説明

分離部位を使用するセンサと注入セットの組合せ

本発明の実施形態は、流体を患者の身体に供給し、患者の身体特性を監視するための二重挿入セット(10)を提供する。本発明の典型的な実施形態は、ベース(40)、第1の穿孔部材(34)に結合された注入部分(30)、および第2の穿孔部材(24)に結合されたセンサ部分(20)を含む。注入部分は、流体を配置部位に供給するための穿孔部材に結合されたカニューレ(33)を含む。センサ部分は、ベースに結合されてベースから延びるセンサ(22)を含み、ベースは基板上に形成された少なくとも1つのセンサ電極を有し、センサを配置部位に挿入することができるように穿孔部材に結合される。ベースは二重挿入セットを患者の皮膚に固定するように構成される。典型的には、注入部分およびセンサ部分の穿孔部材は、ベースに動作可能に結合された場合に、カニューレを通して注入される流体中に存在する化合物によって生じる恐れがあるセンサの干渉を阻止するように設計された空間的な方向付けで配置されるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、センサと注入素子(infusion element)を組み合わせた装置、および患者の体内でこうした装置を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、(米国特許出願公開第2004/0074785A1として発行された)2002年10月18日に出願の米国特許出願第10/273,767号、2004年6月4日に出願の米国特許出願第10/861,837号、2005年6月8日に出願の米国特許出願第11/149,119号、2005年12月13日に出願の米国特許出願第11/301,512号、2006年4月4日に出願の米国特許出願第11/397,543号、および2006年7月25日に出願の米国特許出願第11/492,273号に関連するものであり、それぞれの内容を本願に引用して援用する。
【0003】
1型糖尿病の人、および2型糖尿病の多くの人にインスリンを与えなければならない。伝統的に、インスリンは経口的に摂取することができないために注射器で注射される。最近になって、特にベルト、ポケットなどに装着したデバイスを使用して、インスリンを糖尿病患者に送達するための外部注入ポンプ療法の使用が増加しており、インスリンは皮下組織内に配置された皮下針またはカニューレを有するカテーテルによって送達される。たとえば、1995年には、合衆国の1型糖尿病患者の5%未満がポンプ療法を使用していた。今や、合衆国の現在1,000,000人を超える1型糖尿病患者の約12%がインスリンポンプ療法を使用しており、この割合は毎年2%を超える急激な率で増加している。さらに、1型糖尿病患者の数は1年当たり3%以上増加している。また、ますます増加するインスリン使用の2型糖尿病患者も外部インスリン注入ポンプを使用している。医師は、連続した注入によって糖尿病の状態がより良く管理されることを認識しており、患者にそれを処方する数も増えている。さらに、薬剤ポンプ療法(medication pump therapy)は、肺高血圧症、HIV、および癌など他の医療状態の治療および管理にますます重要になっている。
【0004】
針および/または軟性カニューレを有する注入セットを使用して皮下組織に注入することによって、薬剤を送達するポンプ療法システムが開発されてきた。注入セットの軟性カニューレは、通常、軟性カニューレのねじれを防ぐために、針で皮膚内に挿入される。注入セットの挿入に伴う不快感および痛みを低減する自動挿入デバイスが使用されている。
【0005】
幾つかの他の医療デバイスが、薬剤を患者に送達する他に、体液の試料を得ることによって身体特性を決定するように設計されている。患者の血液中の特定の物質または組成物を検出かつ/または定量する様々な移植可能な電気化学センサが開発されている。たとえば、糖尿病患者の血糖値の表示度数の獲得に使用されるグルコースセンサが開発された。こうした読取は、典型的には患者へのインスリンの規則的な投与を含む治療計画の監視および/または調整に特に有用であり得る。したがって、全て明確に本願に引用して援用する、米国特許第4,562,751号、第4,678,408号、第4,685,903号に全般的に記載された外部型の半自動薬剤注入ポンプ、または米国特許第4,573,994号に全般的に記載された自動の移植可能な薬剤注入ポンプを有する薬物療法の改善に血糖の読取が特に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,562,751号明細書
【特許文献2】米国特許第4,678,408号明細書
【特許文献3】米国特許第4,685,903号明細書
【特許文献4】米国特許第4,573,994号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書に開示した本発明の実施形態は、たとえば特異性を含む幾つかのセンサの特性を最適化する方法で、センサ素子と患者に流体を注入するように設計された素子(element)とを組み合わせた装置を含む。本発明の例示の実施形態は、患者の身体に流体(たとえばインスリン)を供給し、その患者の身体特性(たとえば血糖)を監視するための装置である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この装置は、典型的には、装置を患者の皮膚に固定するように適合されたベース、ベースに結合されベースから延びる第1の穿孔部材であって、流体を注入部位に注入するための少なくとも1つのカニューレに動作可能に結合された第1の穿孔部材、ならびに、ベースに結合されベースから延び、センサ配置部位で少なくとも1つの患者の身体特性を決定するためのセンサ電極を有する電気化学センサに動作可能に結合された第2の穿孔部材を備える。本発明のこうした実施形態では、第1および第2の穿孔部材は、第1および第2の穿孔部材をベースに動作可能に結合し、患者に挿入することができる場合に、第1の穿孔部材によって作られた第1の貫通チャネル(perforation channel)が、第2の穿孔部材によって作られた第2の貫通チャネルと動作可能に接触しない方向付けで、ベースに結合される。この実施形態を使用して、たとえば、注入剤(infusate)(たとえばフェノール系防腐剤(phenolic preservative))中に存在する干渉物質(interferant)によって干渉が生じる場合に、患者の身体特性を監視する電気化学センサの干渉を回避することができる。具体的には、第1の穿孔部材によって作られた第1の貫通チャネルが第2の穿孔部材によって作られた第2の貫通チャネルと動作可能に接触しない挿入可能な装置を使用することによって、注入部位に注入された(干渉種を含む可能性がある)流体が貫通チャネルを通ってセンサまで流れるのが阻止される。
【0009】
本発明の典型的な実施形態では、(関連する穿孔部材を含む)センサ素子および注入素子は、センサの機能を最適化するように設計された構成で装置に配置される。たとえば本発明の一部の実施形態では、装置上の第1の穿孔部材は第2の穿孔部材よりも短い。本発明の幾つかの実施形態では、第1および第2の穿孔部材(たとえば金属針)は、カニューレから流体が出る注入部位が生体内環境の1つに、生理学的特性を感知するセンサが生体内環境の別の部位に配置されるように設計された方向付けでベースに結合される。本発明の典型的な実施形態では、第1および第2の穿孔部材は、第1および第2の穿孔部材が患者に挿入された場合に、注入部位が表皮層内に配置され、センサ電極が真皮層内に配置される方向付けでベースに結合される。本発明の関連する実施形態では、第1および第2の穿孔部材は、カニューレから流体が出る注入部位が、センサが配置された生体内の位置から一定の距離をおいて配置される第1の生体内の位置に配置されるように設計された方向付けでベースに結合される。たとえば、本発明の例示の実施形態では、第1および第2の穿孔部材は、第1および第2の穿孔部材が患者に挿入された場合に、注入部位とセンサ電極が少なくとも7ミリメートルの組織だけ分離される方向付けで、ベースに結合される。注入部位とセンサが少なくとも7ミリメートルの組織だけ分離される挿入可能な装置の使用により、注入部位に注入される(干渉種を含む可能性がある)流体がセンサの反応表面に拡散することができる前に周囲の組織によって吸収される。本発明の他の実施形態では、第1および第2の穿孔部材は、カニューレおよびセンサ電極が患者に配置された場合に、カニューレおよびセンサ電極が装置を患者の皮膚に固定することによって、たとえばセンサが分析物を感知する環境でセンサが動くのを阻止することによって、センサの読取を安定させる方向付けでベースに結合される。
【0010】
本発明の幾つかの実施形態では、装置は、カニューレおよび/またはセンサを装置の他の構成要素から独立して交換することができるようにするモジュラ設計を有することができる。たとえば、本明細書に開示した装置は、第1および第2の穿孔部材が、動作可能にベースと係合しベースから係合解除することができるハブ上に配置される実施形態を含むことができる。ハブを有する本発明の一部の実施形態では、ハブは、ハブがベースから係合解除されるときに、ハブを把持することができるようにするつまみ部材を備える。本発明の一部の実施形態では、装置は、流体を注入部位に注入するための微細針のアレイを含むことができる。本発明の幾つかの実施形態は、たとえばカニューレに連結されるように適合された注入セット管など、追加の素子を含むことができる。本発明の実施形態は、たとえば注入セット管に連結されるように適合された薬剤注入ポンプなど、治療組成物の送達を容易にするように設計された追加の素子をさらに備えることができる。
【0011】
本発明の他の実施形態は、流体を患者の身体に供給し、患者の身体特性を監視するための装置であり、この装置は、装置を患者の皮膚に固定するように適合されたベースと、ベースに結合され、ベースから延び、第1および第2の管腔を有する穿孔部材とを備え、第1の管腔が流体を注入部位に注入するように適合された出口を備え、第2の管腔が、第2の管腔中に配置された電気化学センサであって、センサの配置部位で患者の少なくとも1つの身体特性を決定するためのセンサ電極を備える電気化学センサ、およびセンサを患者の身体に露出する窓を備え、第1の管腔の出口および第2の管腔の窓は、穿孔部材がベースに動作可能に結合され、患者に挿入された場合に、注入剤が第2の管腔の窓から少なくとも7ミリメートルの部位にあるオリフィスから注入される方向付けで配置される。こうした実施形態では、任意選択で、第1の管腔の出口および第2の管腔の窓は、第2の管腔の窓が第1の管腔の出口よりもベースに近くなる方向付けで配置される。典型的な実施形態では、穿孔部材は、流体薬剤を流体リザーバから第1の管腔の出口を通して注入部位に送達するカテーテルに動作可能に結合された金属針である。さらに、幾つかの実施形態は、カニューレに連結されるように適合された注入セット管、および/または注入セット管に連結されるように適合された薬剤注入ポンプをさらに含む。
【0012】
本発明の幾つかの実施形態は、特定の電気化学センサ設計と共に使用されるように設計される。たとえば、本発明の一部の実施形態では、装置のセンサ部分が複数の層を備え、層の少なくとも1つが、電極がその上に配置されるベース基板であって、ベース基板上に配置された電極の電気化学的反応表面の表面積を増加させるように選択された幾何形状を含み、幾何形状上に配置された電極の電気化学的反応表面積の表面積対体積比が、平坦な表面上に配置された場合の電極の反応表面の表面積対体積比よりも大きくなるようになされたベース基板、または分析物が存在する場合に電極の電流を検出可能に変える分析物感知層、あるいはセンサの1つ以上の層の間の接着を促進する接着促進層、もしくは、中を通る分析物の拡散を調整する分析物調整層、または血糖に対して不透過性であり、アパーチャを含むカバー層を備える。
【0013】
本発明の実施形態は本明細書に開示した装置の作製および使用方法を含む。本発明の1つのこうした実施形態は、患者の身体特性を監視する電気化学センサの干渉を阻止する方法であって、流体を患者の身体に供給するための装置によって注入される注入剤(たとえばフェノール系防腐剤)中に存在する干渉物質によって干渉が生じ、方法が装置を使用して患者の身体に流体を供給することを含み、装置が、装置を患者の皮膚に固定するように適合されたベースと、ベースに結合され、ベースから延び、流体を注入部位に注入するための少なくとも1つのカニューレを備える第1の穿孔部材と、ベースに結合され、ベースから延び、センサの配置部位で患者の少なくとも1つの身体特性を決定するためのセンサ電極を有する電気化学センサを含む第2の穿孔部材と含み、第1および第2の穿孔部材が、第1および第2の穿孔部材が患者に挿入された場合に、第1の穿孔部材によって作られた第1の貫通チャネルが第2の穿孔部材によって作られた第2の貫通チャネルと動作可能に接触せず、注入部位に注入される流体が第1の貫通チャネルまたは第2の貫通チャネルを通ってセンサまで流れることができない方向付けでベースに結合されて、干渉が阻止される方法である。
【0014】
本発明の実施形態は、さらに、追加の、かつ/または複数の方法論的機能を実行する装置の使用方法を含む。たとえば、本発明の幾つかの実施形態は、干渉の阻止の他に、装置を患者に固定することによって、装置を安定させるようにさらに設計される。本発明の1つのこうした実施形態は、カニューレおよびセンサ電極が患者に配置された場合に、それらが装置を患者の皮膚に固定するように機能する方向付けで、第1および第2の穿孔部材がベースに結合される装置を使用する。本発明の実施形態は、幾つかの電気化学センサの実施形態と共に使用されるように設計されたものも含む。1つのこうした実施形態では、方法は、複数の層を有する電気化学センサで観察される干渉を阻止するように設計され、層の少なくとも1つが、その上に電極が配置されるベース基板であって、ベース基板上に配置された電極の電気化学的反応表面の表面積を増加させるように選択された幾何形状を含み、幾何形状上に配置された電極の電気化学的反応表面積の表面積対体積比が、平坦な表面上に配置された場合の電極の反応表面の表面積対体積比よりも大きくなるようになされたベース基板、または分析物が存在する場合に電極の電流を検出可能に変える分析物感知層、あるいはセンサの1つ以上の層の間の接着を促進する接着促進層、もしくは中を通る分析物の拡散を調整する分析物調整層、または血糖に対して不透過性であり、アパーチャを含むカバー層を備える。
【0015】
本発明は、ベース、カニューレ、穿孔部材および/またはセンサ素子、ならびにキットを含む二重挿入セットなどの製品も提供する。本発明の1つのこうした実施形態では、上記のように患者への流体の注入と分析物の感知の両方を行うように設計された装置を有するキットが提供される。キットおよび/またはセンサセットは、典型的には、容器、ラベル、および上記の装置を備える。典型的な実施形態は、容器を備えるキット、および容器内の、本明細書に開示した設計を有する装置、ならびに装置の使用説明書である。
【0016】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、当業者には、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、理解されるように、詳細な説明および特定の例は本発明の一部の実施形態を示すものであるが、例として与えられたものであり、限定的なものではない。本発明の精神から逸脱することなく、本発明の範囲内で多くの変更および修正を加えることができ、本発明はこうした修正を全て包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】グルコースとグルコースオキシダーゼの周知の反応を示す図である。段階的に示したように、この反応は、水中のグルコースオキシダーゼ(GOx)、グルコース、酸素に関するものである。還元半反応では、2つの陽子と電子がβ−D−グルコースからd−グルコノラクトンを生成する酵素に移動する。酸化半反応では、酵素が酸素分子によって酸化され、過酸化水素が生成される。次いで、d−グルコノラクトンが水と反応して、ラクトン環を加水分解し、グルコン酸が生成される。本発明の幾つかの電気化学センサでは、この反応で生成された過酸化水素が作用電極で酸化される(H→2H+O+2e)。
【図2】本発明のセンサ素子の構成成分の典型的な構成を示す図である。
【図3】センサおよびカニューレが患者の体内の異なる深さに配置される、本発明の二重挿入セットの実施形態を示す側面図である。
【図4A】本発明の一実施形態を示す図である。この実施形態では、センサおよびセンサコネクタがアセンブリの一縁部に向かうように作製され、カニューレが中心に向かうように位置付けられ、両方が皮膚の表面に対して90°の角度になされる。
【図4B】本発明の一実施形態を示す図である。挿入では、2本の針が取り付けられたハブがアセンブリと係合可能である。
【図4C】本発明の一実施形態を示す図である。次いでこのセットが手または自動挿入デバイスによって皮下組織内に挿入される。次いで、針を有するハブが除去され、廃棄される。
【図4D】本発明の一実施形態を示す図である。次いで、注入カテーテルを取り付けることができ、センサがケーブルまたは伝送機に差し込まれる。
【図4E】本発明の一実施形態を示す図である。代替実施形態は、たとえば、2つ以上の注入カニューレを使用して、干渉、または局所の組織の影響を全てさらに低減することができる変形形態を含むことができる。
【図5A】本発明の実施形態を示す図である。針を備えるアセンブリを有する装置を示す上面図である。
【図5B】本発明の実施形態を示す図である。針を備えるアセンブリを有する装置を示す底面図である。
【図5C】本発明の実施形態を示す図である。装置のセンサ/針ポートを通るように切り取られた断面図である。
【図5D】本発明の実施形態を示す図である。装置の注入ポートを通るように切り取られた断面図である。
【図5E】本発明の実施形態を示す図である。装置のセンサ/針ポートを通るように切り取られた断面図である。
【図5F】本発明の実施形態を示す図である。センサ針が除去された状態のアセンブリを有する装置を示す底面図である。
【図5G】本発明の実施形態を示す図である。センサ針が除去された状態のアセンブリを有する装置を示す断面図である。
【図5H】本発明の実施形態を示す図である。微細針アレイを有する装置を示す断面図である。
【図6A】二重管腔管を有する本発明の実施形態を示す図である。針を備えるアセンブリを有する装置を示す上面図である。
【図6B】二重管腔管を有する本発明の実施形態を示す図である。針を備えるアセンブリを有する装置を示す底面図である。
【図6C】二重管腔管を有する本発明の実施形態を示す図である。針を備える装置を示す断面図である。
【図6D】二重管腔管を有する本発明の実施形態を示す図である。針/管/センサを通るように切り取られた断面図である。
【図6E】二重管腔管を有する本発明の実施形態を示す図である。カテーテルを有する装置を示す図である。
【図6F】二重管腔管を有する本発明の実施形態を示す図である。カテーテルを有する装置を示す断面図である。
【図7A】同心の管および内部針を有する本発明の実施形態を示す図である。針を備えるアセンブリを有する装置を示す図である。
【図7B】同心の管および内部針を有する本発明の実施形態を示す図である。針を備えるアセンブリを有する装置を示す断面図である。
【図7C】同心の管および内部針を有する本発明の実施形態を示す図である。針を備える装置アセンブリを示す詳細図である。
【図8A】突き出たセンサおよび内部針を備える単一管腔管を有する本発明の実施形態を示す図である。針を備えるアセンブリを有する装置を示す断面図である。
【図8B】突き出たセンサおよび内部針を備える単一管腔管を有する本発明の実施形態を示す図である。針/管/センサを通る断面図、針を備えるアセンブリを有する装置を示す底面図である。
【図8C】突き出たセンサおよび内部針を備える単一管腔管を有する本発明の実施形態を示す図である。針/センサの係合を示す図である。
【図8D】突き出たセンサおよび内部針を備える単一管腔管を有する本発明の実施形態を示す図である。カテーテルを有する装置アセンブリを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、記号、および他の科学用語または専門用語は、本発明に関係する当業者に一般に理解される意味を有するものとする。場合によっては、一般に理解される意味を有する用語が、わかりやすくするために、かつ/または容易に参照されるように本明細書で定義される。本明細書にこうした定義を含むことは、当技術分野で一般に理解されるものと実質的に異なることを示すためであると必ずしも解釈すべきではない。本明細書に記載し、または参照した技法および手順の多くは、当業者によく理解されているものであり、従来の方法で一般に使用されているものである。必要に応じて、市販のキットおよび試薬の使用に関する手順は、別段の記載がない限り、一般に、製造者が規定したプロトコルおよび/またはパラメータに従って実行される。幾つかの用語を以下に定義する。
【0019】
本明細書で使用されるように、用語「分析物」は広義の用語であり、限定的ではないが、分析することができる生体液(たとえば、血液、間質液、脳脊髄液、リンパ液、尿)など流体中の物質または化学成分を指すことを含む通常の意味で使用される。分析物は、自然発生物質、人工物質、代謝産物、および/または反応生成物を含むことができる。一部の実施形態では、感知領域、デバイス、および方法による測定のための分析物はグルコースである。しかし、限定的ではないが、乳酸塩を含む他の分析物も企図される。血液または間質液中に自然に発生する塩、糖、タンパク質、脂肪、ビタミン、およびホルモンは、幾つかの実施形態で分析物を構成することができる。分析物は、たとえば、代謝産物、ホルモン、抗原、抗体など、生体液に自然に存在するものでもよく、または内因性のものでもよい。別法として、たとえば、撮像用造影剤、放射性同位元素、化学薬品、フルオロカーボンベースの合成血液、または薬物、あるいは、限定的ではないがインスリンを含む医薬品組成物など、分析物を体内に導入することができ、または分析物は外因性のものでもよい。薬物および医薬品組成物の代謝産物も分析物であることが企図される。
【0020】
本明細書で使用されるように、用語「センサ」は、広義の用語であり、限定的ではないが、分析物を検出する分析物監視デバイスの1つ以上の部分を含む通常の意味で使用される。一実施形態では、センサは、身体の1つの部位に電気化学的反応表面を形成し、身体の他の部位に電子接続部を形成する、センサ本体内を通過し、センサ本体内に固定された、作用電極、参照電極、および任意選択で対電極を有する電気化学セル、ならびに身体に付着され、電気化学的反応表面をカバーする膜系を含む。センサの通常の動作中、生物学的試料(たとえば、血液、あるいは間質液)、またはその一部は、(直接、もしくは1つ以上の膜あるいは領域の通過後に)酵素(たとえばグルコースオキシダーゼ)と接触し、その結果、生物学的試料(またはその一部)の反応は反応生成物が形成されて、生物学的試料中の分析物の値を決定することができるようになる。
【0021】
本明細書で使用されるように、用語「電気化学セル」は、広義の用語であり、限定的ではないが、化学エネルギが電気エネルギに変換されるデバイスを含む通常の意味で使用される。こうしたセルは、典型的には、互いから分離され、電解液と接触状態で保持された2つ以上の電極を含んでなる。電極を直流電流の電源に接続することによって、電極の1つが負に帯電され、他方が正に帯電される。電極の正イオンが負の電極(陰極)に移動し、そこで1つ以上の電子と結合し、電荷の一部または全てが失われ、より低い電荷を有する新しいイオン、または中性原子、あるいは分子になり、同時に、負のイオンが正の電極(陽極)に移動し、1つ以上の電子をそれに移行させ、やはり新しいイオンまたは中性の粒子になる。2つの過程の全体の効果は、電子の負イオンから正イオンへの変化であり、化学反応である。
【0022】
本明細書で使用されるように、用語「電気化学的反応表面」および「電気活性表面」は広義の用語であり、限定的ではないが、電気化学反応が起こる電極の表面を含む通常の意味で使用される。一例では、作用電極は、電流を生成する反応が検出された分析物の酵素触媒反応によって生成された過酸化水素を測定する(たとえば、グルコースオキシダーゼを使用するグルコース分析物の検出はHを副産物として生成し、Hは作用電極の表面に反応し、2つの陽子(2H)、2つの電子(2e)、および1つの酸素分子(O)を生成する、それによって、検出される電流が生成される)。対電極の場合は、たとえばOなど還元しうる種が電極の表面で還元されて、作用電極によって生成される電流の平衡が保たれる。
【0023】
本明細書で使用されるように、用語「感知領域」は、広義の用語であり、限定的ではないが、特定の分析物の検出を行うための監視デバイスの領域を含む通常の意味で使用される。例示の一実施形態では、感知領域は、身体上の電気化学的反応表面および身体の他の部位の電子接続手段を形成する本体を通過し本体内に固定された、非導電体、作用電極、参照電極、および対電極、ならびに電気化学的反応表面をカバーする1つ以上の層を含むことができる。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語「電位」および「ポテンシャル」は広義の用語であり、限定的ではないが、電流を流れさせる回路内の2点間の電位差を含む通常の意味で使用される。本明細書で使用されるように、用語「システム雑音」は、広義の用語であり、限定的ではないが、たとえば、ガウス、運動関連、フリッカー、動力学的(kinetic)、または他の白色雑音を含むことができる望ましくない電子または拡散関連の雑音を含む通常の意味で使用される。
【0025】
本明細書で使用されるように、用語「干渉物質」および「干渉種」は、広義の用語であり、限定的ではないが、センサの対象の分析物の測定を干渉して、分析物の測定値を正確に提示しない信号を生成する作用および/または種を含む通常の意味で使用される。典型的には、「干渉物質」または「干渉種」は、対象の分析物ではなく、電気活性化合物であり、イオン的に導電性物質に存在すると、サンプリングシステムで測定される分析物の濃度(または量)と関連しない反応をもたらし、物質中の分析物の検出を干渉するものである。電気化学センサでは、干渉種は、たとえば測定すべき分析物と重なる酸化電位を有する化合物である可能性がある。
【0026】
本明細書で使用されるように、用語「フェノール系防腐剤」は、クロロクレゾール、m−クレゾール、フェノール、またはその混合物など治療組成物に使用可能な技術的に許容されるフェノール系防腐剤を指す。
【0027】
以下で詳細に論じるように、本発明の実施形態は、たとえば糖尿病患者の血糖値の皮下または経皮的な監視に使用されるタイプのセンサ素子を含む装置を提供する。こうした装置は、たとえば、インスリンの糖尿病患者への注入に使用されるタイプのカニューレなどの注入素子をさらに含む。特定の実施形態では、本発明は、身体から得られるグルコース濃度測定値に基づいて患者の身体へのインスリン注入速度を調節するためのシステムを提供する。こうした実施形態では、素子は空間的に分離されるように構成され、さらに、生体内の環境で近位ではあるが分離された位置に挿入されるように設計される。この構成は、幾つかの予想以上の利益、および、たとえば、注入素子によって身体内に注入される治療組成物中に存在する様々な化合物によって生じるセンサの干渉を阻止する機能をもたらす。本発明の実施形態を、限定的ではないが、生物学的移植環境を含む様々な注入環境で使用することができる。他の環境には、限定的ではないが、外部注入デバイス、ポンプなどが含まれる。
【0028】
本発明の実施形態は、対象の分析物の濃度、または濃度を示す物質、あるいは流体中の分析物の存在を測定する電気化学センサを含むことができる。一部の実施形態では、センサは、たとえば皮下、経皮、または血管内デバイスなど、連続的デバイスである。本明細書に開示したセンサの実施形態は、侵襲的、最小侵襲的、および非侵襲的な感知技法を含む任意の周知の方法を使用して、対象の分析物の濃度を示す出力信号を提供することができる。典型的には、センサは体内または体外の分析物の目安として酸素が存在する際の分析物と酵素の酵素反応の生成物または反応物を感知するタイプのものである。典型的には、こうしたセンサは、以下に詳細に記載するように、複数の層を備える。典型的な実施形態では、センサは、分析物の測定に、電流測定(amperometric)、電量、電導度、および/または電位差技法を使用することができる。
【0029】
本発明の実施形態は、二重挿入セットを提供するようにセンサ素子ならびに注入素子を含む一連の素子を有する装置、すなわち、注入送達素子と生理的特性センサ素子の両方に動作可能に結合されたベースを有する装置を含む。一部の実施形態では、二重挿入セットの注入素子は、薬剤、化学薬品、酵素、抗原、ホルモン、ビタミンなどを含む流体など、流体を患者の体内に注入するものである。本発明の特定の実施形態では、二重挿入セットを外部注入デバイスに結合することができる。外部注入デバイスは、特に本願に引用して援用する、「External Infusion Device with Remote Programming,Bolus Estimator and/or Vibration Alarm Capabilities」という名称の米国特許第6,554,798号に記載されているように、RFプログラミング能力、炭水化物(またはボーラス)推定能力、および/または振動警告能力を含む。他の実施形態では、外部注入デバイスに結合されたAnimas IR−1250、Deltec Cozmo(登録商標)、Disetronic D−Tron(登録商標)plus、MiniMed Paradigm(登録商標)515/715、およびDana Diabecare(登録商標)など他の注入ポンプに二重挿入セットを結合することができ、二重挿入セットは、患者が、二重挿入セットを患者の身体から完全に取り外さずに、二重挿入セットを外部注入デバイスから簡単に切り離して、水泳に行ったり、シャワーを浴びたりなどすることを可能にする切り離しケーブルを含むこともできる。特定の実施形態はヒトに使用されることを対象としているが、代替実施形態では、二重挿入セットを動物に使用することもできる。
【0030】
幾つかの実施形態では、特に全て本願に引用して援用する、「Injector For A Subcutaneous Infusion Set」という名称の米国特許第5,851,197号、「Injector For A Subcutaneous Insertion Set」という名称の米国特許第6,093,172号、および「Insertion Device For An Insertion Set And Method Of Using The Same」という名称の米国特許第6,607,509号に記載されているように、二重挿入セットを挿入ツールに勘合されるように適合することができる。二重挿入を、患者に対して平坦であまり突出せずに配置されるようにさらに適合することができる。他の実施形態では、二重挿入セットの形状は、長方形、円形、正方形などでもよい。
【0031】
二重挿入セットに含まれたセンサを皮下、皮膚、真皮下、腹腔内、または腹膜組織の中かつ/またはそれを通して移植することができる。本発明の一部の実施形態では、センサをモニタに結合して、伝送機とモニタの間のワイヤまたはケーブル接続を使用せずに、またはその必要なく、患者の血液および/または体液中のグルコース値を決定することができる。こうした実施形態では、センサはグルコースオキシダーゼを使用してグルコース値を決定する。他の実施形態では、センサは、光学的、蛍光、または電気材料など他の材料を使用してグルコース値を決定することができる。理解されるように、本発明の他の実施形態を使用して、ホルモン、コレステロール、薬剤濃度、pH、酸素飽和度、ウイルス量(たとえばHIV)など、他の物質、特性、または組成物の値を決定することができる。他の実施形態では、センサは、遠方測定の特性監視伝送デバイスで受信したデータを使用してプログラミングまたは較正される能力、または、特別に本願に引用して援用する、「Telemetered Characteristic Monitor System And Method Of Using The Same」という名称の米国特許第6,809,653号に記載されたモニタデバイス(または受信機)で較正することができる能力を含むこともできる。遠方測定の特性監視システムを皮下ヒト組織で使用されるように最初に適合することができる。しかし、他の実施形態を筋肉、リンパ、器官組織、静脈、動脈など他のタイプの組織に配置することもでき、動物の組織で使用することもできる。実施形態は、断続的、ほぼ連続的、かつ/または連続的にセンサの読取を提供することができる。
【0032】
本発明の一部の実施形態では、特に全て本願に引用して援用する、「Indwelling Catheter With A Stable Enzyme Coating」という名称の米国特許第5,505,713号、「Subcutaneous Infusion Cannula」という名称の米国特許第6,475,196号、「Polymer Compositions containing Bioactive Agents and Methods for Their Use」という名称の米国特許第6,770,729号、「Anti−Inflammatory Biosensor For Reduced Biofouling And Enhanced Sensor Performance」という名称の米国特許出願公開第20030199837号に記載された、感染を防ぎ、かつ/または挿入部位の治癒を促進する薬剤または他の物質を本発明の装置にコーティングすることができる。二重挿入セットの特定の実施形態は、二重挿入セットを皮下組織中に経皮的に配置するものである。他の実施形態では、二重挿入のセンサ部分および注入部分を患者の身体内の異なる深さに配置することができる。
【0033】
本発明の二重挿入セットを使用して、患者の身体特性を監視することができる。一実施形態では、二重挿入セットのセンサ部分は血糖値を監視し、自動および/または半自動の薬剤注入ポンプと併せて使用することができる。他の実施形態では、センサ部分を使用して、ホルモン、コレステロール、薬剤濃度、pH、酸素飽和度、ウイルス量(たとえばHIV)など、他の物質、特性、または組成物の値を決定することができる。二重挿入セットの注入部分を使用して、患者の身体に流体を与えることができる。一実施形態では、注入部分は糖尿病患者にインスリンを与える。他の実施形態では、注入部分は、薬剤、化学薬品、酵素、抗原、ホルモン、ビタミンなどを患者の身体に与える。
【0034】
以下で論じるように、本明細書に開示した本発明の実施形態は、センサおよび注入素子、ならびに最適の感知特性が生成されるように選択されたこうした素子の配置または構成を含む。本開示はさらに、この素子の組合せを有する装置の作製および使用方法を提供する。本発明の一部の実施形態はグルコースおよび/または乳酸センサに関連するものであるが、本明細書に開示した様々な素子(たとえば、注入された流体が移植されたセンサと接触するのを阻止するように機能する構造の構成を有する穿孔部材)を当技術分野で周知の多様なセンサの任意のものと共に使用されるように適合することができる。本明細書に開示した分析物センサ素子、構造、およびこうした素子を作製し使用する方法を用いて、様々な層のセンサ構造を確立することができる。本発明のセンサと注入デバイス素子のこうした組合せは、たとえば、それぞれの内容を本願に引用して援用する、米国特許出願公開第20050115832号、米国特許第6,001,067号、第6,702,857号、第6,212,416号、第6,119,028号、第6,400,974号、第6,595,919号、第6,141,573号、第6,122,536号、第6,512,939号、第5,605,152号、第4,431,004号、第4,703,756号、第6,514,718号、第5,985,129号、第5,390,691号、第5,391,250号、第5,482,473号、第5,299,571号、第5,568,806号、第5,494,562号、第6,120,676号、第6,542,765号、ならびに、PCT国際公開第01/58348号、第04/021877号、第03/034902号、第03/035117号、第03/035891号、第03/023388号、第03/022128号、第03/022352号、第03/023708号、第03/036255号、第03/036310号、および第03/074107号、ならびに、欧州特許第1153571号に記載されたものを含む、これらの実施形態を多様な周知の注入およびセンサセットに適合させ、共に移植することができるようにする優れた可撓性、多様性、および特性を示す。
【0035】
本発明の特定の態様を以下の項で詳細に論じる。
【0036】
<I.本発明の典型的な素子、構成、および分析物センサ>
現在、インスリンポンプを装着している人が皮下グルコースセンサの使用を望む場合、彼らは、典型的には、1つがセンサ用で1つが注入カテーテル用の2つの別々のディスポーザブルセットを挿入し装着する。本明細書に記載した装置設計の実施形態は、センサおよび注入カテーテルを単一のセットに作製することができるようにして、患者の快適性および便宜を大きく向上させたものである。たとえば、グルコースセンサ/インスリン注入の組合せによって、患者が自分の身体上に装着すべきハードウェアの大きさが縮小され、使用する必要がある針スティックの数が減少する。本発明の幾つかの実施形態では、装置の素子の3D構造の構成は、患者の体内の注入カテーテルとセンサの生体内の相対位置が正確に管理されて、カニューレによって注入される液体(たとえば、フェノール系防腐剤を含む治療インスリン組成物)が注入部位からセンサに流れるのが阻止されるように配置される。
【0037】
[A.本発明の最適構成]
本発明の多様な実施形態がある。たとえば図面で示したように、本明細書に開示した本発明の実施形態は、患者の身体に液体(たとえばインスリン)を供給する他に、その患者の身体特性(たとえば血糖値)を監視する機能を果たす装置(典型的には二重挿入セット)で実現される。この装置は、通常、挿入中に皮膚を穿孔するための、少なくとも1つの穿孔部材、および典型的には2つの穿孔部材を含む。1つ以上の穿孔部材は、金属針、18ゲージ〜29ゲージなど、またはその間の任意の範囲の直径を有する中空の固体の半針(または他の部分)などでもよい。関連する実施形態では、1つ以上の穿孔部材を、セラミック、プラスチック、複合材料、ケイ素の微細針、生体分解性、親水性物質、身体および/または体液などとの接触後に軟化かつ/または変化する物質など、他の材料から作製することができる。他の実施形態では、装置は、少なくとも3つ以上の穿孔部材を含むことができ、別法として、1つだけの穿孔部材を含むこともできる。他の実施形態では、穿孔部材は、流体を送達するための体内に残るカニューレを含むことができ、かつ/またはそのカニューレとの交換によって交換することができる。他の実施形態は、少なくとも2つ以上の穿孔部材を含む。少なくとも1つ以上の穿孔部材はベースに結合され、ベースから延びて、少なくとも1つのカニューレおよび/または少なくとも1つのセンサを挿入しやすくする。
【0038】
本明細書に開示した本発明の実施形態は、分析物センサの特異性を含む幾つかのセンサの特性を最適化するように、患者に流体を注入するように設計された素子と電気化学分析物センサ素子を組み合わせた装置を含む。本発明の例示の実施形態は、流体(たとえばインスリン)を患者の身体に供給し、患者の身体特性(たとえば血糖)を監視する装置であり、この装置は、装置を患者の皮膚に固定するように適合されたベース、ベースに結合されベースから延びる第1の穿孔部材であって、流体を注入部位に注入するための少なくとも1つのカニューレに動作可能に結合された第1の穿孔部材、ベースに結合されベースから延び、センサ配置部位で少なくとも1つの患者の身体特性を決定するためのセンサ電極を有する電気化学センサに動作可能に結合された第2の穿孔部材を備える。本発明のこの実施形態では、第1および第2の穿孔部材は、第1および第2の穿孔部材がベースに動作可能に結合され、患者に挿入された場合に、第1の穿孔部材によって作られた第1の貫通チャネル(すなわち、穿孔部材が組織内に挿入されたときに穿孔部材によって作られた生体内チャネル)が第2の穿孔部材によって作られた第2の貫通チャネルと動作可能に接触しない方向付けでベースに結合される。このタイプの方向付けで配置された素子を有する装置を使用することによって、デバイスが身体内に挿入された場合に、1つ以上の注入素子によって作られた貫通チャネル、および1つ以上のセンサ素子によって作られた貫通チャネルが分離されており、接触せず、したがって、1つ以上の注入素子から注入される流体、干渉種を含んでいる可能性があるものが、貫通チャネルを通って移動して、センサ素子にアクセスし、センサ素子を干渉する可能性が回避される構造である。
【0039】
本発明の幾つかの実施形態では、第1および第2の穿孔部材(たとえば金属針)は、カニューレから流体が出る注入部位が生体内環境の1つに、センサが生体内環境の他方に配置されるように設計された方向付けでベースに結合される。たとえば、本発明の一実施形態では、第1および第2の穿孔部材は、第1および第2の穿孔部材が患者に挿入された場合に、注入部位が表皮層内に配置され、センサ電極が真皮層内に配置される方向付けでベースに結合される。本発明の関連する実施形態では、第1および第2の穿孔部材は、カニューレから流体が出る注入部位が、センサが配置された生体内の部位から一定の距離をおいて位置付けられる第1の生体内の部位に配置されるように設計された方向付けでベースに結合される。この距離は、注入部位とセンサの部位が十分に離れて、注入部位で注入される流体がセンサ素子にアクセスすることができる前に周囲の組織によって吸収されるように選択される。それに関連して、研究では、本発明の幾つかの実施形態で、7ミリメートルの距離が、注入部位で注入される流体がセンサ素子にアクセスできる前に周囲組織によって吸収されうる十分な距離であることが示されている。
【0040】
注入部位とセンサ素子の間の最適な距離は、たとえば、装置を配置すべき位置によって変えることができる。それぞれ特定の状況で注入される組成物中の干渉種の存在によって生じるセンサの干渉を回避または阻止するのに十分な注入部位とセンサ素子の間の距離を、本明細書に開示した例示の方法および装置を使用して試験することができる。例示の試験は、7メリメートルの組織の分離が、治療組成物の注入に使用される通常の条件下では十分であることを示している。たとえば、干渉化合物を含む流体の体積約200μlを電気化学センサの電極から7ミリメートルの組織だけ離れた部位で、センサの機能が干渉物質との接触によって損なわれることなく、約5〜15分間にわたり注入することができる。正確な距離は、注入される流体の量、注入速度(たとえば、比較的遅い注入速度では、注入された組成物がその部位で吸収され、近位のセンサと接触しないようにすることができる)、および組成物が注入される組織を含む要因によって変えることができる。それに関連して、本発明の一部の実施形態では、第1および第2の穿孔部材は、第1および第2の穿孔部材が患者に挿入された場合に、注入部位とセンサ電極が少なくとも4、5、6、または7、8、あるいは9ミリメートルの組織だけ分離される方向付けでベースに結合される。本発明の他の実施形態では、第1および第2の穿孔部材は、カニューレおよびセンサ電極が患者に配置された場合に、カニューレおよびセンサ電極が装置を患者の皮膚に固定することによって、たとえばセンサが分析物を感知する環境でセンサが動くのを阻止することによって、センサの読取を安定させる方向付けでベースに結合される。具体的には、注入カテーテルおよびセンサ電極を、装置が皮膚に固定されるように互いに対して組織内に配置することによって、この固定構成は、センサが分析物を感知する環境でセンサの動きを阻止する機能を果たし、それによって、(センサの動きによって移動した環境ではなく)前の試料が得られた同じ生体内環境から試験すべき試料を繰り返し得ることによって、センサの読取を安定化させる。
【0041】
本発明の幾つかの実施形態は、複数の効果を示すように設計された装置を使用する方法を含む。たとえば、本発明の1つのこうした実施形態は、患者の身体特性を監視する電気化学センサの干渉を阻止する方法であり、干渉は、患者の身体に流体を供給する装置によって注入される注入剤中に存在する干渉物質によって生じる。この方法は、装置を患者の皮膚に固定するように適合されたベース、ベースに結合されベースから延びる第1の穿孔部材であって、流体を注入部位に注入するための少なくとも1つのカニューレを備える第1の穿孔部材、ベースに結合されベースから延び、センサ配置部位で少なくとも1つの患者の身体特性を決定するためのセンサ電極を有する電気化学センサを含む第2の穿孔部材を備える装置を使用して、患者の身体に流体を供給することを含む。本発明のこの実施形態では、第1および第2の穿孔部材が、(1)第1および第2の穿孔部材が患者に挿入された場合に、第1の穿孔部材によって作られた第1の貫通チャネルが第2の穿孔部材によって作られた第2の貫通チャネルと動作可能に接触せず、注入部位に注入された流体が第1の貫通チャネルまたは第2の貫通チャネルを通ってセンサまで流れることができず、(2)注入部位が表皮層内に配置され、センサ電極が真皮層内に配置され、(3)注入部位とセンサ電極が少なくとも4、5、6、または7ミリメートルの組織だけ分離される方向付けでベースに結合されるように選択された素子の構成を有する装置を使用することによって、干渉が阻止される。この方法は、任意選択で、第1および第2の穿孔部材が、カニューレおよびセンサ電極が患者に配置された場合に、カニューレおよびセンサ電極が装置を患者の皮膚に固定することによって、センサの読取を安定させる方向付けでベースに結合されることを含む。
【0042】
本発明の一部の実施形態では、装置は、カニューレおよびセンサを装置の他の構成要素から独立して交換することができるようにするモジュラ構成である。さらに、本明細書に開示した装置は、第1および第2の穿孔部材が、動作可能にベースと係合し、ベースから係合解除することができるハブ上に配置される実施形態を含む。ハブを有する本発明の幾つかの実施形態では、ハブは、ハブがベースから係合解除されたときに、ハブを把持することができるようにするつまみ部材を備える。本発明の一部の実施形態では、装置上の第1の穿孔部材は第2の穿孔部材よりも短い。本発明の幾つかの実施形態では、装置は流体を注入部位に注入するための微細針のアレイを含む。本発明の幾つかの実施形態は、たとえばカニューレに連結されるように適合された注入セット管など、追加の素子を含む。本発明の他の実施形態は、注入セット管に連結されるように適合された薬剤注入ポンプをさらに備えることができる。
【0043】
本発明の幾つかの実施形態は、幾つかのセンサ構成と共に使用されるように設計される。たとえば、治療インスリン組成物中に存在するフェノール系防腐剤によって起きると考えられる干渉が、本明細書で詳細に論じる電気化学センサで観察される。したがって、本発明の一部の実施形態では、装置のセンサ部分は複数の層を備え、層の少なくとも1つが、電極がその上に配置されるベース基板であって、ベース基板上に配置された電極の電気化学的反応表面の表面積を増加させるように選択された幾何形状を含み、幾何形状上に配置された電極の電気化学的反応表面積の表面積対体積比が、平坦な表面上に配置された場合の電極の反応表面の表面積対体積比よりも大きくなるようになされたベース基板、または分析物が存在する場合に電極の電流を検出可能に変える分析物感知層、あるいはセンサの1つ以上の層の間の接着を促進する接着促進層、もしくは分析物の分析物調整層を通る拡散を調整する分析物調整層、または血糖に対して不透過性であり、アパーチャを含むカバー層を含む。本発明の幾つかの実施形態は、本明細書で詳細に論じるように、電気化学センサで観察された治療インスリン組成物中に存在するフェノール系防腐剤によって生じると考えられる干渉を回避または阻止することを対象とするが、本明細書に開示した装置および方法を使用して、様々なセンサで観察され、多様な化合物によって生じる干渉を回避することができる。
【0044】
本発明の他の異なる実施形態は、流体を患者の身体に供給し、患者の身体特性を監視する装置であり、この装置は、装置を患者の皮膚に固定するように適合されたベース、ベースに結合されベースから延び、第1および第2の管腔を有する穿孔部材を備え、第1の管腔は流体を注入部位に注入するように適合された出口を備え、第2の管腔はその中に配置された電気化学センサであって、センサ配置部位で患者の少なくとも1つの身体特性を決定するためのセンサ電極を含む電気化学センサ、およびセンサを患者の身体に露出する窓を備え、第1の管腔の出口および第2の管腔の窓は、穿孔部材がベースに動作可能に結合され、患者に挿入された場合に、注入剤が第2の管腔の窓から少なくとも7ミリメートルの部位にあるオリフィスから注入される方向付けで配置される。任意選択でこうした実施形態では、第1の管腔の出口および第2の管腔の窓は、第2の管腔の窓が第1の管腔の出口よりもベースに近くなる方向付けで配置される。典型的な実施形態では、穿孔部材は、流体薬剤を流体リザーバから第1の管腔の出口を通して注入部位に送達する、カテーテルに動作可能に結合された金属針である。さらに、幾つかの実施形態は、カニューレに連結されるように適合された注入セット管、および/または注入セット管に連結されるように適合された薬剤注入ポンプをさらに含む。
【0045】
本発明の一実施形態は、流体を患者の身体に供給し、患者の身体特性を監視するための二重挿入セットを備える装置である。二重挿入セットは、ベース、注入部分、およびセンサ部分を備える。ベースを使用して、二重挿入セットを患者の皮膚に固定することができる。注入部分は、典型的には、流体を注入配置部位に供給するための少なくとも1つのカニューレを有し、カニューレはベースに結合され、ベースから延びる。少なくとも1つのカニューレは、配置部位と流体連通するための遠位端を備える少なくとも1つの管腔を有し、少なくとも1つの管腔の遠位端の反対側の他端付近に形成された少なくとも1つのポート構造をさらに含むことができる。センサ部分は、基板上に形成された少なくとも1つのセンサ電極を有する、ベースに結合されベースから延びる少なくとも1つのセンサを有する。少なくとも1つのセンサは、センサ配置部位で患者の少なくとも1つの身体特性を決定するためのものである。本発明の幾つかの実施形態は、互いに所定の距離だけ間隔をおいて(たとえば、少なくとも3、4、5、6、7、8、または9ミリメートル以上離して)配置された注入部分とセンサ部分を有する。他の実施形態は、少なくとも1つのカニューレおよび少なくとも1つのセンサを患者の身体内に挿入するための少なくとも2つの分離した穿孔部材を含む。他の実施形態は、等しい長さの注入部分およびセンサ部分を有する。他の実施形態は、注入部分の長さよりも短いサイズのセンサ部分の長さを有する。さらなる実施形態は、センサ部分の長さより短いサイズの注入部分の長さを有する。特定の実施形態は、穿孔部材として金属針を備える。
【0046】
本発明の幾つかの実施形態は、流体を供給する外側管腔、およびセンサ部分を収容する内側管腔を含むカニューレを提供する。外側管腔の遠位端を密封し、内側管腔を開放して、少なくとも1つのセンサが内側管腔の外に突き出るようにすることができる。代替実施形態では、外側管腔はセンサ部分を含むことができ、内側管腔は流体を供給することができる。他の実施形態では、カニューレは並列の管腔を含むことができる。少なくとも1つのカニューレは、典型的には、流体を患者の体内に注入するための少なくとも1つの開口を含む。さらに、1つの穿孔部材を使用して、二重挿入セットを患者の身体内に挿入することができる。他の実施形態は、少なくとも1つの内部電源を含むセンサを提供することができる。内部電源はさらに、漏れ検出システムを駆動することができる。特定の実施形態は、注入流体としてインスリンを供給する。幾つかの実施形態では、監視される身体特性は血糖でもよい。
【0047】
本発明の一実施形態は、ベース、注入部分、センサ部分、および少なくとも2つの穿孔部材を含む、流体を患者の身体に供給し、患者の身体特性を監視するための二重挿入セットである。ベースは、二重挿入セットを患者の皮膚に固定するために使用される。注入部分は、流体を注入配置部位に供給するための少なくとも1つのカニューレを含み、カニューレはベースに結合され、ベースから延びる。少なくとも1つのカニューレは、配置部位と流体連通するための遠位端を有する少なくとも1つの管腔、および少なくとも1つの管腔の遠位端の反対側の他端の付近に形成された少なくとも1つのポート構造を有する。センサ部分は、基板上に形成された少なくとも1つのセンサ電極を有する少なくとも1つのセンサを含む。少なくとも1つのセンサは、センサ配置部位で患者の少なくとも1つの身体特性を決定するためのものである。穿孔部材はベースに結合され、ベースから延びて、少なくとも1つのカニューレおよび少なくとも1つのセンサを挿入しやすくする。少なくとも1つのカニューレは、流体を患者の体内に注入するための少なくとも1つの開口を含むこともできる。本発明の装置上の穿孔部材の構造、幾何形状、および方向を正確に制御して、装置のカニューレによって注入される液体が身体によって吸収され、注入部位から装置のセンサに流れないようにすることができる。一部の実施形態では、穿孔部材は金属針であり、注入される流体はインスリンである。他の実施形態では、少なくとも1つの監視される身体特性は血糖である。他の実施形態は、少なくとも1つのセンサ用の内部電源を含むことができる。他の実施形態では、内部電源は漏れ検出システムを駆動することができる。
【0048】
本発明の代替実施形態は、ベース、注入部分、センサ部分、および穿孔部材を含む、流体を患者の身体に供給し、患者の身体特性を監視するための二重挿入セットを使用することによって、注入剤(たとえばフェノール系防腐剤)中に存在する干渉種によって生じるセンサの干渉を回避、阻止、または低減する方法である。ベースは、二重挿入セットを患者の皮膚に固定するために使用される。注入部分は、患者の皮膚を貫通し、流体を配置部位に供給するための穿孔部材を含む。穿孔部材はベースに結合され、ベースから延びる。さらに、穿孔部材は、注入配置部位と流体連通するための遠位端を有する少なくとも1つの管腔、および少なくとも1つの管腔の遠位端の反対側の他端の付近に形成された少なくとも1つのポート構造を有する。センサ部分は、ベースの穿孔部材、および基板上に形成された少なくとも1つのセンサ電極を有する、ベースに結合されベースから延びる少なくとも1つのセンサを含む。少なくとも1つのセンサは、センサ配置部位で患者の少なくとも1つの身体特性を決定するためのものである。この方法は、穿孔部材の相対位置および方向が正確に制御されて、カニューレによって注入される液体が身体に吸収され、注入部位からセンサに流れないようになされた装置を使用する。こうすると、こうした装置をこの方法で使用することによって、注入剤中に存在する干渉種によって生じるセンサの干渉を回避することができるようになる。例示の一実施形態では、干渉種は薬剤組成物(たとえばインスリン)中に存在するフェノール系防腐剤であり、センサは以下で詳細に論じる複数層の電気化学センサである。
【0049】
次に図を参照すると、図3で示したように、本発明の一実施形態による二重挿入セット10を備える装置は、センサ部分20、注入部分30、ベース40、センサ22、カニューレ33、および穿孔部材24と34を含む。二重挿入セット10の部分20と30の両方がベース40に固定される。注入部分30は一端で、外部注入デバイス、ポンプなどに連結された管50に連結される。センサ部分20は、特に両方を本願に引用して援用する、「Method of Fabricating Thin Film Sensors」という名称の米国特許第5,391,250号、および「Electrochemical Analyte Sensor」という名称の米国特許第6,484,046号に記載されているように、センサ、すなわち患者の状態を表す特定の血液パラメータを監視するために使用されるタイプの可撓性の薄いフィルムの電気化学センサを正確に配置しやすくするように特別に設計される。一部の実施形態では、センサ部分20は、特に全て本願に引用して援用する、米国特許第5,390,671号、第5,568,806号、および「Transcutaneous Sensor Insertion Set」という名称の第5,586,553号に記載されているように、糖尿病患者の血糖値の監視に使用される。
【0050】
図で示したように、本明細書に開示した装置の実施形態を様々な素子と共に使用されるように適合することができる。たとえば、図4で示した実施形態は、ベースまたはハウジング100、センサと挿入針120またはカニューレと挿入針130の組合せを含む素子、挿入針140を有するハブ(ハブがベースから係合解除されるときにハブを把持することができるようにするつまみ部材を有するハブ)、センサ伝送機150、および注入カテーテル160などの素子を含む。図5で示した実施形態は、たとえば、注入カテーテルポート170、微細針アレイ180、微細針アレイおよび様々なシール190などの素子を含む。図6で示した実施形態は、たとえば、二重管腔管185、センサ電極窓195、注入管腔200、センサ管腔210、センサ注入窓220、およびOリングシール230などの素子を含む。図7で示した実施形態は、たとえば、カテーテルポート240、内側管260、外側管250、およびセンサ270を保護するためのポッティングまたはオーバーモールディングなどの素子を含む。図8で示した実施形態は、たとえば、C形状の断面を有する針280、および下方屈曲素子を有するセンサ290などの素子を含む。
【0051】
この装置の実施形態は、皮下センサおよび単一ハウジング内への薬物注入カテーテルを備えるものを含むが、それらを皮膚に挿入して、それらが空間的に分離され、かつ/または生体内で所定の3D構成に配置されるようにすることができる。この分離および/または構成は、注入剤中の干渉種がセンサ自体に与える恐れがある干渉の影響を低減するように設計される。さらに、この構成は、注入剤によって生じる局所の生理的(または代謝の)影響に対するセンサの応答を低減することもできる。本発明の一部の実施形態では、センサおよびカテーテルは、注入部位が電気化学センサ内のセンサ電極から固定の距離、たとえば少なくとも3、4、5、6、または7ミリメートル離れたところの皮下組織内に挿入される。2つの分離された部位を有することは、注入剤(たとえば、センサの性能を干渉する恐れがある化合物を含むもの)とセンサ電極の間の接触を阻止する他に、たとえばデバイスが皮膚から取り外されるのを阻止することによって、皮下組織へのデバイスの配置の安定化も向上させる。
【0052】
本発明の幾つかの実施形態では、それぞれ注入部位およびセンサの最適の深さは独立して選択され、それに応じて素子の構成が配置される。たとえば、装置の一実施形態は、注入部位を浅い皮下層に配置し、センサ電極を比較的深い真皮層に配置するように設計された素子の配置を含む。具体的には、皮膚は、表皮と呼ばれる上層、真皮と呼ばれる中間層、および皮下層と呼ばれる下層の3つの異なる層を含む。表皮は厚さが約60から120μm(ミクロン)であり、角質層と呼ばれる10から20μmの外側層、続いて淡明層および顆粒層、有棘層および(「基底層」とも呼ばれる)胚芽層を含む幾つかの異なる層を含む。角質層は、脂質の細胞外基質で取り囲まれた架橋したケラチンおよびケラトヒアリンの束で満たされた細胞を含む。内側層は、生きた表皮と集合的に呼ばれ、全体の厚さが約50から100μmである。本発明の幾つかの実施形態では、装置は、注入部位および/またはセンサがこれらの層の1つに配置されるようになる構成を有するように設計される。
【0053】
表皮の底部に基底膜があり、基底膜は表皮をしっかりと、しかし剛体的にではなく、下の層(すなわち真皮)に付着する。真皮は表皮よりもはるかに厚く、約2000から3000μmの厚さを有する。真皮層は、全般的に、コラーゲン繊維、およびこの繊維中に分散された間質液を含む結合組織の密なベッドを含んでなる。真皮は、構造的に2つの領域、乳頭領域と呼ばれる表皮に隣接する浅い領域、および網状領域として周知の深く比較的厚い領域に分割される。乳頭領域は、疎な輪状結合組織からなる。この名前は、表皮に向かって延びる乳頭と呼ばれる指状の突起に由来する。網状領域は、乳頭領域の深いところに存在し、通常ははるかに厚いものである。網状領域は、密で不規則な結合組織を含んでなり、その名前は、網状領域中で編まれた高密度のコラーゲン性の弾性で網様の繊維に由来する。こうしたタンパク質繊維は真皮に強度、伸展性、弾性の特性を与える。本発明の幾つかの実施形態では、装置は、注入部位および/またはセンサがこれらの層または領域の1つに配置されるようになる構成を有するように設計される。
【0054】
本発明の装置の例示の一実施形態が図4に示されている。この実施形態では、センサおよびセンサコネクタがアセンブリの一縁部に向かうように作製され、カニューレが中心に向かうように位置付けられ、両方が皮膚の表面に対して90°に角度付けられる。挿入では、2本の針が取り付けられたハブがアセンブリと係合可能である(図4Aを参照)。次いでこのセットが手または自動挿入デバイスによって皮下組織内に挿入される。次いで、針を有するハブが除去され、廃棄される(図4Bを参照)。次いで、注入カテーテルを取り付けることができ、センサがケーブルまたは伝送機に差し込まれる(図4Cおよび4Dを参照)。代替実施形態は、たとえば、1つ以上の注入カニューレがステンレス鋼など剛性材料から作製され、別の挿入針が不要な変形形態、2つ以上の注入カニューレを使用して、干渉または局所的な組織の影響を全てさらに低減することができる変形形態(図4Eを参照)、針および1つ以上のカニューレが角度を付けてセットに作製される変形形態を含むことができる。他の実施形態では、セットのセンサおよび注入構成要素は、いずれも他方から独立して除去または再配置することができるモジュラ方法でモジュラに設計される。
【0055】
本発明の他の実施形態では、皮下センサは、薬物注入用の微細針アレイと単一ディスポーザブルセットを組み合わせたものである。センサと注入セットの組合せのこの実施形態は、注入のための微細針アレイと共に皮下センサを使用する。この構成は、センサ電極と注入剤を十分に分離させて、干渉または局所的な組織の影響を防止するものである。このデバイスの一適用例は、グルコースセンサ/インスリン注入セットの組合せであるが、このデバイスが有用であることが判明する他の治療もある。このタイプのデバイスの一実施形態が図5A〜5Hに示されている。この構成では、微細針アレイは、デバイスの底面上のセンサがセットから出る点に隣接するように配置される。「C」形状の断面を形成するように研削された一側面を有する針を使用して、センサが挿入される。挿入針は下方に屈曲した領域でセンサと係合する。それによって、挿入中に針がセンサを保護することができ、針を引き抜くことができるようになる。挿入後、針は除去され、廃棄される。デバイスを手または自動挿入デバイスで挿入することができる。
【0056】
本発明の他の実施形態は、皮下センサと二重管腔管を使用する注入セットとの組合せである。本発明のこの実施形態は、2つの独立した管腔を有する管を組み込んで、センサおよび注入カテーテルが単一部位を共用することができるようにする。センサは管の1つの管腔内に収容され、第2の管腔を注入に使用することができる。それによって、センサを注入される薬物と直接接触しないように隔離することができるようになる。典型的には、このセットは、センサと注入カテーテルを組合せ、センサを1つの管腔内に収容し、第2の管腔を通る薬物注入用のチャネルを提供する二重管腔管を含む。セットを単一針で挿入することができる。センサにアクセスできるようにする窓と薬物用出口の相対位置は、たとえば、センサと注入剤中に存在する可能性がある干渉種との接触の阻止、すなわち、センサ電極を注入剤の流路から隔離することができるようにする構成など所望の特性によって最適化される。たとえば、所定の用途に最適の相対位置によって、センサ電極へのアクセス窓を注入管腔窓の近く、または離れたところに配置することができる。このデバイスの一適用例は、グルコースセンサ/インスリン注入セットの組合せであるが、こうしたデバイスが有用な他の治療内容もある。
【0057】
このタイプの装置の様々な構成の実施形態が図6〜8に示されている。図6A〜6Fは、外側針を備える二重管腔管を有する本発明の一実施形態を示す図である。この実施形態では、「C」形状の断面を形成するように研削された一側面を有する針が、二重管腔管の外側である。この針を使用してデバイスを挿入し、次いで針を引き抜いて廃棄する。次いで、注入カテーテルをアセンブリに差し込むことができる。内部針を有する二重管腔管を備える一実施形態が図7A〜7Fに示されている。この実施形態では、針は二重管腔管の注入管腔内に存在する。この針を使用してデバイスを挿入し、次いで針を引き抜いて廃棄する。次いで、注入カテーテルをアセンブリに差し込むことができる。内部針を有する同心の管を備える一実施形態が図8A〜8Cに示されている。この実施形態では、センサは2つの同心の管の壁の間に存在する。内側管の内径は、挿入針を収容するものであり、注入管腔としても働く。この針を使用してデバイスを挿入し、次いで針を引き抜いて廃棄する。次いで、注入カテーテルをアセンブリに差し込むことができる。
【0058】
本発明の実施形態は、装置、および、たとえば注入剤中に存在する干渉物質によって生じるセンサの干渉を阻止/回避するように設計された装置など、こうした装置を特殊な方法で使用する方法の両方を含む。本発明の1つのこうした実施形態は、患者の身体特性を監視する電気化学センサの干渉を阻止する方法であって、流体を患者の身体に供給するための装置によって注入される注入剤中に存在する干渉物質(たとえばフェノール系防腐剤)によって干渉が生じ、この方法は装置を使用して患者の身体に流体を供給することを含み、装置は、装置を患者の皮膚に固定するように適合されたベース、ベースに結合されベースから延びる第1の穿孔部材であって、流体を注入部位に注入するための少なくとも1つのカニューレを備える第1の穿孔部材、ベースに結合されベースから延び、センサの配置部位で患者の少なくとも1つの身体特性を決定するためのセンサ電極を有する電気化学センサを含む第2の穿孔部材を備え、第1および第2の穿孔部材は、第1および第2の穿孔部材が患者に挿入された場合に、第1の穿孔部材によって作られた第1の貫通チャネルが第2の穿孔部材によって作られた第2の貫通チャネルと動作可能に接触せず、注入部位に注入される流体が第1の貫通チャネルまたは第2の貫通チャネルを通ってセンサに流れない方向付けでベースに結合されて、干渉が阻止される。
【0059】
本発明の実施形態は、さらに、追加かつ/または複数の方法論的機能を含む。たとえば、本発明の幾つかの実施形態は、干渉の阻止の他に、装置を患者に固定することによって装置を安定させるようにさらに設計される。本発明の1つのこうした実施形態は、第1および第2の穿孔部材が、カニューレおよびセンサ電極が患者に配置された場合に、それらが装置を患者の皮膚に固定するように機能する方向付けでベースに結合される装置を使用する。本発明の実施形態は、幾つかのセンサの実施形態と共に使用されるように設計されたものも含む。1つのこうした実施形態では、方法は、複数の層を有するセンサで観察される干渉を阻止するように設計され、少なくとも1つの層は、電極がその上に配置されるベース基板であって、ベース基板上に配置された電極の電気化学的反応表面の表面積を増加させるように選択された幾何形状を含み、幾何形状上に配置された電極の電気化学的反応表面積の表面積対体積比が、平坦な表面上に配置された場合の電極の反応表面の表面積対体積比よりも大きくなるようになされたベース基板、または分析物が存在する場合に電極の電流を検出可能に変える分析物感知層、あるいはセンサの1つ以上の層の間の接着を促進する接着促進層、もしくは分析物の分析物調整層を通る拡散を調整する分析物調整層、または血糖に対して不透過性であり、アパーチャを含むカバー層を含む。
【0060】
本発明のさらに他の実施形態は、哺乳類の体内に移植するための二重挿入セット装置の作製方法であって、ベース層を提供するステップ、次いで注入素子(または一連の注入素子)をベース上に配置するステップ、次いでセンサ素子(または一連のセンサ素子)をベース上にさらに配置して装置が作製されるようにするステップを含む。典型的には、こうした素子の3D構成は、結果としての生体内への素子の配置が正確に制御されるように、製造中に制御される。任意選択で、導電層をベース層上に形成し、導電層が作用電極を含むこと、分析物感知層を導電層状に形成し、分析物が存在する場合に導電層内の作用電極の電流を変えることができる組成物を分析物感知層が含むこと、任意選択でタンパク質層を分析物感知層上に形成すること、接着促進層を分析物感知層または任意選択のタンパク質層上に形成すること、接着促進層上に配置される分析物調整層を形成し、分析物調整層が、中を通る分析物の拡散を調整する組成物を含むこと、次いで、分析物調整層の少なくとも一部上に配置されるカバー層を形成し、カバー層が分析物調整層の少なくとも一部上にアパーチャをさらに含むことによって、センサ素子を作製することができる。
【0061】
[B.典型的なセンサ構成を示す図]
図2は、本発明の典型的なセンサ構造100を示す断面図である。センサは、典型的には、センサ構造を作製するための本発明の方法による、互いの上に配置された様々な導電性および非導電性の成分の層の形態である複数の構成要素から形成される。本明細書では、センサの構成要素は、典型的には層であることを特徴とする。なぜなら、たとえば、図2で示したセンサ構造の特徴が容易に可能になるからである。しかし当業者には理解されるように、本発明の幾つかの実施形態では、センサの構成成分は複数の構成成分が1つ以上の異質な層を形成するように組み合わされる。それに関して、当業者には理解されるように、層になされた構成成分の順序を本発明の様々な実施形態で変えることができる。
【0062】
図2の実施形態は、センサ100を支持するベース層102を含む。ベース層102を金属および/またはセラミックおよび/またはポリマの基板などの材料から作製することができ、ベース層102は自己支持型でもよく、またはさらに当技術分野で周知の他の材料で支持することもできる。本発明の実施形態は、ベース層102上に配置された、かつ/またはベース層102と組み合わせた導電層104を含む。幾つかの実施形態では、ベース層102および/または導電層104を、電極の電気化学的反応表面が幾何形状上に配置されて、平坦な表面上に配置された場合よりも電気化学的反応表面積が大きくなる構成を有する電極が作製されるように構築することができる。
【0063】
典型的には、導電層104は1つ以上の電極を備える。作動センサ100は、典型的には、作用電極、対電極、および参照電極など複数の電極を含む。他の実施形態は、たとえば参照電極と対電極の両方の機能を果たすものなど、複数の機能を果たす電極を含むこともできる。他の実施形態は、センサ上に形成されない別の参照素子を使用することができる。典型的には、こうした電極は互いに電気的に絶縁されるが、互いに近接するように位置付けられる。
【0064】
以下で詳細に論じるように、ベース層102および/または導電層104を多くの周知の技法および材料を使用して作製することができる。本発明の幾つかの実施形態では、センサの電気回路は、配置した導電層104を所望のパターンの導電路にエッチングすることによって画定される。センサ100用の典型的な電気回路は、近位端に接触パッドを形成する領域を有し、遠位端にセンサ電極を形成する領域を有する2つ以上の隣接する導電路を備える。ポリマコーティングなど電気的に絶縁されたカバー層106が、任意選択でセンサ100の一部上に配置される。絶縁性保護カバー層106として使用するための許容されるポリマコーティングは、限定的ではないが、シリコーン化合物、ポリイミド、生体適合性はんだマスク、エポキシアクリレートコポリマなど無毒の生体適合性ポリマを含むことができる。本発明のセンサでは、カバー層106を通る1つ以上の露出された領域またはアパーチャ108を作製して、導電層104を外部環境に開放し、たとえば、グルコースなど分析物がセンサの層を透過して、感知素子によって感知されることができるようにする。アパーチャ108を、レーザアブレーション、テープマスキング、ケミカルミリング、またはエッチング、あるいはフォトリソグラフィ現像などを含む幾つかの技法で形成することができる。本発明の幾つかの実施形態では、製造中に第2のフォトレジストを保護層106に塗布して、1つ以上のアパーチャ108を形成するために除去すべき保護層の領域を画定することもできる。露出した電極、および/または接触パッドに、追加のめっき処理など(たとえばアパーチャ108を通して)第2の処理を行って、表面を調製し、かつ/または導電性領域を強化することもできる。
【0065】
図2で示したセンサ構成では、分析物感知層110(典型的にはセンサ化学層であり、この層の材料が化学反応を受けて導電層で感知することができる信号を生成することを指す)は導電層104の1つ以上の露出した電極上に配置される。典型的には、センサ化学層110は酵素層である。さらに典型的には、センサ化学層110は、酸素、および/または、過酸化水素を生成し、かつ/または利用することができる酵素、たとえば酵素グルコースオキシダーゼを含む。任意選択で、センサ化学層中の酵素は、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンなど第2の担体タンパク質と組み合わされる。例示の実施形態では、センサ化学層110中のグルコースオキシダーゼなどの酵素は、グルコースと反応して、過酸化水素、すなわち電極で電流を調整する化合物を生成する。この電流の調整は過酸化水素の濃度に依存し、過酸化水素の濃度はグルコース濃度と関連するため、この電流の調整の監視によってグルコース濃度を決定することができる。本発明の特定の実施形態では、過酸化水素は、(本明細書で陽極作用電極とも呼ばれる)陽極である作用電極で酸化され、得られる電流は過酸化水素濃度に比例する。過酸化水素濃度の変化によって生じる電流のこうした調整を、汎用センサの電流測定バイオセンサ検出器など様々なセンサ検出器装置の任意のもの、またはMedtronic MiniMedによって製造されたグルコース監視デバイスなど当技術分野で周知の同様の他の様々なデバイスの1つによって監視することができる。
【0066】
分析物感知層110を導電層の一部上、または導電層の全体領域上に塗布することができる。典型的には、分析物感知層110は、陽極または陰極でもよい作用電極上に配置される。任意選択で、分析物感知層110を対電極および/または参照電極上に配置することもできる。分析物感知層110の厚さは約1000ミクロン(μm)まででもよいが、典型的には、分析物感知層は上記の技術分野で見られるものと比べて比較的薄く、たとえば、典型的には、1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満の厚さである。以下で詳細に論じるように、薄い分析物感知層110を作製する一部の方法は、スピンコーティング法、浸漬乾燥(dip and dry)法、低シェアスプレイ法、インクジェットプリンティング法、シルクスクリーン法などを含む。最も典型的には、薄い分析物感知層110はスピンコーティング法を使用して塗布される。
【0067】
典型的には、分析物感知層110は1つ以上の追加の層でコーティングされる。1つ以上の追加の層は、任意選択で、分析物感知層110上に配置されるタンパク質層116を含む。典型的には、タンパク質層116はアルブミンなどのタンパク質を含む。典型的には、タンパク質層116はヒト血清アルブミンを含む。本発明の一部の実施形態では、追加の層は分析物調整層112を含み、分析物調整層112は分析物感知層110上に配置されて、分析物と分析物感知層110の接触を調節する。たとえば、分析物調整膜層112は、分析物感知層中に存在するグルコースオキシダーゼなど酵素と接触するグルコースの量を調節するグルコース制限膜を含むことができる。こうしたグルコース制限膜を、たとえばポリジメチルシロキサンなどシリコーン化合物、ポリウレタン、ポリ尿素酢酸セルロース、ナフィオン、ポリエステルスルホン酸(たとえばKodak AQ)、ヒドロゲル、または当技術分野で周知の任意の他の適当な親水性膜など、この目的に適していることが周知の多様な材料から作製することができる。典型的には、分析物調整層は、中央鎖および中央鎖に結合された複数の側鎖を有する親水性櫛型コポリマを含み、少なくとも1つの側鎖はシリコーン部分を含む。
【0068】
本発明の典型的な実施形態では、図2で示したように、接着促進層114が分析物調整層112と分析物感知層110の間に配置されて、層を接触かつ/または接着しやすくする。本発明の特定の実施形態では、図2で示したように、接着促進層114が分析物調整層112とタンパク質層116の間に配置されて、層を接触かつ/または接着しやすくする。接着促進層114をこうした層の間の結合を容易にする当技術分野で周知の多様な材料の任意のものから作製することができる。典型的には、接着促進層114はシラン化合物を含む。代替実施形態では、分析物感知層110中のタンパク質または同様の分子を十分に架橋し、または他の方法で調製して、接着促進層114が存在しない場合に、分析物調整膜層112が分析物感知層110と直接接触するように配置することができるようにする。
【0069】
[C.典型的な分析物センサの構成成分]
以下の開示は、本発明のセンサで使用される典型的な素子/構成成分の例を提供するものである。こうした素子を個々のユニット(たとえば層)として記載することができるが、当業者には理解されるように、以下で論じる素子/構成成分(たとえば、支持ベース構成成分、および/または導電性構成成分、および/または分析物感知構成成分のマトリックスとして働き、さらにセンサの電極としても機能する素子)の材料特性および/または機能の一部または全ての組合せを有する素子を含むように、センサを設計することができる。
【0070】
(ベース構成成分)
本発明のセンサは、典型的には、ベース構成成分(たとえば、図2の素子102を参照)を含む。用語「ベース構成成分」は、技術的に容認された専門用語に従って本明細書で使用され、典型的には、積み重ねられ、機能センサを含む、複数の構成成分に支持マトリックスを与える装置の構成成分を指す。一形態では、ベース構成成分は絶縁性(たとえば、電気絶縁性および/または水不透過性)材料の薄いフィルムシートを含む。このベース構成成分を水不透過性および気密性など望ましい性質を有する多様な材料で作製することができる。幾つかの材料には、金属、セラミック、およびポリマの基板などが含まれる。幾つかの実施形態では、電極の電気化学的反応表面が幾何形状上に配置されて、平坦な表面上に配置された場合よりも電気化学的反応表面積が大きくなる構成を有する電極が作製されるように、ベース構成成分および/または導電性構成成分を構築することができる。
【0071】
ベース構成成分は自己支持型でもよく、または当技術分野で周知の他の材料でさらに支持することもできる。図2で示したセンサ構成の一実施形態では、ベース構成成分102はセラミックを含む。例示の実施形態では、セラミックベースは主にAl(たとえば96%)である組成物を含む。移植可能なデバイスと共に使用される絶縁ベース構成成分としてのアルミナの使用が、本願に引用して援用する、米国特許第4,940,858号、第4,678,868号、および第6,472,122号に記載されている。本発明のベース構成成分は、たとえば密封路(たとえば国際公開第03/023388号を参照)など当技術分野で周知の他の素子をさらに含むことができる。特定のセンサ設計によって、ベース構成成分は比較的厚い(たとえば25ミクロンよりも厚い)構成成分でもよい。別法として、アルミナなど非導電性セラミックをたとえば約25ミクロン未満の薄い構成成分に使用することもできる。
【0072】
本明細書に開示した本発明の実施形態は、上記に開示したそれぞれ2つのセンサのクラスに見られる独自の利点の組合せを示す個々の素子およびセンサを提供する。たとえば、本発明の第1の実施形態は、センサの電極として機能する厚い(1〜1,000ミクロン)の多孔性基板上に酵素を固定する。それに関連して、多孔性電極は、たとえば多孔性電極を同じサイズの隣接する球面の格子から構築することによって、表面積の増加を示すように設計される。例示の一実施形態では、等しいサイズの隣接する球面の格子から製造され、過酸化水素消費電極として機能する厚い(1〜1,000ミクロン)多孔性金属基板上にグルコースオキシダーゼが固定される。
【0073】
本明細書に開示した本発明の他の実施形態では、様々な分析物センサで典型的に使用されるヒドロゲルが、本質的に剛直で非膨張性の多孔性の酵素ポリママトリックスと交換される。この実施形態では、バイオセンシング酵素を、任意選択で特定の形状に成形された剛直なマクロポーラスポリマに共有結合によって安定させて固定することができる。それに関連して、マクロポーラスポリマの成形連続ロッドが、クロマトグラフ分離媒体として使用するために開発された(たとえば、米国特許第5,453,185号および国際公開第93/07945号を参照)。適当なポリマは、本質的に非圧縮性であり、溶媒環境での変化に応答して全体のサイズを変えないものである。さらに、重合条件を調節して、孔の形態を制御することができる。したがって、約1〜100nmおよび100〜3,000nm(すなわち、それぞれ20%および80%)の孔のかなりの体積率を有する非常に多孔性(50〜70%)のポリマを生成することができる。このタイプの孔構造を有するポリマは、非常に高い比表面積(すなわち185m/g)を有し、非常に高い酵素固定化密度(1〜100mg/mL)が可能になることが予想される。
【0074】
上記の多孔性マトリックス、ならびに、こうしたマトリックスを組み込んだ分析物センサを作製し、使用するための様々な方法および組成物を本明細書にさらに記載する。
【0075】
(導電性構成成分)
本発明の電気化学センサは、典型的には、アッセイすべき分析物または分析物の副産物(たとえば酸素および/または過酸化水素)と接触するための少なくとも1つの電極を含むベース構成成分上に配置された導電性構成成分(たとえば、図2の素子104参照)を含む。用語「導電性構成成分」は技術的に容認される専門用語に従って本明細書で使用され、検出可能な信号を測定し、それを検出装置に伝えることができる電極など導電性センサ素子を指す。その一例は、分析物、分析物が分析物感知構成成分110中に存在する組成物(たとえば酵素グルコースオキシダーゼ)と相互作用する場合に使用される共反応物(たとえば酸素)、またはこの相互作用の反応生成物(たとえば過酸化水素)の濃度の変化を受けない参照電極と比較した、分析物またはその副産物の濃度の変化などの刺激への露出に応答する電流の増加または減少を測定することができる導電性構成成分である。こうした素子の例には、過酸化水素または酸素など濃度が変わりやすい分子が存在する場合に、可変の検出可能な信号を生成することができる電極が含まれる。典型的には、導電性構成成分中のこうした電極の1つは作用電極であり、非腐食性金属または炭素から作製することができる。炭素の作用電極はガラス状または黒鉛状でもよく、固体またはペーストから作製することができる。金属の作用電極は、パラジウムまたは金を含む白金族金属、あるいは二酸化ルテニウムなど非腐食性の金属導電性酸化物から作製することができる。別法として、電極は銀/塩化銀の電極組成物を含むことができる。作用電極は、ワイヤ、または、たとえばコーティングあるいはプリンティングによって基板に塗布された薄い導電性フィルムでもよい。典型的には、金属または炭素の導体の表面の一部だけが分析物を含む溶液と電気的に接触状態になる。この部分は電極の作用表面と呼ばれる。電極の残りの表面は、典型的には、電気絶縁カバー構成成分106によって溶液から絶縁される。この保護カバー構成成分106を生成するのに有用な材料の例には、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどポリマ、およびポリシロキサンなどシリコーンが含まれる。
【0076】
本発明の分析物センサは、典型的には、作用電極の他に、参照電極、または(準参照電極または対/参照電極とも呼ばれる)参照電極と対電極の組合せを含む。センサが対/参照電極を持たない場合は、別の対電極を含むことができ、その対電極を作用電極と同じまたは異なる材料から作製することができる。本発明の典型的なセンサは、1つ以上の作用電極、および1つ以上の対、参照、および/または、対/参照電極を有する。本発明のセンサの一実施形態では、2つ、3つ、または4つ以上の作用電極を有する。センサ内のこうした作用電極を一体型に接続してもよく、または別々に保持することもできる。
【0077】
典型的には、本発明の分析物センサを生体内で使用するには、哺乳類の皮膚の皮下に移植して、血液など哺乳類の体液と直接接触するようにする。別法として、センサを腹腔内空間など哺乳類の体内の他の領域内に移植することもできる。複数の作用電極を使用する場合、それらを体内に共に、または異なる位置に移植することができる。対、参照、および/または対/参照電極を哺乳類の体内で1つ以上の作用電極に近接するように、または他の位置に移植することもできる。
【0078】
(干渉阻止構成成分)
本発明の電気化学センサは、電極の表面とアッセイすべき環境の間に配置された干渉阻止構成成分を任意選択で含む。具体的には、幾つかのセンサの実施形態は、一定の電位が与えられた作用電極の表面上の酵素の反応によって生成される酸化および/または過酸化水素の減少に依存するものである。過酸化水素の直接の酸化に基づく電流測定検出には、比較的高い酸化電位が必要とされるため、この検出方式を使用するセンサは、アルコルビン酸、尿酸、およびアセトアミノフェンなど生体液中に存在する被酸化性種からの干渉を受ける恐れがある。それに関連して、用語「干渉阻止構成成分」は、技術的に容認された専門用語に従って本明細書で使用され、感知すべき分析物によって生成される信号の検出を干渉するこうした被酸化性種によって生成される擬似信号を阻止する機能を果たす、センサ内のコーティングまたは膜を指す。干渉阻止構成成分の例には、親水性ポリウレタン、(ポリ(エチレングリコールなどの物質を組み込んだ)酢酸セルロースを含む)酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロ化イオノマーナフィオン(商標)、ポリフェニレンジアミン、エポキシなどの化合物の1つ以上の層またはコーティングが含まれる。こうした干渉阻止構成成分の例示の論述が、たとえば、本願に引用して援用する、ウォード(Ward)他のBiosensors and Bioelectronics 17(2002)181〜189、およびチョイ(Choi)他のAnalytical Chimica Acta 461(2002)251〜260に見られる。
【0079】
(分析物感知構成成分)
本発明の電気化学センサは、センサの電極上に配置された分析物感知構成成分(図2の素子110を参照)を含む。用語「分析物感知構成成分」は技術的に容認される専門用語に従って本明細書で使用され、分析物の存在を分析物センサ装置によって検出すべきである分析物を認知し、またはそれに反応することができる材料を含む構成成分を指す。典型的には、分析物感知構成成分中のこの材料は、通常、導電性構成成分の電極を介して、感知すべき分析物と相互作用した後に検出可能な信号を生成する。それに関連して、分析物感知構成成分と導電性構成成分の電極は組み合わされて機能し、分析物センサと関連する装置によって読み取られる電気信号を生成する。典型的には、分析物感知構成成分は、導電性構成成分の電極の電流の変化の測定によって、分子(たとえば酸素、および/または過酸化水素)の濃度の変化を測定することができる、分子と反応することができる、かつ/またはそれを生成することができる、たとえば酵素グルコースオキシダーゼなどの酵素を含む。過酸化水素などの分子を生成することができる酵素を当技術分野で周知の幾つかの方法によって電極上に配置することができる。分析物感知構成成分をセンサの様々な電極の全てまたは一部にコーティングすることができる。それに関連して、分析物感知構成成分を電極に同じ程度にコーティングすることができる。別法として、たとえば、作用電極のコーティングされた表面が対電極および/または参照電極のコーティングされた表面より大きくなるようにするなど、分析物感知構成成分を異なる電極に異なる程度にコーティングすることもできる。
【0080】
本発明のこの素子の典型的なセンサの実施形態は、(たとえばグルコースオキシダーゼ安定化特性に通常最適の比率など)固定比率で第2のタンパク質(たとえばアルブミン)と組み合わせ、次いで電極の表面に塗布して、薄い酵素構成成分を形成する酵素(たとえばグルコースオキシダーゼ)を使用する。典型的な実施形態では、分析物感知構成成分はGOxとHSAの混合物を含む。GOxを有する分析物感知構成成分の典型的な実施形態では、GOxは、感知環境中(たとえば哺乳類の体内)に存在するグルコースに反応し、図1で示した反応により過酸化水素を生成し、こうして生成された過酸化水素が導電性構成成分中の作用電極で陽極検出される。たとえば(本願に引用して援用する)米国特許出願第10/273,767号で論じたように、非常に薄いセンサ化学構成成分が典型的であり、スピンコーティングなど当技術分野で周知の方法で電極マトリックスの表面に塗布することができる。例示の一実施形態では、グルコースオキシダーゼ/アルブミンは、アルブミンが約0.5〜10重量%で存在する状態の生理溶液(たとえば、中性pHのリン酸緩衝生理食塩水)中で調製される。任意選択で、分析物感知構成成分上に形成された安定化されたグルコースオキシダーゼ成分は、たとえば厚さが2、1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満など、上記の技術分野のものと比較して非常に薄い。本発明の例示の一実施形態は、安定化グルコースオキシダーゼ成分を電極の表面のコーティングに使用し、グルコースオキシダーゼは成分中に固定比率で担体タンパク質と混合され、グルコースオキシダーゼおよび担体タンパク質が構成成分中に実質的に均一に分散される。典型的には、構成成分の厚さは2ミクロン未満である。明瞭にするため、分析物感知構成成分が多孔性電極上に配置される本発明の幾つかの実施形態にはこれが当てはまらないことを留意されたい。たとえば、GOxが充填された3ミクロンの大きさの孔を有する厚さ100ミクロンの多孔性電極では、酵素の層を2ミクロンより厚くすることができる。
【0081】
驚くべきことに、こうした非常に薄い分析物感知構成成分を有するセンサは、寿命、線形性、規則性の向上、ならびに、信号対雑音比の向上を含む、比較的厚いコーティングを有するセンサの材料特性を超える材料特性を有する。特定の科学理論に制約されるものではないが、非常に薄い分析物感知構成成分を有するセンサは、比較的厚い構成成分を有するセンサと比べて驚くほど特性が向上すると考えられる。なぜなら、比較的厚い酵素の構成成分では、構成成分中の反応性酵素の一部しか感知すべき分析物にアクセスすることができないからである。グルコースオキシダーゼを使用するセンサでは、電気めっきによって作製される厚いコーティングは、厚い酵素構成成分の反応界面で生成される過酸化水素がセンサの表面と接触して信号を生成する能力を妨げる恐れがある。
【0082】
上記のように、酵素および第2のタンパク質は、典型的には、(たとえば、架橋剤をタンパク質混合物に加えることによって)架橋マトリックスを形成するように処理される。当技術分野で周知のように、架橋条件を操作して、酵素の保持する生物活性、機械的および/または動作の安定性など、因子を調整することができる。例示の架橋手順が、本願に引用して援用する、米国特許出願第10/335,506号およびPCT国際公開第03/035891号に記載されている。たとえば、限定的ではないが、グルタルアルデヒドなどアミン架橋試薬をタンパク質混合物に加えることができる。架橋試薬をタンパク質混合物に加えることによって、タンパク質ペーストが生成される。加えるべき架橋試薬の濃度は、タンパク質混合物の濃度によって変えることができる。グルタルアルデヒドは例示の架橋試薬であり、限定的ではないが、スベリン酸ジサクシンイミジル(DSS)などのアミン反応性でホモ官能性の架橋試薬を含む他の架橋試薬を使用することもでき、またはグルタルアルデヒドの代わりに使用することもできる。他の例は、ゼロレングス(zero−length)架橋剤である1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)である。EDCは、カルボン酸とアミン基の間にアミド結合を形成する。当業者には明らかなように、他の適当な架橋剤を使用することもできる。
【0083】
GOxおよび/または担体タンパク質の濃度を、本発明の様々な実施形態で変えることができる。たとえば、GOx濃度は、約50mg/ml(約10,000U/ml)から約700mg/ml(約150,000U/ml)の範囲内でもよい。典型的には、GOx濃度は、約115mg/ml(約22,000U/ml)である。こうした実施形態では、HSA濃度は、GOx濃度によって約0.5%〜30%(w/v)の間で変動してもよい。HAS濃度は、典型的には約1〜10%w/vであり、最も典型的には約5%w/vである。本発明の代替実施形態では、コラーゲン、またはBSA、あるいはそれに関連して使用される他の構造タンパク質を、HSAの代わりに、またはHSAに加えて使用することができる。分析物感知構成成分中の例示の酵素としてGOxを論じたが、限定的ではないが、グルコースデヒドロゲナーゼもしくはヘキソキナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼなどを含む他のタンパク質および/または酵素を使用することもでき、あるいはGOxの代わりに使用することができる。当業者には明らかなように、他のタンパク質および/または酵素を使用することもできる。さらに、例示の実施形態ではHSAが使用されるが、BSA、コラーゲンなど他の構造タンパク質を、HSAの代わりに、またはそれに加えて使用することができる。
【0084】
GOx以外の酵素を使用する実施形態では、本明細書で論じたもの以外の濃度を使用することができる。たとえば、使用する酵素によって、約1重量当たり10重量%から1重量当たり70重量%の濃度が適している。使用する特定の酵素の他に、得られるタンパク質マトリックスの望ましい特性によって、濃度を変えることができる。たとえば、タンパク質マトリックスを診断能力に使用すべき場合は、一定の濃度を使用することができるが、幾つかの構造特性が望ましい場合は、異なる濃度を使用することができる。当業者には理解されるように、使用する濃度を実験中に変えて、(どの酵素またはタンパク質の)どの濃度が所望の結果をもたらすかを決定することができる。
【0085】
上記のように、本発明の一部の実施形態では、分析物感知構成成分は、導電性素子(たとえば、酸素および/または過酸化水素の濃度の変化を感知する電極)によって感知することができる信号(たとえば、酸素および/または過酸化水素の濃度の変化)を生成することができる組成物(たとえばグルコースオキシダーゼ)を含む。しかし、他の有用な分析物感知構成成分を、存在を検出すべき標的分析物との相互作用の後に導電性素子によって感知することができる検出可能な信号を生成することができる任意の組成物から形成することができる。一部の実施形態では、組成物は、感知すべき分析物と反応すると過酸化水素濃度を調整する酵素を含む。別法として、組成物は、感知すべき分析物と反応すると酸素濃度を調整する酵素を含む。それに関連して、生理的分析物との反応で過酸化水素および/または酸素を使用し、または生成する多様な酵素が当技術分野に周知であり、こうした酵素を分析物感知構成成分の組成物中に容易に組み込むことができる。当技術分野で周知の多様な他の酵素を、本明細書に記載したセンサの設計に組み込まれる電極など導電性素子によって調整を検出することができる化合物を生成し、かつ/または使用することができる。こうした酵素には、たとえば、内容全体を本願に引用して援用する、Marcel Dekker出版社(1991年1月7日)のリチャードF.テイラー(Richard F. Taylor)(編集者)によるProtein Immobilization:Fundamentals and Applications(Bioprocess Technology,Vol 14)の表1、15〜29頁および/または表18、111〜112頁に具体的に記載されている酵素が含まれる。
【0086】
存在を検出すべき標的分析物との相互作用後に導電性素子で感知することができる検出可能な信号を生成することができる標的分析物と相互作用する抗体を含む他の有用な分析物感知構成成分を形成することができる。たとえば、(本願に引用して援用する)米国特許第5,427,912号には、試料中の分析物の濃度を電気化学的に決定するための抗体に基づく装置が記載されている。このデバイスでは、試験すべき試料、酵素受容体ポリペプチド、分析物類似体に結合した酵素供与体ポリペプチド(酵素供与体ポリペプチド結合体(conjugate))、標識基質、および測定すべき分析物に対して特異的な抗体を含む混合物が形成される。分析物および酵素供与体ポリペプチド結合体は抗体に競合的に結合される。酵素供与体ポリペプチド結合体は、抗体と結合しない場合は、自発的に酵素受容体ポリペプチドと組み合わされて活性酵素複合体を形成する。次いで、活性酵素が標識基質を加水分解して、電気活性標識が生成され、次いでその電気活性標識が電極の表面で酸化される。電気活性化合物の酸化から得られる電流を測定し、試料中の分析物の濃度と相関させることができる。米国特許第5,149,630号(本願に引用して援用する)には、配位子(たとえば、抗原、ハプテン、または抗体)の電気化学的な特異結合のアッセイが記載されており、成分の少なくとも1つが酵素標識であり、基質の反応に関連する酵素基質と電極の間の電子の移動が、錯体の形成、または非結合酵素標識成分に対する任意の配位子錯体の変位によって乱れる(perturb)程度を決定するステップが含まれる。電子の移動は、酵素から電子を受け、その電子を電極に与え、あるいはその逆も行うことができる電子移動媒介物質(たとえばフェロセン)によって、またはそれ自体が形式電荷を受けずに、酵素を電極に非常に近接して保持する電子移動促進物質によって促進される。米国特許第5,147,781号(本願に引用して援用する)には、酵素乳酸デヒドロゲナーゼ−5(LDH5)の決定についてのアッセイ、およびこうした定量のためのバイオセンサが記載されている。このアッセイは、この酵素と基質の乳酸およびニコチン−アミンアデニンジヌクレオチド(NAD)とのピルビン酸およびNADの還元生成物を生成する相互作用に基づくものである。抗LDH5抗体は、適当なガラス状炭素電極に結合され、それがLDH5を含む基質に接触され、洗浄され、NAD溶液中に挿入され、電流測定システムに接続され、乳酸の濃度が異なる場合に電流の変化が測定され、それによってLDH−5の量が示される。米国特許第6,410,251号(本願に引用して援用する)には、感知表面積を有する酸素微小電極が使用される、標識を検出するための酸化還元反応と併せて、抗原と抗体の間の結合など特定の結合を用いて、たとえば抗原/抗体対中の抗原など、特定の結合対中の1つの構成部分を検出またはアッセイするための装置および方法が記載されている。さらに、米国特許第4,402,819号(本願に引用して援用する)には、希釈液体の血清試料中の(分析物としての)抗体を定量するための抗体選択性の電位差電極が記載されており、不溶性の膜が使用され、その膜にイオン担体を結合した抗原が組み込まれる。イオン担体は抗原中の予め選択した陽イオンの透過性に影響を与え、その透過性は、分析における特定の抗体濃度、および対応する分析方法の関数である。関連する開示については、本願に引用して援用する、米国特許第6,703,210号、第5,981,203号、第5,705,399号、および第4,894,253号も参照されたい。
【0087】
酵素および抗体の他に、本明細書に開示したセンサの分析物感知構成成分に使用される他の例示の材料には、特定のタイプの細胞または細胞成分(たとえば、ポリペプチド、炭水化物など)を結合するポリマ、一本鎖DNA、抗原などが含まれる。検出可能な信号は、たとえば、色の変化などの光学的に検出可能な変化、または所望の分析物(たとえば細胞)の可視蓄積でもよい。感知素子を本質的に非反応(すなわち対照)の材料から形成することもできる。上記の代替センサ素子は、有益には、たとえば、細胞選別アッセイ、およびウイルス(HIV、C型肝炎など)、細菌、原虫など病原生物の存在に関するアッセイで使用されるセンサに含まれる。
【0088】
外部環境に存在し、それ自体に電極の電流の測定可能な変化を起こすことができる分析物を測定する分析物センサも企図される。こうした分析を測定するセンサでは、分析物感知構成成分を任意に選択することができる。
【0089】
(タンパク質構成成分)
本発明の電気化学センサは、任意選択で、分析物感知構成成分と分析物調整構成成分の間に配置されたタンパク質構成成分(たとえば、図2の素子116を参照)を含む。用語「タンパク質構成成分」は技術的に容認される専門用語に従って本明細書で使用され、分析物感知構成成分および/または分析物調整構成成分と互換性があるように選択された担体タンパク質などを含む構成成分を指す。典型的な実施形態では、タンパク質構成成分はヒト血清アルブミンなどアルブミンを含む。HAS濃度は約0.5%〜30%(w/v)の間で変化してもよい。HAS濃度は、典型的には約1〜10%w/vであり、最も典型的には約5%w/vである。本発明の代替実施形態では、コラーゲン、またはBSA、あるいはそれに関連して使用される他の構造のタンパク質を、HSAの代わりに、またはHSAに加えて使用することができる。この構成成分は、典型的には、技術的に容認されるプロトコルに従って、分析物感知構成成分に架橋される。
【0090】
(接着促進構成成分)
本発明の電気化学センサは、1つ以上の接着促進(AP)構成成分(たとえば、図2の素子114を参照)を含むことができる。用語「接着促進構成成分」は技術的に容認される専門用語に従って本明細書で使用され、センサ内の隣接する構成成分の間の接着を促進することができるように選択された材料を含む構成成分を指す。典型的には、接着促進構成成分は、分析物感知構成成分と分析物調整構成成分の間に配置される。典型的には、接着促進構成成分は、任意選択のタンパク質構成成分と分析物調整構成成分の間に配置される。接着促進構成成分を、当技術分野で周知の多様な材料の任意のものから作製して、こうした構成成分間の結合を促進することができ、当技術分野で周知の多様な方法の任意のものによって塗布することができる。典型的には、接着促進構成成分はγ−アミノプロピルトリメトキシシランなどシラン化合物を含む。
【0091】
接着を促進するためのシランカップリング試薬、特に、式R’Si(OR)であって、R’は典型的には末端アミンを有する脂肪族基であり、Rは低級アルキル基である、シランカップリング試薬の使用が当技術分野で周知である(たとえば、本願に引用して援用する、米国特許第5,212,050号を参照)。たとえば、ウシ血清アルブミン(BSA)およびグルコースオキシダーゼ(GOx)を電極表面に付着させて共架橋する段階的な過程で、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどシランおよびグルタルアルデヒドが使用された、化学的に変形された電極が当技術分野で周知である(たとえば、ヤオ(Yao)、T.のAnalytica Chim.Acta、1983年、148、27〜33を参照)。
【0092】
本発明の幾つかの実施形態では、接着促進構成成分は、グルコースなど分析物が分析物調整構成成分を通って拡散するのを制限する働きをするポリジメチルシロキサン(PDMS)化合物など、隣接する構成成分中に存在することもできる1つ以上の化合物をさらに含む。例示の実施形態では、調合物は、0.5〜20%のPDMS、典型的には5〜15%のPDMS、最も典型的には10%のPDMSを含む。本発明の幾つかの実施形態では、接着促進構成成分は、分析物調整構成成分など近位の構成成分中に存在するシロキサン部分を架橋することができるように選択された物質を含む。本発明の密接に関連する実施形態では、接着促進構成成分は、分析物感知構成成分および/またはタンパク質構成成分など近位の構成成分中に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部分を架橋することができるように選択された物質を含む。
【0093】
(分析物調整構成成分)
本発明の電気化学センサは、センサ上に配置された分析物調整構成成分(たとえば図2の素子112を参照)を含む。用語「分析物調整構成成分」は、技術的に容認された専門用語に従って本明細書で使用され、典型的には、グルコースなど1つ以上の分析物の構成成分を通る拡散を調整する働きをするセンサ上の膜を形成する構成成分を指す。本発明の幾つかの実施形態では、分析物調整構成成分は、グルコースなど1つ以上の分析物が構成成分を通って拡散するのを阻止または制限する働きをする分析物制限膜である。本発明の他の実施形態では、分析物調整構成成分は、1つ以上の分析物が構成成分を通って拡散するのを促進する働きをする。任意選択で、こうした分析物調整構成成分を、1つのタイプの分子(たとえばグルコース)の構成成分を通る拡散を阻止または制限するが、同時に他のタイプの分子(たとえばO)の構成成分を通る拡散を可能にし、または促進するように形成することができる。
【0094】
グルコースセンサに関して、周知の酵素電極では、血液からのグルコースおよび酸素、ならびに、アスコルビン酸および尿酸など幾つかの干渉物質がセンサの第1の膜を通って拡散する。グルコース、酸素、および干渉物質が分析物感知構成成分に到達すると、グルコースオキシダーゼなど酵素がグルコースの過酸化水素とグルコノラクトンへの変換を触媒する。過酸化水素は分析物調整構成成分を通って拡散して戻ることができ、または電極まで拡散することができ、電極で反応して酸素およびプロトンを形成し、グルコース濃度と比例する電流を生成する。センサ膜アセンブリは、グルコースの膜の通過を選択的に可能にすることを含む幾つかの機能を果たす。それに関連して、例示の分析物調整構成成分は、水、酸素、および少なくとも1つの選択的分析物が通過できるようにし、水を吸収することができる半透性膜であり、膜は水溶性、親水性のポリマを有する。
【0095】
様々な例示の分析物調整構成成分が当技術分野で周知であり、たとえば、それぞれの開示を本願に引用して援用する、米国特許第6,319,540号、第5,882,494号、第5,786,439号、第5,777,060号、第5,771,868号、および第5,391,250号に記載されている。上記の特許文献に記載されたヒドロゲルは、周囲の水構成成分を有利に与えるため、多様な移植可能なデバイスに特に有用である。本発明の一部の実施形態では、分析物調整構成成分はPDMSを含む。本発明の幾つかの実施形態では、分析物調整構成成分は、近位の構成成分中に存在するシロキサン部分を架橋することができるように選択された物質を含む。本発明の密接に関連する実施形態では、接着促進構成成分は、近位の構成成分中に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部分を架橋することができるように選択された物質を含む。
【0096】
本明細書に詳細に記載したように、本発明の幾つかの実施形態では、分析物調整構成成分は、中央鎖および中央鎖に結合された複数の側鎖を有する親水性櫛型コポリマを含み、少なくとも1つの側鎖はシリコーン部分を含む。
【0097】
(カバー構成成分)
本発明の電気化学センサは、典型的には電気的に絶縁する保護構成成分である1つ以上のカバー構成成分(たとえば、図2の素子106を参照)を含む。典型的には、こうしたカバー構成成分は分析物調整構成成分の少なくとも一部上に配置される。絶縁保護カバー構成成分としての使用に許容されるポリマコーティングは、限定的ではないが、シリコーン化合物、ポリイミド、生体適合性はんだマスク、エポキシアクリレートコポリマなど無毒の生体適合性ポリマを含むことができる。さらに、こうしたコーティングは、導電性構成成分を通るアパーチャをフォトリソグラフィで形成しやすくする光画像形成可能なものでもよい。典型的なカバー構成成分はスパンオンシリコーン(spun on silicone)を含む。当技術分野で周知のように、この構成成分は市販のRTV(室温硬化)シリコーン組成物でもよい。それに関連する、典型的な化学物質はポリジメチルシロキサン(アセトキシベース(acetoxy based))である。
【0098】
本発明の様々な例示の実施形態およびその特徴を以下の項で詳細に論じる。
【0099】
[D.分析物センサ装置および関連する特徴の例示の実施形態]
本明細書に開示したように、注入素子と分析物感知素子の両方を含む装置は幾つかの実施形態を有する。本発明の全般的な実施形態は、哺乳類の体内に移植するための装置である。装置は典型的には哺乳類の体内に移植可能であるように設計されるが、センサはどの特定の環境にも限定されず、その代わりに、たとえば、全血、リンパ液、血漿、血清、唾液、尿、便、汗、粘液、涙、髄液、鼻の分泌物、子宮頚管または膣の分泌物、精液、胸膜液、羊水、腹水、中耳液、滑液、胃吸引液など生体液を含む大抵の液体試料の分析に多様な状況で使用することができる。さらに、固体または乾燥試料を適当な溶媒に溶解して、分析に適した液体混合物を作製することができる。
【0100】
上記のように、本明細書に開示した本発明の実施形態を使用して、1つ以上の生理的環境で対象の分析物を感知することができる。たとえば幾つかの実施形態では、センサは皮下センサで典型的に発生するように、間質液と直接接触してもよい。本発明のセンサは、組織間腔のグルコースが皮膚を通して注出されて、センサと接触するようになされる皮膚表面系の一部でもよい(たとえば、本願に引用して援用する、米国特許第6,155,992号および第6,706,159号を参照)。他の実施形態では、センサは、たとえば静脈内センサで典型的に発生するように、血液と接触状態でもよい。本発明のセンサの実施形態は、様々な状況で使用されるように適合されたものをさらに含む。たとえば幾つかの実施形態では、外来の使用者に使用されるものなど、移動状況で使用されるようにセンサを設計することができる。別法として、臨床の場で使用されるように適合されたものなど、固定状況で使用されるようにセンサを設計することもできる。こうしたセンサの実施形態には、たとえば、入院患者の1つ以上の生理的環境に存在する1つ以上の分析物の監視に使用されるものが含まれる。
【0101】
本発明の実施形態を当技術分野で周知の多様な医療システムに組み込むこともできる。本発明のセンサを、たとえば薬剤を使用者の体内に注入する速度を制御するように設計された閉ループの注入システムで使用することができる。こうした閉ループの注入システムは、センサ、および制御装置への入力を生成する関連する計器(たとえば、薬剤注入ポンプによって送達すべき投与量を計算するもの)を含むことができ、制御装置は送達システムを作動させる。その関連で、センサと関連する計器はコマンドを送達システムに伝送することもでき、送達システムを遠隔に制御するために計器を使用することもできる。典型的には、センサは、間質液と接触して使用者の体内のグルコース濃度を監視する皮下センサであり、送達システムによって使用者の身体内に注入される液体はインスリンを含む。例示のシステムが、たとえば、全て本願に引用して援用する、米国特許第6,558,351号、および第6,551,276号、PCT出願第US99/21703号および第US99/22993号、ならびに、国際公開第2004/008956号、および第2004/009161号に開示されている。
【0102】
一般に、分析物センサ装置構造は、ベース層、およびベース層上に配置され、1つ以上の電極として機能する導電層(たとえば多孔性マトリックス)を含む。たとえば、導電層は、作用電極、参照電極、および/または対電極を含むことができる。こうした電極を、特定の設計に従って、近接するように、または別法として遠位に離れるように配置することができる。センサ装置の設計は、幾つかの電極(たとえば作用電極)をセンサ装置で感知すべき分析物を含む溶液に(たとえばアパーチャを介して)露出することができるようになされる。センサ装置の設計は、幾つかの電極(たとえば参照電極)がセンサ装置で感知すべき分析物を含む溶液に露出されないようになされる。
【0103】
本発明の一実施形態は、バイオセンサで使用される組成物である。こうした組成物は、典型的には、哺乳類の体内に移植可能であるように設計され、たとえばグルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、または乳酸デヒドロゲナーゼなど固定化酵素でコーティングされた表面を有する多孔性マトリックスを含む。典型的には、固定化酵素でコーティングされた多孔性マトリックスは、電気化学センサの電極として働くことができる。任意選択で、電気化学センサの電極は過酸化水素を消費する。
【0104】
本発明のバイオセンサの様々な実施形態で使用されるマトリックスを様々な材料から生成することができ、様々な組成物の構成に適合させることができる。本発明の一部の実施形態では、マトリックスは多孔性であり、セラミック材料、および/または金属、および/またはマクロポーラスポリマを含む。任意選択で、ポーラスマトリックスは粒子の格子を含む。典型的には、粒子は球形である。本発明の典型的な実施形態では、多孔性マトリックスは同じ寸法の非多孔性マトリックスの表面積の少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、または18倍の表面積を有する。本発明の幾つかの実施形態では、多孔性マトリックスの厚さは、少なくとも1、10、100、または1000ミクロンである。本発明の幾つかの実施形態では、多孔性マトリックスの気孔率は、任意選択で約5〜99.9%であり、典型的には約40〜99%である。こうしたマトリックスの気孔率を、水銀またはガスポロシメトリ、様々な大きさのマーカ分子および分子量(たとえば、アセトン、規定の大きさの様々な球状タンパク質、ブルーデキストラン)を使用するサイズ排除クロマトグラフィ、ならびに、サイクリックボルタンメトリなど当技術分野で典型的に使用されるプロトコルの1つによって測定することができる。
【0105】
典型的には、分析物センサ装置は、通常、作用電極の一部または全てをカバーする、センサの導電層上に配置された分析物感知層を含む。この分析物感知層は、感知すべき分析物が存在する場合に、導電層の作用電極の電流を検出可能に変える。本明細書に開示したように、この分析物感知層は、典型的には、作用電極の電流を調整することができる分子の濃度を変えるように対象の分析物に反応する酵素または抗体分子などを含む(たとえば、図1の反応方式で示した酸素および/または過酸化水素を参照)。例示の分析物感知層は、(たとえばグルコースセンサで使用される)グルコースオキシダーゼ、または(たとえば乳酸センサで使用される)乳酸オキシダーゼなど酵素を含む。本発明の一部の実施形態では、分析物感知層は、センサの電極として機能する素子のこの組合せを有する多孔性金属および/またはセラミックおよび/またはポリマのマトリックス上に配置される。
【0106】
典型的には、分析物感知層は、分析物感知化合物(たとえば酵素)に対して実質的に固定比率で担体タンパク質をさらに含み、分析物感知化合物および担体タンパク質は、分析物感知層中に実質的に均一に分配される。典型的には、分析物感知層は非常に薄く、たとえば、厚さが1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満である。特定の科学理論に制約されるものではないが、こうした薄い分析物感知層を有するセンサは、典型的に電着によって生成される比較的厚い層を有するセンサと比較して、驚くほど特性が向上すると考えられる。なぜなら、電着では3〜5ミクロンの厚さの酵素層が生成され、コーティング層中の反応性酵素の一部しか感知すべき分析物にアクセスすることができないからである。電着プロトコルによって生成されるこうした比較的厚いグルコースオキシダーゼペレットは、機械的安定性が乏しい(たとえば割れる傾向がある)ことがさらに観察されており、実際に使用されるように調製するのに比較的長い時間がかかり、典型的には、移植できるようになる前に、試験に数週間かかる。本明細書に記載した薄い層の酵素コーティングではこうした問題が観察されない。この薄いコーティングは本発明の典型的な実施形態である。
【0107】
たとえばグルコースオキシダーゼを使用するセンサでは、電気めっきによって作製される厚いコーティングは、厚さ3〜5ミクロンの酵素層の反応界面で生成される過酸化水素がセンサの表面と接触して信号を生成する能力を妨げる恐れがある。さらに、こうした厚いコーティングのためにセンサの表面に到達することができない過酸化水素は、センサからセンサが配置された環境に拡散する恐れがあり、それによってこうしたセンサの感度および/または生体適合性が低減される。また、特定の科学理論に制約されるものではないが、こうした薄い分析物感知層を有するセンサは、スピンコーティングなどの処理によって、グルコースオキシダーゼの(酵素層中のグルコースオキシダーゼを安定させる担体タンパク質として使用される)アルブミンに対する酵素コーティング率を正確に制御することができるようになることから得られる予想以上の有利な特性を有すると考えられる。具体的には、グルコースオキシダーゼおよびアルブミンは、異なる等電点を有するため、電着法では、酵素の担体タンパク質に対する最適に決定された比率が電着法で不利に変更され、さらに、グルコースオキシダーゼおよび担体タンパク質が配置された酵素層中に実質的に均一に分配されない表面コーティングになる恐れがある。さらに、こうした薄い分析物感知層を有するセンサは予想以上の速い応答時間を有する。特定の科学理論に制約されるものではないが、こうした驚くべき有利な特性は、薄い酵素層によって、作用電極の表面へのアクセスが向上され、電極の電流を調整する分子のかなり多くが電極の表面にアクセスできるようになるという所見から得たものと考えられる。その関連で、本発明の幾つかの実施形態では、哺乳類の体内に存在する分析物に露出し、分析物センサと接触する分析物に応答する電流の変化を電流測定器によって15、10、5、または2分未満で検出することができる。
【0108】
分析物感知層は、任意選択で、その上に配置されたタンパク質層を有し、タンパク質層は典型的には、この分析物感知層と分析物調整層の間に存在する。タンパク質層中のタンパク質は、ウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなるグループから選択されたアルブミンである。典型的には、このタンパク質は架橋される。特定の科学理論に制約されるものではないが、この別個のタンパク質層はセンサの機能を向上させ、センサの雑音(たとえば擬似バックグラウンド信号)を減少させるいわばコンデンサとして働くことによって、驚くべき機能的利益をもたらすと考えられる。たとえば、本発明のセンサでは、分析物感知層の酵素と接触することができる分析物の量を調節する層であるセンサの分析物調整膜層の下に若干の水分が形成されることがある。この水分は、センサを使用する患者が動くときに、センサ内で移動する圧縮性層を生成することができる。センサ内でのこうした層の移動は、グルコースなど分析物が、実際の生理的分析物濃度から独立して、分析物感知層を通って移動する方法を変える可能性があり、それによって雑音が生じる。その関連で、タンパク質層は、GOxなど酵素が水分層と接触しないように保護することによって、コンデンサとして働くことができる。このタンパク質層は、分析物感知層と分析物調整膜層の間の接着を促進するなど、幾つかの追加の利点を与えることができる。別法として、この層の存在は、過酸化水素など分子のより大きい拡散経路をもたらすことができ、それによって分子を電極感知素子に集中させ、センサの感度の向上に貢献する。
【0109】
典型的には、分析物感知層および/または分析物感知層上に配置されたタンパク質層は、その上に配置された接着促進層を有する。こうした接着促進層は、分析物感知層と近位の層、典型的には分析物調整層との接着を促進する。この接着促進層は、典型的には、様々なセンサ層の間の最適の接着を促進し、センサを安定させる機能を果たすことができるように選択されたγ−アミノプロピルトリメトキシシランなどシラン化合物を含む。興味深いことに、接着促進層を含むこうしたシランを有するセンサは、全体の安定性の向上を含む予想以上の特性を示す。さらに、接着促進層を含むシランは、センサの安定性を向上させる能力の他に、幾つかの有利な特徴を提供し、たとえば、干渉の阻止、ならびに、1つ以上の望ましい分析物の物質移動を制御する有益な役割を果たす。
【0110】
本発明の幾つかの実施形態では、接着促進層は、グルコースなど分析物が分析物調整層を通って拡散するのを制限する働きをするポリジメチルシロキサン(PDMS)化合物など、隣接する層中に存在することもできる1つ以上の化合物をさらに含む。たとえば、PDMSのAP層への添加は、添加によってセンサが製造されるときにAP層中に孔または間隙が生じる可能性を低減させる場合に有利である。
【0111】
典型的には、接着促進層は、その上に配置された分析物調整層を有し、分析物調整層はその層を通る分析物の拡散を調整する機能を果たす。一実施形態では、分析物調整層は、分析物(たとえば酸素)のセンサの層を通る拡散を促進する働きをし、その後に分析物感知層中の分析物の濃度を上げるように機能する組成物(たとえばポリマなど)を含む。別法として、分析物調整層は、分析物(たとえばグルコース)のセンサの層を通る拡散を制限する働きをし、その後に分析物感知層中の分析物の濃度を制限する機能を果たす組成物を含む。その一例は、ポリジメチルシロキサンなどポリマを含む親水性グルコース制限膜(すなわち、グルコースの膜を通る拡散を制限する機能)である。本発明の幾つかの実施形態では、分析物調整層は、中央鎖および中央鎖に結合された複数の側鎖を有する親水性櫛型コポリマを含み、少なくとも1つの側鎖はシリコーン部分を含む。
【0112】
典型的には、分析物調整層は、通常はセンサ装置の少なくとも一部上に配置された(たとえば、分析物調整層をカバーする)電気絶縁保護層である1つ以上のカバー層をさらに備える。絶縁保護カバー層としての使用に許容されるポリマコーティングは、限定的ではないが、シリコーン化合物、ポリイミド、生体適合性はんだマスク、エポキシアクリレートコポリマなど無毒の生体適合性ポリマを含むことができる。例示のカバー層はスパンオンシリコーン(spun on silicone)を含む。典型的には、カバー層は、センサの層(たとえば分析物調整層)の少なくとも一部を感知すべき分析物を含む溶液に露出するアパーチャをさらに含む。
【0113】
本明細書に記載した分析物センサを陰極分極して、たとえば図1で示したように、グルコースがグルコースオキシダーゼと相互作用するときに生じる作用陰極に近位の酸素濃度の変化から得られる作用陰極の電流の変化を検出することができる。別法として、本明細書に記載した分析物センサを陽極分極して、たとえば図1で示したように、グルコースがグルコースオキシダーゼと相互作用するときに生じる作用陽極に近位の過酸化水素濃度の変化から得られる作用陽極の電流の変化を検出することができる。本発明の典型的な実施形態では、1つ以上の作用電極の電流が1つ以上の参照電極(対照)の電流と比較され、次いで、この測定値の差を測定すべき分析物の濃度と相関させることができる。この二重電極での電流の比較から測定値を得ることによって電流値を得る分析物センサの設計は、たとえば二重酸素センサと一般に呼ばれる。
【0114】
本発明の一部の実施形態では、分析物センサ装置は、陽極分極によって機能するように設計され、電流の変化が分析物センサ装置の導電層中の陽極作用電極で検出されるようになされる。陽極分極に関連付けることができる構造設計の特徴は、陽極(anode)である作用電極、陰極(cathode)である対電極、および参照電極を備える適切なセンサ構成を設計し、次いで、この適当な分析物感知層をこの設計構成内の陽極の表面の適当な部分上に選択的に配置することを含む。任意選択で、この陽極分極構造設計は、陽極、陰極、および/または異なる大きさの表面積を有する作用電極を含む。たとえば、この構造設計は、作用電極(陽極)および/または作用電極のコーティングされた表面が、対電極(陰極)および/または対電極のコーティングされた表面よりも大きい特徴を含む。その関連で、次いで、陽極作用電極で検出することができる電流の変化が分析物の濃度と相関される。本発明のこの実施形態の幾つかの例では、作用電極は過酸化水素の酸化反応(たとえば、図1を参照)を測定して使用し、過酸化水素は、それぞれグルコースまたは乳酸に反応するときにグルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼなど酵素によって生成される。こうした過酸化水素再利用能力を有する電気化学的グルコースおよび/または乳酸センサに関連する本発明のこうした実施形態は、この分子の再利用によって、センサからセンサが配置された環境に逃げることができる過酸化水素の量が減少されるために、特に興味深い。その関連で、過酸化水素など組織刺激物の放出を低減するように設計された移植可能なセンサは、生体適合性プロフィールを向上させたものであろう。さらに、過酸化水素はグルコースオキシダーゼなど酵素に反応し、生体機能を損なうことができることが観察されているため、こうしたセンサはこの現象を回避するために望ましい。任意選択で、分析物調整層(たとえばグルコース制限層)は、センサが配置された環境に過酸化水素が拡散するのを阻止する働きをする組成物を含むことができる。したがって、本発明のこうした実施形態は、本明細書に記載した過酸化水素再利用素子を組み込むことによって、過酸化水素を生成する酵素を組み込むセンサの生体適合性を向上させるものである。
【0115】
ベース層、導電層、分析物感知層、任意選択のタンパク質層、接着促進層、分析物調整層、およびカバー層を含む本発明の分析物センサの幾つかの実施形態は、幾つかの予想以上の特性を示す。たとえば、陰極分極によって機能するように構成されたセンサに対して陽極分極によって機能するように構築されたセンサでは、分析物感知層、ならびに、電極表面の電気化学反応の違いによって異なる化学成分が生成され、かつ/または消費され、それによって様々なセンサ素子が異なる極性で機能する化学環境が変わる。その関連で、本明細書に開示したセンサ構造は、様々な化学および/または電気化学的条件下で予想以上の安定性を有して機能することを示す驚くほど多様なデバイスを提供する。
【0116】
本明細書に開示した本発明の幾つかの実施形態(たとえば、過酸化水素再利用能力を有する実施形態)では、センサの層は、両方がグルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼなど酵素を含む分析物感知層でコーティングされた作用電極(たとえば陽極)および対電極(たとえば陰極)を含む複数の電極を有する。こうしたセンサの設計は、感度の向上を含む驚くべき特性を有する。特定の理論に制約されるものではないが、この特性は、グルコース感知反応(たとえば、図1を参照)で使用することができる追加の酸素を生成する作用電極または対電極の表面の過酸化水素の酸化の向上から得ることができる。したがって、この再利用効果により、本明細書に開示した幾つかのセンサの実施形態の酸素依存による制約を低減することができる。さらに、この設計では、使用可能な過酸化水素を容易に減少し、したがって比較的低い電極電位を有する作用電極を備えるセンサを得ることができる。比較的低い電極電位で機能するように設計されたセンサは、本発明の典型的な実施形態である。なぜなら、このタイプで高い電極電位のセンサは、(加水分解反応によって生成される気泡によりセンサ層が破壊されるため)センサを不安定にする可能性があるガス生成加水分解反応が生じる恐れがあるためである。さらに、対電極が、グルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼなど酵素を含む分析物感知層の非常に薄い層でコーティングされるように設計されたセンサの実施形態では、酵素反応で生成される過酸化水素が、対電極の反応性表面に非常に近いところに存在する。それによって、たとえば比較的小さい反応性表面を有する対電極を含むコンパクトなセンサ製造設計が可能になるように、センサの全体効率を上げることができる。
【0117】
[E.分析物センサ装置および素子の交換]
上記のように、本明細書に開示した本発明は、一連の素子のセンサを含む装置など幾つかの実施形態を有する。本発明のこうした実施形態は、当業者が、本明細書に開示した装置の様々な交換を行うことができるようにする。上記のように、本明細書に開示した装置の例示の一般的な実施形態では、センサ素子は、ベース層、カバー層、およびベース層とカバー層の間に配置された電極などセンサ素子を有する少なくとも1つの層を含む。典型的には、1つ以上のセンサ素子(たとえば、作用電極、対電極、参照電極など)の露出された部分が、適当な電極化学物質を有する材料の非常に薄い層でコーティングされる。たとえば、乳酸オキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、またはヘキソキナーゼなど酵素を、カバー層中に画定された開口またはアパーチャ内に露出されたセンサ素子の一部上に配置することができる。図2は、本発明の典型的なセンサ構造100の断面図である。センサは、センサ構造100を作製するための本発明の方法に従って互いの上に配置された様々な導電性および非導電性の構成成分の複数の層から形成される。
【0118】
上記のように、本発明のセンサでは、センサの様々な層(たとえば、分析物感知層)は、層中に組み込まれた1つ以上の生理活性および/または不活性の材料を有することができる。本明細書で使用されるように、用語「組み込まれた」は、組み込まれた材料が固体相あるいは層の支持マトリックスの外面上、またはその中に保持される全ての状況または状態を表すものである。したがって、「組み込まれた」材料を、たとえば、固定化し、物理的に閉じ込め、1つ以上のマトリックス層の官能基に共有結合的に結合することができる。さらに、前記材料の「組み込み」を促進する任意の方法、試薬、添加物、または分子リンカー剤を、こうした追加のステップまたは物質が本発明の目的に不利でなく、目的と一致する場合に使用することができる。当然、この定義は、生理活性分子(たとえば、グルコースオキシダーゼなど酵素)が「組み込まれる」本発明の全ての実施形態に当てはまる。たとえば、本明細書に開示したセンサの幾つかの層は、架橋可能なマトリックスとして働くアルブミンなどタンパク質の物質を含む。本明細書で使用されるように、タンパク質の物質は、実際の物質が、天然タンパク質、不活性化タンパク質、変性タンパク質、加水分解種でも、またはその誘導生成物でも、タンパク質から一般に誘導される物質を含むものである。タンパク質の材料の適当な例には、限定的ではないが、グルコースオキシダーゼ、および乳酸オキシダーゼなど酵素、アルブミン(たとえば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンなど)、カゼイン、γ−グロブリン、コラーゲン、およびコラーゲン誘導生成物(たとえば、フィッシュゼラチン、フィッシュグルー、動物ゼラチン、および動物グルー)が含まれる。
【0119】
本発明のセンサ素子の例示の実施形態が図2に示されている。この実施形態は、センサ100を支持するための電気絶縁ベース層102を含む。電気絶縁層ベース102は、セラミック基板などの材料から作製することができ、自己支持型でもよく、または当技術分野で周知の他の材料でさらに支持してもよい。一代替実施形態では、電気絶縁層102は、たとえば、リールから小出しに出されるポリイミドテープなど、ポリイミド基板を含む。層102をこの形態で提供することによって、清潔で高密度の大量生産を容易にすることができる。さらに、こうしたポリイミドテープを使用する一部の生産工程で、センサ100をテープの両側に作製することができる。
【0120】
本発明の典型的な実施形態は、ベース層102上に配置された分析物感知層を含む。図2で示した例示の実施形態では、分析物感知層は、絶縁ベース層102上に配置された導電層104を備える。典型的には、導電層104は1つ以上の電極を備える。本明細書で以下に記載するように、多くの周知の技術および材料を使用して、導電層104を塗布することができるが、センサ100の電気回路は、典型的には、配置された導電層104を所望のパターンの導電路にエッチングすることによって画定される。センサ100用の典型的な電気回路は、近位端の領域が接触パッドを形成し、遠位端の領域がセンサ電極を形成する2つ以上の隣接する導電路を備える。ポリマコーティングなど電気絶縁保護カバー層106が、典型的には、導電層104の一部上に配置される。絶縁保護層106としての使用に許容されるポリマコーティングは、限定的ではないが、ポリイミド、生体適合性はんだマスク、エポキシアクリレートコポリマなど、無毒の生体適合性ポリマを含むことができる。さらに、こうしたコーティングは、導電層104を通るアパーチャ108をフォトリソグラフィで形成しやすくする光画像形成可能なものでもよい。本発明の幾つかの実施形態では、分析物感知層は、センサの電極として機能する素子のこの組合せを有する多孔性金属、および/またはセラミック、および/またはポリマのマトリックス上に配置される。
【0121】
本発明のセンサでは、1つ以上の露出した領域またはアパーチャ108を、導電層104まで保護層106を通るように作製して、センサ100の接触パッドおよび電極を画定することができる。アパーチャ108を、フォトリソグラフィ現像の他に、レーザアブレーション、ケミカルミリング、またはエッチングなどを含む幾つかの技法で形成することができる。第2のフォトレジストをカバー層106に加えて、アパーチャ108を形成するために除去すべき保護層の領域を画定することができる。作用センサ100は、互いに電気的に絶縁されるが、典型的には互いに近位に位置付られた作用電極と対電極など複数の電極を含む。他の実施形態は参照電極を含むこともできる。他の実施形態は、センサ上に形成されない別個の参照素子を使用することができる。露出した電極および/または接触パッドは、追加のめっき処理などアパーチャ108を通る第2の処理を受けて、表面を調製し、かつ/または導電性領域を強化することもできる。
【0122】
分析物感知層110は、典型的には、アパーチャ108による導電層104の1つ以上の露出された電極上に配置される。分析物感知層110は、典型的にはセンサ化学層であり、最も典型的には酵素層である。典型的には、分析物感知層110は、酵素グルコースオキシダーゼまたは酵素乳酸オキシダーゼを含む。こうした実施形態では、分析物感知層110は、グルコースに反応して過酸化水素を生成し、過酸化水素は電極への電流を調整する。それを監視して、存在するグルコースの量を測定することができる。センサ化学層110を、導電層の一部、または導電層の全領域上に加えることができる。典型的には、センサ化学層110は、導電層を含む作用電極および対電極の一部上に配置される。薄いセンサ化学層110を生成する一部の方法は、スピンコーティング法、浸漬乾燥法、低シェアスプレイ法、インクジェットプリンティング法、シルクスクリーン法などを含む。最も典型的には、薄いセンサ化学層110はスピンコーティング法を使用して塗布される。
【0123】
分析物感知層110は、典型的には、1つ以上のコーティング層でコーティングされる。本発明の一部の実施形態では、1つのこうしたコーティング層は、分析物感知層の酵素と接触することができる分析物の量を調節することができる膜を含む。たとえば、コーティング層は、電極上のグルコースオキシダーゼ酵素と接触するグルコースの量を調節するグルコース制限膜など分析物調整膜層を含むことができる。こうしたグルコース制限膜を、たとえば、シリコーン、ポリウレタン、ポリ尿素酢酸セルロース、ナフィオン、ポリエステルスルホン酸(Kodak AQ)、ヒドロゲル、または当技術分野で周知の任意の他の膜など、この目的に適していることが周知の多様な材料から作製することができる。本発明の幾つかの実施形態では、分析物調整層は、中央鎖および中央鎖に結合された複数の側鎖を有する親水性櫛型コポリマを含み、少なくとも1つの側鎖はシリコーン部分を含む。
【0124】
本発明の一部の実施形態では、コーティング層は、センサ化学層110上に配置されて、グルコースとセンサ化学層110との接触を調節するグルコース制限膜層112である。本発明の一部の実施形態では、図2で示したように、接着促進層114は膜層112とセンサ化学層110の間に配置されて、その接触および/または接着を容易にする。接着促進層114をこうした層の間の結合を容易にするための当技術分野で周知の多様な材料の1つから作製することができる。典型的には、接着促進層114はシラン化合物を含む。代替実施形態では、センサ化学層110中のタンパク質または同様の分子を十分に架橋し、または他の方法で調製して、接着促進層114が存在しない場合に、膜層112をセンサ化学層110と直接接触するように配置することができるようにする。
【0125】
上記のように、本発明の実施形態は、1つ以上の機能性コーティング層を含むことができる。本明細書で使用されるように、用語「機能性コーティング層」は、センサの少なくとも1つの表面の少なくとも一部、より典型的にはセンサの表面の実質的に全てをコーティングし、センサが配置された環境内の化学化合物、細胞およびその断片など1つ以上の分析物と相互作用することができる層を示す。機能性コーティング層の非限定的な例には、センサ化学層(たとえば、酵素層)、分析物制限層、生体適合性層、センサを滑りやすくさせる層、センサへの細胞付着を促進する層、センサへの細胞付着を低減する層などが含まれる。典型的には、分析物調整層は、グルコースなど1つ以上の分析物が層を通って拡散するのを阻止または制限するように作用する。任意選択で、こうした層が1つのタイプの分子(たとえば、グルコース)が層を通って拡散するのを阻止または制限し、同時に、別のタイプの分子(たとえば、O)が層を通って拡散することができるようにする、または促進するように形成することができる。例示の機能性コーティング層は米国特許第5,786,439号および第5,391,250号で開示されたものなどのヒドロゲルであり、それぞれの開示を本願に引用して援用する。上記に記載されているヒドロゲルは、周囲の水層を提供することが有利な、様々な移植可能なデバイスに特に有用である。
【0126】
本明細書に開示したセンサの実施形態は、UV吸収ポリマを有する層を含むことができる。本発明の一態様により、UV吸収ポリマを含む少なくとも1つの機能性コーティング層を含むセンサを提供する。一部の実施形態では、UV吸収ポリマはポリウレタン、ポリ尿素またはポリウレタン/ポリ尿素コポリマである。より典型的には、選択されたUV吸収ポリマは、ジイソシアネート、少なくとも1つのジオール、ジアミンまたはその混合物、および多官能UV吸収モノマーを含む反応混合物から形成される。
【0127】
UV吸収ポリマは、全体を本願に引用して援用する、ロード(Lord)他の「Transcutaneous Sensor Insertion Set」という名称の米国特許第5,390,671号、ウィルソン(Wilson)他の「Implantable Glucose Sensor」という名称の米国特許第5,165,407号、およびゴフ(Gough)の、「Two−Dimensional Diffusion Glucose Substrate Sensing Electrode」という名称の米国特許第4,890,620号に記載されたものなど、様々なセンサ作製方法で有利に使用される。しかし、センサ素子の上方または下方にUV吸収ポリマ層を形成するステップを含む任意のセンサ作製方法は本発明の範囲内であると考えられる。特に、本発明の方法は薄いフィルム作製方法に限定されず、UV−レーザ切断を使用する他のセンサ作製方法と共に使用することができる。実施形態は、厚いフィルムの平坦または円筒形のセンサなど、およびレーザ切断を必要とする他のセンサ形状と共に作用することができる。
【0128】
本明細書に開示したように、本発明のセンサは、糖尿病患者の血糖値を監視するための皮下または経皮グルコースセンサとして使用されるように特に設計される。典型的には、各センサは、複数のセンサ素子、たとえば、下位の絶縁性の薄いフィルムベース層と上位の絶縁性の薄いフィルムカバー層の間に形成された細長い薄いフィルム導体など導電素子を備える。
【0129】
所望の場合は、複数の異なるセンサ素子を単一のセンサに含むことができる。たとえば、導電性と反応性のセンサ素子の両方を1つのセンサに組み込むことができ、任意選択で、ベース層の異なる部分に配置された各センサ素子と組み合わせることができる。1つ以上の制御素子を提供することもできる。こうした実施形態では、センサはセンサのカバー層中に複数の開口またはアパーチャを画定することができる。1つ以上の開口をベース層の一部分上に直接カバー層中に画定して、センサが配置された環境内でベース層を1つ以上の分析物と相互作用させることもできる。ベース層およびカバー層は様々な材料、典型的にはポリマで構成することができる。より具体的な実施形態では、ベース層およびカバー層はポリイミドなど絶縁材料で構成される。典型的には、開口がカバー層内に形成されて、遠位端の電極および近位端の接触パッドを露出させる。たとえば、グルコース監視用途では、センサを経皮的に配置して、遠位端電極が患者の血液または細胞外液と接触し、接触パッドが監視デバイスに都合よく連結されるように外部に配置することができる。
【0130】
本発明のセンサは、たとえば平坦または円筒形など、任意の所望の構成を有することができる。ベース層102は、剛直なポリマ層など自己支持型、または可撓性フィルムなど非自己支持型でもよい。後者の実施形態は、たとえば、連続して巻き解かれ、その上にセンサ素子およびコーティング層が連続して塗布されるポリマフィルムのロールを使用して、センサの連続製造を可能にするという点で望ましい。
【0131】
本発明の一般的な実施形態は、ベース層、ベース層上に配置され、複数のセンサ素子を含む分析物感知層、分析物感知層上に配置され、導電層上の複数の感知素子を全てコーティングする酵素層(典型的には2ミクロン未満の厚さ)、および1つ以上のコーティング層を備える、体内に移植されるように設計されたセンサを含む。典型的には、酵素層はグルコースオキシダーゼを含み、典型的には、担体タンパク質に対して実質的に固定比率で含む。特定の実施形態では、グルコースオキシダーゼおよび担体タンパク質は、配置された酵素層中に実質的に均一に分配される。典型的には、担体タンパク質は、通常、約5重量%の量のアルブミンを含む。本明細書で使用されるように、「アルブミン」は、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンなど、ポリペプチド組成物を安定化するための、当業者が典型的に使用するアルブミンタンパク質を指す。本発明の一部の実施形態では、コーティング層は、酵素層と接触することができる分析物の量を調節するように、センサ上に配置された分析物接触層である。他の実施形態では、センサは酵素層と分析物接触層の間に配置された接着促進層を含み、酵素層の厚さは1、0.5、0.25または0.1ミクロン未満である。
【0132】
本発明の実施形態は、分析物感知層が、多孔性金属、および/またはセラミック、および/またはポリマのマトリックス上に配置され、この素子の組合せがセンサ内で電極として機能する設計を含む。本発明の関連する実施形態は、ベース層、ベース層上に配置され、少なくとも1つの作用電極および少なくとも1つの対電極を含む導電層、導電層上に配置され、厚さが2ミクロン未満である分析物感知層、および典型的には層を通って拡散し、分析物感知層と接触することができる分析物の量を制限することによって、酵素層と接触する分析物の量を調節する分析物調整層を含む電気化学分析物センサである。本発明の幾つかの実施形態では、分析物調整層は、中央鎖、および中央鎖に結合された複数の側鎖を有する親水性櫛型コポリマを含み、少なくとも1つの側鎖はシリコーン部分を含む。本発明の任意選択の実施形態では、作用電極および/または作用電極のコーティングされた表面は、対電極および/または対電極のコーティングされた表面よりも大きい。一部の実施形態では、酵素層は、固定比率で担体タンパク質と組み合わせた、作用電極および対電極上にコーティングすることによって安定化されたグルコースオキシダーゼを含む。一実施形態では、このグルコースオキシダーゼ酵素層は導電層を実質的にカバーする。グルコースオキシダーゼ酵素層が導電層全体上に均一なコーティングで配置される実施形態は、異なる材料特性を有する異なるコーティングの選択的層間剥離など、単一層上に複数の異なるコーティングを有するセンサに関連する問題を回避することができるために典型的である。センサは、典型的には、酵素層と分析物調節層の間に配置された接着促進層を含む。
【0133】
本発明の関連する実施形態は、ベース層、少なくとも1つの作用電極、少なくとも1つの参照電極、および少なくとも1つの対電極を含む、ベース層上に配置された導電層、導電層上に配置された酵素層、ならびに、酵素層と接触する分析物の量を調節する分析物調整カバー層を有する電気化学分析物センサを含む。一部の実施形態では、酵素層は2ミクロン未満の厚さであり、作用電極、参照電極および対電極の少なくとも一部上にコーティングされる。例示の実施形態では、酵素層は、作用電極、参照電極、および対電極を実質的にカバーする。任意選択で、酵素層は、担体タンパク質(たとえば、アルブミン)と固定比率で組み合わせたグルコースオキシダーゼを含む。典型的には、センサは、酵素層と分析物調整層の間に配置された接着促進層を含む。
【0134】
本発明の他の実施形態は、ベース層、ベース層上に配置された導電層、導電層上に配置されたグルコースオキシダーゼを含む分析物感知層であって、グルコースオキシダーゼがグルコースオキシダーゼとアルブミンを規定の比率で組み合わせることによって安定化され、グルコースオキシダーゼおよびアルブミンが配置された層中に実質的に均一に分配される分析物感知層、ならびに、グルコース制限層を通って拡散してグルコースオキシダーゼ層と接触するグルコースの量を調節するグルコース制限層を含む、体内に移植されるグルコースセンサを含む二重注入セットを備える。一部の実施形態では、導電層は少なくとも1つの作用電極および少なくとも1つの対電極を含む複数のセンサ素子を備える。
【0135】
[F.分析物センサ装置構成]
臨床の場では、電気化学センサを使用して、血液試料から、グルコースおよび/または乳酸値など分析物の正確で比較的迅速な決定を行うことができる。従来のセンサは、多くの使用可能部品を含む大きいものに作製され、または多くの状況で比較的便利な小さい平面型センサに作製される。本明細書で使用されるように、用語「平面」は、たとえば周知の厚いフィルムまたは薄いフィルム技法を使用して、比較的薄い材料の層を含む実質的に平面構造を製作する周知の手順を指す。たとえば、(両方を本願に引用して援用する)リュー(Liu)他の米国特許第4,571,292号およびパパダキス(Papadakis)他の米国特許第4,536,274号を参照されたい。下記のように、本明細書に開示した本発明の実施形態は、当技術分野の現存のセンサよりも広範囲の幾何形状(たとえば、平面)を有する。さらに、本発明の幾つかの実施形態は、薬剤注入ポンプなど、他の装置に結合された本明細書に開示した1つ以上のセンサを含む。
【0136】
図2は本発明の典型的な分析物センサ構成を示す図である。幾つかのセンサ構成は、分析物センサ装置を有するように作製することができる比較的平坦な「リボン」型構成である。こうした「リボン」型構成は、グルコースオキシダーゼなど感知酵素のスピンコーティング、高度に可撓性のセンサの幾何形状の設計および製造を可能にする非常に薄い酵素コーティングを生成する製造工程によって得られる、本明細書に開示したセンサの利点を示す。こうした薄い酵素でコーティングされたセンサは、移植可能な装置に非常に望ましい特徴である、センサ感度を維持しながら比較的小さいセンサ面積を可能にするなどさらなる利点を提供する(たとえば、装置が小さいほど移植しやすい)。したがって、スピンコーティングなどの処理によって形成することができる非常に薄い分析物感知層を使用する本発明のセンサの実施形態は、電着などの処理によって形成された酵素層を使用するセンサよりも広範囲の幾何形状(たとえば、平面)を有することができる。
【0137】
幾つかのセンサ構成は、複数の作用電極、対電極および参照電極など、複数の導電素子を含む。こうした構成の利点は、表面積の増加によってセンサ感度が上がることである。たとえば、1つのセンサ構成は第3の作用センサを導入する。こうした構成の1つの明らかな利点は、3つのセンサの信号平均化であり、それによってセンサの精度が増加する。他の利点には、複数の分析物を測定する能力が含まれる。具体的には、この構成の電極(たとえば、複数の作用電極、対電極および参照電極)を含む分析物センサ構成を、複数の分析物センサに組み込むことができる。酸素、過酸化水素、グルコース、乳酸、カリウム、カルシウム、および任意の他の生理学的に関連する物質/分析物など複数の分析物の測定は、たとえばこうしたセンサの線形応答を行う能力、ならびに、較正および/または再較正を容易にする幾つかの利点を提供する。
【0138】
本発明の分析物センサを、薬剤注入ポンプなど他の医療デバイスに結合することができる。この方式の例示の変形形態では、たとえば、医療デバイスに結合されるポート(たとえば、ロッキング電気接続を有する皮下ポート)を使用することによって、本発明の交換可能な分析物センサを薬剤注入ポンプなど他の医療デバイスに結合することができる。
【0139】
<II.本発明の装置のための例示の方法および材料>
幾つかの論文、米国の特許および特許出願に、本明細書に開示した一般的な方法および材料に関する最新技術が記載されており、本明細書に開示したセンサの設計に使用することができる様々な素子(およびその製造方法)がさらに記載されている。それには、たとえば、それぞれの内容を本願に引用して援用する、米国特許第6,413,393号、第6,368,274号、第5,786,439号、第5,777,060号、第5,391,250号、第5,390,671号、第5,165,407号、第4,890,620号、第5,390,691号、第5,482,473号、第5,299,571号、第5,568,806号、米国特許出願公開第20020090738号、ならびに、PCT国際公開第01/58348号、第03/034902号、第03/035117号、第03/035891号、第03/023388号、第03/022128号、第03/022352号、第03/023708号、第03/036255号、第03/036310号、および第03/074107号が含まれる。
【0140】
糖尿病患者のグルコース濃度を監視するための典型的なセンサはさらに、シチリ(Shichiri)他の「In Vivo Characteristics of Needle−Type Glucose Sensor−Measurements of Subcutaneous Glucose Concentrations in Human Volunteers」、Horm.Metab.Res.,Suppl.Ser.20:17〜20(1988)、ブルッケル(Bruckel)他の「In Vivo Measurement of Subcutaneous Glucose Concentrations with an Enzymatic GIucose Sensor and a Wick Method」、Klin.Wochenschr.67:491〜495(1989)、およびピックアップ(Pickup)他の「In Vivo Molecular Sensing in Diabetes Mellitus:An Implantable Glucose Sensor with Direct Electron Transfer」、Diabetologia32:213〜17(1989)に記載されている。他のセンサは、たとえば、本願に引用して援用する、リーチ(Reach)他のADVANCES IN IMPLANTABLE DEVICES、A.ターナー(Turner)(編)、JAI Press、London、第1章(1993)に記載されている。
【0141】
[A.一般的な方法]
本明細書に開示した本発明の典型的な一実施形態は、ベース層と、1つ以上の注入素子(たとえばカテーテル)、および追加で1つ以上のセンサ素子、ならびに、穿孔部材などこうした素子を生体内に配置しやすくする素子を組み合わせることによって、哺乳類の体内に移植するための二重注入セット装置を作製する方法である。任意選択で、センサは、ベース層を提供するステップ、ベース層上に導電層を形成し、導電層が電極(かつ典型的には、作用電極、参照電極、および対電極)を含むステップ、導電層上に分析物感知層を形成し、分析物感知層が分析物が存在する場合に導電層中の電極の電流を変えることができる組成物を含むステップ、タンパク質層を分析物感知層上に任意選択で形成するステップ、接着促進層を分析物感知層または任意選択のタンパク質層上に形成するステップ、分析物感知層上に配置される分析物調整層を形成し、分析物調整層が分析物の分析物調整層を通る拡散を調整する組成物を含むステップ、および分析物調整層の少なくとも一部上に配置されるカバー層を形成し、カバー層が分析物調整層の少なくとも一部上にアパーチャをさらに含むステップを含む工程によって作製される。本発明の幾つかの実施形態では、分析物調整層は、中央鎖および中央鎖に結合された複数の側鎖を有する親水性櫛型コポリマを含み、少なくとも1つの側鎖はシリコーン部分を含む。こうした方法の一部の実施形態では、分析物センサ装置は、平坦な幾何形状構成に形成される。
【0142】
本明細書に開示したように、センサの様々な層を、センサの特定の設計に従って操作することができる多様な異なる特性を示すように製造することができる。たとえば、接着促進層は、全体のセンサ構造を安定させることができるように選択された化合物、典型的にはシラン組成物を含む。本発明の一部の実施形態では、分析物感知層は、スピンコーティング法で形成され、1、0.5、0.25、および0.1ミクロン未満の高さからなるグループから選択された厚さである。
【0143】
典型的には、センサの作製方法は、タンパク質層を分析物感知層上に形成するステップを含み、タンパク質層中のタンパク質はウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなるグループから選択されるアルブミンである。典型的には、センサの作製方法は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、ヘキソキナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼからなるグループから選択される酵素組成物を含む分析物感知層を形成するステップを含む。こうした方法では、分析物感知層は、典型的には、担体タンパク質組成物を酵素に対して実質的に固定比率で含み、酵素および担体タンパク質は分析物感知層中に実質的に均一に分配される。
【0144】
[B.分析物センサの製造に有用な典型的なプロトコルおよび材料]
本明細書に提供した開示は、様々な周知の技法の組合せを使用して作製することができるセンサおよびセンサの設計を含む。この開示はさらに、非常に薄い酵素コーティングをこのタイプのセンサ、ならびに、こうした工程で製造されたセンサに塗布する方法を提供する。その関連で、本発明の一部の実施形態は、技術的に容認される工程に従って、こうしたセンサを基板上に作製する方法を含む。幾つかの実施形態では、基板はフォトリソグラフィマスクおよびエッチング加工で使用するのに適した剛直かつ平坦な構造を含む。その関連で、基板は、典型的には、高い均一な平面度を有する上面を画定する。研磨したガラス板を使用して、平滑な上面を画定することができる。代替の基板材料には、たとえば、ステンレス鋼、アルミニウム、およびデルリンなどプラスチック材料が含まれる。他の実施形態では、基板は非剛直であり、たとえば、ポリイミドなどのプラスチックなど、基板として使用される他のフィルムまたは絶縁体の層でもよい。
【0145】
本発明の方法の最初のステップは、典型的には、センサのベース層の形成を含む。ベース層を、任意の所望の手段、たとえば制御されたスピンコーティングによって、基板上に配置することができる。さらに、基板層とベース層の間の接着が十分でない場合は、接着剤を使用することができる。絶縁材料のベース層は、典型的には、ベース層の材料を液体形態で基板上に塗布し、その後に基板を回転させて、薄い、実質的に均一の厚さのベース層を作製することによって、基板上に形成される。こうしたステップを繰り返して、十分な厚さのベース層を作製し、続いて、一連のフォトリソグラフィおよび/または化学マスクおよびエッチングのステップによって以下で論じる導体を形成する。例示の一形態では、ベース層は、セラミックまたはポリイミド基板など、絶縁材料の薄いフィルムシートを含む。ベース層は、アルミナ基板、ポリイミド基板、ガラスシート、制御された多孔質ガラス、または平坦化プラスチック液晶ポリマを含むことができる。ベース層は、限定的ではないが、炭素、窒素、酸素、ケイ素、サファイア、ダイヤモンド、アルミニウム、銅、ガリウム、ヒ素、ランタン、ネオジム、ストロンチウム、チタン、イットリウム、またはその組合せを含む、1つ以上の様々な元素を含む任意の材料から誘導することができる。さらに、基板を、化学蒸着、物理蒸着、またはスピンコーティングを含む当技術分野で周知の様々な方法によって、スピングラス、カルコゲニド、グラファイト、二酸化ケイ素、有機合成ポリマなどの材料で固体支持体上にコーティングすることができる。
【0146】
本発明の方法は、さらに、1つ以上の感知素子を有する導電層の生成を含む。典型的には、こうした感知素子は、活性電極の形状を画定するためのフォトレジスト、エッチングおよび洗浄など、当技術分野で周知の様々な方法の1つによって形成される電極である。次いで、たとえば、作用電極および対電極にはPt黒、参照電極上には銀、続いて塩化銀を電着することによって、電極を電気化学的に活性にすることができる。次いで、センサ化学酵素層などセンサの層を、電気化学蒸着、または、たとえば、スピンコーティングに続く、ジアルデヒド(グルタルアルデヒド)またはカルボジイミドとの蒸気架橋(vapor crosslink)など、電気化学蒸着以外の方法で感知層上に配置することができる。
【0147】
本発明の電極を当技術分野で周知の多様な材料から形成することができる。たとえば、電極は貴金属の後周期遷移金属からなるものでもよい。金、白金、銀、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、またはオスミウムなどの金属が本発明の様々な実施形態に適している。炭素または水銀など他の組成物も幾つかのセンサの実施形態に有用である。こうした金属のうち、銀、金、または白金が参照電極金属として典型的に使用される。後で塩素化される銀の電極が参照電極として典型的に使用される。こうした金属は、上記で引用したプラズマ蒸着法を含む当技術分野で周知の任意の手段で、または、基板が金属塩および還元剤を含む溶液に浸漬される場合、以前に金属化された金属の領域上への蒸着を含むことができる無電解法で蒸着することができる。無電解法は、還元剤が電子を導電(金属化)面に移すときに、金属塩が導電面で同時に還元されて進行する。その結果、吸着金属層が得られる。(無電解法に関する他の論述については、ワイズ(Wise)、E.M.によるPalladium:Recovery,Properties,and Uses、Academic Press、New York、New York(1988年)、ウォン(Wong)、K.他のPlating and Surface Finishing、1988年、75、70〜76、マツオカ(Matsuoka)、M.他のIbid.、1988年、75、102〜106、およびパールステイン(Pearlstein)、F.の「Electroless Plating」Modem Electroplating、Lowenheim、F.A.、Ed.、Wiley、New York、N.Y.(1974)第31章を参照されたい)。しかし、こうした金属蒸着法では、良好な金属対金属の接着および最小の表面汚染を有する構造が生成されて、高密度の活性部を有する触媒金属電極面が提供されるに違いない。こうした高密度の活性部は、過酸化水素など電気活性種の効率のよい酸化還元変換に必要な特性である。
【0148】
本発明の例示の一実施形態では、ベース層は最初に電極蒸着、表面スパッタリング、または他の適当な加工ステップによって薄いフィルム導電層でコーティングされる。一実施形態では、この導電層を、ポリイミドのベース層への化学接着に適した最初のクロムベースの層に続いて、薄いフィルムの金ベースおよびクロムベースの層がその後に順に形成された複数の薄いフィルム導電層として提供することができる。代替実施形態では、他の電極層構造または材料を使用することもできる。次いで、従来のフォトリソグラフィ技法に従って、選択したフォトレジストコーティングで導電層をカバーし、接触マスクを適当な光画像形成のためのフォトレジストコーティング上に塗布することができる。接触マスクは、典型的には、フォトレジストコーティングの適切な露出のための1つ以上の導体トレースパターンを含み、続いて、エッチングステップで、ベース層上に複数の導電センサトレースが残ることになる。皮下グルコースセンサとして使用されるように設計された例示の一センサ構成では、各センサトレースは、作用電極、対電極および参照電極など3つの別個の電極に対応する3つの平行のセンサ素子を含むことができる。
【0149】
典型的には、導電センサ層の一部が、通常はケイ素ポリマおよび/またはポリイミドなどの材料の絶縁カバー層によってカバーされる。絶縁カバー層を任意の所望の方法で塗布することができる。例示の一手順では、絶縁カバー層がセンサトレース上に液体層で塗布され、その後、基板が回転されて、液体材料が、センサトレース上に重なり、センサトレースの周縁部を超えて延びてベース層と密閉接触される薄いフィルムとして分配される。次いで、この液体材料は、当技術分野で周知のように、1つ以上の適当な放射線および/または化学および/または熱硬化ステップを受けることができる。代替実施形態では、液体材料をスプレイ技法または任意の他の所望の塗布手段を使用して塗布することができる。光画像形成可能なエポキシアクリレートなど様々な絶縁層材料を使用することができる。例示の材料は、製品番号7020でN.J.,West PatersonのOCG,Inc.から入手可能な光画像形成可能なポリイミドを含む。
【0150】
上記のように、遠位端電極を画定する適当な電極化学物質を、任意選択で開口を通してセンサの先端を露出した後に、センサの先端に塗布することができる。グルコースセンサとして使用される3つの電極を有する例示のセンサの一実施形態では、酵素(典型的にはグルコースオキシダーゼ)が開口の1つ内に与えられ、したがって、センサの先端の1つがコーティングされて、作用電極が画定される。他の電極の1つまたは両方に、作用電極と同じコーティングを行うことができる。別法として、他の2つの電極に他の酵素など他の適当な化学物質を塗布し、またはコーティングせずにおき、あるいは化学的性質を与えて、電気化学センサ用の参照電極および対電極を画定することができる。
【0151】
本発明の非常に薄い酵素コーティングの作製方法は、スピンコーティング法、浸漬乾燥法、低シェアスプレイ法、インクジェットプリンティング法、シルクスクリーン法などを含む。当業者は、当技術分野の方法によって塗布される酵素コーティングの厚さを容易に決定することができるため、本発明の非常に薄いコーティングを作製することができる方法を容易に特定することができる。典型的には、こうしたコーティングは、塗布後に蒸気架橋することができる。驚くべきことに、こうした方法で作られたセンサは、寿命、線形性、規則性の向上、ならびに、信号対雑音比の向上を含む、電着によって作られたコーティングを有するセンサの特性を超える材料特性を有する。さらに、こうした方法によって形成されたグルコースオキシダーゼコーティングを使用する本発明の実施形態は、過酸化水素を再利用し、こうした酵素の生体適合性プロフィールを改善するように設計される。
【0152】
スピンコーティング法などの方法で作られたセンサは、電着処理中にセンサに加えられる材料応力に関連する問題など、電着に関連する他の問題も回避する。具体的には、電着法では、センサ上に、たとえば張力および/または圧縮力から生じる機械的応力など、機械的応力が生じることが観察される。状況によっては、こうした機械的応力によって、亀裂または離層する傾向があるコーティングを有するセンサになる恐れがある。これは、スピンコーティングまたは他の低応力の方法でセンサ上に配置されたコーティングでは観察されない。したがって、本発明の他の実施形態は、スピンコーティングプロセスによってコーティングを塗布することを含む、電着から影響を受けるセンサ上のコーティングの亀裂および/または離層を回避する方法である。
【0153】
センサ素子の処理後、1つ以上の追加の機能性コーティングまたはカバー層をスプレイ、浸漬など当技術分野で周知の多様な方法の任意のもので塗布することができる。本発明の一部の実施形態は、酵素を含む層上に蒸着された分析物調整層を含む。活性センサ表面と接触する1つ以上の分析物の量の調整に分析物調整層を使用する他に、分析物制限膜層の使用によって、外来の材料によるセンサ汚損の問題も取り除かれる。当技術分野で周知のように、分析物調整膜層の厚さは活性酵素に到達する分析物の量に影響を与える可能性がある。したがって、その適用は、典型的には、規定の処理条件下で実施され、その厚さ寸法は厳密に制御される。下位層の微細加工は、分析物調整膜層の寸法制御に影響を与える因子である他に、分析物制限膜層材料自体の組成物を要求することがある。その関連で、幾つかのタイプのポリマ、たとえばシロキサンおよび非シロキサン部分のコポリマが特に有用であることが発見されている。こうした材料を制御した厚さにマイクロ分注(microdispense)またはスピンコーティングすることができる。その最終構成を本明細書に記載した他の別個の構造に適合するパターンニングおよびフォトリソグラフィ技法によって設計することもできる。こうした非シロキサン−シロキサンコポリマの例には、限定的ではないが、ジメチルシロキサン−アルケンオキシド(dimethylsiloxane−alkene oxide)、テトラメチルジシロキサン−ジビニルベンゼン(tetramethyldisiloxane−divinylbenzene)、テトラメチルジシロキサン−エチレン(tetramethyldisiloxane−ethylene)、ジメチルシロキサン−シルフェニレン(dimethylsiloxane−silphenylene)、ジメチルシロキサン−シルフェニレンオキシド(dimethylsiloxane−silphenylene oxide)、ジメチルシロキサン−a−メチルスチレン(dimethylsiloxane−a−methylstyrene)、ジメチルシロキサン−ビスフェノールAカーボネートコポリマ(dimethylsiloxane−bisphenol A carbonate copolymer)、またはその適当な組合せが含まれる。コポリマの非シロキサン成分の重量%は、任意の有用な値に予め選択することができるが、典型的には、この割合は約40〜80wt%の範囲内である。上記のコポリマの中で、50〜55wt%の非シロキサン成分を含むジメチルシロキサン−ビスフェノールAカーボネートコポリマが典型的である。こうした材料は、Bristol、Pa.(USA)のPetrarch Systems、から購入することができ、この会社の製品カタログに記載されている。分析物制限膜層として働くことができる他の材料には、限定的ではないが、ポリウレタン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコーンゴム、または、適合性がある場合はシロキサン非シロキサンコポリマを含む、こうした材料の組合せが含まれる。
【0154】
本発明の一部の実施形態では、センサは、センサの層の酵素と接触することができる分析物の量を調節することができる親水性膜コーティングを含む分析物調整層を塗布する方法によって作製される。たとえば、本発明のグルコースセンサに加えられるカバー層は、電極上のグルコースオキシダーゼ酵素層と接触するグルコースの量を調節するグルコース制限膜を含むことができる。こうしたグルコース制限膜は、この目的に適していることが周知の多様な材料、たとえば、ポリジメチルシロキサンなどシリコーン、ポリウレタン、酢酸セルロース、ナフィオン、ポリエステルスルホン酸(たとえば、Kodak AQ)、ヒドロゲル、またはこの目的に適していることが当業者に周知の任意の他の膜から作製することができる。本発明の幾つかの実施形態では、分析物調整層は、中央鎖および中央鎖に結合された複数の側鎖を有する親水性櫛型コポリマを含み、少なくとも1つの側鎖はシリコーン部分を含む。過酸化水素を再利用する能力を有するセンサに関連する本発明の一部の実施形態では、グルコースオキシダーゼ酵素層上に配置された膜層は、センサが配置された環境に過酸化水素が放出されるのを阻止し、過酸化水素分子と電極感知素子との間の接触を促進するように機能する。
【0155】
本発明の方法の一部の実施形態では、接着促進層がカバー層(たとえば分析物調整膜層)とセンサ化学層の間に配置されて、それらが接触しやすいようにし、センサ装置の安定性を増加させる能力のために選択される。本明細書に記載したように、接着促進層の組成物は、センサの安定性を与える能力の他に、幾つかの望ましい特性を提供するように選択される。たとえば、接着促進層で使用される一部の組成物は、干渉物阻止、ならびに、所望の分析物の質量移動を制御する働きをするように選択される。接着促進層を当技術分野で周知の多様な材料の任意のものから作製して、こうした層間の結合を促進することができ、接着促進層を当技術分野で周知の多様な方法の任意のもので塗布することができる。典型的には、接着促進層は、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどシラン化合物を含む。本発明の幾つかの実施形態では、接着促進層および/または分析物調整層は、近位に存在するシロキサン部分を架橋する能力のために選択された物質を含む。本発明の他の実施形態では、接着促進層および/または分析物調整層は、近位の層中に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部分を架橋する能力のために選択された物質を含む。任意選択の実施形態では、AP層はさらに、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、グルコース制限膜など分析物調整層内に典型的に存在するポリマを含む。例示の実施形態では、調合物は0.5〜20%のPDMS、典型的には5〜15%のPDMS、かつ最も典型的には10%のPDMSを含む。PDMSをAP層に加えることは、センサが製造されるときにAP層中に孔または間隙が生じる可能性が低減される状況では有利である
【0156】
上記のようにセンサの層の間の接着を促進させるために一般に使用されるカップリング試薬は、γ−アミノプロピルトリメトキシシランである。シラン化合物は、通常、適当な溶媒と混合されて、液体混合物を形成する。次いで、液体混合物を、限定的ではないが、スピンコーティング、浸漬コーティング、スプレイコーティング、およびマイクロ分注を含む任意の数の方法で、ウェーハまたは平面感知デバイス上に塗布または確立することができる。マイクロ分注法は、材料のマイクロスポットがデバイスの複数の予め選択された領域に分注される自動工程として実施することができる。さらに、「剥離(lift−off)」など、またはフォトレジストキャップを使用するフォトリソグラフィ技法を使用して、得られた選択透過性フィルム(すなわち、選択的透過性を有するフィルム)の幾何形状を局在化し、画定することができる。シラン混合物の形成に使用するのに適した溶媒には、水性溶媒および水混和性の有機溶媒、ならびに、その混合物が含まれる。アルコール性水混和性有機溶媒およびその水性混合物が特に有用である。こうした溶媒混合物は、約200から約6,000の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)など非イオン性界面活性剤をさらに含むことができる。混合物濃度約0.005から約0.2g/dLのこうした界面活性剤の液体混合物への添加は、得られる薄いフィルムの平坦化を助けるものである。また、シラン試薬の適用前にウェーハ表面をプラズマ処理することによって、修正された表面が提供され、より平坦な層の確立を促進することができる。水非混和性有機溶媒をシラン化合物の溶液の調製に使用することもできる。こうした有機溶媒の例には、限定的ではないが、ジフェニルエーテル、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、またはその混合物が含まれる。プロトン性溶媒またはその混合物を使用する場合、水が最終的にアルコキシ基の加水分解を引き起こして、有機ケイ素水酸化物(特にn=1の場合)が生成され、それが縮合してポリ(オルガノシロキサン)が形成される。こうした加水分解シラン試薬は、基板表面上に存在することができるヒドロキシルなど極性基と縮合することもできる。非プロトン性溶媒を使用する場合、大気水分はシラン試薬上に最初に存在するアルコキシ基を加水分解するには十分であろう。シラン化合物(ただしn=1または2)のR’基は、その後に塗布される追加の層と機能的に適合するように選択される。R’基は通常、酵素の基板表面への共有結合的付着に有用な末端アミン基を含む(たとえば、グルタルアルデヒドなど化合物をムラカミ(Murakami)、T他のAnalytical Letters、1986、19、1973〜86によって記載されるように結合剤として使用することができる)。
【0157】
センサの幾つかの他のコーティングと同様に、接着促進層は、当技術分野で周知のように、1つ以上の適当な放射および/または化学および/または熱硬化ステップを受けることができる。代替実施形態では、酵素層を十分に架橋し、または他の方法で調製して、接着促進層が存在しない場合に、膜カバー層がセンサ化学層と直接接触して配置されるようにすることができる。
【0158】
本発明の例示の実施形態は、センサ上に、ベース層を提供し、ベース層上にセンサ層を形成し、センサ層上に酵素層をスピンコーティングし、次いで分析物接触層(たとえばグルコース制限膜など分析物調整層)を形成することによってセンサを作製し、分析物接触層が酵素層と接触することができる分析物の量を調節する方法である。一部の方法では、酵素層はセンサ層上に蒸気架橋される。本発明の典型的な実施形態では、センサ層は少なくとも1つの作用電極および少なくとも1つの対電極を含むように形成される。幾つかの実施形態では、酵素層は、作用電極の少なくとも一部および対電極の少なくとも一部上に形成される。典型的には、センサ層上に形成される酵素層の厚さは、2、1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満である。典型的には、酵素層は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、または乳酸デヒドロキナーゼ、および/または同様の酵素など1つ以上の酵素を含む。特定の方法では、酵素層は、担体タンパク質を固定比率で組み合わせてセンサ層上にコーティングすることによって安定化されるグルコースオキシダーゼを含む。典型的には担体タンパク質はアルブミンである。こうした方法は、典型的には、接着促進層をグルコースオキシダーゼ層と分析物接触層の間に配置されるように形成するステップを含む。任意選択で、接着促進層は分析物調整層の形成前に硬化工程を受ける。
【0159】
こうした方法によって作製され完成したセンサは、典型的には、(支持基板を使用する場合は)支持基板から、たとえば基板上の各センサを取り囲む線に沿って切断することによって迅速に簡単に取り外される。切断ステップは、各センサを取り囲む、またはそれに外接する線に沿って、典型的には導電素子から少なくとも僅かに外側に間隔をあけた関係で、ベースおよびカバー層、ならびに、機能性コーティング層を切断して、完成したセンサの測縁部をシールするのに十分な連続したベースおよびカバー層の材料が残るようにするのに使用されるUVレーザ切断デバイスを含むものなど、当技術分野で典型的に使用される方法を使用することができる。さらに、セラミック基板の切断に典型的に使用されるダイシング技法を適当なセンサの実施形態に使用することができる。ベース層は、典型的には、下位の支持基板に物理的に付着されておらず、または最小限に直接付着されるため、かなりのさらなる処理ステップ、または付着されたセンサを支持基板から物理的に引っ張り、あるいは剥離することによって生じる応力による損傷の可能性を回避して、センサを支持基板から迅速に簡単に持ち上げることができる。その後、支持基板を洗浄し、再利用し、または他の方法で廃棄することができる。他のセンサの構成要素が支持基板から(たとえば切断によって)除去される前または後に、1つ以上の機能性コーティング層を塗布することができる。
【0160】
<III.本発明の分析物センサ装置の使用方法>
本発明の関連する実施形態は、哺乳類の体内の分析物を感知し、治療組成物をその哺乳類に注入する方法であって、この方法は、本明細書に開示した二重注入セットの実施形態を哺乳類の体内に移植し、次いで、流体を送達し、作用電極の電流の変化を感知し、電流の変化を分析物の存在と相関させて、分析物を感知することを含む。典型的には、分析物センサは陽極に分極されて、電流の変化が感知される作用電極が陽極になされる。1つのこうした方法では、分析物センサ装置は哺乳類の体内のグルコースを感知する。代替方法では、分析物センサ装置は、乳酸、カリウム、カルシウム、酸素、pH、および/または哺乳類の体内の任意の生理学的に関連する分析物を感知する。
【0161】
上記に開示した構造を有する幾つかの分析物センサは、哺乳類の体内の分析物を感知するための多様な方法を可能にする幾つかの非常に望ましい特性を有する。たとえばこうした方法では、哺乳類の体内に移植された分析物センサ装置は、1、2、3、4、5、または6ヶ月以上にわたり哺乳類の体内で分析物を感知するように機能する。典型的には、このように哺乳類の体内に移植された分析物センサ装置は、15、10、5、または2分未満の分析物とセンサの接触に応答して、電流の変化を感知する。こうした方法では、センサを、哺乳類の体内の様々な部位、たとえば血管腔と非血液腔の両方に移植することができる。
【0162】
<IV.本発明のキットおよびセンサセット>
本発明の他の実施形態では、上記のように、分析物を感知し、治療組成物を送達するのに有用なキットおよび/またはセンサセットを提供する。キットおよび/またはセンサセットは、典型的には、上記の容器、ラベル、および装置を含む。適当な容器には、たとえば、金属箔、ボトル、バイアル、注射器、および試験管などの材料から作られた開けやすいパッケージが含まれる。容器は、金属(たとえば箔)、紙製品、ガラス、またはプラスチックなど様々な材料から形成することができる。容器上の、または容器に関連するラベルは、センサが選択分析物のアッセイに使用されていることを示す。一部の実施形態では、容器は、ベース、インスリンを注入するための注入素子、感知素子、または感知血糖、および注入および感知素子を生体内に挿入するための穿孔部材を有する装置を保持する。キットは、センサを分析物環境内に導入しやすくするように設計された素子またはデバイス、他の緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針、注射器、および使用説明書を有するパッケージ挿入物を含む、商業上かつ使用者の立場から望ましい他の材料をさらに含むことができる。
【0163】
本明細書で様々な刊行物の引用が参照されている。また、本発明の様々な実施形態をより明瞭に概説するために、関連技術からの幾つかの文章が本明細書に再現されている。本明細書での全ての引用文の開示を明確に本願に引用して援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を患者の身体に供給し、前記患者の身体特性を監視するための装置であって、
前記装置を前記患者の皮膚に固定するように適合されたベースと、
前記ベースに結合され、前記ベースから延び、流体を注入部位に注入するための少なくとも1つのカニューレに動作可能に結合された第1の穿孔部材と、
前記ベースに結合され、前記ベースから延び、センサが配置された部位で前記患者の少なくとも1つの身体特性を決定するためのセンサ電極を有する電気化学センサに動作可能に結合された第2の穿孔部材と、
を備え、
前記第1および第2の穿孔部材が前記ベースに動作可能に結合され、患者に挿入された場合に、前記第1の穿孔部材によって作られた第1の貫通チャネルが前記第2の穿孔部材によって作られた第2の貫通チャネルと動作可能に接触しない方向付けで、前記第1および第2の穿孔部材が前記ベースに結合されることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記第1および第2の穿孔部材が患者に挿入された場合に、前記注入部位が表皮層内に配置され、前記センサ電極が真皮層内に配置される方向付けで、前記第1および第2の穿孔部材が前記ベースに結合されることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、前記第1および第2の穿孔部材が患者に挿入された場合に、前記注入部位と前記センサ電極が少なくとも7ミリメートルの組織だけ分離される方向付けで、前記第1および第2の穿孔部材が前記ベースに結合されることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、前記第1および第2の穿孔部材が、動作可能に前記ベースと係合し前記ベースから係合解除することができるハブ上に配置されることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、前記ハブが、前記ハブを前記ベースから係合解除するときに前記ハブを把持することができるようにするつまみ部材を備えることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、前記カニューレおよび前記センサ電極が患者に配置された場合に、前記カニューレおよび前記センサ電極が前記装置を前記患者の前記皮膚に固定し、それによってセンサの読取を安定化させる方向付けで、前記第1および第2の穿孔部材が前記ベースに結合されることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、前記第1および第2の穿孔部材が金属針であることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、前記カニューレに連結されるように適合された注入セット管をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、前記注入セット管に連結されるように適合された薬剤注入ポンプをさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置であって、前記第1の穿孔部材が前記第2の穿孔部材よりも短いことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置であって、前記流体がインスリンであることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置であって、監視される身体特性が血糖を含むことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1に記載の装置であって、前記装置が、前記カニューレおよび前記センサを前記装置の他の構成要素から独立して交換することができるようにするモジュラ構成であることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1に記載の装置であって、流体を注入部位に注入するための微細針のアレイをさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項1に記載の装置であって、前記センサが複数の層を備え、前記層の少なくとも1つが、
前記電極が配置されるベース基板であって、前記ベース基板上に配置された前記電極の電気化学的反応表面の表面積を増加させるように選択された幾何形状を含んで、前記幾何形状上に配置された前記電極の前記電気化学的反応表面積の表面積対体積比が、平坦な表面上に配置された場合の前記電極の前記反応表面の表面積対体積比よりも大きくなるようになされたベース基板、
分析物が存在する場合に前記電極の電流を検出可能に変える分析物感知層、
前記センサの1つ以上の層の間の接着を促進する接着促進層、
中を通る分析物の拡散を調整する分析物調整層、または
血糖に対して不透過性であり、アパーチャを含むカバー層、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項16】
患者の身体特性を監視する電気化学センサの干渉を阻止する方法であって、流体を患者の身体に供給するための装置によって注入される注入剤中に存在する干渉物質によって干渉が生じ、前記方法が装置を使用して患者の身体に流体を供給することを含み、前記装置が、
前記装置を前記患者の皮膚に固定するように適合されたベースと、
前記ベースに結合され、前記ベースから延び、流体を注入部位に注入するための少なくとも1つのカニューレを備える第1の穿孔部材と、
前記ベースに結合され、前記ベースから延び、センサの配置部位で前記患者の少なくとも1つの身体特性を決定するためのセンサ電極を有する前記電気化学センサを含む第2の穿孔部材と、
を含み、
前記第1および第2の穿孔部材が患者に挿入された場合に、前記第1の穿孔部材によって作られた第1の貫通チャネルが前記第2の穿孔部材によって作られた第2の貫通チャネルと動作可能に接触せず、前記注入部位に注入される流体が前記第1の貫通チャネルまたは前記第2の貫通チャネルを通って前記センサに流れることができない方向付けで、前記第1および第2の穿孔部材が前記ベースに結合されて、
干渉が阻止されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記カニューレおよび前記センサ電極が患者に配置された場合に、前記カニューレおよび前記センサ電極が前記装置を前記患者の前記皮膚に固定する機能を果たす方向付けで、前記第1および第2の穿孔部材が前記ベースに結合される装置を使用するステップを含む前記装置を前記患者の前記皮膚に安定化させる方法をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、前記干渉が前記注入剤中に存在するフェノール系防腐剤によって生じることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、前記センサが複数の層を備え、前記層の少なくとも1つが、
前記電極が配置されるベース基板であって、前記ベース基板上に配置された前記電極の電気化学的反応表面の表面積を増加させるように選択された幾何形状を含んで、前記幾何形状上に配置された前記電極の前記電気化学的反応表面積の表面積対体積比が、平坦な表面上に配置された場合の前記電極の前記反応表面の表面積対体積比よりも大きくなるようになされたベース基板、
分析物が存在する場合に前記電極の電流を検出可能に変える分析物感知層、
前記センサの1つ以上の層の間の接着を促進する接着促進層、
中を通る分析物の拡散を調整する分析物調整層、または
血糖に対して不透過性であり、アパーチャを含むカバー層、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項20】
流体を患者の身体に供給し、前記患者の身体特性を監視するための装置であって、
前記装置を前記患者の皮膚に固定するように適合されたベースと、
前記ベースに結合され、前記ベースから延び、第1および第2の管腔を有する穿孔部材と、
を備え、
前記第1の管腔が流体を注入部位に注入するように適合された出口を備え、
前記第2の管腔が、前記第2の管腔中に配置された電気化学センサであって、センサ配置部位で前記患者の少なくとも1つの身体特性を決定するためのセンサ電極を備える電気化学センサ、および前記センサを前記患者の前記身体に露出する窓を備え、
前記第1の管腔の前記出口および前記第2の管腔の前記窓が、前記穿孔部材が前記ベースに動作可能に結合され、患者に挿入された場合に、注入剤が前記第2の管腔の前記窓から少なくとも7ミリメートルの部位にあるオリフィスから注入される方向付けで配置されることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置であって、前記第1の管腔の前記出口および前記第2の管腔の前記窓が、前記第2の管腔の前記窓が前記第1の管腔の前記出口よりも前記ベースに近くなる方向付けで配置されることを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項20に記載の装置であって、前記穿孔部材が、流体薬剤を流体リザーバから前記第1の管腔の前記出口を通して前記注入部位に送達するカテーテルに動作可能に結合された金属針であることを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項22に記載の装置であって、カニューレに連結されるように適合された注入セット管、および前記注入セット管に連結されるように適合された薬剤注入ポンプをさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項20に記載の装置であって、前記センサが複数の層を備え、前記層の少なくとも1つが、
前記電極が配置されるベース基板であって、前記ベース基板上に配置された前記電極の電気化学的反応表面の表面積を増加させるように選択された幾何形状を含んで、前記幾何形状上に配置された前記電極の前記電気化学的反応表面積の表面積対体積比が、平坦な表面上に配置された場合の前記電極の前記反応表面の表面積対体積比よりも大きくなるようになされたベース基板、
分析物が存在する場合に前記電極の電流を検出可能に変える分析物感知層、
前記センサの1つ以上の層の間の接着を促進する接着促進層、
中を通る分析物の拡散を調整する分析物調整層、または
血糖に対して不透過性であり、アパーチャを含むカバー層、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項20に記載の装置であって、前記流体がインスリンであり、監視される身体特性が血糖を含むことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【公表番号】特表2010−537732(P2010−537732A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523069(P2010−523069)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/074187
【国際公開番号】WO2009/032588
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(595038051)メドトロニック ミニメド インコーポレイテッド (71)
【Fターム(参考)】