説明

判定装置及び危険運転防止システム

【課題】運転者になりすまして運転者以外の人間の呼気に含まれるアルコール濃度に基づき、運転者が危険状態であるか否かを誤って判断することを防止する判定装置、危険運転防止システムを提供する。
【解決手段】呼気のアルコール濃度を検知する検知装置3から出力されたアルコール濃度が閾値以上であるか否かによって運転者が危険状況であるか否かを判断し、危険状況でなければイグニッションスイッチ1がアンロックされるに際し、車室内に運転者を撮像するように設置された撮像装置4から撮像画像を取得し、撮像画像から抽出される人物像が一ではない場合、運転者以外の人物の呼気を検知装置3が検知した可能性が高いので測定されたアルコール濃度は信頼性が低いと判定される。信頼性が低いと判定された場合は、アルコール濃度が閾値未満であってもイグニッションスイッチ1のロックが維持され、運転が阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の呼気に含まれるアルコール濃度を測定し、アルコール濃度が所定値以上である場合、運転者が危険状況であると判断して運転ができないように制御する危険運転防止システムに関する。特に、運転者になりすまして運転者以外の人間の呼気に含まれるアルコール濃度に基づいて危険状況であるか否かを判断してしまうことを防止することができる判定装置、及び該判定装置を含む危険運転防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
危険運転、特に飲酒運転、酒気帯び運転による交通事故は大きな社会問題であり、このような危険運転を根絶させることが重要な課題である。
【0003】
近年では運転者個人に重い責任を課すことによって危険運転を根絶させる取り組みに加え、車輌を供給する側による予防対策として、車輌に搭載することが可能な危険運転防止システムが開発されている。
【0004】
特許文献1には、運転者の呼気に含まれるアルコール濃度を検出するガス検出装置を備え、アルコール濃度が所定値以上である場合、エンジンがかからないようにイグニッションスイッチをロックさせることにより、運転者が飲酒しているときには車輌を走行させないようにする技術が開示されている。
【特許文献1】特開平3−286184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、ガス検出装置へ呼気を吹き込んだ人間が運転者であるのか否かを判別しない。したがって、運転者以外の飲酒していない人間が運転者になりすまし、呼気をガス検出装置へ吹き込むことによってイグニッションスイッチのロックを免れてしまう可能性がある。このような場合、運転者が運転すべきでない状況にあるにも拘らず、車輌の発進を阻止させることができない。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、なりすましによって運転者以外の人間の呼気に含まれるアルコール濃度を測定し、飲酒、酒気帯び等の危険状態であるか否かを誤って判断してしまうことを防止し、より確実に危険運転を防止することができる判定装置及び該判定装置を含む危険運転防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る判定装置は、呼気が検知され、呼気に含まれるアルコール濃度が測定され、測定されたアルコール濃度が所定値以上であるか否かが判断されるに際し、前記アルコール濃度の信頼性の高低を判定する判定装置であって、運転席を撮像した撮像画像を取得する手段と、呼気が検知されたことを示す信号を受け付ける手段と、前記信号を受け付けた場合、取得した撮像画像から抽出される人物像が一であるか否かを判断する手段とを備え、抽出された人物像が一でないと判断した場合、信頼性が低いと判定するようにしてあることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る判定装置は、信頼性が低いと判定した場合、アルコール濃度が所定値以上であるか否かの判断を無効化させる信号を出力する手段を更に備えることを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る判定装置は、信頼性が低いと判定した場合、警告を出力する手段を更に備えることを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る危険運転防止システムは、呼気を検知する手段、検知した呼気に含まれるアルコール濃度を測定する手段、及び呼気を検知した場合に信号を出力する手段を備える検知装置と、該検知装置により測定されたアルコール濃度が所定値以上であるか否かを判断する判断手段と、該判断手段による判断結果に基づき車輌の運転の可否を制御する制御装置とを備え、アルコール濃度が所定値以上である場合に前記制御装置により運転を禁止するようにしてある危険運転防止システムであって、運転席を撮像する撮像装置と、該撮像装置から撮像画像を取得する手段、前記信号を受け付ける手段、前記信号を受け付けた場合、取得した撮像画像から抽出される人物像が一であるか否かを判断する手段、及び、抽出された人物像が一であるか否かの判断に基づき、測定されたアルコール濃度の信頼性の高低を判定する手段を備える判定装置とを更に含み、前記判断手段は、前記判定装置による判定結果を反映させるようにしてあることを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る危険運転防止システムは、前記判定装置は、判定した信頼性の高低に対応して前記制御装置による制御のための信号を出力する手段を備えることを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る危険運転防止システムは、前記撮像装置は、車輌内の運転席の前方上部に、運転席を撮像することが可能なように下方に向けて設置してあることを特徴とする。
【0013】
第1発明及び第4発明にあっては、運転席を撮像した撮像画像から抽出される人物像が一でないときは、運転者以外の人物例えば助手席の同乗者が呼気を検知させるなりすましが行なわれていると判断できることから、測定されたアルコール濃度は信頼性が低いと判定装置により判定される。検知された呼気に含まれるアルコール濃度が所定値未満であり、運転者が危険状態でないと判断された場合であっても、判定結果が反映されて車輌の運転が許可されないように制御することが可能となる。
【0014】
第2発明にあっては、検知された呼気に含まれるアルコール濃度が所定値未満であると判断された場合であっても、運転席を撮像した撮像画像から抽出される人物像が一でなく、判定装置によってアルコール濃度の信頼性が低いと判定されたときは無効化させる信号が出力されるので、判断結果は無効となる。
【0015】
第3発明にあっては、検知された呼気に含まれるアルコール濃度が所定値未満であると判断された場合であっても、運転席を撮像した撮像画像から抽出される人物像が一でなく判定結果によってアルコール濃度の信頼性が低いと判定されたときは警告が出力される。これにより、なりすましである可能性が有ることを運転者及び同乗者に通知して、正しく運転者の呼気に含まれるアルコール濃度を測定させるように促すことが可能になる。
【0016】
第5発明にあっては、運転席を撮像した撮像画像から抽出される人物像が一でないときは、アルコール濃度の信頼性が低いと判定される。これにより、検知された呼気に含まれるアルコール濃度が所定値未満であると判断された場合であっても、なりすましである可能性が有る場合には、車輌の運転の可否を制御する制御装置によって運転を禁止することが可能となり、なりすましによる危険運転防止システムからの回避を防止することが可能となる。
【0017】
第6発明にあっては、同乗者が乗車している場合でも車輌の後部座席、助手席の人物が撮像されない。これにより、正しく運転者の呼気のアルコール濃度が測定されているにも拘わらず、複数人の人物像を抽出したと判断されて運転者以外の呼気のアルコール濃度を測定した可能性が有るために信頼性が低いと誤って判定されることが回避される。
【発明の効果】
【0018】
本発明による場合、例えば助手席に座っている同乗者が運転者になりすまして呼気を検知装置に検知させたときは、撮像装置により運転席を撮像した撮像画像から複数の人物像が抽出され、測定されたアルコール濃度の信頼性は低いと判定される。これにより、検知装置で測定されたアルコール濃度が所定値未満であり、危険状態でないと判断される場合でも判定装置の判定結果が加味され、誤ってイグニッションスイッチのインターロック等の車の運転を阻止する機構が解除されることを防止することができる。したがって、危険運転防止システムにおける危険運転か否かの判定の精度を高め、より効果的に危険運転を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態における危険運転防止システムの構成を示す模式図である。危険防止システムは、車輌のイグニッションスイッチ1のロック/アンロックを制御するイグニッションインターロックECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)(以下、インターロックECUという。)2と、運転者の呼気を検知し、呼気に含まれるアルコール濃度を測定する検知装置3とを含む。更に、本実施の形態における危険運転防止システムは、車室内に設置されて運転席及び近傍を撮像する撮像装置4と、撮像装置4から撮像画像を取得して所定の処理を行なう画像処理ECU5と、車輌についての各種情報を表示するための表示装置6と、運転者へ音声、効果音等の警告を出力する警報装置7とを含んで構成される。
【0021】
検知装置3は、半導体ガスセンサ、燃料電池型ガスセンサ、赤外線ガスセンサ等のガスセンサであり、呼気の吹込口を有して吹込口に吹き込まれたガスに含まれるアルコール濃度を測定する。検知装置3は、測定したアルコール濃度を示す信号を外部へ出力する機能を有している。検知装置3は、車室内のダッシュボード8に、運転者が運転席に座ったまま、検知装置3に自身の息を吹き込むことができるように運転席近傍に設置されている。検知装置3の出力はインターロックECU2、及び画像処理ECU5に接続されており、検知装置3で測定されたアルコール濃度を示す信号はインターロックECU2及び画像処理ECU5へ出力される。
【0022】
インターロックECU2は基本的に、エンジン停止時、キーが挿入されてオンにされるまではイグニッションスイッチ1をロックするようにしてある。キーが挿入された場合、検知装置3から出力されるアルコール濃度を示す信号を受け付け、アルコール濃度が所定の閾値以上であるときはイグニッションスイッチ1をロックされたままに維持し、アルコール濃度が閾値未満であるときはイグニッションスイッチ1をアンロックするように制御する。
【0023】
撮像装置4は、運転席から前方上部に配設されているルームミラー9上部に設置され、運転者を撮像することができるように下方に向けて運転席及びその近傍を撮像するように設置されている。後述するように、撮像装置4で撮像された撮像画像から抽出された人物像が一であるか否かによって測定されたアルコール濃度の信頼性の高低が判定される。したがって運転者が正しく検知装置3に息を吹き込んでいる場合には、撮像装置4で撮像された撮像画像からは運転者一人分の人物像が抽出されるべきである。撮像装置4を上述のように設置することにより、運転者のみならず後部座席及び助手席の同乗者をも誤って撮像してしまうことを簡易な構成で回避し、運転者が正しく検知装置3に息を吹き込んでいるにも拘わらず、撮像画像から複数人の人物像が抽出され、運転者以外の呼気のアルコール濃度を測定した可能性が有るためにアルコール濃度の信頼性が低いと判定されることを回避することができる。
【0024】
撮像装置4は他に、例えばステアリングコラム上部に設置されている構成でもよい。ただしこの場合、後部座席の同乗者を撮像しないように設置することが必要である。この場合、同乗者を撮像する可能性があるときには、後述の人物像を抽出する処理において運転席及び近傍、即ち検知装置3の近傍に居る人物の人物像のみを抽出するような処理が必要になる。また、撮像装置4を2つ設置して三角測法を用いて運転席に座る人物の人物像のみを抽出することができるように構成してもよい。なお、撮像装置4は夜間における撮像を考慮し、遠赤外線又は近赤外線カメラであることが望ましい。
【0025】
撮像装置4は画像処理ECU5に接続されており、画像信号が画像処理ECU5へ出力され、画像処理ECU5は撮像装置4から撮像画像を取得することが可能である。
【0026】
画像処理ECU5は、インターロックECU2に接続されている。画像処理ECU5は、撮像装置4から取得した撮像画像に基づき、検知装置3によって呼気が検知されて測定されたアルコール濃度は、真に運転者の呼気を検知して測定した信頼性の高いものであるか、又は運転者になりすましている運転者以外の人物の呼気を検知して測定した信頼性の低いものであるかを判定する。画像処理ECU5は、信頼性の高低を示す判定結果に基づいてインターロックECU2へ信号を出力する。また、画像処理ECU5は表示装置6及び警報装置7に接続されており、画像処理ECU5は、なりすましによって運転者以外の人物の呼気を検知した信頼性の低いものであると判定した場合、表示装置6及び警報装置7を介して文字表示及び音声出力によって警告を発するように表示装置6及び警報装置7へ信号を出力する。
【0027】
図2は、本実施の形態における危険運転防止システムの構成を示すブロック図である。インターロックECU(イグニッションインターロックECU)2は、各構成部を制御するMPU(Micro Processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)等の制御部20と、揮発性又は不揮発性のメモリを用いた記憶部21と、他の装置との信号の入出力を実現する信号入出力部22とを備える。
【0028】
インターロックECU2の制御部20は、図示しない不揮発性メモリ又は記憶部21に記憶されている制御プログラムを読み出して実行することにより、各構成部を制御する。記憶部21には、制御部20の処理によって発生する各種情報が記憶される。また記憶部21には、運転者が危険状態であるか否かを判断するための呼気に含まれるアルコール濃度の閾値が記憶されている。制御部20は、検知装置3から測定されたアルコール濃度を示す信号が出力された場合、信号入出力部22により受信する。制御部20は、信号入出力部22により受信した信号が示すアルコール濃度を取得し、取得したアルコール濃度の値が記憶部21に記憶されている閾値以上であるか否かを判断する。
【0029】
制御部20は、アルコール濃度の値が閾値未満であると判断し、且つ、後述する画像処理ECU5により、測定されたアルコール濃度の信頼性が高いと判定されている場合は、イグニッションスイッチ1をアンロックする信号を信号入出力部22によりイグニッションスイッチ1へ出力する。一方で、制御部20は、アルコール濃度の値が閾値以上であると判断した場合、又はアルコール濃度の値が閾値未満であると判断した場合でも後述する画像処理ECU5によって信頼性が低いと判定されているときは、イグニッションスイッチ1をロックされたままとする。つまり、この場合、制御部20はアンロックする信号をイグニッションスイッチ1へ出力しない。
【0030】
画像処理ECU5は、各構成部を制御するMPU、CPU等の制御部50と、揮発性又は不揮発性のメモリを用いた記憶部51と、撮像装置4から画像信号を受け付けて撮像画像を取得する画像取得部52と、不揮発性のメモリを用いた画像記憶部53と、他の装置との信号の入出力を実現する信号入出力部54と、画像信号を出力する画像出力部55と、効果音又は音声等を出力する音声出力部56とを備える。
【0031】
画像処理ECU5の制御部50は、図示しない不揮発性メモリ又は記憶部51に記憶されている制御プログラムを読み出して実行することにより、各構成部を制御する。記憶部51には、制御部50の処理によって発生する各種情報が記憶される。
【0032】
画像取得部52は、撮像装置4から出力される画像信号から1フレームずつ撮像画像を取得するキャプチャ機能を有している。制御部50は、撮像装置4で例えば毎秒15フレームの単位で撮像される撮像画像をフレーム毎に画像取得部52により取得し、数秒(例えば2、3秒)分のフレームを画像記憶部53に記憶しておく。
【0033】
制御部50は、制御プログラムに組み込まれた機能により、画像記憶部53に記憶してある撮像画像から顔の輪郭を認識して人物像を抽出し、抽出した人物像を計数する。人物像の抽出の方法は輪郭を認識するのみならず、他の方法でもよい。撮像画像から人物像を抽出する技術は公知の技術を利用すればよく、詳細な説明を省略する。なお、人物像を抽出する処理を行なうタイミングは、以下のようにする。
【0034】
制御部50は、検知装置3からアルコール濃度を示す信号が出力され、これを信号入出力部54により受信したタイミングで人物像を抽出する処理を行なう。制御部50は、アルコール濃度を示す信号を受信した場合、数秒前(例えば2、3秒前)に相当する撮像画像を画像記憶部53から読み出して、これに対し人物像を抽出する処理を行なう。読み出す撮像画像は複数でもよい。数秒前に相当する撮像画像を読み出すのは、検知装置3による呼気が吹き込まれたことの検知、及びアルコール濃度の測定には数秒間を要するからである。つまり、画像処理ECU5の制御部50により、呼気を吹き込んだのが運転者である可能性の高低、即ち測定されたアルコール濃度の信頼性の高低を判定するためには、過去に遡って検知装置3に呼気を吹き込む動作がされている時点の撮像画像から人物像を抽出する必要があるからである。
【0035】
このように、検知装置3から画像処理ECU5へ出力されるアルコール濃度を示す信号は、制御部50が撮像画像を画像記憶部53から読み出すためのトリガであるから、必ずしもアルコール濃度を示す信号である必要はない。吹き込みを行なう際に運転者が検知装置3に備えられるスイッチを押す構成とし、スイッチの押下を検知した場合に検知装置3から画像処理ECU5へ信号が出力され、画像処理ECU5がスイッチの押下を示す信号を受信した時点における撮像画像を読み出して人物像を抽出する処理を行なうようにしてもよい。
【0036】
制御部50は、制御プログラムを読み出して実行することにより、画像記憶部53に記憶してある撮像画像を読み出して人物像を抽出する処理を実行し、撮像画像から抽出した人物像を計数する。制御部50は、複数の撮像画像について人物像を抽出した場合でも、いずれかの撮像画像から抽出して計数した人物像が一でないときは、運転者以外の人間が検知装置3に呼気を吹き込んだ可能性が高く、この場合に検知装置3により測定されたアルコール濃度は信頼性が低いと判定する。一方制御部50は、撮像画像から抽出して計数した人物像が一である場合は、検知装置3により測定されたアルコール濃度は信頼性が高いと判定する。
【0037】
制御部50は、測定されたアルコール濃度の信頼性が低いと判定した場合は、インターロックECU2における判断を無効化させる信号を、信号入出力部54によりインターロックECU2へ出力する。このとき、制御部50は、イグニッションスイッチ1をアンロックさせないようにする制御信号を信号入出力部54によりインターロックECU2へ出力する構成としてもよい。また、制御部50は信頼性の高低の判定結果がいずれの場合であっても、信頼性の高低を示す信号をインターロックECU2へ出力する構成としてもよい。
【0038】
画像出力部55は表示装置6と接続されており、制御部50の指示を受けて文字情報を含む画像を表示装置6で表示させるための信号を生成して表示装置6へ出力する。音声出力部56はスピーカを含む警報装置7と接続されており、制御部50の指示を受け付けて所定の警告音声、所定の効果音等の音声信号を生成して警報装置7へ出力する。
【0039】
制御部50は、信頼性が低いと判定した場合は更に、表示装置6で「運転者以外は検知装置3から離れてください」、「運転者は再度、検査を行なってください」等の警告を文字及び画像、又はいずれか一方で表示させるための信号を画像出力部55により出力させ、警報装置7で同様の文言の警告音声、又は警告を示す効果音を出力させるための信号を音声出力部56により出力させる。
【0040】
なお、画像処理ECU5の制御部50による警告出力の処理は必須ではない。したがって、本発明に係る危険運転防止システムには、表示装置6、警報装置7、画像処理ECU5の画像出力部55、及び音声出力部56は必須要素ではない。しかしながら、警告出力の処理を行なうことにより、飲酒していない同乗者が運転者になりすまして検知装置3にアルコール濃度を測定させた場合、そのように測定されたアルコール濃度は無効になり、車輌を発進させることができないことを運転者及び同乗者に認識させることができる。
【0041】
このように構成される危険運転防止システムにおける画像処理ECU5及びインターロックECU2の制御部20により実行される各処理手順を、フローチャートを参照して以下に説明する。
【0042】
図3は、本実施の形態における危険運転防止システムを構成する画像処理ECU5の制御部50による判定の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0043】
画像処理ECU5の制御部50は、検知装置3からアルコール濃度を示す信号を受信したか否かを判断する(ステップS11)。制御部50は、アルコール濃度を示す信号を受信していないと判断した場合(S11:NO)、処理をステップS11へ戻してアルコール濃度を示す信号を受信したと判断するまで待機する。
【0044】
制御部50は、アルコール濃度を示す信号を受信したと判断した場合(S11:YES)、画像記憶部53に記憶してある数秒(2、3秒)前の撮像画像を読み出し(ステップS12)、読み出した撮像画像から人物像を抽出する処理を行ない、人物像を計数する(ステップS13)。
【0045】
次に制御部50は、ステップS13で計数した人物像が一であるか否かを判断する(ステップS14)。制御部50は、人物像は一であると判断した場合(S14:YES)、受信した信号が示すアルコール濃度は信頼性が高いと判定し(ステップS15)、処理を終了する。
【0046】
制御部50は、計数した人物像が一でないと判断した場合(S14:NO)、受信した信号が示すアルコール濃度は信頼性が低いと判定し(ステップS16)、インターロックECU2におけるアルコール濃度に基づく判断を無効化させる信号を出力する(ステップS17)。制御部50は更に、画像出力部55及び音声出力部56により警告を出力し(ステップS18)、処理を終了する。
【0047】
図3のフローチャートに示した処理手順により、なりすましによって運転者以外の人間の呼気に含まれるアルコール濃度を検知装置3が測定した場合を判別することができる。
【0048】
次に、画像処理ECU5による判定結果をインターロックECU2におけるアルコール濃度についての判断処理に加味する処理について説明する。
【0049】
図4は、本実施の形態における危険運転防止システムを構成するインターロックECU2の制御部20による判断の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0050】
インターロックECU2の制御部20は、検知装置3からアルコール濃度を示す信号を受信したか否かを判断する(ステップS21)。制御部20は、アルコール濃度を示す信号を受信していないと判断した場合(S21:NO)、処理をステップS21へ戻してアルコール濃度を示す信号を受信したと判断するまで待機する。
【0051】
制御部20は、アルコール濃度を示す信号を受信したと判断した場合(S21:YES)、受信した信号からアルコール濃度を取得して記憶部21に記憶する(ステップS22)。
【0052】
次に制御部20は、画像処理ECU5から判断を無効化させる信号が出力されたか否かを判断する(ステップS23)。なお、制御部20は、画像処理ECU5から判断を無効化させる信号が出力されたか否かを所定時間以内に当該信号を受信した否かにより判断する。
【0053】
制御部20は、無効化させる信号が出力されたと判断した場合(S23:YES)、記憶部21に記憶したアルコール濃度を破棄し(ステップS24)、イグニッションスイッチ1のロックを維持したままにし(ステップS25)、処理を終了する。
【0054】
一方制御部20は、無効化させる信号が出力されなかったと判断した場合(S23:NO)、記憶部21に記憶したアルコール濃度は閾値以上であるか否かを判断する(ステップS26)。制御部20は、アルコール濃度は閾値以上であると判断した場合(S26:YES)、イグニッションスイッチ1のロックを維持したままにし(S25)、処理を終了する。
【0055】
制御部20は、アルコール濃度は閾値未満であると判断した場合(S26:NO)、イグニッションスイッチ1をアンロックさせ(ステップS27)、発進可能にして処理を終了する。
【0056】
図4のフローチャートに示した処理をインターロックECU2の制御部20が実行し、画像処理ECU5による判定結果を加味することにより、運転者以外の人間が運転者になりすまして、アルコール濃度に基づいて運転を阻止する危険運転防止システムからの回避を防止することが可能である。これにより、危険運転を効果的に防止することができる。
【0057】
図4のフローチャートに示した処理の内のステップS23の判断処理は、画像処理ECU5から判定結果がいずれの場合でも出力されるときは、以下のような処理に代替されてもよい。制御部20は、画像処理ECU5から判定結果を示す信号が出力されたか否かを判断し、判定結果を示す信号が出力されたと判断した場合、出力された信号が信頼性が低いと判定された結果を示しているときはステップS24へ進み、信頼性が高いと判定された結果を示しているときは、ステップS25へ進む。
【0058】
本実施の形態における危険運転防止システムでは、インターロックECU2がイグニッションスイッチ1のロック/アンロックを制御することによって運転を阻止する構成とした。しかしながら本発明はこれに限らず、スタータの作動を阻止するインターロック、燃料供給を遮断する燃料供給系統のインターロック等の運転を阻止するための機構に対してロック/アンロックを制御させる構成でもよい。
【0059】
また、本実施の形態における危険運転防止システムでは、インターロックECU2と、画像処理ECU5とを夫々備える構成とした。しかしながら本発明はこれに限らず、インターロックECU2と画像処理ECU5とを一体化し、両方の機能を有するECUを備える構成としてもよい。
【0060】
また、本実施の形態における危険運転防止システムでは、運転者が運転すべきでない危険な状態であるか否かを、運転者の呼気に含まれるアルコール濃度が所定値以上であるか否か、即ち酒気帯び又は飲酒状態であるか否かによって判断した。しかしながら、運転者が酒気帯び又は飲酒状態であるか否かは、呼気に含まれるアルコール濃度のみならず、皮膚から発散されるアルコール蒸気を検知して判断するようにしてもよい。更に、運転者が危険状態であるか否かは、酒気帯び又は飲酒状態であるか否かのみならず、脈拍数が所定値以上であるか否か等の運転者の健康状態によって判断してもよい。この場合、本実施の形態における危険運転防止システムを構成した検知装置3の代替として、脈拍数を測定する装置を設置し、インターロックECU2によって測定した脈拍数が所定値以上であるか否かによって危険状態か否かを判断する。この場合も、同様に画像処理ECU5で撮像画像から抽出される人物像が一か否かを判断することにより、測定した脈拍数の信頼性の判定結果をインターロックECU2へ入力することにより、なりすましによって危険運転防止システムから免れることを防止することが可能である。
【0061】
なお、上述のように開示された本実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施の形態における危険運転防止システムの構成を示す模式図である。
【図2】本実施の形態における危険運転防止システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態における危険運転防止システムを構成する画像処理ECUの制御部による判定の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】本実施の形態における危険運転防止システムを構成するインターロックECUの制御部による判断の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 イグニッションスイッチ
2 イグニッションインターロックECU(制御装置)
20 制御部
3 検知装置
4 撮像装置
5 画像処理ECU(判定装置)
50 制御部
52 画像取得部
55 画像出力部
56 音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気が検知され、呼気に含まれるアルコール濃度が測定され、測定されたアルコール濃度が所定値以上であるか否かが判断されるに際し、前記アルコール濃度の信頼性の高低を判定する判定装置であって、
運転席を撮像した撮像画像を取得する手段と、
呼気が検知されたことを示す信号を受け付ける手段と、
前記信号を受け付けた場合、取得した撮像画像から抽出される人物像が一であるか否かを判断する手段と
を備え、
抽出された人物像が一でないと判断した場合、信頼性が低いと判定するようにしてあること
を特徴とする判定装置。
【請求項2】
信頼性が低いと判定した場合、アルコール濃度が所定値以上であるか否かの判断を無効化させる信号を出力する手段
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
信頼性が低いと判定した場合、警告を出力する手段
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の判定装置。
【請求項4】
呼気を検知する手段、検知した呼気に含まれるアルコール濃度を測定する手段、及び呼気を検知した場合に信号を出力する手段を備える検知装置と、該検知装置により測定されたアルコール濃度が所定値以上であるか否かを判断する判断手段と、該判断手段による判断結果に基づき車輌の運転の可否を制御する制御装置とを備え、アルコール濃度が所定値以上である場合に前記制御装置により運転を禁止するようにしてある危険運転防止システムであって、
運転席を撮像する撮像装置と、
該撮像装置から撮像画像を取得する手段、
前記信号を受け付ける手段、
前記信号を受け付けた場合、取得した撮像画像から抽出される人物像が一であるか否かを判断する手段、及び、
抽出された人物像が一であるか否かの判断に基づき、測定されたアルコール濃度の信頼性の高低を判定する手段
を備える判定装置と
を更に含み、
前記判断手段は、前記判定装置による判定結果を反映させるようにしてあること
を特徴とする危険運転防止システム。
【請求項5】
前記判定装置は、判定した信頼性の高低に対応して前記制御装置による制御のための信号を出力する手段を備えること
を特徴とする請求項4に記載の危険運転防止システム。
【請求項6】
前記撮像装置は、車輌内の運転席の前方上部に、運転席を撮像することが可能なように下方に向けて設置してあること
を特徴とする請求項4又は5に記載の危険運転防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−90866(P2009−90866A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264669(P2007−264669)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】