説明

分析物の濃度を監視する方法

【課題】 1人又は2人の他の人物によって、ある人物の分析物濃度を遠隔的に監視するための方法を開示すること。
【解決手段】 本発明の分析物濃度を監視する方法は、第2の人物によって第1の人物の分析物濃度を監視する方法であって、前記第1の人物の分析物濃度を測定する工程と、前記分析物濃度のリアルタイムの状態を表し第1の伝送距離を持つ、第1の無線信号を送信する工程と、少なくとも1人の第2の人物が位置する場所に前記分析物濃度のリアルタイムの状態を表し第2の伝送距離を持つ、第2の無線信号を送信する工程と、を備え、前記第2の伝送距離が前記第1の伝送距離よりも長いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療装置及びその使用方法に関し、特に、分析物を監視するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分析物の濃度は、継続的若しくは時間間隔の短い断続的な方法で測定及び監視をする必要がある。例えば一部の糖尿病患者は、人的介入を必要とせず継続的かつ自動的にグルコース濃度レベルを測定できるシステムによって恩恵を受けている。こういったシステムは様々に存在し、恒久的又は一時的に移植可能なセンサーや、患者の血液や間質液について継続的なアクセスを構築するセンサーを備えたものもある。このようなシステムはリアルタイムで糖尿病患者のグルコース濃度レベルを維持するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらのシステムには、患者のグルコース濃度が生理学的に正常な範囲を逸脱した場合、患者に知らせるため自動的に作動するアラーム機構が付属するものと考えられる。このことは糖尿病患者の夜間の監視には特に有益である。このような仮定においては、患者が低血糖若しくは高血糖の状態になった場合、継続的測定を行うグルコースセンサーが糖尿病患者を目覚めさせるために音響アラーム(センサー自体に配置されるか、又は別個でセンサー近くに位置し有線若しくは無線でセンサーと連絡するユニットに配置される)を動作させるので、適切な治療を施すことができる。しかし、ある場合においては、このアラームは糖尿病患者を起こすのに十分でないこともある。特に、糖尿病患者が容易に目覚めることができない場合や、低血糖若しくは高血糖の状況が原因で昏睡状態に陥った場合である。このようなアラームは、糖尿病患者が幼児の場合や非常に幼い子供の場合、若しくは身体的又は精神的に障害があり自分自身でアラームに応答できない場合にも実用的ではない。このような状況では、親や他のヘルパーが頻繁かつ定期的に糖尿病患者のグルコース濃度を監視して患者の様子を見なければならない。
【0004】
無線技術はアラームを親やヘルパーの部屋など遠隔に配置するために利用できるが、米国連邦通信委員会(FCC)の規制によって、これらのタイプのセンサーシステムはセンサーからわずか数メートル以内にアラームの配置が限定される超低周波の使用が義務付けられている。低周波の機器、特にそのアンテナはどうしても相対的に大きくなる。これに対して、高周波(約100MHz以上)を送信できるセンサーアラームシステムは人体による干渉を受けやすいので、特に室内では伝送距離の性能が制限される。加えて、高周波の無線信号はアラームユニットの携帯性を限定するような大きさの電池を必要とするほど大量の電力を消費することもある。
【0005】
従って、分析物の濃度やその他生理学上の指標などの遠隔監視をリアルタイムで容易に行うための、現在の技術的欠点に対処する新しい機器及び技術の開発を継続する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、遠隔的な患者の監視及び患者のデータ送信及び/若しくはアラーム動作の必要性に応えた、従来のシステムの不都合や欠点を除去した分析物の監視方法を提供するものである。更に、本発明にかかる方法は従来の分析物監視方法と比較して、消費電力が小さく比較的長距離の信号送信が可能で人体と干渉しにくいシステムを活用するものである。
【0007】
本発明の分析物監視システムは、患者の分析物濃度を監視するセンサーと、信号リレーと、信号受信機とを備えている。分析物濃度の監視に加えて、センサーは第1の無線信号を信号リレーに送信するように構成され、この信号はリアルタイムの分析物濃度レベルを示し、例えば最新のグルコース濃度若しくは低血糖や高血糖などの生理学的状態を表すものである。この信号リレーは、第1の無線信号を受信した後に第2の無線信号を受信機に送信するように構成され、この信号はこのような濃度レベル若しくは状態を示し、第2の無線信号は第1の無線信号とは異なる周波数及び/又は送信プロトコル(即ち信号送信及び受信回数やデータのパッケージ化(例えばアドレス指定や符号化など)を含むがこれに限定されるものではない)を持つ。この信号受信機は、第2の無線信号を受信して患者にリアルタイムで現在の分析物濃度、センサーの状態(動作状態、故障の発生、エラーコードなど)若しくはこれらを示す状況を通知するように構成されている。このような通知は聴覚、触覚及び/又は視覚による警報でもよく、更に実際の分析物濃度の値を表示してもよい。結果的に本発明の分析物監視システムは、比較的短距離でセンサーと通信するための第1の周波数を用いてリレーに警報を送信し、続いて比較的長距離でリレーと通信するための第2の周波数を用いて受信機に警報を送信することができる。これら2つの信号の周波数は同じでも異なっていてもよい。もし同じ周波数を使用する場合、その信号は通常互いに干渉しない異なる送信プロトコルを持つ。
【0008】
本発明の方法は、少なくとも1人の第2の人物によって第1の人物の分析物濃度を監視することを提供するものである。この方法は第1の人物の分析物濃度を測定し、リアルタイムの分析物濃度の値を示す無線信号を送信することを含む。リアルタイムの分析物濃度値の状態を示す第2の無線信号は、その後少なくとも1人の第2の人物が位置する場所に送信される。この第2の信号の伝送距離は第1の信号の伝送距離よりも長い。
【0009】
本発明の他の方法は、少なくとも1人の第2の人物によって第1の人物のリアルタイムの分析物濃度の値を中継することを提供するものである。この方法は、センサーで第1の人物の分析物濃度を測定し、その分析物の濃度のリアルタイムの状態を示す第1の無線信号を、センサーから第1の距離に位置する携帯端末機器に、センサーから送信することを含む。当該濃度値を示す第2の無線信号は、その後センサーから第2の距離に位置するリレーに、携帯端末機から送信される。第3の無線信号は、その後センサーから第3の距離に位置する少なくとも1つの信号受信機に、リレーから送信され、第3の無線信号は第1の無線信号の伝送距離よりも長い伝送距離を持つ。
【0010】
本発明のこれら及びその他の目的、利点並びに特徴は、以下に更に詳しく記載した発明の詳細な説明を読めば当業者に明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のシステム及び方法を述べる前に、この発明はここに記載或いは図解した特定の実施形態に限られるものではなく、様々に変化しうることは言うまでもないことを理解されたい。当然のことながら、ここで使用する専門用語は特定の実施態様のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって限定されるものである。
【0012】
ある数値範囲が下限値で小数第1位の単位で定められた場合、特にその意味が明確にされることがない限り、当然ながらその範囲の上限と下限の間にある個々の値もまた明確に定められることになる。ある規定値若しくは規定されたある範囲内の値と、これとは別の規定値若しくは別に規定された範囲内の値との間にある、個々のより狭い範囲は本発明の範囲内に含まれる。この規定された範囲で明確に除外された境界を考慮して、これらの狭い範囲の上限及び下限は、その範囲と関係なくこの範囲に含めるか又は排除することができ、これらの境界をその範囲内に一方だけ含む、どちらも含まない或いは両方含むとする場合のそれぞれの範囲も同様に本発明の範囲内に含まれる。この規定された範囲が一方若しくは両方の境界を含む場合、これらを含む境界の一方若しくは両方を除く範囲もまた本発明に含まれる。
【0013】
ここで使用する全ての技術的及び科学的な用語は、特に定義しない限り、本発明の分野における当業者が通常理解する用語と同様の意味を持つものとする。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する単数形の不定冠詞「ある」や定冠詞「その」などは、その内容が明確な意味を別段示さない限り、複数の指示対象を含むものとする。それ故、例えば「ある信号」という記述があれば、複数のそのような信号等を含む。
【0015】
ここに記載する全ての刊行物は、その引用した刊行物に関する方法及び/又は装置の開示及び説明を参照することによって本明細書に援用される。ここで述べる刊行物は本願の出願日以前の単なる情報開示のためだけに提供するものである。このような刊行物は、先行発明の効力によって本発明に先行することを承認するものとして解釈されるべきではない。更には、提供された刊行日は実際の刊行日と異なっていたり、独自に確認する必要がある場合がある。
【0016】
本発明における模範的な実施態様及びその各種変化態様を今ここにその詳細を述べる。まず本発明のシステムや装置の構成要素を本発明のより詳しい説明で述べる。続いて本発明の装置やシステムの様々な使用方法やリアルタイムの生理学的情報の送信方法を述べる。最後に本発明の方法の実施に必要な装置やシステムを含む本発明の要素一式を述べる。
【0017】
以下の説明において、本発明はグルコース濃度の測定について述べるがこれに限定するものではなく、当業者は本発明の装置、システム及び方法がその他の肉体的、神経学的かつ化学的特徴、例えば血圧、心拍数、呼吸数、神経活動、薬物治療レベル、胎児活性、睡眠状態などの測定や監視に有益であることを評価するであろう。
【0018】
第1図は本発明の分析物監視システムにおける実施例の概略的説明である。分析物監視システムは分析物センサー100、信号リレー4及び信号受信装置6を備えている。
【0019】
センサー100は、恒久的若しくは一時的に、皮下、真皮、真皮下、腹腔内又は腹膜組織を通じて、若しくはその中に移植可能なものを含むがこれに限定されない、適用可能なタイプのセンサーであり、この他、患者の血液や間質液などの連続的若しくは断続的な測定及びアクセスを可能とする身体へ取り付けられるか身に付けられるものである。このセンサーは電気化学的、化学的又は光学的なセンサー、若しくはその種のものである。本発明に使用できるこのようなセンサーの例が、米国特許第6,040,194号、同第6,232,130号、同第6,233,471号、同第6,272,364号、同第6,329,161号、同第6,514,718号、同第6,558,321号、及び同第6,702,857号、並びに国際公開第02/49507号に開示されており、全て参考のためにここに示す。本発明に商業的に利用可能なセンサーの例は、カリフォルニア州レッドウッドシティーのシグナス社によるグルコ・ウオッチ・G2・バイオグラファー(登録商標)と、カリフォルニア州ノースリッジのメドトロニック・ミニメッド社によるCGMS・システム・ゴールド(登録商標)があるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
センサー100は、総合的な信号送信機、若しくはこのセンサーの検出部分に直接連結するものを含む。この送信機は、好ましくは無線周波数(RF)スペクトル内の信号を送信するように構成される。このセンサーは更に、連続的又は断続的であるが頻繁に対象の分析物の測定をさせるために、若しくは連続的又は断続的にこれらの測定値を表す信号を送信するために、プログラム可能なプロセッサを備える。移植不可能な或いは部分的に移植可能なセンサーを用いて、許容範囲を下回る分析物の測定値を知らせるため、ユーザーに警告するようにセンサー自体を構成することができる。このセンサーは、患者の近くにある外部アラームを作動させる信号を送信するように、移植可能なセンサーによって構成することができる。更にこのセンサーのプロセッサは、例えば電池残量不足、温度の異常、患者とセンサー間の断線などのセンサー異常の検出、及びこれらの異常を表す信号の送信を可能とすることができる。
【0021】
信号リレー4はセンサー100から送信された信号を受信するために構成された信号受信部と、信号受信機6に信号を送信するために構成された送信部を含む。また、これら受信部及び送信部は好ましくは無線周波数帯内で動作するように構成される。リレー4は、更に、1つの周波数及び/又は送信プロトコルを持つ受信信号を他の周波数及び/又は送信プロトコルを持つ受信信号に変換するように、かつこの受信信号より長い伝送距離を持つこの変換された信号を送信するように構成される。本発明に適用可能なリレーはミレニアル・ネット社やジグビー社によるものを含む。
【0022】
リレー4は、ユーザーの構築次第で据え置き型及び/又は携帯型の装置として利用してもよい。例えば図1に示すように、リレー4は、指定した電源或いは従来のACコンセントに配線若しくは接続することによって電力供給が可能な、実質的に固定式のベースユニット又は設備の中に統合してもよい。センサー100によって送信された比較的小さなエネルギーの信号により、このリレー4がセンサー100から約3メートル以内にある場合によりよい結果が得られる。本発明の実施例のひとつとして、リレー4は、糖尿病患者がいる部屋に置くことができる。或いは図2に示すように、リレー4は、携帯式で電池式のユニット2と整合するように構成することができる。携帯用の装置2は、装置2がリレー4と情報(信号)の通信をしてリレー4が装置2によって電力供給される、USBポートのような電気的ソケットの結合によるモジュール方式を使用して、リレー4と相補関係になるように構成してもよい。また、リレー4は携帯用のユニット2内に電気的に組み込んでもよい。
【0023】
携帯用装置2には、使い捨てのグルコーステストストリップを使用する一時的な方法でグルコースなどの分析物濃度を測定する電子的機能を持たせてもよい。携帯用装置2に組み込める一時的なグルコース計測器の実例として、市販のライフスキャン・ワンタッチ・ウルトラスマート(登録商標)の監視装置がある。ある状況下では、連続的な方法に加えて、一時的にグルコースを測定するシステムが望ましいこともある。例えば、一時的なグルコース測定は、校正型のセンサー100を支援し、品質管理の検査を行い、センサー100が平衡化する間の緊急のグルコース測定のテストを行い、若しくは徹底した治療を施す前の、センサー100による極めて高い又は低い測定値を確認するために必要とされることがある。本発明の他の実施例においては、携帯用装置2は、センサー100やインシュリンポンプ(図示せず)若しくは他の医療機器からのデータを受信又は送信する遠隔制御装置として使用することができる。
【0024】
上述したリレーのあらゆる構成と共に、このベースユニット若しくは携帯用装置、或いはその両方は、センサー機能を制御するユーザーインターフェースや、分析物の値及び他のシステムパラメータを表示するディスプレイなどを備えてもよい。このユニットもまた通常は、危篤の若しくは危篤の恐れがある患者を知らせるために、音声の、触覚の(振動)及び/又は視覚の(点滅LED)警告信号のような主要なアラームを伴う。リレー4はAC電源を必要とするので、糖尿病患者への警告を支援するために、単にセンサー100だけから発生されるものよりも強力なアラーム、例えばより大きな音やより明るい光などを発生させることができる。センサー100が正常な血糖値の状態を維持するインシュリンの適正な投薬量の送出を制御する閉ループ又はフィードバック制御システムの一部として、インシュリンポンプと連携して使用される場合、このようなアラームは必要としない。しかし、このような閉ループシステムを利用しない場合は、この主要なアラームだけでは、グルコースレベルが危険な状態にあるユーザーを起こすのに十分ではない。
【0025】
信号受信機6はリレー4からのより高レベルのエネルギーを持つ信号を受信するように構成されるので、リレー4が設置可能な、センサー100との距離、即ち約3メートルより長い距離よりも更に遠くに配置することができる。受信機6は据え置き型に構成できるので、この場合第2の人物やユーザー(親、介護者、看護士など)がいる場所若しくは部屋(寝室、看護士室など)に設置される。据え置き型の受信機は電池式又は外部AC電源から電源供給してもよい。その代わりに、受信機6は、例えばベルトクリップやアームバンドのようなもので第2の人物が身に付けたり移動したりするように構成した、携帯用の電池式装置としてもよい。
【0026】
信号受信機のいずれかの構成により、受信機は、分析物濃度が生理学的に正常な範囲を逸脱した場合に作動する、音声の、触覚の(振動)及び/又は視覚の(1つ以上の点滅LED)アラーム機構のような第2のシステムアラームを備える。このようにして、第2のユーザーは、危篤又は危篤状態の恐れが第1のユーザー(糖尿病患者など)に生じていることを速やかに知らされる。実施例において、音声アラームは、その緊急性若しくは目の前の状況の種類に応じて様々な音量(デシベル)レベルを発するように構成することができる。例えば、より緊急性の高い場合、例として第1のユーザーのグルコースレベルが生理学的に危険な状態にある場合、非常に大きなアラームを発することになる。その代わりとして、その警告音は例えば「緊急」や「警報」など、第1のユーザーのリアルタイムの状況を、文字通りにアナウンスする録音された音声でもよい。また、その音声の種類はアラームを必要とする状況に応じて変化させてもよい。例えば、ピーという音は第1のユーザーの生理学的状況を示すために鳴らす一方、ブーという音は電池残量の低下や信号受信の断絶などのシステム上の問題を表すために鳴らすように構成することができる。視覚的なアラームは例えば、緑色は第1のユーザーが正常血糖値の状態にあることを示し、黄色は第1のユーザーが低血糖若しくは高血糖の範囲にあるか又はその状態になりそうな場合を示し、赤色は第1のユーザーのグルコースレベルが危険な低血糖若しくは高血糖の範囲に入った場合を示し、青色はシステムの異常若しくはその問題がある場合を示すというように、複数の色を発色するように構成することができる。
【0027】
受信装置6は更に、数量的及び/又は質的なリアルタイムの若しくは記憶された、リアルタイム測定値又は第1のユーザーの数個の最新のグルコース濃度の測定値を例とする、第1のユーザーの情報データについて表示する液晶画面(LCD)のようなディスプレイを備えてもよい。このディスプレイもまた、例えば電池残量や信号受信レベルなどのシステムのパラメータに関する情報を提供してもよい。リレー4と連携するベースユニットや携帯用装置と同様に、信号受信機6は機能上のメニューや音量調整などのユーザーインターフェースの制御を可能にしてもよい。
【0028】
そのように構成されれば、本発明のシステムは、無線信号、即ち信号リレー4を介してセンサー100から信号受信機6へ送信されるべきアラーム信号や分析物測定値を示す情報、そしてシステム動作のパラメータなどの信号を有効とすることができる。言い換えれば、リレー4は、モニターされた患者から離れた場所にいる人へ情報を送信するためのルートとして使用される。このシステムは、情報が1人以上に送信されるように、異なる場所に設置された1個以上の付加的な信号受信機を備えてもよい。ここで説明する本願の内容においては、このシステムは、監視される糖尿病患者の血糖値の状態について1人以上の第2の人物に無線で知らせるのに便利な方法を備えるものである。
【0029】
一般的に、監視される患者と第2の人物との距離はおよそ30から100メートルであるが、建物(家や病棟など)の大きさやユーザーの位置する範囲に応じて、それより遠くにしても近くにしてもよい。このような伝送距離はセンサー100に許される周波数範囲よりも広い信号送信周波数を必要とする。この連邦規定が医療センサーの周波数範囲を限定しているにもかかわらず、現実の問題において、例えば電池や効率的なアンテナを収容する限られた空間容量を持つ、特に移植する場合、わずか数立方センチメートル程度の比較的小さな、センサー100のサイズを決定することになる。このために、出力の小さな非常に小型の電池だけがセンサー100に適用可能となる。この制限された電源のために、センサー100による信号伝送距離は限られ、センサー100から送信される信号のエネルギーはわずか数百マイクロワットの比較的小さなものである。
【0030】
本発明によれば、信号リレー4はセンサー100の限られた伝送距離を補償するために採用される。この信号リレー4は体内に移植されるものではなく、ある実施例においては第1のユーザーが身に付けないものであるので、その大きさや収容場所、センサー100の伝送距離や電力の制約などに制約を受けない。従って、リレー4はより大きな電源が使用可能であり、長距離用の高いエネルギーで信号を送信することができる。この高いエネルギーは身体に吸収されやすいが、このリレーはそのような吸収を最小限に抑えるのに十分遠く離れている。
【0031】
センサー100は第1の周波数8aを持ち、第1の送信プロトコルを使用する第1の送信信号によってリレー4と無線で通信し、リレー4は第2の周波数8bを持ち、第2の送信プロトコルを使用する第2の送信信号によって信号受信機6と無線で通信する。同じ周波数が双方ともに使用される場合は、これらの二つの送信プロトコルは異なるものとし、逆の場合もまた同様とする。また、両方の周波数と両方の送信プロトコルを異なるものにしてもよい。どの実施例においても、第1の周波数8aは、およそ3メートル以下の距離でリレー4にセンサー100からの無線通信を可能とするのに十分であり、また第2の周波数8bは、リレー4と信号受信機6の間で、約3メートルから、最も典型的なものとしては約30メートルないし約100メートルまでの距離にわたって、リレー4と信号受信機6との間で行う無線通信を可能とするのに十分である。もちろん必要なら、1つ以上の連結的に離間されたリレーを利用して合計伝送距離を長くすることができる。
【0032】
図2の実施例において、携帯用装置2は、センサー100とリレー4との間と同様の距離でユニット2とリレー4との間の無線通信に十分な、第3の送信プロトコルを用いる第3の周波数8cを持つ、第3の送信信号を利用するリレー4と、無線通信を行ってもよい。また、この距離はより大きくても小さくても構わない。第3の信号は同じ若しくは異なる周波数でもよく、かつ/又は第1の信号のように同じ或いは異なる送信プロトコルを活用してもよい。
【0033】
実際上は、無線周波数信号内の信号が本発明の応用例としてより好ましいものである。本発明で使用する送信信号は、通常、約200MHzから2.4GHzより大きな周波数の範囲内にある。ある例では、第1及び/又は第3の周波数8a、8cは通常、約200MHzから約950MHzの範囲内にあり、第2の周波数8bはおよそ2.4GHz(無線標準規格802.11の使用を可能とする)であるが、実施例が示すようにこれよりも高く或いは低くすることができる。また、ある実施例において、第1及び第3の周波数のいずれか若しくはその両方が、およそ903MHz(無線周波数の無認可スペクトル部分とすることも可能)である。
【0034】
上述のシステム内の無線通信は完全に単方向、即ちセンサーからリレー、そして受信機に、又は完全に双方向、即ちセンサーに送信可能なリレーに受信機が送信可能とすることができるし、また、このシステムが一部を単方向でかつ一部を双方向、例えばセンサーとリレー若しくは携帯用装置との通信が双方向で、リレーと信号受信機間の通信時に単方向とすることもできる。ここで主に述べた方向と反対方向に送信される信号(受信機からリレーへ、そしてリレーからセンサーへの送信)の周波数は、同じにしてもよいし、周波数8a、8b、8cそれぞれに異なってもよい。
【0035】
本発明は、少なくとも1人の第2の人物が第1の人物の分析物濃度を監視する方法を更に備える。ある変化態様において、この方法は、上記のセンサー100のように第1の人物の分析物濃度を測定することと、高エネルギーの無線信号に変換する上記のリレー4(及び/又は携帯用装置かベースユニット2)のように、分析物濃度のリアルタイムの状況を示す低エネルギーの無線信号、及び/又はリレーの存在する場所へのその状況を示すアラームを送信することを含む。この高エネルギー信号はこの後その場所の第2の人物へ送信され、上記の信号受信機6のような信号受信機により第2の場所で受信される。この信号受信機のアラームには、第1の人物の許容範囲を超える分析物濃度レベルに応じて、第2の人物に警告するように動作させることができる。また、センサー及び/又はリレー及び/又は携帯用装置は、同様の状況下で作動するアラームを個々に備えることができる。
【0036】
図2の実施例で、第1の無線信号は同時に携帯用装置2とリレー4の双方に送信、或いは一方に送信した後にもう一方に第2の無線信号を送信することができる。通常は、第1の信号は順に、これをリレーに送信する携帯用装置に送信される。上述したように、携帯用信号はセンサーと同じ或いは異なるエネルギーを持つ信号を送信してもよい。
【0037】
本発明の方法の実施に必要なキットもまた本発明によって提供される。本発明の実施例のキットは、前述のように、少なくとも1つのセンサー、リレー、及び少なくとも1つの受信機を備える。このキットはコンピュータのような外部装置を使い、ユーザーや治療者によって、センサー、ベース又は携帯用装置又はメータ、及び/又は信号受信機にプログラムをダウンロードできるCD−ROMなどに記録するソフトウエアプログラムを更に含む。最終的に、このキットは本発明の装置を使用する取扱説明書を備えていてもよい。説明書はキットの中の1つ以上の梱包材、ラベルを貼った挿入物や容器によって、若しくはCD−ROMなどによって提供することができる。
【0038】
本発明の具体的な実施態様は以下のとおりである。
(1)少なくとも一人の第2の人物によって第1の人物の分析物濃度を監視する方法であって、前記第1の人物の分析物濃度を測定する工程と、前記分析物濃度のリアルタイムの状態を表し第1の伝送距離を持つ、第1の無線信号を送信する工程と、前記分析物濃度のリアルタイムの状態を表し第2の伝送距離を持つ、第2の無線信号を、前記少なくとも1人の第2の人物が位置する場所に送信する工程と、を備え、前記第2の伝送距離が前記第1の伝送距離よりも長い、分析物濃度を監視する方法。
(2)前記第1の無線信号の信号周波数が約200MHzから約950MHzの範囲にあり、前記第2の無線信号の信号周波数が約2.4GHzである、実施態様1に記載の方法。
(3)前記第1の無線信号が約3メートル以下の距離において送信され、前記第2の無線信号が最大約30メートル以上の距離まで送信される、実施態様1又は2に記載の方法。
(4)前記分析物濃度のリアルタイムの状態に応じて、前記少なくとも1人の第2の人物が位置する場所でアラームを作動させる工程を更に含む、実施態様1、2又は3に記載の方法。
(5)前記分析物濃度のリアルタイムの状態に応じて、前記第1の人物が位置する場所でアラームを作動させる工程を更に含む、実施態様4に記載の方法。
【0039】
(6)前記分析物の測定が連続的に行われる、実施態様1から5のいずれか1つに記載の方法。
(7)前記分析物の測定が一時的にも行われる、実施態様6に記載の方法。
(8)少なくとも1人の第2の人物によって第1の人物のリアルタイムの分析物濃度を中継する方法であって、センサーを用いて前記第1の人物の分析物濃度を測定する工程と、前記分析物濃度のリアルタイムの状態を表し第1の伝送距離を持つ、第1の無線信号を、前記センサーから第1の距離だけ離れた場所に位置する携帯用装置に、前記センサーから送信する工程と、前記分析物濃度のリアルタイムの状態を表し第2の伝送距離を持つ、第2の無線信号を、前記センサーから第2の距離だけ離れた場所に位置するリレーに、前記携帯用装置から送信する工程と、前記分析物濃度のリアルタイムの状態を表し前記第1の無線信号の伝送距離よりも長い第3の伝送距離を持つ、第3の無線信号を、前記センサーから第3の距離だけ離れた場所に位置する少なくとも1つの信号受信機に、前記リレーから送信する工程と、を備えた方法。
(9)前記分析物濃度のリアルタイムの状態に応じて、前記少なくとも1人の第2の人物が位置する場所でアラームを作動させる工程を更に含む、実施態様8に記載の方法。
(10)前記第3の距離が前記第1の距離よりも実質的に長い、実施態様8又は9に記載の方法。
【0040】
(11)前記第1の距離と前記第2の距離が実質的に同じである、実施態様8、9又は10に記載の方法。
(12)前記第3の無線信号が前記第2の無線信号の信号周波数よりも大きな信号周波数を持つ、実施態様8、9又は10に記載の方法。
(13)前記第3の無線信号が前記第2の無線信号の送信プロトコルと異なる送信プロトコルを持つ、実施態様8、9又は10に記載の方法。
【0041】
本発明における効果は、比較的小さい電力を必要とする第1の周波数の範囲が、センサー100が干渉される場合でも、人体と干渉する傾向が少ないことである。低電力が要求される更なる効果は、センサー100に小さな電池及び/又は移植と携帯の双方に非常に好都合な持続的なセンサーの、少ない頻度の充電・交換を可能にすることである。しかし、上記のように、低エネルギー信号は通常、伝送距離を限定してしまう。リレー4は、受信センサー100から装置6への信号(即ち情報やデータ)の送信を中継するように利用される。
【0042】
本発明の更なる効果は、第2の周波数8bがかなり長い距離の送信を可能にすることである。とはいえ、第2の周波数8bは、第1の周波数8aよりも比較的大きい電力を必要とし、AC電源や高エネルギー出力を持つ大きな電池を使用する据え置き型のリレー4の活用によって電力の問題を軽減する。注意すべきは、人体との生理学的干渉をし易い高エネルギー信号を利用することであるが、これは通常リレー4と人体との距離をとることで一般的に問題とはならない。
【0043】
上記の発明が、リアルタイムで監視される糖尿病患者の血糖値の状態について、1人以上の第2の人物に無線で警告するために容易かつ便利な方法を提供するものであることは、これまでの記載及び説明から明らかである。
【0044】
これまで、本発明の明確な理解を目的として、図面や実施形態を用いて詳細に説明してきたが、本発明は当業者にとって、添付する特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱しない限り一定の変更や変形を施すことができることは、本発明の開示内容を考慮すれば、容易に明らかとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の分析物監視システムにおける第1実施例の概略図である。
【図2】本発明の分析物監視システムにおける第2実施例の概略図である。
【符号の説明】
【0046】
2:携帯用装置
4:リレー
6:信号受信機
8a:第1の周波数
8b:第2の周波数
8c:第3の周波数
100:センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一人の第2の人物によって第1の人物の分析物濃度を監視する方法であって、
前記第1の人物の分析物濃度を測定する工程と、
前記分析物濃度のリアルタイムの状態を表し第1の伝送距離を持つ、第1の無線信号を送信する工程と、
前記分析物濃度のリアルタイムの状態を表し第2の伝送距離を持つ、第2の無線信号を、前記少なくとも1人の第2の人物が位置する場所に送信する工程と、を備え、
前記第2の伝送距離が前記第1の伝送距離よりも長い、分析物濃度を監視する方法。
【請求項2】
前記第1の無線信号の信号周波数が約200MHzから約950MHzの範囲にあり、前記第2の無線信号の信号周波数が約2.4GHzである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の無線信号が約3メートル以下の距離に送信され、前記第2の無線信号が最大約30メートル以上の距離まで送信される、請求項1及び2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記分析物濃度のリアルタイムの状態に応じて、前記少なくとも1人の第2の人物が位置する場所でアラームを作動させる工程を更に含む、請求項1、2及び3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記分析物濃度のリアルタイムの状態に応じて、前記第1の人物が位置する場所でアラームを作動させる工程を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記分析物の測定が連続的に行われる、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記分析物の測定が一時的にも行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1人の第2の人物によって第1の人物のリアルタイムの分析物濃度を中継する方法であって、
センサーを用いて前記第1の人物の分析物濃度を測定する工程と、
前記分析物濃度のリアルタイムの状態を表し第1の伝送距離を持つ、第1の無線信号を、前記センサーから第1の距離だけ離れた場所に位置する携帯用装置に、前記センサーから送信する工程と、
前記分析物濃度のリアルタイムの状態を表し第2の伝送距離を持つ、第2の無線信号を、前記センサーから第2の距離だけ離れた場所に位置するリレーに、前記携帯用装置から送信する工程と、
前記分析物濃度のリアルタイムの状態を表し前記第1の無線信号の伝送距離よりも長い第3の伝送距離を持つ、第3の無線信号を、前記センサーから第3の距離だけ離れた場所に位置する少なくとも1つの信号受信機に、前記リレーから送信する工程と、を備えた方法。
【請求項9】
前記分析物濃度のリアルタイムの状態に応じて、前記少なくとも1人の第2の人物が位置する場所でアラームを作動させる工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第3の距離が前記第1の距離よりも実質的に長い、請求項8及び9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の距離と前記第2の距離が実質的に同じである、請求項8、9及び10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第3の無線信号が前記第2の無線信号の信号周波数よりも大きな信号周波数を持つ、請求項8、9及び10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第3の無線信号が前記第2の無線信号の送信プロトコルと異なる送信プロトコルを持つ、請求項8、9及び10のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−15146(P2006−15146A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−190263(P2005−190263)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(502328710)ライフスキャン・スコットランド・リミテッド (70)
【住所又は居所原語表記】Beechwood Park North,Inverness IV2 3ED
【Fターム(参考)】