説明

初期測位時間を短縮するために便宜通信信号および支援情報を使用するGNSSレシーバ

GNSSレシーバは、発振器の周波数における不確定性および発振器が駆動するクロックの位相における不確定性に伴う不確定性を低減するために、既存の放射される便宜通信信号(signals of opportunity)、例えば、AMラジオ信号またはFMラジオ信号、テレビジョン信号の特性を利用し、さらに、ドップラ効果に伴う不確定性を低減するために、保存されたアルマナック(軌道衛星情報)およびバッテリバックアップされた日時情報の形の支援情報を利用する。レシーバは複数の便宜通信信号を用いて、信号の周波数のセットに基づいてレシーバが位置する市または領域を決定し、また、レシーバにおける各便宜通信信号の周波数と、便宜通信信号の基準周波数との差に基づいてオフセットを推定することにより、発信機の周波数に関する不確定性を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、ジョナサン・ラッド(Jonathan Ladd)およびパトリック・フェントン(Patrick Fenton)により2008年5月22日に、「初期測位時間を短縮するための便宜通信信号(signals of opportunity)および支援情報を用いるGNSSレシーバ(GNSS RECEIVER USING SIGNALS OF OPPORTUNITY AND ASSISTANCE INFORMATION TO REDUCE THE TIME TO FIRST FIX)」について出願された米国仮特許出願番号61/055,189の優先権の利益を主張するものであり、当該仮出願は本明細書に参照により含まれる。
【0002】
発明の背景
発明の属する分野
本発明は、一般に、初期測位時間を短縮し、またラジオ周波数(RF)の帯域を狭くするためのGNSSレシーバおよびGNSSレシーバの動作方法に関する。
【0003】
従来の技術
GNSS衛星の信号を取得する際、レシーバは、衛星の選択、ドップラ周波数およびレシーバの発振周波数に関連する不確定性を含むサーチを行う。一般に、サーチでは考えられる全ての衛星の選択が繰り返され、また衛星信号に対する周波数ロックおよびコードロックを行うために各衛星に対して考えられる周波数および考えられるコード位相遅延が連続的に試みられる。周波数とコード位相遅延とのそれぞれの組み合わせにおいて、レシーバは衛星信号が取得されたか否かをチェックする相関電力を決定するが、このプロセスは各衛星についてのサーチにおいて行われなければならない。なぜならば、各衛星はユニークなコードを発信し、レシーバに関する異なった相対動作と関連づけられるからである。したがって、この網羅的なサーチは時間がかかる。
【0004】
衛星の選択に関する不確定性は、軌道衛星の有効なアルマナックと、レシーバの発振器により駆動されるクロックに基づく実時間と、レシーバの概略位置とを用いることにより解消される。アルマナック、時間および位置情報から、レシーバは視野内の衛星を決定し、それらの推定されるドップラ周波数オフセットを計算する。しかし、ほとんどのレシーバは電源オフサイクルの後に、有効な位置情報または十分正確な時間を保持してしない。アルマナック、正確な時間および有効位置情報が無ければ、レシーバは、上述したように、サーチにおいて考えられる全ての衛星の選択を繰り返さなければならない。アルマナック、十分正確な時間および十分正確な位置情報を有していても、サーチにはいまだクロック周波数の不確定性が含まれており、これにより、より制限されたサーチがより時間のかかるものとなる。さらにはレシーバが電源オフの間に移動された場合、保持していた位置情報はもはや、視野内の衛星および/または推定されるドップラ周波数に関する計算にとって十分有効なものではない。
【0005】
ドップラ周波数およびレシーバの発振周波数に関する不確定性があるため、ドップラ周波数に関しては±4kHz分、発振周波数に関しては±12kHz分、サーチ範囲を拡げる必要がある。発振周波数の不確定性の大きさは、レシーバに用いられる発振器の種類またはタイミング液晶の種類に依存する。発振器がより正確になるほど(また通常はより高価になるほど)、発振周波数に存在する不確定性は減少する。GNSSレシーバに用いられる典型的な発振器は、温度および経年変化に起因して、5ppm(百万分の一)〜10ppmの周波数の不確定性を有する。ここで、10ppmは±16kHzのドップラ周波数の不確定性に等しい。
【0006】
ドップラ周波数およびドップラ位相ならびに発振器の周波数および位相の一方または両方の不確定性が競合することにより初期測位時間(TTFF)は長くなる。TTFFはGNSSレシーバが位置の特定に必要とする時間であり、典型的には少なくとも4基のGNSS衛星からの信号を取得して追尾する時間を含む。さらに、発振周波数の不確定性により、追尾のためにより広いラジオ周波数(RF)帯域が必要となるが、これによりRF干渉信号からの影響が増加し、その結果より弱い衛星の信号の追尾に悪影響が及ぼされる。
【0007】
TTFFを短縮するため、例えばエシェンバック(Eshenbach)に与えられた米国特許第5,663,735に記載されたレシーバなどの従来の既知のGPSレシーバは、特殊な目的のためのラジオ信号に変調されたデータ、例えば、国立標準技術研究所(NIST;National Institute of Standards and Technology)のラジオ信号に変調された時間通知情報を用いる。このGPSレシーバは時間通知情報を用いて、取得されているGPS衛星信号に変調されている2つのデータビット間のトランジション時間を求め、次いで、GPS時間を求める。さらに、このGPSレシーバはNISTのラジオ信号に変調された周波数情報も用いて、レシーバの発振器の周波数における不確定性を解消するが、発振器が駆動するクロックの位相の不確定性は残る。しかし、このようなGPSレシーバに関する問題の1つは、NISTラジオ信号が、特定の場所では利用できない場合があることである。さらに、NISTラジオ信号を利用できたとしても、信号に変調された内容はGPSレシーバが自身の位置を直接推定することができる情報をもたらすものではない。
【0008】
発明の概要
GNSSレシーバは、発振器の周波数に伴う不確定性、および、発振器が駆動するクロックの位相における不確定性を低減するために、既存の放射される便宜通信信号(signals of opportunity)、例えば、AMラジオ信号またはFMラジオ信号、テレビジョン信号の特性を利用する。さらに、GNSSレシーバはドップラ効果に伴う不確定性を低減するために、保存されたアルマナック(軌道衛星情報)およびバッテリバックアップされた日時情報の形の支援情報を利用する。
【0009】
またGNSSレシーバはアルマナックが使用できるように十分正確な位置(100キロメートル内)を推定するために、複数の便宜通信信号の特性も利用してレシーバが位置する都市または地域を求めることができる。例えば、レシーバは信号周波数のセットに基づいて都市または地域を求めることができる。これに関しては下記において詳述する。
【0010】
GNSSレシーバが位置する都市または地域がわかれば、GNSSレシーバは局所的な便宜通信信号の基準周波数または公開されている周波数を用いて、発振器の周波数オフセットの推定値を求めることができる。それゆえ、GNSSレシーバはリモートレシーバの便宜通信信号の周波数と便宜通信信号の基準周波数の差を求め、サーチに付随する±12kHzの不確定性を解消するか、または少なくとも実質的に低減させるために、この差を発振器の周波数オフセットの推定値として用いる。
【0011】
さらに、GNSSレシーバは都市情報または地域情報および保存された日時情報を用いて、保存されたアルマナックを入力し、また、視野内の衛星を求めることができる。これにより、衛星の網羅的なサーチを現在見ることができる衛星のサーチのみに限定することができる。さらにレシーバは推定される付随的ドップラオフセットを計算し、ドップラ効果によるサーチ範囲の±4kHz分の拡大を解消するか、または少なくとも実質的に低減することができる。
【0012】
つまり、レシーバは見ることができる衛星のみをサーチし、サーチウインドウはドップラ効果および発振器の周波数に伴う大きな不確定性をもはや含まないので、初期測位時間(TTFF)が大幅に短縮される。
【0013】
追尾の際、GNSSレシーバは便宜通信信号の搬送波に位相をロックし、またラジオ局のクロックまたはテレビ局のクロックを用いてレシーバの発振器を安定化させることができる。それゆえ、GNSSレシーバは追尾中より狭い帯域を用いることができ、これによりレシーバは比較的弱いGNSS信号を追尾することができる。
【0014】
GNSSレシーバを、その位置が既知であり、また少なくとも主要な部分にわたって空の視界が十分にクリアな地域に設けられているベースGNSSレシーバを用いるシステムに含めることができる。ベースGNSSレシーバは航法メッセージデータおよびデータシンボル境界情報をリモートレシーバに提供することができる。リモートレシーバは航法メッセージデータおよび境界情報を用いてデータの「ワイプ(wipe)」を実行することにより、取得中の積分時間をより長くすることができ、したがってより弱い衛星信号を使用することができる。さらに、ベースGNSSレシーバは都市または地域の情報をリモートGNSSレシーバに支援情報として提供することができ、これによりGNSSレシーバはどの便宜通信信号が当該地域内に存在するのかを求める、および/または、保存された日時情報に従う情報を用いてアルマナックを入力する。また、ベースレシーバは局所的な便宜通信信号のより正確な放送周波数を提供することができる、および/または、パフォーマンス向上のためにリモートレシーバにトランスミッタの位置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るGNSSレシーバの機能ブロック図を示す。
【図2】本発明に係るシステムの機能ブロック図を示す。
【0016】
発明を実施するための形態
図1に示されているリモートGNSSレシーバ22は、インターネットまたは構内ネットワークなどの通信ネットワーク24に有線(破線にて示唆されている)または無線の接続部26を介して接続されている。リモートレシーバ22は、1つまたは複数のプロセッサ20と、発振器25と、発振器25により駆動される日時クロック21とを備えており、またGNSS信号の取得および追尾を行い、既知の方法で位置特定を行う。さらに、リモートレシーバ22は、電源オフサイクルの間に現在の日時を保持するバッテリバックアップ式リアルタイムクロック(RTC)27と、GNSS衛星情報のアルマナックを保存するメモリ23とを備えている。低電力発振器および低電力タイミング維持ロジックを利用して既知の方法で動作するリアルタイムクロック27は、比較的わずかなバッテリ電力を利用して電源オフサイクルの間に現在の日時を保持する。約1年間は更新無しで有効なアルマナックと現在の日時とが、以下に詳述されるように、初期測位時間の短縮に用いられる。
【0017】
リモートレシーバ22はGNSS衛星(図中、参照番号10により集合的に示されている)から信号を受信し、また、地域ラジオ局のトランスミッタおよび地域テレビ局のトランスミッタ、ビーコントランスミッタまたはローラン(LORAN)トランスミッタなどの複合型の高出力放射器(図中、参照番号30により集合的に示されている)から放送信号を受信するラジオ周波数(RF)フロントエンド28を備えている。信号の質、既知の発信位置、および、連続的な放送により選択される放送信号は「便宜通信信号(Signals of Opportunity, SOP)」である。すなわち、例えば不特定の会話または不特定の対話を伝送するために様々な周波数で同報通信される信号である。このSOP信号は、例えば、GNSS衛星により同一周波数で伝送され、特定のコードを搬送するGNSS信号と異なる。さらに、既知のシステムと異なり、本システムは、便宜通信信号の特性を利用するものであって、放送信号に変調された情報のデータまたは情報の内容は利用しない。本システムは、例えば、放送信号に含まれる、伝送される日時情報を利用しない。高出力放射器30を以下では「SOPトランスミッタ」と記す。
【0018】
リモートレシーバ22は、どの都市、またはどの地域にレシーバ22が位置しているかを直接求めるために、便宜通信信号を利用することができる。したがって、リモートレシーバ22は便宜通信信号をスキャンし、どの都市、またはどの地域に、例えば同一セットの周波数を用いて発信しているラジオトランスミッタおよびテレビジョントランスミッタが位置しているかをチェックする。
【0019】
SOPトランスミッタ30の位置は通常は既知であるか、例えば、米国連邦通信委員会(FCC)といった登録認定機関により提供されている情報から容易に求められる。この情報は、例えば、インターネットまたは構内ネットワーク24を介して入手可能であるか、または、保存されたエリアマップの一部としてメモリ23に保持されている。またネットワーク24は使用可能な便宜通信信号のリストをリモートレシーバ22に提供するか、または、リモートレシーバ22は特定の便宜通信信号を、例えば、リモートレシーバ22における信号の電界強度、および/または、搬送波周波数の安定度などに基づいて選択する。あるいは、ユーザが地域の使用可能な便宜通信信号のリストを、ユーザインタフェース(図示せず)、例えば、キーボードまたは画面を介して入力してもよい。同様に、ユーザが便宜通信信号のトランスミッタ30の位置をユーザインタフェースを介して入力してもよい。それに加えて、またはその代わりに、運営されている都市または地域をユーザがレシーバ22に入力してもよい。
【0020】
特に、放送信号は高層ビルを通過するように十分に低い周波数、またより高い信号出力を有している。それゆえ、リモートレシーバ22にとっては、空の特にクリアな視界が必要とされるのではなく、代わりに、リモートレシーバ22は放送された便宜通信信号が比較的良好に受信されればよい。さらに、このような低周波信号を用いることにより、リモートレシーバ22は構成可能もしくはコンフィギュラブルなフロントエンドフィルタ、例えば、チャージドキャパシタフィルタまたはデジタルFIRフィルタを用いてスキャンして、便宜通信信号の最良の候補を見つけることができる。
【0021】
リモートレシーバ22が都市または地域、すなわち、少なくとも100キロメートルの範囲内の大まかな位置を求めると、リモートレシーバ22は保存されているアルマナックおよび保存されている日時情報を用いて、どの衛星が視野内にあるかを求め、さらに、衛星のドップラ周波数オフセットを推定する。これにより、GNSS衛星信号のサーチにおける関連する±4kHz分の不確定性は解消されるか、または、実質的に低減される。
【0022】
また、リモートレシーバ22は便宜通信信号を用いて、発振器25の周波数オフセットに付随する±12kHzの不確定性を低減する。それゆえ、リモートレシーバ22は強い便宜通信信号を受信するよう同調される周波数と、便宜通信信号の基準周波数または便宜通信信号の公開された周波数との差を求める。例えば、便宜通信信号のうちの1つは1030kHzで通常は伝送されるラジオ局の信号であり、リモートレシーバ22はこの信号を受信するためにわずかに異なる周波数に同調することができる。リモートレシーバ22は、受信周波数と基準周波数との差をリモートレシーバ22の発振器25の推定された周波数誤差または周波数オフセットとして用いる。また、リモートレシーバ22は他の局所的に強い便宜通信信号についても同じことを行い、リモートレシーバ22における各周波数と基準周波数との平均的な差に基づいて、発振器25の周波数オフセットを推定することができる。よって、推定されたオフセットは典型的には発振器25の未知のオフセットに付随する、±12kHz分のサーチウインドウの拡大を実質的に解消するために用いることができる。もっとも、時刻クロック21の位相の不確定性はいまだ存在している。
【0023】
それゆえリモートレシーバ22は保存されたアルマナックおよび保存された日時情報、ならびに、局所的な便宜通信信号に基づいている発振器の周波数オフセットを用いて初期測位時間(TTFF)の時間を短縮することができる。
【0024】
またリモートレシーバ22は、地域ラジオ便宜通信号または地域テレビジョン便宜通信信号の搬送波に位相をロックし、ラジオ局またはテレビ局のクロックを用いてリモートレシーバ22の発振器25を安定化することができる。例えば、リモートレシーバ22は、テレビジョン信号のゼロクロス信号またはタイミングパルス信号を用いて、レシーバ22の発振器25を安定化させることができる。信号対雑音比はより狭い帯域を使用するほど増大するので、リモートレシーバ22はより狭い帯域のトラッキングループを用いてより弱いGNSS信号を追尾することができる。さらに、リモートレシーバ22は廉価な発振器を利用することができ、その上、局所的な便宜通信信号にロックされた位相に維持することにより追尾を改善することもできる。
【0025】
図2にはリモートレシーバ22を用いたシステムが示されている。本システムは、該システムによりカバーされる領域の少なくとも一部にわたって空のクリアな視界を有し、GNSS衛星信号を容易に取得および追尾できるベースGNSSレシーバ32を備えている。ベースGNSSレシーバ32の位置は既知であり、この位置は、視野内のGNSS衛星の信号から求められるか、もしくは、例えば、携行型GPSユニットの設置、測量および/または地形図の使用を通じて求められる。ベースGNSSレシーバ32は、視野内のGNSS衛星から信号を取得および追尾し、GNSSの時間および/またはGNSSの周波数情報をリモートレシーバ22に送り、リモートレシーバ22のTTFF短縮を支援する。図中、ベースGNSSレシーバ32は通信ネットワーク24に接続されている。その代わりに、ベースレシーバ32がレシーバ22に直接信号を送信する、および/または、レシーバ22から直接信号を受信するよう構成することもできる。
【0026】
その代わりに、またはそれに加えて、GNSSの周波数に同期された発振器35を備えるベースGNSSレシーバ32は、便宜通信信号の正確な放送周波数を計測し、搬送波周波数を直接に、または通信ネットワーク24を介して、リモートGNSSレシーバ22に伝送する。周波数情報を用いて、リモートレシーバ22は、強い便宜通信信号の正確な周波数に位相をロックすることにより、より正確に発振器25の周波数を制御することができる。
【0027】
さらに、正確な周波数を用いることにより、付随するドップラ周波数の不確定性が解消される。典型的には、AM局またはFM局は自身に割り当てられた基準放送周波数の1ppmまたは2ppmの範囲内の周波数の便宜通信信号を送信する。2ppmの放送周波数の誤差はGNSS信号の取得に関して±3kHz分のドップラ周波数の不確定性をもたらすが、GNSSの基地局により求められる正確な周波数の使用によりこの不確定性は解消される。
【0028】
さらに、ベースGNSSレシーバ32はアルマナックをリモートレシーバ22に送信することができるので、リモートレシーバ22は電源オフサイクルの間にアルマナックを保持する必要はない。また、ベースGNSSレシーバ32は、リモートレシーバ22に視野内のGNSS衛星それぞれに関する航法メッセージおよびデータシンボル境界を送信する。データシンボル境界とは、航法メッセージ内のデータシンボルがGNSS衛星により伝送される時間である。データシンボルおよびシンボル境界情報を用いて、リモートレシーバ22は受信した衛星信号のデータを「ワイプ」することができる。すなわち、リモートレシーバ22は相関動作中の相応の位相変化を補償することができる。「ワイプ」により、リモートレシーバ22は比較的長期間にわたる相関測定を積分することができる。すなわち、データシンボル境界の時間を超えて積分することができる。それゆえ、リモートレシーバ22はより弱いGNSS信号、例えば、マルチパスにより弱められた信号またはビルや木々により部分的にブロックされた信号を取得することができる。
【0029】
また航法メッセージは、リモートレシーバ22がGNSS衛星信号からメッセージを取得することができるよりも早いタイミングでリモートレシーバ22に対して利用可能とされる。これにより、リモートレシーバ22は、TTFF中に位置を特定する計算を行うために必要なGNSS衛星の位置をより正確に求めることができる。航法メッセージを用いることにより、リモートレシーバ22は一般的にアルマナックからの情報を用いて計算することができるよりも正確に衛星の位置を計算することができる。
【0030】
それに加えて、またはその代わりに、リモートレシーバ22はベースGNSSレシーバ32により視野内の衛星、エフェメリス情報、ドップラオフセットなどの形で提供される支援情報を用いて、受信したGNSS信号および/または1つまたは複数の便宜通信信号に基づいて150メートル内の位置を迅速に求めることができる。それゆえ、支援情報を用いることにより、リモートレシーバ22はアルマナックを用いる時間を必要としない。またリモートレシーバ22は、RTC日時情報に基づいて、かつ、便宜通信信号の特徴を用いて、少なくとも数マイクロ秒内に日時を求めることができる。したがって、リモートレシーバ22はその発振器25のクロック21の周波数を上述のように求める以外に、そのクロック21の位相オフセットを求め、GNSS衛星からのコードチップ伝送の既知の時間に基づいて、その擬似ランダム雑音(PRN)コードサーチを前置する(先に行う)ことができる。コードサーチを前置することにより、コードサーチを例えば1000個のコードチップから10個のコードチップに減らし、これにより、サーチを行うのに要する時間を低減させる。コードサーチの前置は、特に比較的長いPRNコードについて有用である。
【0031】
本明細書において説明したGNSSレシーバおよびシステムは、放送用の便宜通信信号の特徴およびSOPトランスミッタの既知の位置とともに、RTC日時および適切なアルマナック情報を用いることにより、TTFFを短縮するという利点を有する。SOPトランスミッタの既知の位置は、固定位置というよりも軌跡である場合がある。例えば、SOPトランスミッタは、トランスミッタの位置および速度ベクトルがシステムにより求められる場合には、乗用車、航空機、船舶または衛星などの移動しているプラットホームから伝送する。衛星のトランスミッタについては、例えば、軌道エフェメリスパラメタがすぐに使用できなければならない。リモートレシーバは可動なまたは固定位置のレシーバであってよい。
【0032】
レシーバの1つまたは複数のプロセッサを単一のプロセッサとして構成することができ、位置特定および発振器の周波数オフセットを求める演算はハードウェア、ソフトウェアまたはファームウェアで実行され、リモートレシーバおよびベースレシーバは、取得演算および追尾演算の実行に用いられる既知のハードウェア、ソフトウェアまたはハードウェアを備え、相関測定、地域コード生成などを行うハードウェア、ソフトウェアまたはファームウェアが含まれる。プロセッサを、コンピュータ読み取り可能な媒体に保存されたコンピュータ実行可能な命令として提供されたプログラムによって、演算の実行および/またはハードウェアの動作などを行うようプログラムすることができる。RTCを電源オフサイクルの間に、日時を保持する他の既知のメカニズムに置き換えることができる。その代わりに、またはそれに加えて、RTCまたはメカニズムには代替的なエネルギ源、例えば、大容量キャパシタにより給電することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSSレシーバであって、
GNSS衛星信号および便宜通信信号を受信するためのラジオ周波数フロントエンドと、
前記GNSS衛星信号を取得および追尾するために用いられる発振器と、
1つまたは複数のプロセッサとを備えており、
前記プロセッサは、
前記便宜通信信号を処理し、前記フロントエンドにより求められた1つまたは複数の便宜通信信号の周波数と、1つまたは複数の便宜通信信号の基準放送周波数との差に基づいて前記発振器の周波数オフセットを推定し、
GNSS衛星信号を取得するためのサーチウインドウを狭めるために、前記推定された発振器の周波数オフセットを用いる、
ことを特徴とするGNSSレシーバ。
【請求項2】
さらに、前記1つまたは複数のプロセッサは複数の信号の放送周波数と、便宜通信信号のトランスミッタの位置情報とに基づいて、推定されるレシーバの位置を求める、請求項1記載のGNSSレシーバ。
【請求項3】
さらに、
現在の日時を保持する手段と、
アルマナックを保存するためのメモリとを備えており、
前記1つまたは複数のプロセッサは視野内の衛星を決定し、推定されるレシーバの位置と、保存されているアルマナックと、現在の日時とに基づいて前記視野内の衛星からの信号に関係するドップラオフセットを推定し、前記サーチウインドウをさらに狭めるために推定された該ドップラオフセットを用いる、
請求項1記載のGNSSレシーバ。
【請求項4】
前記1つまたは複数のプロセッサは、複数の便宜通信信号の放送周波数と便宜通信信号のトランスミッタの位置情報とに基づいて、推定されるレシーバの位置を求める、請求項3記載のGNSSレシーバ。
【請求項5】
便宜通信信号に同調するよう放送信号をスキャンする1つまたは複数の構成可能なフロントエンドフィルタをさらに備えている、請求項1記載のGNSSレシーバ。
【請求項6】
通信ネットワークへの接続部をさらに備えており、便宜通信信号の前記トランスミッタの位置情報を前記接続部を介して前記レシーバに送信する、請求項4記載のGNSSレシーバ。
【請求項7】
前記レシーバは、使用可能な便宜通信信号のリストから便宜通信信号を選択する、請求項6記載のGNSSレシーバ。
【請求項8】
前記通信ネットワークへの接続部はインターネットへのアクセスを提供する、請求項6記載のGNSSレシーバ。
【請求項9】
GNSS信号の追尾が狭帯域で行えるよう、前記1つまたは複数のプロセッサは、信号の取得および追尾に用いられる発振器を複数の便宜通信信号のうちの1つに位相をロックする、請求項1記載のGNSSレシーバ。
【請求項10】
現在の日時を保持する手段をさらに備えており、
前記1つまたは複数のプロセッサは、保持されている時間と便宜通信信号のタイミング特性とに基づいて、GNSS時間の数ミリ秒内に時間を求め、GNSS衛星からの既知のコードチップ伝送の時間に基づいてコードサーチを前置する、
請求項1記載のGNSSレシーバ。
【請求項11】
GNSSレシーバであって、
GNSS衛星信号および便宜通信信号を受信するためのラジオ周波数フロントエンドと、
前記GNSS衛星信号を取得および追尾するために用いられる発振器と、
1つまたは複数のプロセッサとを備えており、
前記プロセッサは、
複数の便宜通信信号を処理し、前記発振器を当該複数の便宜通信信号のうちの1つに位相をロックし、
前記GNSS衛星信号を追尾するために狭い帯域を用いる、
ことを特徴とするGNSSレシーバ。
【請求項12】
初期測位時間を短縮するためのシステムであって、
該システムは、
GNSS衛星信号を取得および追尾し、支援情報を提供するためのベースGNSSレシーバと、
リモートGNSSレシーバとを備えており、
前記リモートGNSSレシーバは、
GNSS衛星信号および便宜通信信号を受信するためのラジオ周波数フロントエンドと、
前記ベースGNSSレシーバから支援情報を受信するための手段と、
前記GNSS衛星信号を取得および追尾するために用いられる発振器と、
1つまたは複数のプロセッサとを備えており、
前記プロセッサは、
前記便宜通信信号を処理し、前記フロントエンドにより求められる1つまたは複数の便宜通信信号の周波数と、1つまたは複数の便宜通信信号の放送周波数との差に基づいて発振器の周波数オフセットを推定し、
GNSS衛星信号を取得するためのサーチウインドウを狭めるために、前記推定された前記発振器の周波数オフセットを用いる、
ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
前記支援情報は、前記便宜通信信号の放送周波数である、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記放送周波数は、前記ベースGNSSレシーバがGNSS周波数に位相をロックするときに、前記GNSSレシーバにより求められる、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記放送周波数は、前記便宜通信信号の基準放送周波数である、請求項13記載のシステム。
【請求項16】
前記支援情報は、前記便宜通信信号のトランスミッタの位置であり、
前記1つまたは複数のプロセッサは、複数の便宜通信信号の放送周波数と、便宜通信信号のトランスミッタの位置情報とに基づいて、前記レシーバの推定される位置を求める、請求項12記載のシステム。
【請求項17】
前記支援情報は、航法メッセージおよびメッセージビットタイミングであり、
前記1つまたは複数のプロセッサは、受信したGNSS衛星信号から前記航法メッセージをワイプし、GNSS衛星信号を取得するために、複数のメッセージビットにわたる相関インターバルを用いる、
請求項12記載のシステム。
【請求項18】
前記支援情報は、視野内の衛星の1つまたは複数のリストと、付随するドップラオフセットと、エフェメリス情報とを含み、
前記リモートGNSSレシーバは、視野内の衛星のサーチを低減し、さらに、前記ドップラオフセットに基づいてサーチウインドウを狭めるよう、前記支援情報を用いる、
請求項12記載のシステム。
【請求項19】
前記リモートGNSSレシーバレシーバは現在の日時を保持する手段をさらに備えており、
前記1つまたは複数のプロセッサは、保持されている時間と便宜通信信号のタイミング特性とに基づいて、GNSS時間の数ミリ秒内に時間を求め、GNSS衛星からの既知のコードチップ伝送の時間に基づいてコードサーチを前置する、請求項12記載のシステム。
【請求項20】
前記支援情報は、現在の日時と、推定される都市情報または地域情報と、アルマナックとを含み、
前記1つまたは複数のプロセッサは、支援情報を用いて、視野内の衛星と、付随する推定されるドップラオフセットとを求め、サーチウインドウをさらに狭めるために推定されたオフセットを用いる、
請求項12記載のシステム。
【請求項21】
前記1つまたは複数のプロセッサは、
GNSS信号の取得および追尾に用いられる発振器を、複数の便宜通信信号のうちの1つに位相をロックし、
GNSS衛星信号を追尾するために帯域を狭める、請求項17記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−521238(P2011−521238A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509830(P2011−509830)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000702
【国際公開番号】WO2009/140768
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(510124261)ノヴァテル インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】NOVATEL Inc.
【住所又は居所原語表記】1120 68th Avenue NE, Calgary, Alberta T2E 8S5, Canada
【Fターム(参考)】