説明

列車無線システム

【課題】列車に装置を追加しなくても、複数の基地局で同一の周波数を用いた無線通信が可能な列車無線システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る列車無線システムは、列車が備える移動局8,9と無線通信を行う列車無線システムであって、複数の漏洩同軸ケーブル3,4ごとに設けられ、対応する漏洩同軸ケーブル3,4の第1,第2ゾーンに移動局8,9が存在するか否かを判断する基地局1,2を備える。そして、漏洩同軸ケーブル3,4の終端近傍に設けられ、同軸ケーブルと上り信号減衰器とを備えるフィルタ装置5,6を備える。そして、基地局1,2での判断結果に基づいて、漏洩同軸ケーブル3,4の終端近傍に、フィルタ装置5,6の同軸ケーブルおよび上り信号減衰器のいずれか一つを接続する制御を行う制御局7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車無線システムに関し、特に、列車が備える移動局と無線通信を行う列車無線システムに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
列車無線システムでは、列車に搭載された移動局と、基地局とは、当該基地局に接続された漏洩同軸ケーブルを介して無線通信を行う。この列車無線システムでは、互いに隣接する基地局それぞれに接続された漏洩同軸ケーブル同士の間に、電波干渉区間(以下、基地局間境界と記すこともある)が存在する。従来の列車無線システムでは、隣接する基地局同士で異なる周波数を用いて移動局と通信したり、タイムスロットを割り当てたりして、基地局環境界での電波干渉を回避していた。
【0003】
しかしながら、近年、複数の通信を同時に行うために、周波数利用効率を高めることが求められ、隣接する基地局同士で、同一周波数を用いることが求められるようになってきた。特許文献1に記載の発明では、同一周波数を用いるため、移動局を備える列車に、互いに離れた位置に複数のアンテナを設置し、アンテナそれぞれの無線受信状態を監視し、正常に受信できているアンテナを選択することで無線干渉の影響を軽減させている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−340134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、現状の倍の数のアンテナおよび受信機を列車に設置する必要があり、移動局を実装した列車に、アンテナおよび受信機などの装置をさらに追加しなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、列車に装置を追加しなくても、複数の基地局で同一の周波数を用いた無線通信が可能な列車無線システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る列車無線システムは、列車が備える移動局と無線通信を行う列車無線システムであって、複数の漏洩同軸ケーブルごとに設けられ、対応する前記漏洩同軸ケーブルの無線エリアに前記移動局が存在するか否かを判断する基地局を備える。そして、前記漏洩同軸ケーブルの終端近傍に設けられ、同軸ケーブルと所定の減衰器とを備えるフィルタ装置を備える。そして、前記基地局での判断結果に基づいて、前記漏洩同軸ケーブルの終端近傍に、前記フィルタ装置の前記同軸ケーブルおよび前記所定の減衰器のいずれか一つを接続する制御を行う制御局を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の列車無線システムによれば、漏洩同軸ケーブルの無線エリアに移動局が存在するか否かの判断結果に基づいて、制御局が、漏洩同軸ケーブルの終端近傍に、同軸ケーブルまたは所定の減衰器のいずれか一つを接続をする制御を行う。これにより、干渉の原因となる無線信号を減衰するため、列車に装置を追加しなくても、複数の基地局で同一の周波数を用いた無線通信を行うことができ、その結果、周波数利用効率を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態に係る列車無線システムの構成を示す図である。本実施の形態に係る列車無線システムは、列車が備える移動局と無線通信を行うものであり、基地局1,2と、漏洩同軸ケーブル(以下、LCX(Leaky CoaXial cable)と記すこともある)3,4と、フィルタ装置5,6と、制御局7とを備える。
【0010】
移動局8,9は、列車ごとに搭載される。なお、図1に係る移動局は、移動局8,9の2台しか示していないが、これに限ったものではなく、3台以上設けられていてもよい。移動局8,9は、LCX3,4を介して基地局1,2と無線通信を行い、地上−列車間での通話やデータの伝送を実現する。図1に示す白抜きの矢印は、移動局8を備える列車、または、移動局9を備える列車の移動方向を示している。なお、以下、明示していない限り、図1の位置関係のもとで説明する。
【0011】
複数の漏洩同軸ケーブル(LCX)3,4は、移動局8を備える列車、または、移動局9を備える列車が走行する線路の両側に布設される。LCX3,4は、基地局1,2に接続されており、基地局1,2ごとに無線エリアを形成する。本実施の形態では、基地局1,2の無線エリアを、第1,第2ゾーンと記すこともある。図1の位置関係にあるとき、LCX3は、基地局1の電波信号、および、第1ゾーンに在線している列車の移動局8の電波信号を搬送する。LCX4は、基地局2の電波信号、および、第2ゾーンに在線している列車の移動局9の電波信号を搬送する。
【0012】
このLCX3,4を介して、本実施の形態に係る列車無線システムは、移動局8,9と無線通信を行う。LCX3,4には、電波を増幅する装置が設けられる場合もあるが、ここでは省略する。本実施の形態では、移動局8,9は、基地局1,2に対して同一の周波数の信号を送信し、基地局1,2は、移動局8,9に対して同一の周波数の信号を送信する。
【0013】
本実施の形態に係る列車無線システムが備える基地局1,2は、複数の漏洩同軸ケーブル3,4ごとに設けられ、対応する漏洩同軸ケーブル3,4の第1,第2ゾーンに移動局8,9が存在するか否かを判断する。基地局1,2は、本実施の形態に係る列車無線システムでは、互いに隣接している。なお、図1に係る基地局は、基地局1,2の2台しか示していないが、これに限ったものではなく、3台以上設けられていてもよい。
【0014】
フィルタ装置5,6は、LCX3,4の終端近傍に設けられる。制御局7は、各基地局1,2および各フィルタ装置5,6に、監視用の信号線を介して接続されている。この制御局7は、複数の基地局1,2およびフィルタ装置5,6を監視、制御する。図1に示すように、基地局1に対応するLCX3の終端部分と、基地局2に対応するLCX4の終端部分との中間には、後述する基地局間境界10が存在する。
【0015】
図2は、フィルタ装置6の内部構成を示した図である。本実施の形態に係る列車無線システムが備えるフィルタ装置6は、漏洩同軸ケーブル4の終端近傍に設けられ、同軸ケーブル61と、所定の減衰器とを備える。本実施の形態に係る所定の減衰器は、基地局2から、基地局間境界10付近に存在する移動局への下り信号を減衰させずに、当該移動局から基地局2への上り信号を減衰する上り信号減衰器62である。本実施の形態に係るフィルタ装置では、この上り信号減衰器62に加えて、下り信号を減衰する下り信号減衰器63と、上り信号と下り信号の両方を減衰する減衰器64とをさらに備える。
【0016】
本実施の形態に係るフィルタ装置5は、上述のフィルタ装置6の構成と同じ構成を備える。以下、フィルタ装置5の同軸ケーブル,上り信号減衰器,下り信号減衰器,減衰器を、同軸ケーブル51,上り信号減衰器52,下り信号減衰器53,減衰器54と記す。上述の所定の減衰器52〜54,62〜64の減衰量は、列車無線システムの仕様から決定される。本実施の形態では、それらの減衰量は、15〜30dBであるものとする。同軸ケーブル51,61の減衰量は、例えば、1dB以下であるものとする。
【0017】
フィルタ装置6は、図2に示すように、経路切替部65と、制御部66とをさらに備える。フィルタ装置5も同様に、経路切替部55と制御部56とを備える。図1に示した制御局7は、基地局1,2に対応する漏洩同軸ケーブル3,4の第1,第2ゾーンに、移動局8,9が存在するか否かの判断結果に基づいて、図2に係る制御部66に指示をする。制御部66は、その指示に従って、経路切替部65に接続先を指示する。経路切替部65は、制御部66からの指示に従い、終端近傍のLCX4に、同軸ケーブル61、および、上り信号減衰器62のいずれか一つを接続する。フィルタ装置5の経路切替部55、制御部56も、実質的に同じ動作を行う。こうして、本実施の形態に係る列車無線システムが備える制御局7は、基地局1,2での判断結果に基づいて、漏洩同軸ケーブル3,4の終端近傍に、フィルタ装置5,6の同軸ケーブル51,61および上り信号減衰器52,62のいずれか一つを接続する制御を行う。
【0018】
次に、基地局間境界10について説明する。図1に示すように、基地局間境界10は、LCX3の終端部分と、LCX4の終端部分との中間に存在する。この基地局間境界10は、互いに隣接する基地局1,2の無線エリア同士、つまり、第1,第2ゾーン同士の境界近傍の区間であり、例えば、数十メートルに亘って存在する。図3は、基地局間境界10付近における無線の干渉状態を示す図である。図1に合わせて、基地局1のLCX3による無線エリアを第1ゾーン、基地局2のLCX4による無線エリアを第2ゾーンとしている。
【0019】
第1ゾーンと第2ゾーンとの境目付近の区間である基地局間境界10(図3に「干渉」と示される領域)では、基地局1,2から移動局8,9への下り信号同士が同じ周波数で互いに干渉するため、移動局8,9は、下り信号を正しく受信できない。また、図3にオーバーリーチ区間11と示された、基地局間境界10よりも少し広い区間では、移動局8または移動局9からの上り信号が、基地局1,2両方に到達する。そのため、オーバーリーチ区間11に到達した一の移動局からの上り信号は、それと同じ周波数で通信を行っている他の移動局からの上り信号に対して、干渉を与える可能性がある。
【0020】
ここで、移動局8を備える列車が、第1ゾーンから第2ゾーンへ高速移動した場合を想定する。この場合、基地局間境界10での干渉により、移動局8が下り信号を受信できない時間は一瞬であるため、基地局1,2から移動局8への無線通信に対する影響は少ない。しかし、オーバーリーチ区間11は、基地局間境界10よりも広い。そのため、第2ゾーンに他の移動局9が存在している場合には、移動局8から基地局2への上り信号が、移動局9から基地局2への上り信号に干渉を与えるという問題がある。
【0021】
そこで、本実施の形態では、基地局2が、当該基地局2に対応する漏洩同軸ケーブル4の第2ゾーンに移動局9が存在すると判断した場合に、制御局7は、当該漏洩同軸ケーブル4の終端近傍に、フィルタ装置6の上り信号減衰器62を接続する。さらに、本実施の形態では、基地局2が、当該基地局2に対応する漏洩同軸ケーブル4の第2ゾーンに移動局9が存在しないと判断した場合に、制御局7は、当該漏洩同軸ケーブル4の終端近傍に、フィルタ装置6の同軸ケーブル61を接続する。
【0022】
この動作を、図4のフローチャートを用いて説明する。まず、基地局2は、自分の無線エリアである第2ゾーンに、移動局9が存在しているか否かを判断し(STEP11)、その判断結果を制御局7に伝える。こうして、基地局2は、第2ゾーンの在線情報を制御局7に伝える。
【0023】
STEP11において、第2ゾーンに移動局9が存在していると基地局2が判断した場合、制御局7は、フィルタ装置6に対して、第2ゾーンのLCX4の終端近傍に、上り信号減衰器62を接続する指示をする(STEP12)。指示を受けたフィルタ装置6の経路切替部65は、第2ゾーンのLCX4の終端近傍に、上り信号減衰器62を接続する(STEP13)。これにより、移動局9が第2ゾーンに存在する場合、移動局8がオーバーリーチ区間11に到達しても、移動局8から基地局2への上り信号が減衰される。こうして、移動局9から基地局2への上り信号は、移動局8から基地局2への上り信号によりる干渉を受けなくなる。STEP13の後、再び、STEP11に戻る。
【0024】
一方、STEP11において、第2ゾーンに移動局9が存在していないと基地局2が判断した場合、制御局7は、フィルタ装置6に対して、第2ゾーンのLCX4の終端近傍に、同軸ケーブル61を接続する指示をする(STEP14)。指示を受けたフィルタ装置6の経路切替部65は、第2ゾーンのLCX4の終端近傍に、同軸ケーブル61を接続する(STEP15)。これにより、移動局9が第2ゾーンに存在しない場合に、移動局8がオーバーリーチ区間11に到達したときには、移動局8から基地局2への上り信号が搬送される。つまり、移動局9が第2ゾーンに存在しない場合、移動局8は、オーバーリーチ区間11を抜ける前に、基地局2と無線通信を行うことができる。STEP15の後、再び、STEP11に戻る。
【0025】
以上では、移動局8が第2ゾーンに向かうときの、基地局2、フィルタ装置6、制御局7の動作について説明したが、移動局9が第1ゾーンに向かうときの、基地局1、フィルタ装置5、制御局7の動作も同様である。なお、1つのゾーンに、複数の移動局が存在する場合には、そのゾーンの基地局が、各異動局との通信タイミングを管理し、各異動局との通信同士が干渉しないように制御するようにする。
【0026】
以上の構成からなる本実施の形態に係る列車無線システムによれば、移動局9が第2ゾーンに存在する場合に、制御局7は、漏洩同軸ケーブル(LCX)4の終端近傍に、上り信号減衰器62を接続する制御を行う。これにより、移動局8がオーバーリーチ区間11に到達しても、移動局8から基地局2への上り信号が減衰されるため、移動局9から基地局2への上り信号は、干渉を受けなくなる。こうして、列車に装置を追加しなくても、移動局8,9で同一の周波数を用いた無線通信を行うことができ、その結果、周波数利用効率を高くすることができる。
【0027】
また、本実施の形態に係る列車無線システムによれば、移動局9が第2ゾーンに存在しない場合に、制御局7は、LCX4の終端近傍に、同軸ケーブル61を接続する制御を行う。そのため、移動局8がオーバーリーチ区間11を抜ける前に、移動局8と基地局2との無線通信を確保することができる。
【0028】
<実施の形態2>
本実施の形態に係る列車無線システムの構成は、図1のブロック図に示される構成と同じである。本実施の形態に係る基地局1,2、および、LCX3,4、および、および、移動局8,9は、実施の形態1と同じである。ここで、仮に、移動局8が、第1ゾーンから第2ゾーンへの移動中に、基地局間境界10で停車した場合、移動局8は、無線干渉により、基地局1,2からの下り信号を受信することができなくなる。一般的に、移動局は、基地局からの下り信号を受信できない場合には、基地局へ上り信号を送信することができない。そのため、移動局8は、基地局1,2に上り信号を送信することができなくなる。そこで、基地局1,2の両方で、移動局8からの上り信号を受信できない場合に、移動局8が存在しないと判断するものであれば、制御局7は、移動局8の列車が基地局間境界10に停車したと判断できる。
【0029】
これを前提にして、本実施の形態に係る列車無線システムを、以下のように構成する。まず、本実施の形態に係るフィルタ装置5,6は、実施の形態1の図2の構成と同様に、同軸ケーブル51,61と、所定の減衰器とを備える。本実施の形態に係るフィルタ装置5が備える所定の減衰器は、基地局間境界10付近の移動局から基地局1への上り信号、および、基地局1から当該移動局への下り信号の両方を減衰する減衰器54である。同様に、本実施の形態に係るフィルタ装置6が備える所定の減衰器は、基地局間境界10付近の移動局から基地局2への上り信号、および、基地局2から当該移動局への下り信号の両方を減衰する減衰器64である。本実施の形態に係るフィルタ装置5,6では、減衰器54,64に加えて、上り信号を減衰する上り信号減衰器52,62と、下り信号を減衰する下り信号減衰器53,63とをさらに備える。
【0030】
また、本実施の形態に係る列車無線システムが備える基地局は、第1の基地局である基地局1と、当該基地局1からの列車の移動先となる第2の基地局である基地局2である。本実施の形態では、各基地局1,2が、当該基地局1,2に対応する第1,第2の漏洩同軸ケーブルであるLCX3,4の第1,第2ゾーンに移動局8が存在しないと判断した場合に、制御局7は、LCX3,4のいずれか一方の終端近傍に、減衰器54,64を接続し、他方の終端近傍に同軸ケーブル51,61を接続する。
【0031】
この動作を図5のフローチャートを用いて説明する。なお、以下の本実施の形態に係る列車無線システムの動作は、実施の形態1に係る列車無線システムの動作と重複する部分もあるが、基本的には実施の形態1に係る列車無線システムの動作とは異なるものである。
【0032】
まず、基地局1は、自分の無線エリアである第1ゾーンに、移動局8が存在しているか否かを判断し(STEP21)、その判断結果を制御局7に伝える。STEP21において、第1ゾーンに移動局8が存在していると基地局1が判断した場合、制御局7は、フィルタ装置5に対して、第1ゾーンの漏洩同軸ケーブル3の終端近傍に、上り信号減衰器52を接続する指示をする(STEP22)。指示を受けたフィルタ装置5の経路切替部は、第1ゾーンの漏洩同軸ケーブル4の終端近傍に、上り信号減衰器52を接続する(STEP23)。STEP23の後、再び、STEP21に戻る。
【0033】
一方、STEP21において、第1ゾーンに移動局8が存在していないと基地局1が判断した場合、制御局7は、基地局2に、第2ゾーンに移動局8が存在しているか否かの判断をするように指示する。基地局2は、自分の無線エリアである第2ゾーンに、移動局8が存在しているか否かを判断し(STEP24)、その判断結果を制御局7に伝える。
【0034】
STEP24において、第2ゾーンに移動局8が存在していると基地局2が判断した場合、制御局7は、フィルタ装置6に対して、第2ゾーンのLCX4の終端近傍に、同軸ケーブル61を接続する指示をする(STEP25)。指示を受けたフィルタ装置6の経路切替部65は、第2ゾーンのLCX4の終端近傍に、同軸ケーブル61を接続する(STEP26)。STEP26の後、再び、STEP21に戻る。
【0035】
STEP24において、第2ゾーンに移動局8が存在していないと基地局2が判断した場合、制御局7は、フィルタ装置6に対して、第2ゾーンのLCX4の終端近傍に減衰器64を接続する指示をする。それとともに、制御局7は、フィルタ装置5に対して、第1ゾーンのLCX3の終端近傍に同軸ケーブル51を接続する指示をする(STEP27)。指示を受けたフィルタ装置6の経路切替部65は、第2ゾーンのLCX4の終端近傍に、減衰器64を接続する。それとともに、指示を受けたフィルタ装置5の経路切替部は、第1ゾーンのLCX3の終端近傍に、同軸ケーブル51を接続する(STEP28)。これにより、基地局間境界10であったエリアには、第1ゾーンの無線エリアのみが存在し、基地局1から移動局8への下り信号と、基地局2から移動局8への下り信号との干渉がなくなる。そのため、基地局間境界10に停車していた移動局8は、基地局1との通信が可能となる。
【0036】
STEP28の後、再び、STEP21に戻る。ここで、移動局8が、第2ゾーン寄りに停車していた場合には、基地局1との通信ができないため、STEP21から再びSTEP27に進むことになる。そこで、本実施の形態では、制御局7は、フィルタ装置5に対して、第1ゾーンのLCX3の終端近傍に減衰器54を接続する指示をする。それとともに、制御局7は、フィルタ装置6に対して、第2ゾーンのLCX4の終端近傍に同軸ケーブル61を接続する指示をする。そして、指示を受けたフィルタ装置5,6の経路切替部55,65は、指示通りに接続する。これにより、基地局間境界10であったエリアには、第2ゾーンの無線エリアのみが存在し、基地局1から移動局8への下り信号と、基地局2から移動局8への下り信号との干渉がなくなる。そのため、基地局間境界10に停車していた移動局8は、基地局2との通信が可能となる。
【0037】
STEP28の後、再び、STEP21に戻る。以上の動作によってもなお、第1,第2ゾーンのいずれにおいても移動局8が存在しないと判断される場合には、移動局8の無線機が故障していることが想定される。そこで、本実施の形態では、制御局7は、フィルタ装置5,6両方に対して、第1,第2ゾーンのLCX3,4の終端近傍に上り信号減衰器52,62を接続する指示をする。
【0038】
以上の構成からなる本実施の形態に係る列車無線システムによれば、移動局8が基地局間境界10に停車した場合において、LCX3,4のいずれか一方の終端近傍に減衰器54,64を接続し、他方の終端近傍に同軸ケーブル51,61を接続する。これにより、基地局1,2で同一の周波数を用いても、いずれか一方の下り信号は減衰されるため、移動局8は、基地局1または基地局2のいずれかと無線通信を行うことができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、各基地局1,2が、当該基地局1,2に対応する第1,第2の漏洩同軸ケーブルであるLCX3,4の第1,第2ゾーンに移動局8が存在しないと判断した場合に、制御局7は、LCX3,4のいずれか一方の終端近傍に、減衰器54,64を接続し、他方の終端近傍に同軸ケーブル51,61を接続した。しかし、これに限ったものではなく、減衰器54,64の代わりに、下り信号減衰器53,63を用いても、上述と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態1に係る列車無線システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る列車無線システムの構成を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る列車無線システムの干渉状態を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る列車無線システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態2に係る列車無線システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1,2 基地局、3,4 漏洩同軸ケーブル、5,6 フィルタ装置、7 制御局、8,9 移動局、10 基地局間境界、11 オーバーリーチ区間、51,61 同軸ケーブル、52,62 上り信号減衰器、53,63 下り信号減衰器、54,64 減衰器、55,65 経路切替部、56,66 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車が備える移動局と無線通信を行う列車無線システムであって、
複数の漏洩同軸ケーブルごとに設けられ、対応する前記漏洩同軸ケーブルの無線エリアに前記移動局が存在するか否かを判断する基地局と、
前記漏洩同軸ケーブルの終端近傍に設けられ、同軸ケーブルと所定の減衰器とを備えるフィルタ装置と、
前記基地局での判断結果に基づいて、前記漏洩同軸ケーブルの終端近傍に、前記フィルタ装置の前記同軸ケーブルおよび前記所定の減衰器のいずれか一つを接続する制御を行う制御局とを備える、
列車無線システム。
【請求項2】
前記所定の減衰器は、
前記移動局から前記基地局への上り信号を減衰する上り信号減衰器を含み、
前記制御局は、
前記基地局が、当該基地局に対応する前記漏洩同軸ケーブルの無線エリアに前記移動局が存在すると判断した場合に、当該洩同軸ケーブルの終端近傍に、前記フィルタ装置の前記上り信号減衰器を接続する、
請求項1に記載の列車無線システム。
【請求項3】
前記制御局は、
前記基地局が、当該基地局に対応する前記漏洩同軸ケーブルの無線エリアに前記移動局が存在しないと判断した場合に、当該洩同軸ケーブルの終端近傍に、前記フィルタ装置の前記同軸ケーブルを接続する、
請求項2に記載の列車無線システム。
【請求項4】
前記所定の減衰器は、
前記移動局から前記基地局への上り信号、および、前記基地局から前記移動局への下り信号の両方を減衰する減衰器を含み、
前記基地局は、
第1の前記基地局と、当該第1の基地局からの前記列車の移動先となる第2の前記基地局とを含み、
前記制御局は、
各前記第1,第2の基地局が、当該第1,第2の基地局に対応する第1,第2の前記漏洩同軸ケーブルの無線エリアに前記移動局が存在しないと判断した場合に、前記第1,第2の漏洩同軸ケーブルのいずれか一方の終端近傍に前記減衰器を接続し、他方の終端近傍に前記同軸ケーブルを接続する、
請求項1に記載の列車無線システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−272905(P2009−272905A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121862(P2008−121862)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】