説明

制御可能な感度を持つ赤外線センサ

赤外線センサはセンサアレイと感度調整器を含む。センサアレイは外部場面からIRエネルギを捕集し、感度調整器は生じたIR画像が必要な感度レベルで利用可能であるように光捕集及び/又は読出のための画素グループ化を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は赤外線(IR)センサに関し、さらに詳しくは、制御可能な感度を持つIRセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線(IR)センサは物体から放出されるIR放射を検出するものであり、多くの工業、セキュリティ、および医療用途で、昼間視および暗視の非接触温度測定に使用される。これらの用途には、航空機撮像システム、ヒトの体温センサ、監視システム、火災報知器、および暗視装置が含まれる。
【0003】
IRセンサは一般的に、場面内の様々な物体の熱放射輝度の差を検出することによって動作する。差は電気信号に変換され、それは次いで処理され、かつ解析または表示される。前方視IR(FLIR)装置のような撮像カメラまたは放射計は、IRセンサのアレイを利用して二次元熱画像を提供する。
【0004】
熱検出および光子検出という二つの独特なセンサ技術がある。熱検出器は、伝導率、キャパシタンス、膨張、および検出器温度の間の関係のような二次効果を使用して、IR放射を検出する。熱検出器はボロメータ、熱電対、サーモパイル、および焦電検出器を含む。光子検出器は光子を直接光電子に変換する。蓄積された電荷、電流、または伝導率の変化は、観察される場面内の物体の放射輝度に比例する。光子検出器は一般的に、より大きい検出能力およびより小さい応答時間を持ち、匹敵する熱検出器より高い性能を有するが、一般的に極低温まで冷却する必要がある。
【0005】
極低温冷却検出器に基づくシステムは幾つかの利点を有する。検出素子は通常、匹敵するマイクロボロメータ検出素子よりサイズが小さい。より短い焦点距離のレンズを使用して、同一の所要空間解像度を得ることができる。冷却検出器に基づくFLIRカメラは、高いfナンバ装置を使用することができるので、長い焦点距離の光学系でも、一般的に非常に優れた感度および適度な物理的寸法を有する。
【0006】
過去30年間に開発されたIR検出器技術に基づいて、特殊な四世代のFLIRカメラが設計されてきた。様々な世代は、各グループに含まれる素子の数によって分類される。第一世代のFLIRカメラは少数の検出器および機械的スキャナを使用して、二次元画像を生成した。今日の第四世代のFLIRカメラは、走査機構を必要としないIRセンサの二次元焦点面アレイ(FPA)を含む。
【0007】
センサアレイが露光時間として知られる期間に外部放射に露光された後、読出回路がセンサアレイを走査し、センサアレイを構成する個々のセンサの信号を順次読み出す。読出回路は、積分後読出(ITR)(スナップショット読出とも表わされる)および読出中積分(IWR)の二つのモードに分類される。ITR法では検出器露光およびセンサ読出を順次実行する。センサアレイは露光され、読み出され、再び露光され、と続く。IWR法では、アナログまたはデジタルバッファに前の露光サイクルからのセンサ信号を格納することによって、センサ露光および読出を並行して実行する。FPA検出器には一般的に、オンチップ読出集積回路(ROIC)が設けられる。
【0008】
一般的に、読出時間は、センサアレイのサイズに直接的に比例して変化する。例えば640×480素子の検出器の典型的な読出時間は約10ミリ秒(10−2秒)であるが、320×240検出素子の検出器の読出時間はわずか2.5ミリ秒である。
【0009】
以下、図1について説明する。それは先行技術のFLIRカメラの簡易ブロック図である。FLIRカメラ100は、外部場面からのIR放射をIR検出器115内のセンサアレイ120上に合焦させる光学部110を含む。光学部110は一般的に、焦点位置決めの制御または光学ズームの実行のために調整可能な、一つまたはそれ以上のレンズから構成される。センサアレイ120は光子検出器であり、したがってIR検出器115は光子検出に必要な極低温に冷却される。センサアレイ120の後に読出回路130が続き、センサアレイ信号を読み出す。第三の検出器構成部品は検出器動作モードコントローラ135であり、センサ読出ウィンドウのサイズおよび位置、動作モード(ITR/IWR)、検出器露光時間、ならびにバイアス電流などの追加の変数のような検出器設定を含むレジスタである。読み出された信号は様々な処理要素によって処理され、図1ではそれらをひとまとめにプロセッサ140としている。処理要素は一般的に、センサアレイ信号出力から映像信号を得るために映像処理のみならず、不均一性補正(NUC)および不良画素置換(BPR)のようなタスクをも実行する。
【0010】
赤外線検出器からの電流は、二つの部分すなわち光電流および暗電流に分割することができる。光電流は、検出器における赤外光の吸収子の結果生じる、検出器の有用な応答である。これらの光子は、光電流として捕集することのできる電荷担体を生成する。暗電流は検出器電流の望ましくない部分であり、たとえ検出器が照明されなくても存在する。暗電流の原因は通常、光励起に匹敵するプロセス、すなわち電荷担体の熱励起である。
【0011】
光子検出器センサアレイを持つFLIRカメラは、限定された感度でIR画像を提供する。光子検出器のSNRは、幾つかの要因によって限定される。検出器は限定数の光子しか吸収できない。露光時間が長すぎると、センサアレイ検出器の多くは飽和し、空白画像が得られる。センサアレイは、読出中に、飽和を防止するのに充分なように頻繁に放電しなければならない。しかし、センサアレイを頻繁に放電し過ぎると、(非常に短い検出器の露光時間のため)、一回の読出しのSNRはIR放射の無いときにも存在するノイズによって限定される。露光時間が短すぎると、捕集される光子が不十分であり暗い画像が得られる。現在のFLIRカメラは一般的に、映像フレーム毎に一回の露光/読出サイクルを実行する。したがって画像感度は、検出器の信号とプロセスに関連する全ノイズの比によって限定される。ノイズは信号自体に関連する揺らぎ(量子ノイズ)、読出ノイズ、暗電流の揺らぎ等を含む。
【0012】
FPAベースのFLIRカメラでは、理想的光学系を前提として、画像の空間解像度は検出器アレイの画素数によって決定される。商用赤外線検出器の一般的フォーマットは、20〜50μmの範囲の画素間ピッチで、320×240画素(320列、240行)および640×480画素である。大きい視野(FOV)および高い空間解像度の両方を有するFLIRカメラは通常、15μm以下という小さいピッチサイズで、640×480、1000×1000、またはもっと大きい検出器フォーマットに基づく。そのような大きい検出器フォーマットの場合の読出時間は比較的長い。映像信号に必要なフレームレートを得るために、たとえ低いfナンバシステムの場合でも、検出器露光時間はしばしば制限しなければならない。制限された検出時間により結果的に集光が不十分になり、信号対雑音比を低減する。したがって、読出時間の長い高解像度FLIRカメラはしばしば低感度を有する。
【0013】
したがって、上記制限の無いIRセンサおよびIRカメラの必要性が広く認識されており、それを持つことは非常に有利であろう。
【発明の開示】
【0014】
本発明の第一態様では、多数のIRセンサを含むセンサアレイと、感度調整器とを含む赤外線センサを提供する。センサアレイは、外部場面からIRエネルギを捕集し、感度調整器は、結果的に得られるIR画像が所要の感度レベルで利用可能となるように、集光および/または読出のための画素のグループ化を調整する。
【0015】
好ましくは、センサアレイはIRセンサの二次元配列である。好ましくは、センサアレイは光子検出器のアレイである。一つの好適な実施形態では、光子検出器は光導電センサである。好適な代替実施形態では、光子検出器は光電圧センサである。
【0016】
好ましくは、センサアレイは赤外線焦点面アセンブリ(IRFPA)である。
【0017】
好ましくは、IRセンサは、周期的センサアレイ読出を実行するためのセンサアレイに関連付けられる読出素子をさらに含む。
【0018】
好ましくは、感度調整器は、アレイ内の読出ウィンドウを選択するためのウィンドウセレクタを含む。
【0019】
好ましくは、感度調整器は、IRエネルギ捕集中に画素グループ化係数を選択するためのグループ化係数セレクタを含む。
【0020】
好ましくは、読出素子は、選択された読出ウィンドウのサイズで変動可能な読出時間を有する。
【0021】
好ましくは、読出素子は読出中積分(IWR)デバイスである。
【0022】
好ましくは、読出素子は積分後読出(ITR)デバイスである。
【0023】
好ましくは、調整は、外部から提供される制御情報に従って行われる。
【0024】
好ましくは、IRセンサは、調整を制御するためのフィードバック信号を形成するように、センサアレイ出力信号および/または読出信号を処理するための画像プロセッサをさらに含む。
【0025】
好ましくは、画像プロセッサは、画像信号のSNRを検出するためのSNR検出器をさらに含む。検出されるSNRは、平均SNR、最大SNR、および最小SNRのうちの一つまたはそれらの組合せから構成されることが好ましい。
【0026】
好ましくは、画像プロセッサは、画像信号のコントラストレベルを検出するためのコントラスト検出器をさらに含む。検出されるコントラストレベルは、平均コントラストレベル、最大コントラストレベル、および最小コントラストレベルのうちの一つまたはそれらの組合せから構成されることが好ましい。
【0027】
好ましくは、IRセンサは、センサ露光時間を選択するための露光時間計算器をさらに含む。
【0028】
好ましくは、選択は外部場面の全放射に従って行われる。
【0029】
好ましくは、露光時間計算器は、指定されたレベルのセンサの平均捕集電荷を維持するように動作可能である。
【0030】
好ましくは、選択は前に得られたセンサ露光レベルに従って行われる。
【0031】
好ましくは、IRセンサは、複数回の読出サイクルにおけるそれぞれのIRセンサのレベルを平均化するためのアベレージャをさらに含む。好ましくは、平均化されるサイクル回数は、単一映像フレーム時間に含まれる完遂したセンサ露光および読出サイクルの最大回数である。
【0032】
好ましくは、IRセンサは、外部IR放射をセンサアレイに合焦させるための光学部分をさらに含む。
【0033】
好ましくは、IRセンサは、高感度動作モードと低感度動作モードとを切り替えるためのモードセレクタをさらに含む。好ましくは、切替はフィードバック信号に従って行なわれる。好ましくは、モードセレクタは小さい読出領域と大きい読出領域との間、かつ/または大きい画素グループ化と小さい画素グループ化との間をそれぞれ切り替えて、高感度および低感度撮像を提供する。
【0034】
本発明の第二態様では、センサアレイ、感度調整器、および映像プロセッサを含むIRカメラを提供する。センサアレイは外部場面からIRエネルギを捕集し、感度調整器は結果的に得られるIR画像が所要感度レベルで利用できるように集光および/または読出のための画素グループ化を調整する。映像プロセッサはセンサアレイ出力を処理してビデオ画像を形成する。
【0035】
好ましくは、IRカメラは、外部IR放射をセンサアレイに合焦させるための光学部分をさらに含む。
【0036】
好ましくは、IRカメラは、周期的センサアレイ読出を実行するための、センサアレイに関連付けられる読出素子をさらに含む。
【0037】
好ましくは、感度調整器は、アレイ内の読出ウィンドウを選択するためのウィンドウセレクタを含む。
【0038】
好ましくは、感度調整器は、IRエネルギ捕集中に画素グループ化係数を選択するためのグループ化係数セレクタを含む。
【0039】
好ましくは、IRカメラは、調整を制御するためのフィードバック信号を形成するように、画像信号を処理するための画像プロセッサをさらに含む。
【0040】
好ましくは、フィードバック信号は、平均画像SNR、最大画像SNR、最小画像SNR、平均画像コントラスト、最大画像コントラスト、および最小画像コントラストのうちの少なくとも一つである。
【0041】
好ましくは、IRカメラは、高感度動作モードと低感度動作モードとを切り替えるためのモードセレクタをさらに含む。
【0042】
好ましくは、IRカメラはFLIR装置である。
【0043】
好ましくは、IRカメラは、ビデオ画像を解析して関心のある指定された特徴を識別するための画像解析装置をさらに含む。
【0044】
好ましくは、IRカメラは監視装置である。
【0045】
好ましくは、IRカメラはターゲッティング装置である。
【0046】
好ましくは、IRカメラはヘッドアップディスプレイ(HUD)をさらに含む。さらなる好適な実施形態では、IRカメラは航空機のビジビリティエンハンサである。
【0047】
本発明の第三態様では、所要画像感度が得られるようにセンサアレイの画素グループ化を調整し、かつ調整された画素グループ化のセンサアレイにより外部場面からIRエネルギを捕集することによる、IR感知のための方法を提供する。
【0048】
好ましくは、該方法はセンサ露光時間を選択するさらなるステップを含む。
【0049】
好ましくは、選択は、センサの平均捕集電荷を指定されたレベルに維持するように行われる。
【0050】
好ましくは、該方法は、画素グループ化および選択された露光時間によって許容される最大レートで繰返し実行される。
【0051】
好ましくは、選択は、前に得られたセンサ露光レベルに従って行われる。
【0052】
好ましくは、該方法は、周期的センサ読出を実行するためのさらなるステップを含む。
【0053】
好ましくは、調整は、アレイ内の読出ウィンドウを選択することを含む。
【0054】
好ましくは、調整は、グループ化係数を選択することから構成される。
【0055】
好ましくは、該方法は、センサ読出から調整を制御するためのフィードバック信号を形成するさらなるステップを含む。
【0056】
好ましくは、フィードバック信号は、平均画像SNR、最大画像SNR、最小画像SNR、平均画像コントラスト、最大画像コントラスト、および最小画像コントラストのうちの少なくとも一つである。
【0057】
好ましくは、該方法は、複数回の読出サイクルにおけるそれぞれのセンサレベルを平均化するさらなるステップを含む。
【0058】
好ましくは、該方法は、高感度動作モードと低感度動作モードとを切り替えるさらなるステップを含む。
【0059】
好ましくは、該方法は、ビデオIR画像を解析して関心のある指定された特徴を識別するさらなるステップを含む。
【0060】
本発明は、制御可能な感度をIR画像に与えるために画素グループ化制御を有するIRセンサを与えることによって現在知られている構成の欠点をうまく対処する。
【0061】
本明細書で使用される技術用語と科学用語はすべて、特に断らない限り、本発明の属する技術分野の当業者が共通して理解しているのと同じ意味を持っている。本明細書に記載されているのと類似の又は均等の方法と材料は本発明を実施又は試験するのに使用できるが、適切な方法と材料は以下に述べる。争いが生じた場合、定義を含めて本特許明細書が基準である。さらに、本明細書の材料、方法及び実施例は例示することだけを目的とし本発明を限定するものではない。
【0062】
本発明の方法及びシステムを実行することは、選択されたタスク又はステップを、手動操作で、自動的に又はそれらを組み合わせて実行又は完了することを含んでいる。さらに、本発明の方法とシステムの好ましい実施態様の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、いずれかのファームウェアのいずれかのオペレーティングシステムのハードウェア又はソフトウェア又はそれらの組合せによって実行できる。例えば本発明の選択されたステップはチップ又は回路のようなハードウェアとして実施できる。本発明の選択されたステップは、適切な指示セットを有するコンピュータによってまたは縮小命令セット(RISC)マシンによって実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施できる。いずれにしろ、本発明の方法とシステムの選択されたステップは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットホームで実行されると言える。
【0063】
図面の説明
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0064】
図1は先行技術のFLIRカメラの簡易ブロック図である。
図2は本発明の好適な実施形態に係るIRセンサの簡易ブロック図である。
図3は本発明のさらなる好適な実施形態に係るIRセンサの簡易ブロック図である。
図4は本発明の好適な実施形態に係るIRセンサの簡易ブロック図である。
図5は本発明の第一の好適な実施形態に従ってIR画像感知を実行するための方法の簡易ブロック図である。
図6は本発明の第二の好適な実施形態に従ってIR画像感知を実行するための方法の簡易ブロック図である。
図7aおよび7bは本発明の好適な実施形態に係る、それぞれ感度調整がある場合および無い場合のIRビデオカメラ内の信号処理の流れを示す。
図8aおよび8bはそれぞれ640×480検出器および216×112検出器の読出ウィンドウにより得られるIR画像を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
本発明の実施形態は、変化する感度で外部IR放射を検出できるIRセンサに関する。特に、本発明の実施形態では、センサの集光および読出特性を所望の感度レベルに合わせて調整し、それは用途要件、外部条件、およびセンサから得られるIR画像の品質のような因子に基づくことができる。
【0066】
本発明によるIRセンサの原理および操作は、図面および付随する説明を参照して、より良好に理解することができる。
【0067】
本発明の少なくとも一つの実施態様を詳細に説明する前に、本発明は以下の説明に記載されているか又は図面に例示されている要素の構造の詳細と配置にその用途が限定されないと解すべきである。本発明にはその他の実施態様があり又は種々の方法で実行もしくは実施できる。また、本明細書に使用される用語と語句は説明を目的とするものであり本発明を限定するとみなすべきではないと解すべきである。
【0068】
図2を参照すると、本発明の好適な実施形態に係るIRセンサの簡易ブロック図である。IRセンサ200は、外部場面からIRエネルギを捕集するセンサアレイ210と、要求される画像感度を提供するためにセンサ画素グループ化を調整する感度調整器220とを含む。好ましくは、IRセンサ200はさらに、検出器動作モードコントローラ215、および/またはセンサ読出を実行する読出素子250を含む。検出器動作モードコントローラ215は、感度調整器220によって確立されたものを含め、検出器制御設定を保持する。好適な実施形態では、センサアレイ210、検出器動作モードコントローラ215、および読出素子250を一体化してIR検出器が形成され、それは感度調整器220によって制御される。
【0069】
下で提示する好適な実施形態は、二種類の画素グループ化を利用する。第一の画素グループ化は、センサアレイ読出時間を決定するセンサ読出ウィンドウを選択する。読出ウィンドウを限定すると読出時間が低減され、したがって所定の時間にIRセンサ200から得ることのできるIR画像数であるシーケンスレートが高まる。次いで、下述するように、複数の画像を組み合わせてより高い感度の画像を形成することができる。第二の画素グループは、センサアレイ210のIRセンサを、固定数(ここではグループ化係数を意味する)のIRセンサを含むグループに分割する。グループ化されたセンサは合同で露光時間中にIR放射を捕集する。グループ化されたセンサによるIR放射の検出は、検出器を飽和させることなくより多くの光子を捕集することができるので、所定の露光サイクル中により多量のIR放射を捕集することを可能にする。その結果、信号対雑音比(SNR)は改善され、より高い感度の信号が得られる。ウィンドウ選択およびセンサグループ化の二種類のグループ化は、単独でまたは一緒に使用することができる。組み合わせて使用する場合、感度調整器220は、所望の感度レベルを得るために、読出ウィンドウおよびグループ化係数の両方を選択する。制御可能な読出ウィンドウおよびセンサグループ化を持つIRセンサは、現在入手可能である。好ましくは、感度調整器220は選択された設定を検出器動作モードコントローラ215に保存する。
【0070】
ウィンドウイングおよび/または画素グループ化能力を提供する冷却IR検出器は現在入手可能である。上述の通り、定義された組の読出ウィンドウ寸法からユーザがウィンドウを選択できるIR検出器は入手可能である。同様に、画素グループ化を持つIR検出器は一般的に、幾つかの定義された画素グループ化の中から、一般的に単一画素または四個一組にグループ化された画素(各軸に二個づつ)をユーザが選択することができる。四個一組にグループ化された検出素子は四倍量の電荷を捕集するスーパー画素のように機能し、その結果空間解像度は四分の一に減少する。例えば、スーパー画素モードでは、640×480個の素子を含む検出器は320×240個の検出器素子を持つ検出器のように挙動するが、各素子は四倍多くの電荷を捕集し、かつ読出時間は四分の一に減少する。
【0071】
好適な実施形態では、感度調整器220は、読出ウィンドウを選択するウィンドウセレクタ230、および/またはグループ化係数を選択するグループ化係数セレクタ240を含む。これらの両要素の動作については下でさらに詳述する。
【0072】
好ましくは、センサアレイ210は、赤外線焦点面アセンブリ(IRFPA)のようなIR検出器の二次元配列である。好ましくは、センサアレイ210を形成するIRセンサは、光導電センサまたは光電圧センサいずれかの光子検出器である。上述の通り、光子検出器は一般的に、適切に動作するために極低温冷却を必要とする。
【0073】
以下の実施形態は、FLIRカメラのようなIRビデオカメラ内のIRセンサに向けたものである。IRセンサによって捕集されるIR画像は、予め定められたフレームレートで一連の映像信号フレームを構築するために使用される。しかし該実施形態は、一般性を失うことなく、スタンドアロン型IRセンサ、および他の型の装置内に組み込まれたIRセンサにも適用される。
【0074】
好適な実施形態では、感度調整器220はウィンドウセレクタ230を含む。ウィンドウセレクタ230はセンサ読出ウィンドウを選択し、それはアレイ全体またはアレイ内の定められたサブウィンドウを包含する。読出ウィンドウは、好ましくはセンサアレイ210上のどこかに位置する、定められたm×n個の画素部分から構成される。センサ読出時間は、読み出される検出器の個数(ITRモードの場合)、または現在の露光時間および読出時間の最大値(IWR検出器の場合)の独自の関数であり、センサアレイは所定の時間中により多くの露光サイクルを実行することができる。例えば、640×480のセンサアレイのうちの320×240のサブウィンドウの読出時間は、検出器全体を読み出すのに要する当初の時間の約四分の一である。
【0075】
得られるシーケンスレートは露光時間、読出時間、および読出技術に依存する。m×n画素の読出ウィンドウの場合、ITRモードのシーケンスレートは次の通りである。



他方、IWRモードの場合、シーケンスレートは次の通りである。



したがって読出時間が減少すると、ITR読出のシーケンスレートは増加し、IWR読出のシーケンスレートは増加することがある(読出時間が検出器露光時間を越える場合)。
【0076】
好ましくは、センサの露光および読出は、選択された画素グループ化に対して可能な最大シーケンスレートで繰り返される。複数回の露光サイクルからのセンサレベルは、下述の通り、後で組み合わせて、一回の露光サイクルから得られるより高い感度画像を得ることができる。
【0077】
好適な実施形態では、IRセンサ200は、各露光期間毎にセンサ読出を実行する読出素子250を含む。読出時間は一般的に、選択された読出ウィンドウのサイズにより変化する。読出素子250はITRまたはIWR技術を使用することができ、IWR技術は適切なバッファ回路機構の追加を必要とする。
【0078】
好適な実施形態では、感度調整器220はグループ化係数を選択するグループ化係数セレクタ240を含む。グループ化係数は、大量のIRエネルギを捕集するために、光子検出中に組み合わされる検出器の個数である。センサをグループ化すると、IR画像SNRは、グループ化係数の平方根の大きさに等しい率で改善される。例えばグループ化係数が4である場合、四個一組の隣接画素のグループが読出ウィンドウ全体に形成される。SNRは基本的に二倍に改善されるが、IR画像は非グループ化センサの場合の四分の一の数の画素から構成される。したがって画素グループ化係数を利用することは、感度を画像解像度と交換取引することになる。両型の画素グループ化を組み合わせた場合、センサアレイ210の全部または指定部分から成る読出ウィンドウが、グループ化係数と共に選択されることに注目されたい。
【0079】
図3を参照すると、それは本発明のさらなる好適な実施形態に係るIRカメラの簡易ブロック図である。IRカメラ300は、センサアレイ310と、感度調整器320と、検出器動作モードコントローラ315、読出素子330、露光時間計算器340、アベレージャ350、および画像プロセッサ360のうちの一つまたはそれ以上とを含む。センサアレイ310、検出器動作モードコントローラ315、感度調整器320、および読出素子330は基本的に上述の通り動作する。
【0080】
好適な実施形態では、IRカメラ300は、センサアレイの露光時間を選択する露光時間計算器340を含む。上に示した通り、検出器の露光時間はIR検出器から得られるフレームレートに影響する。好適な実施形態では、検出器の露光時間は、平均捕集電荷をウェル容量の所望の百分率で一定に維持する閉ループによって制御され更新される。したがって、選択される露光時間は、センサアレイ310によって検出される全IR放射レベルによって異なる。現在の露光のための露光時間は、前の露光サイクル中に得られたセンサ出力レベルから決定されることが好ましい。露光時間計算器340は、選択された露光時間を検出器動作モードコントローラ315に保存することが好ましい。
【0081】
上の方程式1および2から分かる通り、露光時間を減少するとITR読出のシーケンスレートが増加し、かつIWR読出のシーケンスレートが増加することがある(検出器の露光時間が読出時間を越える場合)。しかし、一定のIR放射レベルでは、露光時間の低減は結果的にSNRをも低減する。
【0082】
露光時間計算器340は、IRカメラ300から得られる画像シーケンスの品質を維持しながら、単位時間当たり最大数の露光サイクルを実行することができることを確実にする。捕集される電荷で検出器が飽和されない間、画像の明部および暗部を区別するのに充分な光子が検出される。これは、一定の露光時間に1フレーム当たり一回の露光サイクルを実行する、多くの現在のFLIRカメラとは対照的である。
【0083】
好適な実施形態では、IRカメラ300は、複数の露光/読出サイクルに対してそれぞれのIRセンサ信号を平均化することによってIR画像を生成する、アベレージャ350を含む。ビデオFLIRカメラで、アベレージャ350は、前のフレーム期間中に発生した全ての完全に完了した露光サイクルを一緒に平均化することによって、各映像フレームを生成する。例えば出力映像フォーマットが30フレーム/秒である場合、映像フレームは、前回の30分の1秒間に完全に実行された露光/読出サイクルを平均化することによって構築される。一般的に、平均されるサイクル数は一定ではなく、入射するIR放射線に依存する。
【0084】
複数の露光サイクルからのセンサ値を平均化することにより、センサアレイ検出器によって捕集されるIRエネルギは事実上増加する。結果的に得られるIR画像のSNRは、平均された露光サイクル数の平方根に比例する。ウィンドウセレクタ230が小さい読出ウィンドウを選択すると、所定の期間に実行される露光/読出サイクルの数は増加し、それにより画像感度が高くなる。上述した例では、検出器の読出ウィンドウが640×480から320×240に減少すると、1フレーム当たりに実行できる露光/読出サイクルの数が結果的に四倍になる。
【0085】
FLIRカメラで、センサアレイ310内でサブウィンドウを選択すると、FLIRカメラのFOVはセンサアレイ310に合焦される画像の選択部分に限定される。しかし、下述の通り、高感度画像を得ることができ、それは多くの用途で大きいFOVを維持するより重要である。例えば、航空機の視界強化用途では、FLIRカメラは、良好な大気条件では全視野(FOV)を使用し、不良大気条件では画像の明瞭さおよび細部を改善するために限定されたFOVを使用することができる。
【0086】
好適な実施形態では、感度調整器320は、ユーザ選択のような外部から提供される制御情報から所要感度を決定する。制御情報はまた、航空機内の高度および天候センサのような他のシステム構成部品によって提供することもできる。
【0087】
好適な実施形態では、IRカメラ300は画像プロセッサ360を含み、画像プロセッサはセンサアレイ出力信号を処理してフィードバック信号を形成し、フィードバック信号は画素グループ化(つまり読出ウィンドウの寸法および位置および/またはセンサグループ化係数)を調整するために感度調整器320によって使用される。画像プロセッサ360は、図3に示すようにアベレージャ350の後に続くことができ、あるいは読出素子330に直接接続することができる。画像プロセッサ360はIR画像または画像シーケンスを処理し、SNRおよびコントラストのような画像特性を解析する。画像プロセッサ360からのフィードバック信号は、所望の画像品質を得るために、感度調整器320によって画素グループ化パラメータを調整するのに使用される。例えば、現在のSNRが指定された閾値より低い場合、感度調整器320は読出ウィンドウを縮小することができる。
【0088】
好適な実施形態では、画像プロセッサ360は画像信号のSNRを決定するSNR検出器を含む。SNR検出器は次の因子:つまり画像の最大SNR、最小SNR、および平均SNRの任意の単一の組合せまたは重み付き組合せを検出することができる。
【0089】
好適な実施形態では、画像プロセッサ360は、画像信号コントラストを検出するためのコントラスト検出器を含む。コントラスト検出器は、次の因子:つまり画像の最大コントラスト、最小コントラスト、および平均コントラストの任意の単一の組合せまたはそれらの重み付き組合せを検出することができる。
【0090】
好適な実施形態では、感度調整器320は、モードが予め指定された読出ウィンドウおよび/またはグループ化係数から構成される場合に、必要に応じてより高い感度およびより低い感度を達成するために、IRカメラ300を二つ以上の再定義された感度モードの間で切り替えるモードセレクタを含む。
【0091】
好ましくは、IRカメラ300は、外部IR放射をセンサアレイに合焦させるために、レンズのような光学部分を含む。
【0092】
図4を参照すると、それは本発明の好適な実施形態に係るIRカメラの簡易ブロック図である。IRカメラ400は、基本的に上述の通り動作するセンサアレイ410、検出器動作モードコントローラ415、感度調整器420、および読出素子450、ならびにセンサアレイ出力を処理してビデオ画像を形成する映像プロセッサ460を含む。好ましくは、IRカメラ400はFLIRカメラである。
【0093】
映像プロセッサ460は一連の検出器出力レベルを得、該検出器レベルを処理して二次元画像にする。映像プロセッサ460は、NUC、BPR、およびセンサレベルを正確なIR画像に変換するために必要な他のタスクを実行することができる。映像プロセッサ460は読出素子450から検出器レベルを得ることが好ましい。
【0094】
好ましくは、IRカメラ400は、外部IR放射をセンサアレイに合焦させるために、レンズのような光学部分を含む。
【0095】
感度調整器420は、上述の通り、ウィンドウセレクタ430および/またはグループ化係数セレクタ440を含むことが好ましい。
【0096】
好適な実施形態では、IRカメラ400は、関心のある指定された特性を識別するために、映像プロセッサ460によって提供されるビデオ画像を解析する画像解析装置を含む。第一の好適な実施形態では、IRカメラ400は監視装置であり、その場合、映像プロセッサ460は動き検出器として設計することができる。別の好適な実施形態では、IRカメラ400はターゲッティング装置であり、映像プロセッサ460はそれらのIR特性に基づいて潜在的ターゲットを識別することができる。
【0097】
好ましくは、IRカメラ400はヘッドアップディスプレイ(HUD)を含む。好適な実施形態では、IRカメラ400は、難しい天候条件下でパイロットに提供されるIR画像を改善するために、航空機ビジビリティエンハンサとして役立つ。
【0098】
図5を参照すると、本発明の第一の好適な実施形態に従ってIR画像感知を実行するための方法の簡易ブロック図である。単一の露光サイクルは、センサアレイ画素グループ化が所要画像感度を達成するように調整されるステップ510を含み、その後に、選択された画素グループ化に従って、センサアレイによって外部場面からIRエネルギが捕集されるステップ520が続く。好適な実施形態では、画素グループ化の調整は、読出ウィンドウおよび/またはグループ化係数の選択から構成される。センサ読出は各露光サイクル毎に実行することが好ましい。
【0099】
好適な実施形態では、一つまたはそれ以上のセンサ読出信号は、IR画像を形成するために、幾つかの読出をまとめて平均化することによって処理することが好ましい。
【0100】
好適な実施形態では、該方法は、センサ露光時間を選択するさらなるステップを含む。露光時間は、IRセンサの平均捕集電荷を指定レベル、例えば70%に維持するように選択することが好ましい。選択は前に得られた露光レベルに基づくことができる。
【0101】
好ましくは、露光サイクルは、本発明の画素グループ化および/または選択された露光時間によって許容される最大レートで繰返し実行される。
【0102】
好適な実施形態では、IR画像は、画素グループ化を調整するためのフィードバック信号を形成するために処理される。フィードバック信号は、平均画像SNR、最大画像SNR、最小画像SNR、平均画像コントラスト、最大画像コントラスト、および最小画像コントラストを含む画像特性の関数とすることができる。
【0103】
一連のIR画像からIR映像シーケンスを形成することが好ましい。次いでビデオIR画像を解析して、動きのような関心のある特定の性質を識別することができる。
【0104】
本発明の方法は、それぞれの感度レベルのIR画像を生み出すように、それぞれの画素グループ化を持つ二つ以上の動作モードの間で切り替えるさらなるステップを含むことが好ましい。
【0105】
図6を参照すると、それは本発明の第二の好適な実施形態に従ってIR画像感知を実行するための方法の簡易ブロック図である。本発明の方法は、FLIRカメラのIRビデオ画像を生成するために、上述したステップの幾つかを組み合わせることによって、図5の方法を延長する。FLIRカメラは、光子を光電子に変換する光子検出器の二次元配列に基づく。光子捕集は、場面の放射に関係なく、光子の一定した平均捕集を維持する閉ループ露光時間により実行される。光子の捕集後、電子読出回路は、アレイ内の光検出素子によって捕集された電荷を順番に、焦点面アレイのどこかに位置するm×n画素の被制御読出ウィンドウから読み出す。検出はITRまたはIWRいずれかのモードで実行することができる。
【0106】
露光時間および読出ウィンドウは、ステップ610および620でそれぞれ選択される。ウィンドウサイズを変更する決定は、自動的または手動的に実行することができる。自動動作の判定基準は、SNR、コントラスト、またはこれらおよびその他の変数の重み付けのようなIR画像品質に依存することができる。
【0107】
ステップ630で、光子検出は選択された露光時間実行される。ステップ640で、検出器レベルは、閉ループ露光時間制御およびウィンドウ読出時間(選択された読出ウィンドウによって決定される)によって許容される最大シーケンスレートで読み出される。映像フレームは一般的に複数のセンサ読出から形成されるので、シーケンスレートは映像出力フォーマットとは無関係であることに注目されたい。ステップ650で、検出器読出の整数回数を平均化して映像フレームが形成され、したがって画像感度が改善される。好ましくは、平均化される読出回数は、一映像フレーム時間に含まれる完全露光/読出サイクルの最大回数である。
【0108】
図7aおよび7bは、感度調整が、本発明の好適な実施形態に係るIRビデオカメラ内の信号処理の流れにどのように影響するかを示す。図7aは、感度調整が無い場合にIRカメラ内で実行される信号処理ステップの例を示す。図7bは、感度調整を処理の流れにどのように挿入することができるかを示す非限定例である。
【0109】
図7aに戻って、ステップ700で、各露光期間の終わりにIR検出器からIR読出信号が得られる。次いでステップ705〜770で、各読出し信号が次のように処理される。ステップ700で得られた未処理読出信号は、ステップ705で解析され、露光時間の設定が選択され、IR検出器に適用される。ステップ710および720で、当業界で通常見られるようにNUCおよびBPRが実行される。BPRの後、ヒトの目には理解不能であるが、トラッキングシステム、動き検出システム、および類似物によって使用することのできる生のビデオ画像が得られる。生のビデオ画像のストリームは統計ブロック解析装置(SBA)730によって解析され、その結果はステップ740で、その後の信号処理ステップのための制御情報を提供するために使用される。映像信号はステップ750で高域フィルタリングされ、フィルタリングされたIR画像のストリームはステップ760で再度解析される。最後に、ステップ770で、ステップ760中に得られた統計情報に基づいて、画像信号に非線形変換が実行される。変換は、映像信号をヒトの目に理解可能な信号に変換するために、ダイナミックレンジ圧縮およびリスケーリングのような機能を実行する。
【0110】
図7bは、感度調整を含む処理の流れを示す。処理の流れは図7aと同様であるが、露光時間の設定に加えて感度の設定(つまり画素グループ化)を決定するために、前にステップ705で実行された検出器のフィードバック制御が今はSBAステップ730中に実行される点が異なる。したがって、感度の設定は、生の検出器読出信号のみならず、ステップ730中に収集された統計データにも基づくことができる。適切な照明条件下では、感度調整が不要となるような露光時間にすることができるので、感度調整設定を選択する前に、露光時間を選択することが好ましい。こうしてその後のIR画像は新しい制御設定で検出される。検出器の制御もまたSBA(ステップ730)中に提供された情報に頼ることができる。
【実施例】
【0111】
以下の実施例は、読出ウィンドウ画素グループ化によるIR撮像で得られた結果を提示する。640×480および216×112の読出ウィンドウで、IR撮像を実行した。どちらの場合にも1のグループ化係数を使用した。1.5のfナンバを持つ3〜5ミクロンFLIRカメラによって画像を捕集した。
【0112】
図8aおよび8bは、動く物体のIR画像である。図8aは640×480検出素子の読出ウィンドウにより得られた低感度画像を示す一方、図8bは216×112検出素子により得られた高感度画像を示す。図8bは、図8aに示された画像の限定部分を、より明瞭かつ詳細な状態で含むことが分かる。


【0113】
読出ウィンドウを限定すると、検出器読出時間は10.25ミリ秒から0.81ミリ秒に減少し、したがってITRおよびIWR読出モードの両方でシーケンスレートが増加し、SNRが約2.6倍向上する。
【0114】
IR撮像は、医療装置、工業工程制御、航空機の航行、ならびに監視およびターゲッティングシステムのような多くの多様な用途に使用される重要なツールである。上記の実施形態は、IR画像の感度とFOVおよび/または解像度と交換取引するためのシステムおよび方法を記載するものである。したがってシステムは、最適なシステム性能を得るのにしばしば重要な能力である、様々な動作条件下で変化する特徴を持つIR画像を提供するように調整することができる。
【0115】
この特許の存続中、多くの関連IRセンサ、IR検出器、光子検出器、読出回路、読出モード、及びFLIRカメラが開発されることが期待され、用語IRセンサ、IR検出器、光子検出器、読出回路、読出モード、及びFLIRカメラは全てのかかる新しい技術を含むことを意図される。
【0116】
分かりやすくするため別個の実施態様で説明されている本発明のいくつもの特徴は、組み合わせて単一の実施態様にして提供することもできることは分かるであろう。逆に簡略化するため単一の実施態様で説明されている本発明の各種特徴は、別個に又は適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0117】
本発明を、その具体的実施態様とともに説明してきたが、多くの変形と変更が当業技術者には明らかであることは明白である。したがって、本発明は、本願の特許請求の範囲の精神と広い範囲内に入っているこのような変形と変更をすべて含むものである。本明細書に記載のすべての刊行物、特許及び特許願は、あたかも、個々の刊行物、特許又は特許願各々が、本願に具体的にかつ個々に参照して示されているように、本願に援用するものである。さらに、本願における任意の文献の引用もしくは確認は、このような文献が本発明に対する従来技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】先行技術のFLIRカメラの簡易ブロック図である。
【図2】本発明の好適な実施形態に係るIRセンサの簡易ブロック図である。
【図3】本発明のさらなる好適な実施形態に係るIRセンサの簡易ブロック図である。
【図4】本発明の好適な実施形態に係るIRセンサの簡易ブロック図である。
【図5】本発明の第一の好適な実施形態に従ってIR画像感知を実行するための方法の簡易ブロック図である。
【図6】本発明の第二の好適な実施形態に従ってIR画像感知を実行するための方法の簡易ブロック図である。
【図7a】本発明の好適な実施形態に係る、それぞれ感度調整がある場合および無い場合のIRビデオカメラ内の信号処理の流れを示す。
【図7b】本発明の好適な実施形態に係る、それぞれ感度調整がある場合および無い場合のIRビデオカメラ内の信号処理の流れを示す。
【図8a−b】それぞれ640×480検出器および216×112検出器の読出ウィンドウにより得られるIR画像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部場面から赤外線エネルギを捕集するための、複数の赤外線センサを含むセンサアレイと、
視野間、および必要な画像感度を誘導するための感知画素のグループ化を調整するための、前記センサアレイと関連付けられる感度調整器と
を含む赤外線センサ。
【請求項2】
前記センサアレイは前記赤外線センサの二次元配列を含む請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記センサアレイは光子検出器のアレイを含む請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記光子検出器は光導電センサを含む請求項3に記載の赤外線センサ。
【請求項5】
前記光子検出器は光電圧センサを含む請求項3に記載の赤外線センサ。
【請求項6】
前記センサアレイは赤外線焦点面アセンブリ(IRFPA)を含む請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項7】
周期的センサアレイ読出を実行するための、前記センサアレイに関連付けられる読出素子をさらに含む請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項8】
前記感度調整器は、前記アレイ内の読出ウィンドウを選択するためのウィンドウセレクタを含む請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項9】
前記感度調整器は、赤外線エネルギ捕集中に画素グループ化係数を選択するためのグループ化係数セレクタを含む請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項10】
前記読出素子は、選択された読出ウィンドウのサイズで変動可能な読出時間を有する請求項7に記載の赤外線センサ。
【請求項11】
前記読出素子は読出中積分(IWR)デバイスを含む請求項7に記載の赤外線センサ。
【請求項12】
前記読出素子は積分後読出(ITR)デバイスを含む請求項7に記載の赤外線センサ。
【請求項13】
前記調整は、外部から提供される制御情報に従って行われる請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項14】
前記調整を制御するためのフィードバック信号を形成するように、センサアレイ出力信号を処理するための画像プロセッサをさらに含む請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項15】
前記調整を制御するためのフィードバック信号を形成するように、読出信号を処理するための画像プロセッサをさらに含む請求項7に記載の赤外線センサ。
【請求項16】
前記画像プロセッサは、前記画像信号のSNRを検出するためのSNR検出器をさらに含む請求項14に記載の赤外線センサ。
【請求項17】
前記検出されるSNRは平均SNRを含む請求項16に記載の赤外線センサ。
【請求項18】
前記検出されるSNRは最大SNRを含む請求項16に記載の赤外線センサ。
【請求項19】
前記検出されるSNRは最小SNRを含む請求項16に記載の赤外線センサ。
【請求項20】
前記画像プロセッサは、前記画像信号のコントラストレベルを検出するためのコントラスト検出器をさらに含む請求項14に記載の赤外線センサ。
【請求項21】
前記コントラストレベルは平均コントラストレベルを含む請求項20に記載の赤外線センサ。
【請求項22】
前記コントラストレベルは最大コントラストレベルを含む請求項20に記載の赤外線センサ。
【請求項23】
前記コントラストレベルは最小コントラストレベルを含む請求項20に記載の赤外線センサ。
【請求項24】
センサ露光時間を選択するための露光時間計算器をさらに含む請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項25】
前記選択は外部場面の全放射に従って行われる請求項24に記載の赤外線センサ。
【請求項26】
前記露光時間計算器は、指定されたレベルの前記センサの平均捕集電荷を維持するように動作可能である請求項24に記載の赤外線センサ。
【請求項27】
前記選択は前に得られたセンサ露光レベルに従って行われる請求項24に記載の赤外線センサ。
【請求項28】
複数回の読出サイクルにおけるそれぞれの赤外線センサのレベルを平均化するためのアベレージャをさらに含む請求項7に記載の赤外線センサ。
【請求項29】
前記平均化されるサイクル回数は、単一映像フレーム時間に含まれるセンサ露光および読出サイクルの最大整数回数を含む請求項28に記載の赤外線センサ。
【請求項30】
外部赤外線放射を前記センサアレイに合焦させるための光学部分をさらに含む請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項31】
前記感度調整器は、高感度動作モードと低感度動作モードとを切り替えるためのモードセレクタを含む請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項32】
前記フィードバック信号に従って高感度動作モードと低感度動作モードとを切り替えるためのモードセレクタをさらに含む請求項14に記載の赤外線センサ。
【請求項33】
小さい読出領域と大きい読出領域とをそれぞれ切り替えて、高感度および低感度撮像を提供するためのモードセレクタをさらに含む請求項8に記載の赤外線センサ。
【請求項34】
大きい画素グループ化と小さい画素グループ化とをそれぞれ切り替えて、高感度および低感度撮像を提供するためのモードセレクタをさらに含む請求項9に記載の赤外線センサ。
【請求項35】
外部場面から赤外線エネルギを捕集するための、複数の赤外線センサを含むセンサアレイと、
視野間、および必要な画像感度を誘導するための感知画素のグループ化を調整するための、前記センサアレイと関連付けられる感度調整器と、
センサアレイ出力を処理してビデオ画像を形成するための映像プロセッサと
を含む赤外線カメラ。
【請求項36】
外部赤外線放射を前記センサアレイに合焦させるための光学部分をさらに含む請求項35に記載の赤外線カメラ。
【請求項37】
周期的センサアレイ読出を実行するための、前記センサアレイに関連付けられる読出素子をさらに含む請求項35に記載の赤外線カメラ。
【請求項38】
前記感度調整器は、前記アレイ内の読出ウィンドウを選択するためのウィンドウセレクタを含む請求項35に記載の赤外線カメラ。
【請求項39】
前記感度調整器は、赤外線エネルギ捕集中に画素グループ化係数を選択するためのグループ化係数セレクタを含む請求項35に記載の赤外線カメラ。
【請求項40】
前記調整を制御するためのフィードバック信号を形成するように、前記画像信号を処理するための画像プロセッサをさらに含む請求項35に記載の赤外線カメラ。
【請求項41】
前記フィードバック信号は、平均画像SNR、最大画像SNR、最小画像SNR、平均画像コントラスト、最大画像コントラスト、および最小画像コントラストのうちの少なくとも一つを含む請求項40に記載の赤外線カメラ。
【請求項42】
高感度動作モードと低感度動作モードとを切り替えるためのモードセレクタをさらに含む請求項35に記載の赤外線カメラ。
【請求項43】
前記赤外線カメラはFLIR装置を含む請求項35に記載の赤外線カメラ。
【請求項44】
前記ビデオ画像を解析して関心のある指定された特徴を識別するための画像解析装置をさらに含む請求項35に記載の赤外線カメラ。
【請求項45】
前記赤外線カメラは監視装置を含む請求項44に記載の赤外線カメラ。
【請求項46】
前記赤外線カメラはターゲッティング装置を含む請求項44に記載の赤外線カメラ。
【請求項47】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)をさらに含む請求項35に記載の赤外線カメラ。
【請求項48】
前記赤外線カメラは航空機のビジビリティエンハンサを含む請求項47に記載の赤外線カメラ。
【請求項49】
必要な画像感度が得られるようにセンサアレイの画素グループ化を調整し、
前記画素グループ化に従って前記センサアレイにより外部場面から変動可能なウィンドウにおける赤外線エネルギを捕集すること
を含む赤外線感知のための方法。
【請求項50】
センサ露光時間を選択することをさらに含む請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記選択は、前記センサの平均捕集電荷を指定されたレベルに維持するように行われる請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記方法は、前記画素グループ化および前記選択された露光時間によって許容される最大レートで繰返し実行される請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記選択は、前に得られたセンサ露光レベルに従って行われる請求項50に記載の方法。
【請求項54】
周期的センサ読出を実行することをさらに含む請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記調整は、前記アレイ内の読出ウィンドウを選択することを含む請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記調整は、グループ化係数を選択することを含む請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記調整は、グループ化係数を選択することを含む請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記センサ読出から前記調整を制御するためのフィードバック信号を形成することをさらに含む請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記フィードバック信号は、平均画像SNR、最大画像SNR、最小画像SNR、平均画像コントラスト、最大画像コントラスト、および最小画像コントラストのうちの少なくとも一つを含む請求項58に記載の方法。
【請求項60】
複数回の読出サイクルにおけるそれぞれのセンサレベルを平均化することをさらに含む請求項54に記載の方法。
【請求項61】
高感度動作モードと低感度動作モードとを切り替えることをさらに含む請求項49に記載の方法。
【請求項62】
ビデオ赤外線画像を解析して関心のある指定された特徴を識別することをさらに含む請求項49に記載の方法。
【請求項63】
外部場面から赤外線エネルギを捕集するための、複数の赤外線センサを含むセンサアレイと、
視野間、および必要な空間解像度を与えるための感知画素のグループ化を調整するための、前記センサアレイと関連付けられる視野調整器と
を含む赤外線センサ。
【請求項64】
外部場面から赤外線エネルギを捕集するための、複数の赤外線センサを含む極低温冷却センサアレイと、
必要な画像感度を与えるために画素グループ化を調整するための、前記センサアレイと関連付けられる感度調整器と
を含む赤外線センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a−b】
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【公表番号】特表2007−507968(P2007−507968A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−531008(P2006−531008)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000740
【国際公開番号】WO2005/032126
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506049611)オプガル リミテッド (2)
【Fターム(参考)】