4,699,960号及び第5,844,050号;並びに日本国特許出願第05−051406A号、第05−059103A号、第10−306113A号及び第11−035633A号に開示されており、これらは参照することにより本願に組み込まれる。これらの官能化剤は、それらを一緒に混合することで、擬似リビング重合体と反応させることができる。官能化剤の使用量は、変えることができる。ランタニド化合物1モル当たり、好ましくは約0.01〜約200モル、更に好ましくは約0.1〜約150モルの官能化剤を使用するべきである。一つ又はそれ以上の実施態様においては、重合体を官能化するのに用いる官能化剤が、モノ-官能性停止剤に限定されるため、擬似リビング重合体のカップリングは限定される。一つ又はそれ以上の実施態様において、高シス重合体は、本発明の一つ又はそれ以上の実施態様に従うフリーラジカル源での処理に先立ってカップリングを行うことがなく、他の実施態様においては該カップリングを行うことが実質的にない。官能化剤との反応後、上述したように、重合体及び触媒溶液を失活させる。
【0175】
失活させた後、(官能化又は非官能化)高シス重合体は、多くのフリーラジカル源によって処理できる。一つ又はそれ以上の実施態様において、フリーラジカル源には、電子ビームが含まれ得る。他の実施態様において、フリーラジカル源には、活性化してフリーラジカルを提供できる化合物が含まれ得る。これら化合物は、フリーラジカル開始剤と称されることもあり、ペルオキシド化合物、アゾ化合物等のフリーラジカル開始剤が含まれ得、ここで、該フリーラジカル開始剤は、ビニル芳香族単量体の重合を加速させるものと思われる。例示的なペルオキシド化合物としては、限定されないが、ペルオキシ酢酸第三ブチル、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジターシャリーブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(第三ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、t-ブチルペルオキシベンゾアート、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、ベンゾイルペルオキシド、スクシノイルペルオキシド、及びt-ブチルペルオキシピバラートが挙げられ、アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロ-ニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボ-ニトリル、アゾビスメチルイソラクタート、アゾビスシアノバレレート等が挙げられる。典型的な量は、当該技術分野において広く知られており、本発明の方法において使用できる。一つ又はそれ以上の実施態様において、その添加量は、重合体がゲル化することになる量より少ない。一つ又はそれ以上の実施態様においては、該量が、少なくとも10重量%の重合体をカップリングするのに十分な量で、他の実施態様においては少なくとも20重量%の重合体をカップリングするのに十分な量で、他の実施態様においては少なくとも30重量%の重合体をカップリングするのに十分な量で、他の実施態様においては少なくとも40重量%の重合体をカップリングするのに十分な量である。それらの実施態様又は他の実施態様においては、重合体の約90重量%までをカップリングし、他の実施態様においては重合体の80重量%までをカップリングし、他の実施態様においては重合体の70重量%までをカップリングする。
【0176】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、溶媒中に、高シス重合体とフリーラジカル源とを導入する。例えば、溶媒中で高シス重合体を溶解し又は懸濁させて、重合体溶液又はセメントを形成し、該重合体溶液にフリーラジカル源を導入することができる。有用な溶媒には、炭化水素溶媒等の極性及び非極性の有機溶媒が含まれる。
【0177】
高シス重合体とフリーラジカル源とは、混合又はブレンドによって接触することができる。これは、連続攪拌槽型反応器等の従来の装置及び/又は従来の技術を用いることによって行うことができる。
【0178】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、高シス重合体を合成した溶液中に、フリーラジカル源(例えば、過酸化物)を加える。これは、リビング重合体及び触媒成分を失活させた後で且つ重合体生成物を単離する前に行うことができる。また、参照することにより本願に組み込まれる米国特許第7,030,195号では、同様に、高シスポリジエンの溶液を過酸化物で処理する方法が教示されている。
【0179】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、フリーラジカル源で処理し及び/又はカップリングする前の高シス重合体が、少なくとも3.0、他の実施態様においては少なくとも3.2、他の実施態様においては少なくとも3.4、他の実施態様においては少なくとも3.6、他の実施態様においては少なくとも3.8の分子量分布(Mw/Mn)を特徴とすることができる。これらの実施態様又は他の実施態様においては、フリーラジカル源で処理し及び/又はカップリングした後の高シス重合体が、少なくとも3.0、他の実施態様においては少なくとも3.2、他の実施態様においては少なくとも3.4、他の実施態様においては少なくとも3.6、他の実施態様においては少なくとも3.8の分子量分布(Mw/Mn)を特徴とすることができる。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、通常のGPC手段を用い、ポリスチレン基準で、決定できる。
【0180】
(分岐重合体の水素化)
更に、本発明の一つ又はそれ以上の実施態様に従って調製された分岐重合体を処理し、該重合体を水素化することができる。これは、上記重合体の特定の使用において有利なことがある。
【0181】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、水素化の程度を、水素化後に残っている二重結合(即ち、最初のオレフィン性二重結合)の割合から見て表すことができる。一の実施態様においては、最初の二重結合のうちゼロパーセント(即ち、残りの二重結合が実質的にゼロである)、他の実施態様においては約5%まで、他の実施態様においては約10%まで、他の実施態様においては約15%まで、他の実施態様においては約20%まで、他の実施態様においては約30%までが、水素化後に残っている。それらの実施態様又は他の実施態様において、ポリジエンは、少なくとも10%が水素化され、他の実施態様においては少なくとも20%が水素化され、他の実施態様においては少なくとも30%が水素化される。
【0182】
一つ又はそれ以上の実施態様において、分岐重合体は、それらを均一又は不均一の遷移金属触媒系で処理することにより水素化できる。或いは、ジイミド系(例えば、ヒドラジン)等の有機系を用いてもよい。水素化に使用される水素化技術及び触媒は、McManus et al.,J.M.S.−Rev.Macromol.Chem.Phys.,C35(2),239−285(1995)による「重合体の化学修飾:触媒水素化及び関連反応」、Falk,Journal of Polymer Science:Part A−1,Vol.9,2617−2623(1971)による「重合体不飽和の選択的水素化のための配位触媒」、Bouchal et al.,Institute of Macromolecular Chemistry,Die Angewandte Makromolekular Chemie 165,165−180(Nr.2716)(1989)による「トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムクロリドに基づく均一性水素化触媒の存在下でのHO−末端基を持つテレケリックポリブタジエンの水素化」、Sabata et al.,Journal of Applied Polymer Science,Vol.85,1185−1193(2002)による「均一性チーグラーニッケル触媒によって触媒される低モル質量のOH−テレケリックポリブタジエンの水素化」、Hahn,Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.30,397−408(1992)による「ブタジエン含有重合体及びイソプレン含有重合体のジイミド水素化の改良された方法」、及びHoller,Journal of Applied Polymer Science,Vol 74,3203−3213(1999)による「低モル質量のOH−テレケリックポリブタジエンの水素化 I.ジイミドに基づく方法」に記載されるように広く知られており、これらは参照することにより本願に組み込まれる。共役ジエンの部分的水素化は、米国特許第4,590,319号、第5,242,986号及び第6,184,307号に記載されており、これら全ては、参照することにより本願に組み込まれる。シクロアルケンを形成するための芳香族炭化水素の部分的水素化は、米国特許第4,197,415号、第4,392,001号及び第5,589,600号により十分に記載されており、これら全ては、参照することにより本願に組み込まれる。
【0183】
(分岐重合体の使用)
一つ又はそれ以上の実施態様においては、本願に開示の分岐重合体をタイヤ部品の製造に使用することができる。該タイヤ部品は、本発明の分岐重合体を単独で又は他のゴム状重合体と共に用いることによって製造できる。使用できる他のゴム状エラストマーには、天然エラストマー及び合成エラストマーが含まれる。合成エラストマーは、典型的に、共役ジエン単量体の重合から得られる。該共役ジエン単量体を、ビニル芳香族単量体等の他の単量体と共に共重合することができる。他のゴム状エラストマーは、エチレンを一種又はそれ以上のα-オレフィンと、任意には一種又はそれ以上のジエン単量体と共に重合することによって得ることができる。
【0184】
有用なゴム状エラストマーとしては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン-co-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-co-プロピレン)、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(エチレン-co-プロピレン-co-ジエン)、多硫化ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、及びそれらの混合物が挙げられる。それらエラストマーは、線状、分岐状、及び星形状を含む無数の高分子構造を有することができる。また、ゴム配合に典型的に用いられる他の成分を加えることもできる。
【0185】
ゴム組成物は、無機充填剤、有機充填剤等の充填剤を含むことができる。有機充填剤には、カーボンブラック及び澱粉が含まれる。無機充填剤には、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー(水和ケイ酸アルミニウム)及びそれらの混合物が含まれ得る。
【0186】
硫黄又は過酸化物系の硬化系を含めて、多くのゴム硬化剤を用いることができる。硬化剤は、20カーク・オスマー著,「化学技術百科事典(Encyclopedia of chemical technology)」,365-468(第三版,1982年)、特に「加硫剤及び助剤(Vulcanization Agents and Auxiliary Materials)」,390-402、並びにA.Y.コラン著,「高分子科学工学百科辞典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)」(第二版,1989年)の「加硫(Vulcanization)」に記載されており、これらのは参照することにより本願に組み込まれる。加硫剤は、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。一つ又はそれ以上の実施態様において、加硫性組成物の調製、タイヤの構造及び硬化は、本発明の実施によって影響を受けない。
【0187】
使用することができる他の成分としては、促進剤、オイル、ワックス、スコーチ防止剤、加工助剤、酸化亜鉛、粘着性付与樹脂、補強樹脂、ステアリン酸等の脂肪酸、素練り促進剤、及び一種又はそれ以上の追加のゴムが挙げられる。
【0188】
これら組成物は、トレッド、サブトレッド、ブラックサイドウォール、ボディプライスキン、ビードフィラー等のタイヤ部品の成形に有用である。好ましくは、官能性重合体をトレッドの配合に用いる。一つ又はそれ以上の実施態様において、該トレッド配合には、配合中のゴムの全重量に対して、約10〜約100重量%、他の実施態様では約35〜約90重量%、他の実施態様では約50〜80重量%の分岐重合体が含まれ得る。
【0189】
一つ又はそれ以上の実施態様において、加硫性ゴム組成物は、ゴム成分及び充填剤を含む初期マスターバッチを形成することで調製できる(ゴム成分は任意に本発明の分岐重合体を含む)。この初期マスターバッチは、約25℃〜約125℃の開始温度、約135℃〜約180℃の排出温度で混合することができる。早期加硫(スコーチとしても知られる)を防止するため、この初期マスターバッチは、加硫剤を除いてもよい。初期マスターバッチを加工したら、最終混合段階において低温で加硫剤を初期マスターバッチ中に導入してブレンドしてもよく、ここで、加硫工程を開始させないことが好ましい。任意には、マスターバッチ混合段階と最終混合段階の間に、レミルと呼ばれることもある追加の混合段階を採用することができる。本発明の官能化重合体を含む各種成分をレミル中に加えることができる。本願に用いるゴム配合技術と添加剤は、スチーブンズによる「ゴム技術(Rubber Technology)」(第二版,1973年)の「ゴムの配合と加硫(The Compounding and Vulcanization of Rubber)」に開示されるように、一般に知られている。
【0190】
また、シリカが充填されたタイヤ配合に適用可能な混合条件及び混合手順は、米国特許第5,227,425号、第5,719,207号、第5,717,022号、及び欧州特許第890,606号に記載されるように、広く知られており、それらの全てが、参照することにより本願に組み込まれる。一つ又はそれ以上の実施態様において、充填剤としてシリカを(単独で又は他の充填剤と組み合わせて)用いる場合は、混合中にカップリング剤及び/又は遮蔽剤をゴム配合に加えてもよい。有用なカップリング剤及び遮蔽剤は、米国特許第3,842,111号、第3,873,489号、第3,978,103号、第3,997,581号、第4,002,594号、第5,580,919号、第5,583,245号、第5,663,396号、第5,674,932号、第5,684,171号、第5,684,172号、第5,696,197号、第6,608,145号、第6,667,362号、第6,579,949号、第6,590,017号、第6,525,118号、第6,342,552号、及び第6,683,135号に記載されており、それらは参照することにより本願に組み込まれる。
【0191】
加硫性ゴム組成物をタイヤの製造に用いる場合には、標準的なゴム成形技術、鋳型技術及び加硫技術を含む通常のタイヤ製造技術に従い、かかる組成物をタイヤ部品に加工することができる。典型的には、加硫は金型内で加硫性組成物を加熱することで達成され、例えば、約140〜約180℃に加熱することができる。硬化又は架橋したゴム組成物は、加硫ゴムと称される場合があり、一般に熱硬化性の三次元高分子網状構造を含む。加工助剤及び充填剤等の他の成分を加硫した網状構造の全体に亘って均一に分散させてもよい。一つ又はそれ以上の実施態様において、分岐重合体が不飽和を含有する場合には、該分岐重合体は、二つの三次元加硫ゴム網状構造に架橋することができる。分岐重合体が水素化(又は実質的に水素化)され、そのゴム組成物には不飽和の他のゴムが含まれる場合等、分岐重合体が飽和している場合には、分岐重合体は、加硫ゴムの網状構造内に閉じ込められる。空気入りタイヤは、米国特許第5,866,171号、第5,876,527号、第5,931,211号及び第5,971,046号に記載されるようにして作製でき、それらは、参照することにより本願に組み込まれる。
【0192】
一つ又はそれ以上の実施態様においては、本願に開示の分岐重合体を接着剤組成物に用いることができる。分岐重合体に加えて、接着剤組成物には、当該技術分野において使用される他の接着剤成分が含まれ得る。
【0193】
本発明の実施を明示するため、下記に示す例を用意して試験した。しかしながら、これらの例は、発明の範囲を制限するものとしてみなされるべきではない。特許請求の範囲が本発明を定める役割を果たす。
【実施例】
【0194】
(例1)
多分岐重合体を、分岐停止剤を用いて調製した。8オンスのボトルに、ジイソプロペニルベンゼン0.58mLと、トリエチルアミン0.95mlと、1.33Mのs-ブチルリチウム5.1mLを加えた。該ボトルを50℃の水浴中で1時間混転した。この混転の後、1Mのリチウム-tert-ブトキシド7mLを加えた。同時に、24オンスのボトル11個に、ヘキサン154gと1,3-ブタジエン/ヘキサンブレンド(1,3-ブタジエンを21.7重量%含有)131gを投入した。各ボトルに、1.68Mのn-ブチルリチウム1.7mLを加えて、次に、50℃の水浴中に1時間置いた。次いで、該ボトルを室温の浴槽中で30分間混転した。その後、特性決定のため、ボトルの一つをイソプロパノール−BHT溶液で停止した。各ボトルに、1.29Mの四塩化ケイ素0.66mLを加えた。再度、ボトルを室温の浴槽中で30分間混転した。
【0195】
同時に、2ガロンのステンレス鋼製バッチ反応器に、ヘキサン1.24lbsと1,3-ブタジエン/ヘキサンブレンド(1,3-ブタジエンを21.7重量%含有)3.46lbsを投入した。該反応器のジャケットを150°Fに加熱した。該バッチが133°Fに達したとき、上記8オンスのボトル中で調製されたリチウム二官能性開始剤を加えた。重合は、反応の33分後に216.1°Fで発熱した。34分後、ジャケットの温度を100°Fに設定し、分析のためサンプルを落とした。反応器に調整剤(1.60M;17mL)を加え、次に、分岐重合体停止剤のボトル9個を上記のように調製した。1.5時間後、分析のためサンプルを落とし、反応器にn-ブチルリチウム2.0mLを加えた。反応の2.5時間後に、反応混合物を冷却し、BHTを含有するイソプロパノール中に落とした。その後、凝固した重合体を単離してドラム乾燥させた。最終重合体は、測定可能なゲルを含有しなかった。
様々な段階でのサンプルの分析は、以下に示すデータを与える。GPC分子量の結果は、線状重合体のみが絶対値であり、枝分れした種のMnデータは(少なく見積もった)近似値でしかないことに注意すべきである。
【0196】
【表1】

【0197】
(例2)
例1で調製された多分岐重合体を、50対50の重量比で線状重合体とブレンドした。線状重合体は、開始剤としてn-ブチルリチウムを、停止剤として水を用いてアニオン重合技術により調製された。線状重合体は、ビニルが7.4%で、Tgが-90℃で、Mnが37kg/モルで、Mw/Mnが1.04であることを特徴とした。
【0198】
(例3)
多分岐重合体を、分岐停止剤を用いて調製した。8オンスのボトルに、ジイソプロペニルベンゼン0.35mLと、トリエチルアミン0.57mlと、1.33Mのs-ブチルリチウム3.1mLを加えた。該ボトルを50℃の水浴中で1時間混転した。この混転の後、1Mのリチウム-tert-ブトキシド4.1mLを加えた。同時に、24オンスのボトル12個に、ヘキサン148gと1,3-ブタジエン/ヘキサンブレンド(1,3-ブタジエンを20.8重量%含有)137gを投入した。各ボトルに、1.54Mのn-ブチルリチウム0.93mLを加えて、次に、50℃の水浴中に1時間置いた。次いで、該ボトルを室温の浴槽中で30分間混転した。その後、特性決定のため、ボトルの一つをイソプロパノール−BHT溶液で停止した。他のボトルそれぞれに、1.29Mの四塩化ケイ素0.33mLを加えた。再度、ボトルを室温の浴槽中で30分間混転した。
【0199】
同時に、2ガロンのステンレス鋼製バッチ反応器に、ヘキサン0.55lbsと1,3-ブタジエン/ヘキサンブレンド(1,3-ブタジエンを20.8重量%含有)2.16lbsを投入した。該反応器のジャケットを150°Fに加熱した。該バッチが145°Fに達したとき、上記8オンスのボトル中で調製されたリチウム二官能性開始剤を加えた。重合は、反応の33分後に174.6°Fで発熱した。34分後、ジャケットの温度を100°Fに設定し、分析のためサンプルを落とした。反応器に調整剤(1.60M;17mL)を加え、次に、残りの分岐重合体停止剤のボトル10個を上記のように調製した。2時間後、温度制御を止めて、反応を87°Fにて19時間攪拌した。次いで、分析のためサンプルを落とし、反応器にn-ブチルリチウム2.0mLを加えた。反応の1時間後、BHTを含有するイソプロパノール中に反応混合物を落とした。その後、凝固した重合体を単離してドラム乾燥させた。最終重合体は、ゲルを2%含有した。
【0200】
様々な段階でのサンプルの分析は、以下に示すデータを与える。GPC分子量の結果は、線状重合体のみが絶対値であり、枝分れした種のMnデータは(少なく見積もった)近似値でしかないことに注意すべきである。
【0201】
【表2】

【0202】
(例4)
官能化分岐重合体を以下のように調製した。2ガロンのステンレス鋼製反応器に、ヘキサン2.88lbsと1,3-ブタジエン/ヘキサンブレンド(1,3-ブタジエンを22重量%含有)4.75lbsを投入した。該反応器のジャケットを150°Fに加熱した。そのバッチが138°Fに達したとき、1.23Mのトリブチルスズリチウム4.3mLを加えて、ヘキサン約20mLで希釈した。重合は、反応の16分後に174.5°Fで発熱した。25分後、分析のためサンプルを落とした。該反応器に、第二開始剤であるn-ブチルリチウム(1.54Mのもの10.2mL)を加え、続けて1,3-ブタジエン/ヘキサンブレンド(1,3-ブタジエンを22重量%含有)2.10lbsを加えた。第二発熱ピークが、16分後に159.6°Fで観察された。分析のため、20分後にサンプルを落とし、該反応器に0.86Mの四塩化ケイ素6.0mLを加えた。1時間後、分析のため、サンプルを落とし、該反応器にn-ブチルリチウム2.0mLを加えた。反応の1.5時間後、反応混合物を冷却し、BHT含有イソプロパノール中に落とした。その後、凝固した重合体を単離してドラム乾燥させた。
【0203】
様々な段階でのサンプルの分析は、以下に示すデータを与える。GPC分子量の結果は、線状重合体のみが絶対値であり、枝分れした種のMnデータは(少なく見積もった)近似値でしかないことに注意すべきである。
【0204】
【表3】

【0205】
(例5)
官能化分岐重合体を以下のように調製した。2ガロンのステンレス鋼製バッチ反応器に、ヘキサン2.94lbsと1,3-ブタジエン/ヘキサンブレンド(1,3-ブタジエンを22重量%含有)4.34lbsを投入した。該反応器のジャケットを150°Fに加熱した。そのバッチが138°Fに達したとき、1.23Mのトリブチルスズリチウム3.9mLを加えて、ヘキサン約20mLで希釈した。重合は、反応の16分後に167.5°Fで発熱した。20分後、分析のためサンプルを落とした。該反応器に、第二開始剤であるn-ブチルリチウム(1.54Mのもの18.5mL)を加え、続けて1,3-ブタジエン/ヘキサンブレンド(1,3-ブタジエンを22重量%含有)2.43lbsを加えた。第二発熱ピークが、15分後に160.5°Fで観察された。分析のため、18分後にサンプルを落とし、該反応器に0.86Mの四塩化ケイ素6.9mLを加えた。1.5時間後、分析のため、サンプルを落とし、該反応器にn-ブチルリチウム2.3mLを加えた。反応の1.5時間後、反応混合物を冷却し、BHT含有イソプロパノール中に落とした。その後、凝固した重合体を単離してドラム乾燥させた。
【0206】
様々な段階でのサンプルの分析は、以下に示すデータを与える。GPC分子量の結果は、線状重合体のみが絶対値であり、枝分れした種のMnデータは(少なく見積もった)近似値でしかないことに注意すべきである。
【0207】
【表4】

【0208】
(例6)
官能化分岐重合体を以下のように調製した。2ガロンのステンレス鋼製バッチ反応器に、ヘキサン2.94lbsと1,3-ブタジエン/ヘキサンブレンド(1,3-ブタジエンを21.9重量%含有)4.40lbsを投入した。該反応器のジャケットを150°Fに加熱した。そのバッチが130°Fに達したとき、1.23Mのトリブチルスズリチウム3.9mLを加えて、ヘキサン約20mLで希釈した。重合は、反応の17分後に177.3°Fで発熱した。23分後、分析のためサンプルを落とした。該反応器に、第二開始剤であるn-ブチルリチウム(1.54Mのもの18.5mL)を加え、続けて1,3-ブタジエン/ヘキサンブレンド(1,3-ブタジエンを21.9重量%含有)2.45lbsを加えた。第二発熱ピークが、15分後に162.5°Fで観察された。分析のため、30分後にサンプルを落とし、該反応器に0.86Mの四塩化ケイ素9.7mLを加えた。1時間後、分析のため、サンプルを落とし、該反応器にn-ブチルリチウム2.3mLを加えた。反応の1.5時間後、反応混合物を冷却し、BHT含有イソプロパノール中に落とした。その後、凝固した重合体を単離してドラム乾燥させた。
【0209】
様々な段階でのサンプルの分析は、以下に示すデータを与える。GPC分子量の結果は、線状重合体のみが絶対値であり、枝分れした種のMnデータは(少なく見積もった)近似値でしかないことに注意すべきである。
【0210】
【表5】

【0211】
(例7)
星形重合体を以下のように調製した。2ガロンのステンレス鋼製バッチ反応器に、ヘキサン2.82lbsと1,3-ブタジエン/ヘキサンブレンド(1,3-ブタジエンを22.9重量%含有)5.90lbsを投入した。該反応器のジャケットを150°Fに加熱した。そのバッチが141°Fに達したとき、1.68Mのn-ブチルリチウム10.5mLを加えて、ヘキサン約20mLで希釈した。重合は、反応の13分後に189.6°Fで発熱した。17分後、分析のためサンプルを落とした。該反応器に、OOPS調整剤(1.60M;10mL)を加え、続けて0.87Mの四塩化ケイ素5mLを加えた。3.5時間後、分析のためサンプルを落とし、該反応器にn-ブチルリチウム2.0mLを加えた(依然としてそこに存在し、後処理の後に重合体中にゲルの形成を支持する塩化ケイ素をいずれも停止させる)。反応の1時間後、反応混合物を冷却し、BHT含有イソプロパノール中に落とした。その後、凝固した重合体を単離してドラム乾燥させた。重合体はゲルを1.5%含有した。
【0212】
様々な段階でのサンプルの分析は、以下に示すデータを与える。GPC分子量の結果は、線状重合体のみが絶対値であり、枝分れした種のMnデータは(少なく見積もった)近似値でしかないことに注意すべきである。
【0213】
【表6】

【0214】
また、最終生成物のGPCは、Mn=39kg/mol(カップリングしていない短い腕)を6%示す。
【0215】
(例8)
多分岐重合体(カップリングした星形)を以下のように調製した。ブラベンダーミキサー中120℃で5分間50RPMの混合速度によって、例7の星形重合体を2,2'-アゾビス-(2-イソブチロニトリル)(AIBN)0.5phrと反応させた。この反応の後、該ブラベンダー中の変性重合体に、ブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)酸化防止剤1.0phrを加え、50RPM及び120℃にて1分間混合した。最終変性重合体のGPC結果は、最初の星型分子の32%がこの方法によって無作為に一体となってカップリングされたことを示す。最終重合体は、ゲルを2.0%含有した。
【0216】
(例9)
多分岐重合体(カップリングした星形)を以下のように調製した。ブラベンダーミキサー中120℃で5分間50RPMの混合速度によって、例5の星形重合体を2,2'-アゾビス-(2-イソブチロニトリル)(AIBN)2.0phrと反応させた。この反応の後、該ブラベンダー中の変性重合体に、ブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)酸化防止剤1.0phrを加え、50RPM及び120℃にて1分間混合した。最終変性重合体のGPC結果は、最初の星型分子の47%がこの方法によって無作為に一体となってカップリングされたことを示す。最終重合体は、ゲルを11.5%含有した。
【0217】
例7の重合体を例2の重合体と50/50の重量比でブレンドした。その重合体は、ヘキサン中で相互溶解して10%の固溶体を形成し、その後、溶媒を蒸発させた。
【0218】
(例10)
例9で調製した多分岐重合体(カップリングした星形)を、50対50の重量比で線状重合体とブレンドした。線状重合体は、開始剤としてn-ブチルリチウムを、停止剤として水を用いてアニオン重合技術により調製された。線状重合体は、ビニルが7.4%で、Tgが-90℃で、Mnが37kg/モルで、Mw/Mnが1.04であることを特徴とした。
【0219】
(例11)
樹枝状にグラフトした重合体を、以下に示す方法に従って調製した。1ガロンのステンレス鋼製反応器に、工業銘柄ヘキサン(水を<5ppmに乾燥し、N2圧を受けたもの)2.0lbsを投入した。次いで、該反応器に、nBuLi4.62mmolとK-t-アミレート0.18mmolとを投入した。分離充填型タンクに、ヘキサン1.0lb、1,3-ブタジエン22%のヘキサン溶液のブレンド3.15lb、ジビニルベンゼン6.1mmol及びジブチルアミン3.1mmolの重さを量って供給した。反応器の加熱ジャケットを160°Fに設定した。該反応器が120°Fに達したとき、単量体、架橋剤及び移動剤のブレンドを0.06lb/分で計量しながら反応器に供給した。計量時間は85分であり、反応器は158°Fの温度に達した。計量が完了してから15分後に、酸化防止剤のジブチル-p-クレゾールを含有するイソプロパノール中で重合体溶液を沈殿させた。沈殿した重合体をドラム乾燥し、収率92%を得た。重合体の1,2-付加(ビニル含有量)は8%であった。重合体のGPC特性は、Mn=82.1kg/mol及びMw/Mn=2.50を与えた。GPC分子量の結果は、線状重合体のみが絶対値であり、枝分れした種のMnデータは(少なく見積もった)近似値でしかないことに注意すべきである。
【0220】
(例12)
K-t-アミレートの代わりに2,2-ビス(テトラヒドロフリル)プロパン0.4mmolを用いた以外は、例11と同様な手順に従った。重合体の1,2-付加(ビニル含有量)は27%であった。重合体のGPC特性は、Mn=83.2kg/mol及びMw/Mn=2.99を与えた。GPC分子量の結果は、線状重合体のみが絶対値であり、枝分れした種のMnデータは(少なく見積もった)近似値でしかないことに注意すべきである。
【0221】
(例13)
K-t-アミレートの代わりに2,2-ビス(テトラヒドロフリル)プロパン2.56mmolを用いた以外は、例11と同様な手順に従った。重合体の1,2-付加(ビニル含有量)は53%であった。重合体のGPC特性は、Mn=62.6kg/mol及びMw/Mn=2.09を与えた。GPC分子量の結果は、線状重合体のみが絶対値であり、枝分れした種のMnデータは(少なく見積もった)近似値でしかないことに注意すべきである。
【0222】
(例14−18)
例2の多分岐重合体ブレンドを用いて、ゴム組成物を調製し、ゴム加硫物に硬化させた。また、比較のサンプルを調製して試験した。組成物の処方を表Iに与える。該表に与えられる量は、特定の定めがない限り、重量部で示される。
【0223】
【表7】

【0224】
各サンプルの重合体成分は、表IIに示すように変えた。表IIには、該サンプルについて行った各種試験結果が一緒に示される。マスターバッチ及び最終バッチと名付けられた二つの混合セグメントで、各ゴム組成物を調製した。300グラムのバッチを配合するのに、ブラベンダーミキサーを用いた。マスターバッチの場合では、130℃の初期温度で60RPMのミキサー速度を用いた。5分の全混合時間を用い、ドロップ温度は160〜170℃の範囲であった。マスターバッチの直後に、その混合物を温度60℃で作動するミルに移し、ここで、それを混練し/シート状にし、その後、室温に冷却した。各マスターバッチの混練り加工の挙動は、ミル袋詰め、離型性、表面粗さ、及び刃の品質特性に基づいて評価された。ミキサーにマスターバッチと硬化剤とを同時に加えることで、最終バッチを混合した。初期ミキサー温度は70℃で、混合速度は40RPMであった。2.5分後、ミキサーから最終材料を取り出し、そのときの材料の温度は90〜100℃の間であった。60℃のミルを用いて、最終バッチを混練してシート状にした。各最終バッチの混練り加工の挙動は、ミル袋詰め、離型性、表面粗さ、及び刃の品質に基づいて評価された。混練り加工性の評価は、0(悪い)〜10(良好)の範囲に及び、マスターバッチ及び最終バッチの評価の平均に基づき、各ストックに割り当てられた。また、加熱プレスに置かれた標準的なモールド内で171℃にて15分間硬化させて、シート状のストックからボタン型サンプル(直径7.9mm×15mm)及びシート(15.24cm×15.24cm×0.19cm;15.24cm×15.24cm×0.25cm)を形成させた。
【0225】
【表8】

【0226】
ブタジエンゴムは、開始剤としてn-ブチルリチウムを、停止剤として水を用いたアニオン重合技術によって調製された。該重合体は、ビニルが11%で、シス-1,4が38%で、トランス1,4が51%で、Tgが-93℃で、Mnが96kg/molで、Mw/Mnが2.0であることを特徴とした。
【0227】
引張機械的性質は、ASTM−D 412により25℃で測定された。引裂機械的性質は、ASTM-D 624により171℃で測定された。
【0228】
生ストックのムーニー粘度の測定は130℃で行われた。サンプルを1分間予熱し、大きなローターの運動を開始し、回転の4分後にトルクを測定した。各マスターバッチの混練り加工の挙動は、ミル袋詰め、離型性、表面粗さ、及び刃の品質特性に基づいて評価された。各最終バッチの混練り加工の挙動は、ミル袋詰め、離型性、表面粗さ、及び刃の品質に基づいて評価された。混練り加工性の評価は、0(悪い)〜10(良好)の範囲に及び、マスターバッチ及び最終バッチの評価の平均に基づき、各ストックに割り当てられた。
【0229】
動的性質は、レオメトリックスダイナミックアナライザー(RDA)を用いて決定された。tanδ及びG'は、-100℃〜-10℃の範囲の温度では歪み0.5%で且つ-10℃〜100℃の範囲の温度では歪み2%で、振動数31.4rad/秒にて行われた温度掃引実験から得られた。
【0230】
試験サンプルの耐摩耗性は、ランボーン摩耗試験によって評価された。試験片は、外径約48mm、内径約22mm、厚み約4.8mmのゴムホイールである。試験片を車軸に置いて、駆動摩耗面に対してスリップ率65%で約75秒間走らせた。用いた摩耗面は、120粒度の3M−iteであった。試験中、ゴムホイールに約2.5kgの負荷をかけた。時間に応じた重量損失データに、線形の最小二乗法による曲線適合を適用する。線の傾きは、摩耗率である。報告された摩耗指数は、対照配合物の摩耗率を実験配合物の摩耗率で割って100を掛けたものである。従って、100より大きな摩耗指数は、実験配合物が対照配合物より優れる(低い速度で摩耗する)ことを示す。
【0231】
(例19−25)
先の例と同様な方法で、表IIIに示す官能化分岐重合体及び多分岐重合体(カップリングした星形)を用いて、ゴム組成物及び加硫ゴムを調製した。各サンプルの重合体成分を、該サンプルに行った各種試験結果と共に表IIIに示す。
【0232】
【表9】

【0233】
(例26−34)
先の例と同様な方法で、例11〜13の樹枝状にグラフトした重合体を用いて、ゴム組成物及び加硫ゴムを調製した。各サンプルの重合体成分を、該サンプルに行った各種試験結果と共に表IVに示す。
【0234】
【表10】

【0235】
(例35−36)
2ガロンの反応器に、ヘキサン3.05lbsとブタジエンブレンド(ヘキサン中22wt%)6.45lbsとを投入した。反応器のジャケットを80°Fに加熱した。バッチが74°Fに達したとき、1Mの水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)11mL、0.588Mのネオジムバーサチック酸塩1.87mL、0.09Mのニッケルオクトアート0.24mL及び1Mのジエチルアルミニウムクロリド3.3mLを同時に加えて、ヘキサン約20mLで希釈した。次に、反応器のジャケットを150°Fに加熱した。重合は、反応の35分後に188.1°Fに発熱した。30分後、バッチを210°Fに加熱した。分析のため、サンプルを落とした。反応器に過酸化ラウロイル溶液(0.044g/mLで203mL)を加えた。1時間後、バッチを冷却し、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノール中に落とした。その後、生成物を単離し、ドラム乾燥させた。以下に示すGPCの結果は、線状重合体のみが有効であり、従って、Mw及びMnの値は、近似値でしかない。
【0236】
【表11】

【0237】
2ガロンの反応器に、ヘキサン2.85lbsとブタジエンブレンド(ヘキサン中22wt%)6.65lbsとを投入した。反応器のジャケットを80°Fに加熱した。バッチが77°Fに達したとき、0.68Mのトリイソブチルアルミニウム(TIBA)35mL、0.498Mのネオジムバーサチック酸塩2.15mL、0.09Mのニッケルオクトアート0.24mL及び1Mのジエチルアルミニウムクロリド3.2mLを同時に加えて、ヘキサン約20mLで希釈した。次に、反応器のジャケットを180°Fに加熱した。重合は、反応の24分後に216.3°Fに発熱した。30分後、バッチを210°Fに加熱した。分析のため、サンプルを落とした。反応器に過酸化ラウロイル溶液(0.044g/Mlで115mL、203Ml)を加えた。1時間後、バッチを冷却し、BHT含有イソプロパノール中に落とした。その後、生成物を単離し、ドラム乾燥させた。以下に示すGPCの結果は、線状重合体のみが有効であり、従って、Mw及びMnの値は、近似値でしかない。
【0238】
【表12】

【0239】
例35〜36の分岐重合体を用いてゴム組成物を調製し、該ゴム組成物を硬化させて加硫ゴムとした。ゴム組成物の処方を表IXに与える。
【0240】
【表13】

【0241】
300グラムのバッチを配合するため、ブラベンダー内部ミキサーを用いた。マスターバッチの場合では、110℃の初期温度で60RPMのミキサー速度を用いた。5分の全混合時間を用い、ドロップ温度は160〜170℃の範囲であった。マスターバッチの直後に、その混合物を温度60℃で作動するミルに移し、ここで、それを混練し/シート状にし、その後、室温に冷却した。各マスターバッチの混練り加工の挙動は、ミル袋詰め、離型性、表面粗さ、及び刃の品質特性に基づいて評価された。ミキサーにマスターバッチと硬化剤とを同時に加えることで、最終バッチを混合した。初期ミキサー温度は70℃で、混合速度は40RPMであった。2.5分後、ミキサーから最終材料を取り出し、そのときの温度は90〜100℃の間であった。60℃のミルを用いて、最終バッチを混練してシート状にした。各最終バッチの混練り加工の挙動は、ミル袋詰め、離型性、表面粗さ、及び刃の品質に基づいて評価された。混練り加工性の評価は、0(悪い)〜10(良好)の範囲に及び、マスターバッチ及び最終バッチの評価の平均に基づき、各ストックに割り当てられた。生強度、粘着性、バウンドラバー、ムーニー粘度及びレオロジー硬化挙動を含めた、生(未硬化)の配合物の性質を試験した。また、加熱プレスに置かれた標準的なモールド内で171℃にて15分間硬化させて、シート状のストックからボタン型サンプル(直径9.4mm×長さ15mm)及びシート(15.24cm×15.24cm×0.19cm;15.24cm×15.24cm×0.25cm)を形成させた。硬化サンプルの機械的性質及び粘弾性特性を評価した。それらの試験結果を表Xに示す。ニッケル系触媒を用いて高シスポリブタジエン重合体を調製するために既知の技術を用いて合成した市販のニッケル重合体(Ni−BR)と、触媒成分としてネオジムバーサチック酸塩、トリイソブチルアルミニウム及びジエチルアルミニウムクロリドを用いて高シスポリブタジエンを調製するために既知の技術を用いて合成したネオジム重合体(Nd−BR)に対して、対照を作った。
【0242】
【表14】

【0243】
本発明の範囲と精神から逸脱しない様々な修正及び変更は、当業者に明らかになるだろう。本発明は、本願に示す実施態様に正当に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)骨格と、少なくとも二つの分岐点と、該分岐点のそれぞれから伸びる少なくとも二つの枝とを含む重合体であって、前記骨格が該骨格の絡み合い分子量の少なくとも2.5倍の長さであり、前記枝がそれぞれ該枝の絡み合い長さの少なくとも1倍の長さであり、前記骨格のガラス転移温度が0℃未満であり、前記骨格及び前記枝が互いに混和できる重合体、及び
(b)対向した末端を有する骨格と、一方の対向末端に位置する少なくとも一つの分岐点と、該少なくとも一つの分岐点から伸びる少なくとも二つの枝と、他方の対向末端にて充填剤と相互作用する官能基とを含む重合体であって、前記骨格が該骨格の絡み合い長さの少なくとも2.5倍の長さであり、前記枝がそれぞれ該枝の絡み合い長さの少なくとも1倍の長さであり、前記骨格のガラス転移温度が0℃未満であり、前記骨格及び前記枝が互いに混和できる重合体
よりなる群から選択される重合体の加硫物を含むタイヤ部品。
【請求項2】
重合体を製造する方法であって、
(a)モノ-リビング重合体であって、該モノ-リビング重合体の絡み合い長さの少なくとも1倍の長さである重合体を用意する工程と、
(b)前記モノ-リビング重合体を分岐剤と反応させる工程であって、前記分岐剤が少なくとも三つの反応部位を含み、前記反応部位の当量がモノ-リビング重合体のモルを超え、それにより、分岐停止剤を形成する工程と、
(c)前記分岐停止剤をジ-リビング重合体と反応させる工程であって、前記ジ-リビング重合体が該ジ-リビング重合体の絡み合い長さの少なくとも2.5倍の長さである工程と
を含む方法。
【請求項3】
重合体を製造する方法であって、
(a)単量体を、官能基を有するアニオン重合開始剤と接触させ、重合媒体を形成し、官能化リビング重合体を合成する工程と、
(b)前記官能化リビング重合体の合成を、該官能化リビング重合体が該官能化リビング重合体の絡み合い分子量の少なくとも2.5倍の長さとなるまで進めさせる工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記重合媒体に、追加の単量体と、非官能性のアニオン重合開始剤とを加えて、非官能化リビング重合体を合成する工程と、
(d)前記非官能化リビング重合体の合成を、該非官能化リビング重合体が該非官能化リビング重合体の絡み合い分子量の少なくとも1倍の長さとなるまで進めさせる工程と、
(e)前記工程(d)の後、前記重合媒体に、カップリング剤を加える工程であって、前記カップリング剤が少なくとも三つの反応部位を含む工程と
を含む方法。
【請求項4】
重合体を製造する方法であって、
(a)複数の重合体分子を用意する工程であって、前記重合体分子が、少なくとも一つの分岐点を有する枝分れ分子を含み、少なくとも三つの枝が前記少なくとも一つの分岐点から伸び、前記枝が該枝の絡み合い分子量の少なくとも1倍の長さである工程と、
(b)重合媒体にフリーラジカル開始剤を加える工程と
を含む方法。
【請求項5】
重合体を製造する方法であって、
(a)単量体を、アニオン重合開始剤と接触させ、重合媒体を形成し、リビング重合体を合成する工程と、
(b)前記リビング重合体の合成を、該リビング重合体が該リビング重合体の絡み合い分子量の少なくとも1倍の長さとなるまで進めさせる工程と、
(c)前記重合媒体に、グラフト化剤と、連鎖移動剤と、任意に追加の単量体とを加える工程であって、グラフト化剤対アニオン重合開始剤の比が約0.1対1〜約2対1であり、連鎖移動剤対グラフト化剤の比が約0.25対1〜約2対1である工程と
を含む方法。
【請求項6】
分岐重合体を製造する方法であって、
(a)共役ジエン単量体を、(i)ランタニド化合物、(ii)アルキル化剤、(iii)ニッケル含有化合物及び(iv)ハロゲン源の組み合わせ又は反応生成物である触媒系で重合させて、高シスポリジエンを形成させる工程と、
(b)前記高シスポリジエンをフリーラジカル源でカップリングする工程と
を含む方法。
【請求項7】
更に、得られる重合体を水素化する工程を含むことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載のタイヤ又は請求項2〜7のいずれかに記載の方法によって調製した重合体の加硫物を含むタイヤ部品。
【請求項9】
前記カップリング工程が、高シスポリジエンを溶解する有機溶媒中で行われることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記重合工程が有機溶媒中で行われ、前記高シスポリジエン及び触媒を前記カップリング工程の前に失活させることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記骨格が該骨格の絡み合い長さの少なくとも3倍の長さであり、前記枝がそれぞれ該枝の絡み合い長さの少なくとも1.5倍の長さであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記骨格が該骨格の絡み合い長さの少なくとも4倍の長さであり、前記枝がそれぞれ該枝の絡み合い長さの少なくとも2倍の長さであることを特徴とする請求項11に記載のタイヤ。
【請求項13】
(a)骨格と、少なくとも二つの分岐点と、該分岐点のそれぞれから伸びる少なくとも二つの枝とを含む重合体であって、前記骨格が該骨格の絡み合い分子量の少なくとも2.5倍の長さであり、前記枝がそれぞれ該枝の絡み合い長さの少なくとも1倍の長さであり、前記骨格のガラス転移温度が0℃未満であり、前記骨格及び前記枝が互いに混和できる重合体、及び
(b)対向した末端を有する骨格と、一方の対向末端に位置する少なくとも一つの分岐点と、該少なくとも一つの分岐点から伸びる少なくとも二つの枝と、他方の対向末端にて充填剤と相互作用する官能基とを含む重合体であって、前記骨格が該骨格の絡み合い長さの少なくとも2.5倍の長さであり、前記枝がそれぞれ該枝の絡み合い長さの少なくとも1倍の長さであり、前記骨格のガラス転移温度が0℃未満であり、前記骨格及び前記枝が互いに混和できる重合体
よりなる群から選択される分岐重合体を含む重合体組成物の加硫物を含むタイヤ部品。
【請求項14】
ゴム組成物が、前記分岐重合体に加えて、不飽和重合体を含み、前記分岐重合体が水素化されることを特徴とする請求項13に記載のタイヤ。

【公表番号】特表2010−506002(P2010−506002A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531480(P2009−531480)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/021476
【国際公開番号】WO2008/045372
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】