説明

分断装置

【課題】長尺な脆性板材であるワークが、スクライブ加工により幅方向において横断する複数のスクライブ線のみに沿って分断する装置において、ワークを上下反転させるとともにワークを押す各機構を効率的に配置でき、装置を簡素化及び小型化できること。
【解決手段】分断装置1において、反転装置20は、主経路R1の方向に交差する装置幅方向に横断する複数のスクライブ線Lsが形成されたワーク9を、主経路R1上の反転位置P2で上下反転させる。第二支持台横移動機構34及び第二支持台縦移動機構35は、反転後のワーク9が固定された第二支持台33を、反転位置P2から主経路R1に並列する副経路R2へ移動させ、さらに副経路R2に沿って移動させた後、副経路R2から主経路R1上の送出位置P3まで移動させる。ブレイク装置30は、第二支持台33が副経路R2に沿って移動する途中において、ワーク9をスクライブ線Lsに沿って押す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性板材にスクライブ線を形成し、脆性板材をスクライブ線に沿って脆性破壊させることにより複数の要素板材に分断する分断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ又は平面表示パネルを構成するガラス基板などの脆性板材は、スクライブ加工を行う分断装置によって複数の要素板材に分断することができる。脆性板材は、脆性材料で構成される板状の部材であり、脆性材料には、半導体、ガラス、石英及びセラミックなどが含まれる。なお、平面表示パネルは、例えば、液晶表示パネル及び有機EL(electroluminescence)パネルなどである。
【0003】
スクライブ加工を行う従来の分断装置は、例えば、特許文献1及び特許文献2などに示されている。スクライブ加工は、スクライブ工程とブレイク工程とにより実現される。
【0004】
スクライブ工程は、脆性板材の表面に対し、複数の要素板材の境界線に沿ってスクライブ線を形成する工程である。スクライブ線は、脆性板材における一の縁から他の縁まで直線状又は曲線状に形成される亀裂である。また、スクライブ線は、ダイヤモンドなどの高硬度の切刃が脆性板材の表面を摺動又は転動することにより、或いはレーザ光により形成される。
【0005】
以下、切刃又はレーザ光の出射部など、脆性板材にスクライブ線を形成する作用点のことをスクライブ加工端と称する。なお、切刃は、例えば、円盤状の回転体の外周部分に円環状のダイヤモンドの刃が形成され、脆性板材の表面に接して転動するスクライビングホイール、或いは、脆性板材の表面を摺動するダイヤモンドポイントなどである。
【0006】
ブレイク工程は、脆性板材におけるスクライブ線が形成された面の反対側の面に対しスクライブ線に沿ってブレイクバーを押し付けて圧力を加えることにより、脆性板材をスクライブ線に沿って脆性破壊させる工程である。ブレイク工程で用いられるブレイクバーは、先端がスクライブ線に沿う稜線を形成する部材である。脆性板材は、スクライブ線にそって脆性破壊すること、即ち、一方の面に形成されたスクライブ線(線状の亀裂)が反対側の面まで進展することにより、スクライブ線に沿って複数の要素板材へ分断される。
【0007】
また、液晶表示パネルの母材となるガラス基板は、2枚のガラス板が液晶層を挟んで重ねられた構造を有する。このような二重構造の脆性板材は、特許文献1に示されるように、2枚のガラス板各々についてスクライブ工程とブレイク工程とが施されることによって複数の要素板材へ分断される。
【0008】
また、特許文献1及び特許文献2に示されるスクライブ加工においては、脆性板材を横断するスクライブ線と脆性板材を縦断するスクライブ線とが、相互に交差する状態で形成される。
【0009】
ところで、携帯電話又はスマートフォンが備える小型の平面表示パネルなどのように比較的小さなパネル部品の製造工程においては、幅が狭く長尺な脆性板材が、幅方向において横断するスクライブ線においてのみ分断されることがある。この場合、スクライブ工程において、長尺な脆性板材を幅方向において横断するスクライブ線のみが形成される。以下、そのようなスクライブ工程を含むスクライブ加工のことを、横断型スクライブ加工と称する。
【0010】
図8及び図9は、特許文献1及び特許文献2に示される従来の分断装置が脆性板材の横断型スクライブ加工に適用された例である、第1従来例に係る分断工程及び第2従来例に係る分断工程各々の模式図である。図8及び図9に示される分断工程において、加工対象の脆性板材であるワーク9は、スクライブ工程及びブレイク工程を含む複数の工程に亘る直線状の主経路R1に沿って移送される。
【0011】
なお、図8及び図9に示される座標軸において、X軸方向は、主経路R1が沿う直線方向であり、Y軸方向は主経路R1の方向に直交する幅方向であり、Z軸方向は、主経路R1の方向及び幅方向に直交する高さ方向である。
【0012】
図8(a)及び図8(b)は、それぞれ第1従来例に係る分断工程におけるスクライブ工程の実行前の状態及び実行後の状態を示す図である。第1従来例におけるスクライブ工程では、幅方向(Y軸方向)において往復移動するスクライブ加工端101を備えたスクライブ装置100Aが用いられる。
【0013】
第1従来例におけるスクライブ工程では、ワーク9は、その長手方向が主経路R1の方向に沿う状態で、主経路R1に沿って一定距離ずつ搬送される。さらに、スクライブ加工端101は、ワーク9が一定距離ずつ搬送されるごとに幅方向に沿って移動することにより、ワーク9の一方の面に対してワーク9を横断する複数の平行なスクライブ線Lsを形成する。
【0014】
また、第1従来例においては、スクライブ工程の後に反転工程が実行される。図8(c)は、反転工程を示す図である。反転工程では、反転機構200が、複数のスクライブ線Lsが形成されたワーク9を上下反転させる。
【0015】
さらに、第1従来例においては、反転工程の後にブレイク工程が実行される。図8(d)は、ブレイク工程が実行された後の状態を示す図である。第1従来例におけるブレイク工程では、幅方向(Y軸方向)に沿って支持されるとともに高さ方向(Z軸方向)において往復移動するブレイクバー301を備えたブレイク装置300が用いられる。
【0016】
第1従来例におけるスクライブ工程では、ワーク9は、その長手方向が主経路R1の方向に沿う状態で、主経路R1に沿って一定距離ずつ搬送される。さらに、ブレイクバー301は、ワーク9が一定距離ずつ搬送されるごとに高さ方向において移動することによりワーク9の他方の面をスクライブ線Lsに沿って押す。これにより、ワーク9は、複数のスクライブ線Ls各々に沿って脆性破壊し、複数の要素板材91へ分断される。
【0017】
なお、ワーク9の他方の面は、ワーク9におけるスクライブ線Lsが形成された面に対して反対側の面である。
【0018】
次に、第2従来例について説明する。図9(a)及び図9(b)は、それぞれ第2従来例に係る分断工程におけるスクライブ工程の実行前の状態及び実行後の状態を示す図である。第2従来例におけるスクライブ工程では、幅方向(Y軸方向)に沿って間隔を空けて配列された複数のスクライブ加工端101を備えたスクライブ装置100Bが用いられる。
【0019】
第2従来例におけるスクライブ工程では、ワーク9は、その長手方向が主経路R1の方向に直交する方向(Y軸方向)に沿う状態で主経路R1に沿って搬送される。さらに、複数のスクライブ加工端101は、主経路R1に沿って移動中のワーク9の一方の面に対してワーク9を横断する複数の平行なスクライブ線Lsを形成する。
【0020】
また、第2従来例においては、スクライブ工程の後に方向転換工程が実行される。図9(c)は、方向転換工程を示す図である。方向転換工程では、方向転換機構400が、複数のスクライブ線Lsが形成されたワーク9を回転させ、ワーク9の向きを90°変更する。
【0021】
そして、第2従来例においては、方向転換工程の後に、第1従来例と同様に反転工程及びブレイク工程が実行される。図9(d)は反転工程を示す図であり、図9(e)はブレイク工程が実行された後の状態を示す図である。第2従来例における反転工程及びブレイク工程の内容は、前述した第1従来例における反転工程及びブレイク工程の内容と同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2006−315901号公報
【特許文献2】特開2003−292333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、第1従来例及び第2従来例のいずれにおいても、反転工程とブレイク工程とが、1本の主経路R1上における上流側の位置と下流側の位置とにおいて実行される。この場合、反転装置200とブレイク装置300とは、相互干渉を避けるとともに各装置のメンテナンススペースを確保するために、主経路R1の方向において十分な間隔を空けて配置されなければならない。
【0024】
従って、第1従来例及び第2従来例は、反転装置200及びブレイク装置30の全体の主経路方向における寸法、即ち、長手方向の寸法が大きくなるという問題点を有している。
【0025】
さらに、第2従来例は、脆性板材の長さが長いほど、主経路R1の方向に直交する幅方向(Y軸方向)における分断装置の寸法が大きくなるという問題点も有している。なお、図8に示される第1従来例が採用された場合、幅方向における分断装置の寸法を小さくできる。
【0026】
また、第2従来例は、脆性板材を方向転換させる機構及び工程を要する分だけ分断装置が大型化及び複雑化するとともに分断工程に要する時間が長くなる、という問題点も有している。
【0027】
また、第1従来例は、脆性板材(ワーク9)の分断数が多いほど、即ち、スクライブ線Lsの数が多いほど、スクライブ工程に要する時間が長くなるという問題点も有している。
【0028】
本発明の目的は、長尺な脆性板材が、スクライブ加工により幅方向において横断する複数のスクライブ線のみに沿って分断される場合に、脆性板材を上下反転させる機構及び脆性板材をスクライブ線に沿って押す機構を含む各機構を効率的に配置でき、分断装置を簡素化及び小型化できることである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
第1発明に係る分断装置は、第一方向に沿う主経路における複数の位置へ順次移送される脆性板材にスクライブ線を形成し、脆性板材をスクライブ線に沿って脆性破壊させることにより複数の要素板材に分断する装置であり、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、前記第一方向に対し交差する第二方向において横断する複数の前記スクライブ線が第一の面に形成された前記脆性板材を、前記主経路における所定の反転位置において上下反転させる反転機構である。
(2)第2の構成要素は、前記反転機構により反転された前記脆性板材を支持して固定する支持台である。
(3)第3の構成要素は、前記支持台を前記反転位置から前記主経路に並列する副経路における副経路開始位置まで移動させ、さらに前記支持台を前記副経路に沿って前記副経路開始位置から副経路終了位置まで移動させた後、前記支持台を前記副経路終了位置から前記主経路における所定の送出位置まで移動させる支持台移動機構である。
(4)第4の構成要素は、前記支持台が前記副経路に沿って移動する途中において、前記支持台に固定された前記脆性板材における前記第一の面の反対側の第二の面を前記スクライブ線に沿って押すことにより前記脆性板材を複数の前記要素板材に分断する押圧機構である。
【0030】
第2発明に係る分断装置は、第1発明に係る分断装置の構成に加え、さらに以下の構成を備える。即ち、第2発明に係る分断装置において、前記反転機構と前記押圧機構とが、前記第一方向に直交する方向から見て少なくとも一部が重なる位置に配置されている。
【0031】
第3発明に係る分断装置は、第1発明又は第2発明に係る分断装置の構成に加え、さらに以下の構成を備える。即ち、第3発明に係る分断装置は、以下に示される一連のフレーム及び移動支持部を含む移送機構をさらに備える。前記一連のフレームは、前記主経路の左右両側のうちの一方の側方において、前記第一方向における前記反転位置から前記送出位置までの範囲のさらに両側に至る範囲に亘って前記第一方向に沿って形成された部材である。前記移動支持部は、前記一連のフレームによって前記第一方向に沿って移動可能に支持され、前記脆性板材を支持する状態と前記脆性板材の支持を解除する状態とに選択的に切り替わり、前記脆性板材を前記主経路における複数の位置へ順次移送する機構である。
【0032】
第4発明に係る分断装置は、第1発明に係る分断装置の構成に加え、脆性板材に複数のスクライブ線を形成するための特徴的な構成をさらに備える。即ち、第4発明に係る分断装置は、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、前記脆性板材を支持して固定する第一支持台である。
(2)第2の構成要素は、前記第一支持台を前記主経路における所定の加工基準位置から前記第一方向に対し交差する第二方向において往復移動させる第一支持台移動機構である。
(3)第3の構成要素は、前記脆性板材に対して前記スクライブ線を形成する複数のスクライブ加工端である。
(4)第4の構成要素は、複数の前記スクライブ加工端各々を、前記第一方向に沿って間隔を空けて支持するとともに、前記第一支持台移動機構により移動中の前記第一支持台に固定された前記脆性板材に対して前記スクライブ線を形成可能な加工位置で保持する加工端支持機構である。
(5)第5の構成要素は、前記第一方向に対し交差する第二方向において横断する複数の前記スクライブ線が第一の面に形成された前記脆性板材を、前記主経路における前記加工基準位置よりも移送方向下流側の反転位置において上下反転させる反転機構である。
(6)第6の構成要素は、前記反転機構により反転された前記脆性板材を支持して固定する第二支持台である。
(7)第7の構成要素は、前記第二支持台を前記反転位置から前記主経路に並列する副経路における副経路開始位置まで移動させ、さらに前記支持台を前記副経路に沿って前記副経路開始位置から副経路終了位置まで移動させた後、前記支持台を前記副経路終了位置から前記主経路における所定の送出位置まで移動させる第二支持台移動機構である。
(8)第8の構成要素は、前記第二支持台が前記副経路に沿って移動する途中において、前記第二支持台に固定された前記脆性板材における前記第一の面の反対側の第二の面を前記スクライブ線に沿って押すことにより前記脆性板材を複数の前記要素板材に分断する押圧機構である。
【発明の効果】
【0033】
第1発明において、押圧機構は、脆性板材をスクライブ線に沿って複数の要素板材に分断するブレイク工程を実行する機構である。また、反転機構は、スクライブ線が形成された脆性板材を上限反転させる反転工程を実行する機構である。また、主経路は、反転工程及びブレイク工程の前工程から後工程に亘る脆性板材の移送経路である。
【0034】
第1発明において、反転機構による反転工程は、主経路上の反転位置で実行され、押圧機構によるブレイク工程は、主経路に並列する副経路において実行される。即ち、第1発明における反転機構及び押圧機構は、主経路の方向に直交する方向(幅方向)における位置をずらして配置される。従って、第1発明によれば、反転機構及びブレイク装置を構成する押圧機構の相互干渉を避けるとともに各機構のメンテナンススペースを確保しつつ、反転機構及び押圧機構の全体の主経路方向における寸法、即ち、長手方向の寸法を小さくすることができる。
【0035】
また、一般的に、幅方向に横断するスクライブ線のみが形成される長尺な脆性板材は、格子状のスクライブ線が形成される脆性板材とは異なり、比較的小さく軽量である。従って、第1発明における支持台移動機構は、比較的小型で簡素な機構により実現可能である。
【0036】
また、第1発明においては、脆性板材が長尺な板材である場合、その脆性板材は、長手方向が第一方向(主経路の方向)に沿う状態で移送される。そして、支持台移動機構は、脆性板材が固定された支持台を、脆性板材の幅方向において、主経路上の所定の位置から脆性板材の小さな幅より若干長い程度の短い距離だけ移動させればよい。従って、第1発明によれば、移送方向に直交する幅方向における分断装置の寸法は、脆性板材の長さに関わらず、比較的小さく抑えられる。
【0037】
また、第2発明によれば、反転機構及び押圧機構の全体の主経路方向における寸法をより小さくすることができる。
【0038】
また、第3発明によれば、脆性板材を主経路に沿って移送する移送機構において、脆性板材を支持する移動支持部を移動可能に支持するフレームが、第一方向において、反転位置よりも上流側から送出位置よりも下流側に至る広い範囲に渡って一連に形成されている。その結果、移送機構の構成が簡素化される。
【0039】
なお、本発明において、支持台は、押圧機構によるブレイク工程の終了後、支持台移動機構によって副経路上の位置から主経路上の送出位置へ戻される。そのため、移送機構は、脆性板材を1本の主経路に沿ってのみ移送できれば足りる。
【0040】
以上に示したように、第1発明によれば、長尺な脆性板材が、スクライブ加工によって幅方向に沿うスクライブ線においてのみ分断される場合に、分断装置を簡素化及び小型化できる。
【0041】
また、第4発明においては、複数のスクライブ加工端が加工位置で保持された状態で、脆性板材は、支持台移動機構により、移送方向である第一方向に対して交差する第二方向(幅方向)において移動する。従って、第1発明によれば、第二方向において脆性板材を横断する複数のスクライブ線が、移動中の脆性板材の表面に対して同時に形成される。その結果、スクライブ工程に要する時間は、1つのスクライブ加工端がスクライブ線の本数に応じた回数だけ往復移動する第1従来例(図8参照)に比べ大幅に短縮される。
【0042】
また、第4発明によれば、脆性板材の長手方向が第一方向(主経路の方向)に沿う状態のままでスクライブ線が形成されるため、図9に示される第2従来例のように脆性板材を方向転換させる機構及び工程を要さない。従って、脆性板材の方向転換のために分断装置が大型化及び複雑化するとともに分断工程に要する時間が長くなる、という問題も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る分断装置1の平面図である。
【図2】分断装置1が備えるスクライブ装置10の斜視図である。
【図3】分断装置1が備える反転装置20の斜視図である。
【図4】分断装置1が備えるブレイク装置30の斜視図である。
【図5】分断装置1が備える移送装置40の斜視図である。
【図6】分断装置1による受入工程及びスクライブ工程を表す模式図である。
【図7】分断装置1による反転工程及びブレイク工程を表す模式図である。
【図8】第1従来例に係る分断工程の模式図である。
【図9】第2従来例に係る分断工程の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0045】
<実施形態>
まず、図1から図5を参照しつつ、本発明の実施形態に係る分断装置1の構成について説明する。分断装置1は、加工対象の脆性板材であるワーク9に対してスクライブ加工を施すことにより、ワーク9を複数の要素板材91に分断する装置である。より具体的には、分断装置1は、所定の主経路R1における複数の位置へ順次移送されるワーク9にスクライブ線Lsを形成し、ワーク9をスクライブ線Lsに沿って脆性破壊させることにより複数の要素板材91に分断する。
【0046】
本実施形態において、ワーク9は、幅が狭く長尺な矩形状の脆性板材である。また、長尺なワーク9は、分断装置1により、幅方向において横断する複数のスクライブ線Lsが形成され、これら複数のスクライブ線Lsにおいてのみ分断される。なお、脆性板材は、脆性材料で構成される板状の部材であり、脆性材料には、半導体、ガラス、石英及びセラミックなどが含まれる。
【0047】
図1に示されるように、分断装置1は、スクライブ装置10、反転装置20、ブレイク装置30及び移送装置40を備える。
【0048】
<移送装置>
移送装置40は、ワーク9を予め定められた直線方向に沿う主経路R1における複数の位置へ順次移送する装置である。より具体的には、移送装置40は、ワーク9を主経路R1における受入位置P0から加工基準位置P1へ移送し、さらに、ワーク9を加工基準位置P1から反転位置P2へ移送する。また、移送装置40は、後述するブレイク装置30によって反転位置P2から送出位置P3へ移動したワーク9を、送出位置P3からさらに下流側の位置へ移送する。
【0049】
即ち、主経路R1において、ワーク9の移送方向における上流側から下流側へ、受入位置P0、加工基準位置P1、反転位置P2及び送出位置P3の順番で各位置が並んでいる。
【0050】
以下の説明において、水平面内において主経路R1が沿う直線方向のことを主経路方向と称する。また、水平面内において主経路方向に直交する方向を装置幅方向と称する。また、主経路方向及び装置幅方向に直交する方向を高さ方向と称する。なお、各図に示される座標軸における、X軸方向が主経路方向であり、Y軸方向が装置幅方向であり、Z軸方向が高さ方向である。
【0051】
図1及び図5に示されるように、移送装置40は、一連のフレーム41と移動支持機構42とを備える。一連のフレーム41は、主経路R1の左右両側のうちの一方の側方において、主経路方向に沿って形成された一連の部材である。この一連のフレーム41は、主経路方向における受入位置P0から送出位置P3よりもさらに後工程側に至る範囲に渡って一連に形成されている。
【0052】
なお、本実施形態において一連のフレーム41が主経路方向において占める範囲は、加工基準位置P1の両側に至る範囲の一例であるとともに、反転位置P2から送出位置P3までの範囲のさらに両側に至る範囲の一例でもある。
【0053】
一方、移動支持機構42は、一連のフレーム41によって主経路方向に沿って移動可能に支持された機構である。移動支持機構42は、真空吸着によってワーク9を支持する状態と、真空吸着によるワーク9の支持を解除する状態とに選択的に切り替わる。そして、移動支持機構42は、ワーク9を吸着支持した状態で一連のフレーム41に沿って目的位置まで移動し、目的位置において、ワーク9の吸着支持を解除する。これにより、移動支持機構42は、ワーク9を主経路R1における複数の位置へ順次移送する。
【0054】
より具体的には、図5に示されるように、移動支持機構42は、ワーク保持部421、昇降機構422及び走行機構423を備える。走行機構423は、ワーク保持部421及び昇降機構422を一連のフレーム41に沿って移送開始位置から目的位置へ移動させる。昇降機構422は、移送開始位置及び目的位置各々において、ワーク保持部421を一旦降下させた後に上昇させる。
【0055】
昇降機構422は、例えば、サーボモータ又はエアシリンダなどにより構成される。また、走行機構423は、サーボモータなどにより構成される。
【0056】
ワーク保持部421は、受入位置P0において、昇降機構422によりワーク9の高さまで降ろされたときにワーク9を吸着して保持する。さらに、ワーク保持部421は、目的位置において、昇降機構422により目的の高さまで降ろされたときにワーク9の吸着を解除する。
【0057】
ワーク保持部421におけるワーク9に接する面は、長尺なワーク9を無駄なく効率的に支持できるように、主経路方向(X軸方向)の寸法が装置幅方向(Y軸方向)の寸法よりも大きく形成されている。そして、移送装置40は、長尺なワーク9をその長手方向が主経路方向に沿う状態で、主経路R1に沿って移送する。
【0058】
また、ワーク9は、加工基準位置P1から送出位置P3まで移送される途中において、その長手方向が主経路方向に対して交差する方向に向く状態へ方向転換されることはない。
【0059】
なお、図5に示される例では、移動支持機構42が、一連のフレーム41に対して2つの移動支持機構42を備える。しかしながら、移動支持機構42が、一連のフレーム41に対して1つの移動支持機構42を備えること、又は一連のフレーム41に対して3つ以上の移動支持機構42を備えることも考えられる。
【0060】
<スクライブ装置>
スクライブ装置10は、移送装置40によって加工基準位置P1に移送されたワーク9の一方の面にスクライブ線Lsを形成する装置である。以下の説明において、ワーク9におけるスクライブ線Lsが形成される側の面のことを第一面と称する。また、ワーク9におけるスクライブ線Lsが形成された面の反対側の面のことを第二面と称する。
【0061】
図1及び図2に示されるように、スクライブ装置10は、複数の切刃11、ビーム12、第一支持台13、第一支持台移動機構14、昇降機構15及び位置調節機構16を備える。
【0062】
第一支持台13は、ワーク9を下方から支持するとともに、ワーク9を真空吸着によって固定する台である。加工対象となるワーク9が長尺な矩形状であるため、第一支持台13は、長尺なワーク9を無駄なく効率的に支持できるように、主経路方向(X軸方向)の寸法が装置幅方向(Y軸方向)の寸法よりも大きく形成されている。ワーク9は、移送装置40によって第一支持台13上に載置される。
【0063】
第一支持台移動機構14は、第一支持台13を主経路R1における加工基準位置P1から主経路方向(X軸方向)に対し交差する方向において往復移動させる機構である。本実施形態においては、第一支持台移動機構14は、第一支持台13を加工基準位置P1から装置幅方向(Y軸方向)において往復移動させる。なお、装置幅方向は第二方向の一例である。
【0064】
より具体的には、第一支持台移動機構14は、第一支持台13を装置幅方向において移動可能に支持する一対のレール141と、一対のレール141により支持された第一支持台13を一対のレール141に沿って直線移動させる機構であるボールねじ142と、ボールねじ142を駆動する駆動装置143とを備える。
【0065】
なお、第一支持台移動機構14は、サーボモータなどにより構成される他の機構であってもかまわない。
【0066】
切刃11は、ワーク9に接してスクライブ線Lsを刻む切削具であり、ワーク9に対してスクライブ線Lsを形成するスクライブ加工端の一例である。切刃11は、例えば、円盤状の回転体の外周部分に円環状のダイヤモンドの刃が形成され、ワーク9の表面に接して転動するスクライビングホイール、或いは、ワーク9の表面を摺動するダイヤモンドポイントなどである。
【0067】
なお、図1及び図2に示される例では、スクライブ装置10は、3つの切刃11を備えるが、スクライブ装置10が、2つの切刃11又は4つ以上の切刃11を備えることも考えられる。
【0068】
ビーム12は、複数の切刃11各々を、主経路方向に沿って、即ち、主経路R1に対して平行に、間隔を空けて支持する部材である。ビーム12は、例えば、長手方向が主経路方向に沿う状態で支柱により支持された棒状の金属部材である。
【0069】
また、昇降機構15は、複数の切刃11各々を、第一支持台移動機構14により往路及び復路のうちの一方を移動中の第一支持台13に固定されたワーク9に対して接する加工位置とワーク9から離隔する退避位置とに選択的に保持する機構である。昇降機構15は、例えば、サーボモータ又はエアシリンダなどにより構成される。
【0070】
位置調節機構16は、複数の切刃11各々の主経路方向(X軸方向)における位置を調節する機構である。位置調節機構16は、ワーク9に形成されるべき複数のスクライブ線Ls各々の位置に応じて、複数の切刃11各々の主経路方向における位置を調節する。なお、ビーム12、昇降機構15及び位置調節機構16は、加工端支持機構の一例である。
【0071】
ところで、複数の切刃11を支持するビーム12及びビーム12を支持する支柱は、高い剛性が求められるため、太く重い部材となる。従って、そのような重い部材を複数の切刃11とともに装置幅方向に移動させる機構を設けることは、装置の大型化を招くため実用的でない。
【0072】
<反転装置>
反転装置20は、第一面において装置幅方向において横断するスクライブ線Lsが形成されたワーク9を、主経路R1における反転位置P2において上下反転させる機構を備えた装置である。より具体的には、図1及び図3に示されるように、反転装置20は、反転台21、回転駆動部22、可動支持部材23及び昇降機構24を備える。
【0073】
反転台21は、反転位置P2において、移送装置40によって移送されてきたワーク9を真空吸着により保持する台である。また、昇降機構24は、反転位置P2において、可動支持部23を反転位置P2における所定の受け取り高さからそれより下方の引き渡し高さまで一旦降下させた後に上昇させる。
【0074】
可動支持部材23は、回転駆動部22を支持する部材である。回転駆動部22は、可動支持部23が受け取り高さに位置するときに反転台21を主経路方向に沿う回転軸の周りに180°回転させ、反転台21を上下反転させる。これにより、反転台21とともに反転台21に保持されたワーク9も上下反転する。さらに、回転駆動部22は、可動支持部23が引き渡し高さの位置から受け取り高さの位置まで上昇する途中、又は受け取り高さの位置に戻ったときに、反転台21を元の状態に戻す。
【0075】
また、反転台21は、可動支持部23が受け取り高さに位置するときに、移送装置40により反転位置P2に移送されてきたワーク9を吸着して保持する。さらに、反転台21は、可動支持部23が引き渡し高さに位置するときにワーク9の吸着を解除する。
【0076】
反転台21は、長尺なワーク9を無駄なく効率的に支持できるように、主経路方向(X軸方向)の寸法が装置幅方向(Y軸方向)の寸法よりも大きく形成されている。
【0077】
なお、可動支持部23が引き渡し高さに位置する状態において、反転台21は、後述する第二支持台33に近接した状態となる。従って、反転台21による保持が解除されたワーク9は、第二支持台33上に載置される。
【0078】
回転駆動部22は、例えば、サーボモータなどにより構成される。また、昇降機構24は、例えば、エアシリンダ又はサーボモータなどにより構成される。
【0079】
<ブレイク装置>
ブレイク装置30は、前工程において複数のスクライブ線Lsが形成されたワーク9をスクライブ線Ls各々に沿って脆性破壊させることにより、ワーク9を複数の要素板材91に分断する装置である。
【0080】
図1及び図4に示されるように、ブレイク装置30は、ブレイクバー31、昇降機構32、第二支持台33、第二支持台横移動機構34及び第二支持台縦移動機構35を備える。
【0081】
第二支持台33は、反転装置20により反転されたワーク9を下方から支持するとともに、ワーク9を真空吸着によって固定する台である。加工対象となるワーク9が長尺な矩形状であるため、第二支持台33は、長尺なワーク9を無駄なく効率的に支持できるように、主経路方向(X軸方向)の寸法が装置幅方向(Y軸方向)の寸法よりも大きく形成されている。ワーク9は、反転装置20によって第二支持台33上に載置される。
【0082】
第二支持台横移動機構34は、第二支持台33を、主経路R1上の位置と主経路R1に並列する副経路R2上の位置との間で装置幅方向において移動させる機構である。副経路R2は、主経路R1に対して平行に並列し、主経路R1よりも短い経路である。一方、第二支持台縦移動機構35は、第二支持台33を、副経路R2に沿って移動させる機構である。
【0083】
より具体的には、第二支持台横移動機構34は、第二支持台33を装置幅方向において移動可能に支持する一対のレール341と、一対のレール341により支持された第二支持台33を一対のレール341に沿って直線移動させる機構であるボールねじ342と、ボールねじ342を駆動する駆動装置343とを備える。なお、第二支持台横移動機構34は、基台部344によって支持されている。
【0084】
一方、第二支持台縦移動機構35は、第二支持台横移動機構34の基台部344を移送方向において移動可能に支持する一対のレール351と、一対のレール351により支持された基台部344を一対のレール351に沿って直線移動させる機構であるボールねじ352と、ボールねじ352を駆動する駆動装置353とを備える。
【0085】
反転装置20により反転されたワーク9が、第二支持台33に固定されると、第二支持台横移動機構34は、第二支持台33を反転位置P2から副経路R2における副経路開始位置P4まで移動させる。なお、図1において、第二支持台33が副経路開始位置P4に位置するときの第二支持台横移動機構34が、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0086】
続いて、第二支持台縦移動機構35が、第二支持台33を副経路R2に沿って副経路開始位置P4から副経路終了位置P5まで移動させる。さらに続いて、第二支持台横移動機構34が、第二支持台33を副経路終了位置P5から主経路R1における送出位置P3まで移動させる。
【0087】
なお、第二支持台33は、送出位置P3へ移動された後、第二支持台縦移動機構35により、主経路R1における反転位置P2まで戻される。
【0088】
ブレイクバー31は、先端がスクライブ線Lsに沿う稜線を形成する部材である。本実施形態においては、直線状のスクライブ線Lsがワーク9に形成されるため、ブレイクバー31の先端は、直線状の稜線を形成している。
【0089】
ブレイクバー31は、先端が形成する稜線が副経路R2を横断する向きで、昇降機構32により支持されている。ブレイクバー31は、先端が形成する稜線が主経路方向に交差する方向に沿う状態で昇降可能に支持されている。
【0090】
昇降機構32は、副経路R2において、ブレイクバー31を第二支持台33上のワーク9の第二面(上側の面)に接する加圧位置とワーク9から離隔する待避位置とに選択的に保持する機構である。昇降機構32は、例えば、サーボモータ又はエアシリンダなどにより構成される。
【0091】
より具体的には、昇降機構32は、第二支持台33が副経路R2に沿って移動する途中において、ブレイクバー31を、第二支持台33に固定されたワーク9における第二面に対し、複数のスクライブ線Ls各々に沿って順次押し付ける。即ち、昇降機構32は、ブレイクバー31の直下にワーク9における複数のスクライブ線Ls各々が到達するごとに、ブレイクバー31を待避位置から加圧位置へ降下させた後に待避位置へ上昇させる。
【0092】
昇降機構32が、ワーク9の第二面に対しブレイクバー31の先端をスクライブ線Lsに沿って適切な圧力で押し付けると、ワーク9は、スクライブ線Lsに沿って脆性破壊し、複数の要素板材91に分断される。
【0093】
以上に示したように、ブレイクバー31及び昇降機構32は、第二支持台33が副経路R2に沿って移動する途中において、第二支持台33に固定されたワーク9における第二面をスクライブ線Lsに沿って押すことによりワーク9を複数の要素板材91に分断する押圧機構を構成している。
【0094】
また、図1に示されるように、反転装置20と、押圧機構を構成する昇降機構32及びブレイクバー31とは、装置幅方向(Y軸方向)から見て一部が重なる位置に配置されている。
【0095】
<分断工程>
次に、図6及び図7を参照しつつ、分断装置1におけるワーク9の移動過程を中心として分断装置1による分断工程について説明する。分断工程は、受入工程、スクライブ工程、反転工程及びブレイク工程を含む。
【0096】
なお、図6は、分断装置1による受入工程及びスクライブ工程を表す模式図である。また、図7は、分断装置1による反転工程及びブレイク工程を表す模式図である。また、図6(a)は受入工程を示す図、図6(b)はスクライブ工程を示す図、図6(c)はスクライブ工程から反転工程へ移行する状態を示す図である。また、図7(a)は反転工程を示す図、図7(b)はブレイク工程を示す図、図7(c)はブレイク工程が終了した状態を示す図である。
【0097】
<受入工程>
分断工程においては、まず、図6(a)に示されるように、受入位置P0に置かれたワーク9が、移送装置40によって主経路R1において受入位置P0から加工基準位置P1に位置する第一支持台13上へ移送される。さらに、移送装置40により第一支持台13上に載置されたワーク9は、真空吸着により第一支持台13に固定される。
【0098】
<スクライブ工程>
次に、図6(b)に示されるように、ワーク9が固定された第一支持台13が、第一支持台移動機構14により、主経路R1の一方の側方において、加工基準位置P1から装置幅方向(Y軸方向)に沿って往復移動される。第一支持台移動機構14による装置幅方向における往路及び復路各々の移動距離は、ワーク9の幅以上の距離である。
【0099】
また、スクライブ装置10の昇降機構15は、第一支持台13に固定されたワーク9が装置幅方向(Y軸方向)に沿って往路及び復路のうちの一方を移動中に、複数の切刃11各々をワーク9に対して接する加工位置に保持し、その他のときに複数の切刃11各々を待避位置に保持する。これにより、ワーク9の移動方向に沿う、即ち、装置幅方向に沿う複数の平行なスクライブ線Lsが、ワーク9の第一面に形成される。
【0100】
図6(b)に示される例は、第一支持台13に固定されたワーク9が装置幅方向に沿って往路を移動中に、複数の切刃11が加工位置に保持されている例である。なお、ワーク9が装置幅方向に沿って復路を移動中に、複数の切刃11が加工位置に保持されてもよい。
【0101】
<反転工程>
スクライブ工程が終了すると、図6(c)に示されるように、複数のスクライブ線Lsが形成されたワーク9は、移送装置40により、加工基準位置P1に位置する第一支持台13から、反転位置P2に位置する反転台21へ移送される。さらに、移送装置40により反転台21上に載置されたワーク9は、真空吸着により反転台21に固定される。
【0102】
次に、図7(a)に示されるように、ワーク9は、反転装置20によって上下反転され、第二支持台33上に載置される。さらに、ワーク9は、真空吸着により、第二面が上側に向く状態で第二支持台33に固定される。
【0103】
<ブレイク工程>
反転工程が終了すると、図7(b)及び図7(c)に示されるように、第二支持台33に固定されたワーク9は、第二支持台横移動機構34及び第二支持台縦移動機構35により、主経路R1の反転位置P2から、主経路R1に並列する副経路R2における副経路開始位置P4及び副経路終了位置P5を経て主経路R1の送出位置P3まで移動される。
【0104】
また、ブレイク装置30の昇降機構32は、第二支持台33に固定されたワーク9が副経路R2に沿って移動する途中において、ワーク9の第二面に対し、ブレイクバー31を複数のスクライブ線Ls各々に沿って順次押し付ける。これにより、ワーク9は、スクライブ線Lsに沿って脆性破壊し、複数の要素板材91に分断されるとともに、送出位置P3へ搬送される。
【0105】
<効果>
分断装置1において、反転装置20による反転工程は、主経路R1上の反転位置P2で実行され、ブレイク装置30によるブレイク工程は、主経路R1に並列する副経路R2において実行される。そのため、反転装置20及びブレイク装置30は、装置幅方向(Y軸方向)における位置をずらして配置されている。
【0106】
従って、分断装置1においては、反転装置20及びブレイク装置30の相互干渉を避けるとともに各装置のメンテナンススペースを確保しつつ、反転装置20及びブレイク装置30の全体の主経路方向における寸法、即ち、長手方向の寸法を小さくすることができる。
【0107】
また、分断装置1において、反転装置20とブレイク装置30(押圧機構)とが、装置幅方向(Y軸方向)から見て少なくとも一部が重なる位置に配置されている。そのため、反転装置20及びブレイク装置30の全体の主経路方向における寸法をより小さくすることができる。
【0108】
また、一般的に、幅方向に横断するスクライブ線Lsのみが形成される長尺なワーク9は、格子状のスクライブ線が形成されるワークとは異なり、比較的小さく軽量である。従って、第一支持台移動機構14、第二支持台横移動機構34及び第二支持台縦移動機構35は、比較的小型で簡素な機構により実現可能である。
【0109】
また、長尺な脆性板材であるワーク9は、長手方向が主経路方向に沿う状態で移送される。そして、第一支持台移動機構14及び第二支持台横移動機構34は、ワーク9が固定された第一支持台13を、ワーク9の幅方向において、主経路上の加工基準位置P1からワーク9の小さな幅より若干長い程度の短い距離だけ往復移動させればよい。従って、装置幅方向における分断装置1の寸法は、ワーク9の長さに関わらず、比較的小さく抑えられる。
【0110】
また、ワーク9を主経路R1に沿って移送する移送装置40において、ワーク9を支持する移動支持機構42を移動可能に支持するフレーム41が、主経路方向において、反転位置P2よりも上流側から送出位置P3よりも下流側に至る広い範囲に渡って一連に形成されている。その結果、移送装置40の構成が簡素化される。
【0111】
なお、分断装置1において、ワーク9を主経路R1に沿って移送する移送装置40(移送機構)と切刃11を支持する機構(ビーム12及び昇降機構15など)とは、主経路R1の左右両側に分かれて配置される。そのため、移送装置40において、移動支持機構42を支持する長尺なフレームは、切刃11を支持する機構との干渉を避けるために加工基準位置P1の上流側と下流側とに分かれて配置される必要もない。
【0112】
また、分断装置1においては、ワーク9の長手方向が主経路方向に沿う状態のままでスクライブ線Lsが形成される。そのため、図9に示される第2従来例のようにワーク9を方向転換させる機構及び工程を要さない。従って、ワーク9の方向転換のために装置が大型化及び複雑化するとともに分断工程に要する時間が長くなる、という問題も生じない。
【0113】
また、分断装置1においては、複数の切刃11が加工位置で保持された状態で、ワーク9は、第一支持台移動機構14により、移送方向である主経路方向(X軸方向)に対して交差する装置幅方向(Y軸方向)において移動する。従って、装置幅方向においてワーク9を横断する複数のスクライブ線Lsが、移動中のワーク9の第一面に対して同時に形成される。その結果、スクライブ工程に要する時間は、1つの切刃11がスクライブ線Lsの本数に応じた回数だけ往復移動する第1従来例(図8参照)に比べ大幅に短縮される。
【0114】
以上に示したように、分断装置1が採用されることにより、長尺なワーク9が、スクライブ加工によって幅方向に沿うスクライブ線Lsにおいてのみ分断される場合に、スクライブ工程に要する時間を短くできるとともに、装置を簡素化及び小型化できる。
【0115】
<その他>
分断装置1において、第一支持台移動機構14が、主経路方向に対して90°以外の角度をなして交差する方向において、第一支持台13を移動させる機構であることも一応考えられる。例えば、長方形状のワーク9を、平行四辺形状の複数の要素板材91に分断することが要求される場合、第一支持台移動機構14は、主経路方向(X軸方向)に対して斜めに交差する方向において第一支持台13を往復移動させればよい。
【0116】
また、分断装置1において、第一支持台移動機構14が、主経路方向に交差する方向において第一支持台13を曲線経路に沿って移動させる機構であることも考えられる。これにより、ワーク9を幅方向に横断する曲線状のスクライブ線Lsが形成される。但しこの場合、ブレイクバー31は、その先端が曲線状のスクライブ線Lsに沿う曲線状の稜線を形成する部材である。
【0117】
また、分断装置1において、ブレイク装置30におけるブレイクバー31及び昇降機構32を含む押圧機構全体が、装置幅方向(Y軸方向)から見て反転装置20と重なる位置に配置されることも考えられる。これにより、分断装置1の主経路方向(X軸方向)における寸法がより小さくなる。
【0118】
例えば、反転装置20の支柱が、押圧機構における昇降機構32を支持する2本の支柱のうちの一方として兼用されることなどにより、押圧機構全体を装置幅方向から見て反転装置20と重なる位置に配置することが可能となる。
【0119】
ところで、ワーク9が、液晶表示パネルの母材となるガラス基板のように、2枚の脆性板材が重ねられた構造を有する場合がある。このような二重構造のワーク9は、2枚の脆性板材各々について分断工程を実行することが必要である。
【0120】
従って、加工対象のワーク9が二重構造を有する場合、2つ分断装置1が主経路方向(X軸方向)に並んで配置されればよい。この場合、前段に配置される分断装置1における送出位置P3が、後段に配置される分断装置1における受入位置P0となる。
【0121】
なお、加工対象のワーク9が二重構造を有する場合、主経路方向に並んで配置された2つの分断装置1全体が、二重構造のワーク9全体を、それぞれ二重構造を有する複数の要素板材91に分断する分断システムとなる。
【0122】
また、2つ分断装置1が主経路方向(X軸方向)に並んで配置される場合、移送装置40における一連のフレーム41が、2つの分断装置1の両方に亘って一連に形成されることも考えられる。
【0123】
また、前述したように、分断装置1は、長手方向の寸法に対して幅方向の寸法がごく小さな装置である。そのため、複数の分断装置1が、装置幅方向に並んで配置されることも考えられる。例えば、2つの分断装置1が、主経路方向に沿う中心線に対して対称に配置されることが考えられる。この場合、2つの移送装置40を構成する2本のフレーム41が、装置幅方向における両外側に配置されることが考えられる。
【0124】
また、加工対象のワーク9が二重構造を有する場合、主経路方向に並べられた2つの分断装置1をそれぞれ備える複数組の分断システムが、装置幅方向に並んで配置されることも考えられる。例えば、2組の分断装置システムが、主経路方向に沿う中心線に対して対称に配置されることが考えられる。
【0125】
また、分断装置1において、ワーク9にスクライブ線Lsを形成する複数の切刃11が、ワーク9にスクライブ線Lsを形成する複数のレーザ光出射部であることも考えられる。なお、レーザ光出射部は、スクライブ加工端の一例である。
【符号の説明】
【0126】
1 分断装置
R1 主経路
R2 副経路
P1 加工基準位置
P2 反転位置
P3 送出位置
P4 副経路開始位置
P5 副経路終了位置
9 ワーク
10 スクライブ装置
11 切刃
12 ビーム
13 第一支持台
14 第一支持台移動機構
15 スクライブ装置の昇降機構
16 位置調節機構
20 反転装置
21 反転台
22 回転駆動部
23 可動支持部材
24 反転装置の昇降機構
30 ブレイク装置
31 ブレイクバー
32 ブレイク装置の昇降機構
33 第二支持台
34 第二支持台横移動機構
35 第二支持台縦移動機構
40 移送装置
41 フレーム
42 移動支持機構
91 要素板材
141,341,351 レール
142,342,352 ボールねじ
143,342,353 駆動装置
344 基台部
421 ワーク保持部
422 移送装置の昇降機構
423 移送装置の走行機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に沿う主経路における複数の位置へ順次移送される脆性板材にスクライブ線を形成し、前記脆性板材を前記スクライブ線に沿って脆性破壊させることにより複数の要素板材に分断する分断装置であって、
前記第一方向に対し交差する第二方向において横断する複数の前記スクライブ線が第一の面に形成された前記脆性板材を、前記主経路における所定の反転位置において上下反転させる反転機構と、
前記反転機構により反転された前記脆性板材を支持して固定する支持台と、
前記支持台を前記反転位置から前記主経路に並列する副経路における副経路開始位置まで移動させ、さらに前記支持台を前記副経路に沿って前記副経路開始位置から副経路終了位置まで移動させた後、前記支持台を前記副経路終了位置から前記主経路における所定の送出位置まで移動させる支持台移動機構と、
前記支持台が前記副経路に沿って移動する途中において、前記支持台に固定された前記脆性板材における前記第一の面の反対側の第二の面を前記スクライブ線に沿って押すことにより前記脆性板材を複数の前記要素板材に分断する押圧機構と、を備えることを特徴とする分断装置。
【請求項2】
前記反転機構と前記押圧機構とが、前記第一方向に直交する方向から見て少なくとも一部が重なる位置に配置されている、請求項1に記載の分断装置。
【請求項3】
前記主経路の左右両側のうちの一方の側方において、前記第一方向における前記反転位置から前記送出位置までの範囲のさらに両側に至る範囲に亘って前記第一方向に沿って形成された一連のフレームと、
前記一連のフレームによって前記第一方向に沿って移動可能に支持され、前記脆性板材を支持する状態と前記脆性板材の支持を解除する状態とに選択的に切り替わり、前記脆性板材を前記主経路における複数の位置へ順次移送する移動支持部と、を含む移送機構をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の分断装置。
【請求項4】
第一方向に沿う主経路における複数の位置へ順次移送される脆性板材にスクライブ線を形成し、前記脆性板材を前記スクライブ線に沿って脆性破壊させることにより複数の要素板材に分断する分断装置であって、
前記脆性板材を支持して固定する第一支持台と、
前記第一支持台を前記主経路における所定の加工基準位置から前記第一方向に対し交差する第二方向において往復移動させる第一支持台移動機構と、
前記脆性板材に対して前記スクライブ線を形成する複数のスクライブ加工端と、
複数の前記スクライブ加工端各々を、前記第一方向に沿って間隔を空けて支持するとともに、前記第一支持台移動機構により移動中の前記第一支持台に固定された前記脆性板材に対して前記スクライブ線を形成可能な加工位置で保持する加工端支持機構と、
前記第一方向に対し交差する第二方向において横断する複数の前記スクライブ線が第一の面に形成された前記脆性板材を、前記主経路における前記加工基準位置よりも移送方向下流側の反転位置において上下反転させる反転機構と、
前記反転機構により反転された前記脆性板材を支持して固定する第二支持台と、
前記第二支持台を前記反転位置から前記主経路に並列する副経路における副経路開始位置まで移動させ、さらに前記支持台を前記副経路に沿って前記副経路開始位置から副経路終了位置まで移動させた後、前記支持台を前記副経路終了位置から前記主経路における所定の送出位置まで移動させる第二支持台移動機構と、
前記第二支持台が前記副経路に沿って移動する途中において、前記第二支持台に固定された前記脆性板材における前記第一の面の反対側の第二の面を前記スクライブ線に沿って押すことにより前記脆性板材を複数の前記要素板材に分断する押圧機構と、を備えることを特徴とする分断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−53044(P2013−53044A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192359(P2011−192359)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】