説明

制動制御システム

【課題】ブレーキペダルが操作されたときに、路面状態に応じた最適な制動制御を迅速に実施すること。
【解決手段】ブレーキペダルが操作されたときに複数の車輪14の各々に与える制動力を車輪14毎に独立して制御する制動制御システム200において、路面状態推定部は、車輪14と路面との間の摩擦係数を算出する。制動制御部104は、右輪と路面との間の摩擦係数である右側摩擦係数と左輪と路面との間の摩擦係数である左側摩擦係数との差に基づいて、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のどちらかを、ブレーキペダルが操作されたときに実施するものとして、ブレーキペダルが操作されていないときに予め設定する。ブレーキペダルが操作されたときに、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のうち予め設定されているものを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制動制御技術に関し、特にブレーキペダルが操作されたときに複数の車輪の各々に与える制動力を車輪毎に独立して制御する制動制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車輪が接地する路面は均一ではなく、このような路面の不均一性は制動時における車両の姿勢に影響を与え得る。このため、いわゆるインテリジェント・タイヤを使用して車両のヨー・モーメントを決定し、決定されたヨー・モーメントに基づいて自動車の運転状態を調節する自動車の走行動特性のモニタ装置が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。また、スプリットμ路などの走行中におけるABS制御の制御品質の向上を図るべく、ABS制御中に、車両が正常に旋回していると判定された時と車両が非正常に旋回していると判定された時とで制御を切り換えるブレーキ制御装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、μスプリット路における制動時に車両姿勢の安定化と制動効果を向上すべく、左側車輪と路面との間の摩擦係数と右側車輪と路面との間の摩擦係数との差に対応する摩擦係数差対応値が設定値を超えるとき、ヨー・モーメントに相関する付加制御舵角をステアリングホイールの操舵角度に応じた目標舵角に加え、これらの和に対応するように操舵用アクチュエータを制御する車両の操舵装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。さらに、車輪と路面との間の摩擦係数を検出する技術として、走行中の車両のバネ下部の振動レベルを検出することにより走行時の路面状態を推定する車両走行状態の推定方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特表2004−516977号公報
【特許文献2】特表2004−516978号公報
【特許文献3】特開2001−18775号公報
【特許文献4】特開2003−26030号公報
【特許文献5】国際公開2001/098123号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の特許文献に記載される技術のように車輪の制動制御中に車輪と路面との間の摩擦係数に応じて車輪に与える制動力を変化させる場合、摩擦係数の算出、および算出した摩擦係数に応じた制動力を車輪に与えるまで時間がかかる。このため、ブレーキペダルが操作されたときに、算出した車輪と路面との間の摩擦係数に応じて制動力を変化させる場合、路面状態を把握するまでに時間がかかり、最適な制動制御に切り換えるまでに時間を要することとなる。
【0004】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブレーキペダルが操作されたときに、路面状態に応じた最適な制動制御を迅速に実施することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制動制御システムは、ブレーキペダルが操作されたときに複数の車輪の各々に与える制動力を車輪毎に独立して制御する制動制御システムにおいて、車輪が接地する路面の路面状態を推定する路面状態推定部と、ブレーキペダルが操作されたときに、車両の制動距離を短縮させる制動距離短縮制御、およびステアリングホイールの操舵方向から予測される車両の進行方向と実際の車両の進行方向との差である車両偏向量を抑制する車両姿勢安定化制御のいずれかを実施する制動制御部と、を備え、制動制御部は、推定された路面状態に基づいて、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のどちらかをブレーキペダルが操作されたときに実施するものとして、ブレーキペダルが操作されていないときに予め設定し、ブレーキペダルが操作されたときに、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のうち予め設定されているものを実施する。
【0006】
この態様によれば、ブレーキペダルが操作される前にブレーキペダルが操作されたときに実施する路面状態に応じた車輪の制動制御を予め設定することができる。このため、ブレーキペダルが操作されたあとに路面状態に応じた車輪の制動制御を設定する場合に比べ、ブレーキペダルが操作されたときに迅速に路面状態に適した制動制御に切り換えることが可能となる。
【0007】
路面状態推定部は、右輪と路面との間の摩擦係数である右側摩擦係数、および左輪と路面との間の摩擦係数である左側摩擦係数の双方を算出し、制動制御部は、算出された右側摩擦係数と左側摩擦係数との差に基づいて、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のどちらかを、ブレーキペダルが操作されたときに実施するものとして予め設定してもよい。
【0008】
右側摩擦係数と左側摩擦係数と互いに異なる、いわゆるスプリットμ路では、車輪を制動することによる車両の偏向量も大きくなると考えられる。この態様によれば、右側摩擦係数と左側摩擦係数との差に基づいてブレーキペダルが操作されたときに実施する制動制御を設定することができる。このため、ブレーキペダルが操作されたときに制動制御を迅速に切り換えることができることと相俟って、車両偏向量をより抑制することができ、または車両の制動距離をより短縮させることができる。
【0009】
制動制御部は、算出された右側摩擦係数と左側摩擦係数との差、およびステアリングホイールの操舵角度に基づいて、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のどちらかを、ブレーキペダルが操作されたときに実施するものとして、ブレーキペダルが操作されていないときに予め設定してもよい。
【0010】
右側摩擦係数と左側摩擦係数との差、およびステアリングホイールの操舵角度は、どちらも車両偏向量に影響を与え得る。この態様によれば、これらに基づいて実施すべき制動制御を設定することができるため、車両偏向量をより抑制することが可能となる。
【0011】
制動制御部は、算出された右側摩擦係数と左側摩擦係数との差、ステアリングホイールの操舵角度、およびステアリングホイールの操舵方向に基づいて、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のどちらかを、ブレーキペダルが操作されたときに実施するものとして、ブレーキペダルが操作されていないときに予め設定してもよい。
【0012】
たとえば右側摩擦係数と左側摩擦係数とに同じ差があっても、ステアリングホイールの操舵方向が左である場合と右である場合とでは、ブレーキペダルの操作時における車両偏向量は異なるものとなる。この態様によれば、ステアリングホイールの操舵方向も考慮して制動制御を設定することにより、車両偏向量をより抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブレーキペダルが操作されたときに、路面状態に応じた最適な制動制御を迅速に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る制動制御システム200を搭載した車両10の全体構成図である。車両10は、車両本体12に右前輪14FR、左後輪14RL、右後輪14RR、および左後輪14RL(以下、必要に応じてこれらを「車輪14」と総称する)が組み付けられて構成されている。制動制御システム200は、電子制御ユニット(以下、「ECU」という)100、加速度センサ16、送信ユニット18、受信機20、舵角センサ22、ストロークセンサ23、および液圧アクチュエータ(図示せず)、ブレーキユニット(図示せず)を備える。
【0016】
舵角センサ22は、ステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトに設けられ、運転者によって回動操舵されたステアリングホイールの操舵量および操舵方向を検出する。ストロークセンサ23はブレーキペダル(図示せず)に連結して設けられ、運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作量を検出する。舵角センサ22およびストロークセンサ23はECU100に接続されており、これらの検出結果はECU100に出力される。
【0017】
ブレーキユニットは車輪14の各々に対応して1つずつ設けられ、ホイールシリンダの作動液圧であるホイールシリンダ圧に応じて車輪14に制動力を与える。本実施形態では、ブレーキユニットとしてディスクブレーキユニットが採用されているが、ドラムブレーキユニットが採用されてもよいことは勿論である。
【0018】
液圧アクチュエータは、アキュムレータ、増圧弁、および減圧弁を有する。増圧弁および減圧弁は、車輪14の各々に対応してそれぞれ4つずつ設けられる。増圧弁および減圧弁の各々はリニアソレノイドバルブであり、供給された電流のデューティーに応じて開弁する。増圧弁の各々はアキュムレータとブレーキユニットのホイールシリンダの各々とに介在して設けられる。増圧弁は、開弁することによりアキュムレータにおいて蓄圧された作動液を対応するブレーキユニットのホイールシリンダに供給し、ブレーキユニットのホイールシリンダ圧を増圧させて車輪14に与える制動力を増加させる。減圧弁の各々はブレーキユニットのホイールシリンダとリザーバタンク(図示せず)とに介在して設けられる。減圧弁は、開弁することによりホイールシリンダの作動液をリザーバに供給し、ブレーキユニットのホイールシリンダ圧を減圧させて車輪14に与える制動力を減少させる。
【0019】
加速度センサ16および送信ユニット18は車輪14の各々に設けられる。受信機20は、車両本体12における車輪14の各々の近傍に1つずつ設けられる。加速度センサ16および送信ユニット18については、図2に関連して説明する。
【0020】
図2は、加速度センサ16が取り付けられた車輪14の断面図である。車輪14はホイール30とタイヤ32を有する。ホイール30は円筒状のホイールリム30aを有し、ホイールリム30aにタイヤ32が組み付けられ車輪14が構成される。タイヤ32の内壁とホイールリム30a外周により囲われる空間にタイヤ空気室34が形成される。
【0021】
本実施形態では、加速度センサ16はタイヤ空気室34内におけるタイヤ32のトレッド部の内壁に設けられる。加速度センサ16は、タイヤ32のトレッド面と垂直な方向の加速度を検出する。タイヤ空気室34内におけるホイールリム30a外周面には送信ユニット18が取り付けられている。加速度センサ16は送信ユニット18に接続されており、加速度センサ16の検出結果はまず送信ユニット18に出力される。
【0022】
図3は、本実施形態に係る制動制御システム200の機能ブロック図である。なお、図3においてECU100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。ECU100は路面状態推定部102および制動制御部104を有する。
【0023】
送信ユニット18の各々は信号処理部24および送信機26を有する。信号処理部24は、加速度センサ16から入力された加速度信号を増幅し、送信機26に送る。送信機26は、増幅された加速度信号を外部に無線で送信する。受信機20は、対応する車輪14の送信ユニット18から送信された加速度信号を受信する。受信機20はECU100に接続されており、受信した加速度信号をECU100に出力する。
【0024】
路面状態推定部102は、受信した加速度信号を利用して、車輪14の各々におけるタイヤと路面との間の摩擦係数を算出して路面状態を推定する。タイヤに設けられた加速度センサの検出結果を利用してタイヤと路面との間の摩擦係数を算出する方法は公知であるため、説明を省略する。
【0025】
制動制御部104は、ブレーキペダルが運転者により踏み込み操作されたときに、ストロークセンサ23、舵角センサ22などの検出結果に応じて、ブレーキユニットに与える目標ホイールシリンダ圧を決定する。ECU100は駆動回路(図示せず)を介して増圧弁および減圧弁に接続されている。制動制御部104は、駆動回路に制御電流を供給することにより、バッテリ(図示せず)から増圧弁または減圧弁に供給する電流のデューティーを調整し、これらの開弁および閉弁を制御する。このように増圧弁および減圧弁の開弁および閉弁を制御することにより、制動制御部104は、ブレーキユニットの各々のホイールシリンダ圧を目標ホイールシリンダ圧とする。
【0026】
具体的に制動制御部104は、ブレーキペダルが運転者に操作されたときに、ABS(Antilock Brake System)などの制動距離短縮制御、およびVSC(Vehicle Stability Control)などの車両姿勢安定化制御のいずれかを実施する。ここで制動距離短縮制御とは、ステアリングホイールの操舵方向から予測される車両の進行方向と実際の車両の進行方向との差である車両偏向量の抑制よりも車両の制動距離の短縮を優先して各々の車輪の制動力を制御する制御方式をいう。車両姿勢安定化制御は、車両の制動距離の短縮よりも車両偏向量の抑制を優先して各々の車輪の制動力を制御する。
【0027】
さらに具体的には、制動制御部104は、車両姿勢安定化制御を実施しているとき、通常は制動距離短縮制御と同様の目標ホイールシリンダ圧を設定する。しかし、車両偏向量が所定の値より大きいと判定した場合に、制動制御部104は制動距離短縮制御の目標ホイールシリンダ圧よりも低い圧力を目標ホイールシリンダ圧として設定して車両の偏向量がそれよりも大きくなることを抑制する。このため、車両姿勢安定化制御が実施された場合、制動距離短縮制御が実施されたときよりも車両偏向量は減少するが、制動距離短縮制御が実施された場合、ブレーキペダル操作開始時から車両が停止するときまでの制動距離は車両姿勢安定化制御が実施されたときよりも通常短くなる。制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御は公知の技術であるため、これらの更に具体的な制御方法の説明は省略する。
【0028】
本実施形態では、制動制御部104は、ブレーキペダルが操作されたときに路面状態に適した制御に迅速に切り換えるべく、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のうち一方をブレーキペダルが操作されたときに実施するものとして、ブレーキペダルが操作されていないときに予め設定する。以下、図4および図5に関連して制動制御システム200の制御手順について説明する。
【0029】
図4は、本実施形態に係る制動制御システム200における制動制御の設定手順を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は車両10のイグニッションスイッチ(図示せず)がオンにされることにより開始し、その後イグニッションスイッチがオフにされるまで所定時間毎に繰り返し実施される。
【0030】
ECU100は、ストロークセンサ23の検出結果を利用して、ブレーキペダルが運転者に操作されていないかを判定する(S10)。ブレーキペダルが操作されている場合(S10のN)、すでに制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のいずれかが実施されていることから本フローチャートにおける処理を終了する。
【0031】
ブレーキペダルが操作されていない場合(S10のY)、路面状態推定部102は、各々の車輪14と路面との間の摩擦係数を算出する(S12)。次に制動制御部104は、まず右輪と路面との間の摩擦係数である右側摩擦係数、および左輪と路面との間の摩擦係数である左側摩擦係数の双方を算出する。このとき制動制御部104は、右前輪14FRと路面との間の摩擦係数、および右後輪14RRと路面との間の摩擦係数の平均を右側摩擦係数として算出する。また、制動制御部104は、左前輪14FLと路面との間の摩擦係数、および左後輪14RLと路面との間の摩擦係数の平均を右側摩擦係数として算出する。
【0032】
なお、右側摩擦係数および左側摩擦係数の算出方法がこれに限られないことは勿論であり、制動制御部104は、例えば操舵輪である右前輪14FRと路面との間の摩擦係数をそのまま右側摩擦係数として採用してもよく、また左前輪14FLと路面との間の摩擦係数を左側摩擦係数としてそのまま採用してもよい。また、制動制御部104は、たとえば前輪の方が後輪よりも大きな重み付け係数を予め設定し、右前輪14FRと路面との間の摩擦係数、および右後輪14RRと路面との間の摩擦係数の重み付け平均を右側摩擦係数として算出し、左前輪14FLと路面との間の摩擦係数、および左後輪14RLと路面との間の摩擦係数の重み付け平均を左側摩擦係数として算出してもよい。
【0033】
右側摩擦係数および左側摩擦係数が算出されると、制動制御部104は、算出した右側摩擦係数と左側摩擦係数との差、ステアリングホイールの操舵量および操舵方向に基づいて、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のどちらかを、ブレーキペダルが操作されたときのに実施する制動制御として予め設定する(S14)。
【0034】
ECU100のROMには、図5に示される制動制御マップが格納されている。制御マップには、「操舵方向」、「操舵量」、「右側摩擦係数−(マイナス)左側摩擦係数」、および設定すべき「制動制御方式」が対応付けられている。制動制御部104はこの制動制御マップを参照し、「操舵方向」、「操舵量」、および「右側摩擦係数−(マイナス)左側摩擦係数」をこの制御マップに当てはめ、該当する制動制御方式である制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のうち一方をブレーキペダルが操作されたときに実施する制御として設定する。このとき制動制御部104は、制動制御フラグを制動距離短縮制御を示す値または車両姿勢安定化制御を示す値に設定してRAMに格納することにより、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のうち一方を設定する。
【0035】
図5において、θ1、θ2、およびθ3は、0(ゼロ)<θ1<θ2<θ3の関係となっている。また、μ1、μ2、およびμ3は、0(ゼロ)<μ3<μ2<μ1の関係となっている。したがって、操舵量が同じであれば、制動制御部104は、操舵方向側の車輪14と路面との間の摩擦係数が反対側の車輪14と路面との間の摩擦係数よりも所定の閾値以上大きい場合に制動制御として車両姿勢安定化制御を設定し、閾値未満であれば制動距離短縮制御を設定する。
【0036】
制動制御部104は、ブレーキペダルが運転者に操作された場合に、RAMに格納された制動制御フラグを参照し、設定された制動制御を使ってブレーキユニットのホイールシリンダ圧を制御して車輪14の各々に与える制動力を制御する。このように、路面状態に的した制動制御を予め設定しておくことにより、運転者がブレーキペダルを操作したときに、路面状態に適した制動制御を迅速に実施することができる。
【0037】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
【0038】
ある変形例では、車両10には外気温を検出する外気温センサが設けられている。制動制御部104は、外気温センサの検出結果も利用して、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のうち一方をブレーキペダルが操作されたときに実施する制動制御として設定する。たとえば路面が凍結するほど外気温が低い場合、常温のときよりも制動距離は長くなりやすくなり、制動時の車両の姿勢も変化しやすくなる。このため、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のどちらを設定すべきかの条件も常温の場合と異なるものとした方が好ましい場合があると考えられる。このように車両周辺の温度を利用して制動制御を設定することによって、車両走行時の安全性をさらに高めることができる。
【0039】
ある別の変形例では、車両10には車輪14の各々の回転速度を検出する車輪速センサ(図示せず)が設けられている。制動制御部104は、車輪速センサの検出結果も利用して、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のうち一方をブレーキペダルが操作されたときに実施する制動制御として設定する。車両の走行速度は、制動時の車両の安全性に密接に関連する。このため、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のどちらを設定すべきかの条件も車両の走行速度に応じて異なるものとした方が好ましい場合があると考えられる。このように車輪速センサの検出結果を利用して制動制御を設定することによっても、車両走行時の安全性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係る制動制御システムを搭載した車両の全体構成図である。
【図2】加速度センサが取り付けられた車輪の断面図である。
【図3】本実施形態に係る制動制御システムの機能ブロック図である。
【図4】本実施形態に係る制動制御システムにおける制動制御の設定手順を示すフローチャートである。
【図5】制動制御マップの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 車両、 14 車輪、 16 加速度センサ、 18 送信ユニット、 20 受信機、 22 舵角センサ、 23 ストロークセンサ、 100 ECU、 102 路面状態推定部、 104 制動制御部、 200 制動制御システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルが操作されたときに複数の車輪の各々に与える制動力を車輪毎に独立して制御する制動制御システムにおいて、
車輪が接地する路面の路面状態を推定する路面状態推定部と、
ブレーキペダルが操作されたときに、車両の制動距離を短縮させる制動距離短縮制御、およびステアリングホイールの操舵方向から予測される車両の進行方向と実際の車両の進行方向との差である車両偏向量を抑制する車両姿勢安定化制御のいずれかを実施する制動制御部と、を備え、
前記制動制御部は、推定された路面状態に基づいて、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のどちらかをブレーキペダルが操作されたときに実施するものとして、ブレーキペダルが操作されていないときに予め設定し、ブレーキペダルが操作されたときに、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のうち予め設定されているものを実施することを特徴とする制動制御システム。
【請求項2】
前記路面状態推定部は、右輪と路面との間の摩擦係数である右側摩擦係数、および左輪と路面との間の摩擦係数である左側摩擦係数の双方を算出し、
前記制動制御部は、算出された右側摩擦係数と左側摩擦係数との差に基づいて、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のどちらかを、ブレーキペダルが操作されたときに実施するものとして予め設定することを特徴とする請求項1に記載の制動制御システム。
【請求項3】
前記制動制御部は、算出された右側摩擦係数と左側摩擦係数との差、およびステアリングホイールの操舵角度に基づいて、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のどちらかを、ブレーキペダルが操作されたときに実施するものとして、ブレーキペダルが操作されていないときに予め設定することを特徴とする請求項2に記載の制動制御システム。
【請求項4】
前記制動制御部は、算出された右側摩擦係数と左側摩擦係数との差、ステアリングホイールの操舵角度、およびステアリングホイールの操舵方向に基づいて、制動距離短縮制御および車両姿勢安定化制御のどちらかを、ブレーキペダルが操作されたときに実施するものとして、ブレーキペダルが操作されていないときに予め設定することを特徴とする請求項3に記載の制動制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−143239(P2008−143239A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329895(P2006−329895)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】