説明

分析用シリコンウェーハの運搬方法

【課題】分析用シリコンウェーハの運搬方法に関し、汚染濃度の水準の異なる数種のシリコンウェーハも安価且つ容易に運搬することができるようにする。
【解決手段】シリコンウェーハ表面の汚染濃度を分析するためのシリコンウェーハの運搬方法において、同一ロット内の2枚のシリコンウェーハを、分析したい状態を維持したまま表面同士を向かい合わせにして貼り合わせる貼り合わせ工程S10と、貼り合わせ工程S10の後に、貼り合わせられた状態の2枚のシリコンウェーハをウェーハケースに収納して運搬する運搬工程S20と、運搬工程S20の後に、貼り合わせられた状態の2枚のシリコンウェーハを元の1枚の状態へと剥離し、その剥離されたシリコンウェーハそれぞれを分析装置へ導入する剥離工程S30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染濃度を分析するためにシリコンウェーハを運搬する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェーハ表面の汚染濃度を分析するために、シリコンウェーハを専用のウェーハケースに収納して分析装置へと運搬することが行なわれている。
専用のウェーハケースとしては、運搬中に周りの環境からシリコンウェーハが汚染されて分析値に影響しないように、例えば、特許文献1に記載されているような複数毎のウェーハを一度に収納できるアルミニウム製の箱型ケースが用いられている。
【特許文献1】特開2000−3957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載のアルミニウム製の箱型ケースは高価であり、また、汚染濃度の水準の異なるシリコンウェーハを同一のケースに入れることができず、その場合は多数のケースを準備する必要があった。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、汚染濃度の水準の異なる数種のシリコンウェーハも安価且つ容易に運搬することができるようにした、分析用シリコンウェーハの運搬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の分析用シリコンウェーハの運搬方法は、シリコンウェーハ表面の汚染濃度を分析するためのシリコンウェーハの運搬方法において、同一ロット内の(すなわち、汚染濃度が同じ水準であると推定される)2枚のシリコンウェーハを、分析したい状態を維持したまま表面同士を向かい合わせにして貼り合わせる貼り合わせ工程と、該貼り合わせ工程の後に、上記の貼り合わせられた状態の2枚のシリコンウェーハをウェーハケースに収納して運搬する運搬工程と、該運搬工程の後に、上記の貼り合わせられた状態の2枚のシリコンウェーハを元の1枚の状態へと剥離し、上記の剥離されたシリコンウェーハそれぞれを分析装置へ導入する剥離工程とを備えたことを特徴としている。
【0005】
なお、上記の分析とは、有機物濃度,イオン濃度及びメタル濃度のうちの少なくとも何れか1つの分析であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の分析用シリコンウェーハの運搬方法によれば、汚染濃度が同じ水準であると推定される2枚のシリコンウェーハの表面同士を向かい合わせにして貼り合わせるだけで、汚染濃度分析のための運搬に際して、周りの環境からの汚染を防止することができ、高価な専用ケースを用いることなく一般的なケースを用いることが可能になる。また、汚染濃度の水準の異なる数種のシリコンウェーハも同一のケースに収納することが可能になり、ケースの数を削減することができる。つまり、汚染濃度の水準の異なる数種のシリコンウェーハを安価且つ容易に運搬することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る分析用シリコンウェーハの運搬方法を示すフローチャート、図2はその運搬方法の貼り合わせ工程で一例として用いる貼り合わせ装置の模式的な斜視図、図3はその運搬方法の剥離工程で一例として用いる剥離装置の模式的な平面図である。
【0008】
[概要]
本発明の分析用シリコンウェーハの運搬方法は、シリコンウェーハ表面の汚染濃度を分析するためのものであって、図1に示すように、汚染濃度が同じ水準と推定される2枚のシリコンウェーハ同士を、分析したい状態を維持したまま、分析したい面(表面)同士を向かい合わせにして貼り合わせる貼り合わせ工程S10と、貼り合わせ工程S10の後に、その貼り合わせられた状態のシリコンウェーハを一般的な運搬用ウェーハケースに収納して運搬する運搬工程S20と、運搬工程S20の後に、貼り合わせられた状態のシリコンウェーハを元の1枚の状態へと剥離し、その剥離されたシリコンウェーハそれぞれを分析装置へ導入する剥離工程S30とを備えている。剥離工程S30の後には分析工程S40が続き、シリコンウェーハ表面の汚染濃度が分析装置で分析されるようになっている。
【0009】
なお、シリコンウェーハは、同一ロット内のものであれば、汚染濃度が同じ水準であると推定される。
また、上記の分析は、有機物濃度,イオン濃度及びメタル濃度のうちの少なくとも何れか1つの分析であることが好ましい。
上記各工程について以下に詳しく説明する。
【0010】
[1.貼り合わせ工程]
貼り合わせ工程S10での貼り合わせは、自動(完全自動または半自動)貼り合わせ装置又は手作業で行なわれ、その手法は特に限定されるものではない。
つまり、貼り合わせ台の上に2枚のシリコンウェーハを表面を向かい合わせて重ね、荷重を加えることにより貼り合わせを行なっても良いし、貼り合わせ台をチャンバー内に収納し、減圧化で貼り合わせを行なっても良い。
【0011】
また、図2に示すような、台座1と、台座1に立設された一対の支柱2と、一対の支柱2間に回転軸3を介して挟持されたウェーハ支持台4と、ウェーハ支持台4の下部に取り付けられた保持部材5とを備えた、公知の貼り合わせ装置10を用意し、ウェーハ支持台4を垂直に近い角度に立てた状態で真空ピンセット等を使用して第1のシリコンウェーハを保持部材5に支持させ、次いで第2のシリコンウェーハを第1のシリコンウェーハに静かに接触させ、最後にウェーハ支持台4を水平状態にして貼り合わせを行なっても良い。なお、図2に示す貼り合わせ装置は、特開2006−303087号公報に記載されているので参照されたい。
【0012】
なお、シリコンウェーハの周方向内側部分(内周部)にボイド(貼り合わせ界面にできた空隙)が発生しても分析値に影響しないため、歩留まり等を考慮する必要はない。ただし、外周部のボイドに関しては、周りの環境から汚染が入り込む可能性があるので、ボイドが発生していない状態が好ましい。
【0013】
[2.運搬工程]
運搬工程S20で用いられるケースは、クリーンルーム内で使用されている周知の一般的な運搬ケースであれば良く、特に限定されるものではない。
つまり、例えば、特開平7−307379号公報に記載されているような、ケース本体と、ケース本体内に収納され、多数のシリコンウェーハ(ここでは、多数の貼り合わせられた状態のシリコンウェーハ)を並列して支持するカセットと、ケース本体内にカセットが収納された状態でケース本体を塞ぐ蓋体とを備えた運搬ケースを用いても良いし、他の適宜の運搬ケースを用いても良い。
【0014】
[3.剥離工程]
剥離工程S30での剥離作業に関しては、専用の剥離装置を用いるのが好ましいが、樹脂製又は金属製の挟み込みタイプのピンセットで剥がしても良い。ただし、ピンセットを使用する場合は、貼り合わせ界面に接触しないように注意する必要がある。そのため、専用の剥離装置を用いることが好ましい。
【0015】
専用の剥離装置としては、例えば、図3に示すような複数枚のウェーハを同時に剥離する剥離装置20でも良いが、一枚毎に剥がす簡易的な剥離装置を用いても良い。
ここで、図3に示す剥離装置20について簡単に説明すると、この剥離装置20は、特許第3656254号公報に記載されている公知のものであって、中央部に設置された搬送ロボット(搬送手段)11と、貼り合わされた状態の2枚のシリコンウェーハ(接着ウェーハ)を収納するカセット12aが設けられたカセットステーション12と、剥離後の下側のウェーハを収納するカセット13aが設けられたカセットステーション13と、剥離後の上側のウェーハを収納するカセット14aが設けられたカセットステーション14と、剥離ステーション15とを備えて構成されている。
【0016】
各カセットステーション12〜14と剥離ステーション15とは、搬送ロボット11の周囲の同一円周上に円周方向に並んで配設されており、また、剥離ステーション15は、接着ウェーハを水平に保持する吸着テーブル(保持体)15aと、接着ウェーハのウェーハ間に挿入される挿入部が形成された固定剥離治具15b及び可動剥離治具15cを有する剥離治具15dと、可動剥離治具15cを移動させるエアシリンダ(駆動手段)15eとを備えて構成されている。
【0017】
以下に、具体的な実施例を説明する。
[実施例1]
有機物濃度(つまり汚染濃度)が同じ水準と推定される同一ロット内のシリコンウェーハを2枚準備した後、専用の貼り合わせ治具により貼り合わせを行なった(貼り合わせ工程S10)。次いで、一般的な運搬用ウェーハケースに貼り合わせられた状態のシリコンウェーハを収納し、分析装置のところまで運搬した(運搬工程S20)。最後に、アルミのピンセットにより貼り合わせられた状態のシリコンウェーハを元の1枚の状態へと剥がし、各シリコンウェーハを分析装置へ導入し(剥離工程S30)、有機物の分析を行なった(分析工程S40)。
【0018】
その結果、下記の表に示すとおり、従来の方法を用いた場合(専用のアルミニウム製ケースに収納して運搬した場合)と汚染濃度は同じであることが確認された。
【0019】
【表1】

【0020】
[実施例2]
有機物濃度の異なる水準を5水準,各2枚準備した後、実施例1と同様に貼り合わせを行ない、その5水準の貼り合わせられた状態のウェーハを同一の一般的な運搬用ウェーハケースに収納した。その後、実施例1と同様に分析を行なった。
結果は、下記の表に示すとおり、従来の方法を用いた場合(専用のアルミニウム製ケースに1水準毎に収納して運搬した場合)と同じであり、且つ、本発明の手法を用いることにより、濃度の異なる水準を一緒に収納しても分析値に影響しないことが確認された。
【0021】
【表2】

【0022】
[効果]
このように、本発明の分析用シリコンウェーハの運搬方法によれば、汚染濃度が同じ水準であると推定される2枚のシリコンウェーハの表面同士を向かい合わせにして貼り合わせるという容易な手順を加えるだけで、汚染濃度分析のための運搬に際して、周りの環境からの汚染を防止することができ、高価な専用ケースを用いることなく一般的なケースを用いることが可能になる。また、汚染濃度の水準の異なる数種のシリコンウェーハも同一のケースに収納することが可能になり、ケースの数を削減することができる。つまり、汚染濃度の水準の異なる数種のシリコンウェーハを安価且つ容易に運搬することができる。
【0023】
なお、上述のように本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る分析用シリコンウェーハの運搬方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施形態に係る分析用シリコンウェーハの運搬方法の貼り合わせ工程で一例として用いる貼り合わせ装置の模式的な斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る分析用シリコンウェーハの運搬方法の剥離工程で一例として用いる剥離装置の模式的な平面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 貼り合わせ装置
20 剥離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハ表面の汚染濃度を分析するためのシリコンウェーハの運搬方法において、
同一ロット内の2枚のシリコンウェーハを、分析したい状態を維持したまま表面同士を向かい合わせにして貼り合わせる貼り合わせ工程と、
該貼り合わせ工程の後に、上記の貼り合わせられた状態の2枚のシリコンウェーハをウェーハケースに収納して運搬する運搬工程と、
該運搬工程の後に、上記の貼り合わせられた状態の2枚のシリコンウェーハを元の1枚の状態へと剥離し、上記の剥離されたシリコンウェーハそれぞれを分析装置へ導入する剥離工程とを備えた
ことを特徴とする、分析用シリコンウェーハの運搬方法。
【請求項2】
上記の分析とは、有機物濃度,イオン濃度及びメタル濃度のうちの少なくとも何れか1つの分析である
ことを特徴とする、請求項1記載の分析用シリコンウェーハの運搬方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−157584(P2010−157584A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334497(P2008−334497)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】