説明

判定条件設定方法及び欠陥検査装置

【課題】判定サイズの再設定作業を行うこと無く、判定サイズの設定を自動的に行うことが可能な欠陥検査装置における判定条件設定方法及び欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】フラットパネル表示装置に用いられるカラーフィルタの欠陥を検出するための判定条件設定方法であって、カラーフィルタ基板に設けられた判定サイズ調整パターンを撮像部で撮像し、撮像された判定サイズ調整パターンを二値化し、判定サイズ調整パターンの実サイズと、二値化された調整パターンの撮像部のピクセル数との間の散布図による近似直線より、判定サイズの設定を行うことを特徴とする判定条件設定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネル表示装置等に用いられるカラーフィルタの欠陥を検出する場合に用いられる欠陥検出装置の判定条件の設定方法と、欠陥検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1はカラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの一例を断面で示した図である。カラーフィルタ1は、ガラス基板2上にブラックマトリックス(以下、BM)3、レッドRの着色パターン(以下、R画素)4−1、グリーンGの着色パターン(以下、G画素)4−2、ブルーBの着色パターン(以下、B画素)4−3、透明電極5、及びフォトスペーサー(Photo Spacer)(以下、PS)6、バーテイカルアライメント(Vertical Alignment)(以下、VA)7が順次形成されたものである。
【0003】
上記構造のカラーフィルタの製造方法は、フォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法が知られているが、図2は一般的に用いられているフォトリソグラフィー法の工程を示すフロー図である。カラーフィルタは、先ず、ガラス基板上にBMを形成処理する工程(C−1)、ガラス基板を洗浄処理する工程(C−2)、着色フォトレジストを塗布および予備乾燥処理する工程(C−3)、着色フォトレジストを乾燥、硬化処理するプリベーク工程(C−4)、露光処理する工程(C−5)、現像処理する工程(C−6)、着色フォトレジストを硬化処理する工程(C−7)、透明電極を成膜処理する工程(C−8)、PS、VAを形成処理する工程(C−9)がこの順に行われ製造される。
【0004】
例えば、R画素、G画素、B画素の順に画素が形成される場合には、カラーフィルタ用ガラス基板を洗浄処理する工程(C−2)から、着色フォトレジストを硬化処理する工程間(C−7)ではレッドR、グリーンG、ブルーBの順に着色レジストを変更して3回繰り返されてR画素、G画素、B画素が形成される。
【0005】
ガラス基板2上へのBM3の形成は、例えば、ガラス基板2上に金属薄膜を形成し、この金属薄膜にフォトレジストを塗布した後、フォトリソグラフィー法によってBM形状を有したパターンを露光、現像、エッチングをして形成するといった方法や、または、ガラス基板2上に黒色のフォトレジスト樹脂を塗布し、この樹脂塗膜をフォトリソグラフィー法によってBM形状を有したパターンを露光、現像して、いわゆる樹脂BMと称するパターンを形成する方法がとられている。
【0006】
上記着色フォトレジストを塗布及び予備乾燥処理する工程(C−3)では着色フォトレジストをスピンコート法やダイコート法等の塗布方法によって塗布しているが、塗布処理する工程ではカラーフィルタ基板上に5μmΦから500μmΦ程度の白抜けや異物と呼ばれる形状抜け及び形状残り等の欠陥が発生することがあり、また、他の工程においても前記白抜けや異物欠陥が発生することがある。それらの欠陥は自動欠陥検査装置を用いて検出され、不良基板の流出を防いでいる。
【0007】
一般的に自動欠陥検査装置は、基板搬送ユニット(コンベア搬送やエア浮上搬送)によりカラーフィルタ基板を搬送しながら、カラーフィルタ基板の検査範囲を全走査できる複数のCCDラインセンサカメラと光源(LED、ハロゲンランプ、キセノンランプ等)を利用した光学系を構成し、カラーフィルタ基板表面を撮像し、画像処理部装置にて撮像した画像を処理して欠陥を検出する。撮像画像と欠陥の一例を図3に示す。カラーフィルタ
のBM3、R画素4−1、G画素4−2、B画素4−3は、繰り返しパターンであることを利用して、欠陥9の検出には格子間隔(セルピッチ)を基に左右上下の繰り返しパターンを、濃度の差を比較処理し、設定された閾値で2値化し、欠陥部分が抽出される。抽出された欠陥9はパソコンを含むコンピューターより、その欠陥データ(カラーフィルタ基板内の欠陥の座標や画素数)をファイル及びデータベース(以下、DB)として保存される。
【0008】
欠陥の良否判定の基準としては、検出した欠陥サイズを使用する。この欠陥サイズは、実際の欠陥サイズを欠陥部を撮像したCCDラインセンサカメラの画素数(以下、ピクセル数:単位PIX)に変換したものであり、このピクセル数が欠陥として判定するために予め設定されている数値を超えた場合、欠陥不良とする(以下、この設定値を判定サイズと言う)。図4(a)は撮像された欠陥10aを示す。図4(b)は2値化された欠陥部のCCDラインセンサカメラのピクセル10bの一例を示す。図4(b)の場合はCCDラインセンサカメラのピクセル数はX方向、Y方向共に7ピクセルの計49ピクセルであって、欠陥部のピクセル10bが11PIXあることを示している。この11PIXが判定サイズを超えた場合に欠陥として検出される。
【0009】
この判定サイズは、製品機種(以下、品種)毎の検査条件を記録したファイル(以下、レシピ)の一項目として扱われており、運用管理者によって設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−41930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記判定サイズは、得意先の不良規格や社内内部規格により決定された実サイズ不良規格(μm単位)を基にピクセル数に変換され、変換テーブル化される。
【0012】
判定サイズの変換テーブルは、「条件出し」といわれる作業で求められ、決定される。この条件出しは、10μm〜100μmΦ程度の欠陥サンプルを形成した基板を作成し、繰り返し検出サイズデータを取る事によってテーブル化を実施する。このテーブル化に要する時間は、検査装置のCCDカメラの台数にもよるが5日〜10日程度必要とされる。
【0013】
通常この変換テーブルは、カラーフィルタ基板製品機種に依存しているために、変更する事はないが、製品の組成が極端に異なる製品が発生した場合(例えば、着色フォトレジストの種類を変更した場合)や、検査装置のCCDラインセンサカメラの分解能を変更する様な判定サイズが大きく変更すると判断された場合には変換テーブルの変更が必要となる。
【0014】
また、時間経過で検査装置の光学条件に変位(例えば光源の経時による劣化)が発生した場合には、不良とされる欠陥サイズが設定時の判定サイズと異なる場合がある。このため、日常点検に使われるサンプル基板を用いて不良が流出しないように管理する必要があり、これは検査装置の運用管理者にとって作業の大きな負担となっている。また、判定サイズの再設定を行う必要がある場合には上記変換テーブルを変更しなければならない。
【0015】
上記判定サイズの再設定には、検査工程だけではなく製造工程全体にわたって長時間の製造停止を招く事となり、工場の生産量を低下させる原因となる。
【0016】
以上の問題点に鑑み、本発明は判定サイズの再設定作業を行うこと無く、判定サイズの
設定を自動的に行うことが可能な欠陥検査装置における判定条件設定方法及び欠陥検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の請求項1に係る発明は、フラットパネル表示装置に用いられるカラーフィルタの欠陥を検出するための判定条件設定方法であって、カラーフィルタ基板に設けられた判定サイズ調整パターンを撮像部で撮像し、撮像された判定サイズ調整パターンを二値化し、判定サイズ調整パターンの実サイズと、二値化された調整パターンの撮像部のピクセル数との間の散布図による近似直線より、判定サイズの設定を行うことを特徴とする判定条件設定方法である。
【0018】
本発明の請求項2に係る発明は、判定サイズ調整パターンが形状抜け及び形状残りを示す形状のパターンであって、それぞれサイズの異なる複数個のパターンを有することを特徴とする請求項1記載の判定条件設定方法である。
【0019】
本発明の請求項3に係る発明は、判定サイズ調整パターンをカラーフィルタ基板に転写して設けるための露光用フォトマスクに設け、且つ転写された判定サイズ調整パターンが撮像部の各撮像カメラの走査エリア毎に少なくとも1個以上入るように設けられたことを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の判定条件設定方法である。
【0020】
本発明の請求項4に係る発明は、判定サイズ調整パターンの実サイズと二値化された調整パターンの撮像部のピクセル数の間の近似直線は、撮像カメラ毎に取得し、各撮像カメラ毎に判定サイズを設定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の判定条件設定方法である。
【0021】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかに記載の判定条件設定方法を用いて欠陥検出を行うことを特徴とする欠陥検出装置である。
【発明の効果】
【0022】
着色フォトレジストを変更する場合や、検査装置のCCDラインセンサカメラの分解能を変更する場合や、光源の劣化や交換の場合には判定サイズが大きく変更すると判断されるが、その際行わなければならない判定サイズの設定を短時間で行うことが出来、その結果、検査装置の運用管理者の日常点検の手間を省き、更に、本来長時間の日数を使用する調整作業を不要にすることが出来るため、製造工程を長時間にわたって停止させず、生産量の低下を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】カラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの一例を断面で示した図。
【図2】一般的に用いられているフォトリソグラフィー法の工程のフロー図。
【図3】撮像画像と欠陥の一例を示す図。
【図4】(a)は撮像された欠陥を示す図。 (b)は2値化された欠陥部のCCDラインセンサカメラのピクセルを示す図。
【図5】本発明に係る欠陥検査装置の一例の概略構成を示す図。
【図6】本発明に係る欠陥検査装置における判定条件設定に用いられる判定サイズ調整パターンの一例を示す図。
【図7】本発明に係る欠陥検査装置における判定条件設定に用いられる判定サイズ調整パターンによって取得した欠陥に対してX軸に実パターンサイズ(μm)、Y軸にパターン検出サイズをピクセル数(単位PIX)で表した散布図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態を、図を用いて説明する。
【0025】
図5は、本発明に係る欠陥検査装置の一例の概略構成を示す図である。欠陥検査装置は、カラーフィルタ基板20を矢印25の方向に搬送するための搬送部23、カラーフィルタ基板20を照明する反射光源部21aと透過光源部21b、照明されたカラーフィルタ基板20を撮像する撮像部22、及び制御ユニット24と、を有している。反射光源部21aと透過光源部21b、撮像部22、搬送部23は制御ユニット24に接続され制御される。
【0026】
反射光源部21aと透過光源部21bはカラーフィルタ基板20の搬送方向と直交する方向の全幅に対して均一な照明を行えるように設置され、例えばハロゲン光源が用いられる。撮像部22はカラーフィルタ基板20の搬送方向と直交する方向の全幅に対して複数台のCCDラインセンサカメラが並べられる。ここで用いられるCCDラインセンサカメラはモノクロ用で良く、撮像された画像データは画像データ処理部(図示せず)で、例えば、256階調のデジタルデータに変換される。デジタルデータに変換された画像データは予め設定された閾値で二値化される。この場合、256階調のデジタルデータに変換せずに撮像されたアナログ画像データをある閾値で二値化しても良い。搬送部23は、例えば搬送用コロ26やコンベア搬送やエア浮上搬送を用いてカラーフィルタ基板20を搬送しても良く、または搬送用にステージを設けてステージ上にカラーフィルタ基板20を載置し、ステージを移動させて搬送しても良い。更にはカラーフィルタ基板20を静止する載置台に載置したまま、反射光源部21aと透過光源部21bと撮像部22を駆動させて移動させてもよい。
【0027】
図6は本発明に係る欠陥検査装置における判定条件設定に用いられる判定サイズ調整パターンの一例を示す図である。カラーフィルタ基板の製造工程においてBM、RGBの各着色画素、ITO、PSVAの各パターンを形成する場合の露光処理には、パターンを露光するための露光用フォトマスクを使用して行われるが、その露光用フォトマスク上に、図6に示す様な、10μmΦ〜100μmΦの「形状抜け」、「形状残り」と呼ばれる欠陥の判定サイズ調整パターンを、10μmΦ間隔で、各10水準形成する。図6の判定サイズ調整パターンを欠陥検査装置の全てのCCDラインセンサカメラの走査エリア内に、少なくとも1個以上設けられる。
【0028】
上記判定サイズ調整パターンは10μmΦ〜100μmΦで、10μmΦ間隔で各10水準形成したが、これは例示であって、これに限定するものではない。
【0029】
図7は、取得した欠陥に対してX軸に実パターンサイズ(μm)、Y軸にパターン検出サイズをピクセル数(単位PIX)で表した散布図を示す。得られた散布図より近似直線の算出、つまり、最小二乗法による近似直線:Y=aX+bを導出する。これにより、実パターンサイズであるX値に対する、その時点での検出サイズ(PIX)であるY値を導出する。
【0030】
図7において、例えば、実サイズが2500μm以上(50μm*50μmのサイズに相当)の欠陥を不良欠陥として判定したい場合には、概ね70PIXが判定サイズとして設定される。
【0031】
欠陥検査装置では、上記判定サイズ調整パターン30及び面付けされたカラーフィルタ31のパターンを撮像する。CCDラインセンサカメラで撮像した画像を、格子間隔(セルピッチ)を基に左右上下の繰り返しパターンを濃度比較差分処理し、設定された閾値で2値化し、欠陥部分の抽出を行い、全パターンの欠陥サイズを取得する。
【0032】
上記求められた判定サイズによって、取得された全パターンの欠陥の良否判定が行われる。
【0033】
尚、複数のCCDラインセンサカメラのカメラ毎の感度特性の違いや、反射光源部21aと透過光源部21bの照明条件の違いから、図7に示される散布図は、CCDラインセンサカメラ毎に取得し、各CCDラインセンサカメラ毎に判定サイズを設定することが望ましい。
【0034】
本発明の実施の形態として撮像部に用いる撮像カメラはCCDラインセンサカメラを例示したが、これに限らず2次元CCDカメラを用いても良い。
【0035】
本発明は、露光用フォトマスクに設けた判定サイズ調整パターンを基板に転写し、転写された欠陥の実サイズをCCDラインセンサカメラのピクセル数に変換することによって撮像した撮像画像から、欠陥判定を行う場合の判定サイズの設定を行うため、液晶表示装置やプラズマ表示装置等のフラットパネル表示装置に用いられるカラーフィルタに限らず、基板の検査装置に広く採用することが出来る。
【0036】
以上のように、本発明による判定条件設定方法及び欠陥検査装置によれば、判定サイズの設定を自動で行うことが出来、その結果、日常点検に使われるサンプル基板を使用することなく、検査装置の運用管理者の日常点検の手間を省き、更に、本来長時間の日数を使用する調整作業を不要にすることが出来るため、製造工程を長時間にわたって停止させず、生産量の低下を防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1・・・カラーフィルタ
2・・・ガラス基板
3・・・ブラックマトリックス(BM)
4−1・・・レッドRの着色画素(R画素)
4−2・・・グリーンGの着色画素(G画素)
4−3・・・ブルーBの着色画素(B画素)
5・・・透明電極
6・・・フォトスペーサー(PS)
7・・・バーテイカルアライメント(VA)
9・・・欠陥
10a・・・撮像された欠陥
10b・・・2値化された欠陥部のCCDラインセンサカメラのピクセル
20・・・カラーフィルタ基板
21a・・・反射光源部
21b・・・透過光源部
22・・・撮像部
23・・・搬送部
24・・・制御ユニット
25・・・搬送方向を示す矢印
26・・・搬送用コロ
30・・・判定サイズ調整パターン
31・・・面付けされたカラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットパネル表示装置に用いられるカラーフィルタの欠陥を検出するための判定条件設定方法であって、カラーフィルタ基板に設けられた判定サイズ調整パターンを撮像部で撮像し、撮像された判定サイズ調整パターンを二値化し、判定サイズ調整パターンの実サイズと、二値化された調整パターンの撮像部のピクセル数との間の散布図による近似直線より、判定サイズの設定を行うことを特徴とする判定条件設定方法。
【請求項2】
判定サイズ調整パターンが形状抜け及び形状残りを示す形状のパターンであって、それぞれサイズの異なる複数個のパターンを有することを特徴とする請求項1記載の判定条件設定方法。
【請求項3】
判定サイズ調整パターンをカラーフィルタ基板に転写して設けるための露光用フォトマスクに設け、且つ転写された判定サイズ調整パターンが撮像部の各撮像カメラの走査エリア毎に少なくとも1個以上入るように設けられたことを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の判定条件設定方法。
【請求項4】
判定サイズ調整パターンの実サイズと二値化された調整パターンの撮像部のピクセル数の間の近似直線は、撮像カメラ毎に取得し、各撮像カメラ毎に判定サイズを設定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の判定条件設定方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の判定条件設定方法を用いて欠陥検出を行うことを特徴とする欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−52989(P2011−52989A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199673(P2009−199673)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】